JPH06113893A - 低アレルゲン化カゼインペプチド組成物製造用酵素のスクリーニング方法、該酵素を用いたペプチド組成物、その製造方法、およびそれを含有する栄養組成物 - Google Patents

低アレルゲン化カゼインペプチド組成物製造用酵素のスクリーニング方法、該酵素を用いたペプチド組成物、その製造方法、およびそれを含有する栄養組成物

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JPH06113893A
JPH06113893A JP4262102A JP26210292A JPH06113893A JP H06113893 A JPH06113893 A JP H06113893A JP 4262102 A JP4262102 A JP 4262102A JP 26210292 A JP26210292 A JP 26210292A JP H06113893 A JPH06113893 A JP H06113893A
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casein
enzyme
protease
peptidase
peptide
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Yukitaka Yadonobe
幸孝 宿野部
Tetsuo Nakamura
哲郎 中村
Nobuaki Takahashi
伸彰 高橋
Yoichi Yamabe
陽一 山部
Kenichi Hirano
賢一 平野
Hiroshi Ito
浩史 伊藤
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Snow Brand Milk Products Co Ltd
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Snow Brand Milk Products Co Ltd
Amano Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 濃度5〜20重量%でpHを酸性側(1.5
〜4.5)に調整した溶液状のカゼインを酸性プロテア
ーゼを用いて加水分解し、さらに分解物のpHを弱酸性
からアルカリ側の範囲(6〜8)に調整後、ペプチダー
ゼを用いて加水分解を行って得ることができる、次の性
質を有する低アレルゲン化カゼインペプチド組成物であ
る。 分子量3,000以下、遊離アミノ酸量30〜55%
の分解物組成 αS −カゼインに対するインヒビションELISA試
験がαS −カゼインの10,000分の1以下の値 5%溶液の苦味官能値がカフェイン0.04%水溶液
相当以下 【効果】 このペプチド組成物は苦味、不快味が特に少
なく低アレルゲン性であり、栄養組成物等に応用でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、苦味が少なく、風味の
よい低アレルゲン化カゼインペプチド組成物及びその効
率的な製造方法を提供するもので、得られるペプチド組
成物は、乳蛋白質由来のアレルゲン性がなく、しかも苦
味もほとんどなく風味がよいことから、牛乳アレルギー
症患者のみならず、牛乳以外の食物アレルギー症患者へ
の貴重な窒素源として、種々の低アレルゲン食品や栄養
補給用食品などに応用できる。
【0002】
【従来の技術】牛乳や乳製品によるアレルギーは、牛乳
蛋白質を主として原因物質とする免疫学的な疾患であ
る。人にとって、異種蛋白質である牛乳蛋白質が消化管
のなかで充分に分解されず、抗原性を有したまま体内に
吸収されるために起こり、特に消化管機構の未発達な乳
幼児に発病しやすいと言われている。牛乳アレルギーの
臨床病状は多彩であるが、時として生命を脅かす場合も
あり、その治療は食物から牛乳アレルゲンを除去する、
食物除去療法が基本である。
【0003】乳蛋白質には10種以上の蛋白質がある
が、各々の蛋白質によって抗原性が異なり、アレルギー
病状の発症頻度に差がある。β−ラクトグロブリンは8
2%、カゼインは47%、α−ラクトアルブミンは41
%、牛血清グロブリンは27%、牛血清アルブミンは1
8%などと言われている(Cow's milk protein allerg
y.Pediatr.Clin,N.Am.,22:827,1975)。
【0004】このうち、ホエー蛋白質のβ−ラクトグロ
ブリンの抗原性が最も高いが、例えば、特開平2−23
19号公報ではホエー蛋白質をトリプシン処理し、次い
で熱処理し、残存する酵素を失活させることによりアレ
ルゲンを実質的に含まない動物乳蛋白加水分解物の製造
方法が開示されている。また、特開平2−182155
号公報にはキモトリプシンとトリプシンで処理し、その
後分画分子量5000のUF膜で分離することによる遊
離アミノ酸含量が10%以下、分子量5000以上のペ
プチド含量が0〜5%の組成物を開示されている。さら
に、特開平2−265441号公報では、牛乳乳清蛋白
質水溶液に動物由来又は微生物由来の蛋白質分解酵素を
添加し、pH7〜9、30〜40℃、30分〜20時間
処理し、β−ラクトグロブリンを選択的に分解する製造
方法なども開示している。これらの研究開発の成果によ
り原料であるホエー蛋白質の風味をあまり損なわずにア
レルゲン性を低下した酵素分解物の利用が可能になりつ
つある。
【0005】一方、ホエー蛋白質のβ−ラクトグロブリ
ンに次いで抗原性の高いカゼインは、乳蛋白質の約80
%を占め、貴重な蛋白質資源となっている。このため、
特公昭54−36235号公報で示されるような、抗原
性のない蛋白質分解物が供されているが、これらは、遊
離アミノ酸含量が高く、特に風味の面では、苦味や不快
な臭いが強く、育児用ミルクに利用してもこれらの風味
が残るという問題があった。また、特開平2−1389
91号公報では、カゼインやホエー蛋白質をパンクレア
チンなどで処理し、ゲル濾過により分子量が1000以
下で芳香族アミノ酸含量が全アミノ酸の1.0%である
低分子ペプチドの製造方法を開示しているが、得られた
組成物のアレルゲン性が充分に低下されていなかった
り、あるいは分解物の風味をよくするためにゲル濾過や
膜分画したものでは、収率が非常に低下するために価格
が高価なものとなり、さらにゲル濾過や膜処理等によ
り、アミノ酸組成が大きく変化するため、栄養上好まし
くない問題点を有していた。現在、牛乳アレルギー児に
は、その病状により人工乳の蛋白質源を大豆蛋白質に置
換した商品が市販されているが、これらの患者は、他の
食品でもアレルギー反応を示すことが多く、注意する必
要があった。さらに、牛乳カゼインを蛋白質分解酵素で
加水分解して得た低アレルゲン化カゼインペプチドを用
いたミルクも市販されている。しかし、これらはアレル
ゲン性を重視した商品で、苦味や不快な臭いが強く、と
ても飲みにくいもので、苦味がなく、風味がよく、しか
もアレルゲン性のないペプチド組成物の開発が切望され
ていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これまでに
知られる低アレルゲン化カゼインペプチド組成物の製造
方法では製造効率が低く、風味が非常に悪いために、そ
の利用範囲が制限されていた、主要な牛乳アレルゲンの
一つであるカゼインを、アレルギー反応を誘起しないレ
ベルの低分子にまで酵素によって分解するに当たって、
カゼインを酵素で加水分解した際に生じる苦味や風味の
劣化を防ぎ、しかも製造効率が高く食品素材として安価
な低アレルゲン化ペプチドを供給することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成する本
発明は第1に、プロテアーゼを以下で定義される苦味価
(BV)を指標としてBV2以下のものをまずスクリー
ニングし、次に、スクリーニングされたプロテアーゼ1
/2量とペプチダーゼとを組合せ苦味価(BV)を指標
としてBV2以下の組合せをスクリーニングすることを
特徴とする、低アレルゲン化カゼインペプチド組成物製
造用酵素のスクリーニング方法である。 苦味価(BV): 5%カゼイン溶液に、プロティナー
ゼ活性180〜800u/カゼインg相当の酵素を添加
し、40℃前後で1時間以上反応させたときに生成され
る苦味が、カフェイン0.02%水溶液相当である場合
をBV=1とした値。
【0008】ここで、「苦味価」は、本発明において従
来にないスクリーニング方法を実施する必要上、新たに
導入された用語である。
【0009】又、本発明は第2に、上記スクリーニング
方法でスクリーニングされたプロテアーゼとペプチダー
ゼの組合せを用いて、溶液状のカゼインを加水分解し低
アレルゲン化カゼインペプチド組成物を製造する方法、
特には、溶液状のカゼインをまず酸性側でプロテアーゼ
を用いて加水分解し、次に、得られた分解物を中性付近
でペプチダーゼを用いてさらに加水分解し低アレルゲン
化カゼインペプチド組成物を製造する方法である。
【0010】酸性域でカゼインを溶解し、これに酸性プ
ロテアーゼを作用させる上記態様では反応を長時間行っ
ても雑菌汚染の心配がなく、少量の酵素でカゼイン蛋白
質を低分子化できる。
【0011】又、本発明は第3に、前述スクリーニング
方法でスクリーニングされたプロテアーゼとペプチダー
ゼの組合せを用いて溶液状のカゼインを加水分解して得
られる次の性質を有する低アレルゲン化カゼインペプチ
ド組成物である。
【0012】分子量3,000以下、遊離アミノ酸量
30〜55%の分解物組成 αS −カゼインに対するインヒビションELISA試
験がαS −カゼインの10,000分の1以下の値 5%溶液の苦味官能値がカフェイン0.04%水溶液
相当以下 本発明のペプチド組成物は、分子量3,000以下、遊
離アミノ酸量が30〜55%で、従来のカゼインを用い
た低アレルゲン化ペプチドより、遊離アミノ酸含量が少
なく、このためアミノ酸由来の不快味が弱く、しかも苦
味ペプチドを消去できるペプチダーゼを用いたことで、
苦味がほとんどない。また、分子量3,000以上のペ
プチドを含まず、好ましくはほとんどが分子量1,70
0以下のペプチドであるためアレルゲン性は天然のαS
−カゼインの10,000分の1以下に低下している。
【0013】又、本発明は第4に、上記の低アレルゲン
化カゼインペプチド組成物を主なタンパク源として含有
する栄養組成物である。
【0014】以下、本発明を詳述する。
【0015】まず、カゼインを酵素により加水分解し低
アレルゲン化カゼインペプチド組成物を製造する際に重
要となる要因は、アレルゲン性、遊離アミノ酸、苦味ペ
プチドの3つである。低アレルゲン性は目的とするペプ
チドにおいて本質的要件であって、これが達成されなけ
れば目的の用途に適用することはできない。アレルゲン
性はペプチドの分子量と関係があり、高分子ペプチド
(約分子量5,000以上)が残存しているとアレルゲ
ン性の低下が有意でなく、従って低アレルゲン性を達成
するにはペプチドの分子量はできるだけ小さくした方が
よいと考えられる。又、遊離アミノ酸はペプチドの機能
的側面ではなく、主に味覚、風味上大きな影響を及ぼす
もので、遊離アミノ酸が多く含まれるとアミノ酸特有の
不快味を呈するようになる。遊離アミノ酸もカゼインの
加水分解程度と関係があり、分解が進みペプチドが低分
子化されるに従い、遊離アミノ酸の量が増加する。苦味
ペプチドは遊離アミノ酸と同様、味覚上重大な影響を及
ぼす。苦味の低減が従来技術における課題である。苦味
ペプチドの実体は現在明らかになっておらず、分析学的
に同定されているわけではない。苦味ペプチドは分解前
のカゼインにはあまり存在せず、カゼインの分解過程で
生成されてくると考えられるが、ペプチドの分子量の範
囲で規定することは困難で、一般に、ペプチドのC末端
側に疎水性のアミノ酸が結合していると苦味が強いとい
われている。また、ジ・トリペプチドでも苦味がある。
従って、ペプチドの疎水性のアミノ酸を多く遊離してや
れば苦味の低減が図られるものと考えられ、特定酵素に
より分解を続けることで一旦増加した苦味ペプチドを低
下させることができると考えられる。
【0016】従って、カゼインを酵素で加水分解する場
合、分解が進行し高分子ペプチド等が全て分解されなけ
れば低アレルゲン性を達成することはできないが、反
面、分解が進行しすぎれば遊離アミノ酸量が増加し不快
味が強くなる。一方、苦味ペプチドはペプチドの分解と
は直接関係ないが、カゼインの分解とともに増加するの
で、ペプチドC末端の疎水性アミノ酸の遊離を起させる
ため更に分解を進行させなければならず、やはり進行の
しすぎにより全体として遊離アミノ酸量は増加し味覚上
マイナスとなる。
【0017】このようにカゼインの加水分解によるペプ
チド製造においては単純に分解を促進したり抑制しても
低アレルゲン性で苦味、不快味のないペプチドを製造す
ることは極めて困難である。更に、製造の効率化の観点
から、使用する酵素量はできるだけ少ないことが望まれ
ており、製造操作の簡略化とあわせ重要な問題ともなっ
ている。
【0018】本発明者らはカゼインの酵素による加水分
解処理について鋭意研究の結果、特定の酵素の組合せに
より前述3要件(低アレルゲン性、低遊離アミノ酸量、
低苦味)を具備するペプチドを製造することができるこ
とを見い出し本発明に至った。特定の酵素の組合せと
は、特に新規な酵素同士の組合せである必要はなく、公
知酵素同士の組合せであってもかまわない。本発明で
は、かかる特定の組合せを次の手段によりスクリーニン
グする。
【0019】まず、プロテアーゼを苦味価(BV)を指
標としてBV2以下のものをスクリーニングし、次に、
スクリーニングされたプロテアーゼ1/2量とペプチダ
ーゼとを組合せ苦味価(BV)を指標としてBV2以
下、好ましくはBV1以下の組合せをスクリーニングす
る。
【0020】ここで苦味価(BV)は前述で定義された
ものである。このように酵素のスクリーニングを苦味価
を指標として実施するという技術は従来知られていない
ものである。プロテアーゼでBV2を越えるものでは最
終的に得られるペプチドの苦味を大幅に低減することは
できない。
【0021】スクリーニングされるプロテアーゼはBV
2以下であり苦味ペプチドを分解(ペプチドのC末端疎
水性アミノ酸を遊離)することができるものと考えられ
るが、このプロテアーゼは当然に通常のプロテアーゼの
有するプロティナーゼ活性を有する。好ましくはプロテ
ィナーゼ活性が約5,000u/g以上のものである。
ここで使用するプロティナーゼとしては動物由来、植物
由来、微生物由来の酵素1種類または2種類以上の混合
酵素が使用できる。
【0022】本発明においては上記プロテアーゼの他に
ペプチダーゼを組み合せて用いる。即ち、苦味生成の少
ないプロテアーゼであってもそれ単独ではカゼインの分
解が不充分で長時間実施しても高分子−中分子ペプチド
が多く残存しアレルゲン性の低下が不充分でまた苦味生
成も強く、前述3要件を具備するペプチドを製造するこ
とができない。このプロテアーゼと組合せるペプチダー
ゼは、前述したように、プロテアーゼスクリーニング時
に用いたプロテアーゼの1/2量の該プロテアーゼとペ
プチダーゼを組合せ、BV2以下、好ましくはBV1以
下となる組合せをスクリーニングすることにより選択で
きる。ここでスクリーニングされるペプチダーゼはプロ
テアーゼと同様に苦味ペプチド分解力が強いものであ
り、また、通常のペプチダーゼが有するペプチダーゼ活
性を有する。好ましいペプチダーゼ活性は100,00
0u/g以上である。
【0023】なお上記スクリーニングは酵素の至適pH
で実施すればよい。
【0024】このようにしてスクリーニングされたプロ
テアーゼとペプチダーゼの組合せを用いて得られる低ア
レルゲン化カゼインペプチドは、遊離アミノ酸が30〜
55%しか含まれていないのにもかかわらず、苦味がほ
とんどなく、しかも遊離アミノ酸量が少ないことから、
アミノ酸特有の不快な味も少ない。即ち、アレルゲン性
を充分に低下するほどカゼインの分解を進行させている
にもかかわらず、遊離アミノ酸量が少なく、かつ苦味ペ
プチドが充分に分解されているにもかかわらず遊離アミ
ノ酸量が少ない。
【0025】ところで、プロテアーゼもペプチダーゼも
至適pHが中性付近のものが多く、従来、これらを用い
てタンパクの加水分解をする場合は通常、中性付近で行
われていた。本発明においては、従来と同様、中性付近
に至適pHがあるプロテアーゼ及びペプチダーゼを用い
ることができカゼインからペプチドを製造することがで
きる。
【0026】しかし、中性付近で酵素反応を行うと、し
ばしば雑菌による汚染が発生する。雑菌汚染を防止する
には酵素反応温度を低くすることが考えられるが、反応
が緩慢となり長時間を要しかつ必要酵素量が増加するた
め好ましくない。そこで、好ましくは、カゼイン溶液を
調製する際には酸性側での溶解が容易であることから、
酸性側で酵素反応を実施できれば都合がよく、又、雑菌
汚染が防止できる。
【0027】この点に関して本発明者らは更に研究の結
果、前述プロテアーゼとして酸性側でプロテアーゼ活性
を有するもの(以下、酸性プロテアーゼという。)を用
い、プロテアーゼによる加水分解とペプチダーゼによる
加水分解を分けて実施することで上述問題を解決できる
ことを見い出した。即ち、プロテアーゼとしては酸性プ
ロテアーゼが好ましく、第一段階としてこの酸性プロテ
アーゼを用い、溶液状のカゼインを酸性側(pH1.5
〜4.5、好ましくはpH3〜4)で加水分解し低分子
化させ、第二段階として、ペプチダーゼを用いて僅かに
残る高分子ペプチドおよび苦味ペプチドを分解すること
で雑菌汚染を防止しつつ目的のペプチドを製造すること
ができる。
【0028】このような二段階酵素反応を実施するのに
好適な前述プロテアーゼとしては、具体的には動物由来
のペプシン、微生物由来のPD酵素、モルシンF(盛進
製薬製)、プロテアーゼM(天野製薬製)、スミチーム
AP、スミチームRP(新日本化学工業製)などが例示
でき、これら酵素の1または2種以上を選択して使用す
ることができるが、アスペルギルス属糸状菌由来の酸性
プロテアーゼ、中性プロテアーゼ及びペプチダーゼ含む
複合酵素を有効成分とする蛋白分解酵素が最も適してい
る。いずれにしても前述スクリーニング手段により選択
することができる。但し、この場合は酸性側(pH1.
5〜4.5、好ましくはpH3〜4)でスクリーニング
を実施するとよい。また、酸性プロテアーゼは酸性でプ
ロティナーゼ活性を示すものであるが、酵素は通常は複
合酵素の形で使用されるので、酸性以外にも中性域でも
プロティナーゼ活性を示し、又、ペプチダーゼ活性も示
すものが多い。酸性プロテアーゼのpH3.0における
プロティナーゼ活性は、好ましくは5,000u/g以
上であるが、更に、pH7.0で約5,000〜8,0
00u/g程度のプロティナーゼ活性を有し、又、pH
7.0でのペプチダーゼ活性も約5,000u/g程度
含まれているとよい。これは、第一段目の酸性側での加
水分解後、第二段目の中性域での加水分解に移行する
際、プロテアーゼの失活処理をせずそのまま連続的に第
二段目の加水分解を実施すれば、プロテアーゼの有する
中性プロティナーゼ活性、ペプチダーゼ活性が第二段目
加水分解で作用し、高分子ペプチドの低分子化、苦味ペ
プチドの分解に寄与できるからである。この意味で、本
発明ではプロテアーゼのもつ特性を至適pHでの活性に
限らず全て使うことができるので、反応が極めて効率的
である。又、第二段目の加水分解においてプロテアーゼ
との組合せにおいて用いるペプチダーゼは、好ましく
は、具体的には、ペプチダーゼ活性の高い微生物由来の
Blendo No.2060.20、Blendo
No.4060.20、Blendo No.450
0.10(Imperial Biotechnology Limited製)、カル
ボキシペプチダーゼW(ぺんてる製)、AO−Sプロテ
アーゼ、IP酵素、モルシンF(盛進製薬製)、ペプチ
ダーゼR(天野製薬製)などを例示でき、これら酵素の
1または2種以上を選択して使用することができるが、
ペプチダーゼにリゾプス属菌由来のプロテアーゼ及びペ
プチダーゼを含む複合酵素を有効成分とし、特にペプチ
ダーゼ活性の高い蛋白質分解酵素(特開平3−1234
84)が好ましい。
【0029】ペプチダーゼのpH7.0におけるペプチ
ダーゼ活性は100,000u/g以上が好ましいが、
プロテアーゼと同様、このものも通常複合酵素で、更
に、pH7.0でプロティナーゼ活性3,000u/g
以上有しているものがよく、高分子ペプチドの低分子化
を更に促進することができる。
【0030】次に、上述プロテアーゼとペプチダーゼを
用いたペプチド組成物の製造方法について具体的に説明
する。前述したように、本発明の好ましい製造方法は二
段階酵素反応法であるが、プロテアーゼとペプチダーゼ
を中性域で同時に作用させ常法に基づきカゼイン溶液か
らペプチド組成物を製造することも可能である。しか
し、その場合は前述のように雑菌汚染の可能性があり、
又苦味、不快味の生成を抑制しつつ低アレルゲン化する
のが困難な場合があるので、やはり二段階酵素反応法が
好ましい。この方法は、濃度5〜20重量%でpHを酸
性側(好ましくはpH3〜4)に調整した溶液状のカゼ
インを酸性プロテアーゼを用いて加水分解し、さらに分
解物のpHを弱酸性からアルカリ側の範囲(好ましくは
pH6〜8)のいずれかに調整後、ペプチダーゼを用い
て加水分解を行う方法、即ち、カゼインを酸性域で溶解
し、これに酸性プロテアーゼを作用させることで、少量
の酵素でカゼイン蛋白質を低分子化させ、次いで溶液の
pHを弱酸性側からアルカリ側の範囲に調整後、さらに
少量のペプチダーゼを作用させて、僅かに残る高分子ペ
プチドおよび苦味ペプチドを除去する二段階酵素反応を
行う方法である。
【0031】一段階目の酵素は、例えば、カゼインg当
たり、プロティナーゼ活性20〜200単位添加し、1
0〜60時間、35〜55℃で保持し、酵素分解を行わ
せる。pHが酸性側なので酵素反応を長時間(10〜6
0時間)行っても雑菌汚染の恐れがほとんどない。その
後、苛性ソーダ、水酸化カリウム、水酸化カルシウムな
どを用いてpHを6〜8に調整し、二段階目の酵素をカ
ゼインg当たりペプチダーゼ活性1,000〜6,00
0単位添加して、1〜10時間、35〜55℃で保持
し、さらに酵素分解を行う。その後、酵素を失活させた
後、濃縮、乾燥を行い粉末とすることができ、目的とす
るペプチド組成物を安価に製造することができる。
【0032】第一段目の加水分解の終了時点は、ペプチ
ド濃度300〜500μmol/lとなる点であり、こ
れを指標として反応時間等を設定すればよい。第一段目
の加水分解が過剰であると最終分解物中の遊離アミノ酸
量が多くなり、風味が悪くなる一方、不足では苦味ペプ
チドを充分に分解できず、苦味の強い分解物となる。
又、第二段目の加水分解が過剰であると一段目と同様に
遊離アミノ酸量が多くなり、風味が悪くなる一方、不足
では苦味ペプチドを充分に分解できず、苦味の強い分解
となる。
【0033】本発明で得られるペプチド組成物は次の性
質を有するものである。
【0034】分子量3,000以下、遊離アミノ酸量
30〜55%の分解物組成 αS −カゼインに対するインヒビションELISA試
験がαS −カゼインの10,000分の1以下の値 5%溶液の苦味官能値がカフェイン0.04%水溶液
相当以下 ここで、ペプチド組成物の苦味は、苦味物質であるカフ
ェインを対照とする官能試験で評価できる。本発明のペ
プチド組成物に対する苦味は、原料であるカゼイン溶液
に対し、カフェインを表1の割合で添加したものと比較
して苦味点数で表記できる。この値を苦味官能値とい
い、単に苦味を相当カフェイン濃度基準で表すものであ
る。
【0035】
【表1】 なお、前述した酵素のスクリーニングにおいて指標とし
た苦味価は、酵素のスクリーニング操作の条件が苦味価
の定義に入っている点で苦味官能値と相違しているが、
苦味の官能的基準としては両者は同じである。
【0036】本発明で得られたペプチド組成物は、低ア
レルゲン化カゼインペプチド組成物として広範に食品分
野、医薬分野で使用することができる。特に、苦味、不
快味が低減されていることから育児用調整乳等の栄養組
成物の主要なタンパク原料として好適である。
【0037】
【実施例】以下に実施例を示しさらに本発明を詳細に説
明する。
【0038】実施例1(酵素のスクリーニング)A.プロテアーゼのスクリーニング pH7.0に調整した5%カゼイン溶液100gに、1
/10量の酵素液を添加して、45℃にて16時間反応
後、90℃で15分間加熱して反応を停止させた。酵素
は、市販酵素剤の中から16種類選び、カゼインg当た
りに添加するプロティナーゼ活性を400単位添加し
た。表2に45℃、16時間反応後の反応生成物の苦味
価の結果を示した。
【0039】
【表2】 苦味価2以下の苦味の少ない酵素剤としてプロテアーゼ
A、プロテアーゼB、プロテアーゼMおよびペプチダー
ゼRの4種類があり、これらを選別した。なお、中でも
プロテアーゼMとペプチダーゼRは最も苦味が弱かっ
た。一方、分解物の分子量分布を調べた結果、バクテリ
ア起源のプロテアーゼS、プロテアーゼN等の酵素剤
は、分子量1,000〜10,000の中分子ペプチド
が多く、苦味の生成も強かった。しかし、カビ起源のプ
ロテアーゼA、B、M及び臓器起源のパンクレアチンは
分子量1,000以下のピークが大きく、より低分子さ
れていることが認められた(図1(a)〜(c)参
照)。しかし、分解物のアレルゲン性は、分子量分布の
結果とほぼ一致し、中分子ペプチド量が少なく、低分子
ペプチド量の多いほど減少していたもののまだ充分では
なかった。このことから、プロティアーゼ活性を主にし
た酵素反応だけでは低アレルゲン性で苦味のほとんどな
いペプチドを生成することは困難であることがわかる。B.ペプチダーゼとの組合せのスクリーニング pH7.0に調整した5%カゼイン溶液100gに、上
記Aで苦味価2以下のプロテアーゼA、B及びMの3種
類の酵素につき、Blendo No.2060.2
0、Blendo No.4060.20、Blend
o No.4500.10(Imperial Biotechnology L
imited製)、AO−Sプロテアーゼ、IP酵素(盛進製
薬製)及び上記Aでも選別されたペプチダーゼRとそれ
ぞれ組み合わせて1/10量の酵素液を添加して、45
℃にて16時間反応後、90℃で15分間加熱して反応
を停止させ、苦味価によるスクリーニングを行った。な
お、上記Aで選定した酵素は、カゼインg当たり200
単位添加し、ペプチダーゼ活性の高い酵素は、基質に対
して2.0%添加した。表3に45℃、16時間反応後
の反応生成物の苦味価の結果を示した。
【0040】
【表3】 苦味価2以下の苦味生成の少ない酵素剤の組合せは、プ
ロテアーゼMとBlendo No.4500.10の
組合せ、プロテアーゼMとAO−Sプロテアーゼおよび
ペプチダーゼRとの組合せ、およびペプチダーゼRとプ
ロテアーゼA又はBとの組合せであり、これらを選別し
た。特に、プロテアーゼMとペプチダーゼRの組合せで
調製した分解物の苦味は非常に弱く苦味価1であった。
ペプチダーゼRのプロティナーゼ活性はpH7.0で
3,250u/g以上、ペプチダーゼ活性は130,0
00u/g以上である。また、ペプチダーゼRに含まれ
るプロテアーゼは低分子化作用が強く、しかも苦味ペプ
チドを分解する力が強いことから、好適であると考えら
れた。一方、これらの分解物の分子量分布を調べたとこ
ろ、プロテアーゼMとペプチダーゼRの組合せは、いず
れの組合せの分解物より、より低分子化され、特に分子
量で約2,000以上のペプチドはほとんどなかった。
【0041】なお、中性域において45℃で16時間反
応を行った場合、ときどき雑菌による汚染が生じた。こ
れを回避させるには反応時間を7時間以内にするか、ま
たは無菌状態で反応を行う必要があるが、反応時間を短
縮するためには、酵素量を約2倍以上にする必要があり
コストアップになる。また、無菌状態で反応を行うに
は、コスト、設備面などから大量生産は困難である。
【0042】 実施例2(酸性側での酵素スクリーニング) 実施例1における雑菌汚染に関する点の改善を図るため
酸性側でスクリーニングを実施した。A.プロテアーゼのスクリーニング pH3.0に調整した5%カゼイン溶液100gに、1
/10量の酵素液を添加して、37℃にて16時間反応
後、90℃で15分間加熱して反応を停止させ、その後
pHを苛性ソーダにて7.0に調整し、苦味価によるス
クリーニングを行った。酵素は、市販酵素剤の中から8
種類選び、カゼインg当たりプロティナーゼ活性で40
0単位および800単位添加してそれぞれ行った。表4
に37℃、16時間反応後の反応生成物の苦味評価の結
果を示した。
【0043】
【表4】 苦味価2以下の苦味生成の少ない酵素剤として、プロテ
アーゼMおよびプロテアーゼBが優れ、特にプロテアー
ゼMは、添加量が少なくても苦味生成は少なかった。一
方、これらの分子量分布は、大部分が分子量数千以下の
ペプチドからなり、特に分子量1,000以下が多くな
り、より低分子化されているものの、分子量5,000
前後の中分子ペプチドもあり、アレルゲン性の低下もあ
まりよくなかった。従って、酸性側においてもプロテア
ーゼ単独使用では目的のペプチド組成物は得られない。B.ペプチダーゼとの組合せのスクリーニング pH3.0に調整した5%カゼイン溶液100gに、上
記Aで苦味生成の少なかったプロテアーゼB及びMの2
種類の酵素につき、モルシンF(盛進製薬製)およびカ
ルボキシペプチダーゼW(ぺんてる製)とそれぞれ組み
合わせて1/10倍量の酵素液を添加して、45℃にて
16時間反応後、90℃で15分間加熱して反応を停止
させ、その後、pHを苛性ソーダを用いて7.0に調整
した。なお、上記Aで選定した酵素は、カゼインg当た
り200単位添加し、ペプチダーゼ活性の高い酵素は、
基質に対して2.0%添加した。表5に45℃、16時
間反応後の反応生成物の苦味価の結果を示した。
【0044】
【表5】 分解物の苦味は、ペプチダーゼ活性の高いカルボキシペ
プチダーゼWと組み合わせることで、多少良くなった。
しかし、分解物の分子量分布は中分子ペプチドもあり、
pH3.0においてプロテアーゼ及びペプチダーゼの両
者を作用させるのは、実施例1のpH7.0のときより
加水分解力が低下していた。
【0045】 実施例3(2段階反応による酵素のスクリーニング) pH3.0に調整した5%カゼイン溶液100gに、実
施例2のAでスクリーニングされた苦味生成の少ないプ
ロテアーゼBとプロテアーゼMを用いて、それぞれ1/
10倍量の酵素液を加えて、45℃にて16時間反応
後、苛性ソーダにて反応液のpHを7に調整後、さらに
実施例1のBでスクリーニングされたペプチダーゼ活性
の高い酵素で7時間反応を行い、その後90℃で15分
間加熱して反応を停止させた。1段階目の酵素は、カゼ
インg当たり200単位添加し、2段階目のペプチダー
ゼ活性の高い酵素は、基質に対して2.0%添加した。
表6に反応生成物の苦味価の結果を示した。
【0046】
【表6】 表6 2段階反応によるカゼイン分解物の苦味価 ─────────────────────────────────── ペプチダーゼ プロテアーゼ プロテアーゼB プロテアーゼM ─────────────────────────────────── Blendo No.2060.20 4 3 Blendo No.4060.20 3 2 Blendo No.4500.10 3 2 カルボキシペプチダーゼW 2 2 AO−Sプロテアーゼ 3 3 IP酵素 4 4 ペプチダーゼR 2 1 ─────────────────────────────────── 分解物の苦味は、表3で示した結果とほぼ一致するが、
プロテアーゼMとペプチダーゼRの組合せは、表中に苦
味価で1と記載しているが、0に近い1であり実施例1
で示した結果より良好であった。また、プロテアーゼM
の酵素添加量を100単位に減少させても苦味はほとん
ど感じられなかった。プロテアーゼMは、酸性プロテア
ーゼの他に中性プロテアーゼも含まれており、それぞれ
の活性は、pH3.0で5,500u/g以上、pH
7.0で5,500〜8,000u/gである。また、
pH7.0でのペプチダーゼ活性も約6,000u/g
含まれており、苦味ペプチドの生成も少ないことから、
本発明の2段階反応に使用する酵素として好適である。
【0047】なお、pH3.0に調整した10%カゼイ
ン溶液にプロテアーゼMをカゼインg当たり、100単
位添加し、16時間反応後の分解物のペプチド濃度を調
べ、さらにこの分解物のpHを苛性ソーダを用いて7.
0に調整後、7時間後のペプチド濃度を測定した。その
結果、16時間後のペプチド濃度は490μmol/l
で、さらに7時間後では530μmol/lに増加し
た。このことから、プロテアーゼMに混在する中性プロ
テアーゼの作用により、ペプチド濃度が増加するものと
考えられた。
【0048】このように、酸性域(pH3〜4)で10
〜60時間反応を行い、さらに分解物のpHを6〜8に
調整して、新たな酵素で7時間以内の反応をすること
で、雑菌による汚染を完全に回避できた。さらに、この
分解物のpHを中性にしてもプロテアーゼMに含まれる
中性プロテアーゼが作用し、分解を進行させることがで
き効率化を図ることができた。
【0049】実施例4(ペプチド組成物の製造) 実施例3でスクリーニングしたプロテアーゼMとペプチ
ダーゼRの組合せを用いてペプチド組成物を製造した。
pH3.0に調整した10%カゼイン溶液にプロテアー
ゼMをカゼインg当たり、100単位添加し、45℃で
16時間反応後、さらにこの分解物のpHを苛性ソーダ
を用いて7.0に調整し、ペプチダーゼRをカゼイン1
g当たり、ペプチダーゼ活性で2,000単位添加して
7時間反応させた後、85℃20分で酵素を失活させ、
又殺菌したところ、ペプチド濃度650μmol/lの
分解物が得られた。
【0050】この分解物の苦味官能値はカフェイン0.
04%水溶液相当以下であり、また、この分解物の分子
量分布を調べたところ、図2に示すように、分子量3,
000以上のペプチドがなく、遊離アミノ酸量は約40
%で、αS −カゼインに対する抗原性も図4に示したよ
うに原料のαS −カゼインの10,000分の1以下で
あった。
【0051】実施例5 実施例4で示したプロテアーゼMとペプチダーゼRの組
合せから得られたペプチドをタンパク源として、ミルク
仕立てし(固形分14%)、従来品のAとBの調乳液
(固形分15%)と苦味の比較を行った。また、これら
ミルクに使用されている蛋白質の分子量分布、αS −カ
ゼインに対する抗原性およびPCAによる免疫原性試験
を行った。風味の比較結果を表7に、ペプチドの分子量
分布を図3に、抗原性試験の結果を図4に、および免疫
原性試験の結果を表8に示した。
【0052】
【表7】 表7 苦味官能値の結果 ───────────────────── 調整乳 苦味 ───────────────────── 本発明のペプチドを用いたもの 1 従来品A 3 〃 B 2 ───────────────────── 苦味は、本発明のペプチド組成物を用いたものが最も弱
く、全体の風味として評価すると格段の違いが認められ
た。また、図3に示した分子量分布からも本発明の低ア
レルゲン化カゼインペプチドは、A、Bのペプチドより
低分子ペプチドおよび遊離アミノ酸量が少ないにもかか
わらず、苦味が非常に弱く、反面A、Bは低分子ペプチ
ドおよび遊離アミノ酸が多いことから、不快な風味が強
くなるものと考えられた。特に、より低分子化されたB
は風味が非常に悪かった。さらに、αS −カゼインに対
する抗原性試験の結果を示した図4から、アレルゲン性
はA、Bと比較して、同等かそれ以上に低下しているの
が確認された。また、表8のPCAによる免疫原性試験
の結果では、いずれも免疫原性が認められなかった。こ
れらのことから、本発明の低アレルゲン化カゼインペプ
チドは苦味がなく、風味がよいにもかかわらず、アレル
ゲン性の低いペプチド組成物であることが分かる。
【0053】
【表8】
【0054】
【表9】 なお、AはパンクレアチンとAspergillus oryze 由来の
酵素が用いられて、Bはカゼイン150部に対し、パン
クレアチン1部、Aspergillus oryze 由来の酵素4部お
よびLactobacillus belveticus由来の酵素2部が添加さ
れている(1979 J Dairy Sci 62:1570−1
576)と考えられ、両者とも1段階反応と推定され
る。パンクレアチン等は苦味価が2を越える酵素であ
る。
【0055】本発明で得られたペプチド組成物の分析方
法および酵素活性の測定方法は次の通りである。 1)ペプチド濃度の測定 250ml容メスフラスコに酵素分解物を乾燥重量換算
で0.1g採取し、0.05Mリン酸カリ緩衝液で25
0mlに定容した。この溶液25μlをあらかじめ、5
00μM/lのL−ロイシル・グリシル・グリシン標準
液で調整したペプチドセンサー(東洋紡績(株)製)に
注入し、その出力をペプチド濃度とした。 2)分子量分布 TSKgel G3000PWXL 300×φ7.8m
m(東ソー製)を装着したHPLCクロマトグラフィー
を用い、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む5
5%アセトニトリル(CH3 CN)を溶媒として、0.
3ml/minの流速で溶出し、210nmの吸光度を
測定してクロマトグラフィーを作成する。また、同様な
操作で分子量の判明している標準の蛋白質、ペプチドを
溶出しその溶出時間を測定する。図1及び表1に示す分
子量と溶出時間の関係から、本発明のペプチド組成物の
分子量を測定できる。
【0056】また、ファルマシア社製FPLC「スーパ
ーロース12」ゲル濾過用カラムを用いて、分解物の分
子量分布を調べた。溶離液は0.15M NaClを含
む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用い、流速
0.5ml/minで280nmにて検出した。分子量
マーカーとしては、キモトリプシノーゲン(MW;2
5,000)、チトクロームC(MW;12,30
0)、トリプシンインヒビター(MW;6,500)お
よびパシトラシン(MW;1,450)を用いた。 3)抗原性試験 抗原性は、酵素免疫測定法(Enzyme-linked immunosolb
ent assey:ELISA )の抑制試験(川瀬興三他、東邦医会
誌、35巻 506頁、1989年)に準じてαS −カ
ゼインを対象として行い、αS −カゼインに対する抗原
性として表記し、PCA(受身皮膚アナフィラキシー
法)は、抗原抗体反応(Life Science 8813(19
69))によって確認した。
【0057】αS −カゼインを指標としたELISA 抑制試
験に使用した溶液等は下記のように調製することができ
る。 (1)αS −カゼインのコーティング:0.05MのN
aCO3 −Buffer11mlにαS −カゼイン(1
mg/ml)を100μl溶解し、分注(100μl/
well)する。 (2)サンプル:サンプル200mgをPBS 1ml
に溶解する。 (3)ヤギ全血清希釈液:ヤギ全血清34μlを0.0
5%tween20含有PBS(以降PBS−twee
n20)5.1mlに溶解する。 (4)抗αS −カゼインウサギ血清希釈液:抗αS −カ
ゼインウサギ血清34μlをPBS−tween20
5.1mlに溶解する。 (5)ペルオキシダーゼ標識抗ウサギ免疫グロブリン
(IgG)ヤギIgG:ペルオキシダーゼ標識抗ウサギ
IgG ヤギIgG 3μlをPBS−tween20
10mlに溶解する。 (6)ABTS溶液:ABTS(2,2'-Azino.bis-3-eth
yl benzthiazoline sulfonic acid )3mgを脱イオン
水5mlに溶解し、0.006% H22 −0.2M
クエン酸Na緩衝液 pH4.0(ABTS用Buff
er)5mlと混合する。 また、PCAによる抗原抗体反応における抗血清の調製
及びPCAによる判定は、下記のように行うことができ
る。 (1)抗血清の調製:Al(OH)3 4.0mgを2
00ml PBSに媒散後、滅菌した液20mlと蛋白
当量として10mg/mlとなるように反応液をPBS
で100mlにメスアップした溶液20mlを振盪混合
したもの400μl(抗原として20μgを含有)11
日間訓化飼育したBALB/cマウス(5週齢の雄)に
4週間に渡り1週間隔で5回に分けて腹腔内投与した。
第5回投与5日後に大腿基部を切断して全採血し、使用
まで−80℃に保存した。 (2)PCAによる判定:生理食塩水を用い、上記抗血
清の調製にて得たマウスα−ラクトアルブミン血清、マ
ウス抗αS −カゼイン血清、マウス抗ペプチド血清の1
/2を始めとする5倍段階希釈列(1/10、1/2
0、1/40、1/80、1/100)を作り、各希釈
血清50μlを背毛を刈ったSD系ラット(10週齢の
雄)の背部に皮下注射する。24時間後に、各ペプチド
溶液(抗原として10mgを含有)を、0.6%エバン
スブルー含有生理食塩水で10倍希釈した溶液1.0m
lを尾静脈より注射し、60分後屠殺し、背部皮膚をは
いで紫斑を測定した。判定は陽性反応がでた最大の希釈
倍率を抗体価とした。 4)プロティナーゼ活性の測定方法 ミルクカゼイン溶液1mlを試験管にとり、37±0.
5℃の恒温水槽中に入れ、5分間放置した後、試料溶液
1mlを正確に加え、よく混合して直ちに37±0.5
℃の恒温水槽中に入れ、30分間反応する。これに0.
4Mトリクロロ酢酸溶液2mlを加え、よく混合して室
温で10分間放置した後、濾紙(東洋No.131,7
cm)で濾過する。
【0058】濾液1mlを試験管にとり、0.55M炭
酸ナトリウム溶液5mlおよびフォーリン試液1mlを
加えよく混合し、50℃の恒温水槽中で5分間反応して
発色させた後、水を対照として波長660nmにおける
吸光度Atを測定する。
【0059】別に空試験(ブランク)として、ミルクカ
ゼイ溶液1mlを試験管にとり、0.4Mトリクロロ酢
酸溶液2mlを加え、よく混合した後、試料溶液1ml
を正確に加えたものにつき、以下同様に操作して吸光度
Abを測定する。
【0060】プロティナーゼ活性 本条件下、60分間に反応濾液1mlにチロシン100
μgに相当する非蛋白性のフォーリン試薬呈色物質を生
成する酵素量をプロティナーゼ活性1単位とし次式によ
り算出する。
【0061】 プロティナーゼ(u/g)=(At−Ab)×F×1/100×n×2 F: チロシン検量線より求めた吸光度差が1.0の時
のチロシン量(μg) F=100 1/100 : 単位換算係数 n: 試料溶液の希釈倍数 2: 30分間の反応 5)ペプチダーゼ活性の測定法 0.25mM pH7.0 Leucyl-Glycyl-Glycine 溶
液1mlをネジ付試験管にとり、37±0.2℃の恒温
水槽に5分間保温後、酵素希釈液0.1mlを加え酵素
反応を開始する。正確に60分間反応後、直ちに沸騰水
中にて、5分間煮沸し酵素反応を停止する。冷却後、ニ
ンヒドリン溶液2mlを加え混合し、さらに塩化第一す
ず溶液0.1mlを加えよく混合する。その後、再度2
0分間沸騰水中にて煮沸して発色させた後、冷却する。
この溶液に50%n−プロピルアルコールを10ml加
え、充分混合した後、水を対照として波長570nmに
おける吸光度Atを測定する。
【0062】別に空試験(ブランク)として、酵素希釈
液0.1mlを5分間煮沸させた後、0.25mM p
H7.0 Leucyl-Glycyl-Glycine 溶液1mlを加え、
以下同様に操作して吸光度Abを測定する。
【0063】ペプチダーゼ活性 本条件下、1分間に1μmolのアミノ酸を生成する活
性を1単位とし、次式により算出する。
【0064】 ペプチダーゼ活性(u/g)=(At−Ab)×176×1.1/0.1× 1/60×N =(At−Ab)×32.27×N 176: ロイシン1mol当たりの吸光度 60: 60分間の反応 N: 試料溶液の希釈倍数
【0065】
【発明の効果】苦味生成の少ないプロテアーゼとペプチ
ダーゼ活性の高いペプチダーゼとの組合せを苦味価を指
標としてスクリーニングし、この組合せによってカゼイ
ンを加水分解することにより苦味、不快味の少ない低ア
レルゲン化カゼインペプチド組成物を得ることができ
る。更に、加水分解を2段階反応とし、第1段目を酸性
側でプロテアーゼで、第2段目を中性域でペプチダーゼ
で連続的に行うことで雑菌汚染がなくかつ効率的にペプ
チド組成物の製造ができる。好ましい態様においては、
酸性及び中性プロテアーゼ含むアスペルギルス属糸状菌
由来の酵素を用いて反応し、さらに分解物のpHを6〜
8に調整して、リゾプス属菌由来のペプチダーゼ活性の
高い酵素を用いて反応することで、苦味官能値が1以下
で不快味のない低アレルゲン化カゼインペプチドを得る
ことが可能になる。
【0066】このペプチド組成物は、食品原料、医薬品
原料として広範囲の用途に使用することができる低アレ
ルゲン化カゼインペプチド組成物である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)および(c)は本発明の実施例
1で行ったプロテアーゼのスクリーニング過程で得られ
た分解物のFPLCによる分子量分布を示す図である。
【図2】本発明の実施例4でプロテアーゼMとペプチダ
ーゼRの組合せにより得られたペプチド組成物のHPL
Cによる分子量分布を示す図である。なお、図中、1は
Insulin、2はα−MSH、3はInsulin
chainBをそれぞれ分子量マーカーとした検出位
置を示す。
【図3】本発明の実施例5において調製した調製乳にお
けるペプチド分子量分布(HPLC)を示す図である。
【図4】本発明の実施例5において調製した調製乳にお
けるペプチドのαS −カゼインに対する抗原性を示す図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 伸彰 埼玉県川越市新宿町5−11−3 (72)発明者 山部 陽一 埼玉県川越市南台2−4−6 サンパレス マンション305号 (72)発明者 平野 賢一 愛知県岩倉市稲荷町稲荷西212番地11 (72)発明者 伊藤 浩史 愛知県岩倉市稲荷町221番地

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プロテアーゼを以下で定義される苦味価
    (BV)を指標としてBV2以下のものをまずスクリー
    ニングし、次に、スクリーニングされたプロテアーゼ1
    /2量とペプチダーゼとを組合せ苦味価(BV)を指標
    としてBV2以下の組合せをスクリーニングすることを
    特徴とする、低アレルゲン化カゼインペプチド組成物製
    造用酵素のスクリーニング方法。 苦味価(BV): 5%カゼイン溶液に、プロティナー
    ゼ活性180〜800u/カゼインg相当の酵素を添加
    し、40℃前後で1時間以上反応させたときに生成され
    る苦味が、カフェイン0.02%水溶液相当である場合
    をBV=1とした値。
  2. 【請求項2】 請求項1でスクリーニングされたプロテ
    アーゼとペプチダーゼの組合せを用いて、溶液状のカゼ
    インを加水分解し低アレルゲン化カゼインペプチド組成
    物を製造する方法。
  3. 【請求項3】 溶液状のカゼインをまず酸性側でプロテ
    アーゼを用いて加水分解し、次に、得られた分解物を中
    性付近でペプチダーゼを用いてさらに加水分解し低アレ
    ルゲン化カゼインペプチド組成物を製造する請求項2に
    記載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1でスクリーニングされたプロテ
    アーゼとペプチダーゼの組合せを用いて溶液状のカゼイ
    ンを加水分解して得られる次の性質を有する低アレルゲ
    ン化カゼインペプチド組成物。 分子量3,000以下、遊離アミノ酸量30〜55%
    の分解物組成 αS −カゼインに対するインヒビションELISA試
    験がαS −カゼインの10,000分の1以下の値 5%溶液の苦味官能値がカフェイン0.04%水溶液
    相当以下
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の低アレルゲン化カゼイ
    ンペプチド組成物を主なタンパク源として含有する栄養
    組成物。
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