JP4444450B2 - 蛋白質加水分解物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質加水分解物の製造方法に関するものである。
詳しくは、本発明は、原料蛋白質に、エンドプロテアーゼにより、分解率が20乃至30%の範囲で第一の加水分解を実施し、得られた蛋白質加水分解物を孔径1nm乃至5μmの膜を使用して膜分画し、透過画分に、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼにより、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、第二の加水分解を実施することを特徴とする蛋白質加水分解物の製造方法に関するものである。
【0002】
本明細書において、分解率を除き、百分率は特に断りのない限り、重量による表示である。
本明細書において、蛋白質当量とは、窒素量に6.38を乗じた値である。
【0003】
【従来の技術】
食物アレルギーの発生頻度は近年増加する傾向にあり、アレルギーは現代人の疾病の重要な位置を占めるに至っており、アレルギー発症の予防及び治療は、重大な課題となっていた。
【0004】
従来から前記課題を解決するため、抗原性物質である蛋白質を加水分解し、抗原性を低下させる技術が多数開発されている[特公昭54−36235号公報(以下、従来技術1と記載する。)、特公昭62−61039号公報(以下、従来技術2と記載する。)、特公平7−73507号公報(以下、従来技術3と記載する。)、特許第2959747号公報(以下、従来技術4と記載する。)、及び特開平8−228692号公報(以下、従来技術5と記載する。)]。
【0005】
また、アレルギー発症の素因を有する疑いのある者のアレルギー発症の予防には、乳以外に代替食品のない乳児期において重要となるが、蛋白質は高度に加水分解することにより乳化性が低下するため、蛋白質加水分解物の乳化性の改善が、調製粉乳の製造において課題となっていた。
【0006】
前記課題を解決し、乳化性を改善し、従来技術1乃至従来技術5に比較して、なお一層の抗原性の低減を行うことを目的として、本発明者らは新技術を開発し、既に出願を行った(特願2000−069023号。以下、従来技術6と記載する。)。
【0007】
更に、加水分解を2回実施する蛋白質加水分解物の製造方法として、エンドプロテアーゼにより、第一の加水分解を実施し、続いてエキソプロテアーゼにより、第二の加水分解を実施する方法(特開昭62−171645号公報。以下、従来技術7と記載する。)、エンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼを含むプロテアーゼにより、第一の加水分解を実施し、得られた蛋白質加水分解物を膜分画し、不透過画分に、エンドプロテアーゼにより、第二の加水分解を実施し、得られた蛋白質加水分解物を膜分画し、得られた蛋白質加水分解物を膜分画し、得られた透過物を第一の加水分解で得られた透過物と合わせる方法(特表昭63−502004号公報。以下、従来技術8と記載する。)、並びにエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼにより、第一の加水分解を実施し、得られた蛋白質加水分解物を瀘過し、未分解物を除去し、エンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼにより、蛋白質加水分解物に、再度加水分解を実施する方法(特公平3−60480号公報。以下、従来技術9と記載する。)等が知られている。
しかしながら、これらの従来技術には、次に記載するとおりの不都合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の技術に開示されているとおり、抗原性がないか又は抗原残存活性が10-6以下である蛋白質加水分解物の製造方法が開発されていた。しかしながら、前記従来技術により製造された蛋白質加水分解物を、後記する試験方法に詳細に記載した高感度の抗原残存活性の測定方法であるサンドウィッチELISA法を用いて抗原残存活性を測定すると、後記試験例に示すとおり、抗原残存活性は10-7以上を示し、抗原性が若干残存していることが認められた。
【0009】
前記のとおり、アレルギー発症の予防及び治療が、重大な課題となっている現代において、抗原残存活性を限りなくゼロに近似させることは、食物アレルギー発生のリスクを低減し、安全な食品を提供するうえで、極めて重要であり、食品メーカーの社会的使命である。
【0010】
従って、蛋白質の抗原残存活性をサンドウィッチELISA法の検出限界まで低減させることが求められていた。
【0011】
また、本発明者らは、乳化性を改善し、10-8まで抗原性を低減した蛋白質加水分解物を製造する方法である従来技術6を開発したが、後記試験例に示すとおり、この製造方法で得られる蛋白質加水分解物は、比較的高い浸透圧を示し、乳糖不耐症等の下痢症状を併発することが多い食物アレルギー患者用としては、浸透圧の改善の必要性があった。
【0012】
更に、本発明の製造方法と同様に、加水分解を2回実施する蛋白質加水分解物の製造方法が各種知られているが、使用酵素の組み合わせ、分解率、分画膜の条件、工程の順序、及び加水分解対象物等の相違に起因して、これらの製造方法で得られる蛋白質加水分解物は、後記試験例に示すとおり、抗原性が残存しており、比較的高い浸透圧を示すという問題点があった。
【0013】
本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、一層の抗原性の低減及び浸透圧の低減を目的とし、後記する試験例に一部示されるとおり、種々の蛋白質加水分解物の製造方法、特に種々の使用酵素の組み合わせ、分解率、分画膜の条件、工程の順序、及び加水分解対象物、並びに得られた蛋白質加水分解物の特徴について試験した。
【0014】
その結果、本発明者らは、原料蛋白質に、エンドプロテアーゼにより、分解率が20乃至30%の範囲で第一の加水分解を実施し、得られた蛋白質加水分解物を孔径1nm乃至5μmの膜を使用して膜分画し、透過画分に、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼにより、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、第二の加水分解を実施することを特徴とする蛋白質加水分解物の製造方法が、従来技術に比較して、抗原性の低減及び浸透圧の低減に優れていることを見い出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明の目的は、下痢症状を併発することが多い食物アレルギー患者に対して使用可能な低抗原性で浸透圧が低い蛋白質加水分解物の製造方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明は、原料蛋白質であるカゼイン又は乳清蛋白質に、エンドプロテアーゼにより、分解率が20乃至30%の範囲で第一の加水分解を実施し、得られた蛋白質加水分解物を孔径1nm乃至5μmの膜を使用して膜分画し、透過画分に、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼにより、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、第二の加水分解を実施することを特徴とする蛋白質加水分解物の製造方法である。
また、本発明の蛋白質加水分解物の製造方法は、第二の加水分解を実施した後に、得られた蛋白質加水分解物を、6000ダルトン以下の分画分子量を有する限外濾過膜を使用して濾過処理し、膜透過画分を回収することが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について詳述する。
本発明の方法に使用される原料蛋白質は、獣乳、卵、魚肉、畜肉等に由来する動物性蛋白質、大豆、小麦等に由来する植物性蛋白質、カビ、酵母、細菌等に由来する微生物蛋白質、又はこれらの任意の混合物であり、特に限定されるものではない。また、これらの蛋白質を、限外濾過、イオン交換樹脂等の処理により濃縮した蛋白質濃縮物も使用できる。更に、前記蛋白質を予め軽度に加水分解した分解物であって、比較的大きな分子量を有する蛋白質加水分解物を出発原料とすることもできる。
【0018】
この原料蛋白質を水又は温湯に分散し、溶解する。該溶解液の濃度は格別の制限はないが、通常、5〜15%程度の蛋白質濃度とすることが効率性及び操作性の点から望ましい。
【0019】
次いで、前記蛋白質溶液を65〜90℃で1〜30分間程度加熱殺菌することが、雑菌の汚染による腐敗防止の点から望ましい。
【0020】
本発明の原料蛋白質の第一の加水分解方法に使用されるエンドプロテアーゼ(エンドペプチダーゼ)は、エキソプロテアーゼ活性を有さずエンドプロテアーゼ活性のみを有する蛋白質分解酵素であれば如何なるものであってもよく、動物由来(例えば、トリプシン、キモトリプシン等)、植物由来(例えば、パパイン等)、又は微生物由来(例えば、乳酸菌、酵母、カビ、枯草菌、放線菌等)のエンドプロテアーゼを例示することができる。
【0021】
尚、第一の加水分解方法に、エキソプロテアーゼ活性を有さずエンドプロテアーゼ活性のみを有する蛋白質分解酵素を使用するのは、後記する試験例からも明らかなとおり、エキソプロテアーゼ活性を有する蛋白質分解酵素を使用した場合には、アミノ酸が遊離し、最終製品である蛋白質加水分解物の回収率が低下し、浸透圧が増加するためである。
【0022】
本発明の原料蛋白質の第一の加水分解方法は、蛋白質分解酵素としてエンドプロテアーゼを使用し、蛋白質の分解率を20乃至30%に調製できる方法であれば特に限定されるものではなく、常法に従って、蛋白質分解酵素法によって行う。具体的には、蛋白質の分解率を20乃至30%に調製できる酵素の種類、量、温度、pH、加水分解時間等の蛋白質分解酵素法による加水分解条件を予備実験で設定し、のち蛋白質加水分解物を調製する。
【0023】
尚、第一の加水分解の程度の指標として、分解率を使用し、その範囲を20乃至30%としたのは、後記する試験例からも明らかなとおり、分解率が20%未満では、最終製品である蛋白質加水分解物の抗原性が残存するためであり、分解率が30%を超えるまで加水分解した場合は、最終製品である蛋白質加水分解物の浸透圧が増加するためである。
【0024】
前記原料蛋白質に対する蛋白質分解酵素の使用量は、基質濃度、酵素力価、反応温度及び反応時間により異なるが、一般的には、原料蛋白質1g当り50〜10000活性単位の割合で酵素を単独、又は複数組み合わせて添加することにより加水分解が行われる。尚、酵素の添加は、一括、又は少量若しくは種類毎に分割し、逐次添加することもできる。
【0025】
また、蛋白質加水分解反応のpHは、使用酵素の至適pHに対応して、pH2〜10の範囲から選択される。具体的には、前記蛋白質溶液に酵素を添加する前に、使用酵素の種類によりpH2〜10の範囲内で酸又はアルカリ剤の添加により所望のpHに調整することにより実施される。この場合、酸としては塩酸、クエン酸、リン酸等を、また、アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等をそれぞれ例示することができる。
【0026】
蛋白質加水分解反応の温度は、格別の制限はなく、酵素作用の発現する最適温度範囲を含む実用に供せられ得る範囲、即ち、通常30〜70℃の範囲から選択される。温度を酵素の至適温度より低温又は高温、例えば50〜60℃の範囲に維持することにより蛋白質加水分解反応中の腐敗を防止することもできる。
【0027】
蛋白質加水分解反応の時間は、使用酵素の種類及び組合せ、反応温度、初発pH等の反応条件によって進行状態が異なることから、前記のとおり、予備実験で設定された蛋白質の分解率を20乃至30%に調製できる範囲で、反応継続時間を決定する必要がある。
【0028】
酵素反応の停止は、予備実験で設定された加水分解条件に基づいて加水分解の程度が、蛋白質の分解率が20乃至30%の範囲内となった時点で、酵素を失活又は除去することにより行う。失活操作は加熱処理(例えば、85℃で15分間等)により行うことができる。また、除去操作は限外濾過膜(ウルトラフィルトレーション)等により実施することができる。
【0029】
得られた中間産物である蛋白質加水分解物を含有する溶液は、そのまま使用することも可能であり、また、必要に応じてこの溶液を逆浸透膜法等の公知の方法により濃縮し、濃縮液として使用することも可能であり、更に、この濃縮液を公知の方法により乾燥して粉末となし、後に行われる膜分画の前に所定濃度で水に溶解して使用することも可能である。
【0030】
本発明の膜分画工程に使用される膜は、孔径1nm乃至5μmの膜であれば如何なるものであってもよく、孔径0.5乃至5μmの精密濾過膜(マイクロフィルトレーションメンブレン)、孔径1nm乃至5μmに相当する1000乃至10万ダルトンの分画分子量を有する限外瀘過膜等を例示することができる。
【0031】
尚、膜分画工程に使用される膜の孔径の範囲を1nm乃至5μmとしたのは、後記する試験例からも明らかなとおり、孔径が1nm未満の膜を使用した場合には、最終製品である蛋白質加水分解物の回収率が低下するためであり、孔径が5μmを超える膜を使用した場合には、最終製品である蛋白質加水分解物の抗原性が残存するためである。
【0032】
本発明の膜分画工程は、次のとおり実施する。前記のとおり調製された蛋白質の分解率が20乃至30%の範囲内にある中間産物である蛋白質加水分解物を5乃至20%の濃度の溶液に調整し、前記の孔径1nm乃至5μmの膜を使用し、瀘過膜分画処理(いわゆる瀘過処理)を行い、抗原性物質を除去し、膜透過画分を回収することにより実施される。
【0033】
得られた膜透過画分溶液は、そのまま使用することも可能であり、また、必要に応じてこの溶液を逆浸透膜法等の公知の方法により濃縮し、濃縮液として使用することも可能であり、更に、この濃縮液を公知の方法により乾燥して粉末となし、後に行われる第二の加水分解の前に所定濃度で水に溶解して使用することも可能である。
【0034】
本発明の第二の加水分解方法に使用されるエキソプロテアーゼ(エキソペプチダーゼ)を含むプロテアーゼは、少なくともエキソプロテアーゼ活性を有する蛋白質分解酵素であれば如何なるものであってもよく、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、若しくは微生物由来(例えば、乳酸菌、アスペルギルス属菌、リゾープス属菌等)のエキソプロテアーゼ、又はエンドプロテアーゼ活性も併せて有するパンクレアチン、ペプシン等を例示することができる。
【0035】
尚、第二の加水分解方法に、エキソプロテアーゼ活性を有する蛋白質分解酵素を使用するのは、後記する試験例からも明らかなとおり、エキソプロテアーゼ活性を有さずエンドプロテアーゼ活性のみを有する蛋白質分解酵素を使用した場合には、最終製品である蛋白質加水分解物の抗原性が残存するためである。
【0036】
本発明の第二の加水分解方法は、蛋白質分解酵素としてエキソプロテアーゼを含むプロテアーゼを使用し、蛋白質の分解率を、前記第一の加水分解で得られた分解率に加えて2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率を25乃至35%に調製できる方法であれば特に限定されるものではなく、常法に従って、蛋白質分解酵素法によって行う。具体的には、蛋白質の分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率を25乃至35%に調製できる酵素の種類、量、温度、pH、加水分解時間等の蛋白質分解酵素法による加水分解条件を予備実験で設定し、のち蛋白質加水分解物を調製する。
【0037】
尚、第二の加水分解の程度の指標として、分解率を使用し、その範囲を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率を25乃至35%としたのは、後記する試験例からも明らかなとおり、増加する分解率が2%未満又は最終的な分解率が25%未満では、最終製品である蛋白質加水分解物の抗原性が残存するためであり、増加する分解率が8%を超えるか又は最終的な分解率が35%を超えるまで加水分解した場合は、最終製品である蛋白質加水分解物の浸透圧が増加するためである。
【0038】
本発明の第二の加水分解方法における蛋白質分解酵素法の各条件は、前記本発明の第一の加水分解方法と同様である。
【0039】
得られた最終製品である蛋白質加水分解物を含有する溶液は、限外瀘過等の瀘過処理を再度行うことが望ましい。具体的には、6000ダルトン以下、即ち、市販の1000乃至6000ダルトンに分画分子量を有する限外瀘過膜を使用し、瀘過処理を行い、一部残存する可能性のある高分子物質を除去し、膜透過画分を回収することにより実施される。
【0040】
得られた最終製品である蛋白質加水分解物を含有する溶液は、そのまま使用することもでき、また、必要に応じて、この溶液を逆浸透膜法等の公知の方法により濃縮した濃縮液として使用することもでき、更に、この濃縮液を公知の方法により乾燥し、粉末として使用することもできる。
【0041】
以上の方法により、蛋白質加水分解物中の抗原性物質を効果的に膜分画除去及び加水分解除去することができ、かつ浸透圧の上昇を抑制して、後記する試験例の結果から明らかなとおり、現時点において全ての従来技術と比較して抗原性が最も低いと考えられる、いわゆる実質的に抗原性を有さず、かつ浸透圧が低い、精製分離されたペプチドとは異なる蛋白質加水分解物を製造することができる。
【0042】
前記本発明の方法により得られた蛋白質加水分解物は、後記する実施例からも明らかなとおり、低抗原性で浸透圧が低い蛋白質加水分解物である。即ち、本発明の製造方法により得られる蛋白質加水分解物の溶液、その濃縮液又は粉末は、低抗原性で浸透圧が低いことから、下痢症状を併発することが多い食物アレルギー患者の蛋白質源、又は医薬品原料として有用であり、具体的には、アレルギー発症の予防及び治療のための食品又は飲料である調製粉乳、調製乳、栄養補助食品、病態栄養食、流動食等の各種飲食品に応用可能である。
【0043】
次に、試験例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明においては、次の試験方法を採用した。
【0044】
(1)蛋白質の分解率算出方法
ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定し、ホルモール滴定法(満田他編、「食品工学実験書」、上巻、第547頁、養賢堂、1970年)により試料のホルモール態窒素量を測定し、これらの測定値から分解率を次式により算出した。
分解率(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×100
【0045】
(2)抗原残存活性の測定方法
サンドウィッチELISA法により測定した(松橋直他著、「免疫学実験入門」、第160頁、学会出版センター、1985年)。
【0046】
具体的には、抗原蛋白質をウサギに免疫して得たウサギ抗血清から特異IgGを精製して使用し、これを0.1M炭酸緩衝液にて希釈してポリスチレン製マイクロプレート(ヌンク社製)の各ウェルに100μlずつ分注し、37℃で2時間静置し、のち0.05%Tween20を含むPBS(以下、PBS-Tween と記載することがある。)により洗浄した。
【0047】
次いで、1%ゼラチン(バイオラド社製)を含むPBSを100μlずつ前記各ウェルに分注し、37℃で30分間静置し、のちPBS-Tween により洗浄した。
【0048】
試料及び標準蛋白質をそれぞれPBS-Tween により希釈し、100μlずつ前記各ウェルに分注し、37℃で1時間静置し、PBS-Tween により洗浄した。
【0049】
ビオチン化特異IgGをPBS-Tween により希釈し、100μlずつ前記各ウェルに分注し、37℃で1時間静置後、PBS-Tween により洗浄した。ストレプトアビジン及びビオチン化ぺルオキシダーゼをPBSに溶解し、100μlずつ前記各ウェルに分注し、PBS-Tween により洗浄した。
【0050】
基質としてο−フェレンジアミン溶液を100μlずつ前記各ウェルに分注し、室温、暗所にて10分間反応させ、3M硫酸を各ウェルに50μlずつ添加し、反応を停止した。
【0051】
次いで、反応生成物をマイクロプレートリーダーを用いて、反応生成物の492nmの吸光度を測定し、標準蛋白質の測定値と比較して試料の抗原残存活性を算出した。
【0052】
(3)浸透圧の測定方法
各試料を10%濃度で精製水に溶解し、浸透圧測定装置(アドバンスインスツルメンツ社製。アドバンス滲透圧計3D3。)を使用して浸透圧値(mOsm/kg H2O)を測定した。
【0053】
(4)蛋白質加水分解物の回収率の算出方法
蛋白質加水分解物の回収率(A)は、原料蛋白質の乾燥重量(B)及び得られた蛋白質加水分解物の乾燥重量(C)に基づいて、次式により算出した。
A(%)=(C/B)×100
【0054】
試験例1
この試験は、従来技術と比較して本発明の蛋白質加水分解物の製造方法が優れていることを示すために行った。
【0055】
(1)試料の調製
次に示す10種類の試料を調製した。
試料1:本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料2:従来技術1の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料3:従来技術2の実施例2と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料4:従来技術3の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料5:従来技術4の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料6:従来技術5の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料7:従来技術6の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料8:従来技術7の実施例4と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料9:従来技術8の実施例2と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料10:従来技術9の第5欄、第6欄、及び実施例1の記載に従って、第一及び第二の加水分解の蛋白質分解酵素として、エンドプロテアーゼ活性及びエキソプロテアーゼ活性を共に有するアクチナーゼAS(科研製薬社製)を使用することを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
【0056】
(2)試験方法
各試料の蛋白質の分解率、抗原残存活性、及び浸透圧を、いずれも前記の試験方法により試験した。
【0057】
(3)試験結果
この試験の結果は、表1に示すとおりである。表1から明らかなとおり、従来技術の各試料に比較して本発明の試料1は、抗原残存活性が極めて低く、かつ浸透圧が低い点で優れていることが判明した。
【0058】
尚、本発明の試料については、原料蛋白質の種類、エンドプロテアーゼの種類、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼの種類、第一の加水分解の分解率を20乃至30%の範囲で、膜の種類及び孔径を1nm乃至5μmの範囲で、又は第二の加水分解の分解率が、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0059】
【表1】
【0060】
試験例2
この試験は、抗原残存活性及び浸透圧を指標として、各工程の組み合わせ及び順序を調べるために行った。
【0061】
(1)試料の調製
次に示す6種類の試料を調製した。
試料11:本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料12:膜分画工程を実施しないことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料13:第一の加水分解工程に続いて第二の加水分解工程を実施し、のち膜分画工程を実施したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料14:第二の加水分解工程を最初に実施し、次いで第一の加水分解工程を実施し、のち膜分画工程を実施したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料15:第二の加水分解工程を最初に実施し、次いで第一の加水分解工程を実施し、膜分画工程を実施しないことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料16:第二の加水分解工程を最初に実施し、次いで膜分画工程を実施し、のち第一の加水分解工程を実施したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
【0062】
(2)試験方法
各試料の抗原残存活性及び浸透圧を、いずれも前記の試験方法により試験した。
【0063】
(3)試験結果
この試験の結果は、表2に示すとおりである。表2から明らかなとおり、抗原残存活性が極めて低く、かつ浸透圧が低い蛋白質加水分解物を製造するためには、二つの加水分解工程と膜分画工程の組み合わせが必須であり、エンドプロテアーゼを使用する第一の加水分解工程、次いで膜分画工程、のちエキソプロテアーゼを含むプロテアーゼを使用する第二の加水分解工程の順序で実施することが必要であることが判明した。
【0064】
尚、本発明の試料については、原料蛋白質の種類、エンドプロテアーゼの種類、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼの種類、第一の加水分解の分解率を20乃至30%の範囲で、膜の種類及び孔径を1nm乃至5μmの範囲で、又は第二の加水分解の分解率が、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0065】
【表2】
【0066】
試験例3
この試験は、抗原残存活性、浸透圧、及び回収率を指標として、加水分解酵素の種類及びその使用順序を調べるために行った。
【0067】
(1)試料の調製
次に示す9種類の試料を調製した。
試料17:本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料18:第二の加水分解に使用されるエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)に変えてエンドプロテアーゼ活性及びエキソプロテアーゼ活性を共に有するアクチナーゼAS(科研製薬社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料19:第二の加水分解に使用されるエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)に変えてエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料20:第一の加水分解に使用されるエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)に変えてエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料21:第一の加水分解に使用されるエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)に変えてエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)を使用し、並びに第二の加水分解に使用されるエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)に変えてエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料22:第一の加水分解に使用されるエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)に変えてエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)を使用し、並びに第二の加水分解に使用されるエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)に変えてエンドプロテアーゼ活性及びエキソプロテアーゼ活性を共に有するアクチナーゼAS(科研製薬社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料23:第一の加水分解に使用されるエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)に変えてエンドプロテアーゼ活性及びエキソプロテアーゼ活性を共に有するアクチナーゼAS(科研製薬社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料24:第一の加水分解に使用されるエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)に変えてエンドプロテアーゼ活性及びエキソプロテアーゼ活性を共に有するアクチナーゼAS(科研製薬社製)を使用し、並びに第二の加水分解に使用されるエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)に変えてエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料25:第一の加水分解に使用されるエンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)に変えてエンドプロテアーゼ活性及びエキソプロテアーゼ活性を共に有するアクチナーゼAS(科研製薬社製)を使用し、並びに第二の加水分解に使用されるエキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)に変えてエンドプロテアーゼ活性及びエキソプロテアーゼ活性を共に有するアクチナーゼAS(科研製薬社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
【0068】
(2)試験方法
各試料の抗原残存活性及び浸透圧を、いずれも前記の試験方法により試験した。
【0069】
(3)試験結果
この試験の結果は、表3に示すとおりである。表3から明らかなとおり、抗原残存活性が極めて低く、かつ浸透圧が低い蛋白質加水分解物を製造するためには、第一の加水分解にはエンドプロテアーゼを使用し、かつ第二の加水分解にはエキソプロテアーゼを含むプロテアーゼを使用することが必要であることが判明した。
【0070】
尚、本発明の試料については、原料蛋白質の種類、エンドプロテアーゼの種類、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼの種類、第一の加水分解の分解率を20乃至30%の範囲で、膜の種類及び孔径を1nm乃至5μmの範囲で、又は第二の加水分解の分解率が、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0071】
【表3】
【0072】
試験例4
この試験は、抗原残存活性、浸透圧、及び回収率を指標として、第一の加水分解の適正な分解率を調べるために行った。
【0073】
(1)試料の調製
酵素反応の停止時期を変更して、表4に示すとおり、第一の加水分解の分解率を段階的に変更したことを除き、実施例1と同一の方法により4種類の試料(試料番号26〜29)を調製した。
【0074】
(2)試験方法
各試料の抗原残存活性、浸透圧、及び回収率を、いずれも前記の試験方法により試験した。
【0075】
(3)試験結果
この試験の結果は、表4に示すとおりである。表4から明らかなとおり、抗原残存活性が極めて低く、かつ浸透圧が低い蛋白質加水分解物を、60%以上の高回収率で製造するためには、第一の加水分解の分解率を20乃至30%の範囲内とすることが必要であることが判明した。
【0076】
尚、本発明の試料については、原料蛋白質の種類、エンドプロテアーゼの種類、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼの種類、膜の種類及び孔径を1nm乃至5μmの範囲で、又は第二の加水分解の分解率が、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0077】
【表4】
【0078】
試験例5
この試験は、抗原残存活性、浸透圧、及び回収率を指標として、膜分画工程に使用される膜の適正な孔径を調べるために行った。
【0079】
(1)試料の調製
孔径の異なる各種の市販の膜を使用して、表5に示すとおり、膜分画工程に使用される膜の孔径を段階的に変更したことを除き、実施例1と同一の方法により4種類の試料(試料番号30〜33)を調製した。
【0080】
(2)試験方法
各試料の抗原残存活性、浸透圧、及び回収率を、いずれも前記の試験方法により試験した。
【0081】
(3)試験結果
この試験の結果は、表5に示すとおりである。表5から明らかなとおり、抗原残存活性が極めて低く、かつ浸透圧が低い蛋白質加水分解物を、60%以上の高回収率で製造するためには、膜分画工程に使用される膜の孔径を1nm乃至5μmの範囲内とすることが必要であることが判明した。
【0082】
尚、本発明の試料については、原料蛋白質の種類、エンドプロテアーゼの種類、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼの種類、第一の加水分解の分解率を20乃至30%の範囲で、膜の種類、又は第二の加水分解の分解率が、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0083】
【表5】
【0084】
試験例6
この試験は、抗原残存活性、浸透圧、及び回収率を指標として、第二の加水分解の適正な分解率を調べるために行った。
【0085】
(1)試料の調製
酵素反応の停止時期を変更して、表6に示すとおり、第二の加水分解の増加する分解率及び最終的な分解率を段階的に変更したことを除き、実施例1と同一の方法により次に示す12種類の試料(試料番号34〜45)を調製した。
試料34:第一の加水分解の分解率を20%とし、第二の加水分解の酵素反応を、分解率を4%増加し、かつ最終的な分解率が24%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料35:第一の加水分解の分解率を20%とし、第二の加水分解の酵素反応を、分解率を5%増加し、かつ最終的な分解率が25%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料36:第一の加水分解の分解率を20%とし、第二の加水分解の酵素反応を、分解率を8%増加し、かつ最終的な分解率が28%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料37:第一の加水分解の分解率を20%とし、第二の加水分解の酵素反応を、分解率を9%増加し、かつ最終的な分解率が29%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料38:第二の加水分解の酵素反応を、分解率を1%増加し、かつ最終的な分解率が26%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料39:第二の加水分解の酵素反応を、分解率を2%増加し、かつ最終的な分解率が27%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料40:第二の加水分解の酵素反応を、分解率を8%増加し、かつ最終的な分解率が33%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料41:第二の加水分解の酵素反応を、分解率を9%増加し、かつ最終的な分解率が34%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料42:第一の加水分解の分解率を30%とし、第二の加水分解の酵素反応を、分解率を1%増加し、かつ最終的な分解率が31%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料43:第一の加水分解の分解率を30%とし、第二の加水分解の酵素反応を、分解率を2%増加し、かつ最終的な分解率が32%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料44:第一の加水分解の分解率を30%とし、第二の加水分解の酵素反応を、分解率を5%増加し、かつ最終的な分解率が35%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
試料45:第一の加水分解の分解率を30%とし、第二の加水分解の酵素反応を、分解率を6%増加し、かつ最終的な分解率が36%となった時点で停止したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した蛋白質加水分解物
【0086】
(2)試験方法
各試料の抗原残存活性、浸透圧、及び回収率を、いずれも前記の試験方法により試験した。
【0087】
(3)試験結果
この試験の結果は、表6に示すとおりである。表6から明らかなとおり、抗原残存活性が極めて低く、かつ浸透圧が低い蛋白質加水分解物を、60%以上の高回収率で製造するためには、第二の加水分解の分解率は、分解率を2乃至8%の範囲内で増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲内とすることが必要であることが判明した。
【0088】
尚、本発明の試料については、原料蛋白質の種類、エンドプロテアーゼの種類、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼの種類、第一の加水分解の分解率を20乃至30%の範囲で、又は膜の種類及び孔径を1nm乃至5μmの範囲で、適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0089】
【表6】
【0090】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
【実施例】
実施例1
市販の牛乳乳清蛋白質濃縮物1.3kg(ミライ社製。蛋白質当量として1kg)を脱イオン水9kgに溶解し、蛋白質濃度約10%の乳清蛋白質水溶液10.3kgを調製した。該乳清蛋白質水溶液をプレート式熱交換器を使用して70℃で1分間加熱殺菌し、液温を53℃に調整し、10%水酸化ナトリウム水溶液及び20%炭酸カリウム水溶液を使用して、pHを9.5に調整し、エンドプロテアーゼであるアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)を蛋白質当量1g当たり1000活性単位の割合で添加し、第一の蛋白質加水分解反応を開始した。13時間経過し、分解率が25%となった時点で、プレート式熱交換器を使用して120℃で15秒間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
【0092】
この加水分解液を、孔径0.5μmの限外濾過膜(旭化成工業社製。分画分子量6000)により膜分画し、透過画分を凍結乾燥し、粉末状の蛋白質加水分解物約1000g(蛋白質当量として770g)を得た。
【0093】
次いで、得られた蛋白質加水分解物全量を、脱イオン水9000gに溶解し、約10%濃度の蛋白質加水分解物水溶液10kgを調製した。該蛋白質加水分解物水溶液の液温を53℃に調整し、エキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)を蛋白質当量1g当たり500活性単位の割合で添加し、第二の蛋白質加水分解反応を開始した。8時間経過し、分解率を5%増加し、かつ最終的な分解率が30%となった時点で、プレート式熱交換器を使用して120℃で15秒間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
【0094】
この加水分解液を凍結乾燥し、粉末状の蛋白質加水分解物約940g(蛋白質当量として720g)を得た。
【0095】
得られた蛋白質加水分解物を前記試験方法により試験した結果、抗原残存活性は10-9であって極めて低く、浸透圧は350mOsm/kg H2Oであって低く、かつ原料蛋白質に対する蛋白質加水分解物の回収率は72%と優れていた。
【0096】
実施例2
市販の牛乳カゼイン120g(ニュージーランドデイリーボード製。蛋白質当量として100g)を蒸留水880gに分散し、10%水酸化ナトリウム水溶液を使用して、pHを7.0に調整し、カゼインを完全に溶解し、蛋白質濃度約10%のカゼイン水溶液約1kgを調製した。該カゼイン水溶液を85℃で15分間加熱殺菌し、液温を50℃に調整し、10%水酸化カリウム水溶液を使用して、pHを9.5に調整し、エンドプロテアーゼであるビオプラーゼsp−20(長瀬生化学工業社製)、プロテアーゼNアマノ(天野製薬社製)、及びPTN6.0S(ノボインダストリー社製)をそれぞれ蛋白質1g当たり1200活性単位、2000活性単位、及び7000活性単位の割合で添加し、蛋白質加水分解反応を開始した。13時間経過し、分解率が30%となった時点で、90℃で20分間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
【0097】
この加水分解液を、孔径0.45μmの精密濾過膜(ミリポア社製)により膜分画し、透過画分を凍結乾燥し、粉末状の蛋白質加水分解物約89g(蛋白質当量として74g)を得た。
【0098】
次いで、得られた蛋白質加水分解物全量を、脱イオン水801gに溶解し、約10%濃度の蛋白質加水分解物水溶液890gを調製した。該蛋白質加水分解物水溶液の液温を50℃に調整し、エンドプロテアーゼ活性及びエキソプロテアーゼ活性を共に有するアクチナーゼAS(科研製薬社製)を蛋白質当量1g当たり1500活性単位の割合で添加し、第二の蛋白質加水分解反応を開始した。4時間経過し、分解率を3%増加し、かつ最終的な分解率が33%となった時点で、プレート式熱交換器を使用して120℃で15秒間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
【0099】
この加水分解液を、ケイソウ土濾過により不溶物を除去し、凍結乾燥し、粉末状の蛋白質加水分解物約77g(蛋白質当量として64g)を得た。
【0100】
得られた蛋白質加水分解物を前記試験方法により試験した結果、抗原残存活性は10-9であって極めて低く、浸透圧は300mOsm/kg H2Oであって低く、かつ原料蛋白質に対する蛋白質加水分解物の回収率は64%と優れていた。
【0101】
実施例3
市販の牛乳乳清蛋白質濃縮物2.6kg(ミライ社製。蛋白質当量として2kg)を脱イオン水18kgに溶解し、10%水酸化ナトリウム水溶液を使用して、pHを7.2に調整し、蛋白質濃度約10%の乳清蛋白質水溶液20.6kgを調製した。該乳清蛋白質水溶液をプレート式熱交換器を使用して80℃で6分間加熱殺菌し、液温を53℃に調整し、10%水酸化カリウム水溶液を使用して、pHを9.0に調整し、エンドプロテアーゼであるPTN6.0S(ノボインダストリー社製)、プロテアーゼNアマノ(天野製薬社製)、及びアルカラーゼ2.4L(ノボインダストリー社製)をそれぞれ蛋白質1g当たり5000活性単位、2000活性単位、及び500活性単位の割合で添加し、蛋白質加水分解反応を開始した。10時間経過し、分解率が20%となった時点で、120℃で3秒間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
【0102】
この加水分解液を、孔径0.2μmの限外濾過膜(旭化成工業社製。分画分子量3000)により膜分画し、透過画分として蛋白質加水分解物水溶液約18kgを得た。該蛋白質加水分解物水溶液の液温を55℃に調整し、エキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野製薬社製)を蛋白質当量1g当たり500活性単位の割合で添加し、第二の蛋白質加水分解反応を開始した。10時間経過し、分解率を7%増加し、かつ最終的な分解率が27%となった時点で、プレート式熱交換器を使用して120℃で3秒間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
【0103】
この加水分解液を、孔径0.2μmの限外濾過膜(旭化成工業社製。分画分子量3000)により不溶物を除去し、透過画分を凍結乾燥し、粉末状の蛋白質加水分解物約1960g(蛋白質当量として1500g)を得た。
【0104】
得られた蛋白質加水分解物を前記試験方法により試験した結果、抗原残存活性は10-9であって極めて低く、浸透圧は380mOsm/kg H2Oであって低く、かつ原料蛋白質に対する蛋白質加水分解物の回収率は75%と優れていた。
【0105】
【発明の効果】
以上詳記したとおり、本発明は、蛋白質加水分解物の製造方法に関するものであり、本発明により奏せられる効果は次のとおりである。
1)本発明の蛋白質加水分解物の製造方法は、原料蛋白質に対する蛋白質加水分解物の回収率を良好に保持して、下痢症状を併発することが多い食物アレルギー患者に対して使用可能な低抗原性で浸透圧が低い蛋白質加水分解物を製造することができる。
2)得られた蛋白質加水分解物は、低抗原性で浸透圧が低いことから、下痢症状を併発することが多い食物アレルギー患者の蛋白質源、又は医薬品原料として有用である。
Claims (2)
- 原料蛋白質であるカゼイン又は乳清蛋白質に、エンドプロテアーゼにより、分解率が20乃至30%の範囲で第一の加水分解を実施し、得られた蛋白質加水分解物を孔径1nm乃至5μmの膜を使用して膜分画し、透過画分に、エキソプロテアーゼを含むプロテアーゼにより、分解率を2乃至8%増加し、かつ最終的な分解率が25乃至35%となる範囲で、第二の加水分解を実施することを特徴とする蛋白質加水分解物の製造方法。
- 第二の加水分解を実施した後に、得られた蛋白質加水分解物を、6000ダルトン以下の分画分子量を有する限外濾過膜を使用して濾過処理し、膜透過画分を回収することを特徴とする請求項1に記載の蛋白質加水分解物の製造方法。
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