以下、本発明の好適な実施形態の露光装置を説明する。
図1、図2は、それぞれ、本発明の好適な実施形態の露光装置の概略構成を示す斜視図、側面図である。図3は、図1の一部を拡大した図である。図4は、図1〜図3に示す露光装置のマスクステージ、並びに、マスク及び撓み補正機構の構成を模式的に示す図である。
図1、図2及び図3において、露光装置EXは、パターンが形成されたマスクMを保持して移動するマスクステージMSTと、感光基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されたマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンを基板ステージPSTに保持された感光基板Pに投影し転写する投影光学系PLと、マスクローダーMLとを備えている。露光装置EXは、更に、マスクMの撓み量を測定する撓み測定装置60を備えることが好ましい。
マスクMの上部は、マスクMの面を境界の一部とする撓み制御空間Sを形成する撓み制御ユニット(空間Sを定義する空間定義部材)1が配置される。マスクステージMSTに保持されているマスクMと基板ステージPSTに保持されている感光基板Pとは、投影光学系PLを介して共役な位置関係に配置される。この実施形態の露光装置EXは、大型凹面鏡を有するいわゆるミラースキャン型露光装置として構成されている。感光基板Pは、典型的には、ガラスプレート(ガラス基板)に感光剤(フォトレジスト)を塗布したものである。
この実施形態では、露光装置EXは、走査型露光装置として構成され、露光光ELを射出する照明光学系ILに対してマスクMと感光基板Pとを同期して移動させて、マスクMのパターンを感光基板Pに走査露光により転写する。以下では、投影光学系PLの光軸方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な方向でマスクM及び感光基板Pの同期移動方向をY軸方向(走査方向)、Z軸方向及びY軸方向と直交する方向をX軸方向とする。また、X軸まわり、Y軸まわり、Z軸まわりのそれぞれの方向をθX方向、θY方向、θZ方向とする。
照明光学系ILは、例えば、起高圧水銀ランプ等を含む光源と、光源から射出された光束を集光する楕円鏡と、楕円鏡により集光された光束を拡大しかつ平行光束化するコンデンサレンズと、コンデンサレンズからの平行光束のうちマスクMへの照射光として使用しない部分をカットして所定面積の照明領域を定義するためにマスクMと共役な位置に配置された制限スリット板と、制限スリット板からの光束を反射させてマスクMにスリット状照明光束を照射するミラーと含みうる。
照明光学系ILが発生する露光光ELとしては、例えば、水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)の他に、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられうる。照明光学系ILは、所謂ケーラー照明系として構成されうる。
マスクステージMSTは、照明光学系ILに対してマスクMを走査駆動するように構成され、Y軸方向(走査方向)に長いストロークを有し、走査方向に直交するX軸方向に適当なストロークを有する。マスクステージMSTは、マスクMを保持するための吸着部40を有する。吸着部40は、不図示のバキューム装置に接続されており、マスクMは、吸着部40により真空吸着されて保持される。マスクステージ駆動部MSTDは、マスクステージMSTをX軸方向及びY軸方向に駆動する。マスクステージ駆動部MSTDは、主制御系により制御されうる。
図1に示すように、マスクステージMST上のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの端縁には直交する方向に移動鏡32a、32bが設けられている。移動鏡32aに対向するように、レーザー干渉計Mx1が配置され、移動鏡32bに対向するように複数個(この来施形態では2個)のレーザー干歩計My1、My2が配置されている。レーザー干渉計My1、My2は、移動鏡32bにレーザー光を照射して、レーザー干渉計My1、My2と移動鏡32bとの距離を検出する。レーザー干渉計My1、My2の検出結果は主制御系に出力され、主制御系はレーザー干渉計My1、My2の検出結果に基づいてマスクステージMSTのY軸方向における位置、及びZ軸まわりの回転量を演算する。また、レーザー干渉計Mx1は、移動鏡32aにレーザー光を照射して、レーザー干渉計Mx1と移動鏡32aとの距離を検出する。レーザー干渉計Mx1の検出結果は主制御系に出力され、主制御系は、レーザー干渉計Mx1の検出結果に基づいてマスクステージMSTのX軸方向における位置を求める。主制御系は、レーザー干渉計Mx1、Mx2、及びMy1の出力からマスクステージMSTの位置(姿勢)をモニタしつつマスクステージ駆動部MSTDを制御することでマスクステージMSTを所望の位置(姿勢)に設定する。
マスクMを透過した露光光ELは、投影光学系PLに入射する。投影光学系PLは、マスクMの照明領域に存在するパターンの像を感光基板P上に形成する。図2に示すように、投影光学系PLは、例えば、台形ミラー52、凸面鏡53及び凹面鏡54を介してマスクMのパターンの像を感光基板P上に形成しうる。感光基板P上への投影光学系PLの投影領域は、所定形状(例えば、円弧形状)に設定される。
感光基板Pを駆動する基板ステージPSTは、感光基板Pを保持する基板ホルダをする。基板ステージPSTは、マスクステージMSTと同様に、Y軸方向(走査方向)に走査用のストロークを有し、走査方向に直交するX軸方向にステップ移動用のストロークとを有する。更に、基板ステージPSTは、Z軸方向、及びθX、θY、θZ方向にも移動可能に構成されている。基板ステージ駆動部PSTDは、基板ステージPSTをX軸方向及びY軸方向に駆動する。基板ステージ駆動部PSTDは、主制御系により制御される。
図1に示すように、基板ステージPST上のY軸方向及びX軸方向のそれぞれの端縁には直交する方向に移動鏡33a、33bが設置されている。X軸方向に延在する移動鏡33aに対向するように、複数(例えば、3個)のレーザー干渉計Pxl、Px2、Px3が配置されている。また、Y軸方向に延在する移動鏡33bに対向するように、複数(例えば、2個)のレーザー干渉計Pyl、Py2が配置されている。複数のレーザー干渉計Pxl〜Px3は、Y軸方向に沿って等間隔に配置されている。レーザー干渉計Pyl、Py2は、移動鏡33bにレーザー光を照射して、レーザー干渉計Pyl、Py2と移動鏡33bとの距離を検出する。レーザー干渉計Pyl、Py2の検出結果は主制御系に出力され、主制御系はレーザー干渉計Pyl、Py2の検出結果に基づいて基板ステージPSTのY軸方向における位置、及びZ軸まわりの回転量を求める。また、レーザー干渉計Pxl〜Px3は移動鏡33aにレーザー光を照射して、レーザー干渉計Pxl〜Px3と移動鏡33aとの距離を検出する。ここで、基板ステージPSTは、Y軸方向に走査用の長いストロークを有するので、基板ステージPSTの位置に応じてレーザー干渉計Pxl〜Px3が切り替えられうる。レーザー干渉計Pxl〜Px3の検出結果は主制御系に出力され、主制御系はレーザー干渉計Pxl〜Px3それぞれの検出結果に基づいて基板ステージPSTのX軸力向における位置を求める。主制御系は、レーザー干渉計Pyl、Py2、及びPxl〜Px3の出力から基板ステージPSTの位置(姿勢)をモニタし基板ステージ駆動部PSTDを制御することで基板ステージPSTを所望の位置(姿勢)に設定する。
マスクステージ駆動部MSTD及び基板ステージ駆動部PSTDは、主制御系により制御され、マスクステージMST、基板ステージPSTは、それぞれ、マスクステージ駆動部MSTD、基板ステージ駆動部PSTDによって駆動される。主制御系は、マスクステージMST及び基板ステージPSTの位置をモニタしながら両駆動部PSTD、MSTDを制御することによりマスクMと感光基板Pとを投影光学系PLに対して任意の走査速度(同期移動速度)でX軸方向に同期駆動する。
なお、この明細書では、液晶表示デバイスの製造に好適な露光装置の構成例を示しているが、この露光装置は、半導体チップや薄膜磁気ヘッド等の製造に使用することもできる。また、本発明を半導体チップや薄膜磁気ヘッド等の製造に好適な露光装置に適用することができることは当業者にとって自明である。また、投影光学系は、等倍系であっても、縮小系であっても、拡大系であってもよい。投影光学系は、エキシマレーザなどの遠紫外線を用いる場合には、石英や蛍石などの遠紫外線を透過する硝材で構成することが好ましく、F2レーザーを用いる場合には、反射屈折系または屈折系の光学系として構成されることが好ましい。基板ステージPSTやマスクステージMSTの駆動装置としてリニアモータを用いる場合は、例えば、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンスカを用いた磁気浮上型を採用することができる。ステージは、ガイドに沿って移動するタイプでもよいし、ガイドを設けないガイドレスタイブでもよい。ステージの駆動装置として平面モータを用いる場合は、磁石ユニットと電機子ユニットのいずれか一方をステージ側に配置し、磁石ユニットと電機子ユニットの他方をステージの定盤(ベース)側に配置すればよい。基板ステージPSTの移動により発生する反カは、特開平8−166475号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がすことができる。マスクステージMSTの移動により発生する反カは、特開平8−330224号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がすことができる。
図3に、マスクの撓み計測装置60が示されている。撓み計測装置60は、例えばマスクMの上方に配置され、マスクMの上面又は下面のZ軸方向の位置を計測する。マスクM上に配置される撓み制御ユニット(空間定義部材)1は、マスクMに対向して配置される光透過部材3を含む。撓み計測装置60は、例えばレーザー変位計を含むことができ、測定光が光透過部材3を透過することによりマスクMの撓みを計測することができる。撓み計測装置60は、マスクMの下方に配置されて、マスクMの撓みを下方から計測してもよい。図5に示すように、撓み計測装置60の計測結果は、演算装置CLに提供される。演算装置CLは、提供された計測結果に基づいて、マスクMの撓みを補正するための圧力指令値を演算し、その圧力指令値を圧力制御装置PRCに提供する。圧力制御装置PRCは、提供される圧力指令値に基づいて撓み制御空間Sの圧力を制御する。
マスクMの撓み量は、撓み制御空間S内の圧力に依存する。したがって、マスクMの撓み量を撓み制御空間S内の圧力によって制御することができる。例えば、マスクMの材質を石英(比重2.2)厚さを10mmとすれば、マスクMの自重によってマスクMに作用する圧力(自重圧力)は、2.2g・f/cm2 = 2.2×102Paである。すなわち、マスクMに作用する自重圧力は、大気圧(1atm=1.013×105Pa)の0.2%である。この場合、マスクMに作用する自重圧力を打ち消して、マスクMの撓みを高精度な走査露光が可能な程度に矯正するためには、撓み制御空間Sの圧力制御を約−2.2×102Pa(ゲージ圧)にする必要がある。また、圧力制御は、撓み制御空間Sの圧力変動が圧力制御の目標値の±数Pa以内に収まる精度で実施することが好ましい。
撓み制御ユニット1を上記のようにマスクMの上方に配置する場合において、自重圧力によるマスクMの撓みを補正するためには、撓み制御空間S内の圧力を大気圧(或いは、周辺環境の圧力)に対して負圧にする必要がある。一方、撓み制御ユニット1をマスクMの下方に配置する場合には、自重圧力によるマスクMの撓みを補正するためには、圧力制御空間S内の圧力を大気圧(或いは、周辺環境の圧力)に対して陽圧にする必要がある。この実施形態では、撓み制御ユニット1をマスクMの上方に配置する構成例を中心として説明するが、本発明は、撓み制御ユニット1をマスクMの下方に配置する実施形式をも含みことができ、このような実施形式においては、撓み制御空間S内を負圧にする構成に代えて、撓み制御空間S内を陽圧にする構成が採用される。
次に、図4及び図5を参照しながら、マスクMの面を境界とする撓み制御空間Sを定義するための撓み制御ユニット(空間定義部材)1について説明する。図4には、マスクステージMSTのほか、それによって保持されたマスクM及び撓み制御ユニット1の概略構成が示されている。図5には、撓み制御空間Sの圧力を制御することによりマスクMの撓みを補正する撓み補正システム或いは圧力制御システムの概略構成が示されている。
撓み制御ユニット1は、マスクMに対向する光透過板3と枠2とを含んで構成されうる。枠2は、典型的には、光透過板3の外周端に沿うように光透過板3とマスクMとの間に配置されうる。撓み制御ユニット1は、枠2がマスクMに接触又は近接するように配置されうる。撓み制御ユニット1は、マスクMから取り外し可能な方法でマスクMに固定されてもよいし、マスクM上に載せ置かれてもよいし、マスクMに接触又は近接するように保持機構によって保持されてもよい。マスクMは、典型的には矩形であり、これに応じて光透過板3及び枠2も、典型的には矩形とされうる。
撓み制御ユニット1がマスクMに接触又は近接するように配置されることによって、撓み制御ユニット1の光透過板3及び枠2並びにマスクMによって撓み制御空間Sが定義される。
撓み制御ユニット1は、マスクステージMST側の接続部6と接続するための接続部4、及び、撓み制御空間SとマスクステージMST側の接続部6に設けられた流路6aとを連通させる流路5を更に含みうる。マスクステージMST側の接続部6は、典型的にはマスクステージMST上に配置される。なお、接続部4、6、又は、それに接続されるチューブやケーブルが照明領域内に配置される場合には、それらに露光光が当たらないように遮光板(例えば、金属製)を設けることが好ましい。
枠3は、マスクMに対して傷を与え難い樹脂、例えばポリカーボネートで構成されうる。ポリカーボネートは、脱ガスが少なく、良好な仕上げ面が得られる部材である。光透過板3は、例えば、ガラス板等のような露光光ELを透過する材料で構成される。枠2と光透過板3とは、ネジ、接着剤等の種々の固定方法によって固定されうる。撓み制御ユニット1の所定部、例えば、光透過板3の上部には、マスクローダー(操作機構)MLにより保持される1又は複数個の把手部9が設けられうる。図3に示す構成例では、Y軸に沿った対向する2つの辺に、それぞれ2個の把手部9が設けられている。
撓み制御ユニット1のマスクMに対向する面とマスクMとの間の全部又は一部には、接触部材(インターフェース部材)7が設けられることが好ましい。撓み制御ユニット1とマスクMとの間の全部又は一部に接触部材7を配置することにより、撓み制御空間Sと外部空間との間における気体の移動を可能にしつつその移動量を制限することができる。接触部材7は、撓み制御ユニット1に接合されてもよいし、マスクMに接合されてもよい。
撓み制御空間Sと外部空間との間における気体の移動は、露光時に撓み制御空間Sの気体の温度上昇に起因するマスクMや撓み制御ユニット1の熱膨張、変形、溶解等を防止する。例えば、外部空間から撓み制御空間S内への気体の連続的な流入は、撓み制御空間Sの冷却、或いは温度変動の抑制、に効果的である。ここで、撓み制御空間Sと外部空間との間における気体の移動量が多すぎると、撓み制御空間Sの圧力制御を困難にし、これによりマスクMの撓み矯正を困難にする。そこで、接触部7の構成材料としては、高い柔軟性により所要のシール機能を提供するゴムが有用である。更に、露光装置においては、シロキサン等の脱ガスは好ましくないので、ゴムの中でも、発泡フッ素ゴムが有用である。発砲フッ素ゴムは、フッ素ゴムであるのでシロキサンが発生しない点、発泡体であるので柔軟性を有する点、独立発泡なので密閉性に優れている点において、有用な材料である。
接触部材7はまた、マスクステージMSTが駆動されることによるマスクMの走査移動により発生しうる撓み制御ユニット1とマスクMとの相対的ずれの抑制にも寄与しうる。接触部材7は、撓み制御ユニット1の重量と、マスクステージMSTの想定される駆動プロファイル(例えば、加速度、速度)とによって決定されうる所要の摩擦力を提供する摩擦係数を有するように構成材料や表面仕上げが決定されうる。例えば、接触部材7は、高い摩擦力を提供するとともに脱ガスが少ない合成ゴム等により構成されることが好ましい。
枠2について更に説明する。枠2を厚くすると、それに比例して撓み制御空間Sの体積が大きくなる。これは、撓み制御空間Sの圧力制御精度を低下させうる。一方、枠2を薄くすると、例えば、必要以上に撓み制御空間Sに負圧を加えた場合に、光透過板3とマスクMとが接触しうる。したがって、マスクMの自重による撓み量、光透過板3の撓み量等を考慮して枠2の厚さを決定する必要がある。
枠2と光透過板3とは、前述のように種々の方法によって接続されうるが、保守作業の容易さの観点において、ネジ等の締結具による方法のように、枠と光透過板3との分離が容易な方法が好ましい。ここで、枠3及び光透過板3の各インターフェース面の面加工精度を十分に高くすることにより、ネジ等の締結具による接続方法によっても十分に高いシール機能を得ることができる。枠2と光透過板3との間には、必要に応じてシール材を介在させてもよい。
図4及び図5に例示的に示すように、マスクステージMSTに配置された接続部6には、流路10a、11aを介して、それぞれサーボバルブ10、差圧センサ(圧力センサ)11が接続されている。サーボバルブ10及び差圧センサ11は、マスクステージMSTに配置されてもよいし、マスクステージMSTとほぼ一定の位置関係を維持しながらマスクステージMSTとともに移動する実装ステージに配置されてもよい。
図4及び図5に示す構成例では、サーボバルブ10及び差圧センサ11は、マスクステージMSTに配置されている。サーボバルブ10は、2つのポートを有し、1つのポートは流路10aを介して接続部6の流路6a(更には、流路5を介して撓み制御空間S)に連通し、もう1つのポートは流路10gを通して中継部C1のガスポートに連通している。また、サーボバルブ10と中継部C1との間には、サーボバルブ10を駆動するための電気信号ライン10eが配線されている。差圧センサ11は、2つのポートを有し、1つのポートは、流路11aを介して接続部6の流路6a(更には、流路5を介して撓み制御空間S)に連通し、もう1つのポートは、周辺環境(撓み制御空間Sの外部空間であり典型的には大気)に連通している。すなわち、差圧センサ11の出力は、撓み制御空間Sと周辺環境との差圧を提供する。この差圧は、マスクMの自重によりマスクMに発生する撓みをキャンセルするためにマスクMに作用している圧力差である。差圧センサ11の出力信号は、電気信号ライン11eを介して中継器C1に提供される。
中継器C1は、マスクステージMST又は実装ステージに配置され、遠隔制御部Fに配置された中継器C2に対して、フレキシブルチューブ12g及びフレキシブルケーブル12eを介して接続されている。典型的には、中継器C2を有する遠隔制御部Fは、露光装置における固定された部分に設置されうるが、中継器C1を有するマスクステージMST又は実装ステージは、マスクステージMSTとともに移動する。そのため、中継器C1、C2間は、柔軟性を有する電気的及び機械的な接続材料によって接続されている。サーボバルブ10の1つのポートに接続された流路10gは、中継器C12、フレキシブルチューブ12g、中継器C2を介してバッファタンク13に連通している。サーボバルブ10の開度が大きくされると、サーボバルブ10を通じて撓み制御空間Sから流路10g、中継器C12、フレキシブルチューブ12g、中継器C2を介してバッファタンク13に吸引される気体の量が増加し、逆に、サーボバルブ10の開度が小さくされると、サーボバルブ10を通じて撓み制御空間Sから流路10g、中継器C12、フレキシブルチューブ12g、中継器C2を介してバッファタンク13に吸引される気体の量が減少する。サーボバルブ10を駆動するための電気信号は、電気信号ライン10e2、中継器C2、フレキシブルケーブル12e、中継器C1、電気信号ライン10eを介して圧力制御装置PRCからサーボバルブ10に提供される。差圧センサ11の出力信号は、電気信号ライン11e、中継器C1、フレキシブルケーブル12e、中継器C2、電気信号ライン11e2を介して差圧センサ11から圧力制御装置PRCに提供される。
ここで、フレキシブルチューブは、その一端がその他端に対して相対的に移動することが可能な部品であって流路を構成する部品の一例である。また、フレキシブルケーブルは、その一端がその他端に対して相対的に移動することが可能な部品であって電気信号を伝送可能な部品の一例である。この明細書では、中継器C1、C2間を接続するフレキシブルチューブ及びそれに構成される流路、並びに、フレキシブルケーブル及びそれによって構成される信号ラインに代表されるインターフェースをフレキシブルインターフェース(12)と呼ぶ。
圧力制御装置PRCは、フレキシブルインターフェース12を通して提供される差圧センサ11の出力信号により示される差圧が、予め設定されている目標差圧になるようにサーボバルブ10の駆動信号を発生し、その駆動信号をフレキシブルインターフェース12を通してサーボバルブ10に提供する。すなわち、圧力制御装置PRCは、撓み制御空間Sとその外部空間との差圧が目標差圧に一致するように、撓み制御空間Sとその外部空間との差圧をフィードバック制御する。ここで、サーボバルブ10の駆動信号は、例えば、サーボバルブ10の開度を制御するための信号、又は、サーボバルブ10の開閉を間欠的に制御するための信号とすることができる。前記の目標差圧は、マスクMの撓みを補正するために必要な撓み制御空間Sとその外部空間との差圧であり、例えば、マスクMのサイズや厚さ等に基づいて決定されうる。
図5に示す構成例は、マスクMと枠との間を通じて撓み制御空間S内に外部気体が流入することを前提としており、そのため、撓み制御空間S内の圧力を高めるために撓み制御空間Sに気体を強制的に送り込む機構は有していない。しかしながら、撓み制御空間S内に気体を強制的に送り込む機構を設けることも有用であり、この場合、給気用サーボバルブを含む圧力制御システムを別途設けて、給気サーボバルブを差圧センサ11の出力に基づいて圧力制御装置PRCが制御すればよい。給気用サーボバルブは、前述の排気用サーボバルブ10と同様に、マスクステージMST又は実装ステージに配置されることが好ましく、給気用サーボバルブはフレキシブルインターフェース12を通じて圧力制御装置PRCによって制御されうる。また、給気用サーボバルブに加圧気体を供給する供給するための給気用バッファタンクは、遠隔制御部Fに設けることが好ましい。給気用バッファタンクには、圧力源に接続された加圧ライン(圧力制御ライン)が接続される。
可動部であるマスクステージMSTを駆動する際の負荷は、特に走査型露光装置においては、可能な限り小さいことが好ましい。したがって、圧力制御装置PRCやバッファタンク13は、遠隔操作部Fに設けることが好ましい。しかしながら、差圧センサ11及びサーボバルブ10は、マスクステージMSTと一定の位置関係を維持しながら移動することが好ましいので、マスクステージMST又はそれとほぼ一定関係を維持しながら移動する実装ステージに配置されることが好ましい。仮に、差圧センサ11及びサーボバルブ10を、マスクステージMSTに対して相対的に移動する部分(例えば、露光装置のフレーム等)に配置すると、差圧センサ11及びサーボバルブ10と撓み制御空間Sとをフレキシブルチューブ等の柔軟性を有し変形可能な部材で接続する必要がある。このような部材は、マスクステージMの移動に伴って変形し、更に場合によっては振動し、当然に、差圧センサ11による計測値が変動するとともにサーボバルブ11の撓み制御空間S側の圧力も変動する。
バッファタンク13は、不図示の減圧ライン等の圧力制御ラインに接続される。バッファタンク13は、撓み制御空間Sの圧力制御の安定性及び追従性の向上に寄与する。例えば、減圧源又は減圧ラインの圧力に急激な変動や規則的な変動が存在する場合に、バッファタンク13は、そのような変動を緩和し、ほぼ一定圧力を維持する。これにより、撓み制御空間Sの圧力変動は、例えば目標値(目標差圧)±数Pa以内に抑えられうる。また、フレキシブルチューブ12g等で構成される排気用管路を更に減圧ラインに接続する構成では、管路抵抗が大きくなる。したがって、バッファタンク13を備えない場合には、マスクMがマスクステージMSTに搬送されて撓み制御空間Sの圧力制御を開始してから撓み制御空間Sの圧力が目標値に到達するまでに長時間を要する。バッファタンク13を備えることにより、露光装置と減圧源との間に配管された減圧ラインの管路抵抗の影響を受け難くし、スループットを向上させることができる。
差圧センサ11をマスクステージMST又はそれとほぼ一定の位置関係を維持しながら移動する実装ステージに配置した構成において、特にマスクステージMSTの静止時のほか移動時にも撓み制御空間Sの圧力を制御する場合には、差圧センサ11の移動による差圧センサ11の計測誤差を低減することが重要である。ここで、マスクステージMSTの移動にともなって差圧センサ11の周辺に気体の流れが生じると、差圧センサ11の周辺環境の圧力が変動し、これが差圧センサ11の計測誤差を引き起こす。最も単純な例を挙げると、差圧センサ11の周辺に気体の流れが存在すると、差圧センサ11の周囲の圧力は、ベルヌーイの定理により大気圧より低くなる。更に、実際の系では、より複雑な気体の流れが生じ、差圧センサ11の周囲の圧力は、大気圧より低くなったり、逆に高くなったりしうる。
そこで、差圧センサ11(特に、外部環境に連通したポート)の周囲を取り囲む囲包部11bを設けることが好ましい。更に、囲包部11bには、囲包部11b内の圧力を外部環境と一致させるための開口部11cを設けることが好ましい。開口部11cを有する囲包部11bは、例えば、百葉箱のような構造にすることができる。しかしながら、差圧センサ11の移動又は周辺に存在しうる気体の流れに起因する差圧センサ11の計測誤差をより完全に排除するためには、開口部11cを必要に応じて閉塞することが可能な構成が好ましい。例えば、囲包部11cは、開口部11cを閉塞するための閉塞部材11eと、閉塞部材11eを圧力制御装置PRC等からの指令に応じて駆動するアクチュエータ11dとを備えることが好ましい。閉塞部材11e及びアクチュエータ11dを含む機構は、例えば、電磁弁又は電磁シャッタとして構成されうる。
典型的には、閉塞部材11eは、マスクステージMST(結果として、差圧センサ11)の移動開始の直前に開口部11cを閉塞し、移動終了後に開口部11cを開口させるようにアクチュエータ11dによって駆動されうる。或いは、閉塞部材11eは、露光開始の直前に開口部11cを閉塞し、露光終了後に開口部11cを開口させるようにアクチュエータ11dによって駆動されうる。このような制御によれば、マスクステージMSTの移動時或いは露光時においても、差圧センサ11の外部環境の気体の流れの影響を受けることなく、撓み制御空間Sの圧力を制御しマスクMの撓みを補正或いは矯正することができる。また、マスクステージMSTの移動は、マスクM及び撓み制御ユニット1の変形を引き起こし、これが更に撓み制御空間Sの圧力変動を引き起こしうるが、マスクステージMSTが移動している時にも差圧センサ11の出力信号に基づいて撓み制御空間Sの圧力を制御することにより、マスクMの撓みを補正或いは矯正することができる。
次に、上記の露光装置によりマスクMのパターンを感光基板Pに転写する方法を説明する。ここでは、マスクMは、図6に示すように、自重により下方に凸になるように撓んでいるものとする。撓み制御ユニット1が付されたマスクMがマスクステージMSTに保持され、感光基板Pが基板ステージPST上に保持されると、主制御系は、アライメント処理の後に走査露光を開始する。図6に示す例では、マスクMのパターン形成面は、破線で示す理想位置(ベストフォーカスが得られる位置)Zrに対して−Z側(下方側)に撓んでいる。撓み測定装置60の出力に基づいて演算装置CLで演算されたマスクMの撓み量に関する情報は、圧力制御装置PRCに提供される。圧力制御装置PRCは、演算装置CLから提供された撓み量に関する情報に基づいて、マスクMの撓みが補正されるようにフレキシブルインターフェース12を通じて撓み制御空間Sの圧力を制御する。図6に示す例では、圧力制御装置PRCは、露光位置EXにおけるマスクMのパターン形成面と理想位置Zrとが一致するようにサーボバルブ10の開度を大きくして、撓み制御空間Sの圧力を低下させる。
撓み制御空間Sの圧力目標値は、例えば、マスクMの厚み情報に基づいて暫定的な圧力目標値を決定した後に、暫定目標圧力値に従って圧力制御装置PRCによって撓み制御空間Sの圧力を制御しマスクMの撓みを補正した状態でマスクステージMSTを走査駆動し、その際の撓み量を撓み計測装置60によってモニタし、撓み量の平均値が0になるように(すなわち、マスクMのパターン形成面が理想位置Zrと一致するように)、最終的な圧力目標値を決定するという手順で決定されうる。或いは、撓み制御空間Sの圧力目標値は、走査露光時にマスクMの撓み量を撓み計測装置60によって計測しながら、その計測結果に基づいて、撓みが補正されるように(すなわち、マスクMのパターン形成面が理想位置Zrと一致するように)、動的に変更されてもよい。このようにマスクステージMSTの移動中におけるマスクMの撓み量を計測する場合、撓み計測装置60は、マスクMが露光光で照明される照明領域の近傍におけるマスクMの撓みを測定するように配置されることが好ましい。
撓み計測装置60による計測結果を使用する代わりに、メモリMRY(図5参照)に予め複数のマスクのそれぞれについて自重等による撓みを補正するための圧力指令値を格納しておいてもよい。この場合、圧力制御装置PRCは、使用するマスクMについての撓みを補正するための圧力指令値をメモリMRYから読み出して、その圧力指令値に基づいて撓み制御空間Sの圧力を制御することができる。或いは、メモリMRYには、複数のマスクのそれぞれについて自重等による撓み量を示す情報を格納しておいてもよい。この場合は、使用するマスクMについての撓み量を演算器CLがメモリMRYから読み出して、マスクMの撓みを補正するための圧力指令値を演算し、その圧力指令値を圧力制御装置PRCに提供する。更に、撓み計測装置60による計測結果(撓み量)とメモリMRYに格納されている撓み量との双方を利用して、両者を比較することにより、撓みの異常の有無を判定してもよい。或いは、メモリMRYにマスクMのサイズ及び厚さと撓みを補正するための圧力目標値との関係を予め格納しておき、例えばマスクMをマスクステージMSTにロードする際にマスクMのサイズ及び厚さを計測し、又は、マスクMのID等に基づいてこれらの情報を取得し、マスクMのサイズ及び厚さに対応する圧力目標値をメモリMRYから取得して、その圧力目標値にしたがってマスクMの撓みを補正してもよい。或いは、露光のために使用され、その際に圧力目標値が決定されたマスクについては、その圧力目標値をメモリMRYに格納しておき、次にそのマスクを使用する際にその圧力目標値をメモリMRYから読み出してもよい。
上記の実施形態では、撓み制御空間Sの圧力を制御することによりマスクMの撓みを矯正するが、例えば、マスクMが上方に凸になるように積極的に撓ませるなど、マスクMを任意形状に制御するために撓み制御空間Sの圧力を制御してもよい。これにより、感光基板P上に投影されるパターン像のディストーション等を制御することができる。
露光が終了してマスクMが不要になったら、マスクMは、マスクストッカーに戻されうる。この際に、マスクM及び撓み制御ユニット1は、共に搬送されてもよいし、別個に搬送されてもよい。マスクM及び撓み制御ユニット1の搬送或いは操作は、マスクローダー(操作機構)MLによってなされうる。マスクローダーMLは、図7(a)に示すように、撓み制御ユニット1のみを搬送することもできるし、図7(b)に示すように、マスクMに撓み制御ユニット1が載った状態でマスクM及び撓み制御ユニット1を搬送することもできる。更に、マスクローダーMLは、マスクMのみを単独で搬送することができるように構成されてもよい。
マスクMは、マスクM上に予め撓み制御ユニット1が配置された状態でマスクステージMSTに搬送されてもよいし、マスクMがマスクステージMSTに搬送された後にマスクM上に撓み制御ユニット1が配置されてもよい。
マスクMと撓み制御ユニット1とは、連結具或いは連結機構によって機械的に連結されてもよいが、この場合、マスクMと撓み制御ユニット1とを連結し又はそれを解除するための操作が必要になる。また、マスクM及び撓み制御ユニット1は、一般には、互いに重なり合った状態で操作されれば十分である。そこで、この実施形態では、マスクMと撓み制御ユニット1とを連結具或いは連結機構によって連結することなく操作する。ただし、搬送時や走査露光時にマスクMと撓み制御ユニット1とが互いに位置ずれすることを防止するために、図8に例示的に示すように、ストッパー等の係合部8をマスクM及び/又は撓み制御ユニット1に設けることが好ましい。
この実施形態の露光装置は、サイズ等が異なる複数種類のマスクMを取り扱うことができ、また、そのため、サイズ等が異なる複数種類の撓み制御ユニット1を取り扱うことができる。マスクMや撓み制御ユニット1は、後述のように、ストッカー内に収容されうる。マスクステージMST上において、撓み制御ユニット1の接続部4とマスクステージMSTに配置された接続部6とが接続される。
図8に例示的に示すように、マスクMは、その周辺部分において接触部材7に接触し又は接合されている。したがって、マスクMの周辺部は、撓み制御空間Sが露出していないため、撓み制御空間Sの圧力制御によって形状を制御することができない。より具体的には、撓み制御空間Sを外部環境に対して負圧にしてマスクMに対して上方に圧力を与えようとしても、圧力は、撓み制御空間Sに露出している領域S1のみに加わり、撓み制御空間Sに露出していない領域S2には加わらない。したがって、撓み制御空間Sを負圧にすることによって領域S1に加わる自重をキャンセルすることはできるが、領域S2に加わる自重のキャンセルはできない。したがって、マスクMの周辺部の撓みを補正するために、領域S2を下方から支持する必要がある。図8に示すように、マスクMのサイズがマスクステージMSTのマスクホルダ40hのサイズに適合している場合には、マスクMの周辺部は、4辺についてマスクホルダ40hによって支持される。しかしながら、図9に示すように、マスクMのY方向のサイズが小さく、マスクMの2辺(Y方向に平行な辺)のみがマスクステージMSTのマスクホルダ(吸着部40)によって支持される場合には、他の2辺(X方向に平行な辺)にはマスクMの自重のみが作用することになり、撓みが発生しうる。そこで、マスクMの周辺部のうちマスクホルダ(吸着部40)によって支持されない部分の全体又は一部(例えば、中央部)を支持機構14によって支持することが好ましい。支持機構14は、マスクの支持が不要な場合には、自動で退避位置に移動することが好ましい。更に、撓み制御ユニット1は、マスクホルダ(吸着部40)によって支持されない部分を補強するための補強梁15を備えることが好ましい。
次に、図10〜図13を参照しながらマスクMの交換機構及び交換方法について説明する。この実施形態のマスク交換機構は、前述のマスクローダーMLのほか、マスクバッファBF及びマスク操作ロボット(第2操作機構)MXを含む。マスクローダーMLは、例えば、マスクMを水平1軸方向(X方向)に移動させる第1駆動機構ML−Xと、マスクMを垂直方向(Z方向)に移動させる第2駆動機構ML−Yを含む2軸の駆動機構で構成されうるが、3軸以上の駆動機構で構成されてもよい。図10に示すように、マスクステージMSTにマスクM及び撓み補正ユニット1が配置され、それらを使って露光処理が実行されているときに、マスク操作ロボットMXによって、次に使用すべきマスクMが所定位置に準備される。このように露光処理の実行中に次の使用すべきマスクMを準備することによって、マスク交換に伴うスループットの低下を抑えることができる。露光処理が終了すると、図11に示すように、マスクローダーMLによって、マスクステージMST上のマスクM及び撓み制御ユニット1をマスクバッファBF上に搬送し、マスクバッファBFに一時的に保持させる。次いで、図12に示すように、マスクローダーMLによってマスクバッファBF上の撓み制御ユニット1をマスク操作ロボットMXによって所定位置に準備されているマスクMの上に搬送する。これにより、マスクMとその撓みを制御するための撓み制御ユニット1の組が準備される。次いで、マスク操作ロボットMXによって保持されているマスクM及び撓み制御ユニット1をマスクローダーMLによってマスクステージMSTに搬送する。その後、マスクバッファBF上に残っているマスクMは、マスクローダーMLによってマスク操作ロボットMXに渡される。マスク操作ロボットMXは、受け取ったマスクMが次に使用すべきマスクである場合には、そのままそのマスクMを保持し続け、次に使用すべきマスクではない場合にはマスクストッカーに戻し、更に次に使用すべきマスクをマスクストッカーから取り出す。
図10〜図13に示す例は、露光処理に使用しているマスクMに付されている撓み制御ユニット1を次の露光処理に使用すべきマスクMにも適合していて、2つの露光処理において同一の撓み制御ユニット1を使用する例である。一方、使用すべきマスクの変更に伴って撓み制御ユニットも変更する必要がある場合には、露光処理が終了した後に、一対のマスクM及び撓み制御ユニット1をマスクローダーMLによってマスクバッファBF上に搬送し、次いで、マスク操作ロボットMXによって準備されている一対のマスクM及び撓み制御ユニット1をマスクローダーMLによってマスクステージMSTに搬送し、次いで、マスクバッファBF上の一対のマスクM及び撓み制御ユニット1をマスクローダーMLによってマスク操作ロボットMXに戻す。
次に、図14A〜図14Fを参照しながらマスク操作ロボットMXの動作を説明する。ストッカーSは、複数のマスクMを収容するマスク収納部SMと、複数の撓み制御ユニット1を収容するユニット収容部SCUと、マスクMに付されている防塵蓋MCをマスクMから分離するための作業領域AOPと、防塵蓋MCを操作するロボットOPとを含む。まず、図14A及び図14Bに順に示すように、マスク操作ロボットMXは、マスク収容部SMに収容されている防塵蓋MC付きのマスクMを取り出す。次いで、図14Cに示すように、マスク操作ロボットMXは、防塵蓋MC付きのマスクMを作業領域AOPに移動させ、ロボットOPによってマスクM上の防塵蓋MCをマスクMから分離させる。ロボットOPは、マスクMから分離した防塵蓋MCを作業領域AOPに配置されたテーブル上に置く。
次いで、図14Dに示すように、マスク操作ロボットMXは、マスクMをそれに適合した撓み制御ユニット1の下方に移動させる。この状態で、図14Eに示すように、該当する撓み制御ユニット1の支持が解除されて、その撓み制御ユニット1がマスクM上に載せられる。次いで、図14Fに示すように、マスク操作ロボットMXは、撓み制御ユニット1が付されたマスクMをストッカーSから取り出し、所定位置に配置する。この状態が図10に示す状態である。
ここでは、マスクMに防塵蓋MCが付されている例を示したが、マスクMがカセットに収容されている場合には、マスクMから防塵蓋MCを分離する代わりに、カセットの蓋を開いてカセットからマスクMを取り出せばよい。
以上のように、複数の撓み制御ユニット1のうち露光処理に使用すべきマスクMに適合した撓み制御ユニット1を当該マスクMに組み合わせるマスクローダー(操作機構)ML及びマスク操作ロボット(第2操作機構)を設けることにより、1つの露光装置EXにおいて、種々のマスクを使用することができる。また、マスクMとそれに適合した撓み制御ユニット1との組み合わせ(例えば、撓み制御ユニット1をマスクMに載せること)をストッカーSからマスクステージMSTへのマスクMの搬送途中で行う構成によれば、既存の露光装置の構成を変更することなく、多種のマスク(及び、それらに対応した撓み補正ユニット)を利用することができる。また、次に使用すべきマスクM及び撓み制御ユニット1をマスクステージMSTに搬送する前に組み合わせておくことにより、マスクの交換に伴うスループットの低下を抑えることができる。
撓み制御ユニット1に異物が付着していると、露光時に照度ムラを引き起こしうる。そこで、図15に例示的に示すように、露光装置には、異物を除去するためのクリーナを設けることが好ましい。図15に示す例では、マスク操作ロボットMXによって、撓み制御ユニット1、又は、マスクMを伴う撓み制御ユニット1がクリーナCに搬送される。クリーナCは、例えば、撓み制御ユニット1に付着した異物を検知する異物検知センサDSと、異物検知センサDSによって異物が検知された場合に異物を撓み制御ユニット1から除去する異物除去機構B、例えば、ブロアーを備えうる。
次に、上記の露光装置を利用した液晶表示デバイス等のデバイスの製造プロセスを説明する。図16は、デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。ステップ1(設計)では、液晶表示デバイスや半導体デバイス等のデバイスの回路パターン等を設計する。ステップ2(マスク作製)では、設計した回路パターンに基づいてマスクを作製する。一方、ステップ3(基板製造)では、ガラスやシリコン等の材料を用いて基板を製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は、前工程と呼ばれ、上記のマスクと基板を用いて、リソグラフィ技術によって基板上に実際のトランジスタ等の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製された基板を用いて液晶表示デバイスや半導体デバイス等のデバイスを組み立てる。ステップ6(検査)では、ステップ5で作製されたデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経てデバイスが完成し、これを出荷(ステップ7)する。
図17は、上記基板プロセスに適用されるリソグラフィ工程の詳細なフローを示す図である。基板に半導体層又は金属層又は絶縁層等を形成した後に、ステップ15(レジスト処理)では、基板に感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では上記の露光装置によって回路パターンを感光基板に転写する。ステップ17(現像)では、回路パターンが転写された感光基板を現像処理する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返すことによって、基板上にパターンを積相することができる。