JP4451991B2 - 曝気装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は曝気方法および曝気装置に関し、特に、被処理液体に曝気処理を施すことにより被処理液体中の曝気処理(可溶化処理)を促進するための曝気方法および曝気装置に関する。
【0002】
【従来の技術、背景および発明が解決しようとする課題】
初めに本発明の理解を深めるために、本発明の背景技術について説明する。
【0003】
被処理液体として、有機性汚泥を含有する有機性廃水、例えば、下水処理場、屎尿処理場などの下水処理プロセスから排出される生汚泥や生物性汚泥、食品工場、化学工場などから排出される有機性汚泥を含有する有機性廃水を生物学的反応を利用して処理する場合、以下のような方法で行われることが多い。
【0004】
すなわち、この種の有機性廃水の一般的な処理方法として、まず、好気性消化法、嫌気性メタン発酵法などの好気性または嫌気性の微生物分解により有機性汚泥中の有機成分を生物学的に消化して、有機物を炭酸ガス、メタンガスなどのガス成分にまで分解し、次いでかかる生物学的消化により生じた微生物バイオマス(微生物菌体が主体)及び未処理の残存汚泥を含んだ処理液を沈殿槽などで固液分離して上澄としての処理水と濃縮液(汚泥)を得、その汚泥は適宜の方法で処理されている。たとえば、図5に示すように、有機性廃水貯留槽1から生物処理槽3に導入された下水などの有機性廃水が、生物処理槽3において好気性条件にて、微生物による酸化分解反応である生物酸化によって、二酸化炭素もしくは水などの無機物に分解され、生物処理槽3にて処理された廃水は、沈殿槽5にて処理水Cと汚泥Dに固液分離され、汚泥Dの一部は微生物源として生物処理槽3に返送されるとともに、残りの汚泥は余剰汚泥Eとして処理されているのが一般的である。
【0005】
ところが、この場合、沈殿槽5で固液分離した有機性汚泥を含む沈殿固形物濃縮液(汚泥)は、濃縮、消化、脱水、コンポスト化、焼却といった行程を経て処理されるため、このような処理に費用と手間がかかり好ましくなかった。
【0006】
このため、できるだけ汚泥のでない処理方法として、発生する余剰汚泥の量を低減できる処理方法として、図6に示すように、図5に示す有機性廃水処理装置に可溶化槽を付加したものとして、沈殿槽5で分離した汚泥Dの一部を環流経路6を介して生物処理槽3に返送し、沈殿槽5で分離された汚泥Dのうち余剰汚泥Eを可溶化槽8にて高温で可溶化し、可溶化槽8で可溶化された処理液を返送経路9を介して生物処理槽3に返送する方法が知られている。この処理方法によれば、可溶化槽8における可溶化処理により余剰汚泥の量を極めて低減することは可能であるが、可溶化槽8において好気性好熱菌を用いた可溶化処理が行われる場合、次のような不都合な点がある。
【0007】
すなわち、好気的に好熱菌による微生物処理をするための装置として公知のものは、図7に示すように、曝気槽41内に有機性汚泥42を貯留し、ブロア43から送給した空気を有機性汚泥42内に吹き込み、曝気槽41内の上部のガス溜まり44内のガスをブロア45で外部に排出する方式である。ところが、曝気槽41内の有機性汚泥42の温度は好気性好熱菌を利用して有機性固形物の可溶化を行うために好気性好熱菌の生育に適した温度に維持されており、また、好気性好熱菌の生育および活性維持には酸素が必要となるが、高温においては有機性汚泥42中への酸素の溶解度が低く、曝気処理(酸素溶解)を効率的に進めるためには、通気量を増やさざるを得ない。しかし、通気量を増やすと、ブロア45により排出される高温の排ガスが多量の熱を持ち出すので、曝気槽41の温度が維持できなくなり、好熱菌の生育が阻害され活性が低下する。すなわち、可溶化処理が阻害されることがある。また、曝気槽41の温度を維持するには外部から多量の熱を与える必要があり、コストがかかっていた。さらに、排ガス中に含まれる腐食成分によりブロア45が浸食されることがある。
【0008】
そこで、図8に示すように、曝気槽41から排出される高温の排ガスをブロア43の入側に供給して循環する方式によれば、熱の持ち出しは少なくなるが、循環ガス中に含まれる腐食成分によりブロア43が浸食されやすいという問題は解決されない。
【0009】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、好気性好熱菌の生育に適した温度および酸素量を容易に維持できるとともに、設備が損耗することなく、効率的に曝気処理(可溶化処理)を実行することができる、低コストで簡単な曝気方法および曝気装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、容器内下部に被処理液体を貯留し、該容器内に外部より大気を吸引して容器内上部にガス溜まりを形成し、被処理液体中に容器内上部のガスを分散させ、ガス溜まり中の酸素濃度が一定値以下になったときにガス溜まり内のガスを一部排出することを特徴とする曝気方法を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、吸気口と排気口を有する容器の該吸気口に送気手段を接続するか又は排気口に排気手段を接続し、容器内下部に被処理液体を貯留し、該容器内上部にガス溜まりを形成し、該ガス溜まり中の酸素濃度を検知する手段を有し、該酸素濃度検知手段で検知した酸素濃度に応じて上記排気手段または送気手段を作動させることを特徴とする曝気装置を提供するものである。
【0012】
すなわち、本発明の方法および装置によれば、ガス溜まり中の酸素濃度に応じてガス溜まり内のガスを適正量排出するので、容器内の被処理液体の温度および酸素量を好気性好熱菌の生育に適した条件に容易に維持することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明の方法は、吸気口と排気口を有する容器内の被処理液体中にガスを分散させるための曝気方法であって、容器内下部に被処理液体を貯留し、該容器内に外部より大気を吸引して容器内上部にガス溜まりを形成し、被処理液体中に容器内上部のガスを分散させ、ガス溜まり中の酸素濃度が一定値以下になったときにガス溜まり内のガスを一部排出することを特徴とする曝気方法をその要旨とする。
【0014】
本発明の曝気方法によれば、ガス溜まり中の酸素濃度が一定値以上(例えば、18%以上)では、ガス溜まり内のガスを排出せず、ガス溜まり中の酸素濃度が一定値以下(例えば、18%以下)では、ガス溜まり内のガスを一部排出することにより、容器内の被処理液体中に溶存する酸素量を好気性好熱菌の生育に適した値(0.5mg/リットル以上)に維持し、しかも、適正量のガスを排出するので、容器の温度が低下することはなく、好熱菌の生育が阻害されたり、活性が低下することもない。その結果、効率的に可溶化処理を実行することができる。
【0015】
以上のような曝気方法を実施するための装置としては、吸気口と排気口を有する容器の該吸気口に送気手段を接続するか又は排気口に排気手段を接続し、容器内下部に被処理液体を貯留し、該容器内上部にガス溜まりを形成し、該ガス溜まり中の酸素濃度を検知する手段を有し、該酸素濃度検知手段で検知した酸素濃度に応じて上記排気手段または送気手段を作動させることを特徴とする曝気装置が好ましい。
【0016】
さらに、上端部に吸入口を有するとともに下端部に吐出口を有する曝気手段の吐出口を被処理液体中に浸漬し且つ吸入口をガス溜まり中に位置させ、該曝気手段を回転しつつ吸入口より吸入したガスを吐出口より吐出し、吐出したガスを被処理液体中に分散させる曝気方法であれば、曝気手段を回転させることにより曝気手段の吐出口付近の液体が外方に追いやられ、その結果、吐出口付近に密度が低くて圧力のやや低い部分が形成されるので、曝気手段の吸入口にガス溜まり中のガスが吸い込まれ、吸い込まれたガスは曝気手段内を下降して吐出口から被処理液体中に吐出され、吐出されたガスは被処理液体中に分散し、被処理液体中を上昇してガス溜まりに達した後、同上機構で曝気手段に吸い込まれて循環使用されるので、より効率的に可溶化処理を実行することができ、より好ましい。その曝気方法を実施するための装置としては、上端部に吸入口を有するとともに下端部に吐出口を有する曝気手段の吐出口を被処理液体中に浸漬し且つ吸入口をガス溜まり中に位置させ、該曝気手段を回転させるための手段を有するものが好ましい。このように、曝気手段の回転力を利用して曝気ガスを送給する方式であれば、曝気ガスを送給するためのブロア等の送給手段が不要となる。しかも、曝気手段を経て曝気ガスを容器内で循環使用することができるので、熱の持ち出し量が少なくなる。さらに、容器内で曝気ガスを循環する方式であるから、ブロア等の付属設備は不要であり、曝気槽全体のコンパクト化が可能になる。
【0017】
曝気手段が、中空パイプとその下端部に上下方向に離間して配置した2枚の円板体を備え、該2枚の円板体の間に放射状に複数のブレードを介装し、中空パイプと上記2枚の円板体間のスペースを連通したものであれば、中空パイプを回転させることにより、ブレードが上下の円板体間の液体を放射状に外方に吐出し、この液体に同伴されるようにして中空パイプから吐出されるガスが被処理液体中に放射状に広く分散して曝気処理がより促進される。
【0018】
また、上端部に吸入口を有するとともに下端部に吐出口を有する曝気手段の吐出口を被処理液体中に浸漬し且つ吸入口をガス溜まり中に位置させ、曝気手段から吐出される液体に同伴されるようにして吸入口より吸入したガスを吐出口より吐出し、吐出したガスを被処理液体中に分散させる曝気方法であれば、曝気手段内に被処理液体を圧入する手段(例えば、ポンプ)があればよく、曝気手段を回転させる方式に比べて機構的にやや簡単になるので好ましい。その曝気方法を実施するための装置としては、上端部に吸入口を有するとともに下端部に吐出口を有する曝気手段の吐出口を被処理液体中に浸漬し且つ吸入口をガス溜まり中に位置させ、上記曝気手段が、第一パイプとこの第一パイプに連通する第二パイプと第二パイプ内をパイプ長手方向に沿って貫通する第三パイプとからなり、第一パイプに吸入口を設け、第二パイプと第三パイプに吐出口を設け、第三パイプ内に容器内の被処理液体を圧入するための手段を有するものが好ましい。
【0019】
また、上端部に吸入口を有するとともに下端部に吐出口を有する曝気手段の吐出口を被処理液体中に浸漬し且つ吸入口をガス溜まり中に位置させ、上記曝気手段が、第一パイプと第二パイプからなり、第一パイプが第二パイプ内をパイプ長手方向に沿って貫通し、第一パイプの上端に吸入口を設け、第一パイプの下端と第二パイプに吐出口を設け、第二パイプ内に容器内の被処理液体を圧入する手段を有するものも好ましい。さらに、第一パイプおよび第二パイプの吐出口部を囲むように、パイプ長手方向に沿って第三パイプを被処理液体中に配置すれば、第三パイプ内にも容器内の被処理液体を吸入し、曝気量が増えるので好ましい。
【0020】
【実施例】
以下に本発明の曝気方法を、図6に示す有機性廃水処理装置の可溶化槽に適用した場合について説明する。
【0021】
図6に示すように、有機性廃水貯留槽1に貯留された原廃水Aが経路2を経て生物処理槽3に導入され、生物処理槽3にて有機性廃水である原廃水が好気性生物処理される。なお、好気性生物処理とは、生物酸化によって有機物が二酸化炭素もしくは水などの無機物に分解されることをいい、用いられる好気性微生物は、下水浄化のための活性汚泥法において用いられるグラム陰性またはグラム陽性桿菌、例えば、シュードモナス属およびバチルス属であり、これらの接種菌体は、通常の下水浄化処理プラントから得られるものである。この場合、生物処理槽3の温度は、10〜50℃、通常は、20〜30℃の温度範囲となるように操作するが、より効率よく処理するには、高温の方が好ましく、例えば、下水余剰汚泥から分離した中温菌を用いる場合には、35〜45℃の温度範囲で操作するようにする。いずれにしても、微生物による酸化分解反応が効率よく十分に生じうるように、上記温度範囲の中から最適な温度条件を選択して操作するようにする。生物処理槽3においては、好気性消化分解が許容されるよう、好ましくは、0.1〜0.5vvm(vvm=曝気量/曝気槽容量/min.)の通気量で室温下にて実施されるが、負荷によっては、これを上回る通気量で、より高温にて処理してもよい。被処理液は、好ましくは、5.0〜8.0のpHに調整されるとよい。また、生物処理槽には、好気的消化分解を促進するために、酵母等の微生物や、フロック形成を促進するための硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄などの凝集剤を添加してもよい。以上は、生物処理槽3にて好気性生物処理をする場合について説明したが、嫌気性生物処理をすることも可能であり、この場合は、生成ガスを循環曝気することにより攪拌すればよい。なお、この場合、生物処理槽3としては、バッチ式または連続式のいずれでも使用可能である。
【0022】
ついで、このように生物処理槽3で処理された処理水Bは、経路4を経て固液分離装置としての沈殿槽5に導入されて固液分離され、固液分離された上澄液Cは放流先の放出基準に従い、必要であれば、硝化脱窒もしくはオゾン処理などの三次処理を施し、河川放流または修景用水などとして利用される。
【0023】
一方、沈殿槽5で分離された汚泥Dの一部は、経路6を経て経路2に合流して原廃水Aとともに生物処理槽3に導入されるようになっている。なお、経路6を経て送られる汚泥量は生物処理槽3での微生物の保持量により決定される。
【0024】
さらに、沈殿槽5で分離された残りの汚泥Eは、経路7を経て可溶化槽(曝気槽)8に導入される。場合によっては、沈殿槽5で分離された残りの汚泥Eの一部を系外に引き抜くことも可能である。可溶化槽8では、高温条件で好気的に有機性汚泥の可溶化が行われる。この場合、高温条件にて用いられる好気性微生物の接種菌体(好熱菌)は、例えば、従来の好気性消化槽から微生物を培養することによって得られるものである。また、可溶化槽8の最適温度は、好ましくは、50〜90℃の温度範囲となるような条件で操作するが、その高温処理対象である汚泥Eに含まれる有機性固形物を分解する好熱菌の種類によって異なるものであり、例えば、下水余剰汚泥から分離した好熱菌の場合には、微生物(好熱菌)による可溶化反応と熱による物理化学的な熱分解の両作用が同時に効率よく十分に生じうるように、高温条件における温度を55〜75℃の温度範囲、好ましくは約65℃で操作するようにする。いずれにしても、微生物(好熱菌)による可溶化反応と熱による物理化学的な熱分解の両作用が同時に効率よく十分に生じうるように、微生物の種類に応じて、50〜90℃の温度範囲となるように設定すればよい。
【0025】
また、可溶化槽8において好気的に微生物処理するための装置としては、図1に示すような曝気処理装置を備えるものが好ましい。この場合、可溶化槽としては、バッチ式、または連続式のいずれでも使用可能である。また、可溶化工程では、好熱菌(例えば、バチルス・ステアロサーモフィラス等の菌体を添加してもよい)によって汚泥の分解が行われるが、オゾン分解、電気分解、熱アルカリ分解、酵素分解(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、グリコシターゼなどを単独または組み合わせて添加したもの)など、従来より知られている種々の方法と組み合わせて実施してもよい。
【0026】
このように、可溶化槽8で可溶化した処理液Fは、経路9を経て経路2に合流して原廃水Aとともに生物処理槽3に導入されて好気性生物処理が行われる。
【0027】
図1(a)は、曝気処理装置の一例を具体的に示す概略構成図である。図1(a)において、曝気槽10内には有機性汚泥11を貯留し、曝気槽10内上部にはガス溜まり12を形成し、中空パイプ13とその下端部に円板体14を備えた曝気手段が曝気槽10の上部壁面に支持されている。円板体14は図1(b)に拡大して示すように、上下方向に離間して配置された2枚の円板体からなり、2枚の円板体14、14の間には放射状に複数のブレード15が介装され、中空パイプ13と上下の円板体14、14間のスペースは、中空パイプ13に形成されたガスの吐出口16を介して連通している。
【0028】
図2に示すように、モータ17の駆動軸18に係合する駆動プーリ19に対してベルト20で連結された従動プーリ21に曝気手段の中空パイプ13は装着されている。
【0029】
以上のように構成される曝気処理装置を備えた可溶化槽においては、以下のように可溶化処理をすることができる。
【0030】
バルブ22を開放してブロア23を運転し、排気側のバルブ24を開放して吸気口25を経て外気を曝気槽10内に通入して、ガス溜まり12内のガスを外気と置換する。次に、排気側のバルブ24を閉じ、モータ17を駆動させてプーリ19と21を介して中空パイプ13と2枚の円板体14を回転させる。すると、ブレード15は、上下の円板体14、14間の液体を外方に追いやる。液体が強制的に外方に追いやられることで、上下の円板体14間に圧力のやや低い部分が形成される。その結果、中空パイプ13の吸入口26にガス溜まり12内のガスが吸い込まれ、吸い込まれたガスは中空パイプ13内を下降して吐出口16から有機性汚泥中に吐出される。同時に、中空パイプ13の下端部に外装した短管27と中空パイプ13との間隙28に、その間隙28の近傍にある有機性汚泥が引き込まれて下方に移動する。間隙28内の有機性汚泥がガスの吐出口16を過ぎるときに有機性汚泥中にガスが混入される。ガスを混入した有機性汚泥は、ブレード15によって強制的に外方に追いやられ、せん断によって多数の小さな気泡が形成される。多数の小さな気泡は有機性汚泥11中に広く分散し、好気性条件下での有機性汚泥の可溶化反応が促進される。有機性汚泥11の表面に達した気泡は、ガス溜まり12内を上昇して、中空パイプ13の吸入口26の近傍に到達し、同上機構で中空パイプ13内に吸い込まれ、中空パイプ13内を下降して吐出口16から吐出される。そして、短管27と中空パイプ13との間隙28に引き込まれた有機性汚泥が下方に移動するとき、ガスの吐出口16を通過するので、有機性汚泥中にガスが混入される。ガスを混入した有機性汚泥は、ブレード15によって強制的に外方に追いやられ、せん断によって多数の小さな気泡が形成される。以降、同様の機構によって連続的に曝気処理が行われる。
【0031】
以上のような曝気処理中、吸気側のバルブ22は基本的に開放したままであるが、ガス溜まり12内のガス組成として、有機性汚泥の分解反応の結果生じた不純成分(CO2、CH4など)が一定以上に増えると、曝気処理の速やかな進行が阻害されるので、排気側のバルブ24を開いて排気することが好ましい。また、ガス溜まり12の酸素濃度が低下すると、有機性汚泥中への酸素移動効率が低下するので、例えば、ガス溜まり12の酸素濃度が18%未満になったときに排気するのが好ましい。
【0032】
しかし、有機性汚泥11中の温度および酸素量を好気性好熱菌の生育に適した条件に維持するために、有機性汚泥中に一定以上の酸素が溶存した状態を維持することが必要であり、図1に示す曝気処理装置によれば、ガス溜まり12中の酸素濃度が一定値以上では、排気側のバルブ24は閉じたままでガス溜まり12内のガスを排出せず、ガス溜まり12中の酸素濃度が一定値以下では、排気側のバルブ24を開いてガス溜まり12内のガスを一部排出することにより、有機性汚泥11中に溶存する酸素量を好気性好熱菌の生育に適した値に維持することができる。しかも、適正量のガスを排出するので、曝気槽10の温度が低下することはなく、好熱菌の生育が阻害されたり、活性が低下することもない。その結果、効率的に可溶化処理を実行することができる。
【0033】
例えば、検知管29aを経て酸素センサー29で検知したガス溜まり12の酸素濃度が18%以上(例えば、曝気槽10内の有機性汚泥中の溶存酸素が0.5mg/リットル以下)では排気側のバルブ24を閉じるようにし、検知管29aを経て酸素センサー29で検知したガス溜まり12の酸素濃度が18%未満(例えば、曝気槽10内の有機性汚泥中の溶存酸素が0.5mg/リットル以上)では指示ループ29bを介して排気側のバルブ24を開いてガス溜まり12内のガスを排気口30を経て排気ブロア30aにより強制的に排出し、脱臭などの所定の処理を施すことが好ましい。
【0034】
曝気装置としては、図1に示すアスピレータ式曝気装置の他に、図3および図4に示すエジェクター式曝気装置を使用することができる。図3において、31は上端部に吸入口32を有する第一パイプで、第一パイプ31に連通する第二パイプ33内をパイプ長手方向に沿って貫通する第三パイプ34と第二パイプ33の先端部には吐出口35が設けられている。また、第三パイプ34内に曝気槽10a内の有機性汚泥11を圧入するためのポンプ36が設置されている。ポンプ36によって吸引された曝気槽10a内の有機性汚泥11を第三パイプ34内に圧入して、第三パイプ34の吐出口35から有機性汚泥11内に高圧で吐出することにより、この有機性汚泥に同伴されるようにしてガス溜まり12内のガスが第一パイプ31内に吸引されて、吐出口35を経て有機性汚泥11中に吐出され、有機性汚泥中に広く分散される。
【0035】
図4(a)において、37は上端部に吸入口32を有するとともに下端部に吐出口35を有する第一パイプで、第一パイプ37が第二パイプ38内をパイプ長手方向に貫通し、第一パイプ37の下端と第二パイプ38には吐出口35が設けられている。また、第二パイプ38内に曝気槽10b内の有機性汚泥11を圧入するためのポンプ36が設置されている。さらに、第一パイプ37および第二パイプ38の吐出部を囲むように、パイプ長手方向に沿って第三パイプ39が有機性汚泥11中に配置されており、図4(b)に示すように、第三パイプ39上端の棒状支持部材39aは第二パイプ38に取り付けられている。ポンプ36によって吸引された曝気槽10b内の有機性汚泥11を第二パイプ38内に圧入して、第二パイプ38の吐出口35および第三パイプ39の下端部を経て有機性汚泥11内に高圧で吐出することにより、この有機性汚泥に同伴されるようにしてガス溜まり12内のガスが第一パイプ37内に吸引されて、第三パイプ39の下端部から有機性汚泥11中に吐出され、有機性汚泥中に広く分散される。さらに、第二パイプ38の吐出部を囲むように第三パイプ39がパイプ長手方向に設置されているので、曝気槽10b内の有機性汚泥11の循環流の一部が図4(a)に矢示するように第三パイプ39内に吸い込まれて、この循環流も有機性汚泥11中に吐出され、曝気量が増えるので好ましい。
【0036】
さらに、充填層型気液接触装置、表面曝気機などを使用することもできるが、被処理液中へのガスの分散性、効率面などの点で、アスピレータ式曝気装置およびエジェクター式曝気装置がより好ましい。
【0037】
さらに、上記実施例は、ガス溜まり12中の酸素濃度を検知することにより排気側のバルブ24を開閉する方式であるが、酸素濃度に代えてガス溜まり12中の炭酸ガス濃度で排気側のバルブ24を開閉することも可能である。
【0038】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されているので、次の効果を奏する。
【0039】
請求項1記載の発明によれば、ガス溜まり中の酸素濃度に応じてガス溜まり内のガスを適正量排出するので、容器内の被処理液体の温度および酸素量を好気性好熱菌の生育に適した条件に容易に維持することができる。
【0040】
請求項2記載の発明によれば、曝気ガスを送給するためにブロア等の送給手段が不要であり、しかも、曝気ガスを容器内で循環使用することができるので、熱の持ち出し量が少なく、曝気処理が効率的に行える。さらに、容器内で曝気ガスを循環する方式であるから、ブロア等の付属設備は不要であり、曝気槽全体のコンパクト化が可能になる。
【0041】
請求項3記載の発明によれば、被処理液体中に曝気ガスが放射状に広く分散されるので、曝気処理をより促進することができる。
【0042】
請求項4記載の発明によれば、曝気手段内に被処理液体を圧入する手段があればよく、曝気手段を回転させる方式に比べて機構的にやや簡単になるので好ましい。
【0043】
請求項5記載の発明によれば、容器内の被処理液体の温度および酸素量を好気性好熱菌の生育に適した条件に維持するために、適宜ガス溜まり内のガスを排出することにより、効率的に曝気処理を行うことができる。
【0044】
請求項6記載の発明によれば、請求項1、5記載の方法を実施するに好適な曝気装置を提供することができる。
【0045】
請求項7記載の発明によれば、請求項2記載の方法を実施するに好適な曝気装置を提供することができる。
【0046】
請求項8記載の発明によれば、請求項3記載の方法を実施するに好適な曝気装置を提供することができる。
【0047】
請求項9、10記載の発明によれば、請求項4記載の方法を実施するに好適な曝気装置を提供することができる。
【0048】
請求項11記載の発明によれば、曝気量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の曝気方法を実施するに好適である曝気装置の一実施例の概略構成図であり、図1(b)は、曝気手段の一部を示す断面を含む拡大側面図、図1(c)は図1(b)のX−X矢視図である。
【図2】図1に示す曝気手段の拡大側面図である。
【図3】本発明の曝気方法を実施するに好適である曝気装置の別の実施例の概略構成図である。
【図4】図4(a)は本発明の曝気方法を実施するに好適である曝気装置のさらに別の実施例の概略構成図であり、図4(b)は第三パイプ上端の支持部材が第二パイプに取り付けられる部分を示す断面図である。
【図5】従来の有機性廃水処理装置の概略構成図である
【図6】本発明の曝気方法を好適に実施しうる可溶化槽を有する、従来の有機性廃水処理装置の概略構成図である。
【図7】従来の曝気装置の概略構成図である。
【図8】従来の別の曝気装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1…有機性廃水貯留槽
3…生物処理槽
5…沈殿槽
8…可溶化槽
10…曝気槽
11…有機性汚泥
12…ガス溜まり
13…中空パイプ
14…円板体
15…ブレード
16、35…吐出口
25…吸気口
26、32…吸入口
29…酸素センサー
30…排気口
30a…排気ブロア
31、37…第一パイプ
33、38…第二パイプ
34、39…第三パイプ
36…ポンプ
Claims (3)
- 吸気口と排気口を有する容器内下部に被処理液体を貯留し、該容器内上部にガス溜まりを形成し、該ガス溜まり中の酸素濃度を検知する酸素濃度検知手段で検知した酸素濃度に応じて排気口に接続した排気手段を作動させる曝気装置において、
垂直方向に配置した第一パイプの上端部に設けたガス吸入口をガス溜まり中に位置させ、被処理液体中に浸漬した第一パイプの下端部に対して水平方向に位置するように第二パイプを接続するとともに第二パイプの上側部分を一部開口してこの開口部を第一パイプの下端部の開口に連通させ、第二パイプ内の長手方向空洞部に第三パイプを配置し、被処理液体に接する容器側面の開口からポンプを経て第三パイプの一方の端部に至る液体圧送経路を設け、上記ポンプによって吸引された容器内の被処理液体を第三パイプの他方の端部から容器内の被処理液体中に高圧で吐出することにより、ガス溜まり中のガスが第一パイプのガス吸入口から第一パイプ内に吸引されて第一パイプと第二パイプの上記連通部から第二パイプ内の空洞部を経て被処理液体中に吐出されることを特徴とする曝気装置。 - 吸気口と排気口を有する容器内下部に被処理液体を貯留し、該容器内上部にガス溜まりを形成し、該ガス溜まり中の酸素濃度を検知する酸素濃度検知手段で検知した酸素濃度に応じて排気口に接続した排気手段を作動させる曝気装置において、
被処理液体に接する容器側面の開口に第二パイプの第一水平部を接続し、該第一水平部に対して第二パイプの第一垂直部を直角方向に接続するとともに第一垂直部にはポンプを配置し、該第一垂直部に対して直角方向に接続された第二パイプの第二水平部をガス溜まりに接する容器の側面の開口からガス溜まりを横切るように配置し、該第二水平部に対して直角方向に接続された第二パイプの第二垂直部をガス溜まりから被処理液体中に浸漬するように垂直方向に配置し、垂直方向に配置した第一パイプの上端部に設けたガス吸入口を上記ガス溜まり中に位置させ、第二水平部と第二垂直部との上記接続部を一部開口して第一パイプをこの開口部を貫通させて第二パイプの第二垂直部内の長手方向空洞部に配置し、上記ポンプによって吸引された容器内の被処理液体を第一水平部、第一垂直部、第二水平部および第二垂直部を経て容器内の被処理液体中に高圧で吐出することにより、ガス溜まり中のガスが第一パイプのガス吸入口から第一パイプ内に吸引されて第一パイプ下端部の吐出口から被処理液体中に吐出されることを特徴とする曝気装置。 - 第二パイプの第二垂直部を囲むように、第二垂直部の長手方向に沿って第三パイプを被処理液体中に配置したことを特徴とする請求項2記載の曝気装置。
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