JP4454712B2 - フロントフォーク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体側に結合されるアウタチューブ内に車軸側に結合されるインナチューブを摺動自在に挿入し、アウタチューブとインナチューブ内に緩衝用の気体室を形成したフロントフォークに関し、特にロードレース用の自動二輪車のフロントフォークに用いて好適なフロントフォークに関する。
【0002】
【従来の技術】
車体側のアウタチューブ内に車軸側のインナチューブを摺動自在に挿入し、アウタチューブとインナチューブ内の下部に油溜室を、上部に油面を介して気体室を設けた倒立型のフロントフォークが知られている。 この従来のフロントフォークにあっては、気体室のエア反力特性がストローク後半で、2乗カーブ的に大きくなるエア反力特性を有する。 従って、フロントフォークが伸び切り位置付近から少し圧縮した位置近辺を伸縮する通常の荷重状態時には路面振動の吸収性が良いが、ストローク後半でエア反力が大きくなり過ぎて、ストローク後半での路面振動の吸収性が悪くなる。
【0003】
このために、このフロントフォークにあっては、フロントフォーク内部の油溜室の油面を下げて気体室の容積を大きくしてストローク奥でのエア反力の上昇を抑えることが行われているが、エア反力が不足してストローク後半でフロントフォークが底付きを起こしやすくなる。
【0004】
また、例えば、自動二輪車のオンロードレース用のフロントフォークでは、以下のような要求がある。(a)平坦な路面を直進走行するときのように、フロントフォークが伸び切り位置から少し沈み込んだ位置付近を伸縮する通常の荷重状態(通常の走行状態)時には、小さなエア反力で路面振動の吸収性を上げたい。(b)また、コーナーに入る手前でブレーキをかけて減速するブレーキング時のように、フロントフォークが高速で大きく沈み込むときには、大きなエア反力でフロントフォークの沈み込みを抑えたい。(c)また、ブレーキング後のコーナリング中のように、フロントフォークが沈み込んだ状態で旋回走行するときには、エア反力の上昇を抑えてコーナリング中の路面振動の吸収性を上げたい。(d)また、コーナリング中の加速時のように、フロントフォークが圧縮された状態から伸長するときには、フロントフォークが伸びないようにしてアンダステアになるのを抑えて旋回性を向上させるともに、接地性を確保したい。
【0005】
しかしながら、従来のフロントフォークでは、ブレーキング後のコーナリング中のようにフロントフォークが大きく沈み込んだストローク奥でエア反力の上昇を抑えたり、また、コーナリング中の加速時のようにフロントフォークが圧縮行程から伸長行程に移行した場合に、フロントフォークの伸びを抑えることができない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、一定以上圧縮した位置以降のエア反力の上昇を抑え、更に、一定以上圧縮した位置から伸長する時に、フロントフォークのエア反力を圧縮行程より小さくすることができるフロントフォークを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、車体側に取り付けられるアウタチューブの内周に固定された上下のブッシュを介して、車軸側に取り付けられるインナチューブを摺動自在に挿入し、アウタチューブ、インナチューブ、及び、上下のブッシュの間に環状の隙間S1を形成し、アウタチューブとインナチューブ内の下部に油溜室Bを上部に気体室を形成したフロントフォークにおいて、前記アウタチューブ内周に固定された上部ブッシュの下方に位置し、前記インナチューブ内周に摺接するサブピストンを下端部に設けた筒状の隔壁部材を、前記アウタチューブ側の上端部からインナチューブ内に垂設し、該筒状の隔壁部材にて前記気体室を隔壁部材の内側の気体室C1と外側の気体室C2に区画し、前記インナチューブに第1の連通孔と、第2の連通孔と、第3の連通孔を軸方向に間隔を置いて形成し、フロントフォークの通常の荷重状態時に、前記第1の連通孔は前記上部ブッシュとサブピストンの間に位置し、前記第2の連通孔及び第3の連通孔はサブピストンの下方に位置し、気体室C1を油溜室Bの作動油、第2の連通孔及び第3の連通孔、隙間S1、第1の連通孔を介して気体室C2に連通し、更に前記通常の荷重状態時より圧縮した位置で、前記第1の連通孔は前記上部ブッシュにより隙間S1に対し塞がれて該上部ブッシュより上方に位置し、前記第2の連通孔及び第3の連通孔はサブピストンの下方に位置し、隙間S1を気体室C2に開口させず、気体室C1を気体室C2に連通させず、前記通常の荷重状態時より圧縮した荷重状態時より更に圧縮した位置で、前記第2の連通孔はサブピストンの上方に位置し、前記第3の連通孔はサブピストンの下方に位置し、気体室C1を油溜室Bの作動油、第3の連通孔、隙間S1、第2の連通孔を介して気体室C2に連通するようにしたものである。
【0008】
【作用】
本発明によれば下記の作用がある。
自動二輪車の直進走行時のような通常の荷重状態時には、インナチューブの第1の連通孔が、アウタチューブ内周に固定された上部ブッシュと隔壁部材の下端部外周に設けたサブピストンとの間に位置するので、隔壁部材内側の気体室は油溜室内の作動油を介して、第2と第3の連通孔、インナチューブ外周の環状の隙間、及び、第1の連通孔を介して、隔壁部材外側の気体室に連通する。従って、気体室の容積が大きいので、エア反力が小さく、通常の荷重状態時における路面振動の吸収性がよい。
【0009】
また、制動時のように、通常の荷重状態の位置から、さらにフロントフォークが大きく圧縮されると、第1の連通孔は上部ブッシュで塞がれ、インナチューブ外周の環状の隙間は外側の気体室に連通しなくなるので、隔壁部材内側と外側の気体室は連通しなくなる。したがって、内側の気体室の油面のみが上昇して内側の気体室が圧縮され大きなエア反力を発生し、車体前輪側の沈み込みを抑える。そして、第1の連通孔が上部ブッシュを超えて上方に移動しても内側の気体室がのみが圧縮される状態が続く。
【0010】
また、制動後の旋回(コーナリング)時のように、この状態からさらに圧縮されると、第2の連通孔が上部ブッシュとサブピストンとの間に位置するので、内側の気体室が油溜室の作動油を介し、第3の連通孔、インナチューブ外周の環状の隙間、第2の連通孔を通り、外側の気体室に連通する。内側の気体室のエア、作動油は2つの気体室が同圧となるまで流入し、内側の気体室の圧力上昇を抑える。従って、旋回時における路面振動の吸収性がよくなる。
【0011】
また旋回(コーナリング)中の加速時のように、フロントフォークが圧縮状態から伸張状態に移ると、旋回中に一旦内外の気体室が連通した状態から伸張するので、圧縮時よりもエア反力が小さくなる。また、伸長行程の途中で内側と外側の気体室が連通しなくなるストローク域では、内側の気体室が外側の気体室より圧力が小さくなるので、エア反力が小さくなり、フロントフォークの伸びを抑え接地性を向上できる。また、フロントフォークがアンダーステアになるのを阻止して旋回性を向上できる。
【0012】
また、上記いずれの状態時にも、フロントフォークの圧縮速度に関係なくストローク位置に依存してエア反力特性を変えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1はフロントフォークを示す断面図、図2は図1のフロントフォークの上部拡大断面図、図3は通常の荷重状態時における圧縮位置を示す模式図、図4は制動時の圧縮位置を示す模式図、図5は旋回(コーナリング)中の圧縮位置を示す模式図、図6はエア反力特性図、図7は図1、2の要部拡大図である。
【0014】
フロントフォーク10は、図1、2に示す如く、アウタチューブ1内に、インナチューブ2が摺動自在に挿入され、アウタチューブ1は上部ブラケット(不図示)を介し車体側に結合され、インナチューブ2は車軸ブラケット3を介し車軸側に結合される。アウタチューブ1の下部開口端の内周には、インナチューブ2の外周に摺接する下部ブッシュ4、オイルシール5、ダストシール6が固定され、アウタチューブ1の上部内周には、インナチューブ2の外周に摺接する上部ブッシュ7が固定される。そして、アウタチューブ1、インナチューブ2、及び、上下のブッシュ7、4の間に環状の隙間S1が形成される。
【0015】
また、インナチューブ2内の車軸ブラケット3の底部には、ダンパシリンダ8が立設され、ダンパシリンダ8の上部内周にロッドガイド11が螺着され、ロッドガイド11の内周に設けたブッシュ19を介して、先端部にピストン13を取り付けたピストンロッド12が摺動自在に挿入される。ピストンロッド12の基端部は、ロックナット14、ジョイントナット15、スプリングアジャスタ16を介しアウタチューブ1の上端部内周に螺着されたキャップ17内周に回転可能に取り付けられ、また、スプリングアジャスタ16の外周にはナット29が螺着固定され、キャップ17の下端面に当接してスプリングアジャスタ16の外方への抜け止めをしている。ロックナット14、ジョイントナット15、スプリングアジャスタ16は、後述するばね荷重調整機構18を構成する。 また、このスプリングアジャスタ16の内周には減衰力調整アジャスタ20が回転可能に設けられ、減衰力調整アジャスタ20は、後述する減衰力調整機構21を構成する。
【0016】
ダンパシリンダ8内の油室Aに挿通されるピストンロッド12の先端部には伸側減衰力発生装置22が設けられ、ダンパシリンダ8内の下部にはピストンロッド12の進入体積分の作動油に対し圧側減衰力を発生する圧側減衰力発生装置23が設けられるが、公知のものなので詳細な説明は省略する。ダンパシリンダ8、ピストンロッド12、伸側減衰力発生装置22、圧側減衰力発生装置23はダンパ装置を構成する。
【0017】
更に、このフロントフォーク10にあっては、インナチューブ2内の下部に作動油を封入して油溜室Bを形成し、油溜室Bの上部に油面L1を介して気体室Cを形成し、インナチューブ2内の下部油溜室Bは、ダンパシリンダ8の下部に設けた油孔24を介し、ダンパシリンダ8内の油室Aと連通している。フロントフォーク10の圧縮時には、ダンパシリンダ8内へ進入したピストンロッド12の体積分の作動油が油孔24を介してインナチューブ2内の下部油溜室B内に流入し、伸張時には、作動油は反対にダンパシリンダ8内に戻る。
【0018】
また、車軸ブラケット3の前部には、圧側減衰力発生装置23をバイパスする流路26、27を通る作動油の流量を調整する圧側減衰力調整装置30が設けられるが、公知のものなので詳細な説明は省略する。
【0019】
また、ダンパシリンダ8内に挿入されるピストンロッド12の伸側減衰力発生装置22側外周に、リバウンドスプリング31が設けられ、最伸張時にダンパシリンダ8の上端のストッパ32にこのリバウンドスプリング31が当接して緩衝作用をなす。
【0020】
また、ロッドガイド11の上端部に作動油の流路となる複数の切欠部11bが設けられ、ロッドガイド11の上端部には懸架スプリング9の下端を支持する下部ばね受け33が設けられる。
【0021】
ばね荷重調整機構18は、前述したスプリングアジャスタ16の外周にスライダ35が螺合され、スライダ35にはピン36が固定され、ピン36はキャップ17の下部に軸方向に延設する部分に形成された長穴17aに係合する。スライダ35の下端は後述する筒状の隔壁部材37に当接し、筒状の隔壁部材37の下端外周にはインナチューブ2の内周に摺接するサブピストン40が設けられ、サブピストン40は懸架スプリング9の上端部を支持する。
【0022】
スプリングアジャスタ16を回転すると、ジョイントナット15、ロックナット14、及び、ピストンロッド12が一体に回転し、また、スプリングアジャスタ16の外周に螺合するスライダ35がキャップ17の長穴17aに回り止めされて軸方向に進退し、筒状の隔壁部材37を介して懸架スプリング9のばね荷重を調整する。懸架スプリング9は、アウタチューブ1、キャップ17、ピストンロッド12等のアウタチューブ側部材と、インナチューブ2、車軸ブラケット3、ダンパシリンダ8等のインナチューブ側部材を伸張方向に付勢する。
【0023】
スプリングアジャスタ16の内周には、減衰力調整アジャスタ20が回転可能に設けられ、この減衰力調整アジャスタ20は減衰力調整ロッド28を上下動し、ピストン13の両側の油室の開口面積を調整する。 減衰力調整アジャスタ20の内周には上部気体室Cに連通し、気体を封入するエアバルブ41が設けられる。キャップ17の外周、スプリングアジャスタ16の外周、減衰力調整アジャスタ20の外周、エアバルブ41の外周にはそれぞれOリングが設けられ、それぞれアウタチューブ1内の気体室Cを密封する。
【0024】
前述した筒状の隔壁部材37の上端部内周はOリング42を介してジョイントナット15の外周に気密に保持され、隔壁部材37は、アウタチューブ1側の上端部から垂設される。隔壁部材37の下端部外周にはサブピストン40が固定され、このサブピストン40はアウタチューブ1の内周に固定された上部ブッシュ7の下方に位置する。そして、サブピストン40の外周の環状溝内には、インナチューブ2内周に摺接するピストンリング43が介装される。隔壁部材37は、アウタチューブ1とインナチューブ2内の上部気体室Cを、隔壁部材37の内側の気体室C1と外側の気体室C2に区画する。尚、サブピストン40は筒状の隔壁部材37に一体に形成されても良い。
【0025】
フォロントフォーク10の圧縮時に、隔壁部材37の内側の気体室C1と外側の気体室C2が後述する連通孔45、46を介して連通していない状態では、内側の気体室C1は、圧縮ストロークにインナチューブ2の内周の断面積を掛けた容積分だけ縮小するとともに、更に、ダンパシリンダ8内に進入したピストンロッド12の容積分の作動油が油溜室Bに流れて油溜室Bの油面が上昇することも加わり、内側の気体室C1の容積が大きく縮小されるのに対し、外側の気体室C2はインナチューブ2の進入分だけ容積が縮小し、外側の気体室C2の容積変化は極めて小さい。従って、隔壁部材37の内側の気体室C1の方が、外側の気体室C2より、圧縮比率が大きい。また、隔壁部材37の内側の気体室C1と外側の気体室C2は、最伸長時に同圧となるように内外2つの気体室C1、C2の圧力が設定される。隔壁部材37の内側の気体室C1の圧力は、図2に示す如く、ピストンロッド12の外周とインナチューブ2の内周の環状の断面積A1に作用し、隔壁部材37の外側の気体室C2の圧力はインナチューブ2の断面積A2に作用する。
【0026】
また、インナチューブ2には、第1の連通孔45と、第2の連通孔46と、第3の連通孔47を軸方向に間隔を置いて形成されている。そして、第1の連通孔45は、フロントフォーク10の通常の荷重状態時に、アウタチューブ1の内周に固定された上部ブッシュ7と隔壁部材37の下端部に設けたサブピストン40の間に位置し、第2の連通孔46は通常の荷重状態時より更に圧縮した位置で上部ブッシュ7とサブピストン40の間に位置し、第3の連通孔47はいずれの圧縮位置においてもサブピストン40の下方に位置するように設けられる。
【0027】
第1の連通孔45および第2の連通孔46は、フロントフォーク10のストローク位置に応じて、サブピストン40と上部ブッシュ7の間に位置して、隔壁部材37の外側の気体室C2に開口し、アウタチューブ1とインナチューブ2の間の環状の隙間S1とインナチューブ2の第3の連通孔47を介して、隔壁部材37の内側と外側の気体室C1、C2を連通する。
【0028】
次に、上述したフロントフォーク10は以下のように作用する。
(圧縮時)
圧縮時には、アウタチューブ1に対しインナチューブ2が上動し、懸架スプリング9を圧縮するとともにフロントフォーク10内の下部油溜室Bの油面が上昇し、フロントフォーク内上部の気体室Cが圧縮され、懸架スプリング9のばね反力と上部気体室Cのエア反力との合成ばね反力を発生し、路面からの振動を吸収する。また、ダンパシリンダ8内の圧側減衰力発生装置23が圧側の減衰力を発生して圧縮速度をコントロールする。
【0029】
図1、図3は、自動二輪車の直進走行時におけるアウタチューブ1に対するインナチューブ2の圧縮位置を示し、この直進走行時には、フロントフォーク10にはライダーの荷重分だけの通常の荷重が作用する。インナチューブ2に形成した第1の連通孔45はサブピストン40とアウタチューブ1の内周に固定された上部ブッシュ7の間に位置する。この圧縮位置では油溜室B内の作動油の油面L1が上昇して、隔壁部材37の内側の気体室C1が圧縮され、そして、気体室C1は油溜室Bの作動油を介して、インナチューブ2に形成した第2の連通孔46および第3の連通孔47、アウタチューブ1とインナチューブ2との間に上下のブッシュ7、4に囲まれて形成される環状の隙間S1、そして、第1の連通孔45を有して隔壁部材外側の気体室C2に連通するので、気体室の容積は内側と外側の気体室C1とC2を足した容積となって、エア反力は小さく、内外の気体室C1、C2は同圧に近い状態である。従って、路面振動の吸収性がよい。図6はエア反力特性を示す図で、破線のP1曲線は内側の気体室C1のみのエア反力特性を示し、破線のP2曲線は内側と外側の気体室C1、C2を足した場合のエア反力特性を示す。そして、実線部分がこのフロントフォーク10のエア反力特性を示す。この通常の荷重状態の圧縮時のエア反力特性はST0からST1まで破線P2に沿って上昇する。
【0030】
コーナーに入る手前で、ブレーキをかけて減速すると、車体側荷重が前輪側に移動し、フロントフォーク10が高速で大きく圧縮される。このブレーキング時には、図4に示すように、第1の連通孔45が上部ブッシュ7で塞がれ環状の隙間S1は外側の気体室C2に開口しなくなり、内側の気体室C1と外側の気体室C2は連通しなくなる。そして、内側の気体室C1の油面L2のみが上昇し、内側の気体室C1の方が外側の気体室C2より大きく圧縮される。従って、エア反力が大きくなって前輪側の沈み込みを抑える。第1の連通孔45が上部ブッシュ7で塞がれた以降は、第2の連通孔46がサブピストン40の外周より上に移動して外側の気体室C2に開口する迄は内側の気体室C1のみが圧縮され大きなエア反力を発生する。この状態時のエア反力特性は、図6のST1からST2までの実線で示される。
【0031】
コーナーを旋回中には、車体に遠心力が作用し、フロントフォーク10はさらに沈み込む。図5に示すように、この状態の圧縮時には第2の連通孔46がサブピストン40と上部ブッシュ7との間に位置し、内側の気体室C1の作動油および気体は、第3の連通孔47、環状の隙間S1、第2の連通孔46を通り外側の気体室C2に、外側の気体室C2の圧力が内側の気体室C1と同圧になるまで流入し、気体室C1の容積が大きくなってエア反力の上昇が抑えられる。図5において、このときの内側の気体室C1の油面はL3で、外側の気体室C2にも作動油が流入し始める。したがって、コーナリング中における路面振動の吸収性がよい。この状態時のエア反力特性は、図6中のST2からST3の実線で示される。
【0032】
(伸張時)
伸張時には、アウタチューブ1に対しインナチューブ2が相対的に下動し、懸架スプリング9が伸張するとともにフロントフォーク10内の下部油溜室Bの油面が下がり、フロントフォーク10内の上部の気体室Cが拡大する。また、ダンパシリンダ8内の伸側減衰力発生装置22が伸側の減衰力を発生して懸架スプリング9の共振を抑制する。
【0033】
コーナリング中の沈み込んだ状態から加速して、次の直進走行に移る場合、車体側の荷重は後輪側に移動してフロントフォーク10は伸張する。この伸張時には内側と外側の気体室C1、C2は連通状態にあり、内側と外側の気体室C1、C2は連通した状態から伸張を始めるので、図6に示す如く、破線P2に沿って下降し、エア反力は圧縮時のエア反力よりも小さくなる。図6の実線部分ST3からST2はこの状態時におけるエア反力特性を示す。
【0034】
更に伸張して第2の連通孔46がサブピストン40の外周より下に移動すると、内側の気体室C1と外側の気体室C2は連通しなくなるので、内側の気体室C1が外側の気体室C2より圧力が小さくなり、フロントフォーク10の伸び(浮き上がり)が小さくなり、前輪がアンダーステアになるのを阻止して旋回性を向上し、また、前輪の接地性を確保する。図6の実線部分ST2からST1はこの伸長状態時におけるエア反力特性を示す。
【0035】
そして、第1の連通孔45が上部ブッシュ7の下端部より下に移動すると、内側の気体室C1と外側の気体室C2が連通するので、内側の気体室C1と外側の気体室C2が連通し、内側と外側の気体室C2は圧縮開始時の同圧状態に戻り反力が回復する。図6のST1からST0はこの状態時におけるエア反力特性を示す。
【0036】
尚、本発明では、フロントフォーク10内のダンパ装置や油溜室Bは必ずしも必要ではなく、エアーのみを封入したフロントフォークであっても良く、また、フロントフォークに限らず、車体側に取り付けられるアウタチューブ内に車輪側に取り付けられるインナチューブが摺動自在に挿入されるエアーサスペンションであっても良い。
【0037】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、一定以上の圧縮した位置以降のエア反力の上昇を抑えることができ、伸長行程時にフロントフォークのエア反力を圧縮行程より小さくすることができる。また、フロントフォークの圧縮速度に関係なくストローク位置に依存してエア反力を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はフロントフォークを示す断面図である。
【図2】図2は図1のフロントフォークの上部拡大断面図である。
【図3】図3は通常の荷重状態時における圧縮位置を示す模式図である。
【図4】図4は制動時の圧縮位置を示す模式図である。
【図5】図5はコーナリング中の圧縮位置を示す模式図である。
【図6】図6はエア反力特性図である。
【図7】図7は図1、図2の要部拡大図である。
【符号の説明】
1 アウタチューブ
2 インナチューブ
4 下部ブッシュ
7 上部ブッシュ
37 隔壁部材
40 サブピストン
45 第1の連通孔
46 第2の連通孔
47 第3の連通孔
C1 内側の気体室
C2 外側の気体室
S1 環状の隙間
Claims (1)
- 車体側に取り付けられるアウタチューブの内周に固定された上下のブッシュを介して、車軸側に取り付けられるインナチューブを摺動自在に挿入し、
アウタチューブ、インナチューブ、及び、上下のブッシュの間に環状の隙間S1を形成し、
アウタチューブとインナチューブ内の下部に油溜室Bを上部に気体室を形成したフロントフォークにおいて、
前記アウタチューブ内周に固定された上部ブッシュの下方に位置し、前記インナチューブ内周に摺接するサブピストンを下端部に設けた筒状の隔壁部材を、前記アウタチューブ側の上端部からインナチューブ内に垂設し、
該筒状の隔壁部材にて前記気体室を隔壁部材の内側の気体室C1と外側の気体室C2に区画し、
前記インナチューブに第1の連通孔と、第2の連通孔と、第3の連通孔を軸方向に間隔を置いて形成し、
フロントフォークの通常の荷重状態時に、前記第1の連通孔は前記上部ブッシュとサブピストンの間に位置し、前記第2の連通孔及び第3の連通孔はサブピストンの下方に位置し、気体室C1を油溜室Bの作動油、第2の連通孔及び第3の連通孔、隙間S1、第1の連通孔を介して気体室C2に連通し、
更に前記通常の荷重状態時より圧縮した位置で、前記第1の連通孔は前記上部ブッシュにより隙間S1に対し塞がれて該上部ブッシュより上方に位置し、前記第2の連通孔及び第3の連通孔はサブピストンの下方に位置し、隙間S1を気体室C2に開口させず、気体室C1を気体室C2に連通させず、
前記通常の荷重状態時より圧縮した荷重状態時より更に圧縮した位置で、前記第2の連通孔はサブピストンの上方に位置し、前記第3の連通孔はサブピストンの下方に位置し、気体室C1を油溜室Bの作動油、第3の連通孔、隙間S1、第2の連通孔を介して気体室C2に連通することを特徴とするフロントフォーク。
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