JP4426711B2 - 船舶推進機用チルト装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は船舶推進機用チルト装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶推進機用チルト装置は、船体の側に固定されるクランプブラケットと、クランプブラケットに水平軸を回動中心として傾動可能に連結されるスイベルブラケットと、クランプブラケットとスイベルブラケットの間に介装されるシリンダ装置と、シリンダ装置を伸縮させるポンプ装置とを有し、スイベルブラケットに推進ユニットを支持している。
【0003】
従来技術では、シリンダ装置とポンプ装置を並列配置するもの(従来技術1)と、シリンダ装置の下部側方にポンプ装置をL字状配置するもの(従来技術2)(特開平11-198894号公報)とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術1では、シリンダ装置やポンプ装置がクランプブラケットやスイベルブラケットに干渉しないようにするため、クランプブラケットやスイベルブラケットの横幅が大型になり、大重量になる。
【0005】
従来技術2では、ポンプ装置のモータが側方に飛び出るため、人がここに足をかける虞があり、ポンプ装置の破損を招く虞がある。
【0006】
従来技術1、2とも、シリンダ装置及びポンプ装置の組立体の重心が、クランプブラケットやスイベルブラケットの中心に対し大きくオフセットするものとなるから、クランプブラケットやスイベルブラケットの機械的強度を補強する必要があり、大重量になる。
【0007】
本発明の課題は、クランプブラケットやスイベルブラケットを小型軽量化するとともに、ポンプ装置の側方への飛び出しを回避することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、船体の側に固定されるクランプブラケットと、クランプブラケットに水平軸を回動中心として傾動可能に連結されるスイベルブラケットと、クランプブラケットとスイベルブラケットの間に介装されるシリンダ装置と、シリンダ装置を伸縮させるポンプ装置とを有し、スイベルブラケットに推進ユニットを支持してなる船舶推進機用チルト装置において、シリンダ装置とポンプ装置をそれらの長手方向がいずれも鉛直方向となるように鉛直方向に直列に配置してなるようにしたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記シリンダ装置を構成するシリンダを管材にて形成し、このシリンダをポンプ装置のバルブブロックに直列に接続してなるようにしたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明において更に、前記シリンダ装置を構成するシリンダとポンプ装置のバルブブロックとを直列に一体成形してなるようにしたものである。
【0011】
【作用】
請求項1の発明によれば下記▲1▼〜▲4▼の作用がある。
▲1▼シリンダ装置とポンプ装置を鉛直方向に直列配置したから、クランプブラケットやスイベルブラケットの横幅をシリンダ装置の納まる小サイズにでき、クランプブラケットやスイベルブラケットを小型軽量化できる。
【0012】
▲2▼シリンダ装置及びポンプ装置の組立体の重心を、クランプブラケットやスイベルブラケットの中心に略合致させることができ、クランプブラケットやスイベルブラケットの機械的強度を補強する必要がなく、軽量化できる。
【0013】
▲3▼ポンプ装置が横方向に飛び出すことがなく、人がポンプ装置に足をかける虞がないから、ポンプ装置の破損を抑制できる。
【0014】
▲4▼ポンプ装置がシリンダ装置の下方に飛び出すものとなり、ポンプ装置のモータを水中に配置してその冷却効率を向上せしめることもできる。
【0015】
請求項2の発明によれば下記▲5▼の作用がある。
▲5▼シリンダ装置を構成するシリンダを管材にて形成し、このシリンダをポンプ装置のバルブブロックに直列に接続するものとすることにより、軽量化を促進できる。
【0016】
請求項3の発明によれば下記▲6▼の作用がある。
▲6▼シリンダ装置を構成するシリンダとポンプ装置のバルブブロックとを直列に一体成形するものとすることにより、アルミ合金鋳物等にて鋳造できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は船舶推進機を示す模式図、図2は第1実施形態のチルト装置を示す側面図、図3は図2の正面図、図4はパワーユニットを示す断面図、図5は第2実施形態のパワーユニットを示す断面図、図6は第3実施形態のパワーユニットを示す断面図である。
【0018】
(第1実施形態)(図1〜図4)
船舶推進機10(船外機、但し船内外機でも良い)のチルト装置10Aは、図1に示す如く、船体11の船尾版11Aにクランプブラケット12を固定し、クランプブラケット12に水平軸13を回動中心としてスイベルブラケット14を傾動可能に連結し、クランプブラケット12とスイベルブラケット14の間にパワーユニット15を介装し、スイベルブラケット14に鉛直配置の転舵軸を介して推進ユニット16を支持している。推進ユニット16は上部にエンジンユニット17を、下部にプロペラ18を備える。
【0019】
パワーユニット15は、図2、図3に示す如く、シリンダ装置20とポンプ装置40により構成され、シリンダ装置20とポンプ装置40を鉛直方向に直列配置した組立体としている。シリンダ装置20はクランプブラケット12とスイベルブラケット14の間に介装され、ポンプ装置40はシリンダ装置20を伸縮させる。
【0020】
(シリンダ装置20)(図4)
シリンダ装置20は、ポンプ装置40のバルブブロック45(ポンプハウジング)に接続されて一体結合されている。シリンダ装置20は、引抜き成形された鋼管にて構成された外シリンダ21と内シリンダ22を有し、それらのシリンダ21、22をバルブブロック45に直列に接続している。尚、バルブブロック45は、例えばアルミ合金の鋳造製であり、クランプブラケット12への取付ピン挿着孔45Aを備える。
【0021】
また、シリンダ装置20は、スイベルブラケット14に連結して用いられるピストンロッド23を有し、このピストンロッド23を外シリンダ21の開口端に設けてあるロッドガイド24から、内シリンダ22のチルト室25に伸縮可能に挿入している。ロッドガイド24は、ピストンロッド23に摺接するシール部材26を備える。ピストンロッド23は、スイベルブラケット14への取付ピン挿着孔23Aを備える。
【0022】
また、シリンダ装置20は、内シリンダ22のチルト室25内にあるピストンロッド23の端部に固定されるピストン27を有する。ピストン27は、内シリンダ22の内面に摺接するOリング28を備え、チルト室25を、ピストンロッド23を収容する側の第1チルト室25A(ロッド側油室)と、ピストンロッド23を収容しない側の第2チルト室25B(ピストン側油室)とに区画する。
【0023】
また、シリンダ装置20は、バルブブロック45の上端部に同芯状の大径孔31A、中径孔31B、小径孔31Cを備え、ロッドガイド24に同芯状の大径部32A、小径部32Cを備える。そして、外シリンダ21の一端部をバルブブロック41の大径孔31AにOリング33を介して嵌合し、外シリンダ21の他端部をロッドガイド24の大径部32Aに嵌着して加締部34により固定する。また、内シリンダ22の一端部をバルブブロック41の小径孔31CにOリング35を介して嵌合し、内シリンダ22の他端部をロッドガイド24の小径部32Cに嵌着して固定する。これにより、外シリンダ21と内シリンダ22との間にリング空間状の油路36を形成し、第1チルト室25Aと油路36を内シリンダ32に開口した油路(又はロッドガイド24に設けた連通流路)(不図示)にて連絡する。また、第1チルト室25Aに連通している油路36をバルブブロック41の中径孔31Bに連通した第1油路46Aに、第2チルト室25Bをバルブブロック41に設けた第2油路46Bにそれぞれ連通する。
【0024】
シリンダ装置20をバルブブロック45に接続する構造については、バルブブロック41の大径孔31Aに断面が円弧状又は矩形状をなすリング溝37を設け、外シリンダ21の一端部をこの大径孔31に挿入し、この外シリンダ21の一端部をバルジ加工により膨出させてバルジ部38を形成し、このバルジ部38を上述のリング溝37に係合せしめることにてなされる。
【0025】
(ポンプ装置40)(図4)
ポンプ装置40は、可逆式モータ41と可逆式ギヤポンプ42とタンク43と切換弁付流路44からなり、バルブブロック45(ポンプハウジング)に設けてある第1油路46A、第2油路46Bを介して、シリンダ装置20の第1チルト室25A、第2チルト室25Bに作動油を給排可能とする。
【0026】
このとき、ポンプ装置40は、アルミ合金鋳物からなるバルブブロック45に切換弁付流路44を内蔵し、第1油路46A、第2油路46B、切換弁、手動弁、油温上昇による油の体積変化に対応するためのリリーフ弁、内シリンダ22に進入するピストンロッド23の体積を補償するためのリリーフ弁等を備える。そして、バルブブロック45は、シリンダ装置20を接続するための大径孔31A、中径孔31B、小径孔31Cを前述の如くに上端部に備えるとともに、タンク43(ポンプ室)を下端部に備える。タンク43は、作動油を収容するとともに、ポンプ42をこの作動油中に浸漬する状態で備える。ポンプ42は、タンク43の内部に逆様に配置され、ボルト48でバルブブロック45の取付面49に固定される。
【0027】
また、ポンプ装置40は、バルブブロック45のタンク43を形成する下端部にモータ41の端板51のいんろう部を嵌合してこれをボルト52で固定し、端板51のいんろう部に装着したOリング53によりタンク43を液密に封止する。バルブブロック45は、タンク43の上方空間を凹状エア溜まり54としており、ポンプ42は、タンク43の油中に配置されその下部から油を吸い込むため、エアを吸い込まない。ポンプ42は、タンク43から吸い込んだ油をバルブブロック45の取付面49から油路55A又は55Bに吐出し、これを切換弁付流路44の切換弁から第1油路46A又は第2油路46Bを経てシリンダ装置20の第1チルト室25A又は第2チルト室25Bに供給する。シリンダ装置20の第1チルト室25A又は第2チルト室25Bからの戻り油も、バルブブロック45の第1油路46A又は第2油路46Bから切換弁付流路44の切換弁を経て油路55A又は油路55Bからポンプ42へ、又は切換弁付流路44の各リリーフ弁からタンク43へ戻す。
【0028】
チルト装置10Aにあっては、パワーユニット15のピストンロッド23に設けた取付ピン挿着孔23Aに挿着した取付ピン61をスイベルブラケット14の取付孔61Aにピン結合し、バルブブロック45に設けた取付ピン挿着孔45Aに挿着した取付ピン62をクランプブラケット12の取付孔62Aにピン結合することにて、クランプブラケット12、スイベルブラケット14に取付けられる。
【0029】
従って、チルト装置10Aのチルト動作は以下の通りになる。
(1)チルトダウン
モータ41及びポンプ42を正転すると、ポンプ42の吐出油がシリンダ装置20の第1チルト室25Aに供給され、第2チルト室25Bの作動油はポンプ64に戻り、シリンダ装置20を収縮させ、チルトダウンする。
【0030】
(2)チルトアップ
モータ41及びポンプ42を逆転すると、ポンプ42の吐出油がシリンダ装置20の第2チルト室25Bに供給され、第1チルト室25Aの作動油はポンプ42に戻り、シリンダ装置20を伸長させ、チルトアップする。
【0031】
本実施形態によれば、下記の作用がある。
▲1▼シリンダ装置20とポンプ装置40を鉛直方向に直列配置したから、クランプブラケット12やスイベルブラケット14の横幅をシリンダ装置20の納まる小サイズにでき、クランプブラケット12やスイベルブラケット14を小型軽量化できる。
【0032】
▲2▼シリンダ装置20及びポンプ装置40の組立体の重心を、クランプブラケット12やスイベルブラケット14の中心に略合致させることができ、クランプブラケット12やスイベルブラケット14の機械的強度を補強する必要がなく、軽量化できる。
【0033】
▲3▼ポンプ装置40が横方向に飛び出すことがなく、人がポンプ装置40に足をかける虞がないから、ポンプ装置40の破損を抑制できる。
【0034】
▲4▼ポンプ装置40がシリンダ装置20の下方に飛び出すものとなり、ポンプ装置40のモータ41を水中に配置してその冷却効率を向上せしめることもできる。
【0035】
▲5▼シリンダ装置20を構成するシリンダ21、22を管材にて形成し、このシリンダ21、22をポンプ装置40のバルブブロック45に直列に接続するものとすることにより、軽量化を促進できる。
【0036】
また、本実施形態では、バルブブロック45がタンク43の上方空間を凹状のエア溜まり54としたから、船体の揺れ等により油面レベルが変化しても、ポンプ42及びシリンダ装置20がエアかみを生ずることを防止でき、シリンダ装置20のチルトロックの安定を確保できる。
【0037】
(第2実施形態)(図5)
図5の第2実施形態が図4の第1実施形態と異なる点は、バルブブロック45の上端側に樹脂カバー71等で液密に区画したサブタンク72を設け、ポンプ42が配置されているタンク43とこのサブタンク72とを連通路73で連通することにより、サブタンク72の上方空間をエア溜まり74としたものである。これによれば、タンク43へのエアの混入を防止し、ポンプ42及びシリンダ装置20へのエア噛みを確実に防止できる。サブタンク72とエア溜まり74の間にプラダ又はフリーピストンからなる隔壁を介在させても良い。
【0038】
(第3実施形態)(図6)
図6の第3実施形態が図4の第1実施形態と異なる点は、モータ41の周囲にプラダ又はフリーピストンからなる隔壁81を介した樹脂カバー82等を液密に設け、隔壁81の内側をサブタンク83、外側をエア溜まり84とし、ポンプ42が配置されているタンク34とサブタンク83とをモータ41の端板51に設けた連通路85で連通したものである。これによれば、タンク43へのエアの混入を完全に防止し、ポンプ42及びシリンダ装置20へのエアかみを完全に防止できる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、シリンダ装置を構成するシリンダとポンプ装置のバルブブロックとを直列に、アルミ合金鋳物等で一体成形しても良い。
【0040】
また、本発明の実施において、チルト装置のシリンダ装置は、チルトシリンダとトリムシリンダを直列配置してなるものであっても良い。
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、クランプブラケットやスイベルブラケットを小型軽量化するとともに、ポンプ装置の側方への飛び出しを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は船舶推進機を示す模式図である。
【図2】図2は第1実施形態のチルト装置を示す側面図である。
【図3】図3は図2の正面図である。
【図4】図4はパワーユニットを示す断面図である。
【図5】図5は第2実施形態のパワーユニットを示す断面図である。
【図6】図6は第3実施形態のパワーユニットを示す断面図である。
【符号の説明】
10 船舶推進機
10A チルト装置
11 船体
12 クランプブラケット
13 水平軸
14 スイベルブラケット
15 パワーユニット
16 推進ユニット
20 シリンダ装置
21、22 シリンダ
40 ポンプ装置
45 バルブブロック

Claims (3)

  1. 船体の側に固定されるクランプブラケットと、クランプブラケットに水平軸を回動中心として傾動可能に連結されるスイベルブラケットと、クランプブラケットとスイベルブラケットの間に介装されるシリンダ装置と、シリンダ装置を伸縮させるポンプ装置とを有し、スイベルブラケットに推進ユニットを支持してなる船舶推進機用チルト装置において、
    シリンダ装置とポンプ装置をそれらの長手方向がいずれも鉛直方向となるように鉛直方向に直列に配置してなることを特徴とする船舶推進機用チルト装置。
  2. 前記シリンダ装置を構成するシリンダを管材にて形成し、このシリンダをポンプ装置のバルブブロックに直列に接続してなる請求項1記載の船舶推進機用チルト装置。
  3. 前記シリンダ装置を構成するシリンダとポンプ装置のバルブブロックとを直列に一体成形してなる請求項1記載の船舶推進機用チルト装置。
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