JP4423888B2 - リチウムイオン二次電池用電解質およびそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用電解質およびそれを用いたリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム塩を含むリチウムイオン二次電池用電解質、およびそれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話,PDA(Personal Digital Assistant;個人用携帯型情報端末機器)あるいはノート型コンピュータに代表される携帯型電子機器の小型化、軽量化が精力的に進められ、その一環として、それらの駆動電源である電池、特に二次電池のエネルギー密度の向上が強く望まれている。また同時にサイクル特性や保存特性などの諸特性も非常に重要視されている。
【0003】
高エネルギー密度を得ることができる二次電池としては、負極に炭素材料などのリチウム(Li)を吸蔵および離脱することが可能な材料を用いたリチウムイオン二次電池が商品化され、市場が拡大している。また、より特性を向上させるために、新たなリチウム塩などの材料の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−110235号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のリチウムイオン二次電池では、近年切望されているような容量特性やサイクル特性あるいは保存特性などは確保できていない。すなわち、リチウムイオン二次電池は、未だ発展途上の電池であり、より性能の向上が求められている。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、電池容量、サイクル特性および保存特性などの電池特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池用電解質および、それを用いたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によるリチウムイオン二次電池用電解質は、非水溶媒と、リチウム塩としてジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムまたはテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムと、不飽和化合物の炭酸エステルとしてビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートとを含み、不飽和化合物の炭酸エステルの含有量が0.01質量%以上10質量%以下のものである。
【0008】
本発明によるリチウムイオン二次電池は、正極および負極と共に電解質を備え、電解質は、非水溶媒と、リチウム塩としてジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムまたはテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムと、不飽和化合物の炭酸エステルとしてビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートとを含み、電解質における不飽和化合物の炭酸エステルの含有量が0.01質量%以上10質量%以下のものである。
【0009】
本発明によるリチウムイオン二次電池用電解質では、リチウム塩としてジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムまたはテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムと、不飽和化合物の炭酸エステルとしてビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートとを含んでおり、不飽和化合物の炭酸エステルの含有量が0.01質量%以上10質量%以下であるので、高い安定性が得られる。
【0010】
本発明によるリチウムイオン二次電池では、本発明のリチウムイオン二次電池用電解質を用いているので、負極における効率が向上し、内部抵抗の増加が抑制され、電池容量,サイクル特性および保存特性などの電池特性が改善される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る電解質は、例えば、液状の溶媒、例えば有機溶剤などの非水溶媒と、この非水溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。液状の非水溶媒というのは、例えば、非水化合物よりなり、25℃における固有粘度が10.0mPa・s以下のものを言う。なお、電解質塩を溶解した状態での固有粘度が10.0mPa・s以下のものでもよく、複数種の非水化合物を混合して溶媒を構成する場合には、混合した状態での固有粘度が10.0mPa・s以下であればよい。
【0013】
このような非水溶媒としては、従来より使用されている種々の非水溶媒を用いることができる。具体的には、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート,ジエチルカーボネート,ジメチルカーボネートあるいはエチルメチルカーボネートなどの飽和化合物の炭酸エステル、またはγ−ブチロラクトン,スルホラン,2−メチルテトラヒドロフランあるいはジメトキシエタンなどのエーテル類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数種を混合して用いてもよい。特に、酸化安定性の点からは、炭酸エステルを含めることが好ましい。
【0014】
電解質塩としては、M−X結合(但し、Mは遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、Xは酸素または硫黄を表す。)を有する軽金属塩のいずれか1種または2種以上を混合して用いることが好ましい。このような軽金属塩は、電極の表面に安定な被膜を形成し、溶媒の分解反応を抑制することができ、電解質の安定性を高めることができるからである。中でも環式化合物が好ましい。環式の部分も被膜の形成に関与すると考えられ、安定した被膜を得ることができるからである。
【0015】
このような軽金属塩としては、化15で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化15】
Figure 0004423888
式中、R11は化16または化17に示した基を表し、R12はハロゲン,アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表し、X11およびX12は酸素または硫黄をそれぞれ表し、M11は遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウム(Al)を表し、aは1〜4の整数であり、bは0〜8の整数であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1〜3の整数である。
【0017】
【化16】
Figure 0004423888
R21は、アルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。
【0018】
【化17】
Figure 0004423888
【0019】
具体的には、化18で表される化合物が挙げられる。
【0020】
【化18】
Figure 0004423888
式中、R11は化19または化20に示した基を表し、R12はハロゲン,アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表し、X11およびX12は酸素または硫黄をそれぞれ表し、M11は遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウムを表し、b1は1〜8の整数であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1〜3の整数である。
【0021】
【化19】
Figure 0004423888
R21は、アルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。
【0022】
【化20】
Figure 0004423888
【0023】
具体的には、化21で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化21】
Figure 0004423888
式中、R11は化22または化23に示した基を表し、R13はハロゲンを表し、M12はリン(P)またはホウ素(B)を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウムを表し、b2は2または4であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1〜3の整数である。
【0025】
【化22】
Figure 0004423888
R21は、アルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。
【0026】
【化23】
Figure 0004423888
【0027】
更に具体的には、化24で表されるジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムあるいは化25で表されるテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムがより好ましく挙げられる。B−O結合またはP−O結合を有しているとより高い効果を得ることができ、特に、O−B−O結合またはO−P−O結合を有していれば更に高い効果を得ることができるからである。
【0028】
【化24】
Figure 0004423888
【0029】
【化25】
Figure 0004423888
【0030】
M−X結合を有する軽金属塩としては、この他にも、化26で表されるリチウムビス[1,2−ベンゼンジオラト(2−)−O,O’]ボレート、または、化27で表されるリチウムトリス[1,2−ベンゼンジオラト(2−)−O,O’]フォスフェートも上述と同様の理由により好ましく挙げられる。
【0031】
【化26】
Figure 0004423888
【0032】
【化27】
Figure 0004423888
【0033】
また、電解質塩には、M−X結合を有する軽金属塩に加えて、他の軽金属塩のいずれか1種または2種以上を混合して用いることが好ましい。例えば電池において、内部抵抗を低減させることができるからである。他の軽金属塩としては、例えば、LiB(C6 5 4 、LiCH3 SO3 、LiCF3 SO3 、LiAlCl4 、LiSiF6 、LiCl、LiBr、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、LiN(CF3 SO2 2 、LiN(C2 5 SO2 2 あるいはLiN(C4 9 SO2 )(CF3 SO2 )などの化28で表されるリチウム塩、またはLiC(CF3 SO2 3 などの化29で表されるリチウム塩が挙げられる。
【0034】
【化28】
LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1SO2
式中、mおよびnは1以上の整数である。
【0035】
【化29】
LiC(Cp 2p+1SO2 )( Cq 2q+1SO2 ) (Cr 2r+1SO2
式中、p,qおよびrは1以上の整数である。
【0036】
中でも、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、化28で表されるリチウム塩および化29で表されるリチウム塩のいずれか1種または2種以上を混合して用いるようにすれば、より高い効果を得ることができると共に、高い導電率を得ることができるので好ましく、LiPF6 と、LiBF4 ,LiClO4 ,LiAsF6 ,化28で表されるリチウム塩および化29で表されるリチウム塩からなる群のうちの少なくとも1種とを混合して用いるようにすれば、更に好ましい。
【0037】
電解質塩の含有量(濃度)は、溶媒に対して、0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではイオン伝導度の極端な低下により十分な電池特性が得られなくなる虞があるからである。そのうち、M−X結合を有する軽金属塩の含有量は、溶媒に対して0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内においてより高い効果を得ることができるからである。
【0038】
この電解質は、また、添加剤として、不飽和化合物の炭酸エステルのいずれか1種または2種以上を含んでいる。M−X結合を有する軽金属塩は、分解反応しやすいが、不飽和化合物の炭酸エステルの作用により、M−X結合を有する軽金属塩の分解反応を必要最小限に抑制することができると考えられるからである。なお、不飽和化合物の炭酸エステルは溶媒として機能することもあるが、本明細書では、上述した機能に着目し添加剤として説明している。もちろん、添加されたものの少なくとも一部が上述したような反応に寄与すればよく、反応に寄与しないものは溶媒として機能してもよい。不飽和化合物の炭酸エステルとしては、ビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートが好ましい。
【0039】
この電解質における不飽和化合物の炭酸エステルの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。少なすぎると、上述の機能を十分に発揮することができず、多すぎると、例えば電池において、内部抵抗を高くする虞があるからである。
【0040】
なお、この電解質は、これら電解質塩,液状の溶媒および添加剤などからなる液状のいわゆる電解液とされていてもよいが、更に、これらを保持する高分子化合物を含み、ゲル状とされていてもよい。この場合、高分子化合物の種類および添加量などは、イオン伝導度が室温で1mS/cm以上となるように調整されることが好ましい。
【0041】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物が好ましい。
【0042】
これら高分子化合物には、イオン伝導性を有さないものもあるが、電解質塩を解離させることができ、イオン伝導性を有するものもあり、そのどちらを用いてもよい。但し、電解質塩を解離させることができ、イオン伝導性を有する高分子化合物は、溶媒としても機能する。よって、このような高分子化合物は、電解質塩の含有量を規定する際の溶媒に含まれる。
【0043】
電解液に対する高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、通常、電解液の3質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0044】
この電解質は、例えば、溶媒に不飽和化合物の炭酸エステルを添加したのち、電解質塩を溶解させることにより製造することができる。また、ゲル状とする場合には、例えば、この電解液を高分子化合物と希釈溶剤と混合して乾燥させることにより製造することができる。また、例えば、この電解液を高分子化合物の出発原料であるモノマーと混合し、モノマーを重合させることにより製造することもできる。
【0045】
この電解質は、例えば、次のようにして二次電池に用いられる。
【0046】
図1はその二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0047】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0048】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0049】
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極合剤層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極合剤層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、厚みが5μm〜50μm程度であり、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極合剤層21Bは、例えば、厚みが60μm〜250μmであり、正極活物質として、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料という。)を含んで構成されている。なお、正極合剤層21Bの厚みは、正極合剤層21Bが正極集電体21Aの両面に設けられている場合には、その合計の厚みである。
【0050】
リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料としては、エネルギー密度を高くするために、リチウムと遷移金属元素と酸素とを含むリチウム含有化合物を含有することが好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn)および鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものを含有すればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、LiCoO2 ,LiNiCoO2 ,LiMn2 4 あるいはLiFePO4 が挙げられる。
【0051】
なお、このような正極材料は、例えば、リチウムの炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物と、遷移金属の炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物とを所望の組成になるように混合し、粉砕した後、酸素雰囲気中において600℃〜1000℃の範囲内の温度で焼成することなどにより調製される。
【0052】
正極合剤層21Bは、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。例えば、図1に示したように正極21および負極22が巻回されている場合には、結着剤として柔軟性に富むスチレンブタジエン系ゴムあるいはフッ素系ゴムなどを用いることが好ましい。
【0053】
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極合剤層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極合剤層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する銅(Cu)箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。特に、銅箔は高い電気伝導性を有するので最も好ましい。負極集電体22Aの厚みは、例えば、5μm〜40μm程度であることが好ましい。5μmよりも薄いと機械的強度が低下し、製造工程において負極集電体22Aが断裂しやすく、生産効率が低下してしまうからであり、40μmよりも厚いと電池内における負極集電体22Aの体積比が必要以上に大きくなり、エネルギー密度を高くすることが難しくなるからである。
【0054】
負極合剤層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な炭素材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な炭素材料という。)の1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、例えば正極合剤層21Bと同様の結着剤を含んでいてもよい。負極合剤層22Bの厚みは、例えば、40μm〜250μmである。この厚みは、負極合剤層22Bが負極集電体22Aの両面に設けられている場合には、その合計の厚みである。
【0055】
リチウムを吸蔵・離脱可能な炭素材料としては、例えば、黒鉛,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などが挙げられる。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。
【0056】
黒鉛としては、例えば、真密度が2.10g/cm3 以上のものが好ましく、2.18g/cm3 以上のものであればより好ましい。なお、このような真密度を得るには、(002)面のC軸結晶子厚みが14.0nm以上であることが必要である。また、(002)面の面間隔は0.340nm未満であることが好ましく、0.335nm以上0.337nm以下の範囲内であればより好ましい。
【0057】
黒鉛は、天然黒鉛でも人造黒鉛でもよい。人造黒鉛であれば、例えば、有機材料を炭化して高温熱処理を行い、粉砕・分級することにより得られる。高温熱処理は、例えば、必要に応じて窒素(N2 )などの不活性ガス気流中において300℃〜700℃で炭化し、毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1500℃まで昇温してこの温度を0時間〜30時間程度保持し仮焼すると共に、2000℃以上、好ましくは2500℃以上に加熱し、この温度を適宜の時間保持することにより行う。
【0058】
出発原料となる有機材料としては、石炭あるいはピッチを用いることができる。ピッチには、例えば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解することにより得られるタール類、アスファルトなどを蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱重縮合,抽出,化学重縮合することにより得られるもの、木材還流時に生成されるもの、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラートまたは3,5−ジメチルフェノール樹脂がある。これらの石炭あるいはピッチは、炭化の途中最高400℃程度において液体として存在し、その温度で保持されることで芳香環同士が縮合・多環化し、積層配向した状態となり、そののち約500℃以上で固体の炭素前駆体、すなわちセミコークスとなる(液相炭素化過程)。
【0059】
有機材料としては、また、ナフタレン,フェナントレン,アントラセン,トリフェニレン,ピレン,ペリレン,ペンタフェン,ペンタセンなどの縮合多環炭化水素化合物あるいはその誘導体(例えば、上述した化合物のカルボン酸,カルボン酸無水物,カルボン酸イミド)、またはそれらの混合物を用いることができる。更に、アセナフチレン,インドール,イソインドール,キノリン,イソキノリン,キノキサリン,フタラジン,カルバゾール,アクリジン,フェナジン,フェナントリジンなどの縮合複素環化合物あるいはその誘導体、またはそれらの混合物を用いることもできる。
【0060】
なお、粉砕は、炭化,仮焼の前後、あるいは黒鉛化前の昇温過程の間のいずれで行ってもよい。これらの場合には、最終的に粉末状態で黒鉛化のための熱処理が行われる。但し、嵩密度および破壊強度の高い黒鉛粉末を得るには、原料を成型したのち熱処理を行い、得られた黒鉛化成型体を粉砕・分級することが好ましい。
【0061】
例えば、黒鉛化成型体を作製する場合には、フィラーとなるコークスと、成型剤あるいは焼結剤となるバインダーピッチとを混合して成型したのち、この成型体を1000℃以下の低温で熱処理する焼成工程と、焼成体に溶融させたバインダーピッチを含浸させるピッチ含浸工程とを数回繰り返してから、高温で熱処理する。含浸させたバインダーピッチは、以上の熱処理過程で炭化し、黒鉛化される。ちなみに、この場合には、フィラー(コークス)とバインダーピッチとを原料にしているので多結晶体として黒鉛化し、また原料に含まれる硫黄や窒素が熱処理時にガスとなって発生することから、その通り路に微小な空孔が形成される。よって、この空孔により、リチウムの吸蔵・離脱反応が進行し易くなると共に、工業的に処理効率が高いという利点もある。なお、成型体の原料としては、それ自身に成型性、焼結性を有するフィラーを用いてもよい。この場合には、バインダーピッチの使用は不要である。
【0062】
難黒鉛化性炭素としては、(002)面の面間隔が0.37nm以上、真密度が1.70g/cm3 未満であると共に、空気中での示差熱分析(differential thermal analysis ;DTA)において700℃以上に発熱ピークを示さないものが好ましい。
【0063】
このような難黒鉛化性炭素は、例えば、有機材料を1200℃程度で熱処理し、粉砕・分級することにより得られる。熱処理は、例えば、必要に応じて300℃〜700℃で炭化した(固相炭素化過程)のち、毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1300℃まで昇温し、この温度を0〜30時間程度保持することにより行う。粉砕は、炭化の前後、あるいは昇温過程の間で行ってもよい。
【0064】
出発原料となる有機材料としては、例えば、フルフリルアルコールあるいはフルフラールの重合体,共重合体、またはこれらの高分子と他の樹脂との共重合体であるフラン樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂,アクリル樹脂,ハロゲン化ビニル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアセチレンあるいはポリパラフェニレンなどの共役系樹脂、セルロースあるいはその誘導体、コーヒー豆類、竹類、キトサンを含む甲殻類、バクテリアを利用したバイオセルロース類を用いることもできる。更に、水素原子(H)と炭素原子(C)との原子数比H/Cが例えば0.6〜0.8である石油ピッチに酸素(O)を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)させた化合物を用いることもできる。
【0065】
この化合物における酸素の含有率は3%以上であることが好ましく、5%以上であればより好ましい(特開平3−252053号公報参照)。酸素の含有率は炭素材料の結晶構造に影響を与え、これ以上の含有率において難黒鉛化性炭素の物性を高めることができ、負極22の容量を向上させることができるからである。ちなみに、石油ピッチは、例えば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解することにより得られるタール類、またはアスファルトなどを、蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱重縮合,抽出あるいは化学重縮合することにより得られる。また、酸化架橋形成方法としては、例えば、硝酸,硫酸,次亜塩素酸あるいはこれらの混酸などの水溶液と石油ピッチとを反応させる湿式法、空気あるいは酸素などの酸化性ガスと石油ピッチとを反応させる乾式法、または硫黄,硝酸アンモニウム,過硫酸アンモニア,塩化第二鉄などの固体試薬と石油ピッチとを反応させる方法を用いることができる。
【0066】
なお、出発原料となる有機材料はこれらに限定されず、酸素架橋処理などにより固相炭化過程を経て難黒鉛化性炭素となり得る有機材料であれば、他の有機材料でもよい。
【0067】
難黒鉛化性炭素としては、上述した有機材料を出発原料として製造されるものの他、特開平3−137010号公報に記載されているリンと酸素と炭素とを主成分とする化合物も、上述した物性パラメータを示すので好ましい。
【0068】
セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。
【0069】
セパレータ23には本実施の形態に係る電解質が含浸されている。これにより、この二次電池では、負極22における効率が向上し、内部抵抗の増加が抑制され、電池容量,サイクル特性および保存特性などの諸特性を向上させることができるようになっている。
【0070】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0071】
まず、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。次いで、正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極合剤層21Bを形成し、正極21を作製する。
【0072】
また、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な炭素材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。次いで、負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極合剤層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0073】
続いて、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解質を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0074】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して正極21に吸蔵される。その際、M−X結合を有する軽金属塩により、負極22の表面に安定した被膜が形成され、負極22における溶媒の分解反応が抑制される。また、不飽和化合物の炭酸エステルによりM−X結合を有する軽金属塩の分解反応が抑制される。
【0075】
このように本実施の形態では、M−X結合を有する軽金属塩と、不飽和化合物の炭酸エステルとを含むようにしたので、M−X結合を有する軽金属塩の分解反応を必要最小限に抑制しつつ、負極22の表面に安定な被膜を形成することができる。よって、溶媒の分解反応を効率的に抑制することできる。従って、負極22における効率を向上させることができ、内部抵抗の増加を抑制することができる。その結果、電池容量,サイクル特性および保存特性などの諸特性を向上させることができる。
【0076】
特に、電解質がM−X結合を有する軽金属塩に加えて、他の軽金属塩を含むようにすれば、内部抵抗を低減させることができる。
【0077】
また、電解質における不飽和化合物の炭酸エステルの含有量を、0.01質量%以上10質量%以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0078】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について、図1および図2を参照して詳細に説明する。
【0079】
実験例1−1〜1−11)
まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1(モル比)の割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極材料としてのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み20μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極合剤層21Bを形成し正極21を作製した。そののち、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0080】
また、炭素材料として人造黒鉛粉末を用意し、この人造黒鉛粉末90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調製した。次いで、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極合剤層22Bを形成し負極22を作製した。続いて、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0081】
正極21および負極22をそれぞれ作製したのち、厚み25μmの微孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ23を用意し、負極22,セパレータ23,正極21,セパレータ23の順に積層してこの積層体を渦巻状に多数回巻回し、巻回電極体20を作製した。
【0082】
巻回電極体20を作製したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめっきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。そののち、電池缶11の内部に電解液を減圧方式により注入した。電解液には、エチレンカーボネート50体積%とジエチルカーボネート50体積%とを混合した溶媒に、電解質塩として化24で表されるジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムまたは化25で表されるテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムを溶媒に対して1.0mol/kgの含有量で溶解させたものに、不飽和化合物の炭酸エステルとしてビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)を添加したものを用いた。その際、電解液におけるビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートの含有量は、実験例1−1〜1−11で表1に示したように変化させた。
【0083】
【表1】
Figure 0004423888
【0084】
電池缶11の内部に電解液を注入したのち、表面にアスファルトを塗布したガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、実験例1−1〜1−11について直径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。
【0085】
また、実験例1−1〜1−11に対する比較例1−1,1−2として、ビニレンカーボネートおよびビニルエチレンカーボネートを添加しなかったことを除き、他は実験例1−1〜1−9または実験例1−10,1−11とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。また、実験例1−1〜1−11に対する比較例1−3〜1−5として、電解質塩としてLiPF6 を用いて実験例1−1〜1−11と同様にして二次電池を作製した。その際、比較例1−3では電解液にビニレンカーボネートおよびビニルエチレンカーボネートを添加せず、比較例1−4ではビニレンカーボネートを溶媒に対して2.0質量%の割合で添加し、比較例1−5ではビニルエチレンカーボネートを溶媒に対して2.0質量%の割合で添加した。
【0086】
得られた実験例1−1〜1−11および比較例1−1〜1−5の二次電池について、常温で充放電試験を行い、初回容量,内部抵抗およびサイクル特性をそれぞれ調べた。充電は、2000mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で電流が1mAに達するまで行い、放電は、2000mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで行った。初回容量は、このようにして得られた1サイクル目の放電容量である。内部抵抗は、1サイクル目の充電状態において、1kHzの交流インピーダンス測定を行うことにより求めた。サイクル特性としては、初回容量に対する200サイクル目の容量維持率(200サイクル目の容量/初回容量)×100を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0087】
表1から分かるように、M−X結合を有する軽金属塩および不飽和化合物の炭酸エステルの両方を用いた実験例1−1〜1−11によれば、不飽和化合物の炭酸エステルを用いていない比較例1−1,1−2に比べて、内部抵抗の低減および容量維持率の向上を図ることができ、実験例1−1〜1−7によれば、比較例1−1に比べて初回容量についても向上させることができた。
【0088】
これに対して、M−X結合を有する軽金属塩を用いていない比較例1−3〜1−5では、不飽和化合物の炭酸エステルを用いた比較例1−4,1−5の方が用いていない比較例1−3に比べて、容量維持率ついては若干高い値が得られたもののその効果は小さく、内部抵抗については比較例1−3よりも大きかった。
【0089】
すなわち、電解液にM−X結合を有する軽金属塩と、不飽和化合物の炭酸エステルとを含むようにすれば、初回容量およびサイクル特性の向上並びに内部抵抗の低減を図ることができ、特に、電解液における不飽和化合物の炭酸エステルの含有量を、0.01質量%以上10質量%以下とすれば、より高い効果を得ることができることが分かった。
【0090】
実験例2−1〜2−14)
ジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムまたはテトラフルオロ[ オキソラト−O,O’]リン酸リチウムに加えて、他の軽金属塩を混合して用いると共に、これらの軽金属塩の含有量を表2に示したように変化させたことを除き、他は実験例1−5,1−9〜1−11と同様にして二次電池を作製した。実験例2−1〜2−14についても、実験例1−1〜1−11と同様にして充放電試験を行い、初回容量,内部抵抗およびサイクル特性をそれぞれ調べた。その結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
Figure 0004423888
【0092】
表1および表2から分かるように、M−X結合を有する軽金属塩に加えて、他の軽金属塩を用いた実験例2−5,2−7〜2−14によれば、他の軽金属塩を用いていない実験例1−5,1−9〜1−11に比べて、内部抵抗を低減させることができると共に、容量維持率について、実験例1−5,1−9〜1−11と同等かそれよりも向上させることができた。特にLiPF6 を用いた実験例2−5によれば、容量維持率を最も向上させることができた。すなわち、電解液に、M−X結合を有する軽金属塩に加えて、他の軽金属塩、特にLiPF6 を含むようにすれば、より高い効果を得ることができることが分かった。
【0093】
また、実験例1−5,2−1〜2−6および比較例1−1の結果から、M−X結合を有する軽金属塩の含有量を0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下とすれば、内部抵抗の低減およびサイクル特性の向上を図ることができることが確認できた。
【0094】
なお、上記実施例では、M−X結合を有する軽金属塩および不飽和化合物の炭酸エステルについて具体的に例を挙げて説明したが、上述した効果はそれらの構造に起因するものと考えられる。よってM−X結合を有する他の軽金属塩および他の不飽和化合物の炭酸エステルを用いても同様の結果を得ることができる。また、上記実施例では、電解液を用いる場合について説明したが、ゲル状の電解質を用いても同様の結果を得ることができる。
【0095】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解液または固体状の電解質の1種であるゲル状の電解質について説明したが、本発明は、他の電解質にも同様に適用することができる。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子固体電解質、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなるイオン伝導性無機化合物、またはこれらのイオン伝導性無機化合物と電解液とを混合したもの、またはこれらのイオン伝導性無機化合物とゲル状の電解質あるいは高分子固体電解質とを混合したものが挙げられる。
【0096】
また、上記実施の形態および実施例では、巻回構造を有する円筒型の二次電池について説明したが、本発明は、巻回構造を有する楕円型あるいは多角形型の二次電池、または正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、いわゆるコイン型,ボタン型あるいは角型などの二次電池についても適用することができる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によるリチウムイオン二次電池用電解質によれば、リチウム塩としてジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムまたはテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムと、不飽和化合物の炭酸エステルとしてビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートとを含み、不飽和化合物の炭酸エステルの含有量が0.01質量%以上10質量%以下であるので、高い安定性を得ることができる。
【0099】
また、本発明によるリチウムイオン二次電池によれば、本発明のリチウムイオン二次電池用電解質を用いるようにしたので、負極における効率を向上させることができ、内部抵抗の増加を抑制することができる。その結果、電池容量,サイクル特性および保存特性などの諸特性を向上させることができる
【0100】
特に、リチウムイオン二次電池用電解質が、ジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムまたはテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムからなるリチウム塩に加えて、LiPF 6 などのリチウム塩を含むようにすれば、電池の内部抵抗を低減させることができる。
【0101】
また、炭酸エステルを、0.01質量%以上10質量%以下の含有量で含むようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【符号の説明】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極合剤層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極合剤層、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード。

Claims (10)

  1. 非水溶媒と、
    リチウム塩として、化4で表されるジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、または、化5で表されるテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムと、
    不飽和化合物の炭酸エステルとして、ビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートと、を含み、
    前記不飽和化合物の炭酸エステルの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下である、
    リチウムイオン二次電池用電解質。
    Figure 0004423888
    Figure 0004423888
  2. 更に、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、化6で表されるリチウム塩および化7で表されるリチウム塩からなる群のうちの少なくとも1種を含む、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用電解質。
    (化6)
    LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1SO2
    (式中、mおよびnは1以上の整数である。)
    (化7)
    LiC(Cp 2p+1SO2 )( Cq 2q+1SO2 ) (Cr 2r+1SO2
    (式中、p,qおよびrは1以上の整数である。)
  3. 記リチウム塩の含有量は、前記非水溶媒に対して0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用電解質。
  4. 更に、高分子化合物またはイオン伝導性無機化合物を含む、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用電解質。
  5. 正極および負極と共に電解質を備え、
    前記電解質は、
    非水溶媒と、
    リチウム塩として、化11で表されるジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、または、化12で表されるテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウムと、
    不飽和化合物の炭酸エステルとして、ビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートと、を含み、
    前記電解質における前記不飽和化合物の炭酸エステルの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下である、
    リチウムイオン二次電池。
    Figure 0004423888
    Figure 0004423888
  6. 前記電解質は、更に、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、化13で表されるリチウム塩および化14で表されるリチウム塩からなる群のうちの少なくとも1種を含む、請求項記載のリチウムイオン二次電池。
    (化13)
    LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1SO2
    (式中、mおよびnは1以上の整数である。)
    (化14)
    LiC(Cp 2p+1SO2 )(Cq 2q+1SO2 ) (Cr 2r+1SO2
    (式中、p,qおよびrは1以上の整数である。)
  7. 記リチウム塩の含有量は、前記非水溶媒に対して0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下である、請求項記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 前記電解質は、更に、高分子化合物またはイオン伝導性無機化合物を含む、請求項記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記正極は、リチウム(Li)と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種と、酸素(O)とを含むリチウム含有化合物を含む、請求項記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記負極は、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な炭素材料を含む、請求項記載のリチウムイオン二次電池。
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