JP4447704B2 - 変倍光学系及びそれを有するカメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は変倍光学系及びそれを有するカメラに関し、特に変倍光学系の一部のレンズ群を光軸と垂直方向に移動させることにより、該変倍光学系が振動(傾動)した時の撮影画像のぶれを光学的に補正して静止画像を得るようにし撮影画像の安定化を図ったビデオカメラや銀塩写真用カメラ、電子スチルカメラ、デジタルカメラなどに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
進行中の車や航空機等移動物体上から撮影しようとすると撮影系に振動が伝わり手振れとなり撮影画像にぶれが生じる。
【0003】
従来より撮影画像のぶれを防止する機能を有した防振光学系が種々提案されている。
【0004】
例えば特開昭56−21133号公報では光学装置に振動状態を検知する検知手段からの出力信号に応じて、一部の光学部材を振動による画像の振動的変位を相殺する方向に移動させることにより画像の安定化を図っている。特開昭61−223819号公報では最も物体側に可変頂角プリズムを配置した撮影系において、撮影系の振動に対応させて該可変頂角プリズムの頂角を変化させて画像の安定化を図っている。
【0005】
特開平1−116619号公報や特開平2−124521号公報では加速度センサー等を利用して撮影系の振動を検出し、この時得られる信号に応じ、撮影系の一部のレンズ群を光軸と垂直方向に振動されることにより静止画像を得ている。
【0006】
特開平7−128619号公報では、物体側より順に変倍及び合焦の際に固定の正の屈折力の第1群、変倍機能を有する負の屈折力の第2群、開口絞り、正の屈折力の第3群、そして変倍により変動する像面を補正する補正機能と合焦機能の双方の機能を有する正の屈折力の第4群の4つのレンズ群を有した変倍光学系であって、該第3群は負の屈折力の第31群と正の屈折力の第32群の2つのレンズ群より成り、該第32群を光軸と垂直方向に移動させて該変倍光学系が振動したときの撮影画像のブレを補正している。
【0007】
特開平7−199124号公報では、正,負,正,正の屈折力の4群構成の変倍光学系の第3群全体を振動させて防振を行なっている。
【0008】
一方、特開平10−62687号公報では正,負,正,正の屈折力のレンズ群より成る4群構成のズームレンズにおいて第2、第3レンズ群で変倍を行ない第1レンズ群を正の単レンズで構成することでレンズ全長を短縮しつつ高性能化を図ったズームレンズを提案している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一般に防振光学系を撮影系の前方に配置し、該防振光学系の一部の稼動レンズ群を振動させて撮影画像のぶれを無くし、静止画像を得る方法は装置全体が大型化し、且つ該稼動レンズ群を移動させるための移動機構が複雑化してくるという問題点があった。
【0010】
可変頂角プリズムを利用して防振を行う光学系では特に長焦点距離側において防振時に偏心倍率色収差の発生量が多くなるという問題点があった。
【0011】
一方撮影系の一部のレンズを光軸に対して垂直方向に平行偏心させて防振を行う光学系においては、防振のために特別に余分な光学系を必要としないという利点はあるが、移動させるレンズのための空間を必要とし、また防振時における偏心収差の発生量が多くなってくるという問題点があった。
【0012】
また正,負,正,正の屈折力のレンズ群より成る4群構成の変倍光学系の第3レンズ群全体を光軸に垂直方向に移動させて防振を行った場合、第3レンズ群を全長短縮のため正レンズとメニスカス状の負レンズのテレフォトタイプで構成したとき偏心コマや偏心像面湾曲といった偏心収差が発生して画質が劣化するという問題点があった。
【0013】
更に以上の従来例のズームレンズでズーム比が8倍以上のものはビデオカメラ等には対応出来るが、100万画素相当の撮像素子を有する電子スチルカメラに使用するには収差補正の点で不十分であった。
【0014】
本発明は変倍光学系の一部を構成する比較的小型軽量のレンズ群を光軸と垂直方向に移動させて、該変倍光学系が振動(傾動)したときの画像のぶれを補正するように構成するとともにぶれを補正するためのレンズ群の構成を適切なものとすることにより、装置全体の小型化、機構上の簡素化及び駆動手段の負荷の軽減化を図りつつ該レンズ群を偏心させた時の偏心収差を良好に補正した防振機能を有し、例えば100万画素以上の撮像素子を有する電子スチルカメラにも十分対応出来る変倍光学系及びそれを有するカメラの提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の変倍光学系は、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群から構成され、少なくとも前記第2レンズ群と前記第3レンズ群を移動させて変倍を行い、前記第4レンズ群を移動させてフォーカスを行う変倍光学系であって、前記第1レンズ群は、正の単レンズ、又は1枚の正レンズと1枚の負レンズにより構成され、前記第3レンズ群は複数の正レンズと像面側に凹面を向けた1枚の負レンズより構成され、前記第4レンズ群は1枚の正レンズにより構成され、前記第3レンズ群全体を光軸と垂直方向に移動させて該変倍光学系が振動したときの撮影画像のぶれを補正することができ、前記第3レンズ群の望遠端における倍率をB3t、前記第4レンズ群の望遠端における倍率をB4t、前記第3レンズ群の焦点距離をf3、広角端と望遠端における全系の焦点距離を各々fw、ftとするとき、
0.5<|(1−B3t)・B4t|<3
1.5<f3/fw≦2.338
2.967≦ft/fw
なる条件式を満足することを特徴としている。
【0016】
請求項2の発明は請求項1の発明において、前記第2レンズ群は、物体側から像側へ順に、像面側に凹面を向けたメニスカス状の負レンズ、負レンズ、物体側に凸面を向けた正レンズより構成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項3の発明は請求項1の発明において、前記第1レンズ群は正の単レンズより成り、該単レンズの物体側と像面側のレンズ面の曲率半径をそれぞれR1,R2、該単レンズの材質のアッベ数をν1とするとき、
−3<(R1+R2)/(R1−R2)<0
55<ν1
なる条件を満足することを特徴としている。
【0018】
請求項4の発明のカメラは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の変倍光学系を備えることを特徴としている。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態1の近軸屈折力配置を示す概略図である。図1においてL1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群である。
【0026】
本実施形態では第3レンズ群を光軸に垂直方向に移動させることにより、光学系全体が振動(傾動)したときの撮影画像のぶれ(画像ぶれ)を補正している。SPは開口絞りであり、第3レンズ群L3の前方に位置している。
【0027】
本実施形態では広角端から望遠端への変倍に際して矢印のように第2レンズ群と第3レンズ群を光軸上を移動させている。また、第4レンズ群を光軸上移動させてフォーカシングを行うリヤーフォーカス式を採用している。尚、第1レンズ群は変倍及びフォーカスの際固定である。
【0028】
広角端から望遠端への変倍に際しては第3レンズ群は物体側に移動し、第2レンズ群は最初は像面側にそして途中から物体側へ移動する。開口絞りSPは第3レンズ群と一体に物体側に移動するが必要に応じて独立に移動しても良い。
【0029】
本実施形態において例えば無限遠物体から近距離物体ヘフォーカスを行う場合には同図に示すように第4レンズ群を前方に繰り出すことにより行っている。
【0030】
本実施形態においては第3レンズ群L3を防振のために光軸と垂直方向に移動させて光学系全体が振動したときの画像ぶれを補正している。これにより可変頂角プリズム等の光学部材や防振のためのレンズ群を新たに付加することなく防振を行っている。
【0031】
次に本発明に係わる変倍光学系においてレンズ群を光軸と垂直方向に移動させて撮影画像のぶれを補正する防振系の光学的原理を図2を用いて説明する。
【0032】
図2(A)に示すように光学系が固定群Y1、偏心群Y2、そして固定群Y3の3つの部分から成り立っており、レンズから十分に離れた光軸上の物点Pが撮像面IPの中心に像点pとして結像しているものとする。今、撮像面IPを含めた光学系全体が図2(B)のように手ぶれにより瞬間的に傾いたとすると、物点Pは像点P′にやはり瞬間的に移動し、ぶれた画像となる。
【0033】
一方、偏心群Y2を光軸と垂直方向に移動させると図2(C)のように、像点pはp"に移動し、その移動量・方向は屈折力配置に依存し、そのレンズ群の偏心敏感度として表される。そこで図2(B)で手振れによってずれた像点p′を偏心群Y2を適切な量だけ光軸と垂直方向に移動させることによってもとの結像位置pに戻すことで図2(D)に示すとおり、手振れ補正つまり防振を行っている。
【0034】
今、光軸をθ°補正するために必要なシフトレンズ群の移動量をΔ、光学系全体の焦点距離をf、シフト群Y2の偏心敏感度をTSとするとΔは以下の式で与えられる。
【0035】
Δ=f・tan(θ)/TS
今、シフト群の偏心敏感度TSが大きすぎるとΔは小さな値となり防振に必要なシフト群の移動量は小さく出来るが、適切に防振を行うための制御が困難になり、補正残りが生じてしまう。
【0036】
特にビデオカメラやデジタルスチルカメラではCCDなどの撮像素子のイメージサイズが銀塩フィルムと比べて小さく、同一画角に対する焦点距離が短いため、同一角度を補正するためのシフトレンズ群のシフト量Δが小さくなる。従って、メカの精度が同程度だと画面上での補正残りが相対的に大きくなることになってしまう。
【0037】
一方、偏心敏感度TSが小さすぎると制御のために必要なシフトレンズ群の移動量が大きくなってしまい、シフトレンズ群を駆動するためのアクチュエーターなどの駆動手段も大きくなってしまう。
【0038】
実施形態1では各レンズ群の屈折力配置を適切な値に設定することで第3レンズ群の偏心敏感度TSを適正な値とし、メカの制御誤差による防振の補正残りが少なく、アクチュエーターなどの駆動手段の負荷も少ない光学系を達成している。
【0039】
具体的には、該第3レンズ群全体を光軸と垂直方向に移動させて該変倍光学系が振動した時の撮影画像のぶれを補正し、少なくとも第2レンズ群と第3レンズ群を移動させて変倍を行ない、第1レンズ群は正の単レンズまたは1枚の正レンズと1枚の負レンズで構成していることを特徴としている。
【0040】
図3に実施形態1の数値実施例1の光学系の断面図を示す。
【0041】
本実施形態では第1レンズ群を正の単レンズで構成している。又第2レンズ群を物体側から順に像面側に強い凹面を向けたメニスカス状の負レンズ、負レンズ、物体側に強い凸面を向けた正レンズで構成している。ここで「像面側に強い」とは「屈折力の絶対値が物体側に比べて像面側のレンズ面が強い(大きい)」ことを意味する。第3レンズ群を物体側から順に正レンズ31、正レンズと像面側に強い凹面をむけた負レンズの貼り合せレンズ32、そして正レンズ33で構成している。正レンズ31はその物体側のレンズ面が非球面形状を有している。
【0042】
第3レンズ群中に像面側に強い凹面をむけたメニスカス状の負レンズを設けることにより第3レンズ群全体をテレフォト構成として第2レンズ群と第3レンズ群の主点間隔を短縮し、レンズ全長の短縮化を達成している。
【0043】
本実施形態ではメニスカス状の負レンズ32の像面側に正レンズ33を配置することによってある程度のテレフォト構成を維持しつつ、第3レンズ群内で歪曲収差を補正し、第3レンズ群をシフトして防振を行う際に発生する偏心歪曲収差の発生を低減している。また本実施形態では正レンズ31に非球面を設けることにより、第3レンズ群で球面収差を抑制し、防振時に発生する偏心コマ収差を低減している。
【0044】
また本発明では第4レンズ群を1枚の正レンズで構成することでフォーカスのアクチュエーターの負荷を低減している。
【0045】
本実施形態では第4レンズ群を正の単レンズで構成しているが、ここに負レンズを加えると更にフォーカシングの際の色収差の変動を低減することができる。
【0046】
本発明の実施形態では以上のように、レンズ構成を設定することにより、基準状態と防振状態において、全変倍範囲にわたり、又物体距離全体にわたり高い光学性能を得ている。
【0047】
尚、本発明の防振機能を有した変倍光学系において、更に良好なる光学性能を得るには、次の条件のうち少なくとも1つを満足させるのが良い。
【0048】
(ア-1)第3レンズ群、及び第3レンズ群より像側に配置したレンズ群の望遠端での倍率を各々B3t、Brtとしたとき
0.5<|(1−B3t)・Brt|<3…(1)
なる条件式を満足することである。
【0049】
第3レンズ群の望遠端での偏心敏感度TS3は望遠端における第3レンズ群の倍率をB3t、第3レンズ群より像面側のレンズ群の倍率をBrtとしたとき
TS3=(1−B3t)・Brtで与えられる。
【0050】
本発明においてはこの絶対値を
0.5<|(1−B3t)・Brt|<3…(1)
なる条件を満足するようにして偏心敏感度を適切な範囲に設定している。
【0051】
条件式(1)の下限を超えると防振の際の第3レンズ群の移動量が大きくなり過ぎる。逆に上限を超えると敏感度が大きくなりすぎて防振の制御が困難になる。
【0052】
さらに制御性を良くしてかつ移動量を小さくするには条件式(1)の数値範囲を
0.6<|(1−B3t)・Brt|<2…(1a)
なる条件を満足するようにするのが望ましい。
【0053】
(ア-2)第3レンズ群の焦点距離をf3、広角端と望遠端における全系の焦点距離を各々fw,ftとするとき
1.5<f3/fw≦2.338…(2)
2.967≦ft/fw …(3)
なる条件式を満足するのが良い。
【0054】
条件式(2)の下限を超えて第3レンズ群の屈折カが強くなり過ぎると全長の短縮化には有利だがペッツバール和が正の方向に大きくなりすぎて像面湾曲の補正が困難になるので良くない。逆に上限を超えると変倍に要する第3レンズ群の移動量が大きくなり過ぎて良くない。
【0055】
また条件式(3)を超えると所定のズーム比が得られない。
【0056】
図4は参考例1の近軸屈折力配置を示す概略図である。図4においてL1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群であり、第2レンズ群を光軸に垂直方向に移動させることにより、光学系全体が振動(傾動)したときの撮影画像のぶれを補正している。
【0057】
参考例1でも広角端から望遠端への変倍に際して矢印のように第2レンズ群と第3レンズ群を光軸上を移動させることにより変倍を行なっている。また、第4レンズ群を光軸上移動させてフォーカシングを行うリヤーフォーカス式を採用している。
【0058】
第2レンズ群で防振を行なうことでレンズ径の大きさという点で実施形態1に比べて不利だが防振の際の周辺光量の変化をより低減している。防振における光学的作用は図2に示した実施形態1と同様である。図16に参考例1の数値実施例2の広角端におけるレンズ断面図を示す。
【0059】
参考例1では第1レンズ群は正の単レンズ又は1枚の正レンズと1枚の負レンズで構成されていることを特徴としている。第1レンズ群と第3レンズ群のレンズ構成は実施形態1と同様である。
【0060】
尚、参考例1において、基準状態と防振状態との双方において良好なる光学性能を得るには次の条件式を満足させるのが良い。
【0061】
(イ-1)参考例1において第2レンズ群の防振時の敏感度TS2は、該第2レンズ群、第2レンズ群より像側に配置したレンズ群の望遠端での倍率を各々B2t、Brtとしたとき
TS2=(1−B2t)・Brtで与えられる。
【0062】
参考例1においては、この絶対値が0.5<|(1−B2t)・Brt|<3…(4)
なる条件式を満足することが望ましい。
【0063】
条件式の下限を超えて第2レンズ群の敏感度が小さくなると防振時の第2レンズ群の移動量が大きくなるので良くない。逆に上限を超えて敏感度が大きくなり過ぎると制御が困難になるので良くない。
【0064】
尚、本発明において更に基準状態と防振状態での光学性能を良好に維持するためには次の諸条件のうちの少なくとも1つを満足させるのが良い。
【0065】
(ウ-1)第2レンズ群は、物体側から順に、像面側に強い凹面を向けたメニスカス状の負レンズ、負レンズ、物体側に強い凸面を向けた正レンズを有することである。
【0066】
(ウ-2)第1レンズ群は正の単レンズより成り、その物体側と像面側のレンズ面の曲率半径をそれぞれR1,R2、その材質のアッベ数をν1とするとき
−3<(R1+R2)/(R1−R2)<0…(5)
55<ν1…(6)
なる条件を満足するのが望ましい。
【0067】
条件式(5)の下限を超えると望遠端で球面収差が負の方向に増大し過ぎ、逆に上限を超えるとコマ収差の補正が困難になるので良くない。
【0068】
また(6)式の下限を超えると変倍に伴なう軸上及び倍率の色収差補正が困難になるので良くない。
【0069】
図5は本発明の実施形態2の近軸屈折力配置を示す概略図である。図5においてL1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折カの第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群である。
【0070】
本実施形態では第3レンズ群L3を光軸に垂直方向に移動させることにより、光学系全体が振動(傾動)したときの撮影画像のぶれを補正している。SPは開口絞りであり、第3レンズ群L3の前方に位置している。
【0071】
本実施形態では広角端から望遠端への変倍に際して矢印のように第1レンズ群、第2レンズ群と第3レンズ群を光軸上を移動させことにより変倍を行なっている。また、第4レンズ群を光軸上移動させてフォーカシングを行うリヤーフォーカス式を採用している。
【0072】
広角端から望遠端への変倍に際しては第1レンズ群と第3レンズ群は物体側に移動し、第2レンズ群は最初は像面側に、そして途中から物体側へ移動する。
【0073】
第1レンズ群L1を物体側に移動させることで変倍に要する第3レンズ群L3の移動量を小さくして広角端におけるレンズ全長の短縮を可能としている。開口絞りSPは第3レンズ群と一体に物体側に移動するが必要に応じて独立に移動しても良い。
【0074】
本実施形態において例えば望遠端において無限遠物体から近距離物体ヘフォーカスを行う場合には同図に示すように第4レンズ群を前方に繰り出すことにより行っている。
【0075】
実施形態2において広角端におけるレンズ全長の短縮効果を十分に得るためには広角端から望遠端までの変倍に要する第1レンズ群の移動量をM1,第3レンズ群の移動量をM3とするとき0.2<M1/M3<1.5…(7)
なる条件を満足するのが良い。
【0076】
下限値を超えて第1レンズ群の移動量が小さくなると、レンズ全長の短縮効果が十分に得られない。逆に上限を超えて第1レンズ群の移動量が大きくなり過ぎると第1レンズ群を繰り出すためのメカ機構が複雑になるので良くない。
【0077】
図6に実施形態2の数値実施例3の広角端のレンズ断面図をしめす。本実施形態では第1レンズ群を正と負の2枚のレンズで構成することで第1レンズ群で発生する軸上、倍率色収差を低減し、変倍に伴なう軸上及び倍率色収差の変動を改善している。
【0078】
尚、実施形態2においても、第2レンズ群を像面側に強い凹面を向けたメニスカス状の負レンズ、負レンズ、そして物体側に凸面を向けた正レンズより構成するのが良い。
【0079】
次に本発明の実施形態1、2と参考例1の数値実施例を示す。各数値実施例においてRiは物体側より順に第i番目の面の曲率半径、Diは物体側より順に第i番目の面と第(i+1)番目の面の間隔、Niとνiは各々物体側より順に第i番目の光学部材のガラスの屈折率とアッベ数である。又前述の各条件式と数値実施例の関係を表1に示す。
【0080】
非球面形状は光軸方向にX軸、光軸と垂直方向にH軸、光の進行方向を正としRを近軸曲率半径、K,B,C,D,Eを各々非球面係数としたとき
【0081】
【数1】
なる式で表している。
【0082】
数値実施例1
f=1〜2.97 Fno=2.43〜3.60 2ω=64.2°〜23.9°
R 1=3.333 D 1=0.60 N 1=1.516330 ν 1=64.1
R 2=19.183 D 2=可変
R 3=5.356 D 3=0.13 N 2=1.834000 ν 2=37.2
R 4=1.141 D 4=0.63
R 5=-13.107(非球面) D 5=0.17 N 3=1.658441 ν 3=50.9
R 6=1.939 D 6=0.07
R 7=1.838 D 7=0.42 N 4=1.846660 ν 4=23.8
R 8=9.362 D 8=可変
R 9=絞り D 9=0.28
R10=1.422(非球面) D10=0.33 N 5=1.834807 ν 5=42.7
R11=-7.256 D11=0.03
R12=2.836 D12=0.40 N 6=1.834000 ν 6=37.2
R13=-1.997 D13=0.12 N 7=1.846660 ν 7=23.8
R14=0.936 D14=0.37
R15=-263.842 D15=0.37 N 8=1.772499 ν 8=49.6
R16=-4.052 D16=可変
R17=1.447(非球面) D17=0.36 N 9=1.806100 ν 9=40.7
R18=-74.627 D18=0.29
R19=∞ D19=0.45 N10=1.516330 ν10=64.1
R20=∞
焦点距離 1.00 2.65 2.97
可変間隔
D 2 0.09 1.19 1.07
D 8 2.88 0.54 0.30
D16 0.49 1.73 2.07
非球面係数
R 5 k=-3.23868e+02 B= 4.34086e-03 C=-3.26552e-03 D= 1.45007e-02
R10 k=-8.21638e-01 B=-2.15746e-02 C= 1.56862e-03 D=-9.29549e-03
R17 k=-2.11938e-01 B=-3.62716e-02 C=-8.77965e-03 D= 0.00000e+00
数値実施例2
f=1〜2.97 Fno=2.48〜3.60 2ω=64.2°〜23.9°
R 1=2.816 D 1=0.60 N 1=1.516330 ν 1=64.1
R 2=11.896 D 2=可変
R 3=6.390 D 3=0.13 N 2=1.834000 ν 2=37.2
R 4=1.119(非球面) D 4=0.63
R 5=-4.480 D 5=0.16 N 3=1.650158 ν 3=39.4
R 6=2.331 D 6=0.04
R 7=2.117 D 7=0.42 N 4=1.846660 ν 4=23.8
R 8=-18.814 D 8=可変
R 9=絞り D 9=0.39
R10=1.416(非球面) D10=0.33 N 5=1.834807 ν 5=42.7
R11=-10.288 D11=0.03
R12=2.667 D12=0.40 N 6=1.834000 ν 6=37.2
R13=-1.997 D13=0.12 N 7=1.846660 ν 7=23.8
R14=0.935 D14=0.37
R15=-263.842 D15=0.30 N 8=1.603112 ν 8=60.6
R16=-4.052 D16=可変
R17=1.881(非球面) D17=0.36 N 9=1.806100 ν 9=40.7
R18=-74.627 D18=0.29
R19=∞ D19=0.45 N10=1.516330 ν10=64.1
R20=∞
焦点距離 1.00 2.65 2.97
可変間隔
D 2 0.09 2.42 1.39
D 8 2.84 0.54 0.30
D16 0.22 1.26 1.56
非球面係数
R 4 k=-1.09438e-01 B=-1.68564e-02 C=2.08890e-02 D=-2.52790e-02
R10 k=-6.69154e-01 B=-2.13385e-02 C=4.37738e-03 D=-1.63567e-02
R17 k=-1.09618e-01 B=-2.44913e-02 C=2.08869e-03 D= 0.00000e+00
数値実施例3
f=1〜4.00 Fno=2.24〜3.60 2ω=64.2°〜17.8°
R 1=3.588 D 1=0.16 N 1=1.834000 ν 1=37.2
R 2=2.680 D 2=0.72 N 2=1.603112 ν 2=60.6
R 3=28.984 D 3=可変
R 4=4.182 D 4=0.13 N 3=1.834000 ν 3=37.2
R 5=1.207 D 5=0.66
R 6=-5.965 D 6=0.15 N 4=1.583126 ν 4=59.4
R 7=1.819 D 7=0.07
R 8=1.769 D 8=0.42 N 5=1.846660 ν 5=23.8
R 9=6.817 D 9=可変
R10=絞り D10=0.45
R11=1.364 D11=0.33 N 6=1.834807 ν 6=42.7
R12=-10.154 D12=0.03
R13=2.330 D13=0.40 N 7=1.834000 ν 7=37.2
R14=-1.997 D14=0.12 N 8=1.846660 ν 8=23.8
R15=0.844 D15=0.37
R16=-9.752 D16=0.37 N 9=1.772499 ν 9=49.6
R17=-4.788 D17=可変
R18=2.027(非球面) D18=0.36 N10=1.806100 ν10=40.7
R19=-74.627 D19=0.29
R20=∞ D20=0.45 N11=1.516330 ν11=64.1
R21=∞
焦点距離 1.00 3.36 4.00
可変間隔
D 3 0.09 1.95 2.06
D 9 2.96 0.60 0.36
D17 0.45 1.99 2.43
非球面係数
R 6 k= 1.76310e+01 B= 1.81049e-02 C=-4.77367e-03 D= 4.50945e-03
R11 k=-8.70146e-01 B=-1.25504e-02 C= 4.92439e-03 D=-1.44314e-02
R18 k=-1.10607e-02 B= 4.79091e-03 C=-5.01469e-04 D= 0.00000e+00
【0083】
【表1】
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば以上のように、変倍光学系の一部を構成する比較的小型軽量のレンズ群を光軸と垂直方向に移動させて、該変倍光学系が振動(傾動)したときの画像のぶれを補正するように構成するとともにぶれを補正するためのレンズ群の構成を適切なものとすることにより、装置全体の小型化、機構上の簡素化及び駆動手段の負荷の軽減化を図りつつ該レンズ群を偏心させた時の偏心収差を良好に補正した防振機能を有し、例えば100万画素以上の撮像素子を有する電子スチルカメラにも十分対応出来る変倍光学系を達成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1における変倍光学系の近軸屈折力配置の概略図
【図2】本発明における防振系の光学的原理の説明図
【図3】実施形態1の数値実施例1の広角端のレンズ断面図
【図4】参考例1における変倍光学系の近軸屈折力配置の概略図
【図5】実施形態2における変倍光学系の近軸屈折力配置の概略図
【図6】実施形態2の数値実施例3の広角端のレンズ断面図
【図7】実施形態1の数値実施例1の広角端の収差図
【図8】実施形態1の数値実施例1の中間の収差図
【図9】実施形態1の数値実施例1の望遠端の収差図
【図10】参考例1の数値実施例2の広角端の収差図
【図11】参考例1の数値実施例2の中間の収差図
【図12】参考例1の数値実施例2の望遠端の収差図
【図13】実施形態2の数値実施例3の広角端の収差図
【図14】実施形態2の数値実施例3の中間の収差図
【図15】実施形態2の数値実施例3の望遠端の収差図
【図16】参考例1の数値実施例2の広角端のレンズ断面図
【符号の説明】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
d d線
g g線
ΔM メリディオナル像面
ΔS サジタル像面
SP 絞り
IP 像面
Claims (4)
- 物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群から構成され、少なくとも前記第2レンズ群と前記第3レンズ群を移動させて変倍を行い、前記第4レンズ群を移動させてフォーカスを行う変倍光学系であって、前記第1レンズ群は、正の単レンズ、又は1枚の正レンズと1枚の負レンズにより構成され、前記第3レンズ群は複数の正レンズと像面側に凹面を向けた1枚の負レンズより構成され、前記第4レンズ群は1枚の正レンズにより構成され、前記第3レンズ群全体を光軸と垂直方向に移動させて該変倍光学系が振動したときの撮影画像のぶれを補正することができ、前記第3レンズ群の望遠端における倍率をB3t、前記第4レンズ群の望遠端における倍率をB4t、前記第3レンズ群の焦点距離をf3、広角端と望遠端における全系の焦点距離を各々fw、ftとするとき、
0.5<|(1−B3t)・B4t|<3
1.5<f3/fw≦2.338
2.967≦ft/fw
なる条件式を満足することを特徴とする変倍光学系。 - 前記第2レンズ群は、物体側から像側へ順に、像面側に凹面を向けたメニスカス状の負レンズ、負レンズ、物体側に凸面を向けた正レンズより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の変倍光学系。
- 前記第1レンズ群は正の単レンズより成り、該単レンズの物体側と像面側のレンズ面の曲率半径をそれぞれR1,R2、該単レンズの材質のアッベ数をν1とするとき、
−3<(R1+R2)/(R1−R2)<0
55<ν1
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の変倍光学系。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の変倍光学系を備えることを特徴とするカメラ。
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