JP4434569B2 - ハロゲンフリー難燃性接着剤組成物及びカバーレイフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物及び、それを用いたフレキシブルプリント配線板用カバーレイフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器・部品用のプラスチックには、性能やコストと共に環境調和性が大きな課題となっている。このような背景の中でフレキシブルプリント配線板には、従来から要求されている難燃性に加え、焼却廃棄時に発生する有害ガスの低減等が求められている。フレキシブルプリント配線板は、その製造工程において種々の接着剤あるいは接着剤フィルムを用いており、これらの接着剤には、難燃剤として作用する臭素化合物等のハロゲン系化合物、具体的にはブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂が一般的に使用されている。
【0003】
しかしながら、ハロゲン系化合物は、燃焼時に人体に有害なダイオキシン類等有害ガスを発生する場合があるため、その使用がヨーロッパ諸国を中心に制限されつつある。
【0004】
このような有害ガスを発生させない難燃剤として、窒素化合物、リン化合物、無機充填剤等が知られている。
【0005】
しかし、こららの化合物は、エポキシ樹脂の硬化に悪影響を及ぼしたり、硬化組成物の接着性、耐熱性等を低下させる場合があるので種類及び使用量を制限する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本研究の目的は、ハロゲンフリーで優れた難燃性を有し、且つフレキシブルプリント配線板用接着剤、接着フィルムに有用な優れた接着性、プレス加工性を有する難燃性接着剤組成物、接着フィルム及びカバーレイを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する為に鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基含有アクリルゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化剤という樹脂組成物に、難燃剤として無機充填剤、特定のリン化合物、特定の窒素化合物をバランス良く配合することによって、ハロゲンフリーで優れた難燃性を有し、且つ優れた接着性、プレス加工性を有する接着剤組成物が得られることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0008】
即ち、本発明は、カルボン酸変成アクリルゴム(A)、ハロゲンを含まないエポキシ樹脂(B)、レゾール型フェノール樹脂(C)、無機充填剤(D)、リン系難燃剤としてポリリン酸アンモニウム(E)、窒素系難燃剤としてシアヌール酸メラミン(F)、硬化剤または硬化触媒(G)を必須成分とし、カルボン酸変成アクリルゴム(A)100重量部に対し、エポキシ樹脂(B)を10〜90重量部、レゾール型フェノール樹脂(C)を5〜50重量部、ポリリン酸アンモニウム(E)とシアヌール酸メラミン(F)の合計添加量50〜70重量部、無機充填剤(D)を(A)、(B)、(C)の総計100重量部に対して、80〜120重量部含有することを特徴とするハロゲンフリー難燃性接着剤組成物に関する。また、上記難燃性接着剤組成物をポリイミドフィルムの片面に塗布してなるハロゲンフリーカバーレイフィルムに関する。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明に使用されるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)とは、少なくとも1分子中にカルボキシル基を1個以上有するアクリルゴムであり、アクリル酸アルキルエステル(メタアクリル酸エステルも含む、以下同様)を主成分とし、カルボキシル基を有するビニル単量体と必要に応じてアクリロニトリル、スチレン等を含む共重合体である。アクリル酸アルキルエステルとしては例えば、アクリル酸エチル(メタクリル酸エチルも含む、以下同様)、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ラウリル、等の単量体及び、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2ヒドロキシルプロピル、アリルアルコール等の水酸基を有する単量体、グリシジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等のエピクロルヒドリン変成物のエポキシ基を有する単量体等が挙げられる。これらのなかから、1種類または2種類以上を選択して使用できる。カルボキシル基を有するビニル単量体としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
アクリルゴム(A)の重合方法としては塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合が挙げられるが、塩析工程を必要とせず、マイグレーションの低下の原因となる乳化剤の影響を受けにくい懸濁重合が好ましい。
【0012】
本発明に使用されるハロゲンを含まないエポキシ樹脂(B)は、ハロゲンの含有量が実質的に0.1重量%以下の多官能エポキシ樹脂であり、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は、単独で、あるいは必要に応じて2種以上併用して用いることができる。エポキシ樹脂の配合量は、カルボキシル基含有アクリルゴム100重量部に対し、10〜90重量部が好ましく、10重量部未満では、架橋密度の低下から、リフローはんだ付け耐熱性が低下し、また、90重量部を越えると、接着強さが低下する等の問題を生じる。
【0013】
本発明のフェノール樹脂(C)とは、レゾール型のものであれば良く、フェノール樹脂の分子量、軟化点、OH当量は特に制限されない。レゾール型フェノール樹脂の配合量は、カルボキシル基含有アクリルゴム100重量部に対し、5〜50重量部が好ましく、5重量部未満では、架橋密度が低下し、リフローはんだ付け耐熱性が低下する。また、50重量部を越えると、フィルムとしての貯蔵安定性が損なわれ、接着強さが低下する等の問題を生じる。
【0014】
本発明の無機充填剤(D)としては、本質的に電気絶縁性のものであれば使用することができ、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化アルミニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物、その他、シリカ、マイカ、タルク、クレー等が挙げられる。これらは、単独あるいは必要に応じて2種以上併用して用いることができる。これらの無機充填剤の配合量は、カルボキシル基含有アクリルゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂合計100重量部に対して80〜120重量部が好ましい。80重量部未満では、十分な難燃性が得られず、また、120重量部を越えると、はんだ耐熱性が低下する等の問題を生じる。
【0015】
本発明に使用されるリン系難燃剤(E)としては、ポリリン酸アンモニウムが難燃性において効果的である。ポリリン酸アンモニウムは、リン系難燃剤の中でも赤リンに次いでリン含有量が多い、無機ポリマー系リン系難燃剤である。製造方法としては、特開平5−345603号公報の実施例1〜6に記載された方法が例示される。
【0016】
本発明に使用される窒素系難燃剤(F)としては、シアヌール酸メラミンが難燃性において効果的である。シアヌール酸メラミンは、トリアジン骨格を有するトリアジン系化合物である。
【0017】
リン系難燃剤(E)と窒素系難燃剤(F)の合計添加量は、カルボキシル基含有アクリルゴム100重量部に対し、50〜70重量部が好ましい。50重量部未満では、十分な難燃性が得られず、また、70重量部を越えると、はんだ耐熱性が低下する等の問題を生じる。
【0018】
本発明の硬化剤、硬化触媒(G)とは、公知のエポキシ樹脂の硬化剤、硬化触媒として用いられるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、三沸化硼素アミン錯塩、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、トリフェニルホスフィン、ジアザビシクロウンデセン、ヒドラジン等が例示される。なお、これら硬化剤、硬化触媒は単独で用いても良いし、必要に応じて、2種類以上を併用しても良い。これらの硬化剤、硬化触媒の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部が必要であり、好ましくは1〜5重量部である。0.1重量部未満では、エポキシ樹脂の十分な硬化が得られず、リフローはんだ付け耐熱性、電気特性が低下し、10重量部を越えると接着性が低下し、貯蔵安定性が悪くなる等の問題を生じる。
【0019】
これらの成分はメチルエチルケトン、トルエン、メタノール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶剤に溶解または分散して使用される。
【0020】
本発明に用いられる無機充填剤は、ボールミル等を用いて、粒径を10μm以下に調整する。10μmより大きいと、接着フィルムとした時、フィルム表面に凹凸が発生し、接着性、はんだ耐熱性の低下及び外観性を損ねる。
【0021】
本発明に用いられる離型紙としては、特に限定されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたもの、及び、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、及びポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものが挙げられるが、塗布された接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、ポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0022】
カバーレイフィルムは接着剤溶液をポリイミドフィルム上に直接コーティングし、有機溶剤を乾燥することで得られる。コーティング方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。乾燥後の接着層厚みは、必要に応じて、適宜変更されるが、好ましくは5〜200μmの範囲である。接着層厚みが5μm未満では、十分な回路埋め込み性が得られない。200μm以上では乾燥が不十分で、残留溶剤が多くなり、フレキシブルプリント配線板製造のプレス時にフクレを生じるという問題点が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は1%以下が好ましい。1%以上では、フレキシブルプリント配線板プレス時に、フクレを生じるという問題点が挙げられる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
(1)接着剤組成物の溶液の調整
カルボキル基含有のアクリルゴムWS023DR(帝国化学産業製)を65重量部に対し、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のESCN−195−10(住友化学製)を30重量部、レゾール型フェノール樹脂のヒタノールH2181(日立化成工業製)5重量部、硬化剤としてジシアンジアミド0.6重量部、ゴム架橋剤としてポリN−グリシジルアミンのテトラッドX(三菱化学製)0.15部、リン・窒素系難燃剤としてポリリン酸アンモニウムとシアヌール酸メラミン配合物であるノンネンR011−6(丸菱油化工業製)40重量部、無機充填剤として水酸化アルミニウムのハイジライトH42M(昭和電工製)100重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散し、不揮発分20%溶液とした。この溶液を、ボールミルを用いて無機充填剤を十分に分散して接着剤溶液とした。
【0025】
(2)カバーレイフィルムの作成
25μmポリイミドフィルムKapton100H(デュポン社製)の片面に乾燥後の接着剤厚みが25μmになるように接着剤溶液を塗付し、熱風乾燥機中で100℃4分乾燥してカバーレイフィルムとした。
【0026】
(3)接着フィルムの作成
離型紙の片面に乾燥後の接着剤厚みが25μmになるように接着剤溶液を塗付し、熱風乾燥機中で100℃4分乾燥して接着フィルムとした。
【0027】
(特性の評価)
(1)接着強さ
25μmポリイミドフィルムKapton100H(デュポン社製)とカバーレイフィルムの接着剤面を、真空プレスを用いて、プレス温度170℃、圧力1MPa、時間5分間加熱圧着した後、150℃2時間硬化した試験片をJISC6481に準拠し、90°剥離強度を測定した。
(2)プレス加工性
2枚の80μmポリイミド付銅箔のポリイミド面間に、接着フィルムを挟み込んだ試験片をプレス温度170℃、圧力1MPa、時間5分間加熱圧着して、表面の膨れやしわを観察した。
【0028】
(実施例2)
実施例1において、エポキシ樹脂にESCN220S(住友化学製)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0029】
(比較例1)
実施例1において、リン・窒素系難燃剤のノンネンR011−6を20重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0030】
(比較例2)
実施例1において、リン・窒素系難燃剤の代わりにリン系難燃剤であるレゾルシノールビスジフェニルホスフェートのレオフォスRDP(味の素ファインテクノ製)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0031】
(比較例3)
実施例1において、リン・窒素系難燃剤の代わりに窒素系難燃剤であるメラミンシアヌレートのメラポアMC(DSM製)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0032】
(比較例4)
実施例1において、リン・窒素系難燃剤の代わりにリン系難燃剤であるレゾルシノールビスジフェニルホスフェートのレオフォスRDP(味の素ファインテクノ製)20部、窒素系難燃剤であるメラミンシアヌレートのメラポアMC(DSM製)20部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、カルボキシル基含有アクリルゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化剤、無機充填剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤を所定の割合で配合することによって、ハロゲンフリーで優れた難燃性を有し、且つ優れた接着性、プレス加工性を有するフレキシブル銅張積層板用接着剤組成物及びカバーレイフィルムを得ることができる。
Claims (2)
- カルボン酸変成アクリルゴム(A)、ハロゲンを含まないエポキシ樹脂(B)、レゾール型フェノール樹脂(C)、無機充填剤(D)、リン系難燃剤としてポリリン酸アンモニウム(E)、窒素系難燃剤としてシアヌール酸メラミン(F)、硬化剤または硬化触媒(G)を必須成分とし、カルボン酸変成アクリルゴム(A)100重量部に対し、エポキシ樹脂(B)を10〜90重量部、レゾール型フェノール樹脂(C)を5〜50重量部、ポリリン酸アンモニウム(E)とシアヌール酸メラミン(F)の合計添加量50〜70重量部、無機充填剤(D)を(A)、(B)、(C)の総計100重量部に対して、80〜120重量部含有することを特徴とするハロゲンフリー難燃性接着剤組成物。
- 請求項1記載のハロゲンフリー難燃性接着剤組成物をポリイミドの片面に塗布してなるハロゲンフリーカバーレイフィルム。
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