JP4451618B2 - 白金コロイド溶液の製造方法および白金コロイド粒子が表面に定着した担持体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、触媒機能などを発揮しうるコロイド粒子を含有するコロイド溶液の製造方法に関する。さらには、種々の基体に前記コロイド粒子を定着させた担持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
白金などの金属微粒子が触媒として機能することは広く知られるところである。金属微粒子を触媒として利用する場合、反応原料との接触面積を増やすため、あるいは触媒を取り扱い易くするため、通常は繊維、織布、不織布、フィルムまたは粉体などの基体の表面に金属微粒子を定着させる。基体の表面に金属微粒子を定着させる手段は種々存在するが、金属微粒子を含有するコロイド溶液を基体表面に塗布する方法が、最も簡便で、かつ、均一に定着させられる方法である。
【0003】
金属微粒子を含有するコロイド溶液の製造方法としては、金属のバルクをコロイドミルなどの粉砕機に掛け、その粉砕微粒子を溶媒中に分散させる分散法が一般的である。しかし、分散法では、得られる金属微粒子の平均粒径が大きく、基体の表面に定着させることが比較的困難である。たとえば、ガラス繊維などに酸・アルカリ処理を施してその表面を多孔質化した場合、形成される細孔の平均孔径は1〜10nmオーダーであるため、金属微粒子は細孔内に入り込めず、ガラス繊維の表面に上手く定着することができない。また、分散法では、金属微粒子の粒度分布の幅が広いため、基体の表面に金属微粒子を均一に定着させることが困難である。
【0004】
分散法以外の製造方法としては、金属塩化物が溶解した溶液に還元剤を添加し、金属イオンを還元することで金属微粒子を生成する方法が、非特許文献1により知られている。この非特許文献1には、つぎのような記載がある。
【0005】
【非特許文献1】
難波征太郎・大倉一郎,「白金コロイドの作り方と使い方」,表面,1983年,第21巻,第8号,p.450−456)
【0006】
「2.白金コロイドの作り方
2.1 白金コロイド
白金コロイドの調製にはコンデンサー付きの2Lの丸底フラスコを用い、これに蒸留水960mlを入れ、マントルヒーターを用いて十分沸騰させる。これに塩化白金酸水溶液(1g−Pt/L)60mlを加え、再び沸騰するのを待って、クエン酸ナトリウム水溶液(1wt%)120mlを添加し沸騰を続ける。溶液は、はじめ塩化白金酸のため淡黄色であるが、徐々に黒みを帯び、クエン酸ナトリウム添加30分後には茶褐色となる。さらに還流を続けると、1時間後には黒色に変化し、その後は色の変化は認められない。反応を停止するには、反応溶液を氷水浴中に浸すことにより行う。このようにして得られた白金コロイドは非常に安定であり、冷蔵庫に保存すれば、数ヶ月は凝集が認められない。
本調製方法は非常に簡単であるが、調製にあたっては次の3点に注意する必要がある。
1)容器の洗浄は注意深く行い、あらかじめ一昼夜王水に浸してから使用する。2)使用する水は特に注意を払う必要があり、イオン交換水を2回蒸留して使用する。3)反応中は常に加熱を行い、はげしく反応している状態に保つことである。これだけの注意を払えば、再現性よく、白金コロイドを調製することができる。
反応中はげしく沸騰させておくのは、空気中の酸素が本反応を阻害するからである。溶存酸素を除いた状態で調製することが必要であり、はげしく沸騰していない状態で調製すると、合成に長時間費やしたり、凝集が起こってしまうなどして再現性のよい結果は得られない。窒素ガスなどの不活性気体を吹き込み、溶存酸素を除去した状態では、70℃付近の低温でも調製できる。
未反応の塩化白金酸やクエン酸ナトリウムは、イオン交換樹脂アンバーライドMB−1を詰めたカラムを通すことにより除去することができる。除去の程度は溶液の電気伝導度を測定することにより判断できるが、100mlのコロイド溶液ではイオン交換樹脂6mlで十分である。この際、イオン交換樹脂に吸着される白金コロイドの量はごくわずかである。」
さらに、この刊行物には、上記の手段において、反応溶液の還流時間(反応時間)が長くなるに従って白金コロイドの平均粒径が大きくなり、反応時間が約5時間になると、平均粒径は約32Åに達し、その後は一定になると記載されている。また、白金が触媒活性を著しく示すようになるのは、粒径が16Åを超えたあたりからであるとも記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
非特許文献1の記載に従い、本発明者らが白金のコロイド溶液を作製したところ、反応開始から60分を経過した時点で、コロイド粒子の平均粒径がおよそ35Åに達し、投入した塩化白金酸の7〜8割程度がコロイド粒子になっていることが確認された。そして、反応開始から60分経過した後は、5時間経過するまで煮沸を続けても、コロイド粒子の平均粒径および投入した白金重量に対するコロイド粒子の重量の比(以下、この比を「金属回収率」と称する)に殆ど変化は生じなかった。
【0008】
このコロイド溶液の製造方法は、コロイド粒子の粒径の均一性が高く、また金属回収率も7〜8割と比較的高いことから、優れた製造方法であるといえる。しかし、コロイド粒子の平均粒径を16Åにより近づけることができれば、コロイド粒子の比表面積をそれだけ大きくすることになるので、触媒活性をさらに高めることができる。また、金属回収率にも改善の余地が残されている。
【0009】
この発明は、このような課題に着目して完成されたものである。その目的とするところは、粒径が一層小さいコロイド粒子を、金属回収率を高めつつ、簡便に作製できるコロイド溶液の製造方法を提供することにある。さらには、このコロイド粒子を基体に定着させることにより、触媒などの機能が効率よく発揮される担持体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、コロイド溶液の製造方法において、金属塩の濃度、金属塩の当量濃度に対する還元剤の当量濃度の比および反応時間の3つのパラメータを適宜組み合わせながら調整することを特徴とする。すなわち、そのコロイド溶液の製造方法における製造最適条件を提供するものである。
【0011】
また、この発明の方法を用いて製造されたコロイド粒子は、粒径が1nmオーダーで極めて均一性が高いので、多孔質化したガラス繊維などにもコロイド溶液を公知の手段で塗布するだけで、簡便に、かつ、強固に定着させることができる。そのため、この発明によれば、触媒活性と耐久性とが極めて高い担持体を簡便に製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、この発明では、基本的に上記刊行物「白金コロイドの作り方と使い方」(非特許文献1)に記載された手段を踏襲する。そのため、この刊行物と相違する事項についてのみ説明を行う。
【0013】
還元剤としては、水に溶解するものであればとくに限定されるものではなく、アルコール類、クエン酸類、カルボン酸類、ケトン類、エーテル類、アルデヒド類またはエステル類が例示される。また、これらの2種以上を併用してもよい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールまたはグリセリンが例示される。クエン酸類としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムまたはクエン酸アンモニウムなどのクエン酸塩が例示される。カルボン酸類としては、ぎ酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、アスパラギン酸またはそれらのカルボン酸塩が例示される。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトンが例示される。エーテル類としては、ジエチルエーテルが例示される。アルデヒド類としては、ホルマリンまたはアセトアルデヒドが例示される。エステル類としては、ぎ酸メチル、酢酸メチルまたは酢酸エチルが例示される。
【0014】
粒径1〜20nmの安定な金属のコロイド粒子を生成する観点からは、還元剤としてアルコール類、クエン酸類またはカルボン酸類が好ましい。とくに粒径1〜5nmの安定な金属のコロイド粒子を生成するためには、クエン酸類が好適である。ただし、コロイド粒子の平均粒径は1.6nm以上であることが好ましい。
【0015】
反応溶液を構成する溶媒は、還元剤および金属塩を溶解できるものであればとくに限定されるものではなく、水、アルコール類、ケトン類またはエーテル類が例示される。また、これらを2種以上併用してもよい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノールまたは2−プロパノールなどが例示される。ケトン類としては、ぎ酸メチル、酢酸メチルまたは酢酸エチルなどが例示される。エーテル類としては、メチルエチルエーテルまたはジエチルエーテルなどが例示される。金属塩を十分に溶解する観点から、溶媒としては、水またはアルコール類が好ましい。
【0016】
金属塩は、溶媒に溶解し、還元剤により還元されるものであればとくに限定されるものではない。たとえば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、金(Au)、鉛(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)もしくはスズ(Sn)の塩化物、硝酸塩、硫酸塩または金属錯化合物が挙げられる。また、これらの2種以上を併用してもよい。2種の金属塩を併用する場合は、合金のコロイド粒子を製造することができる。金属塩として白金塩を用いた場合は、コロイド粒子の粒径がとくに小さくなり、1〜5nmの安定なコロイド粒子が得られる。
【0017】
金属塩と還元剤とを含有する反応溶液を煮沸することにより、溶存酸素を排除しつつ、金属イオンの還元反応を進行させる。この反応の初期には、反応溶液中の金属イオンが一斉に還元されて無数の金属原子が発生し、これが反応溶液中を漂っているものと考えられる。このことは、下記参考例1において、反応開始から30分経過後のコロイド溶液は触媒活性を殆ど示さないが、その白金濃度(金属イオン分を除去した残りの金属の濃度、すなわちコロイド粒子の濃度)の方は比較的高くなっていることから推測される。すなわち、還元されて金属イオンではなくなったため、イオン交換樹脂に捕捉されないものの、触媒活性を示すことができない金属原子およびそのクラスターが存在することを示しているものと考えられる。この金属原子は金属イオンを引き寄せ、その表面で還元反応が生じることにより、あるいは金属原子およびクラスターが凝集することにより、コロイド粒子は次第に成長して大きくなり、触媒活性を示すようになると考えられる。これらのことから、反応溶液中におけるコロイド粒子の成長は、金属原子の発生に直接関与する「金属塩の当量濃度に対する還元剤の当量濃度」と、金属原子、そのクラスターおよび金属イオンの衝突頻度に直接関係する「金属塩の濃度」と、還元反応および金属原子の衝突などに直接関係する「反応時間」とに密接に連関しているものと推測される。そこで、これら3つのパラメータを適宜変化させ組み合わせることにより、上記刊行物に記載されたコロイド溶液の製造方法よりも有利な製造条件を見出し特定する。
【0018】
その第一の実施の形態としては、反応溶液中における金属塩の濃度が1×10-4mol/L以上4×10-4mol/L未満で、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の4倍以上20倍以下の場合に、反応時間を60分以上300分以下とするものである。この第一の実施の形態によれば、金属回収率を80〜100%に、また金属のコロイド粒子の平均粒径を2.3nm以下にすることができる。
【0019】
第二の実施の形態としては、反応溶液中における金属塩の濃度が4×10-4mol/L以上6×10-4mol/L未満で、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の4倍以上20倍以下の場合に、反応時間を30分以上150分以下とするものである。この第二の実施の形態によれば、金属のコロイド粒子を沈殿させることなく、その平均粒径を2nm以下にすることができる。
【0020】
第三の実施の形態としては、反応溶液中における金属塩の濃度が6×10-4mol/L以上15×10-4mol/L以下で、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の4倍以上20倍以下の場合に、反応時間を30分以上90分以下とするものである。この第三の実施の形態によれば、金属のコロイド粒子を沈殿させることなく、その平均粒径を小さくすることができる。
【0021】
第四の実施の形態としては、反応溶液中における金属塩の濃度が4×10-4mol/L以上6×10-4mol/L未満で、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の2倍以上4倍未満の場合に、反応時間を60分以上120分以下とするものである。この第四の実施の形態によれば、金属のコロイド粒子を沈殿させることなく、その平均粒径を2.3nm以下にすることができる。
【0022】
第五の実施の形態としては、反応溶液中における金属塩の濃度が6×10-4mol/L以上15×10-4mol/L以下で、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の2倍以上4倍未満の場合に、反応時間を30分以上240分以下とするものである。この第五の実施の形態によれば、金属のコロイド粒子を沈殿させることなく、その平均粒径を1.8nm以下にすることができる。
【0023】
第六の実施の形態としては、反応溶液中における金属塩の濃度が4×10-4mol/L以上6×10-4mol/L未満で、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の1倍以上2倍未満の場合に、反応時間を60分以上120分以下とするものである。この第六の実施の形態によれば、金属のコロイド粒子を沈殿させることなく、その平均粒径を2.3nm以下にすることができる。
【0024】
第七の実施の形態としては、反応溶液中における金属塩の濃度が6×10-4mol/L以上15×10-4mol/L以下で、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の1倍以上2倍未満の場合に、反応時間を30分以上120分以下とするものである。この第七の実施の形態によれば、金属のコロイド粒子を沈殿させることなく、その平均粒径を1.8nm以下にすることができる。
【0025】
反応溶液において、金属塩の濃度が1×10-4mol/L未満の場合は、金属イオンの還元反応が生じ難く、またコロイド粒子が所定の粒径に成長するまでに長時間を要すことから、工業的な利用には不向きである。一方、金属塩の濃度が15×10-4mol/Lを超えると、反応溶液中でコロイド粒子同士が凝集し易く、反応開始後の早い段階で沈殿が生じる。また、反応溶液において、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の1倍未満の場合は、金属塩に還元されないものが出てくるため、金属回収率が自ずと低下する。一方、還元剤の当量濃度が金属塩の当量濃度の20倍を超えると、還元剤自体が凝集して沈殿するため、この沈殿に金属塩も巻き込まれて、金属回収率が低下する。
【0026】
上記の各実施の形態の条件で製造したコロイド溶液は、ディップ法またはスプレー法など公知の手段を用いて、各種の基体に塗布することができる。基体の種類は、コロイド粒子が定着できるものであればとくに限定されるものではない。たとえば、炭素類、無機セラミック類または有機ポリマー類が挙げられる。また、これらの2種以上を併用してもよい。炭素類としては、活性炭、木炭または炭素繊維が例示される。無機セラミック類としては、アルミナ、チタニア、マグネシア、シリカまたはゼオライトが例示される。有機ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリシリコーン、ナフィオンまたはポリセルロースが例示される。これらの中でもガラス繊維および鱗片状ガラスが好適である。ガラス繊維および鱗片状ガラスは、酸・アルカリ溶液を用いて薬液処理されると、その表面が容易に多孔質化する。この多孔質における細孔の平均径は、通常は1〜10nmオーダーであることから、上記の実施の形態の条件で製造した金属のコロイド粒子であれば、多孔質の細孔内に上手く入り込むことができ、そこに強固に定着することができる。そのため、多孔質化したガラス繊維または鱗片状ガラスを基体とする担持体は、基体の比表面積が大きいことから高効率の触媒活性を示すことができ、その耐久性にも優れる。この担持体は、織布または不織布などに加工され、たとえばエンジンマフラー内の排ガス浄化フィルタとして利用される。
【0027】
【実施例】
以下、実施例、参考例および比較例を用いて、この発明をより具体的に説明する。
【0028】
(比較例1)
まず、上記刊行物の記載に準じて、コロイド溶液を作製した。この比較例1のコロイド溶液を基準として、実施例、参考例および比較例について順次説明する。
1,500mlフラスコ、100ml三角フラスコ、200ml三角フラスコ、還流コンデンサーおよび撹拌子を王水中に一昼夜浸し、イオン交換および限外濾過した純水を用いて前記器具を十分に洗浄した。イオン交換および限外濾過した純水850mlと撹拌子とを前記1,500mlフラスコに投入し、還流コンデンサーをフラスコ上部に設置して、これを100℃まで加熱・昇温した。純水中の溶存酸素を取り除くため、そのまま1時間煮沸を行った。一方、100ml三角フラスコに、テトラクロロ白金酸6水和物0.1328g(白金として50mg)を秤量して投入し、そこにイオン交換および限外濾過した純水を加えて50mlとした。また、200ml三角フラスコに、クエン酸ナトリウム1gを秤量して投入し、イオン交換および限外濾過した純水を加えて100mlとした。純水の溶存酸素を取り除いた後、1,500mlフラスコに100ml三角フラスコからテトラクロロ白金酸水溶液を投入し、再度100℃まで加熱・昇温した。さらに、溶存酸素を除去するため、30分間煮沸を行った。つづいて、200mlフラスコからクエン酸ナトリウム水溶液を沸騰状態が維持されるように徐々に添加した。この反応溶液において、白金濃度は50mg/L=2.6×10-4mol/L=1.0×10-3Nであり、白金のモル濃度に対するクエン酸ナトリウムのモル濃度の比は13.2となる。また、クエン酸ナトリウムは一電子供与体として機能するから、白金の当量濃度に対するクエン酸ナトリウムの当量濃度の比は3.3となる。
【0029】
クエン酸ナトリウム水溶液を1,500mlフラスコに全て添加した後、沸騰状態で還元反応を継続させ、反応開始から30分後、60分後、90分後、120分後および240分後にそれぞれ反応を止めて、その反応液を室温まで急冷した。冷却した反応溶液をイオン交換樹脂アンバーライトMB−1(オルガノ株式会社製)を詰めたカラムに通し、反応溶液中に残存する金属イオンおよび還元剤を取り除いて安定なコロイド溶液を得た。このコロイド溶液について、プラズマ発光分光分析法によりコロイド粒子の濃度を測定し、さらにコロイド粒子を適当量サンプリングし過酸化水素分解反応を利用して、その触媒活性の状態すなわちコロイド粒子の粒径を調査した。これらの測定結果を反応溶液の濃度などと共に、下記「表1」にまとめて示す。また、過酸化水素分解反応を利用したコロイド粒子の測定の精度を確認するため、反応開始から120分後に室温まで急冷した反応溶液について、透過型電子顕微鏡を用いて、白金のコロイド粒子の平均粒径を測定した。その結果、コロイド粒子の平均粒径は3.5nmであり、過酸化水素分解反応を利用した測定結果と一致することが確認された。なお、表1中の生成物(コロイド粒子)の欄における白金濃度を、反応溶液における白金濃度で割って百分率化すれば、白金についての金属回収率が求められる。
【0030】
(実施例)、(参考例1)〜(参考例7)および(比較例2)
上記比較例1において、反応溶液における白金の添加量およびクエン酸ナトリウムの添加量を表1の通りに変更した以外は同様にして、白金のコロイド溶液を製造し、その特性を調査した。その結果を、下記表1にまとめて示す。表1において、生成物(コロイド粒子)の欄における白金濃度または触媒活性の数値が反応時間の経過と共に低下している個所は、沈殿が生じていることを示す。沈殿が生じた場合は、沈殿を除く上澄みについて白金濃度および触媒活性を調査した。
【0031】
(比較例3)
比較例1において、反応溶液における白金の当量濃度に対するクエン酸ナトリウムの当量濃度の比が33倍となるように調製し、それ以外は同様にして白金のコロイド溶液を製造した。その結果、反応開始から60分も経過しないうちに、反応溶液中に沈殿が生じ始めた。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例と参考例と比較例とを対比することにより、つぎのことが判る。
上記の各実施例において、反応時間を適宜調整すれば、コロイド粒子の沈殿を生じさせることなく、上記刊行物に記載された製造方法すなわち比較例1よりも金属回収率を改善することができ、ないしは触媒活性を高めることができる。
【0034】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されていることから、つぎのような効果を奏する。金属塩と還元剤とを含有する溶液を煮沸して金属のコロイド粒子を成形する方法において、そのコロイド粒子の生成・会合・凝集に直接的に影響を与える3つの製造条件(パラメータ)を組み合わせつつ調整することにより、コロイド粒子の平均粒径を一層小さく、かつ、均一化して、その触媒活性などの諸特性を改善することができる。また、金属塩の金属回収率を改善することもできる。さらには、多孔質の基体などにコロイド粒子を定着させることにより、触媒活性が高く、かつ、耐久性のある担持体が得られる。
Claims (6)
- 白金塩とクエン酸ナトリウムとを含有する溶液を煮沸して白金コロイド粒子を成形する方法であって、
前記溶液中における白金塩の濃度が6×10-4mol/L以上15×10-4mol/L以下で、クエン酸ナトリウムの当量濃度が白金塩の当量濃度の1倍以上2倍未満であり、反応時間が90分以上120分以下である白金コロイド溶液の製造方法。 - 白金コロイド粒子の平均粒径が1nm以上3.5nm未満である請求項1に記載の白金コロイド溶液の製造方法。
- 前記平均粒径が1nm以上1.8nm以下である請求項2に記載の白金コロイド溶液の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で製造した白金コロイド溶液を基体に塗布することにより、白金コロイド粒子が基体の表面に定着した担持体。
- 上記基体がガラス繊維または鱗片状ガラスである請求項4に記載の担持体。
- 上記基体が多孔質である請求項4または5に記載の担持体。
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