JP4999814B2 - 車両の油圧緩衝器 - Google Patents

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Description

本発明は車両用の油圧緩衝器に関する。
アウタチューブの内周の上下にブッシュを固定し、インナチューブをアウタチューブの内周に上下のブッシュを介して摺動自在に嵌合した油圧緩衝器において、アウタチューブの内周とインナチューブの外周と上下のブッシュで囲まれる環状の油室によってピストンロッドの進入/退出分の体積補償室を構成する車両用の油圧緩衝器として、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1に記載の油圧緩衝器は、車体側に取付けられるアウタチューブの内周の上下に間隔をおいてブッシュを固定し、車軸側に取付けられるインナチューブを該アウタチューブの内周に該上下のブッシュを介して摺動自在に嵌合し、該アウタチューブの内周と、該インナチューブの外周と、該上下のブッシュの間に環状の油室を形成し、インナチューブの内周に、アウタチューブの側に取付けたピストンロッドを案内するロッドガイドを設け、該ロッドガイドの下部とインナチューブ内周との間に、ピストンロッドの先端部に設けたピストンが摺動する作動油室を設け、該作動油室を該ピストンロッドが収容されるピストンロッド側油室と該ピストンロッドが収容されないピストン側油室に区画するとともに、ロッドガイドの上部に油室と気体室からなる油溜室を設けた車両の油圧緩衝器において、インナチューブの外周に前記環状の油室を上下の環状油室に区画する隔壁部材を設けるとともに、インナチューブに、該下環状油室をピストンロッド側油室に常時連通する油孔と、該上環状油室を前記油溜室に常時連通する油孔を設け、下環状油室の断面積をピストンロッドの断面積に対し同等以上に形成し、ロッドガイドに、ピストンロッド側油室から前記油溜室への流れを阻止するチェック弁を設けるとともに、ピストンロッド側油室と前記油溜室を連通する微小流路を設けたものである。これにより、下環状油室は、油圧緩衝器の伸縮に伴なって容積を変化し、圧縮時には拡大してピストンロッドの進入分の作動油をピストンロッド側油室からインナチューブの油孔を介して吸収し、伸長時には縮小してピストンロッドの退出分の作動油をインナチューブの油孔を介してピストンロッド側油室に補給し、ピストンロッドの進入/退出分の体積補償室を構成する。
特開2004-68839
特許文献1に記載の油圧緩衝器では、インナチューブの外周に、上下の環状油室を区画するためのピストンリング等の隔壁部材を設けることから、以下の問題点がある。
(1)油圧緩衝器において、インナチューブの下端部の車軸支持部に作用する横力を、アウタチューブの上下のブッシュにより支持するときに、インナチューブの上ブッシュに支持されている部分よりも下端側で上記横力の曲げが作用する部分の外周に隔壁部材を設ける溝を加工する必要がある。インナチューブの上記溝が加工される部分は、上記横力の曲げに耐えるだけの強度を確保する必要があり、厚肉にする必要がある。油圧緩衝器の軽量化の妨げになる。
(2)油圧緩衝器の分解に際し、インナチューブをアウタチューブから引き抜こうとするとき、インナチューブの外周の隔壁部材に干渉するアウタチューブの下ブッシュを取り外す必要があり、極めて困難である。
本発明の課題は、インナチューブをアウタチューブの内周の上下に固定したブッシュに摺動自在する油圧緩衝器において、インナチューブの強度及び分解性を確保しながら、ピストンロッドの進入/退出分の体積補償室を構成することにある。
請求項1の発明は、車体側に取付けられるアウタチューブの内周の上下に間隔をおいてブッシュを固定し、車軸側に取付けられるインナチューブを該アウタチューブの内周に該上下のブッシュを介して摺動自在に嵌合し、前記インナチューブの内周に、前記アウタチューブの側に取付けたピストンロッドを案内するロッドガイドを設け、該ロッドガイドの下部と前記インナチューブ内周との間に、前記ピストンロッドの先端部に設けたピストンが摺動する作動油室を設け、該作動油室を該ピストンロッドが収容されるピストンロッド側油室と該ピストンロッドが収容されないピストン側油室に区画するとともに、前記ロッドガイドの上部に油室と気体室からなる油溜室を設けた車両の油圧緩衝器において、前記ロッドガイドに、前記アウタチューブの内周に摺動する摺動部材を設け、前記ロッドガイドの摺動部材と、前記アウタチューブの上ブッシュと、前記アウタチューブの内周と、前記インナチューブの外周の間に環状油室を形成し、前記インナチューブに、上記環状油室を前記ピストンロッド側油室に常時連通する油孔を設け、前記環状油室の断面積を前記ピストンロッドの断面積に対し同等以上に形成し、前記ロッドガイドに、前記ピストンロッド側油室から前記油溜室への流れを阻止するチェック弁を設けるとともに、前記ピストンロッド側油室と前記油溜室を連通する微小流路を設けたものである。
(請求項1)
(a)ロッドガイドに、アウタチューブの内周に摺動する摺動部材を設け、ロッドガイドの摺動部材と、アウタチューブの上ブッシュと、アウタチューブの内周と、インナチューブの外周の間に環状油室を形成し、インナチューブに、環状油室をピストンロッド側油室に常時連通する油孔を設け、環状油室の断面積S1をピストンロッドの断面積S2に対し同等以上に形成する。従って、環状油室は、油圧緩衝器の伸縮に伴なって容積を変化し、圧縮時には拡大してピストンロッドの進入分の作動油をピストンロッド側油室からインナチューブの油孔を介して吸収し、伸長時には縮小してピストンロッドの退出分の作動油をインナチューブの油孔を介してピストンロッド側油室に補給し、ピストンロッドの進入/退出分の体積補償室を構成する。
(b)インナチューブをアウタチューブの内周に上下のブッシュを介して摺動自在にする。従って、アウタチューブの内周の面粗度を上げる必要がなく、コスト低減できる。
(c)圧側行程で、インナチューブに進入するピストンロッドの進入容積分の油がインナチューブのピストンロッド側油室から油孔を介して環状油室に移送されるに際し、環状油室の容積増加分ΔS1(必要補給量)のうちの不足分(ΔS1−ΔS2)が油溜室からチェック弁を介して補給される。
伸側行程で、インナチューブから退出するピストンロッドの退出容積分の油が環状油室から油孔を介してインナチューブのピストンロッド側油室に移送されるに際し、環状油室の容積減少分ΔS1(総排出量)のうちの余剰分(ΔS1−ΔS2)が微小流路を介して油溜室へ排出される。
(d)インナチューブの内部の油の温度変化による容積変化量も、チェック弁が形成する流路、微小流路を介して油溜室に排出し、又は油溜室から補給して補償できる。
図1は油圧緩衝器の全体を示す断面図、図2は図1の下部断面図、図3は図1の中間部断面図、図4は図1の上部断面図、図5は油圧緩衝器を示す模式図である。
(実施例1)(図1〜図5)
フロントフォーク(油圧緩衝器)10は、アウタチューブ11を車体側に、インナチューブ12を車輪側に配置する倒立型フロントフォークであり、図1〜図5に示す如く、アウタチューブ11の下端開口部の内周と上端側の内周に、互いに間隔をおいてブッシュ11A、11Bを固定し、インナチューブ12をアウタチューブ11の内周に上下のブッシュ11A、11Bを介して摺動自在に嵌合する。11Cはオイルシール、11Dはダストシールである。アウタチューブ11の上端開口部にはキャップ13が液密に螺着され、アウタチューブ11の外周には車体側取付部材14A、14B(不図示)が設けられる。インナチューブ12の下端開口部には車軸ブラケット15が液密に挿着されて螺着されてインナチューブ12の底部を構成し、車軸ブラケット15には車軸取付孔16が設けられる。インナチューブ12の下端部と車軸ブラケット15の内周段差部との間には、それらに液密に挿着されるシールリング17が挟着される。
フロントフォーク10は、インナチューブ12の上端部に有底筒状のロッドガイド19を設けている。ロッドガイド19は、インアチューブ12の上端側に取着される筒状部19Aと、筒状部19Aの底部を構成する隔壁部19Bからなる。ロッドガイド19は、筒状部19Aの上端側ねじ部をインナチューブ12の上端側内周に螺着されるとともに、筒状部19Aにおけるインナチューブ12の上端面よりも突き出る突出上端部と上端側ねじ部の境界の外周段差面をインナチューブ12の上端面に突き当てるようにして両者を一体固定化している。ロッドガイド19は、筒状部19Aの上端側ねじ部より下の部分を、インナチューブ12の内周に環状間隙(後述するピストンロッド側油室21Aの一部になる)を介して、インナチューブ12の内部に挿入される。
フロントフォーク10は、ロッドガイド19の隔壁部19Bの下部のインナチューブ12の内部に作動油室21を区画するとともに、隔壁部19Bの上部に油溜室22を区画する。油溜室22の中でその下側領域は油室22A、上側領域は空気室22Bである(図4のLは油面を示す)。空気室22Bは常にフロントフォーク10の空気ばねを構成する。
フロントフォーク10は、アウタチューブ11に取付けたピストンロッド23(ピストン支持部材)をロッドガイド19の隔壁部19Bに摺動自在に貫通して作動油室21に挿入する。具体的には、キャップ13の中心部の下端部に螺着した取付カラー24に中空ピストンロッド23を螺着し、これをロックナット24Aで固定する。
フロントフォーク10は、ロッドガイド19の隔壁部19Bからインナチューブ12に挿入したピストンロッド23の先端部に螺着したピストンボルト25に、インナチューブ12の内周に摺接するピストン26を固定し、前記油室21をピストンロッド23が収容されるピストンロッド側油室21Aと、ピストンロッド23が収容されないピストン側油室21Bに区画する。ピストン26はナット27により固定される。
フロントフォーク10は、ロッドガイド19の筒状部19Aにおけるインナチューブ12の上端面よりも突き出る突出上端部の外周に設けた環状溝に、アウタチューブ11の内周に摺動するピストンリング等の摺動部材20を設けてある。そして、ロッドガイド19の摺動部材20と、アウタチューブ11の上ブッシュ11Bと、アウタチューブ11の内周と、インナチューブ12の外周の間に環状油室28を区画して形成し、インナチューブ12に、環状油室28をピストンロッド側油室21Aに常時連通する油孔29を設ける。環状油室28の下端部は上ブッシュ11Bにより下ブッシュ11Aの側に対してシールされ、環状油室28の上端部は摺動部材20により油溜室22に対してシールされる。
フロントフォーク10にあっては、アウタチューブ11とインナチューブ12の環状隙間からなる前記環状油室28の断面積S1を、ピストンロッド23の断面積(外径に囲まれる面積)S2より大きく形成している(S1>S2)。
フロントフォーク10は、ピストン26のピストン側油室21Bに臨む下端面に上ばね受け31を衝合し、車軸ブラケット15が形成するインナチューブ12の底部に下ばね受け32を配置し、上ばね受け31と下ばね受け32の間に懸架スプリング33を介装している。フロントフォーク10は、車両走行時に路面から受ける衝撃力を懸架スプリング33の伸縮振動により吸収する。このとき、後述するばね荷重調整装置80が下ばね受け32を昇降し、懸架スプリング33のばね荷重を調整可能にする。
フロントフォーク10は、ピストン26に減衰力発生装置40を備える(図3)。
減衰力発生装置40は、圧側流路41と伸側流路42(不図示)を備える。圧側流路41は、バルブストッパ41Bにバックアップされる圧側ディスクバルブ41A(圧側減衰バルブ)により開閉される。伸側流路42は、バルブストッパ42Bにバックアップされる伸側ディスクバルブ42A(伸側減衰バルブ)により開閉される。尚、バルブストッパ41B、バルブ41A、ピストン26、バルブ42A、バルブストッパ42Bは、ピストンボルト25に挿着されるバルブ組立体を構成し、ピストンボルト25に螺着されるナット27に挟まれて固定される。
減衰力発生装置40は、キャップ13の中心部に後に詳述する減衰力調整装置40Aを設け、減衰力調整装置40Aのニードル弁71Aをピストンロッド23の中空部に挿入し、ピストンロッド23に設けたバイパス路45の開度をニードル弁71Aの上下動により調整する。バイパス路45は、ピストン26をバイパスし、ピストンロッド側油室21Aとピストン側油室21Bを連絡する。
減衰力発生装置40は、圧側行程では、低速域で、ニードル弁71Aにより開度調整されたバイパス路45の通路抵抗により圧側減衰力を発生し、中高速域で、圧側ディスクバルブ41Aの撓み変形により圧側減衰力を発生する。また、伸側行程では、低速域で、ニードル弁71Aにより開度調整されたバイパス路45の通路抵抗により伸側減衰力を発生し、中高速域で、伸側ディスクバルブ42Aの撓み変形により伸側減衰力を発生する。この圧側減衰力と伸側減衰力により、前述した懸架スプリング33の伸縮振動を制振する。
フロントフォーク10は、キャップ13の下端面に、インナチューブ12に設けたロッドガイド19の上端部が最圧縮ストロークで衝合するストッパラバー13A、ストッパ板13Bを固着しており、このストッパラバー13Aによって最圧縮ストロークを規制する。
フロントフォーク10は、インナチューブ12の上端側のロッドガイド19のピストンロッド側油室21Aに臨む下端部に止め輪51Aを用いて固定したスプリングシート51と、ピストンロッド23に設けたストッパリング52Aに係止させたスプリングシート52との間にリバウンドスプリング53を介装してある。フロントフォーク10の最伸長時に、ロッドガイド19がリバウンドスプリング53をスプリングシート52との間で加圧することにより、最伸長ストロークを規制する。
フロントフォーク10は、ロッドガイド19の隔壁部19Bに、作動油室21と油溜室22との間で油を給排可能にする給排手段を以下の如くに設けている。即ち、ロッドガイド19の隔壁部19Bに、圧側行程では油溜室22からピストンロッド側油室21Aへの油の流れを許容し、伸側行程ではピストンロッド側油室21Aから油溜室22への油の流れを阻止するチェック弁60を設けている。ロッドガイド19の隔壁部19Bの内周にはバルブ室61が設けられ、バルブ室61の上端側の段差部61Aと、バルブ室61の下端側に設けられた前述のスプリングシート51上のバックアップスプリング62との間にチェック弁60のフランジ部が挟持されて収容される。チェック弁60のフランジ部は、段差部61Aとスプリングシート51の間隔より短尺とされる。チェック弁60は、ロッドガイド19の隔壁部19Bに設けたバルブ室61の内周に上下変位可能に設けられる。チェック弁60の外周は、ロッドガイド19の隔壁部19Bに設けたバルブ室61の内周との間に、油溜室22からピストンロッド側油室21Aへの油の流れを許容する流路を形成する。チェック弁60は、ピストンロッド23を摺動自在に支持するブッシュ63をその内周に圧入されて備える。圧側行程では、チェック弁60はインナチューブ12に進入するピストンロッド23に連れ移動して下方に移動し、スプリングシート51の側に変位するとともに、段差部61Aとの間に隙間を形成し、油溜室22の油をその外周経由で段差部61Aとの隙間を通ってピストンロッド側油室21Aへ流入可能とする。伸側行程では、チェック弁60はインナチューブ12から退出するピストンロッド23に連れ移動して上方に移動し、段差部61Aに衝合して該段差部61Aとの間の隙間を閉じ、ピストンロッド側油室21Aの油が上述した圧側行程の逆経路で油溜室22へ排出されることを阻止する。
微小流路64は、ロッドガイド19の筒状部19A(隔壁部19Bでも可)に穿設され、ピストンロッド側油室21Aと油溜室22を連通するオリフィスにより構成する。また、ロッドガイド19の隔壁部19Bはピストンロッド23の周囲にオイルシールを封着していないから、チェック弁60の内周に圧入してあるブッシュ63がピストンロッド23の周囲に形成する微小間隙(又はチェック弁60が段差部61Aとの間に形成する微小間隙)により、ピストンロッド側油室21Aと油溜室22を連通する微小流路を構成するものでも良い。
以下、減衰力調整装置40Aについて説明する。
減衰力調整装置40Aは、図3に示す如く、ピストンロッド23の中空部に回転方向及び軸方向に移動自在な非円形断面、本実施例ではD形断面の唯1本のプッシュロッド70を設け、プッシュロッド70を回転方向に移動させる第1調整部71と、プッシュロッド70を軸方向に移動させる第2調整部72を、フロントフォーク10の上部、かつプッシュロッド70の延長上に同軸配置する。そして、減衰力調整装置40Aは、プッシュロッド70の非円形断面内に摺動自在に係入するニードル弁71Aをピストンロッド23の中空部に螺合し、第1調整部71の回転によりニードル弁71Aを螺動させ、このニードル弁71Aによりバイパス路45の開度を調整し、ひいてはバイパス路45の通路抵抗による減衰力を調整可能にする。また、減衰力調整装置40Aは、第2調整部72の回転によりプッシュロッド70を軸方向に移動させ、このプッシュロッド70と軸方向に衝合するスプリング72Aにより、圧側ディスクバルブ41Aを閉じ方向にて該圧側ディスクバルブ41Aを付勢し、圧側ディスクバルブ41Aの撓み変形による圧側減衰力を調整可能にする。尚、減衰力調整装置40Aの減衰力調整構造の詳細は、特願2006-177358に記載の通りである。
次に、下ばね受け32を昇降し、懸架スプリング33のばね荷重を調整するばね荷重調整装置80について説明する。
ばね荷重調整装置80は、図2に示す如く、インナチューブ12の底部を構成する車軸ブラケット15の車軸取付孔16を外れる位置(車軸取付孔16の側傍)で外部に臨むアジャストボルト81を該底部に設ける。車軸ブラケット15の内側底部(下ばね受け32の下端部を臨むことになる面)に設けたスライダ82をアジャストボルト81の回転力によりインナチューブ12の中心軸に交差する方向(アジャストボルト81の軸方向)に直線移動可能にする。下ばね受け32の下部斜面A1をスライダ82の上部斜面A2に載置させ、アジャストボルト81の回転により下ばね受け32を昇降させて懸架スプリング33のばね荷重を調整する。尚、ばね荷重調整装置80のばね荷重調整構造の詳細は、特願2006-177358に記載の通りである。
フロントフォーク10の動作は以下の如くになる。
(圧側行程)
圧側行程でインナチューブ12に進入するピストンロッド23の進入容積分の作動油がインナチューブ12の内周のピストンロッド側油室21Aからインナチューブ12の油孔29を介して環状油室28に移送される。このとき、環状油室28の容積増加分ΔS1(補給量)がピストンロッド23の容積増加分ΔS2より大きいから、環状油室28への油の必要補給量のうち、(ΔS1−ΔS2)の不足分が油溜室22からチェック弁60を介して補給される。
この圧側行程では、前述した通り、低速域で、ニードル弁71Aにより開度調整されたバイパス路45の通路抵抗により圧側減衰力を発生し、中高速域で、圧側ディスクバルブ41Aの撓み変形により圧側減衰力を発生する。
(伸側行程)
伸側行程でインナチューブ12から退出するピストンロッド23の退出容積分の作動油が環状油室28からインナチューブ12の油孔29を介してインナチューブ12の内周の油室21Aに移送される。このとき、環状油室28の容積減少分ΔS1(排出量)がピストンロッド23の容積減少分ΔS2より大きいから、環状油室28からの油の排出量のうち、(ΔS1−ΔS2)の余剰分が微小流路64を介して油溜室22へ排出される。
この伸側行程では、前述した通り、低速域で、ニードル弁71Aにより開度調整されたバイパス路45の通路抵抗により伸側減衰力を発生し、中高速域で、伸側ディスクバルブ42Aの撓み変形により伸側減衰力を発生する。また、上述の微小流路64の通路抵抗による伸側減衰力も発生する。
本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)ロッドガイド19に、アウタチューブ11の内周に摺動する摺動部材20を設け、ロッドガイド19の摺動部材20と、アウタチューブ11の上ブッシュ11Bと、アウタチューブ11の内周と、インナチューブ12の外周の間に環状油室28を形成し、インナチューブ12に、環状油室28をピストンロッド側油室21Aに常時連通する油孔29を設け、環状油室28の断面積S1をピストンロッド23の断面積S2に対し同等以上に形成する。従って、環状油室28は、フロントフォーク10の伸縮に伴なって容積を変化し、圧縮時には拡大してピストンロッド23の進入分の作動油をピストンロッド側油室21Aからインナチューブ12の油孔29を介して吸収し、伸長時には縮小してピストンロッド23の退出分の作動油をインナチューブ12の油孔29を介してピストンロッド側油室21Aに補給し、ピストンロッド23の進入/退出分の体積補償室を構成する。
(b)インナチューブ12をアウタチューブ11の内周に上下のブッシュ11A、11Bを介して摺動自在にする。従って、アウタチューブ11の内周の面粗度を上げる必要がなく、コスト低減できる。
(c)圧側行程で、インナチューブ12に進入するピストンロッド23の進入容積分の油がインナチューブ12のピストンロッド側油室21Aから油孔29を介して環状油室28に移送されるに際し、環状油室28の容積増加分ΔS1(必要補給量)のうちの不足分(ΔS1−ΔS2)が油溜室22からチェック弁を介して補給される。
伸側行程で、インナチューブ12から退出するピストンロッド23の退出容積分の油が環状油室28から油孔29を介してインナチューブ12のピストンロッド側油室21Aに移送されるに際し、環状油室28の容積減少分ΔS1(総排出量)のうちの余剰分(ΔS1−ΔS2)が微小流路を介して油溜室22へ排出される。
(d)インナチューブ12の内部の油の温度変化による容積変化量も、チェック弁60が形成する流路、微小流路64を介して油溜室22に排出し、又は油溜室22から補給して補償できる。
また、環状油室28の断面積S1をピストンロッド23の断面積S2と同等にせずに、より大きくする場合には、更に以下の作用がある。
(e)環状油室28の断面積S1をピストンロッド23の断面積S2より大きくするものであり、S1とS2を略等しくするものに比して、アウタチューブ11とインナチューブ12の環状隙間の設定に繊細を必要としない。従って、アウタチューブ11とインナチューブ12の加工寸法公差によりインナチューブ12の内部の圧力条件が変化する如くがない。
(f)前述(e)により、同一外径のピストンロッド23を用いた場合、インナチューブ12が大径になっても、アウタチューブ11とインナチューブ12の環状隙間を必ずしも狭くする必要がなく、設計に制約を与えない。
(g)前述(e)により、アウタチューブ11とインナチューブ12の環状隙間を一定にした場合、インナチューブ12が大径になってもピストンロッド23の外径を必ずしも大きくする必要がなく、ピストンロッド23の部品共通化を図ることができる。
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
図1は油圧緩衝器の全体を示す断面図である。 図2は図1の下部断面図である。 図3は図1の中間部断面図である。 図4は図1の上部断面図である。 図5は油圧緩衝器を示す模式図である。
符号の説明
10 フロントフォーク(油圧緩衝器)
11 アウタチューブ
11A、11B ブッシュ
12 インナチューブ
19 ロッドガイド
20 摺動部材
21 作動油室
21A ピストンロッド側油室
21B ピストン側油室
22 油溜室
22A 油室
22B 空気室(気体室)
23 ピストンロッド
26 ピストン
28 環状油室
29 油孔
60 チェック弁
64 微小流路

Claims (1)

  1. 車体側に取付けられるアウタチューブの内周の上下に間隔をおいてブッシュを固定し、車軸側に取付けられるインナチューブを該アウタチューブの内周に該上下のブッシュを介して摺動自在に嵌合し、
    前記インナチューブの内周に、前記アウタチューブの側に取付けたピストンロッドを案内するロッドガイドを設け、該ロッドガイドの下部と前記インナチューブ内周との間に、前記ピストンロッドの先端部に設けたピストンが摺動する作動油室を設け、該作動油室を該ピストンロッドが収容されるピストンロッド側油室と該ピストンロッドが収容されないピストン側油室に区画するとともに、前記ロッドガイドの上部に油室と気体室からなる油溜室を設けた車両の油圧緩衝器において、
    前記ロッドガイドに、前記アウタチューブの内周に摺動する摺動部材を設け、
    前記ロッドガイドの摺動部材と、前記アウタチューブの上ブッシュと、前記アウタチューブの内周と、前記インナチューブの外周の間に環状油室を形成し、
    前記インナチューブに、上記環状油室を前記ピストンロッド側油室に常時連通する油孔を設け、
    前記環状油室の断面積を前記ピストンロッドの断面積に対し同等以上に形成し、
    前記ロッドガイドに、前記ピストンロッド側油室から前記油溜室への流れを阻止するチェック弁を設けるとともに、前記ピストンロッド側油室と前記油溜室を連通する微小流路を設けたことを特徴とする車両の油圧緩衝器。
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