JP4432177B2 - 磁気ディスク研磨用織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気ディスク研磨用の織物に関し、さらに詳しくは磁気ディスク製造工程においてディスク基板の表面に微細な凹凸溝を付けるテクスチャー加工に使用する研磨用織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器における磁気ヘッドは、磁気ディスク(磁気記録媒体)に僅少な距離で対峙して、磁気ディスクに記憶された記録を読み取るように構成されている。磁気ディスクの記憶容量は、磁気ヘッドとの間の距離、すなわち磁気ヘッドの磁気ディスク表面に対する浮上距離を小さくするほど増大できるため、この浮上距離を極力小さくすることが技術課題の一つになっている。しかし、高速回転する磁気ディスクに磁気ヘッドを接近させ過ぎると、磁気ヘッドが磁気ディスクに接触する所謂ヘッドクラッシュを起こしやすくなる問題がある。
【0003】
従来、上記ヘッドクラッシュを発生させることなく、磁気ヘッドの浮上距離を極力小さくする方法として、ディスク基板に磁気膜等を形成する前に、その基板面に微細な凹凸溝を付ける所謂テクスチャー加工することが行われている。このテクスチャー加工は、ダイヤモンド、アルミナ、ジルコニア等の砥粒を配合したスラリーを研磨用織物(研磨用テープ)を介して押圧することにより行われるが、この加工で得られる凹凸溝の表面粗さRaが小さくなるほど、磁気ヘッドの浮上距離を小さくすることができるため、砥粒の粒径が次第に微細化し、平均粒径が0.5μm以下や、さらには0.25μm以下のものが使用されるようになっている。
【0004】
しかしながら、砥粒の粒度が微細になるにしたがって、従来から使用されていた研磨用織物(テープ)では、微小粒の砥粒を保持することが難しいため、十分な削り量SRが得られなくなり、凹凸溝が均一に分布した微細な表面粗さRaを得ることが困難になっている。そのため磁気ヘッドの浮上距離の縮小にも限界があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、砥粒の粒度の大小にかかわらず十分な削り量SRを確保し、均一で微細な表面粗さRaのテクスチャー加工を可能にする磁気ディスクの研磨用織物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の磁気ディスク研磨用織物は、少なくともヨコ糸が実質的に丸形断面のポリエステル極細フィラメント繊維を主体とする仮撚加工捲縮糸からなり、該ヨコ糸がタテ糸よりも広い面積で表面を覆うと共に、下記(a)式で定められるカバーファクターCFが2400〜3400である5枚以上の朱子織からなることを特徴とするものである。
【0007】
CF=√〔タテ糸総繊度(dtex) 〕×タテ糸密度(本/25.4mm)
+√〔ヨコ糸総繊度(dtex) 〕×ヨコ糸密度(本/25.4mm)・・・・(a)
上記のように少なくともヨコ糸に実質的に丸形断面のポリエステル極細フィラメント繊維を主体とする仮撚加工捲縮糸を使用し、特定のカバーファクターCFを有する5枚以上の朱子織に織製したことにより、粒度が微細な砥粒であっても研磨用織物表面に均一に保持することができるようにする。したがって、十分な削り量SRの研磨が可能になり、ディスク基板の表面全体を均一で微細な表面粗さRaに加工することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1(A),(B)は、本発明の研磨用織物を用いて磁気ディスク用の基板をテクスチャー加工する場合を例示する。
【0009】
磁気ディスク用の基板1は駆動軸に支持され、矢印方向に回転駆動されるようになっている。このように駆動軸に支持された基板1の両側面に、本発明のテープ状にした研磨用織物Fがゴムローラ2を介して押圧され、かつその研磨用織物Fと基板1との間に砥粒配合のスラリーを介在させるようにしてテクスチャー加工される。基板1は、磁気ディスクに使用されるものであれば特に限定されないが、一般にアルミニウムを基材とし、その表面がニッケルメッキにより硬化され、さらにその上が研磨されて平滑化されたものが多い。
【0010】
テープ状の研磨用織物Fは、広幅の織物からタテ糸方向に一定幅に裁断されたものであり、供給リール3にロール状に巻き上げられて使用される。研磨用織物Fは供給リール3から一定速度で引き出されながらゴムローラ2に至る途中で、供給ノズル5から砥粒を配合したスラリーを塗布され、次いでゴムローラ2により基板1の表面に押圧されることにより、回転する基板1の表面に微細な凹凸溝を形成して回収ローラ4に巻き取られる。
【0011】
本発明の研磨用織物は、ヨコ糸がタテ糸よりも広い面積で表面を覆うように5枚以上のバックサテン(朱子織)に織製されている。好ましくは5〜11枚の朱子織が使用される。5枚以上の朱子織は、ヨコ糸が表面に長く浮いた状態になって布面を覆うため、このヨコ糸がタテ糸との組織点を隠して平滑な表面を形成し、砥粒を全面に均一分布するように保持することができる。
【0012】
このように5枚以上の朱子織からなる研磨用織物は、長手方向(タテ糸方向)に沿って所定幅のテープ状に切り出されて使用され、図1に例示したように、その長手方向(タテ糸方向)をディスク基板の周方向に沿わせるように配置され、ヨコ糸が基板の回転方向に対し略直交した関係にする。このようにヨコ糸を基板の回転方向に略直交する配置にすることにより、微細な粒度の砥粒を織物表面に保持し、かつヨコ糸の長さ方向全体に均一に分布させることができる。
【0013】
所定幅に切り出されたテープの幅は特に特に限定されないが、一般的にはディスク基板の大きさに応じて38mm幅にしたものと、45mm幅にしたものに形成される。テープの長さは50mから150mのものが使用され、図1に例示したように供給リールにロール状に巻き上げられ、その供給リールから一定速度で繰り出しながら研磨加工に供される。
【0014】
研磨織物は5枚以上の朱子織の構成であるため、仮撚加工捲縮糸であるヨコ糸に砥粒配合のスラリーをしっかりと保持しやすくすることができる。また、このスラリーの保持効果を良好にするために、前記(a)式で定められるカバーファクターCFを2400〜3400の範囲にすることが必要である。さらに好ましくは、ヨコ糸の総繊度をタテ糸の総繊度の1.5〜10倍にするとよい。カバーファクターを上記範囲にすることにより、ヨコ糸の配列を隙間の無い状態にし、実質的にヨコ糸によって織物全体を覆った状態にするため、砥粒の保持が織物全体に均一になり、ディスク基板の研磨に有効に作用させることができる。
【0015】
カバーファクターCFが2400よりも小さいと、スラリーをヨコ糸にしっかりと保持させることが難しくなり、またカバーファクターCFが3400よりも大きいと、スラリーがヨコ糸に均一に保持されなくなるため、ディスク基板を均一で微細な表面粗さRaにテクスチャー加工することは難しくなる。
【0016】
本発明において、タテ糸に使用される繊維は特に限定されず、通常の衣料用等に使用されるポリエステル繊維やナイロン繊維が使用可能である。また、繊維の繊度や断面形状も任意であってよい。勿論、ヨコ糸と同じ繊維を使用するようにしてもよい。
【0017】
しかし、少なくともヨコ糸は、砥粒の保持性のため、実質的に丸形断面を有し、かつポリエステル極細フィラメント繊維を主体とする仮撚加工捲縮糸を使用する必要がある。ここで、ポリエステル極細フィラメント繊維が主体の仮撚加工捲縮糸とは、ポリエステル極細フィラメント繊維単独からなる仮撚加工捲縮糸は勿論であるが、ポリエステル極細フィラメント繊維を主成分として他の極細フィラメント繊維を混繊した糸条からなる仮撚加工捲縮糸も含むことを意味する。混繊糸を使用する場合は、特にポリエステル繊維とナイロン繊維との混繊糸が好ましい。
【0018】
ポリエステル繊維はナイロン繊維等に比べて大きな弾性率を有するため、ディスク基板に押圧した際の摩擦力に対して砥粒を保持し、その砥粒をディスク基板に対し大きな圧力で押し付けることができるので、研磨効率を増大することができる。
【0019】
また、繊維断面が実質的に丸形とは、真円は当然含まれるが、さらに仮撚捲縮加工により繊維断面が歪んでいる場合であっても、曲率半径の異なる複数の円弧から繊維断面の輪郭が形成され、かつ各円弧に対する挟角(隣接する接線間の角度)がいずれも90°より大、好ましくは100°よりも大である形状のものを含むものとする。図2に示す繊維断面で説明すると、単糸繊維fの断面の輪郭が複数の曲率半径の円弧の組合せから形成されていて、かつ各円弧に対する挟角θ1 ,θ2 ,・・・,θn がいずれも90°よりも大、好ましくは100°よりも大であるように形成されているものを実質的に丸形として含むということである。
【0020】
また、このような繊維断面が実質的に丸形のポリエステル極細フィラメント繊維は、1糸条中の全フィラメント本数のうち80%以上を占めていればよく、必ずしも1糸条中の全フィラメント本数が実質的に丸形断面である必要はない。
【0021】
本発明の研磨用織物では、少なくともヨコ糸の繊維断面が上記のように実質的に丸形であることにより、次のような作用効果を奏する。
【0022】
すなわち、例えば、粒径分布が0.01〜1μmの砥粒を配合したスラリーを使用する場合、0.11dtex(0.1デニール)のポリエステル極細フィラメント繊維の径は3.2μmであり、0.011dtex(0.01デニール)では1.0μmであるから、砥粒の径は繊維径よりも遙かに小さい関係になっている。他方、スラリーが塗布された研磨用織物でディスク基板を研磨する工程を観察すると、砥粒は繊維にせき止められて研磨するのではなく、繊維とディスク基板との隙間にくさびが打ち込まれたよう挟まれ、その隙間を押しのけて通過することにより基板表面を研磨する。
【0023】
したがって、ヨコ糸を構成する繊維の断面が実質的に丸形であると、砥粒が繊維とディスク基板との隙間に挟持されやすくなるが、鋭角の円弧部を持った断面形状であると、砥粒は繊維とディスク基板の隙間に挟持されるのではなく、繊維の長手方向に流されすくなって基板の円周方向の研磨には寄与することがなく、研磨効果が減殺される可能性がある。
【0024】
また、ヨコ糸に用いるポリエステル極細フィラメント繊維は仮撚加工捲縮糸にしてある。仮撚加工捲縮糸は嵩を有するため、ヨコ糸を朱子織物の表面に露出させる割合を増大させ、上述した砥粒の保持による研磨作用を増大させることができる。このような仮撚加工捲縮糸は、好ましくは複合繊維を仮撚加工したものがよく、捲縮発現はリラックス熱水処理によって実施し、熱水処理後に液流染色機内で酸処理を行い、その後アルカリ処理により割繊するとよい。
【0025】
割繊前の複合繊維は充分に収縮させられた状態にあり、その状態で割繊するのがよい。割繊後にピンテンターにより幅出ししながらセットすることにより、割繊の促進と極細フィラメント繊維のヨコ糸により織物表面を広面積に覆うことができる。生糸(非捲縮糸)であっては、収縮が繊維軸方向に発生し、繊維が膨らんで嵩高になるような収縮を発生しないため、ヨコ糸による織物表面のカバー率を大きくすることができない。
【0026】
また、ヨコ糸に用いるポリエステル極細フィラメント繊維は無撚糸で使用することが好ましい。撚り糸であると、その螺旋によって砥粒が繊維の長手方向に流されやすくなり、上記と同様の問題があるからである。また、スラリーの含浸性が低下するため、砥粒の保持能力が低下するためである。
【0027】
上記極細フィラメント繊維の単糸繊度としては、0.56dtex(0.5デニール)以下がよく、さらに好ましくは0.11dtex(0.1デニール)以下であるのがよい。このような極細繊度のフィラメント繊維を使用することにより、粒度0.5μm以下の微細砥粒であってもヨコ糸に効率よく保持することができ、良好なテクスチャー加工を可能にする。
【0028】
本発明において、極細フィラメント繊維の製造方法は特に限定されないが、好ましくは複合繊維の割繊糸を用いるのがよい。割繊される複合繊維としては、海島型繊維が好ましい。海島型繊維は、海成分を溶解除去して島成分を極細フィラメント繊維にするが、海島型繊維は類似のポリマーを用いることで紡糸性を保持しながら、島成分を極細化しやすくする利点があるからである。海島型繊維に用いるポリマーは、島成分にポリエステル、海成分に共重合ポリエステルを用いたものが好ましい。割繊後の島成分から得られる極細フィラメント繊維は、断面の輪郭を形成する複数の曲率半径の異なる円弧の各円弧に対する挟角が、いずれも90°よりも大、好ましくは100°よりも大であるようにすることが重要である。
【0029】
さらに本発明に使用する研磨用織物には、タテ糸およびヨコ糸の少なくとも一方に制電性繊維を含ませることが好ましい。織物の製造過程では、摩擦帯電によって環境周辺の異物、ごみ、ほこりなどを吸い寄せ、織物表面や織物内部に抱き込むことがある。このような異物等はテクスチャー加工において均一な研磨を阻害する場合がある。しかし、上記のように制電性繊維を含有させておくと、摩擦帯電による異物の混入を大幅に低減することができる。
【0030】
また、本発明に使用する研磨用織物は、表面を出来るだけ平滑化することが好ましい。このように表面を平滑化することにより、研磨加工時の繊維とディスク基板との隙間に砥粒を保持しやすくし、一層優れたテクスチャー加工を可能にする。
【0031】
このように織物表面を一層平滑にする方法としてはカレンダー加工が好ましく、かつそのカレンダー加工の加工温度としては室温(20℃)〜80℃が好ましい。加工温度が100℃を越えると織物表面に融着が発生するようになり、かえって平滑性は悪化する。一般にカレンダー加工は、加熱・加圧により表面を平滑化するものであるが、本発明の研磨用織物の場合には、室温下で加圧するだけであっても充分な平滑化を行うことができる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を説明するが、テクスチャー加工の研磨評価は次の方法によって行った。
【0033】
〔研磨評価方法〕
ハードディスク用アルミ基板を用い、その基板の回転数300rpm、研磨用織物テープの移動速度2cm/分とし、最大出現粒度0.5μmの人工ダイヤモンドを配合したスラリーを20cc/分の条件で滴下しながら30秒間研磨加工を行い、その加工後のディスク基板の表面粗さRa(平均)とスクラッチの有無を調べた。表面粗さRaは次の基準に分類評価した。
【0034】
◎ : 表面粗さRaが6Å以下
○ : 表面粗さRaが6Å超10Å以下
× : 表面粗さRaが10Å超
実施例1
タテ糸にポリエステルマルチフィラメント糸(生糸,丸形断面)56dtex(50デニール),18フィラメントを用い、またヨコ糸に海島型繊維(海成分:テレフタル酸と5ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステル、島成分:ポリエステル100%,70本、海成分/島成分の重量比=20/80)110dtex(100デニール),18フィラメントをウーリー仮撚加工した捲縮糸を2本引き揃えヨコ打ち込みして5枚バックサテン(朱子織)に製織し、次いで精練したのち、水酸化ナトリウム30重量%存在下に80℃、30分間アルカリ処理して海島型繊維の海成分を除去した。
【0035】
海成分除去後の海島型繊維は70本のポリエステル極細フィラメント繊維の割繊糸になり、単糸繊度0.08dtex(0.07デニール)で、かつ単糸断面形状は非円形に歪んでいたが90°よりも小さな挟角をもつ円弧はなく、実質的に丸形であった。
【0036】
次いで、上記織物をピンテンターで180℃の条件でヒートセットし、幅152cmの布帛(タテ糸密度129本/25.4mm ,ヨコ糸密度135本/25.4mm ,カバーファクターCF=2865)に仕上げた。この布帛をテクスチャー加工用研磨織物に使用した評価結果を表1に示す。表1に示す通り、表面粗さRaは10Åであり、結果は良好(○)であった。
【0037】
実施例2
タテ糸にポリエステルマルチフィラメント糸(生糸,丸形断面)56dtex(50デニール),18フィラメントを用い、またヨコ糸に実施例1と同じ組成の海島型繊維135dtex(120デニール),18フィラメントをウーリー仮撚加工した捲縮糸を2本引き揃えてヨコ打ち込みして5枚バックサテン(朱子織)に製織した。次いで精練したのち、水酸化ナトリウム30重量%存在下に80℃、30分間アルカリ処理して海島型繊維の海成分を除去した。
【0038】
海成分除去後の海島型繊維は70本のポリエステル極細フィラメント繊維からなる割繊糸になり、単糸繊度0.08dtex(0.07デニール)で、かつ単糸断面形状は非円形に歪んでいたが90°より小さな挟角をもつ円弧はなく、実質的に丸形であった。
【0039】
次いで、実施例1と同じ条件でヒートセットし、幅152cmの布帛(タテ糸密度137本/25.4mm ,ヨコ糸密度119本/25.4mm ,カバーファクターCF 2275)に仕上げた。この布帛をテクスチャー加工用研磨織物に使用した評価結果を表1に示す。表1に示すように、表面粗さRaは8Åであり、結果は良好(○)であった。
【0040】
実施例3
タテ糸にポリエステルマルチフィラメント糸(生糸,丸形断面)33dtex(30デニール),18フィラメントを用い、またヨコ糸に実施例1と同じ組成の海島型繊維135dtex(120デニール),18フィラメントをウーリー仮撚加工した捲縮糸を2本引き揃えてヨコ打ち込みして11枚バックサテン(朱子織)に製織した。次いで精練したのち、水酸化ナトリウム30重量%存在下に80℃、30分間アルカリ処理して海島型繊維の海成分を除去した。
【0041】
海成分除去後の海島型繊維は70本のポリエステル極細フィラメント繊維からなる割繊糸になり、単糸繊度0.08dtex(0.07デニール)で、かつ単糸断面形状は非円形に歪んでいたが90°より小さな挟角をもつ円弧はなく、実質的に丸形であった。
【0042】
次いで、上記織物を実施例1と同じ条件でヒートセットし、幅152cmの布帛(タテ糸密度277本/25.4mm ,ヨコ糸密度117本/25.4mm ,カバーファクターCF 3310)に仕上げた。この布帛をテクスチャー加工用研磨織物に使用した評価結果を表1に示す。表1に示すように、表面粗さRaは5Åであり、結果は極めて良好(◎)であった。
【0043】
比較例1
タテ糸にポリエステルマルチフィラメント糸(生糸,丸形断面)56dtex(50デニール),18フィラメントを用い、またヨコ糸に実施例1と同じ組成の海島型繊維135dtex(120デニール),18フィラメントをウーリー仮撚加工した捲縮糸を2本引き揃えてヨコ打ち込みし、5枚バックサテン(朱子織)に製織した。次いで精練したのち、水酸化ナトリウム30重量%存在下に80℃、30分間アルカリ処理して海島型繊維の海成分を除去した。
【0044】
海成分除去後の海島型繊維は70本のポリエステル極細フィラメント繊維からなる割繊糸になり、単糸繊度0.08dtex(0.07デニール)で、かつ単糸断面形状は非円形に歪んでいたが90°より小さな挟角をもつ円弧はなく、実質的に丸形であった。
【0045】
次いで、上記織物を実施例1と同じ条件でヒートセットし、幅152cmの布帛(タテ糸密度110本/25.4mm ,ヨコ糸密度95本/25.4mm ,カバーファクターCF 2220)に仕上げた。この布帛をテクスチャー加工用研磨織物に使用した評価結果を表1に示す。表1に示すように、表面粗さRaは13Åもあり、結果は良好といえなかった(×)。
【0046】
比較例2
タテ糸とヨコ糸に、それぞれ実施例1と同じ組成の海島型繊維56dtex(50デニール),9フィラメントの生糸を用いて、平織に製織した。次いで精練したのち、水酸化ナトリウム30重量%存在下に80℃、30分間アルカリ処理して海島型繊維の海成分を除去した。
【0047】
次いで、上記織物を実施例1と同じ条件でヒートセットし、幅152cmの布帛(タテ糸密度168本/25.4mm ,ヨコ糸密度127本/25.4mm ,カバーファクターCF 2159)に仕上げた。この布帛をテクスチャー加工用研磨織物に使用した評価結果を表1に示す。表1に示すように、表面粗さRaは25Åもあり、結果は良好といえず(×)、かつ多数のスクラッチが多発していた。
【0048】
【表1】
【0049】
比較例3
実施例1において、ヨコ糸の海島型繊維のウーリー仮撚加工を強化し、海成分除去後のポリエステル極細フィラメント繊維割繊糸の単糸断面形状に挟角90°より小さい凸部が多数形成させた以外は、同一条件にして5枚バックサテンの布帛を得た。
【0050】
この布帛をテクスチャー加工用研磨織物に使用した評価結果は、表面粗さRaが15Åとなり、良好とはいえなかった。
【0051】
実施例4,5,6
実施例1で得られた布帛を、さらにローラ圧力30 ton/本、布速度10m/分として、加工温度をそれぞれ室温(20℃)、60℃及び80℃の3水準に異ならせてカレンダー加工した。
【0052】
加工後の布帛表面は平滑性が向上し、それぞれテクスチャー加工用研磨織物に使用して評価したところ、表2の結果が得られた。いずれも加工後のディスク表面粗さRaは、実施例1よりも更に向上していた。
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】
上述したように本発明の研磨用織物によれば、磁気ディスク基板の面全体にわたり均一で微細な表面粗さRaにテクスチャー加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研磨用織物を用いてテクスチャー加工する工程を例示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】本発明の研磨用織物を構成するヨコ糸のフィラメント繊維の一例を示す横断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 ゴムローラ
3 供給リール
4 回収リール
5 供給ノズル
F 研磨用織物
Claims (9)
- 少なくともヨコ糸が実質的に丸形断面のポリエステル極細フィラメント繊維を主体とする仮撚加工捲縮糸からなり、該ヨコ糸がタテ糸よりも広い面積で表面を覆うと共に、下記(a)式で定められるカバーファクターCFが2400〜3400である5枚以上の朱子織からなる磁気ディスク研磨用織物。
CF=√〔タテ糸総繊度(dtex) 〕×タテ糸密度(本/25.4mm)
+√〔ヨコ糸総繊度(dtex) 〕×ヨコ糸密度(本/25.4mm) ・・・・(a) - 前記実質的に丸形断面の形状が複数の曲率半径の異なる円弧の組合せから形成され、各円弧の挟角がいずれも90°よりも大である請求項1に記載の磁気ディスク研磨用織物。
- 前記ヨコ糸が無撚糸である請求項1又は2に記載の磁気ディスク研磨用織物。
- 前記ヨコ糸の総繊度が前記タテ糸の総繊度の1.5〜10倍である請求項1,2又は3に記載の磁気ディスク研磨用織物。
- 前記ポリエステル極細フィラメント繊維を主体とする捲縮糸が複合繊維の割繊糸からなり、単糸繊度が0.56dtex(0.5デニール)以下である請求項1、2、3又は4に記載の磁気ディスク研磨用織物。
- 前記複合繊維が海島型繊維である請求項5に記載の磁気ディスク研磨用織物。
- 前記ポリエステル極細フィラメント繊維を主体とする捲縮糸が、ポリエステル繊維単独糸であるか又はポリエステル繊維とナイロン繊維との混繊糸である請求項1〜6のいずれかに記載の磁気ディスク研磨用織物。
- 前記タテ糸およびヨコ糸の少なくとも一方に制電性繊維を含んでいる請求項1〜7のいずれかに記載の磁気ディスク研磨用織物。
- 表面がカレンダー加工で平滑化されている請求項1〜8のいずれかに記載の磁気ディスク研磨用織物。
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