JP4437769B2 - ニッケル組成物およびニッケル組成物を備えた半田接合用部材 - Google Patents

ニッケル組成物およびニッケル組成物を備えた半田接合用部材 Download PDF

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Description

本発明は、半田付け性に優れたニッケル組成物と該ニッケル組成物を備えた半田接合用部材に関する。
従来、電気設備内の接点や端子などの導電部材として金、銅、ニッケルなどの導電率が高く、半田付け性に優れた金属が用いられている。中でも、ニッケルは、安価で電気接続性、耐食性、半田付け性に優れることから、単体あるいは銅などの他の金属の表面にメッキされるなどして広く用いられ、特許文献1には、電気自動車用バッテリーの電極部材として、ニッケルを用いることが記載されている。
ところで、このような導電部材を半田付けする場合、従来のニッケル組成物やニッケル組成物を備えた導電部材などにおいては、導電部材の表面の酸化膜を除去して半田との濡れを改善し、半田付けの信頼性を高めるフラックスと呼ばれるものが用いられている。しかし、このフラックスは、電気設備などを長期にわたり使用するうちに他の部材を腐食させたり、イオンマイグレーションと呼ばれる現象により絶縁部材の絶縁抵抗を低下させたりすることが知られており、通常、半田付け後に洗浄され除去されている。このフラックス洗浄においては、通常、洗浄液としてフロンや有機溶剤などが使用されることからフロンや有機溶剤が系外に排出されないよう、これらを回収、再生する煩雑な工程をともなって実施されている。
すなわち、従来のニッケル組成物やニッケル組成物を備えた導電部材などにおいては信頼性の高い半田付けを行うために作業性を低下させるおそれを有している。
ところで、近年の環境意識の高揚により、フロンや有機溶剤などが系外に放出されるおそれをより一層抑制することが求められ、半田付け時にフラックスを用いず、フラックス洗浄の必要のない半田付けが要望されるようになっている。
また、半田付け時に鉛蒸気を発生させたり、廃棄設備などから鉛が土中に溶出したりすることを抑制し得るように、鉛フリーの半田を使用することが要望されるようになっている。しかし、この鉛フリー半田は、通常、鉛含有の半田に比べてニッケルに対する濡れ性が低いものである。
したがって、前述のごとく信頼性の高い半田付けを行うために作業性を低下させるという問題は、近年、より大きな問題となってきている。
このような問題に対して、導電部材の半田付け個所を研磨して表面の酸化皮膜を除去することも考え得るが、小さな導電部材や、立体的な構造を有する導電部材などは研磨を行うこと自体が作業性を低下させるおそれ有し、研磨可能な導電部材であっても、研磨屑を除去するための洗浄工程などが別途必要となって、やはり作業性を低下させることとなる。
また、このような問題に対して、ニッケル組成物あるいはニッケル組成物が用いられた導電部材自体の半田に対する濡れ性を改善することが考えられるが、これまでは、そのような取り組みがほとんどなされておらず、ニッケル組成物あるいはニッケル組成物が用いられた導電部材の半田濡れ性を良好なものとすることは現状困難なものとなっている。
なお、このような問題は、電気設備内に用いられる導電部材のみならず、半田付けが行われるニッケル面を有する半田接合用部材に共通の問題である。
特開平11−61302号公報
本発明の課題は、半田濡れ性の良好なるニッケル組成物および該ニッケル組成物からなるニッケル面を備えた半田接合用部材を提供することにある。
本発明者らは、半田付けが行われるニッケル面を備えた半田接合用部材の前記ニッケル面を所定の材料とすることで半田付の濡れ性が向上することを見出し、本発明の完成に到ったのである。
すなわち、本発明は、前記課題を解決すべく、重量でアルミニウム0.02〜0.15%含有し、残部がニッケルおよび不可避不純物からなるニッケル組成物と、ニッケル組成物からなるニッケル面を有し、該ニッケル面において半田付けが行われる半田接合用部材であって、前記ニッケル組成物が、重量でアルミニウム0.02〜0.15%含有し、残部がニッケルおよび不可避不純物からなるニッケル組成物であることを特徴とする半田接合用部材とを提供する。
本発明によれば、ニッケル組成物が重量でアルミニウム0.02〜0.15%含有しているため、アルミニウムの酸素捕捉能力をニッケル組成物の酸化皮膜形成抑制に有効に作用させることができ、ニッケル組成物の半田濡れ性を従来よりも優れたものとし得る。
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、本実施形態の半田接合用部材に用いるニッケル組成物について説明する。
前記ニッケル組成物は純ニッケルと純アルミニウムとを誘導溶解炉などにより溶解して得ることができる。
前記ニッケル組成物としては、アルミニウムを重量で0.02〜0.15%含有している。アルミニウムの含有量が重量で0.02〜0.15%とされるのは、アルミニウムの含有量が0.02%未満の場合には、アルミニウムが少なすぎて、鋳込み時などに酸素捕捉能力が不足してニッケル組成物の表面酸化皮膜の形成を抑制させる効果が十分なものとならず、半田濡れ性が低下して、半田付け部の剥離強度が低下したりするためである。一方、0.15%を超えて含有される場合には、アルミニウムの酸化物が多く生成されて、この生成されたアルミニウム酸化物が半田濡れ性を低下させてしまうためである。
前記ニッケル組成物には、不可避不純物としてC、Si、Mn、P、S、Cu、Mg、Fe、Oなどが含有される。
これら、不可避不純物の含有量としては、Cが0.02%以下、通常、0.01%程度、Siが0.05%以下、通常0.03%程度、Mnが0.3%以下、通常0.2%程度、Pが0.01%以下、通常0.002%程度、Sが0.0015%以下、通常0.0008%程度、Cuが0.1%以下、通常0.02%程度、Mgが0.015%以下、通常0.007%程度、Feが0.2%以下、通常0.1%程度、Oが0.005%以下、通常0.003%程度とされる。
ついで、このようなニッケル組成物を用いて形成される半田接合用部材について説明する。
前記半田接合用部材は、前記ニッケル組成物を用いて種々の形状に加工して用いることができるが、表面が算術平均表面粗さ(Ra)が0.02〜0.5μmの仕上がりとなるよう加工されることが好ましい。前記半田接合用部材の表面粗さ(Ra)が0.02〜0.5μmとされるのは、表面がある程度粗化されているほうが半田との接触面積が大きく、より大きな接合強度が得られることとなるが、一方で、表面粗さが大きくなると、表面の凹部、凸部の両方ともが先鋭となって、凹部の先端部にまで半田が入り込み難い状況となり、且つ、凸部では酸素が内部に拡散しやすい状況となって、厚い酸化皮膜を形成させ易くなるためである。すなわち、算術平均表面粗さ(Ra)が0.02μm未満の場合は、半田と半田接合用部材との接合強度が低いものとなり、0.5μmを超える場合は、半田の濡れ性が低下するためである。
また、前記半田接合用部材は、最終焼鈍後に10%を超える圧下率となるよう冷延されることで表面酸化膜を破壊して、半田濡れ性をより優れたものとできる。
また、上記のように表面酸化膜が破壊され、新たに表面に露出したニッケル組成物表面に再び酸化皮膜が形成されることを防止し得る点において、冷延後、半田付け前には、半田接合用部材が500℃以上に加熱される工程が行われないことがさらに好ましい。
さらに、このような半田接合用部材を製造する方法について説明する。
前記半田接合用部材として、板状の半田接合用部材を例に説明すると、板状半田接合用部材製造するには、例えば、前述のように、純ニッケルと純アルミニウムとを誘導溶解炉などにより溶解したものを鋳型に鋳込み鋳塊を作成し、該鋳塊の表面を切削除去し、1200℃程度の温度において鍛造し、さらに形状を整えた後、同じく1200℃程度の温度で熱間圧延を行い予備成形する。ついで、該予備成形されたものを、720℃程度の温度で焼鈍し、ショットブラストおよび硝弗酸浸漬など、物理的かつ化学的に表面のスケール除去を実施し、例えば、前記板材の表面が算術平均表面粗さ(Ra)が0.02〜0.5μmの仕上がりとなるよう所定の表面粗さを有した圧延ロールなどを用いて、例えば、10%を超える圧下率となるよう冷延して所望の厚さの板材とすればよい。
なお、本実施形態においては、炉の雰囲気ガスを制御したり、真空化したりすることが容易でニッケル組成物に不純物が混入することを抑制し得る点において誘導溶解炉を用いているが、本発明においては、溶解炉を誘導溶解炉に限定するものではなく、要すれば、アーク炉、反射炉などを用いてもよい。
また、本実施形態においては、半田付けの位置を正確に定める必要がなく、半田付け作業性をより良好なるものとし得る点において、全体的にニッケル組成物が用いられた半田接合用部材を例示したが、本発明においては、半田接合用部材を全体的がニッケル組成物により形成されたものに限定するものではなく、メッキなどにより表面のみにニッケル組成物が設けられていてもよく、また、半田付けを行う個所の表面にのみニッケル組成物が備えられているものでもよい。また、半田接合用部材の形状も、上述した板状のものに限定されるものではなく、線状、管状、球状など種々の形状のものとすることができる。
また、本実施形態においては、半田濡れ性をより優れたものとして、信頼性の高い半田付けを可能としつつ、作業性が低下することを抑制し得る点から、半田接合用部材の表面が算術平均表面粗さ(Ra)が0.02〜0.5μmの仕上がりとされているが、本発明においては、特に半田接合用部材の表面の算術平均表面粗さが上記のごとく限定されるものではない。
また、本実施形態においては、表面酸化膜を破壊して、半田濡れ性をより優れたものとし得る点、すなわち、信頼性の高い半田付けを可能としつつ、作業性が低下することを抑制し得る点から、最終焼鈍工程後に10%を超える圧下率となるよう冷延された半田接合用部材を例示したが、本発明においては、半田接合用部材が最終焼鈍工程後に10%を超える圧下率となるよう冷延されたものに限定されるものではない。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
純度99.5%(残部不可避不純物)の純ニッケルと純度99.99%の純アルミニウムとを用いて、重量で表1のA〜Fに示すアルミニウム含有量となるよう0.3mm厚の板状半田接合用部材を作成した。
より詳しくは、ニッケルとアルミニウムとを誘導溶融炉を用いアルゴン雰囲気中にて溶解し、直径100mm、高さ200mmの鋳型に鋳込みインゴットを製造した。この、インゴットの表面を切削し熱応力で発生した割れなどの欠陥を表面から除去した後、1200℃の温度において厚さ50mm、幅100mmのスラブに鍛造した。ついで、このスラブの表面を機械加工により整え、再び1200℃に加熱して、厚さ6mmとなるまで熱間圧延を行った。さらに、この熱延したものを720℃にて焼鈍した後、ショットブラストおよび硝弗酸浸漬によりスケール除去を行い、冷延により0.3mm厚さの板状体とした。この板状体から、半田接合用部材の形状を切り出し、さらに、切り出したものを720℃×2分、アルゴン中での焼鈍処理を行い半田接合用部材とした。
(実施例2)
表1のCのアルミニウム含有量のニッケル組成物を用いて板状半田接合用部材を作成した。半田接合用部材の作成は、冷延を二度に分けて実施したこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお一度目の冷延は、6mm厚さから1mm厚さとし、二度目の冷延は、圧延ロール表面の研磨番手を表2に示すように#60から#600まで5段階に変化させ1mm厚さから0.3mm厚さへの冷延を行った。なお、二度の冷延後にはそれぞれ720℃×2分アルゴン中での焼鈍処理を行った。
(実施例3)
表1のCのアルミニウム含有量のニッケル組成物を用い板状半田接合用部材を作成した。一度目の冷延を6mmから0.5mmとし、二度目の冷延を、表面の研磨番手を#120とした圧延ロールを用いて、表3に示すように0〜80%の冷延圧下率とした以外は、実施例2と同様に実施した。
(評価)
1)表面酸化皮膜厚さ
半田接合用部材をアセトン中で5分間、ついでエタノール中で5分間洗浄し、乾燥させた後に、オージェ電子分光分析器(Physical Electronics社「Model680」)を用い、Ar+スパッタ(加速電圧3kV、スパッタ速度1nm/min)を実施しながら、加速電圧10kV、試料電流10nAでの測定を実施した。
なお、酸素強度の最大値を示す位置から、酸素強度の最大値とバックグラウンド値との差の1/2の強度低下が観測された位置までの深さを表面酸化皮膜厚さとして判定した。
2)接触角
半田接合用部材上に、半田(千住金属工業社「エコソルダーM705E」)1gを半田ごてを用いて溶融滴下させ、そのまま15秒間加熱を行い、自然放冷した後、接触角計(協和界面化学社製「CA−S150型」)を用いて接触角を測定した(図1参照)。
3)剥離強度
図2に示すように4mm×40mmの半田接合用部材上の長手方向に導体を露出させたワイヤー(UL style3443 22AWG:スズメッキ難銅より線 17/0.16)を半田接合用部材の長手方向の端部から2mmの距離を設けて載置し、半田接合用部材端部から7mmの区間を溶融した半田(千住金属工業社「エコソルダーM705E」)にディップさせた後に引き上げて半田付けを行った。
上記のごとく作成した試料を引っ張り試験機(島津製作所製「オートグラフAGS−50ND)により引張り試験を行った。試験は、図3に示すように、半田付け部分を折り曲げ、ワイヤーと半田接合用部材との180度剥離の形態で200mm/minの速度で実施し、観測された最大応力を剥離強度と判定した。
4)表面粗さ
JIS B 0061に準じ表面粗さ測定器(東京精密社製「ハンディサーフE30A型」)を用いて半田接合用部材の算術平均粗さを求めた。なお、表面粗さの測定は冷延方向とは直角方向に実施した。
(結果)
実施例1〜3について、上記のごとく評価した結果を表1〜3に併せて記す。
Figure 0004437769
表1から、ニッケル組成物のアルミニウム含有量を0.02〜0.15とすることで酸化皮膜の形成を抑制でき、半田の濡れ性を良好にし、信頼性の高い半田付けが行われることがわかる。
Figure 0004437769
表2から、半田接合用部材のニッケル面の算術平均表面粗さ(Ra)が0.02〜0.5μmとすることで、半田の濡れ性を良好にし、信頼性の高い半田付けが行われることがわかる。
Figure 0004437769
表3の結果から、半田接合用部材のニッケル面として、最終焼鈍工程後に圧下率10%を超えて冷延がなされたニッケル部材の表面が用いられることで半田の濡れ性を良好にし、信頼性の高い半田付けが行われることがわかる。
接触角測定方法を示す概略図。 剥離強度測定用試料作成状況を示す概略図。 剥離強度測定状況を示す概略図。

Claims (4)

  1. 半田付けに用いられ、質量でアルミニウム0.02〜0.15%含有し、残部がニッケルおよび不可避不純物からなることを特徴とする板材
  2. 少なくとも半田付けが行われる表面が、質量でアルミニウム0.02〜0.15%含有し、残部がニッケルおよび不可避不純物からなることを特徴とする半田接合用部材。
  3. 前記表面の算術平均表面粗さ(Ra)が0.02〜0.5μmである請求項2記載の半田接合用部材。
  4. 前記表面が、最終焼鈍工程後に圧下率10%を超える冷延がなされたニッケル部材が用いられて形成されている請求項2または3に記載の半田接合用部材。
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