JP4425350B2 - プログレッシブレンズ要素及びその設計方法並びに使用方法 - Google Patents

プログレッシブレンズ要素及びその設計方法並びに使用方法 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、眼鏡用プログレッシブレンズ、特に、必要とする装着者の処方箋によってその設計が決められる一連の眼鏡用プログレッシブレンズ及びそのレンズの製造方法に関する。
発明の背景及び目的
多数のプログレッシブレンズが従来技術にて公知である。プログレッシブレンズは、従来、遠視、近視及び中間視領域を有することを基本に設計されていた。中間視領域は、装着者のレンズを見た人がレンズの不連続性を認識し得ないように近視領域と遠視領域を外観的に許容し得る方法にて接続している。中間視領域の設計は、レンズの光学的度数が多少なりとも均一に増大する、「アイパス(eye path)」と呼ばれる線を基本としている。遠視領域内の装着十字線(fitting cross)から始まって近視領域まで鼻の方向に傾斜するパスに沿うと仮定した眼の収斂に合わせるようにこのアイパスを選択するのが通常である。
当該出願人は、殆どの公知のプログレッシブレンズは次のことに基づいて設計されていることを知っている。
すなわち、公知のプログレッシブレンズの設計は、
1)通常の範囲の1つの限界距離である、30cm以内の屈折距離となるように、近視領域にて最適化されたアイパスであること、
2)装着者が持つ補正能力を使用することを考慮しない、調節収斂動作に関する一般的な仮定に基づくアイパスであること、
3)従来のプログレッシブレンズの全体的な設計は、例えば、近視患者、正視者及び遠視患者のような、範疇の異なる患者に対し有用な光学的視野を等しく釣り合わせることができないこと、に基づいている。
従って、プログレッシブレンズを個々の装着者の必要条件により正確に関係付けることができるならば、当該技術分野にて顕著な進歩となるであろう。より典型的な近屈折距離となるように近視領域の好適化の状態を変えることができるならば、更に顕著な進歩となるであろう。異なる範疇の患者に対して一連のプログレッシブレンズ要素が有用な光学的視野を等しく釣り合わせることができるならば、更なる技術進歩となるであろう。
従って本発明の1つの目的は、従来技術に関連した難点及び欠点の1つ以上を解消し又は少なくとも緩和することである。本発明の上記及びその他の目的並びに特徴は、以下の開示から明確になるであろう。
発明の概要
従って、本発明の第一の形態において、レンズ要素の各々が次のものを有するレンズ面を含む、一連の眼鏡用プログレッシブレンズ要素が提供される。すなわち、各レンズ要素は、
遠視に対応する屈折度を達成する表面倍率を有する上方視野領域と、
近視に対応する屈折度を達成するため、上方視野領域よりも大きい表面倍率を有する下方視野領域と、
レンズ要素を横断して伸長し、上方視野領域の度数から下方視野領域の度数へと変化する表面度数を有し、更に、表面非点収差が比較的小さい回廊状領域(corridor)を含む中間領域と、を有する。
眼鏡用プログレッシブレンズ系は、次のものを含んでいる。すなわち、該レンズは、
近視患者に対してある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに有用な少なくとも1つの基準曲線を有する第一の組のレンズ要素と、
正視者に対してある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した少なくとも1つの基準曲線を有する第二の組のレンズ要素とを含み、該二つのレンズ要素の組の各々が加入度の異なる要素を含み、略同一の加入度を有する異なる組からのレンズ要素が下方視野領域内にて略同一の光学的視野を有するようにする。
一連の眼鏡用プログレッシブレンズ要素は、各々が次のものを有するレンズ面を含むことが好ましい。すなわち、
遠視に対応する屈折度を達成する表面度数を有する上方視野領域と、
近視に対応する屈折度を達成するため、上方視野領域よりも大きい表面度数を有する下方視野領域と、
上方視野領域及び下方視野領域を接続する、表面非点収差が比較的小さい回廊状領域であって、上方視野領域から下方視野領域まで表面度数が変化する回廊状領域と、を有する。
眼鏡用プログレッシブレンズ系は、次のものを含んでいる。すなわち、
近視患者に対してある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した少なくとも1つの基準曲線を有する第一の組のレンズ要素と、
正視者に対してある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した少なくとも1つの基準曲線を有する第二の組のレンズ要素とを含み、該二つの組のレンズ要素の各々が加入度が異なる要素を含み、略同一の加入度を有する異なる組からのレンズ要素が上方視野領域内にて略同一の光学的視野を有するようにする。
一連の眼鏡用プログレッシブレンズ要素は、各々が次のものを有するレンズ面を含むことがより好ましい。すなわち、
遠視に対応する屈折度を達成する表面度数を有する上方視野領域と、
近視に対応する屈折度を達成するため、上方視野領域よりも大きい表面度数を有する下方視野領域と、
上方領域及び下方領域を接続する、表面非点収差が比較的小さい回廊状領域であって、上方視野領域から下方視野領域まで表面度数が変化する回廊状領域と、を有する。
眼鏡用プログレッシブレンズ系は次のものを含んでいる。すなわち、
第一の範疇の患者に対してある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した基準曲線を有する第一の組のレンズ要素と、
第二の範疇の患者に対してある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した基準曲線を有する第二の組のレンズ要素とを含んでいる。一組におけるレンズ要素の各々が、レンズ要素の加入度に対応して、上方及び下方視野領域の少なくとも一方において処方された加入度の点にて相違し且つプログレッシブ設計を含み、
第一の組のレンズ要素が、基準曲線の相違に起因して第二の組内の対応するレンズ要素とプログレッシブ設計の点にて実質的に相違している。
本発明の更なる形態において、レンズ要素の各々が次のものを有するレンズ面を含む、一連の眼鏡用プログレッシブレンズ要素が提供される。
すなわち、遠視に対応する屈折度を達成する表面度数を有する上方視野領域と、
近視に対応する屈折度を達成するため、上方視野領域よりも大きい表面度数を有する下方視野領域と、
上方領域及び下方領域を接続する、表面非点収差が比較的小さい回廊状領域であって、上方視野領域から下方視野領域まで表面度数が変化する回廊状領域とである。
眼鏡用プログレッシブレンズ系は、次のものを含んでいる。
第一の範疇の患者に対してある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した基準曲線を有する第一の組のレンズ要素と、
第二の範疇の患者に対してある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した基準曲線を有する第二の組のレンズ要素とである。一組におけるレンズ要素の各々が、レンズ要素の加入度に対応して、上方及び下方視野領域の少なくとも一方において処方された加入度の点にて相違し且つプログレッシブ設計を含み、第一の組のレンズ要素が、基準曲線の相違に起因して第二の組内の加入度の等しい対応するレンズ要素とプログレッシブ設計の点にて実質的に相違している。
レンズ要素の各々は、上方及び下方視野領域内にて良好な光学的質を提供し得るように設計することができる。
加入度が略等しい、異なる組からのレンズ要素は、上方及び下方視野領域の少なくとも一方にて略同一の光学的視野を有することが好ましい。
本発明の更なる形態において、次のことを含む、近視患者及び正視者の双方を含む複数の患者に対してより適した眼鏡用プログレッシブレンズを提供する方法が提供される。
a)2つ以上のレンズが略同一の加入度及び共通の性能特性を有するが、近視患者及び正視者を含む異なる範疇の患者の異なる処方距離を提供し得るように基準曲線の点にて相違するように、一連のプログレッシブレンズブランクを設計することと、
b)必要な処方距離及び円柱補正を含む、患者に対する処方を得ることと、
c)処方距離及び円柱補正に基づいて設計された系統からプログレッシブレンズブランクを選択し、これにより、患者の範疇に関係なく共通の性能特性が得られるようにすることと、
d)所定の処方距離及び円柱補正が得られるようにレンズブランクの背面を仕上げることとである。
一連のレンズブランクは近視患者用の一組のレンズブランクと、正視者用の一組のレンズブランクとを含むことが好ましい。
その組の各々は、一般に処方される幾つかの加入度用のブランクを含んでいる。
また、得られた処方は加入度も含んでいる。
設計された系から1つのプログレッシブレンズブランクを選択することも加入度に基づいて行われる。
実質的に等しい加入度を有する、異なる組からのレンズ要素が上方及び下方視野領域の少なくとも一方にて実質的に等しい光学的視野を有するような共有する性能特性となるようにすることが最も好ましい。
共有の特性としては回廊状領域の長さが含まれ得る。
本発明の更に別の形態において、該レンズ要素が次のものを有するレンズ面を含む眼鏡用プログレッシブレンズ要素を設計する方法が提供される。
遠視に対応する屈折度を達成する表面度数を有する上方視野領域と、
近視に対応する屈折度を達成するため、上方視野領域よりも大きい表面度数を有する下方視野領域と、
上方領域及び下方領域を接続する、表面非点収差が比較的小さい回廊状領域であって、上方視野領域から下方視野領域まで表面度数が変化する回廊状領域とである。
ここで、レンズ要素は次のようにして形成される。すなわち、
a)遠視領域と、近視領域と、アイパス回廊状領域とを有するプログレッシブレンズ面の数学的又は数値的記号を提供し、アイパス回廊状領域の中心が表面非点収差が略零の線の上にあり、漸進的に変化する屈折度を有するようにすることと、
b)補正能力、及びアイパス回廊状領域内の漸進的な度数の増大に起因する差し込み(inset)の変化を考慮すべく、鼻の方向に向けて、遠視領域の下方でレンズ面の表示(representation)を回転させ且つその表示を水平方向にずらすことと、
c)アイパス回廊状領域下方におるレンズ面の表示を側頭部の方向に回すことと、
d)選択された屈折値の鼻方向及び側頭部方向の等非点収差曲線間の水平方向中間点の位置に基づいてレンズ表面の表示を修正することと、
e)レンズ面の修正した表示に対応するレンズ面を形成することとである。
上記の設計ステップを繰り返すことにより、同様に1つのレンズ要素系を形成することができる。
固視位置は、水平方向部分の距離だけレンズ要素の装着十字点(FC)から鼻方向に向けて略水平方向に差し込み、回廊状領域に沿って斜め下方に伸長し、その水平方向差し込みの程度が加入度の増大に伴って減少するようにすることが好ましい。
装着十字点の高さにおける水平方向部分及び略近視差し込み部分の双方は、必要とされる作業距離に収斂するように変化することがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1a、図1b、図1cは、3つの基準曲線の各々について、上方領域すなわち遠視領域における、加入度の増大に伴う0.50D面非点収差輪郭の位置又は幅の変化を示している。
図2a、図2b、図2c、図2dは、上方領域すなわち遠視領域における遠視度数又は基準曲線が増大するに伴う0.50D面非点収差輪郭の位置又は幅の変化を4つの加入度の各々について示している。
図3は、本発明による典型的なレンズ要素を利用する、装着者の固視位置を示す図である。
図4は、固視位置の差し込み部分を推定するために一般に使用される簡略化した幾何学的モデルの図である。
図5は、調節能力が残っていないと推定して計算されたプログレッシブレンズ要素の概略図的な輪郭プロット及び固視位置の図である。
図6は、平坦な眼鏡面を除いて、本発明によるプログレッシブ要素の概略図的な輪郭プロット及び固視位置の図である。
図7は、有限厚さの湾曲レンズの存在を補正すべく差し込み部分x(y)を調節する光線トレース法の変形例を示す図である。
図8aは、本発明の1つの形態に従って、一連のプログレッシブレンズに対する表面非点収差を示す一連の輪郭プロット図である。該輪郭プロットは、図面の上部から開始して、それぞれ遠視患者、正視者及び近視患者という三組に分けられている。各プロットに割り当てた数値は、それぞれ基準曲線及び加入度を示す。
図8bは、図8aに図示した一連のプログレッシブレンズに対する平均的な表面度数の一連の輪郭プロットの図である。
図9aは、従来のプログレッシブレンズ製品を示す一方、図9bは、同様の形態にて本発明の図8a及び図8bのレンズ系を示す図である。図面から、従来のプログレッシブレンズには、本発明の特徴が無いことが理解できる。特に、従来のプログレッシブレンズ製品に含まれる変形例は、加入度の点にのみ修正を加えたもので、基準曲線は何ら変更していない形態のものであることが理解できる。
次に、添付図面及び実施例に関して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、図面は単に説明のためであり、上述した本発明の全体を何ら限定することを意図するものと解釈すべきではないことを理解する必要がある。
詳細な説明
当該出願人は、特定の加入度及び/又は基準曲線にて種々の装着者の必要条件を満足させるためには、必要とされる加入度及び特定の装着者の処方距離に対応するプログレッシブ設計の要素を有する一連のレンズを設計することが必要であることが分かった。
本明細書にて言及した第一及び第二の範疇の患者は、近視患者、正視者及び遠視患者から成る群から選択することができる。第一の範疇が近視患者であり、第二の範疇が正視者であることが好ましい。
「プログレッシブ設計の要素」という語により、我々は、回廊状領域の長さ、固視位置、上方視領域の幅及び下方視領域の幅を含むが、これらにのみ限定されない、プログレッシブレンズ要素の表面特性の組合わせを意味する。
「実質的に相違する」という語により、我々は、プログレッシブレンズの光学的関数(例えば、近視領域の幅、遠視領域の幅、回廊状領域の長さの差)の変化に寄与する各組間にて相違するプログレッシブ設計の相違点を意味する。
「光学的視野」という語により、我々は、装着者がぼやけを感ずる境界により画成される視野を意味する。
「光学的視野」は、装着者の立った位置から見た領域又は対象視であり、鮮明さが失われる程度が最小状態にて網膜中心窩で見るのに適したものである。当該出願人の観察によれば、「光学的視野」の大きさは、レンズ領域の大きさ、該領域内の正味度数及びレンズの斜め収差によって影響されることが分かった。
「実質的に同等」という語により、我々は、処方及び/又は加入度に関係なく光学的視野の境界が同様であることを意味する。
「低乃至中程度の加入度」という語により、我々は、約3.00Dまでの加入度を意味する。
「固視位置(visual fixation locus)」という語により、我々は、患者が正中面内に対象物を固定するとき、レンズ面と患者の視線とが交わる一組の点を意味する。この語は、必要とされたる連続的な眼の動作パスを意味しない。この固視位置は、正中面内の種々の位置に配置された対象物に対応する一組の点を示す。以下により詳細に示すように、この固視位置は、特定の固視のために装着者が補正能力を使用できるか又は使用できないかを考慮する。その結果、適正な対物距離にて楽に使用するのに十分な度を持った、固視位置における種々の位置の点が提供される。
本発明の好適な実施の形態において、この固視位置は、中間領域内の非点収差が略零の線に沿って位置している。遠視領域及び近視領域内にて、表面非点収差が略零の線は、表面非点収差が略零の領域まで拡がっている。
「回廊状領域(corrider)」という語によって、我々は、中心窩で視るために収差が許容可能である、鼻方法及び側頭部方向輪郭と境を成す、中間の度変化領域を意味する。
1つの好適な実施の形態において、この固視位置は、中心窩で視るために収差が許容可能である、鼻と側頭部方向輪郭との間の水平な中間点上にある。
この回廊状領域は、「回廊状領域の長さ」(L)を有している。図6参照。この長さは、度が低下し始める箇所である、垂直高さから近視領域の測定点の垂直高さまで伸長する固視位置の部分の長さに等しい。例えば、本発明による典型的なレンズ要素において、度の漸進的変化は、装着十字点(FC)の高さから始まる。
「上方視野領域の幅」(W)(図6参照)という語により、我々は、所定のyの値、例えば、y=8.00mmにて、特定の値、例えば0.50Dの鼻方向及び側頭部方向の等収差輪郭と境を成す、レンズ表面上の水平方向寸法を意味するものとする。
「下方視野(近視)領域」(W)(図6参照)という語により、我々は、所定のyの値、例えば、y=−22.00mmにて、特定の値、例えば、1.00Dの鼻及方向び側頭部方向の等収差輪郭と境を成す、レンズ表面上の水平方向寸法を意味するものとする。
「レンズ要素」という語により、我々は、特定の患者の処方に合うように更なる仕上げを必要とするレンズ、レンズウェーハ及び半仕上げレンズブランクを含むが、これにのみ限定されない、眼鏡に関する技術で採用される、あらゆる形態の屈折光学体を意味する。プログレッシブガラスレンズの製造に使用されるフォーマ、及び商品名CR39という名称で販売されている材料のような重合系材料にてプログレッシブレンズを成形するための金型も含まれる。
「非点収差又は表面非点収差」という語により、我々は、表面上の一点にてレンズの表面に対して直角の交差面内にてレンズの曲率が変化する度合いの測定値を意味する。
「近視患者」という語により、我々は、平行な光線が網膜の手前に焦点決めされ、凹レンズにより補正される眼の状態である、近視の患者を意味する。
「正視患者」という語により、我々は、平行な光線が略網膜上に焦点決めされる眼の状態を示す、患者を意味するものとする。
「遠視患者」という語により、我々は、遠視の患者を意味する。これは、平行な光線が網膜の後方に焦点決めされ、収斂レンズにより補正される眼の状態である。
一組中のレンズ要素の各々は、レンズ要素の加入度に対応して、上方及び下方視野領域内にプログレッシブ設計を含むことが好ましい。
更に好適な形態において、眼鏡用プログレッシブレンズ要素の系は、第三の範疇の患者に対して、ある範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した基準曲線を有する第三の組のレンズ要素を含むことができる。
この第三の組の内のレンズ要素の各々は、処方した加入度の点にて相違し、また、レンズ要素の加入度に対応して上方及び下方視野領域の少なくとも一方にプログレッシブ設計を含んでいる。
この第三の組中のレンズ要素は、基準曲線の差のため、第一及び第二の組中の加入度の等しい、プログレッシブ設計の点にて対応しているレンズ要素と著しく相違している。
第三の範疇の患者は、第一及び第二の範疇の患者と相違しており、これらは、近視、正視及び遠視患者から選択することができる。この第三の範疇の患者は、遠視患者であることが好ましい。
上述したように、当該出願人は、装着者が近視、正視又は遠視であるかどうか、又はその他の範疇の患者であるかどうか、又はレンズの基準曲線、処方距離、及び装着者が必要とする加入度のレベルによって設計の必要条件は相違したものとなることが分かった。
従って、本発明の1つの好適な形態において、例えば、近視患者用の第一の組のレンズ要素は、加入度が低から中間の加入度の範囲まで増大するのに伴い、回廊状領域の長さが短くなる。より大きい加入度のとき、回廊状領域の長さは、加入度の増大に伴って長くなる。
例えば、1つの好適な実施の形態において、回廊状領域の長さは、低加入度における比較的長い値から約3.00ジオプトリー(D)の加入度における比較的短い値まで変化し、次に、3.00D以上の加入度にて中程度の長さに変化する。
例えば、回廊状領域の長さは、加入度が1.00Dから3.00Dに増大するのに伴って約19.00mmから約17.50mmに変化し、次に、3.00D以上にて約18.25mmの値にまで長くなる。
第一の組のレンズ要素は、比較的より狭い近視領域を更に含むことができる。この第一の組のレンズ要素は、加入度の増大に伴ってその幅が広がる。例えば、近視領域の幅は、低加入度における比較的狭い値から高加入度における中程度の値まで変化する。
例えば、側頭部方向の0.50Dの非点収差輪郭から水平線に沿って鼻方向の0.50Dの非点収差輪郭まで測定した近視領域の水平方向幅は、1.00Dの加入度の場合、レンズの幾何学的中心から−22.00mmの垂直高さにて約15.00mmである。側頭部方向の1.00D非点収差輪郭から水平線に沿って1.00D非点収差輪郭まで測定した近視領域の水平方向幅は、2.00Dの加入度の場合、レンズの幾何学的中心から−22.00mmの垂直高さにて約15.25mmから3.00Dの加入度の場合の約16.00mmまで変化する。
第一の組のレンズ要素(例えば、近視患者の場合)は、表面非点収差が比較的小さい、比較的幅の広い上方視野領域を更に含むことができる。加入度が小さいとき、上方視野領域の表面非点収差は僅かに大きくなる。殆どの加入度に合うように距離の非点収差を配分することは比較的難しい。
例えば、遠視領域内にて0.50Dの非点収差輪郭は、全体として平坦であり、加入度の増大に伴って比較的不変である(図1参照)(加入度による遠視領域の変化−3.75D基準)。
図1には、加入度の増大に伴い0.50Dの表面非点収差の上方領域、すなわち遠視領域内の位置又は幅が変化する状態が示してある。
当該出願人は、装着者にとって、上方視野領域における0.50D輪郭が重要であることが分かった。3.75D基準曲線は、第一の組におけるレンズ要素の実例である。
例えば、正視患者用のような、第二の組のレンズ要素は、加入度の増大に伴って回廊状領域の長さが同様に短くなる。加入度が大であるとき、回廊状領域の長さは同様に長くなる。
例えば、回廊状領域の長さは、小さい加入度のときの比較的長い値から約3.00Dの加入度のときの比較的短い値まで変化し、次に、3.00D以上の加入度における中程度の長さに変化する。
例えば、回廊状領域の長さは、加入度が1.00Dから3.00Dに増大するときに伴い、約19.00mmから約17.50mmに変化し、次に、3.00D以上のとき、約18.25mmの値まで長くなる。
第二の組のレンズ要素は、比較的幅の広い近視領域を含むことができる。この第二の組のレンズ要素は、加入度が増大するのに伴い、その幅が狭くなる。例えば、近視領域の幅は、加入度の小さいときの幅から加入度の大きいときの中程度の値まで変化する。
例えば、側頭部方向の0.50D非点収差輪郭から水平線に沿って鼻方向の0.50D非点収差輪郭まで測定した、近視領域の水平方向幅は、1.00D加入度の場合、レンズの幾何学的中心から−22.00mmの垂直高さにて約21.00mmとなる。次に、この近視領域は、加入度の増大に伴って幅が僅かに縮小する。側頭部方向の1.00D非点収差輪郭から水平線に沿って鼻方向の1.00D非点収差輪郭まで測定した、近視領域の水平方向幅は、2.00D加入度の場合、レンズの幾何学的中心から−22.00mmの垂直高さにおける約17.50mmから3.00Dの加入度の場合の約16.00mmまで変化するようにする。
第二の組のレンズ要素は、加入度が増大するに伴い、幅が僅かに広くなる比較的広い上方視野領域を更に含めることができる。表面非点収差は、加入度の増大に伴い、中程度から低程度に減少する。距離の非点収差の配分状態は、低加入度の比較的軽微な状態から高加入度に対する比較的顕著な状態まで変化させることができる。
例えば、遠視領域における0.50D非点収差の輪郭は、加入度の増大に伴い平坦となるようにする(図1:「加入度による遠視領域の変化−5.25D基準」を参照のこと)。5.25D基準曲線は、第二の組におけるレンズ要素を示すものである。第三の組のレンズ要素を含む眼鏡用プログレッシブレンズ系の場合、遠視患者の場合、この第三の組のレンズ要素は、加入度が大きいときに長くなる点を除いて約一定の回廊状領域長さを示す。
例えば、1つの好適な実施の形態において、この回廊状領域の長さは、約2.50Dまでの加入度に対し比較的長い値から変化し、この加入度を超えると、回廊状領域は短くなり、3.00Dの加入度を超えると、回廊状領域の長さは中程度の値となる。
例えば、回廊状領域の長さは、2.50Dまでの加入度に対し約19.00mmにて比較的一定状態に止まり、加入度が3.00Dまで増大するに伴い、約17.50mmまで短くなり、次に、3.00Dを超えると、約18.25mmの値まで長くなる。
第三の組のレンズ要素は、全ての加入度に対し比較的広い近視領域を含むことができる。
例えば、側頭部方向の0.50D非点収差輪郭から水平線に沿って鼻方向の0.50Dの非点収差の輪郭まで測定した、近視領域の水平方向幅は、1.00Dの加入度の場合、レンズの幾何学的中心から−22.00mmの垂直高さにて約19.25mmとすることができる。次に、近視領域は、加入度の増大に伴い、幅が僅かに狭くなり、側頭部方向の1.00D非点収差輪郭から水平線に沿って鼻方向の1.00D非点収差輪郭まで測定した水平方向幅は、2.00D加入度の場合、レンズの幾何学的中心から−22.00mmの垂直高さにおける約18.25mmから3.00D加入度の場合の約17.25mmまで変化する。
この第三の組のレンズ要素は、比較的幅の広い上方視野領域を更に含むことができる。表面非点収差は加入度の増大に伴い、中程度の値から小さい値まで減少する。レンズの上方部分における非点収差の配分状態が、小加入度に対する比較的軽微な程度から大加入度に対する比較的顕著な程度まで変化するようにする。
例えば、遠視領域における0.50D非点収差輪郭は、小加入度の場合、比較的急峻であり、加入度の増大に伴って平坦となる(図1:「加入度による遠視領域の変化−5.85D」参照のこと)。5.85D基準曲線は、第三の組におけるレンズ要素を示すものである。
本発明の更に好適な形態において、レンズ要素は、距離の処方度数が増すに伴い、回廊状領域の長さが僅かに長くなるようにする。
回廊状領域の長さは、装着したとき、第三の組のレンズ要素(遠視)にて、第二の組のレンズ要素(正視)に対し且つ同一の加入度の第一の組のレンズ要素(近視)に対して、僅かにより長くなる。
例えば、回廊状領域の長さは、第一の組のレンズ要素(近視)における2.00D加入レンズに対する約18.25mmから第三の組のレンズ要素(遠視)における2.00Dの加入レンズにおける約19.00mmまで変化するようにする。
該レンズ要素は、距離の処方度数が増すに伴い、近視領域の幅が徐々に広がるようにすることが更に可能である。
近視領域は、装着したとき、第二の組のレンズ要素(正視)に対し且つ同一の加入度にて第一の組のレンズ要素(近視)に対して、第三の組のレンズ要素(遠視)にて僅かにより広くする。
例えば、2.00D加入度のレンズ要素において、側頭部方向の1.00D非点収差輪郭から水平線に沿って鼻方向の1.00D非点収差の輪郭まで測定した、近視領域の水平方向幅は、第一の組のレンズ要素(近視)におけるレンズの幾何学的中心から−22.00mmの垂直高さにおける約15.25mmから第二の組のレンズ要素(正視)における約17.25mmまで、更に、第三の組のレンズ要素(遠視)における18.25mmまで変化するようにする。
レンズ要素は、装着したとき、第三の組のレンズ要素(遠視)にて、第二の組のレンズ要素(正視)に対し且つ同一の加入度の第一の組のレンズ要素(近視)に対して、上方視野領域の表面非点収差が僅かに増大する。
例えば、2.00D加入度レンズの場合、遠視領域における0.50D非点収差輪郭は、第三の組のレンズ要素(遠視)におけるレンズに対し比較的急峻であり、第一の組のレンズ要素(近視)におけるレンズ要素に対し処方距離の増大に伴い平坦となる(図2:「加入度による遠視領域の変化−2.00D基準」を参照のこと)。
すなわち、レンズ要素の上方部分における非点収差の配分状態は距離の処方度数の増大に伴って顕著な状態から軽微な状態に変化するようにする。
図2には、遠視度すなわち基準曲線の増大に伴い、0.50Dの表面非点収差輪郭の上方視野領域、すなわち遠視領域の位置及び幅が変化する状態が示してある。
1つの好適な形態において、本発明による眼鏡用プログレッシブレンズ要素は、表面度数が0.00D乃至乃至12.00Dの範囲にあり、好ましくは約0.50D乃至約9.00Dの範囲にある上方視野領域を有するようにすることができる。
近視患者の処方距離の範囲は、約−1.50Dから−12.00Dまで伸長するようにすることができる。これは、近視患者に対する基準曲線範囲に等しい。例えば、この範囲は、典型的に、2つ又は3つの少数の基準曲線により対応することができる。例えば、1.75D基準曲線及び3.75D基準曲線を使用することができる。
正視患者に対する処方距離は、約−1.25Dから+1.25Dまで伸長するようにする。これは、正視患者に対する基準曲線範囲と等しい。例えば、この範囲は、単一の基準曲線、例えば、5.25D基準曲線により対応することができる。
遠視患者に対する処方距離範囲は、約+1.50Dから+8.00Dまで伸長させる。これは、遠視患者に対する基準曲線範囲に等しい。例えば、+1.50D乃至+6.00Dの好適な範囲は、例えば、5.85D基準曲線及び7.35D基準曲線といった2つの基準曲線により対応することができる。
眼鏡用プログレッシブレンズ要素系は、その他の群の患者に対応し得るよう、4組以上のレンズを含むことができる。例えば、近視患者及び/又は遠視患者に対する追加の組のレンズを含めることができる。
眼鏡用プログレッシブレンズ要素系は、例えば、0.25Dの増分にて基準曲線毎に12個の加入度を有する、5つの基準曲線を含み、合計で60個の別個の対のレンズ要素(左右)となるようにすることが好ましい。
眼鏡用プログレッシブレンズ要素は、上方視野領域から非点収差の比較的小さい回廊状領域に沿って近視領域まで度数が平滑に連続的に増大するような設計とすることができる。
上方視野領域と下方視野領域との間の回廊状領域は、装着者の固視位置の一部に従うような設計とする。回廊状領域の長さは、約10.00mmから25.00mmまで、好ましくは、15.00mmから20.00mmまでの範囲となるようにする。回廊状領域に沿った度の変化(加入度)は、約0.50D乃至4.00Dの範囲とする。
上述したように、眼鏡用プログレッシブレンズ要素系は、略等しい加入度を有する、異なる組からのレンズ要素が上方及び下方視野領域の少なくとも一方にて略同一の光学的視野を有することを特徴とする。プログレッシブの設計は、レンズ要素の単一の面に付与することができる。
約1.25D乃至3.50D、好ましくは約1.50D乃至3.00D、より好ましくは1.50D乃至2.75Dの範囲の加入度を有する組からのレンズ要素の各々は、各範疇の患者に対し上方及び/又は下方視野領域にて略等しい光学的視野を有することが好ましい。
上方視野領域すなわち遠視領域、及び下方視野領域すなわち近視領域における光学的視野は、各範疇の患者に対し略等しいことが好ましい。
例えば、第二の組のレンズ要素は、第一の組のレンズ要素に対して下方視野領域の幅が広がり、該領域内の光学的視野が略等しくなるようにすることができる。
1つの代替的な実施の形態において、近視領域内における各レンズ要素のプログレッシブ設計は、加入度に及び装着者の処方距離に依存する。
本発明の更なる形態において、次のものを有するレンズ面を含む眼鏡用プログレッシブレンズが提供される。すなわち、
遠視に対応る屈折度を達成し得る表面度数を有する上方視野領域と、
近視に対応する屈折度を達成し得る、上方視野領域よりも大きい表面度数を有する下方視野領域と、
上方視野及び下方視野領域を接続する、表面非点収差が比較的小さい回廊状領域であって、その表面度数が上方視野領域の表面度数から下方視野領域の表面度数まで変化する回廊状領域と、を有し、
このプログレッシブ設計(回廊状領域の位置を含む)は、少なくとも部分的に固視位置により決まる。
固視点は、レンズ要素の装着十字線(FC)から水平方向部分の距離に沿って略水平方向に鼻の方向に伸長し且つ回廊状領域から斜め下方に伸長して差し込み、その水平方向の差し込み程度が加入度の増大に伴って減少する。
この固視点は、近視領域測定点の基端側の下方視野領域にて垂直のレンズ子午線に対して鼻方向に差し込まれることが好ましい。この差し込みの程度は、近視領域内にて加入度の増大に伴って略増大する。
本発明のこの形態によるプログレッシブレンズ要素は、上述した眼鏡用プログレッシブレンズ系の部材とすることができる。
本発明のこの形態による眼鏡用レンズは、既存の設計の場合、下方又は近視領域内にてアイパスの典型的な差し込みは、殆どの加入度に対して約2.00mm乃至4.00mmの範囲内にて変化する点にて、既存の設計と相違している。この設計は、これらのパラメータにのみ限定されるものではない。従来技術の公知のプログレッシブレンズを当該出願人が調査した結果、殆どのものは、30cm又はそれ以下の近屈折距離に対して設計されていることが明らかになる。このため、現在の技術によれば、殆どの装着者は極めて大きく眼を収斂させる(近い物を見るために両眼を回すこと)が必要となる。
これに反して、本発明による近視領域差し込みは、患者の屈折及び装着パラメータ(例えば、加入度、瞳孔内距離(P.D.)、処方距離(Rx)、頂部距離、近屈折距離、調節能力)によって決まり、約1.50mm乃至4.00mmの範囲にて変化する。
1つの好適な形態において、水平方向差し込みは、処方距離がより正となるに伴い(例えば、約0.2mmまで)、僅かに増大する。
従来技術のプログレッシブレンズを設計するときに使用されるアイパスは、装着者の所望の固視点に正確に対応しない(以下の図3参照)。当該出願人は、装着者の上方視野領域の度及び/又は特定の処方加入度に対応して、装着者は、中間領域ではなくて、遠中間距離の物に対して上方視野領域の鼻方向部分を使用することができることが分かった。このため、装着十字線における水平方向差し込みは装着者の調節能力に関連付けることができる。装着者の調節能力は、年令と共に低下し、このため、一般に、年令と共に、加入度を大きくすることが必要となる。
装着十字線の高さにおける水平方向部分は、特定の装着者の処方距離及び加入度に依存して、約1.50mmまで、好ましくは約1.00mmまで変化する、典型的な値は、+2.00の処方距離、及び1.00Dの加入レンズについて0.75mmである。一般に、横方差し込みの程度は、装着者の加入度の増大に伴って低下する。
このように、固視点は、装着十字線から鼻方向に伸長する水平方向部分と、水平方向部分の鼻方向端部から近視領域まで伸長する、鼻方向に傾斜した部分とを有する線であることが理解されよう。
装着十字線における水平方向部分及び近差し込み部分の双方は、必要とされる作業距離にて収斂するように変化させることができる。レンズの度数の変化の結果、レンズ表面における差し込みを必要なように変化させたり、調節することが可能となり、近視測定点のような、固視点に点を正確に設定し、必要とされる作業距離を実現し且つ固視を行うための適当な収斂程度を達成することができる。一方、レンズの度数の効果は、レンズの厚さ及びレンズの広角傾斜度を含む表面仕上げ特性によって影響を受ける。
装着高さにおける水平方向部分の長さは、レンズの度数及び視覚的収斂によって決まる。この視覚的収斂は、典型的に、遠視の作業のために使用されるプログレッシブレンズの領域内にて中間視的作業をするためにその調節能力を利用する装着者の反射性に起因するものである。視覚的収斂を決定するためには、プログレッシブレンズにより提供される追加的な光学的支援を装着者が利用する前に、中間距離像を見るために最小の作業距離を考慮することが必要となる。
得られる固視点は、装着十字線において、下方視野領域内にある眼は、遠視乃至遠中間視的な視覚的作業に対して装着の高さを保ち、収斂する間に、追加的な光学的支援を必要とせずに、楽な補正の限界値により決まる最大の差し込み程度まで、鼻方向(水平方向)に移動する。次に、固視点の第二の部分は、装着十字線高さにおける差し込み部分をある位置(中間視乃至近視の作業を行うためプログレッシブレンズの回廊状領域により提供される度数に関連した位置)に沿った近視点における差し込み部分に接続する線に沿って続く。このことは、図3に示してある。装着十字線の高さにおける固視位置の水平方向部分を提供すること、及び固視点の鼻方向に傾斜した部分の端部にて完全に公称加入度の点の差し込みを選択することを考慮すると、固視点の勾配は、少なくとも低乃至中程度の加入度に対して従来のプログレッシブレンズを設計するために使用される「アイパス」の勾配よりも著しく緩やかである。
図3には、本発明による典型的なレンズ要素を利用する装着者の固視点が示してある。
図3において、
・XX′は、光学的中心「O」を貫通する水平線であり、YY′は、対応する垂直線である。
・FCは、装着十字線である。
・Hは、長さhの水平方向差し込み部分である。
・Nは、「近領域の測定点」である。
・「B−N」は、中間乃至近中間距離における物に対して使用することのできる固視点の傾斜部分である。
・「x」は、近部分差し込みである(YY′とNとの間の水平距離)。
装着者が装着十字線(FC)付近にて上方視野領域を通じて遠方の物を見ることができるように、眼鏡を装着する。より近い物、すなわち遠中間範囲内にある物に対し、装着者は、上方視野領域を続けて使用することができ、この場合、眼は点Bに対して略水平方向に固視点における1つ以上の点に固定する。この状態は、装着者の調節力が十分に大きくて更なる調節支援を必要としなくなる迄、続けられる。次に、この固視点は回廊状領域に沿って斜め方向に進む。固視点のこの第二の部分は僅かに鼻方向に傾斜している。近視の場合、装着者は近視領域を使用する。近視点N(すなわち、公称加入度が測定される箇所である、固視点における点)は、垂直軸線YY′からの近視部分の差し込み距離「x」からの差し込み部分である。
装着者個人の特定の装着の特徴に合うために最適な性能を発揮し得るようにレンズを回すことができる。本発明に従って製造されたプログレッシブレンズは、回廊状領域と、大多数の装着者にとって略正確である光学的視野とを有することができる。著しく異なる装着状態を必要とする装着者の場合、装着十字線の差し込みを著しく変更することなく、その個人に合った近視領域の差し込みを最適なものにし得るようにレンズを回すことが可能である。
背景事項として、例えば、一対の区分化した多焦点レンズを適正に装着するためには、遠視に対応する患者の瞳孔内距離(PD)に従って一対の眼鏡の両方のレンズの距離部分の光学的中心を隔てることと、眼鏡による正確な視覚性能が実現され得るようにその部分を整合させることとが好ましい。これを行うためには、その部分の中心が眼鏡の視線と一致し、また、その部分の外形により形成される視覚的境界が重なり合って最大限可能な眼鏡視野が得られるようにレンズの部分を整合させることが必要である。
第一の条件、すなわち中心整合状態を満足させるためには、複焦点眼鏡を処方するとき、距離及び近PDの双方を特定することが一般的であり、遠距離部分の光学的中心とその部分の中心との間にて所定の側方向差し込みが実現されるようにレンズを表面加工することができる。この差し込み程度を決定するためには、幾つかの可変値を使用して近PDを計算しなければならない。距離PDは、解剖学的に一定であるが、一人の患者の近PDは、眼の幾何学的形態、眼鏡及び作業に応じて異なる。典型的に、距離PDが64mmの場合、近PDは遠距離PDよりも約4mmだけ短い。こうした数値は、複焦点差し込みを示す図4に図示した幾何学的形態から得られる。
図4において、
・PFは、固定点である。
・PMは、患者の中間線(矢状中間面)である。
・SPは、眼鏡の面である。
・Lは、視線である。
・Cは、眼の回転中心である。
この幾何学的形態は、大概のものであり且つ線部分が平坦な眼鏡面に交差する点に関するものであり、所定の基準曲線に対し、処方した屈折度、及び/又はプリズムを有するレンズに対し簡単な方法にて形成することが可能であることが理解されよう。
同様の三角形により、この部分の差し込みを決める等式は次の通りである。
x=(XL)/(Zref+L)
ここで、
=単眼PD
ref=屈折検査士により決まる近屈折距離
L=眼鏡面から眼の回転中心までの距離
x=部分の差し込み
L=27mm、X=32mm、Zref=400mmの典型的な値の場合、この結果、各レンズに対し部分の差し込みは、x=2.00mmとなる。
複焦点眼鏡と異なり、従来技術のプログレッシブレンズは、遠距離PDと独立的に近PDを特定することが販売店でできるような設計とはされていなかった。読書のための処方の有効領域の位置は、従来、その設計者がプログレッシブレンズに対して選択しており、PD及び基準距離を種々に組合わせ得るように変更することはできない。
図5には、調節能力を度外視した比較モデルが示してある。点FCは、装着十字線と称され、患者が遠方の物を見ている間に、装着するための基準点である。プログレッシブ加入レンズは、中間の回廊状領域と、近視領域とを有しており、「側頭部非点収差輪郭」(TC)、「鼻方向非点収差輪郭」(NC)を形成する線がこれらと横方向に境を接している。非点収差の程度の数値は一定であり、これらの非点収差輪郭の各々にて等しい。各領域に対して異なる輪郭を使用することができ、例えば、中間領域に対し0.75D、また、近視領域に対して1.00Dの輪郭の値とすることができる。
側頭部非点収差輪郭における点座標は(x、y)で示してあり、この場合、x、yはmm単位で示してある。鼻方向の非点収差輪郭における点座標も同様に(x、y)で示してある。
中間領域及び近視領域の中間線は曲線「C」で示してあり、この中間線は、対応する鼻方向及び側頭部方向の非点収差輪郭に交差する各水平線に沿ってこれらの対応する輪郭の中間点に位置している。1ジオプターの非点収差曲線間にある中間線の子午線は米国特許第3,785,724号に記載されている。
曲線Cに沿って、加入度は装着十字線における略零の点から平滑に増大し、多少下方の距離の公称加入度に達する。
この度の増大を明らかにする関数は度関数と称されている。
これは
Figure 0004425350
で示してあり、装着十字線の下方のymmの点にて、曲線Cの傾斜部分における平均的な加入度の屈折値を示す。
次に、次のように曲線Cの位置を規定することが可能である。
Figure 0004425350
x(y)は、装着十字線と近視領域との間の垂直位置に対する曲線Cの差し込み部分、
Lは、レンズから眼の回転中心までの距離、
は、単眼PDである。
Figure 0004425350
は、屈折検査士が特定した公称加入度である度関数
Figure 0004425350
及びPrefにより求められる正規化した度関数である。
refは、約2.50D以下の加入度に対して約40cmとして規定することのできる近屈折距離であり、この距離は、2.50Dよりも大きいか又は2.50Dに等しい加入度に対する公称加入度の略逆数である。
この定義は、近似的な固定位置の収斂が正規化した度関数に逆数的に関係付けられた作業距離に合うように整合されたものであるとの仮定に基づく。すなわち、レンズの一点において利用可能な加入度がそのレンズの公称加入度の1/4であるならば、作業距離は近屈折距離の4倍となる。しかしながら、装着者が使用しようとする位置に関して正確に対応する固定位置に基づいてレンズを設計することがより適切である。
上述したように、当該出願人の臨床的観察及び実験の結果、患者の調節能力、従って公称加入度に対応した、装着十字線の高さにおける水平方向差し込み部分を提供することが可能である。例えば、1.00Dの加入度の装着者は、遠視領域を使用し、約80cm程度の近距離に対して楽に調節することができるため、約80cmよりも遠い距離に対し中間領域を使用する可能性は極めて少ない。同様に、2.50D加入度の装着者は、同一の理由で、200cmよりも遥かに遠距離に対し中間領域を使用する可能性はない。
この相殺を行うためには、等式(1)の正規化した度関数
Figure 0004425350
に代えて収斂補正した度関数
Figure 0004425350
を代入するだけでよい。
Figure 0004425350
ここで、
Figure 0004425350
は、収斂を補正した度関数。
Figure 0004425350
k(Pref)は、その領域の公称加入度の関数である。
この定義に従い且つ図6に図示するように、固視点の第二の部分はその頂部にて装着十字線の鼻方向に進むが、近視領域の測定点にて近屈折距離に適した差し込み部分に達する。
k(Pref)の可能な形態を検討すると、一次関数が適当であることが分かる。所定の任意の公称加入度に対するこの関数の値は、遠中間領域の物を見るため患者が採用する許容可能な調節レベル、すなわち焦点深さを設定するものとして考えることができる。例えば、次の特定の関数、
k(Pref)=2/3−Pref/6 (4)
この結果、装着十字線の高さにおける中間部分の正に最上方部分が1.00加入度にて80cmの距離に対し整合されるが、2.50加入度に対して約220cmの距離しか整合されない。
等式(1)、(2)は、眼鏡面における曲線「C」の差し込み部分を示す。曲線「C」がレンズの形態を補正し得る位置に配置されるように、レンズを設計すべくレンズ面における真の点を計算する必要がある。
等式(2)は、収斂補正度関数
Figure 0004425350
近屈折距離Zrefを関数として、装着十字線から下方にymmの点に作業距離Z(y)を提供し得るような構成とすることができる。
Figure 0004425350
距離Z(y)にある物を見るのに必要なレンズ面における対応する点は、レンズの形態に対応し、図7に従って構成された光線トレース法により計算することができる。
ここで、Xは、(x=x、z=Z)における所定の物に対するレンズ面における差し込み部分であり、主たる光線がそれぞれの面と交差するような形態のレンズであり、その背面曲率はK、前面曲率はK、レンズ厚さT、眼の距離E、レンズの前面及び背面の間の頂部の変位x、レンズ材料の屈折率nである。
このように、固視点の位置は、背面曲率K、前面曲率K、レンズ厚さT、眼の距離E、頂部変位x、レンズ材料の屈折率nに応じて相違する。
プログレッシブレンズ要素の設計方法
図6に図示した型式のレンズは次のように設計することができる。
a)遠視領域と、近視領域と、アイパス回廊状領域とを有し、該アイパス回廊状領域の中心が表面非点収差が略零の線の上にあり、また、漸進的に変化する屈折度を有する、プログレッシブレンズ表面の数学的値又は数値を提供する。アイパス回廊状領域は、遠視領域及び近視領域を接続し、遠視領域、近視領域及びアイパス回廊状領域の表示は、最初、垂直中心線X=0の周りで鏡像の左右対称であり、回廊状領域の長さ及び領域のパラメータの選択は上述したようにして行う。
b)遠視領域の下方にて鼻方向に向けてレンズ表面の表示を回転させ且つ水平方向にずらす。これは、補正能力に対応し且つ上述したようにアイパス回廊状領域の漸進的な度の増大に起因する差し込み部分の変化に対応するためである。
c)アイパス回廊状領域の下方にて側頭部方向に向けてレンズ面の表示を回す。
d)次のようにレンズ面の表示を修正する。即ち、装着十字線の下方にある、表面非点収差略零の線が、選択した屈折値(例えば、1ジオプター等非点収差曲線)を有する鼻方向及び側頭部方向の等非点収差曲線の間にて、水平方向中間位置にあるように修正する。
e)また、次のようにレンズ面の表示を修正する。即ち、近視領域における選択した屈折値の鼻方向及び側頭部方向の等非点収差曲線の間の水平方向中心点が、近視領域の頂部における非点収差略零の線と交差し且つレンズの底部に向けて伸長する線に沿ってあるように修正する。
f)レンズ面の修正した表示に対応するようにレンズ表面を形成する。
修正ステップ(d)において、中心線から種々の水平方向距離に実質的に両側方向に対称の表面非点収差又は度を有するような仕方にて最終的なレンズ面は制限されない。
これに反して、レンズの設計は、レンズの有効部分の端縁(例えば、1ジオプターの等非点収差曲線の境界により画成されるような部分)の中心が領域の中間線又は固視点の上にあるような仕方にて緩くのみ制限される。
ステップ(d)は有限要素法により行うことができる。選択した等非点収差曲線の所望の位置を設定するためにメリット関数を採用することができる。選択した屈折値の鼻方向及び側頭部方向の等非点収差曲線の一方又はその双方を必要に応じて局部的に調節して、回廊状領域の中間線に対して、所望の差し込み部分を提供し、また、上述した度の漸進的変化と一致し且つ調節能力に関する推定と一致する位置にて傾斜させる。
仕上がったプログレッシブレンズを提供する方法
本発明の更に別の形態において、当該出願人は、例えば、近視者及び正視者に対する複数の範疇の患者に対しより適した眼鏡用プログレッシブレンズを提供する方法を対象とするものである。この方法は次のことを含む。すなわち、
a)2つ以上のレンズが実質的に等しい加入度及び共通の性能特性を有するが、異なる範疇の患者の異なる処方距離を提供し得るように、基準曲線の点にて相違する一連のプログレッシブレンズブランクを設計する。かかる共通の性能特性は、例えば、上方及び/又は下方視野領域に対し光学的視野が同一寸法であることを含む。
b)必要な処方距離、加入度及び円柱補正を含む患者に対する処方を得ること。
c)処方距離、加入度及び円柱補正に基づいて設計されたレンズ系から1つのプログレッシブレンズブランクを選択し、これにより、処方距離に関係無く、共通の性能特性が得られるようにすること。
d)所定の処方距離及び円柱補正が得られるようにレンズブランクの背面を仕上げること。
処方範囲の中間点に対して測定したとき、上方及び/又は下方視野領域内の光学的視野が各範疇の患者に対して実質的に等しいように、一組の少なくとも一部分内の各レンズブランクがプログレッシブ設計であるように共通の性能特性とすることが好ましい。
実施例
以下の説明は、本発明の方法の採用に関して特定の数値の実施例を記載したものである。
図8a、図8b、及び図9bに示すように、本発明に従って5.85D基準曲線と、1.00D加入度とを有するレンズ要素を次のように製造することができる。
このレンズ要素の必要な特性は、次の通りである。
基準度 5.85D(@1.530)
加入度 1.00D
装着十字線における水平方向差し込みX(2) 0.75mm
材料の屈折率 1.499
眼の回転中心の距離L 27mm
距離Rx +2.00D
近屈折距離Zref 400mm
単眼PD(Xp) 32mm
近頂頂部の変位X(−17) 0.45mm
装着十字線の頂部変位X(2) 0.00mm
装着十字線におけるレンズ厚さT(2) 2.01mm
近視のレンズ厚さT(−17) 1.47mm
広角傾斜度 7°
得られる近視差し込みX(−17) 2.34mm
等式(5)を利用し、yの近似値y=2を適用し、レンズ形態を補正するため図7に示した光線トレース法を完成させると、差し込みXを2.34mmとして計算することができる。
等式(5)を利用し、yの近似値y=−17を適用し、レンズ形態を補正するため図7に示した光線トレース法を完成させると、水平方向差し込みh(装着十字線における)を0.75mmとして計算することができる。本発明によるその他のレンズ要素も同様の方法にて設計したものである。
最後に、本明細書に解説した本発明の精神から逸脱せずに、種々の改変及び/又は変更を加えることができることを理解すべきである。

Claims (27)

  1. 各レンズ要素が、
    遠視に対応する屈折度を達成する表面度数を有する上方視野領域と、
    近視に対応する屈折度を達成するため、上方視野領域よりも大きい表面度数を有する下方視野領域と、
    上方視野領域及び下方視野領域を接続する、表面非点収差が比較的小さい回廊状領域であって、上方視野領域から下方視野領域まで表面度数が変化する回廊状領域と、
    を有するレンズ面を含む一連の眼鏡用プログレッシブレンズ要素において、
    近視患者に対して所定範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した少なくとも1つの基準曲線を有する第一の組のレンズ要素と、
    正視者に対して所定範囲の処方距離を提供すべく使用するのに適した少なくとも1つの基準曲線を有する第二の組のレンズ要素とを含み、
    各組のレンズ要素の各々が、加入度が異なる要素を含み、同一の加入度を有する異なる組からのレンズ要素が、下方視野領域内にて同一の光学的視野を有するようにする、一連の眼鏡用プログレッシブレンズ要素。
  2. 請求項1に記載のレンズ要素において、一つの組中のレンズ要素の各々が、該レンズ要素の加入度に従って変化するプログレッシブ設計を含む、レンズ要素
  3. 請求項1又は2に記載のレンズ要素において、約1.25D乃至2.50Dの加入度を有する一つの組中のレンズ要素の各々が、下方視野領域にて同一の視野を有する、レンズ要素
  4. 請求項1に記載のレンズ要素において、下方視野領域内の各レンズ要素のプログレッシブ設計が、加入度から独立しており、装着者の処方距離により決まる、レンズ要素
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載のレンズ要素において、第一の組のレンズ要素が1.75D乃至3.75Dの範囲の基準曲線を有する、レンズ要素
  6. 請求項1乃至5の何れかに記載のレンズ要素において、第二の組のレンズ要素が5.85Dの基準曲線を有する、レンズ要素
  7. 請求項1乃至6の何れかに記載のレンズ要素において、第三の組のレンズ要素が、遠視の所定範囲の処方距離を提供するために使用されるのに適した少なくとも1つの基準曲線を有しており、第三の組中のレンズ要素の各々が異なる加入度を有しており、第三の組中のレンズ要素は同じ加入度を有する第一及び第二の組のレンズ要素と実質的に同じ光学的視野を下方視野領域に有している、レンズ要素
  8. 請求項1乃至7の何れかに記載のレンズ要素において、第三の組のレンズ要素が5.85D乃至7.35Dの範囲の基準曲線を有する、レンズ要素
  9. 請求項1乃至8の何れかに記載のレンズ要素において、加入度が小から中程度へと増大するに伴い、各組のレンズ要素の回廊状領域の長さが短くなる、レンズ要素
  10. 請求項1乃至9の何れかに記載のレンズ要素において、加入度がより大きい加入度にて増大するに伴い、各組のレンズ要素の回廊状領域の長さが長くなる、レンズ要素
  11. 請求項1乃至10の何れかに記載のレンズ要素において、回廊状領域の長さが、小加入度において19.00mmから約3.00ジオプター(D)の加入度において17.5mmまで変化し、次に、3.00D以上の加入度にて18.25mmまで変化する、レンズ要素
  12. 請求項1乃至11の何れかに記載のレンズ要素において、第一の組のレンズ要素が、加入度の増大に伴って下方近視領域の幅の増大を呈する、レンズ要素
  13. 請求項1乃至12の何れかに記載のレンズ要素において、第一の組のレンズ要素が、加入度の増大に伴って上方視野領域において増大する表面非点収差を呈する、レンズ要素
  14. 請求項1乃至13の何れかに記載のレンズ要素において、第二の組のレンズ要素が、加入度の増大に伴って下方視野領域の幅の減少を呈する、レンズ要素
  15. 請求項1乃至14の何れかに記載のレンズ要素において、第二の組のレンズ要素が、加入度の増大に伴って、上方視野領域における表面非点収差の減少を呈する、レンズ要素
  16. 請求項7乃至15の何れかに記載のレンズ要素において、第三の組のレンズ要素が、加入度の増大に伴って、上方視野領域の幅の増大及び上方視野領域における表面非点収差の減少を呈する、レンズ要素
  17. 請求項7乃至16の何れかに記載のレンズ要素において、下方視野領域が、第三の組のレンズ要素において、第二の組のレンズ要素に対して、及び同一の加入度の第一の組のレンズ要素に対して僅かに幅が広い、レンズ要素
  18. 請求項7乃至17の何れかに記載のレンズ要素において、レンズ要素の上方視野領域の明瞭度が、第三の組のレンズ要素において、第二の組のレンズ要素に対して、及び同一の加入度における第一の組のレンズ要素に対して、低下する、レンズ要素
  19. 請求項1乃至18の何れかに記載のレンズ要素において、回廊状領域が装着者の固視点の一部分に従うものであり、前記固視点は使用者が正中面内に対象物を固定した場合に、レンズ表面と使用者の視線が交わる点である、レンズ要素
  20. 請求項1に記載のレンズ要素において、回廊状領域の長さが約10.00乃至25.00mmである、レンズ要素
  21. 近視及び遠視の双方を含む複数の患者に対しより適した眼鏡用プログレッシブレンズを提供する方法において、
    a)2つ以上のレンズが同一の加入度及び共通の性能特性を有するが、近視患者及び正視者を含む異なる患者に対して異なる処方距離を提供すべく基準曲線の点にて相違するように、一連のプログレッシブレンズブランクを設計することと、
    b)必要な処方距離及び円柱補正を含む、患者に対する処方箋を得ることと、
    c)処方距離基づいて設計された系統からプログレッシブレンズブランクを選択し、これにより、患者に関係なく共通の性能特性が得られるようにすることと、
    d)所定の処方距離及び円柱補正が得られるようにレンズブランクの背面を仕上げることと、含み、
    同一の加入度を有する、異なる組からのレンズ要素が、下方視野領域にて同一の光学視野を有するような共通の性能特性であるようにした、方法。
  22. 請求項21に記載の方法において、約1.25D乃至2.50Dの範囲の加入を有する一つの組中のレンズブランクの各々が、下方視野領域にて同一の光学的視野を有する、方法。
  23. 請求項21乃至22の何れかに記載の方法において、一連のレンズブランクが、近視に対する一組のレンズブランクと、正視に対する一組のレンズブランクとを備え、
    組の各々が幾つかの共通の処方加入度に対するブランクを含み、
    得られた処方箋が加入度も含み、
    設計した系統からの1つのプログレッシブレンズブランクの選択も加入度に基づいて行われる、方法。
  24. 請求項21乃至23の何れかに記載の方法において、共通の性能特性が回廊状領域の長さを含む、方法。
  25. 請求項21乃至24の何れかに記載の方法において、各レンズブランクが、
    遠視に対応する屈折度を達成する表面度数を有する上方視野領域と、
    近視に対応する屈折度を達成するため、上方視野領域よりも大きい表面度数を有する下方視野領域と、
    上方領域及び下方領域を接続する、表面非点収差が比較的小さい回廊状領域であって、上方視野領域から下方視野領域まで表面度数が変化する回廊状領域と、
    を有するレンズ面を含む一連の眼鏡用プログレッシブレンズブランクにおいて、
    レンズ要素系が、
    第一の患者に対する処方距離に適した基準曲線を有する第一の組のレンズ要素と、
    第二の患者に対する処方距離に適した基準曲線を有する第二の組のレンズ要素とを含み、
    一組におけるレンズブランクの各々が、処方された加入度の点にて相違し、レンズブランクの加入度に対応して、上方及び下方視野領域の少なくとも一方にプログレッシブ設計を含み、
    第一の組のレンズブランクが、基準曲線の相違に起因して第二の組内の対応するレンズブランクとプログレッシブ設計の点にて実質的に相違しているようにする、方法。
  26. 請求項21乃至25の何れかに記載の方法において、一連のプログレッシブレンズブランクが、第三の患者の処方距離に適した基準曲線を有する第三の組のレンズブランクを更に含み、
    第三の組中のレンズブランクの各々が処方した加入度の点にて相違し、レンズブランクの加入度に対応して、上方及び下方視野領域の少なくとも一方にプログレッシブ設計を含み、
    第三の組中のレンズブランクが、基準曲線の相違に起因して、第一及び第二の組中の対応するレンズブランクとプログレッシブ設計の点にて著しく相違するようにする、方法。
  27. 請求項1乃至20に記載のレンズ要素において、レンズ要素の各々が、固視点により少なくとも一部分決まるプログレッシブ設計を有し、
    固視点が、水平方向部分の距離だけレンズ要素の装着十字線(FC)から水平に鼻方向に差し込まれ、回廊状領域に沿って斜め下方に伸張し、水平方向差し込みの程度が、加入度の増大に伴って減少する、レンズ要素
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