JP4449212B2 - ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、ブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液圧制御シリンダを備えたブレーキ装置の一例が特開平9−511967に記載されている。このブレーキ装置は、(a)液圧によりブレーキを作動させるブレーキシリンダと、(b)運転者によるブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、(c)動力駆動装置の作動に基づいて作動させられる制御ピストンを含み、制御ピストンの前方の制御圧室に前記ブレーキシリンダが接続された液圧制御シリンダと、(d)前記動力駆動装置を制御することによって、前記ブレーキシリンダの液圧を制御するブレーキ液圧制御装置とを含むものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題、課題解決手段および効果】
本発明は、上記ブレーキ装置の改良であり、エネルギの有効利用を図り得るようにすることである。この課題は、ブレーキ装置を下記各態様の構成のものとすることによって解決される。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまで、本明細書に記載の技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常に、すべての事項を一緒に採用しなければならないものではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
(1)液圧によりブレーキを作動させるブレーキシリンダと、
運転者によるブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
動力駆動装置の作動に基づいて作動させられる制御ピストンを含み、制御ピストンの前方の制御圧室に前記ブレーキシリンダが接続され、後方の後方液圧室に前記マスタシリンダが常時連通する状態で、直接接続された液圧制御シリンダと、
前記動力駆動装置を制御することによって、前記ブレーキシリンダの液圧を制御するブレーキ液圧制御装置と
を含むことを特徴とするブレーキ装置。
本項に記載のブレーキ装置においては、液圧制御シリンダの制御によりブレーキシリンダの液圧が制御されるのであるが、液圧制御シリンダの後方液圧室にはマスタシリンダが常時連通する状態で接続される。したがって、ブレーキシリンダの液圧の制御にマスタシリンダの作動液を利用することができる。従来、液圧制御シリンダの制御によりブレーキシリンダの液圧が制御される場合には、マスタシリンダはストロークシミュレータに連通させられ、マスタシリンダの液圧がブレーキシリンダの液圧制御に利用されることはなかった。それに対して、本項に記載のブレーキ装置においては、ブレーキシリンダの液圧制御に利用されるため、その分、ブレーキシリンダの液圧を制御する場合に要する動力駆動装置の動力を低減させることができる。
また、本項に記載のブレーキ装置においては、マスタシリンダと後方液圧室とが液通路によって直接接続されるのであり、これらを接続する液通路の途中には、弁装置やストロークシミュレータ等が設けられていない。
(2)前記マスタシリンダと前記制御圧室とを接続する液通路と、
その液通路に設けられ、これらマスタシリンダと制御圧室とを連通させる開状態と、これらを遮断する閉状態とに切換え可能なマスタ遮断弁と
を含む(1)項に記載のブレーキ装置。
本項に記載のブレーキ装置においては、マスタシリンダと制御圧室との間にマスタ遮断弁が設けられている。マスタ遮断弁が開状態にある場合は、マスタシリンダとブレーキシリンダとが制御圧室を介して連通させられる。マスタシリンダの液圧がブレーキシリンダに供給されることにより、ブレーキが作動させられる。マスタ遮断弁が閉状態にある場合には、制御圧室がマスタシリンダから遮断されて、ブレーキシリンダに制御圧室の作動液が供給されることによってブレーキが作動させられる。
(3)前記ブレーキ液圧制御装置が、前記ブレーキ操作部材の操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部を含み、そのブレーキ操作状態検出部によって検出されたブレーキ操作状態に基づいて前記動力駆動装置を制御するものである(1)項または(2)項に記載のブレーキ装置。
本項に記載のブレーキ装置においては、動力駆動装置がブレーキ操作状態に基づいて制御される。
ブレーキ操作状態はブレーキ操作状態取得装置によって取得されるのであるが、ブレーキ操作状態には、ブレーキ操作部材に加えられる操作力、操作ストローク等のブレーキ操作量、ブレーキ操作量に対応した大きさの物理量(例えば、マスタシリンダの液圧、それと等価の液圧、減速度等)等が該当する。また、動力駆動装置はブレーキ操作状態に基づいて制御されるのであるが、ブレーキ操作状態に応じて制御されるようにしたり、ブレーキ操作状態の変化状態に応じて制御されるようにしたりすることができる。
(4)当該ブレーキ装置が、前記制御圧室と前記ブレーキシリンダとの間に設けられた液圧制御弁装置を含み、前記ブレーキ液圧制御装置が、(a)前記ブレーキ操作部材の操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部を含み、前記マスタ遮断弁の閉状態において、前記ブレーキ操作状態検出部によって検出されたブレーキ操作状態に基づいて前記動力駆動装置を制御して前記ブレーキシリンダの液圧を制御する手段と、(b)前記マスタ遮断弁の閉状態において、前記車輪の制動スリップ状態が路面の摩擦係数に対して適切な状態となるように前記液圧制御弁装置を制御して前記ブレーキシリンダの液圧を制御するアンチロック制御手段とを含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項1)。
(5)前記ブレーキ液圧制御装置が、前記動力駆動装置を、制御圧室の液圧がブレーキ操作状態に基づいた高さになるように制御する(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
本項に記載のブレーキ装置においては、制御圧室の液圧がブレーキ操作状態に基づいた高さに制御されるのであり、ブレーキシリンダの液圧をブレーキ操作状態に基づいた高さに制御することができる。
(6)前記動力駆動装置が制御される場合に、前記後方液圧室の容積がブレーキ操作部材の操作に伴って変化させられるようにされた(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
(7)前記動力駆動装置が制御される場合に、前記後方液圧室の液圧がブレーキ操作部材の操作力に応じた大きさになるようにされた(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
後方液圧室にはマスタシリンダが連通させられており、マスタシリンダと後方液圧室との間で作動液の授受が行われる。この場合において、後方液圧室の容積がブレーキ操作部材の操作に伴って変化させられ、かつ、後方液圧室の液圧がブレーキ操作部材の操作力に応じた液圧にされれば、ブレーキ操作部材に、操作力に応じた反力を付与することが可能となる。この場合には、液圧制御シリンダがストロークシミュレータの機能を備えることになるのであり、ストロークシミュレータが不要になる。
(8)前記マスタ遮断弁が、供給電流に応じて少なくとも連通状態と遮断状態とに切り換え可能な電磁遮断弁であり、
前記ブレーキ液圧制御装置が、前記電磁遮断弁を遮断状態に切り換えた状態で、前記動力駆動装置を制御することによって、ブレーキシリンダの液圧を制御する(2)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
本項に記載のブレーキ装置においては、マスタシリンダが制御圧室から遮断された状態で、制御圧室の液圧が制御される。
(9)前記液圧制御シリンダにおいて、前記制御ピストンの前記後方液圧室側の受圧面の面積が、前記制御圧室側の受圧面の面積より小さくされた(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項3)。
本項に記載のブレーキ装置においては、後方液圧室側の受圧面の面積が制御圧室側の受圧面の面積より小さくされているため、制御圧室から流出させられる作動液量より後方液圧室に供給される作動液量の方が少なくなる。そのため、マスタシリンダから流出させられる作動液量の増加を抑制することができるのであり、ブレーキ操作部材の操作ストロークを小さく抑えることが容易となる。マスタシリンダがブレーキシリンダから遮断された状態で操作ストロークが小さく抑えられるのであり、マスタシリンダをストロークシミュレータに接続しなくても、ストロークシミュレータに接続したのと同様の効果を得ることができる。
(10)前記マスタシリンダが、前記ブレーキ操作部材に連携させられた加圧ピストンであって、前方の加圧室に対向する側がブレーキ操作部材側の部分より小径とされたものを含み、その加圧室が前記液圧制御シリンダの後方液圧室に接続された(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
加圧ピストンの加圧室に対向する側がブレーキ操作部材側より小径とされている。そのため、加圧室側において小径とされていない場合に比較して、操作力が同じである場合の加圧室の液圧を大きくすることができるのであり、操作力に対する加圧室の液圧、すなわち、倍力率を大きくすることができる。
マスタシリンダがブレーキシリンダに連通する状態において、操作力が同じである場合に、ブレーキシリンダの液圧を大きくすることができるのであり、液圧制御シリンダが非作動状態にあっても、ブレーキシリンダの液圧の低下を抑制することができる。
(11)前記ブレーキシリンダが、複数の車輪の各々に設けられ、前記液圧制御シリンダが、前記複数のブレーキシリンダすべてに共通に設けられた(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項2)。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態であるブレーキ装置について図面に基づいて詳細に説明する。
10はマスタシリンダであり、12は液圧制御シリンダである。また、14,16は、前輪18、後輪20の回転を抑制するブレーキ22,24のブレーキシリンダである。ブレーキシリンダ14,16は、液圧制御シリンダ12を介してマスタシリンダ10に接続される。
【0005】
マスタシリンダ10は、ハウジング28に液密かつ摺動可能に設けられた加圧ピストン30,32を含む。加圧ピストン30が、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル34に連携させられている。加圧ピストン32の前方の加圧室36には前輪18のブレーキシリンダ14が接続され、加圧ピストン30の前方の加圧室38には後輪20のブレーキシリンダ16が接続されている。2つの加圧室36,38には同じ高さの液圧が発生させられる。
加圧ピストン30は、段付き形状を成したものであり、小径部42において加圧室38に対向する。また、大径部44と小径部42との段部とハウジング28とによって環状室46が形成される。小径部42には環状室46と加圧室38とを連通させる連通路48が設けられ、連通路48の途中に、環状室46から加圧室38へ向かう作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁50が設けられている。
【0006】
また、環状室46には流通制限装置60を介してリザーバ62が接続されている。リザーバ62には作動液がほぼ大気圧で蓄えられている。流通制限装置60は、リザーバ62から環状室46へ向かう方向の作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁66と、環状室46の液圧がリザーバ62の液圧より設定圧(リリーフ圧)以上高い場合に、環状室46からリザーバ62への作動液の流れを許容するリリーフ弁68と、オリフィス70とが互いに並列に設けられたものである。
【0007】
加圧ピストン30の前進(図の左方)に伴って環状室46、加圧室38の液圧が増加させられる。環状室46の液圧はリリーフ弁68のリリーフ圧に達するまで増加させられるが、環状室46の液圧が加圧室38の液圧より高い間は、環状室46の作動液が逆止弁50を経て加圧室38に供給され、ブレーキシリンダ16に供給される。本実施形態においては、リリーフ圧がほぼファーストフィルが終了する高さとされている。ファーストフィルが終了するまでの間は、作動液が、環状室46と加圧室38との両方からブレーキシリンダ14、16に供給されることになり、ファーストフィルを速やかに終了させることができる。
環状室46の液圧がリリーフ圧に達すると、作動液はリリーフ弁68を経てリザーバ62に流出させられる。この状態においては、加圧室38の液圧の方が環状室46の液圧より高くなるが、逆止弁50により加圧室38の作動液が環状室46に流れることが阻止される。ブレーキシリンダ14,16には、加圧室36,38から作動液が供給されて環状室46から作動液が供給されることがない。
このように、流通制限装置60はフィルアップ装置と称することができる。
【0008】
それ以降は、加圧ピストン30の前進に伴って加圧室38の液圧が加圧される。この場合には、加圧室38の液圧が小径部42によって加圧されるため、大径部44で加圧(環状室46と加圧室38との両方の液圧が加圧)される場合に比較して、ブレーキペダル30の操作力が同じである場合の加圧室38の液圧が高くなる。倍力率が高くなるのである。なお、環状室46とリザーバ62とはオリフィス70を介して接続されるため、加圧ピストン30が定常状態にある場合には、環状室46の液圧はほぼ大気圧にある。
また、加圧ピストン32が後退させられる場合には、環状室46の容積の増加に伴ってリザーバ62から逆止弁66を経て作動液が供給されるため、環状室46が負圧になることが回避される。
【0009】
大径部44の断面積(受圧面積)がAm1であり、小径部42の断面積がAm3である場合に、ブレーキシリンダ16とマスタシリンダ10との連通状態において加圧ピストン30の移動ストロークがΔLである場合に、加圧室38から流出する作動液量qは、ファーストフィルが終了する以前は(Am1・ΔL)であり、ファーストフィルが終了した後は(Am3・ΔL)である(Am1>Am3)。
また、踏力の増加量に対応する液圧の増加量がΔPFである場合において、加圧室38の液圧は、ファーストフィルが終了する以前は増加勾配ΔPM (=ΔPF)で増加させられるのに対し、ファーストフィルが終了した後は増加勾配ΔPM
(=ΔPF・Am1 /Am3)で増加させられる。
このように、ファーストフィルが終了する以前は、ブレーキシリンダに大きな流量で作動液を供給することができ、ファーストフィルが終了した後は大きな増圧勾配で加圧室38の液圧を増加させることができる。
なお、マスタシリンダ10にはリザーバ62から延び出させられた液通路が一対のカップシールを介して接続されている。また、ハウジング28の底部と加圧ピストン38との間、加圧ピストン30,32の間にはそれぞれリターンスプリング72,74が設けられている。
【0010】
加圧室36には、液通路90によって前輪18のブレーキシリンダ14が接続され、加圧室38には、液通路92によって後輪20のブレーキシリンダ16が接続される。液通路90,92の途中には、それぞれ、電磁開閉弁としてのマスタ遮断弁94,96が設けられている。マスタ遮断弁94,96の開閉により、ブレーキシリンダ14,16がマスタシリンダ10に連通させられたり、遮断されたりする。マスタ遮断弁94,96は電流が供給されない状態で開状態にある常開弁である。
マスタ遮断弁94,96は、本実施形態においては、電気系統が正常である場合において、ファーストフィルが終了した場合に、開状態から閉状態に切り換えられる。ブレーキシリンダ14,16には、ブレーキ操作開始当初はマスタシリンダ10から作動液が供給され、その後、液圧制御シリンダ12から供給される。また、電気系統の異常時等には開状態に切り換えられて、マスタシリンダ10の作動液がブレーキシリンダ14,16に供給されることにより、ブレーキ22,24が作動させられる。
マスタ遮断弁94,96と並列にそれぞれ逆止弁98が設けられている。逆止弁98は、マスタ遮断弁94,96のマスタシリンダ側からブレーキシリンダ側への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止するものである。逆止弁98により、マスタ遮断弁94,96が閉状態にあっても、マスタシリンダ側の液圧がブレーキシリンダ側の液圧より高くなれば、マスタシリンダ側からブレーキシリンダ側への作動液の流れが許容される。
【0011】
液通路90、92のマスタ遮断弁94,96の下流側には液圧制御シリンダ12が設けられている。
液圧制御シリンダ12は、電動モータである制御用モータ100の作動に基づいて作動させられる。制御用モータ100は、正・逆両方向に作動可能なものであり、制御用モータ100の回転運動は運動変換装置102によって直線運動に変換される。運動変換装置102は、本実施形態においてはボールねじ機構を含むものである。液圧制御シリンダ12は、ハウジング104に液密かつ摺動可能に設けられた制御ピストン106,108等を含む。制御ピストン106の外周部にはOリングが設けられ、液密に保たれる。制御ピストン106には、運動変換装置102の出力軸としての駆動軸110の前進に伴って前進させられるのであり、制御用モータ100の作動によって、前進、後退させられる。
図に示すように、電動モータ100の出力軸111の回転は、一対のギヤ112,114を介して回転軸116に伝達され、回転軸116の回転が運動変換装置102によって直線運動に変換されて、駆動軸110に出力されるのである。
【0012】
制御ピストン106、108の前方(図の右方)の制御圧室120,122には、それぞれ、前輪18,後輪20のブレーキシリンダ14,16が接続されている。制御圧室120,122を介してマスタシリンダ10とブレーキシリンダ14,16とが接続されている。
【0013】
制御ピストン106,108は、互いに同心かつ直列に配設されている。また、2つの制御ピストン106,108の間、制御ピストン108とハウジング104との間にはリターンスプリング124、126が設けられている。制御ピストン108は、制御圧室120,122の液圧に基づいて移動させられるのであり、この意味において、制御ピストン108を浮動ピストンと称することができる。また、制御ピストン108の制御圧室120,122に対向する受圧面の面積は互いに等しく、リターンスプリング124,126の付勢力がほぼ同じであるため、制御圧室120,122の液圧は同じ高さにされる。前輪18、後輪20のブレーキシリンダ14,16には、それぞれ、同じ高さの液圧の作動液が供給されるのであり、ブレーキシリンダ14,16の液圧が、液圧制御シリンダ12の制御により、共通に増圧・減圧させられることになる。制御ピストン108はハウジング104に、シール部材127を介して液密に摺動可能に嵌合されているが、シール部材127によって制御圧室120,122が隔離され、2つの系統が独立とされている。
なお、シール部材127は制御ピストン側に設けてもよい。
【0014】
また、制御ピストン106の後方(図の左方)の後方液圧室128にはマスタシリンダ10の加圧室36が液通路130によって接続されている。液通路130の途中には何も設けられておらず、加圧室36と後方液圧室128とが直接接続されることになる。常時双方向の流れが許容される連通状態にある。
本実施形態においては、制御ピストン106は、後方液圧室側の後方受圧面132の面積が、制御圧室側の制御側受圧面134の面積より小さくされている。その結果、マスタシリンダ10から供給された作動液量に対してブレーキシリンダ14,16に供給される作動液量が多くなるようにされている。
【0015】
制御用モータ100の作動に基づいて制御ピストン106,108が前進させられると、それに伴って後方液圧室128の容積が増加させられる。後方液圧室128には、マスタシリンダ10の加圧室36から作動液が供給される。ブレーキペダル34の踏込力が緩められると、後方液圧室128の作動液はマスタシリンダ10の加圧室36に戻される。
なお、図の144はスラストベアリングであり、146はラジアルベアリングである。これらによって、軸方向力および半径方向力が受けられる。また、148はフランジであり、フランジ148によって制御圧室側から加えられる軸方向力が受けられる。
【0016】
前記液通路90,92の液圧制御シリンダ12の下流側には、それぞれ、液圧制御弁装置160,162が設けられている。液圧制御弁装置160、162はそれぞれ、保持弁170および減圧弁172を含む。保持弁170は液圧制御シリンダ12とブレーキシリンダ14,16との間に設けられ、減圧弁172は、ブレーキシリンダ14,16とリザーバ174との間に設けられ、これら保持弁170,減圧弁172の制御により、各車輪18,20のブレーキシリンダ14,16の液圧が別個に制御される。本実施形態においては、液圧制御弁装置160,162の制御により、各車輪の制動スリップ状態が路面の摩擦係数に対して適切な状態になるように、アンチロック制御が行われる。
リザーバ174からは、ポンプ通路180が延び出させられており、保持弁170の上流側で液圧制御シリンダ12の下流側に接続されている。ポンプ通路180の途中には、ポンプ182,逆止弁184,186およびダンパ188が設けられている。ポンプ182はポンプモータ190の駆動によって作動させられる。
【0017】
本ブレーキ装置は、図2に示すブレーキECU200によって制御される。ブレーキECU200は,コンピュータを主体とする制御部202と複数の駆動回路とを含む。制御部202は、CPU204,ROM206、RAM208,入・出力部210等を含む。入・出力部210には、ブレーキペダル34が踏み込まれた状態にあるか否かを検出するブレーキスイッチ211、ブレーキペダル34に加えられる踏力を検出する踏力センサ212,マスタシリンダ10の加圧室38の液圧を検出するマスタ圧センサ214、液圧制御シリンダ12の制御圧室120の液圧を検出する制御圧センサ216,各車輪18,20の回転速度を検出する車輪速センサ218等が接続されている。マスタ圧センサ212は加圧室38に接続された液通路92に設けられている。制御圧センサ216は、液圧制御弁装置160、162が図示する原位置にある間は、ブレーキシリンダ14,16の液圧を検出する。
また、入・出力部210には、駆動回路226を介して、保持弁170、減圧弁172、マスタ遮断弁94,96のコイルが接続されるとともに、ポンプモータ190、制御用モータ100等が接続されている。
さらに、ROM206には、図3のフローチャートで表される通常時ブレーキ制御プログラム、フローチャートの図示は省略するがアンチロック制御プログラム等の種々のプログラムやテーブルが格納されている。
【0018】
次に作動について説明する。システムが正常である場合には、マスタシリンダ10がブレーキシリンダ14,16から遮断された状態で、ブレーキシリンダ14,16の液圧(以下、ブレーキ液圧と略称する)が液圧制御シリンダ12の制御により制御される。
液圧制御シリンダ12は、ブレーキペダル34の操作状態に基づいて制御される。ブレーキ操作状態に基づいて目標値(例えば、目標ブレーキ液圧、目標減速度)が決定され、実際の検出値(例えば、実ブレーキ液圧、実前後G)が目標値に近づくように制御されるのである。
本実施形態においては、目標値としての目標ブレーキ液圧に実ブレーキ液圧が近づくように制御される。なお、目標値としての目標減速度に実減速度が近づくように制御されるようにしたり、走行中は減速度に基づいて制御され、停止中はブレーキ液圧に基づいて制御されるようにしたりすることもできる。
【0019】
ブレーキペダル34の操作が解除された場合には、マスタ遮断弁94,96のコイルへの供給電流が0にされ、図示する原位置に保たれる。ブレーキシリンダ14,16の作動液は開状態にあるマスタ遮断弁94,96を経てマスタシリンダ10に戻される。また、後方液圧室128の作動液は、液通路130を経てマスタシリンダ10に戻される。
【0020】
制御用モータ100への供給電力は、制御圧室120,122の液圧が踏力に応じて決まる目標ブレーキ液圧になるように制御される。制御ピストン106には、制御用モータ100によって加えられる駆動力F(I)と、後方液圧室128の液圧と、制御圧室120の液圧とが作用する。後方液圧室128の液圧は加圧室36の液圧PMと同じであるため、制御圧室120の液圧PBは、
PB=(PM・SM+F(I))/SB
となる。ここで、制御ピストン106の後方側受圧面132の面積がSMであり、制御側受圧面134の面積がSBである。
また、マスタ圧PMは、踏力に対応する高さであり、制御圧PBの目標値は踏力に一定の倍力率を掛けた大きさに対応する高さに決定されるため、マスタ圧と制御圧との間には、関係(PB=k・PM)が成立し、この関係を上述の式に代入すれば、式
PB=(k・F(I))/(k・SB−SM)
が得られる。この式に示すように、目標ブレーキ液圧(制御圧PB)と駆動力F(I)との間には図4に示す関係が成立するのであり、目標ブレーキ液圧に対応する駆動力F(I)が得られるように電流が供給される。
【0021】
制御ピストン106は制御用モータ100の回転に伴って移動させられ、制御ピストン106の移動に伴って後方液圧室128の容積が増加、減少させられる。この後方液圧室128と加圧室36との間においては、作動液の授受が行われる。また、制御ピストン106には、制御用モータ100の駆動トルクに対応する駆動力F(I)が加えられる。
この場合において、制御用モータ100によって出力される駆動トルクと制御用モータ100の回転数との関係は制御用モータ100の特性によって決まり、制御ピストン106に加えられる駆動力や制御ピストン106の移動速度は、制御用モータ100への供給電流、運動変換装置102,液圧制御シリンダ12,制御ゲイン等によって決まる。
【0022】
そこで、本実施形態においては、制御用モータ100への供給電流が制御圧室120,122の液圧がブレーキ操作状態に基づいて制御された場合に、後方液圧室128の容積がブレーキペダル34の操作に応じて、すなわち、加圧室36の容積の変化に応じて変化し、かつ、後方液圧室128の液圧がブレーキペダル34の操作力に応じた大きさになるように、制御用モータ100の特性、液圧制御シリンダ12の構造、運動変換装置102の諸言、制御ゲイン等が設定されているのである。
なお、上述の制御態様は一例であり、制御用モータ100の制御は上記態様に限らない。
【0023】
図3のフローチャートにおいて、ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、ブレーキペダル34が踏み込まれているか否かが判定される。踏み込まれている場合には、S2において、制御圧センサ216による検出液圧がファーストフィル終了時の液圧に達したか否かが判定される。ファーストフィル終了時液圧に達する以前においては、S3において、マスタ遮断弁94,96は開状態のままである。ブレーキシリンダ14,16には大きな流量で作動液が供給されるので、ファーストフィルを速やかに終了させることができる。この場合には、液圧制御シリンダ12は非作動状態にあるため、加圧室36の作動液が後方液圧室128に供給されることはない。
【0024】
ファーストフィルが終了すると、S4において、マスタ遮断弁94,96が閉状態とされる。S5において、踏力センサ212によって踏力が読み込まれ、それに応じて目標ブレーキ液圧が決定され、S6において、それに応じて制御用モータ100が制御される。ブレーキシリンダ14,16には制御圧室120,122から作動液が供給され、ブレーキ18,20が作動させられる。
この場合において、制御ピストン106の後方液圧室側の受圧面132の面積が制御圧室側の受圧面134より小さくされているため、マスタシリンダ10から流出させられる作動液に対して制御圧室120,122から流出させられる作動液の方が量が大きくなる。そのため、運転者のブレーキストロークが過大になることが回避される。また、後方液圧室128の容積が加圧室36の容積変化に伴って変化させられるのであり、後方液圧室128の液圧が踏力に応じた高さにされる。それによって、ブレーキペダル34に反力を加えることができる。
【0025】
それに対して、ブレーキペダル34の操作が解除された場合には、S3において、前述のように、マスタ遮断弁94,96が図示する原位置に戻される。
また、電気系統に異常が生じた場合にも同様に、図示する原位置に戻される。マスタ遮断弁94,96は開状態にされるのであり、加圧室36,38の作動液がブレーキシリンダ14,16に直接供給されることによって、ブレーキ22,24が作動させられる。この場合には、前述のように、加圧ピストン32の小径部42によって加圧室38の液圧が増加させられるため、踏力に対して大きな液圧を発生させることができる。
【0026】
このように、本実施形態においては、液圧制御シリンダ12の制御により、ストロークシミュレータをマスタシリンダ10に連通させる場合と同様な効果が得られる。制御中においては、操作ストロークを抑制することができ、ブレーキシリンダ14,16に連通させられた場合には、大きな倍力率で加圧室38の液圧を高めることができる。
また、本実施形態においては、制御ピストン106に、駆動力のみならず、後方液圧室128の液圧も加えられる。そのため、後方液圧室128の液圧が加えられない場合に比較して、制御圧室120,122の液圧を同じ高さに制御する場合の制御用モータ100への供給電力を少なくすることができる。マスタシリンダ10の液圧を利用することによって、制御用モータ100における消費電力を低減させることができるのである。
さらに、ストロークシミュレータが不要になるため、ブレーキ装置の部品点数を少なくすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0027】
なお、ブレーキ装置は図5に示す装置とすることができる。本実施形態においては、マスタシリンダ250が加圧ピストン252を1つしか備えていないものである。そして、加圧ピストン252の前方の加圧室254は制御圧室120に液通路90によって接続されるとともに、液通路130によって後方液圧室128に接続される。制御圧室122にはリザーバ62が液通路256を介して接続されている。それによって、制御圧室122に作動液不足が生じることが回避される。
このように、本発明はマスタシリンダが2つの加圧ピストンを備えたタンデム式のものに限らず、1つの加圧ピストンを備えたものであっても、適用することができるのである等、本発明は、〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の欄に記載の態様の他、当業者による種々の変更,改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるブレーキ装置の回路図(一部断面図)である。
【図2】上記ブレーキ装置に含まれるブレーキ液圧制御装置の回路図である。
【図3】上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納されたブレーキ制御プログラムを表すフローチャートである。
【図4】上記ブレーキ液圧制御装置における制御用モータによる駆動力と目標ブレーキ液圧との関係を示す図である。
【図5】本発明の別の一実施形態であるブレーキ装置の回路図(一部断面図)である。
【符号の説明】
10 マスタシリンダ
12 液圧制御シリンダ
14,16 ブレーキシリンダ
100 制御用モータ
128 後方液圧室
130 液通路
Claims (3)
- 車輪に設けられ、液圧によりブレーキを作動させるブレーキシリンダと、
運転者によるブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
動力駆動装置の作動に基づいて作動させられる制御ピストンを含み、制御ピストンの前方の制御圧室に前記ブレーキシリンダが接続され、後方の後方液圧室に前記マスタシリンダが常時連通する状態で、直接接続された液圧制御シリンダと、
前記マスタシリンダと前記制御圧室とを接続する液通路と、
その液通路に設けられ、これらマスタシリンダと制御圧室とを連通させる開状態と、これらを遮断する閉状態とに切換え可能なマスタ遮断弁と
前記制御圧室と前記ブレーキシリンダとの間に設けられた液圧制御弁装置と、
(a)前記ブレーキ操作部材の操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部を含み、前記マスタ遮断弁の閉状態において、前記ブレーキ操作状態検出部によって検出されたブレーキ操作状態に基づいて前記動力駆動装置を制御して前記ブレーキシリンダの液圧を制御する手段と、(b)前記マスタ遮断弁の閉状態において、前記車輪の制動スリップ状態が路面の摩擦係数に対して適切な状態となるように前記液圧制御弁装置を制御して前記ブレーキシリンダの液圧を制御するアンチロック制御手段とを含むブレーキ液圧制御装置と
を含むことを特徴とするブレーキ装置。 - 前記ブレーキシリンダが、複数の車輪の各々に設けられ、前記液圧制御シリンダが、前記複数のブレーキシリンダすべてに共通に設けられた請求項1に記載のブレーキ装置。
- 前記液圧制御シリンダにおいて、前記制御ピストンの前記後方液圧室側の受圧面の面積が、前記制御圧室側の受圧面の面積より小さくされたことを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ装置。
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