JP4425599B2 - 液体用匙 - Google Patents
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Description
しかし、摂食に当たって介助が必要とされる被介助者等の使用者は、手の傾け角度の調整が困難なだけでなく、液状あるいは半液状のペースト状の液体食品が入った匙の形状に合わせて、口唇の形状を変化させることができないため、液体食品を上手く摂取することができない。このため、母親等の介助者による介助を受けて適切な量の液体食品を、こぼさずに無理なく摂取するための匙として、図9に示す匙が本出願人から提案されている(特許文献1参照)。
また、匙部本体4には、ボウル部6の柄部2側に上方に突出した位置決め手段8が設けられている。この位置決め手段8は、匙1を口腔内に差し入れる際に、口唇を適切な位置に止めるための手段であり、口唇の形状に合わせて形成されている。すなわち、幅方向両端8a,8aがボウル部6の最大幅となる位置まで伸びるよう位置決め手段8として形成されており、幅方向中央8bから左右均等に延伸された壁面とされている。
このようにして、匙1は、位置決め手段8により、被介助者の開いた口腔の中にさし入れる際に適切な位置にとどめられ、口角側から液体がこぼれづらいようにすると共に、ボウル部6により、一回で液体食品を口腔に入れる適切の量を調整できるようになっている。
しかし、介助者が被介助者の斜めに立って摂食を行う際には、ボウル部先端に口腔が正対した状態とすることが困難であり、斜め方向から口腔内に挿入しようとすると、位置決め手段8の端部である両端8a,8aが妨げとなってしまう。
また、使用者が自ら匙1を使用する場合においても、通常、斜め方向から口腔内に匙部本体4を挿入する。特に、自ら摂食することが困難になりつつある使用者にあっては、脇を自然と開いた状態に維持して操作をすることが困難なため、脇を若干閉じた状態で食事をすること等が多く、このため、匙1をごく浅い角度すなわち口唇に対して匙部本体4が傾いた状態で挿入される事となる。そして、匙1の挿入角度が浅いと、上述したように位置決め手段8の幅方向両端8a,8aのいずれか一方の端に口唇が当接し、口唇を位置決め手段8の形状に合わせて変形させることが困難となるため、位置決め手段8が却って邪魔になり、液体食品が食べ難くなるという問題があった。
また、口唇が当接される飲み口部を形成する匙部の先端側と両側面側の壁面部について、その周縁が、先端側から匙部の最大幅部を通って柄部側まで、略均一な曲線により形成された円弧とされている。このため、例えば、被介助者が自ら所定の角度をもって口腔内に匙部を挿入する場合、或いは介助者が匙を口唇に正対させるようにして被介助者の口腔内に匙部を差し入れる場合のいずれにかかわらず、飲み口部の略均一な曲線から形成された円弧を有する壁面部の周縁に口唇を均等に当接でき、匙部の形状に応じて口唇を大きく変形する必要がない。そして、この当接された口唇の匙部内側に位置する上唇を、収容された液体食品の液面に触れさせて、液体食品を啜ることができる。
請求項2の構成によれば、柄部は楕円または長円形状とされることで、角がないため把持した手の中での角部があたって隙間が形成されてしまうことを防ぐと共に、柄部の手掌に対する接触面積を多くすることができ、把持し易く、また、手の中で回転することを有効に防止する。このため、液体食品をすくった状態で匙部が傾いてしまうことがなく、匙部の方向性をつけ易い。また、この楕円または長円形状は匙部の深さ方向に関して薄くされているため、例えば柄部の一般的な把持方法であるペングリップにより把持する際、把持するための各指等を正しい位置に配置して、確実に柄部を保持することができる。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
柄部12は、高齢者や障害者あるいは幼児等の被介助者が、自ら液状あるいはペースト状の液体食品を食べるために適し、また、被介助者に摂食させる介助者等が、液状あるいはペースト状の液体食品を食べさせるために適した種々の工夫がなされている。
すなわち、柄部12は、軽く、そして、加熱された液体食品に耐えて、食器洗い乾燥器等の使用に耐え得る耐熱性を備え、さらに、連続して煮沸消毒でき、ある程度折れにくい強度と耐久性を備えた材料が使用されており、例えばポリプロピレンやポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、その他、耐熱加工されたPET樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等により形成されている。
そして、図2に示すように、柄部12は、匙部11の周縁が水平となるように位置された状態で、匙部11との接続部12a付近における水平方向に対する角度θ1を約30度に形成することで、被介助者が腕を上に高く持ち上げることなく、匙10を丼皿などの底の深い食器40に容易に差し入れて、匙部11の角度を大きく変えることなく液体食品をすくい上げることができるようにしている。
これにより、柄部12の断面形状が、例えば断面4角形等であることによる角によって、握った際に手の中で隙間が生じて、握り難くなることを防止できる。また、柄部12の断面形状が楕円または長円形状であると、手掌に対する接触面積を多くすることで確実に把持することができるだけでなく、匙部11が回動することを有効に防止できるため、匙部11の方向性を付け易くし、特に傾きによってこぼれてしまいやすい液体食品を食べやすくすることができる。
なお、ここで示す楕円または長円形状とは、断面形状で長手方向を有する直方体の角部を面取りした状態等も含まれる。
この匙部11は、図2および図4に示すように、液体食品を収容する壁面部16を有している。壁面部16は、少なくとも匙部11の先端側と両側面側に設けられ、図2に示すように、先端側の壁面部16aは、水平方向に対して角度θ2が45度〜55度の範囲とされており、ここでは48度となるように形成されている。また、図4に示すように、両側面側の壁面部16b,16bも、水平方向に対して角度θ3が角度θ2と概ね等しい角度となるように形成されており、壁面部16はいずれも略同等の角度を有するように、すり鉢状に構成されている。
一方、壁面部16の角度θ2,θ3を大きくし過ぎないように設計することで、液体を摂取する際に大きく脇や肘を開く方向に動かしたり、或いは手首を回転させなくても、収容された液体食品を容易に口腔内に取り込むことができるようになっている。
また、上述のように、壁面部16の先端側と両側面側との角度を略同等にすることで、介助によって摂食する場合でも、自ら摂食する場合でも、さらに、自ら摂食する場合に収容物の量や性状によって異なる角度から挿入した場合でも、匙部11の傾け幅を均等とすることができ、大きく傾けることなく液体を取り込むことができる。
また、最深部18aは、深すぎると、被介助者が大きく肘を移動させて匙10を傾ける必要が生じてしまうため、最深部18aがあまり深くなり過ぎないようにしなければならない。このため、図2においては、最深部18aの深さD2は、約14mm程度となるように設計されている。
図6および図7は、この飲み口部20を説明するための図であり、図6は主に匙部11を拡大した平面図であり、図7は匙10を口腔内に挿入した際の断面図である。
図6において、飲み口部20は、点線のハッチングで示される部分であり、壁面部16の周縁(壁面部16の端面)が、先端側から柄部側に向かって略均一な曲線により形成されると共に、匙10の長手方向における最大幅部よりも両側面の柄部12側に延伸された円弧を有している。
この円弧は、図1のハッチングの部分に示されるように、匙部11の先端側に位置する壁面部16aの端面である周縁から、両側面側の壁面部16b,16bの端面である周縁にかけて設けられ、匙10の長手方向における匙部11の最大幅部20b,20bよりも柄部12側の位置となる周縁端部20a,20aまで設けられている。
具体的には、本実施形態では、図7に示すように、口唇UMの口角UE1,UE2幅の2/3程度の位置が飲み口部20の壁面16の周縁に当接するよう匙部11を配置された際に、口角UE1,UE2より前方に位置する口唇UMの中央部付近UM1が、匙部11に収容された液体食品の液面、より好ましくは上述した最深部18aの上方に触れることができるような大きさとなっている。ここでは、通常の口角UE1と口角UE2との距離は45mm程度であるため、図1に示されるように、壁面部周縁が点Oを中点として半径20mm〜30mmの範囲であることが好ましく、ここでは25mmからなる略真円の円弧となるように飲み口部20が形成されている。
なお、底面部18と壁面部16の境界となる底面部18の外周形状は、匙部11の周縁形状の相似形とされており、壁面部16の角度が均一とされていることとあいまって、匙部11を傾けることによって液体をすすりやすい形態とされている。
この液体収容部30は、飲み口部20だけでは収容しきれない液体食品を収容するための機能を有している。本実施形態では、10ccの量の液体食品を、飲み口部20と液体収容部30とで形成される匙部10に収容できるように形成されている。
ところが、上述のように、飲み口部20は、所定の角度をつけて匙部11を口腔内に挿入しても口唇を当接できるように、飲み口部20に位置する壁面部16の周縁が略真円の円弧から形成されており、また、匙を傾ける等の高齢者等にとって困難な動作を考察して、上述のように、匙部11の深さを深くし過ぎることはできない等、被介助者用に最適な匙を提供するために、形状的に多くの規定を設けている。
そこで、飲み口部20とは別に液体収容部30を形成し、飲み口部20と液体収容部30とで、略10ccの量の液体食品を収容できるようにしている。
また、この液体収容部30は、匙部11に形成されているが、口角或いは口唇が当接されることを想定していない部分に設けられれば足りる。例えば柄部12の厚み方向に凹部を設け、この凹部と匙部11の凹部とが連通するようにして形成された場合であっても、その柄部に設けた凹部は匙部に設けた液体収容部として効果を発揮する。
そして、口唇UMを上手く動かすことができなくても、この飲み口部20に当接された口唇UMの匙部11の内側に位置する口唇の先端UM1付近を、収容された液体食品SHの液面に無理なく触れさせて、液体食品SHを容易に啜ることができる。
さらに、液体収容部30により、一口で飲む液体食品SHの量として適した量を確保して、高齢者などの被介助者にとって最適な嚥下を可能とする匙10を提供することができる。
しかも、介助者の介助によって、口唇と正対した位置に匙部11先端が配置されるよう液体を摂取する場合等、異なる角度から液体を摂取する場合でも、飲み口部20における周縁の曲面や傾斜角度が図8の場合と同様となるよう構成されているため、口唇の変形を大きく変えることなく液体をすすりやすい。
例えば、高齢者、障害者あるいは幼児等の違いにより、口唇の寸法、脇や手の動き等が異なるため、これら被介助者に対応して、飲む口部の大きさや最深部の位置、或いは液体収容部の大きさ等を決められる。
また、飲み口部20の周縁は均一な曲線ではなく、口唇の変形を許容する範囲で、若干異なる曲線とされていてもよい。
Claims (2)
- 把持するための長尺の柄部と、この柄部の一端に前記柄部の長手方向に沿って設けられた匙部とを備えた液体用匙であって、
前記匙部は、少なくとも先端側と両側面側に壁面部が設けられ、口唇が当接される飲み口部と、この飲み口部から前記柄部側に突出して形成される凹状の液体収容部とを有し、
前記飲み口部を形成する前記先端側と両側面側の前記壁面部について、その周縁は、前記先端側から前記匙部の最大幅部を通って前記柄部側まで略均一な曲線により形成された円弧とされており、
前記匙部の底面は、前記壁面部の周縁が水平となるように位置された状態において、前記飲み口部の中心部より先端側に最も深い最深部を有し、この最深部から前記柄部側に向かって浅くなるように傾斜している
ことを特徴とする液体用匙。 - 前記柄部は、その径方向の断面において、前記匙部の深さ方向に関して薄くされた楕円または長円形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の液体用匙。
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