JP4450978B2 - 光学的な開口の作製方法及び光学的な開口の作製装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光学的な開口の作製方法に関するものである。特に近視野光を照射・検出する近視野光デバイスに用いる開口の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料表面においてナノメートルオーダの微小な領域を観察するために走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)に代表される走査型プローブ顕微鏡(SPM)が用いられている。SPMは、先端が先鋭化されたプローブを試料表面に走査させ、プローブと試料表面との間に生じるトンネル電流や原子間力などの相互作用を観察対象として、プローブ先端形状に依存した分解能の像を得ることができるが、比較的、観察する試料に対する制約が厳しい。
【0003】
そこでいま、試料表面に生成される近視野光とプローブとの間に生じる相互作用を観察対象とすることで、試料表面の微小な領域の観察を可能にした近視野光学顕微鏡(SNOM)が注目されている。
【0004】
近視野光学顕微鏡においては、先鋭化された光ファイバーの先端に設けられた開口から近視野光を試料の表面に照射する。開口は、光ファイバーに導入される光の波長の回折限界以下の大きさを有しており、たとえば、100nm程度の直径である。プローブ先端に形成された開口と試料間の距離は、SPMの技術によって制御され、その値は開口の大きさ以下である。このとき、試料上での近視野光のスポット径は、開口の大きさとほぼ同じである。したがって、試料表面に照射する近視野光を走査することで、微小領域における試料の光学物性の観測を可能としている。
【0005】
顕微鏡としての利用だけでなく、光ファイバープローブを通して試料に向けて比較的強度の大きな光を導入させることにより、光ファイバープローブの開口にエネルギー密度の高い近視野光を生成し、その近視野光によって試料表面の構造または物性を局所的に変更させる高密度なメモリ装置としての応用も可能である。強度の大きな近視野光を得るために、プローブ先端の先端角を大きくすることが試みられている。
【0006】
これら近視野光を利用したデバイスにおいて、開口の形成が最も重要である。開口の作製方法の一つとして、特許公報平5-21201に開示されている方法が知られている。この方法で、開口を形成するための試料として、先鋭化した光波ガイドに遮光膜を堆積したものを用いている。開口の作製方法は、遮光膜付きの先鋭化した光波ガイドを圧電アクチュエータによって良好に制御された非常に小さな押しつけ量で硬い平板に押しつけることによって、先端の遮光膜を塑性変形させている。
【0007】
また、開口の形成方法として、特開平11-265520に開示されている方法がある。この方法において、開口を形成する対象は、平板上に集束イオンビーム(FIB)によって形成された突起先端である。開口の形成方法は、突起先端の遮光膜に、側面からFIBを照射し、突起先端の遮光膜を除去することによって行っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許公報平5-21201の方法によれば、光波ガイド一本ずつしか開口を形成する事ができない。また、特許公報平5-21201の方法によれば、移動分解能が数nmの圧電アクチュエータによって押し込み量を制御する必要があるため、開口形成装置をその他の装置や空気などの振動による影響が少ない環境におかなくてはならない。また、光伝搬体ロッドが平板に対して垂直に当たるように調整する時間がかかってしまう。また、移動量の小さな圧電アクチュエータの他に、移動量の大きな機械的並進台が必要となる。さらに、移動分解能が小さな圧電アクチュエータをもちいて、押し込み量を制御するさいに、制御装置が必要であり、かつ、制御して開口を形成するためには数分の時間がかかる。したがって、開口作製のために、高電圧電源やフィードバック回路などの大がかりな装置が必要となる。また、開口形成にかかるコストが高くなる問題があった。
【0009】
また、特開平11-265520の方法によれば、加工対象は平板上の突起であるが、FIBを用いて開口を形成しているため、一つの開口の形成にかかる時間が10分程度と長い。また、FIBを用いるために、試料を真空中におかなければならない。従って、開口作製にかかる作製コストが高くなる問題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、遮光膜で覆われた錐状のチップの先端近傍に存在し、近視野光を検出及び照射する光学的な開口を形成するにあたり、表面に前記チップと前記チップの近傍に配置し略同じ高さを有するストッパーとを形成している基板に対し、前記チップ及び前記ストッパーの上方より平板を覆い、前記平板に対し前記基板方向への力を加えることで、前記チップの頂点付近の遮光膜を変形させ、前記光学的な開口を形成することを特徴とする光学的な開口の作製方法とした。また、力が加えられた前記平板の一部が前記ストッパーを支点として変形し、前記チップの先端近傍の遮光膜に接触することで、前記光学的な開口が形成されることを特徴とする光学的な開口の作製方法とした。したがって、本発明の光学的な開口の作製方法によれば、前記チップと略同じ高さを有するストッパーによって、前記平板の変位が制御されるため、所定の力で平面を押すだけで簡単に光学的な開口を作製する事ができる。また、真空中、液中、大気中など様々な環境下で開口を作製することができる。また、光学的な開口を作製する際に特別な制御装置を必要としないため、光学的な開口を作製するための装置を単純化する事ができる。また、所定の力を与える時間を非常に短くすることが容易であり、開口作製にかかる時間を短くすることができるため、開口作製にかかるコストを低くすることができる。
【0011】
また、前記基板上に、複数の前記チップ及び複数の前記ストッパーが存在することを特徴とする光学的な開口の作製方法とした。したがって、同一基板上に形成された複数の前記チップおよび前記ストッパーに、一括で前記力を加えることによって、一度に複数の前記チップに光学的な開口を形成することが可能であり、開口一つあたりの加工時間を非常に短くすることができ、結果として光学的な開口の作製コストを低くすることができる。
【0012】
また、前記基板が、略平坦なステージに接着していることを特徴とする光学的な開口の作製方法とした。また、前記ステージと前記基板との隙間の空気を真空引きし、前記基板を前記ステージに吸着させることにより、前記接着を達成することを特徴とする光学的な開口の作製方法とした。したがって、基板に反りが発生している場合に、光伝搬体にかかる力が基板の中心部と外周部とで異なり、開口サイズにばらつきが生ずる問題が解決され、反りが存在する基板に対しても、量産性良く均一な開口を一括で形成でき、歩留まりが向上する。また、真空機器を用いた容易な装置構成で簡易にステージに装着でき、基板の取り外しも容易である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の開口の形成方法について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1から図3は、本発明の実施の形態1に係る開口の形成方法について説明した図である。図1に示す、ワーク1000は、基板4上に形成された透明層5、透明層5の上に形成された錐状のチップ1および尾根状のストッパー2、チップ1、ストッパー2および透明層5の上に形成された遮光膜3からなる。なお、ワーク1000において、透明層5は、必ずしも必要ではなく、その場合、遮光膜3は、チップ1、ストッパー2および基板4上に形成される。また、遮光膜3は、チップ1にだけ堆積されていてもよい。
【0014】
チップ1の高さH1は、数mm以下であり、ストッパー2の高さH2は、数mm以下である。高さH1と高さH2の差は、1000nm以下である。チップ1とストッパー2の間隔は、数mm以下である。また、遮光膜3の厚さは、遮光膜3の材質によって異なるが、数10nmから数100nmである。
【0015】
チップ1、ストッパー2および透明層5は、二酸化ケイ素やダイヤモンドなどの可視光領域において透過率の高い誘電体や、ジンクセレンやシリコンなどの赤外光領域において透過率の高い誘電体や、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムなどの紫外光領域において透過率の高い材料を用いる。また、チップ1の材料は、開口を通過する光の波長帯において少しでもチップ1を透過する材料であれば用いることができる。また、チップ1、ストッパー2および透明層5は、同一の材料で構成されても良いし、別々の材料で構成されても良い。遮光膜3は、たとえば、アルミニウム、クロム、金、白金、銀、銅、チタン、タングステン、ニッケル、コバルトなどの金属や、それらの合金を用いる。
【0016】
図2は、開口を形成する方法において、チップ1上の遮光膜3を塑性変形させている状態を示した図である。図1で示したワーク1000の上に、チップ1および少なくともストッパー2の一部を覆い、かつ、少なくともチップ1およびストッパー2側が平面である板6を載せ、さらに板6の上には、押し込み用具7を載せる。押し込み用具7にチップ1の中心軸方向に力Fを加えることによって、板6がチップ1に向かって移動する。チップ1と板6との接触面積に比べて、ストッパー2と板6との接触面積は、数100〜数万倍も大きい。したがって、与えられた力Fは、ストッパー2によって分散され、結果として板6の変位量は小さくなる。板6の変位量が小さいため、遮光膜3が受ける塑性変形量は非常に小さい。また、チップ1およびストッパー2は、非常に小さな弾性変形を受けるのみである。力Fの加え方は、所定の重さのおもりを所定の距離だけ持ち上げて、自由落下させる方法や、所定のバネ定数のバネを押し込み用具7に取り付け、所定の距離だけバネを押し込む方法などがある。板6が、遮光膜よりも堅く、チップ1およびストッパー2よりも柔らかい材料である場合、チップ1およびストッパー2が受ける力は、板6によって吸収されるため、板6の変位量がより小さくなり、遮光膜3の塑性変形量を小さくすることが容易となる。
【0017】
図3は、力Fを加えた後に、板6および押し込み用具7を取り除いた状態を示した図である。遮光膜3の塑性変形量が非常に小さく、チップ1およびストッパー2が弾性変形領域でのみ変位しているため、チップ1の先端に開口8が形成される。開口8の大きさは、数nmからチップ1を通過する光の波長の回折限界程度の大きさである。なお、上記では、押し込み用具7とワーク1000の間に板6が挿入されていたが、板6を除去して直接押し込み用具7で押し込むことによっても同様に開口8を形成できることは、いうまでもない。開口8に光を導入するために、基板4をチップ1の形成面と反対側からエッチングすることによって透明体5またはチップ1の少なくとも一部を露出させて、開口8への光の導入口を形成する。また、基板4を透明材料103で構成することによって、光の導入口を形成する工程を省くことができるのは言うまでもない。
【0018】
以上説明したように、本発明の開口作製方法によれば、ストッパー2によって板6の変位量を良好に制御することができ、かつ、板6の変位量を非常に小さくできるため、大きさが均一で小さな開口8をチップ1先端に容易に作製することができる。また、基板側から光を照射して、開口8から近視野光を発生させることができる。
【0019】
次に、ワーク1000の製造方法を図4と図5を用いて説明する。図4は、基板材料104上に透明材料103を形成したのち、チップ用マスク101およびストッパー用マスク102を形成した状態を示している。図4(a)は上面図を示しており、図4(b)は、図4(a)のA-A'で示す位置における断面図を示している。透明材料103は、気相化学堆積法(CVD)やスピンコートによって基板材料104上に形成する。また、透明材料103は、固相接合や接着などの方法によっても基板材料104上に形成することができる。次に、透明材料103上にフォトリソグラフィ工程によって、チップ用マスク101及びストッパー用マスク102を形成する。チップ用マスク101とストッパー用マスク102は、同時に形成しても良いし、別々に形成しても良い。
【0020】
チップ用マスク101およびストッパー用マスク102は、透明材料103の材質と次工程で用いるエッチャントによるが、フォトレジストや窒化膜などを用いる。透明材料103は、二酸化ケイ素やダイヤモンドなどの可視光領域において透過率の高い誘電体や、ジンクセレンやシリコンなどの赤外光領域において透過率の高い誘電体や、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムなどの紫外光領域において透過率の高い材料を用いる。
【0021】
チップ用マスク101の直径は、たとえば数mm以下である。ストッパー用マスク102の幅W1は、たとえば、チップ用マスク101の直径と同じかそれよりも数10nm〜数μmだけ小さい。また、ストッパー用マスク102の幅W1は、チップ用マスク101の直径よりも数10nm〜数μmだけ大きくてもよい。また、ストッパー用マスク102の長さは、数10μm以上である。
【0022】
図5は、チップ1およびストッパー2を形成した状態を示している。図5(a)は上面図であり、図5(b)は、図5(a)のA-A'で示す位置の断面図である。チップ用マスク101およびストッパー用マスク102を形成した後、ウエットエッチングによる等方性エッチングによってチップ1およびストッパー2を形成する。透明材料103の厚さとチップ1およびストッパー2の高さの関係を調整することによって、図1に示す透明層5が形成されたり、形成されなかったりする。チップ1の先端半径は、数nmから数100nmである。この後、遮光膜をスパッタや真空蒸着などの方法で堆積する事によって、図1に示すワーク1000を形成する事ができる。また、遮光膜3をチップ1にだけ堆積する場合、遮光膜3の堆積工程において、チップ1上に遮光膜が堆積するような形状を有するメタルマスクを乗せてスパッタや真空蒸着などを行う。また、ワーク1000のチップが形成された面の全面に遮光膜3を堆積した後、チップ1にだけ遮光膜3が残るようなフォトリソグラフィ工程を用いても、チップ1上にだけ遮光膜3を形成する事ができることは言うまでもない。
【0023】
図6および図7は、上記で説明したワーク1000の作製方法におけるチップ1とストッパー2の高さの関係を説明する図である。なお、以下では、チップ用マスク101の直径が、ストッパー用マスク102の幅よりも小さい場合について説明する。図6は、図5(a)で説明した工程において、チップ1とストッパー2だけを示した図であり、図7は、図6中B-B'で示す位置のチップ1と、図6中C-C'で示す位置のストッパー2の断面図である。
図7(a)は、チップ1がちょうど形成された状態を示した図である。ストッパー用マスク102の幅は、チップ用マスク101の直径よりも大きいため、図7(a)の状態では、ストッパー2の上面には、平らな部分が残り、この平らな部分上にストッパー用マスク102が残っている。しかしながら、チップ用マスク101は、チップ1との接触面積が非常に小さくなるため、はずれてしまう。図7(a)の状態では、チップ1の高さH11とストッパー2の高さH22は、同じである。
図7(b)は、図7(a)の状態からさらにエッチングを進め、ストッパー2上面の平らな部分がちょうどなくなった状態を示している。図7(a)の状態からさらにエッチングを行うと、チップ用マスク101が無いチップ1の高さH111は、徐々に低くなっていく。一方、ストッパー用マスクが残っているストッパー2の高さH222は、H22と同じままである。ストッパー2の上面の平らな部分の幅は、徐々に狭くなり、断面形状は図7(b)に示すように、三角形になる。このときのチップ1とストッパー2の高さの差ΔHは、チップ用マスク101の直径とストッパー用マスク102の幅の差、および、チップ1とストッパー2の先端角によって異なるが、おおよそ1000nm以下程度である。
図7(c)は、図7(b)の状態からさらにエッチングを進めた状態を示している。チップ1の高さH1111は、高さH111よりも低くなる。同様に、ストッパーH2222の高さも、高さH222よりも小さくなる。しかし、高さH1111と高さH2222の減少量は、同じであるため、チップ1とストッパー2の高さの差ΔHは、変化しない。なお、ストッパー用マスク102の幅が、チップ用マスク101よりも小さい場合は、チップ1とストッパー2の高さの関係が逆になるだけである。また、チップ用マスク101とストッパー用マスク102が等しい場合は、チップ1とストッパー2の高さが等しくなることは言うまでもない。
【0024】
本発明のワーク1000の作製方法によれば、フォトリソグラフィ工程によってチップ1とストッパー2の高さの差ΔHを良好に制御することができる。したがって、図1から図3で説明した開口作製方法において、板6の変位量を良好に制御することができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、チップ1とストッパー2の高さを良好に制御することができ、かつ、ストッパー2を設けることによって板6の変位量を小さくすることができるため、分解能の高いアクチュエータを用いなくても、大きさが均一で微小な開口8をチップ1先端に形成する事が容易である。我々の実験では、手に持ったハンマーなどで、押し込み用具7を叩くだけで直径100nm以下の開口8を形成する事ができた。また、チップ1とストッパー2の高さが良好に制御されるため、開口8の作製歩留まりが向上した。また、本発明の実施の形態1で説明したワーク1000は、フォトリソグラフィ工程によって作製可能なため、ウエハなどの大きな面積を有する試料に、複数個作製することが可能であり、力Fを一定にすることによって複数個作製されたワーク1000それぞれに対して均一な開口径の開口8を形成する事ができる。また、力Fの大きさを変えることが非常に簡単なため、複数個作製されたワーク1000に対して個別に開口径の異なる開口8を形成する事が可能である。また、単純に力Fを加えるだけで開口8が形成されるため、開口作製にかかる時間は数秒から数10秒と非常に短い。また、本発明の実施の形態1によれば、加工雰囲気を問わない。従って、大気中で加工する事が可能でありすぐに光学顕微鏡などで加工状態を観察できる。また、走査型電子顕微鏡中で加工することによって、光学顕微鏡よりも高い分解能で加工状態を観察することも可能である。また、液体中で加工することによって、液体がダンパーの役目をするため、より制御性の向上した加工条件が得られる。
また、ワーク1000が複数個作製された試料に対して、一括で力Fを加えることによって、開口径のそろった開口8を一度に複数個作製する事も可能である。一括で加工する場合、ウエハ一枚あたりのワーク1000の数にもよるが、開口1個あたりの加工時間は、数100ミリ秒以下と非常に短くなる。
(実施の形態2)
図8に、本発明の実施の形態2に係わる開口の形成方法について説明した図を示す。ワーク1001上には光伝搬体11が積層され、その表面に、先鋭化されたチップ12とそのチップと高さがほぼ等しいストッパー13が形成される。チップ12及びストッパー13上には、遮光膜14が成膜されており、チップ12からの光の漏れを防いでいる。1つのワーク1001上には、複数組のストッパー13とチップ12が形成され、およそその組数は、10から1000の範囲に入る。一組のストッパー13およびチップ12の形状および配置は、実施の形態1で示した図4及び図5と同様であり、その高さ関係は、図6及び図7と同様である。近視野光の検出及び発生を行う微小開口はこれら複数のチップ12の頂点に形成されるが、その工程は、実施の形態1で示した工程(図1〜図3で説明)と同様である。ここで、図8を用いて再度説明するが、まず、チップ12およびストッパー13を覆う板15を押し込み用具16でチップ12方向に押し付け、板15をストッパー13に接触させる。次に、さらに板15を押し、ストッパー13のエッジを支点に板15の一部を湾曲させ、チップ12頂点の遮光膜14に接触させる。このとき、遮光膜14が塑性変形することで、開口は形成される。この一連の工程において、ワーク1001は平坦なステージ17上に置かれる。ステージ17には、複数の穴18が刻み込まれており、これらの穴18はステージ内で管19に接続され、管19の終端はステージ外に配置されたポンプ20に接続される。よって、ポンプ20を起動し、管内を真空引きすることで、ワーク1001はステージ17に密着(チャッキング)するようになる。このように真空装置を用いたステージ17とのチャッキングにより、ステージ17からの複数組のチップ12及びストッパー13の高さは、ワーク1001の面内で、ほぼ均一にすることが可能となる。
【0025】
ここで、まず、真空チャッキングされていないときの問題点を指摘する。図9から図12に真空チャッキングされていないときのワーク1002の状態を示す。図9では、ワークをステージ上に配置したときの状態を示す。ワーク1002は、基板21と、基板21とは異なる材料の光伝搬体23およびチップ24とストッパー25とから構成されている。基板上に異なる材料を成膜した場合、膜応力が生じ、基板自体が大きく反る。例えば、基板に珪素を選択し、光伝搬体をCVDで成膜した酸化珪素とした場合、酸化珪素の厚みや成膜の条件にもよるが、図9に示すようにワーク1002全体に大きな反り(この場合は、上に凸)が生ずる。このような反りが生じたワーク1002をチャッキングしないままステージ21上に置くと、図9のように、ステージ21と接触している点と接触していない点とが存在するようになる。
【0026】
図10に、真空チャッキングされていないワークに平板を載せたときの概略図を示す。光伝搬体23からのチップ24・26およびストッパー25・27の高さが一致していても、ワーク1002が図のように大きく反っている場合、ステージ21からのそれぞれの高さは、ワーク1002の中心付近に形成されたチップ26およびストッパー27と、ワーク1002の端近辺に形成されたチップ24およびストッパー25とでは異なってくる。よって、板28に接触しているストッパー27と、接触してないストッパー25とが存在する。
【0027】
図11と図12に、真空チャッキングされていないワーク102に対し、板28を介して押し込み用具29で荷重を与えているときの図を示す。当初、板28はワーク1002の中心近傍に形成されたストッパー27に接触しており、荷重が加わることでワーク1002の中心近傍のチップ26頂点の開口が形成される(図11)。荷重を加えつづけることにより、ワーク1002は次第に平らになっていき、板28は外周部のストッパー25に接触するようになる。外周部の開口はこの後形成される。ワーク1002が平らになっていくに従い、当初中心近傍に大きくかかっていた荷重は分散され、周辺部へも荷重がかかるようになってはいくが、中心近傍のチップ26にかかる荷重の最大値は外周部のチップ24のそれに比べ大きい(図12)。この結果、中心近傍に形成される開口のサイズは、外周部に形成される開口のサイズに比べ大きくなり、1つのワーク1002内で形成される開口サイズにばらつきが生じる。その分布は、中心付近の開口サイズが大きく、外周部に近づくにつれそれは小さくなっていく。開口サイズのばらつきは、デバイスの歩留まりを低下させ、コスト高となる。
図13に、反りを有するワーク1003を真空チャッキングしてステージ30上に配置した図を示す。ワーク1003の反りは解消され、ステージ30からのチップ31およびストッパー32の高さは、ワーク1003上の面内でほぼ均一となる。ワーク1003をステージ30上に載せた後に真空引きを行い、ステージ30上の任意の場所にワーク1003を配置する。ワーク1003の取り付け、取り外しが容易なことも、真空チャッキングの利点である。
図14に、真空チャッキングしたワーク1003上に板33を載せた状態の概略図を示す。ステージ30からチップ31頂点までの距離、およびステージ30からストッパー32上面までの距離が、ワーク1003の面内で均一であることから、ワーク1003の中心近傍あるいは外周部を問わず、ストッパー32と板33とが接触した状態となる。
図15に、真空チャッキングしたワーク1003に対し、板を介して押し込み用具で負荷荷重を加えている状態の概略図を示す。図14のようにワーク1003上に形成されたストッパー32のほぼ全数が板33に接触することから、押し込み用具34によってストッパー32に加えられる負荷荷重は、板33を介してワーク1003全面に対しほぼ均等に加わり、同様にチップ31に対しても、場所によらず均等に荷重がかかる。よって、均一な開口がワーク1003全面にわたり形成される。これにより、ワーク全体にわたり均一な開口径の微小開口を歩留まり良く作製することが可能となる。また、反ったワークの形状と同様な形状のステージ及び板を用意することで、真空チャッキングを用いずに均一な開口を形成することは可能である。しかし、反りの程度の異なるワークに対しては利用することができない。一方、真空チャッキングを用いた場合、反りの程度の異なるワークに対しても、常に均一な開口を形成することが可能となる。また、この真空チャッキングは、ステージに穴を開け、管を通し、ポンプに接続するだけで実現する方法であり、設備投資の費用や維持費は低コストである。また、ステージに固定する方法として、接着剤やワックスで固定させる方法も考えられるが、この方法はステージからの取り外しやワークについた媒体の剥離が困難となる。また、別の方法として、ビス止めする方法も考えられるが、この方法ではワーク自体にビス用の穴を開ける必要があり、作業工程が増え、コスト高となる。真空チャッキングを用いた方法は、容易に取り外しができ、且つワークを傷つけない、洗浄の必要もないといった利点も有する。
【0028】
なお、実施の形態2に係わるここまでの説明では、ワークとステージとをのチャッキング方法として、真空引きで吸着させる方法を説明してきたが、ワークとステージとに電極を取り付け、静電力を持たせてチャッキングしても構わないし、また、ワークおよびステージに磁性体を形成し、その磁力を用いてチャッキングしても勿論構わない。
【0029】
【発明の効果】
チップ1とストッパー2の高さ、および、力Fを制御する事によって、分解能の高いアクチュエータを用いなくても、簡単に開口8を形成する事ができる。また、チップ1とストッパー2の高さが良好に制御されるため、開口8の作製歩留まりが向上した。また、本発明の実施の形態1で説明したワーク1000は、フォトリソグラフィ工程によって作製可能なため、ウエハなどの大きな面積を有する試料に、複数個作製することが可能であり、力Fを一定にすることによって複数個作製されたワーク1000それぞれに対して均一な開口径の開口8を形成する事ができる。また、力Fの大きさを変えることが非常に簡単なため、複数個作製されたワーク1000に対して個別に開口径の異なる開口8を形成する事が可能である。また、単純に力Fを加えるだけで開口が形成されるため、開口作製にかかる時間は数10秒以下と非常に短い。また、本発明の実施の形態1によれば、加工雰囲気を問わない。従って、大気中で加工する事が可能でありすぐに光学顕微鏡などで加工状態を観察できる。また、走査型電子顕微鏡中で加工することによって、光学顕微鏡よりも高い分解能で加工状態を観察することも可能である。また、液体中で加工することによって、液体がダンパーの役目をするため、より制御性の向上した加工条件が得られる。
【0030】
また、ワーク1000が複数個作製された試料に対して、一括で力Fを加えることによって、開口径のそろった開口8を一度に複数個作製する事も可能である。一括で加工する場合、ウエハ一枚あたりのワーク1000の数にもよるが、開口1個あたりの加工時間は、数100ミリ秒以下と非常に短くなる。
【0031】
また、真空チャッキングにてワークを固定することで、反りを有するワークに対しても、均一な開口がワーク全面にわたり一括で形成される。また、反りの程度の異なるワークに対しても、均一開口の形成が可能である。よって、微小開口形成の歩留まりが向上し、開口形成工程の低コスト化が実現する。また、その設備投資の費用や維持費は低コストである。さらに、真空吸着なため、容易に取り外しができ、且つワークを傷つけない、洗浄の必要もないといった効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る開口の形成方法について説明した図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る開口の形成方法について説明した図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る開口の形成方法について説明した図である。
【図4】ワーク1000の製造方法について説明した図である。
【図5】ワーク1000の製造方法について説明した図である。
【図6】ワーク1000の作製方法におけるチップ1とストッパー2の高さの関係を説明する図である。
【図7】ワーク1000の作製方法におけるチップ1とストッパー2の高さの関係を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係わる開口の形成方法について説明した図である。
【図9】真空チャッキングされていないときのワークの状態を示す図である。
【図10】真空チャッキングされていないワークに平板を載せたときの図である。
【図11】真空チャッキングされていないワークに対し、板を介して押し込み用具で荷重を与えているときの図である。
【図12】真空チャッキングされていないワークに対し、板を介して押し込み用具で荷重を与えているときの図である。
【図13】反りを有するワークを真空チャッキングしてステージ上に配置した図である。
【図14】真空チャッキングしたワーク上に板を載せた状態の概略図である。
【図15】真空チャッキングしたワークに対し、板を介して押し込み用具で負荷荷重を加えている状態の概略図である。
【符号の説明】
1 チップ
2 ストッパー
3 遮光膜
4 基板
5 透明層
6 板
7 押し込み用具
8 開口
11,23 光伝搬体
12,24,26,31 チップ
13,25,27,32 ストッパー
14 遮光膜
15,28,33 板
16,29,34 押し込み用具
17,21,30 ステージ
18 穴
19 管
20 ポンプ
22 基板
101 チップ用マスク
102 ストッパー用マスク
103 透明材料
104 基板材料
1000 ワーク
1001 ワーク
1002 ワーク
1003 ワーク
F 力
H1 チップの高さ
H2 ストッパーの高さ
Claims (4)
- 反りを有する基板と前記基板上に備えられた錐状のチップと前記チップ上に備えられた遮光膜とを有する近視野光デバイスにおける前記チップ先端に、押し込み体を接触させることによって前記遮光膜を塑性変形させて開口を形成する光学的な開口の作製方法において、
前記近視野光デバイスと、前記チップと略同じ高さの度当たり部を有するストッパーとを備える被開口形成体を面上に形成し、
前記チップ及び前記ストッパーが複数備えられているものであり、前記押し込み体が前記チップのそれぞれを覆うとともに前記ストッパーのそれぞれの少なくとも一部を覆うような略平面部を有するものであり、
平坦面を有するステージに前記基板を配置し、
前記基板の反り部分と前記ステージの平坦面とによって形成された隙間が無くなるように前記基板を前記ステージに密着させることにより、前記基板の反り部分を略平坦な状態にして、前記度当たり部と前記チップ先端との前記ステージの平坦面からの高さを略同一にし、
前記基板を前記ステージに密着させてその状態で、前記押し込み体と前記度当たり部のそれぞれとを接触させることによって前記押し込み体の変位を制御することにより、前記チップ先端のそれぞれに前記開口を形成することを特徴とする光学的な開口の作製方法。 - 請求項1に記載の方法を用いた光学的な開口の作製装置であって、
前記チップのそれぞれを覆うとともに前記ストッパーのそれぞれの少なくとも一部を覆うような略平面部を有する押し込み体と、
平坦面を有するステージと、
前記基板の反り部分と前記ステージの平坦面とによって形成された隙間が無くなるように前記基板を前記ステージに密着させることにより、前記基板の反り部分を略平坦な状態にして、前記度当たり部と前記チップ先端との前記ステージの平坦面からの高さを略同一にする基板密着部とを備え、
前記押し込み体は、前記チップに向う成分を有する力によって前記度当たり部のそれぞれに接触することにより、前記チップ先端上に備えられた前記遮光膜と対向する対向部分の変位が制御されるものであり、
前記基板を前記ステージに密着させその状態で、前記押し込み体を、前記チップに向う成分を有する力によって、前記チップ先端のそれぞれに前記開口を形成する作製装置。 - 前記基板密着部は、前記隙間に存在する空気を排出することにより、前記隙間を無くすものであることを特徴とする請求項2に記載の作製装置。
- 前記基板密着部は、前記ステージの平坦面に備えられるステージ側電極と、前記ステージ側電極と前記基板の反り部分に備えられる基板側電極とに静電気を与える静電発生部とを備え、
前記ステージ側電極と前記基板側電極とに静電気が与えられ、前記ステージ側電極と前記基板側電極とが互いに引き付けられることにより、前記隙間が無くなることを特徴とする請求項2に記載の作製装置。
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