JP4420483B2 - 重荷重用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トラックやバスなどに使用される重荷重用空気入りラジアルタイヤに関するものであり、より詳細には、軽量化のため、ベルトを3層のコード層で構成し、コーナリング性等のタイヤ全般性能を維持・向上させつつ、特にベルトの最外コード層のコード切れを抑制して、耐久性を高めることにある。
【0002】
【従来の技術】
トラックやバスなどに使用される重荷重用空気入りラジアルタイヤは、図8に示すように、通常、そのベルト20を4層のコード層21〜24で構成し、最もカーカスに近い側に位置する第1コード層21を、コードがタイヤ円周を含む平面に対して比較的大きな角度の配列になるように配置し、第2及び第3コード層22及び23を、コードがタイヤ円周を含む平面を挟んで逆向きの配列になる方向に積層した交差ベルト層25として配置し、そして、第4コード層24を、そのコードが第3コード層23のコードと同じ向きの配列でかつそのコードの配設角度が第3コード層23のものとほぼ等しくなるように配置するのが一般的である。
【0003】
このようなベルト20を有するタイヤは、例えば岩や石などが散在する凹凸のある表面状態の悪い路面を走行した場合には、岩や石などの尖った角を踏みつけてベルトに達するようなカットを受ける可能性があるが、この場合、前記カットによるダメージ(ベルトコード切れ)を、最外コード層である第4コード層24で遮断する構成、すなわち第4コード層24を主に保護層としての役割を担わせるために配設することが多い。
【0004】
一方、重荷重用ラジアルタイヤにおいては、乗用車タイヤ等と同様に、軽量化を図ることを目的として、ベルトを3層のコード層で構成するための検討が行われており、この場合のベルトは、ラジアルカーカスに最も近い側に位置する第1コード層のコードを、タイヤ円周を含む平面に対して比較的大きな角度で配列し、第2及び第3コード層を、コードがタイヤ円周を含む平面を挟んで逆向きの配列でかつ前記平面に対し比較的小さな角度で配設した交差ベルト層として配置するのが一般的であり、このようなタイヤについては、例えば特開平7-186613号公報に記載されている。
【0005】
前掲公報に記載のタイヤは、ベルトを3 枚のブレーカー(ここでいうコード層に相当する。)で構成した場合に、カーカス側から数えて3 番目の第 3ブレーカーの強力が最も不足するという知見に基づいて、第 3ブレーカーの単位長さ当たりの強力を他のブレーカーに比べて高める等の構成を採用したものであり、これによって、岩や石を踏みつけた場合にブレーカーが破断してバーストを安価に効果的に防止することができるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発明者らがこのベルト構造を有するタイヤについて検討したところ、このタイヤは、交差ベルト層を構成する第2及び第3ブレーカーのコードを比較的小さな角度で交差させているため、使用時にタイヤに内圧を適用した際には、この内圧に対抗するため、第2及び第3ブレーカーのコードには大きな張力が作用することになり、このように第3ブレーカーに大きな張力が作用した状態で、このコードの強力(具体的には、コードの破断強度)を高めても、第3ブレーカーのコードの破断を十分に抑制することは難しかった。
すなわち、大きな張力が作用する状態のコードに上記カットを受ければ、張力に比例して切れやすくなるからである。
【0007】
また、図3に示すように、タイヤが路面30上に存在するある程度大きな石等の突起物31を踏みつけた場合、ベルトには矢印32の方向に曲げ力が作用するため、最外コード層には圧縮力が作用することになるが、この場合、最外コード層28の被覆ゴムの圧縮弾性率が小さいと、最外コード層28のコード8aに局所的な座屈(バックリング)が発生しやすく、このような座屈を繰り返し受けると、コード破断を生じるおそれがあった。
【0008】
この発明の目的は、軽量化のため、ベルトを3層のコード層で構成したタイヤにおいて、最内コード層及び中間コード層を交差ベルト層とし、これらのコードの配設角度の適正化を図るとともに、最外コード層のコード及び被覆ゴムの適正化を図ることによって、コーナリング性等のタイヤ全般性能を維持・向上させつつ、このタイヤに生じがちな最外コード層でのコード破断が効果的に抑制され、4 層のコード層で構成したベルトを有する従来タイヤと同等レベル以上の耐久性を有する重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、一対のビード部内にそれぞれ埋設したビードコア間でトロイド状に連なるラジアルカーカスのクラウン部外周に、トレッド部を強化するベルトを具え、このベルトは3層のゴム被覆したコード層からなり、これらコード層のうちの、最内コード層及び中間コード層を、コードがタイヤ円周を含む平面を挟んで逆向きの配列になる方向に積層して、これらのコード層で交差ベルト層を形成してなる重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、最内コード層及び中間コード層のコードは、前記平面に対する配設角度が10〜25°の範囲内にあり、最外コード層のコードが高伸長性コード、好ましくは切断伸びが4%以上である高伸長性コードであり、その前記配設角度が前記平面から中間コード層のコードの前記配設角度を測定した向きに測って45〜115 °の範囲内であり、最外コード層の被覆ゴムの圧縮弾性率が200kgf/mm2以上である。
【0010】
尚、ここでいう高伸長性コードは、具体的にはn本(n:整数)のフィラメントを撚り合わせてなるストランドのm本(m:整数)をさらに同一方向に撚り合わせた構造を有するストランドロープか、l本(l:整数)のフィラメントを細密に撚り合わせたコード径よりも過大な型付けを施したフィラメントを、同一構造で撚り合わせたいわゆるオープンタイプのコード等を意味し、コード切断伸びの値は、タイヤから取り出したコードをインストロン引張試験機によって切断まで引っ張ったときの、切断までの変位を引っ張る前のチャック間距離で除した値(%) とする。
【0011】
また、ゴムの圧縮弾性率は、図7(a)に示すように、直径dが14mm, 高さhが28mmの円筒状の空洞をもつ鋼鉄製の治具33の空洞内に、ゴム試験片34を隙間なく充填した後、この治具33を、図7(b)に示すように、圧縮試験機35にセットし、ゴム試験片34の上下面に0.6mm/min.の速度で荷重Wを負荷し、このときの変位量をレーザー変位計36で測定し、荷重と変位との関係から算出した値とする。
【0012】
さらに、交差ベルト層間でのセパレーションを抑制する必要がある場合には、最内コード層及び中間コード層のうちの少なくとも一方のコード層の端部に、これを包み込むゴム材料からなるエンドカバーを配設し、エンドカバーは、それを配設したコード層の内面及び外面に対向する部分のうちの少なくとも一方が、前記コード層のコード延在位置とコード間位置とにそれぞれ山と谷とが対応する波状の外面形状を有し、これら山谷間の高低差を0.05〜0.25mmの範囲内にすること、及び/又は、最内コード層及び中間コード層のうちの少なくとも一方のコード層の端部に、全周にわたってコード端を被覆するゴム層を設け、ゴム層の幅を0.05〜5.00mmにすることがより好適である。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1に、この発明に従う重荷重用空気入りラジアルタイヤの代表的なトレッド部の一部を抜き出し、特にベルト構造を示すため、トレッドゴムの一部を切り取って斜め上方から眺めたものである。また、図2は、ベルトを構成するコード層のコードの配設関係をより明確に示すために、ベルトのみを抜き出して真上から眺めたものである。
【0014】
図中1は重荷重用空気入りラジアルタイヤ、2はラジアルカーカス、3はカーカスのクラウン部、4はトレッド部、5はベルト、6〜8はコード層、9は交差ベルト層である。
【0015】
この図に示すタイヤ1は、一対のビード部(図示略)内にそれぞれ埋設したビードコア(図示略)間でトロイド状に連なるラジアルカーカス2のクラウン部3の外周上に、トレッド部4を強化するベルト5を具え、このベルト5は3層のゴム被覆したコード層6,7,8で構成し、これらのコード層6,7,8のうちの、最内コード層6及び中間コード層7を、コード6a,7a がタイヤ円周を含む平面10を挟んで逆向きの配列になる方向に積層して、これらのコード層6,7 で交差ベルト層9を形成する。
【0016】
そして、この発明の構成上の特徴は、最内コード層6及び中間コード層7のコード6a,7a の前記平面10に対する配設角度を10〜25°の範囲内にし、最外コード層8のコード8aを高伸長性コード、好ましくは切断伸びが4%以上の高伸長性コードとし、そのコード8aの前記配設角度が、中間コード層7のコード7aの前記配設角度を前記平面10から中間コード層7のコード7aの前記配設角度を測定した向きに測って45〜115 °の範囲、好ましくは50〜100 °の範囲内にあり、そして、最外コード層8の被覆ゴム8aの圧縮弾性率を200kgf/mm2以上にすることにある。
【0017】
すなわち、最内コード層6及び中間コード層7のコード6a,7a の前記平面10に対する配設角度を10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内にし、最外コード層8のコード8aの前記配設角度を45〜115 °の範囲にすることにより、図2に示すように、タイヤに内圧を適用した際に生じるタイヤ円周方向に作用する力Fx に対しては、主に、最内コード層6及び中間コード層7のコード6a,7a に対抗させることができ、最外コード層8のコード8aに作用する張力をわずかに圧縮側にすることができるので、このタイヤで、例えば岩や石などの尖った角を踏みつけてベルトに達するようなカットを受けた場合であっても、最外コード層8のコード8aは切れにくくなり、また、仮に最外コード層8のコード8aに引張り力が作用するような状況が生じたとしても、最外コード層のコードが切断伸びの大きな高伸長性コードであるため、引張り力を有効に吸収してコード破断が生じにくくなり、いずれにしても耐久性は向上することになる。
【0018】
加えて、最外コード層のコードを高伸長性コードとしたことにより、コード破断が生じにくくなることから、最外コード層の打ち込み数をさらに少なくすることができ、これによって、より一層の軽量化が達成できる。
【0019】
また、タイヤに内圧を充てんした場合、ベルトには、図2に示すように、タイヤ円周方向の力Fx が作用し、各コード6a,7a は前記配設角度が小さくなる方向に変化しようとし、結果的にコード層6,7は巾方向に縮もうとする。しかし上記構成を採用した場合には、最外コード層8のコード8aの配設角度が、最内コード層6及び中間コード層7のコード6a,7a に比べてかなり大きいため、配設角度の変化が非常に小さく、巾方向に縮みにくいので、コード層6,7の巾方向縮み変形に追随できない。
【0020】
したがって、コード層8はコード層6,7の巾方向縮みを抑制する働きを有することになり(いわゆる、つっかえ棒的な作用)、コード層6,7の円周方向の剛性が増大する結果、コーナリングパワー(CP)が増加するとともに、内圧充てん時でのタイヤの成長が抑制されるという面で有利となる。
【0021】
尚、最内コード層6及び中間コード層7のコード6a,7a は、前記平面10に対する配設角度をほぼ等しくする方が前記コード6a,7a に均等に張力負担させる上で好ましい。また、コード6a,7a の配設角度を10〜25°の範囲内にしたのは、この範囲よりも大きくすると、コード6a,7a がタイヤ円周方向に作用する張力に対して十分に対抗できなくなるからであり、また、コード6a,7a の配設角度を前記範囲よりも小さくすると、コード層6,7の端部に発生する層間剪断歪が大きくなり、コード層6,7間(交差ベルト間)でセパレーションが発生し易くなる。
【0022】
また、図9は、最外コード層8のコード8aの前記配設角度とコーナリングパワー(CP)との関係を示す図であり、このコーナリングパワーの値は、ベルトを4層のコード層で構成した従来タイヤのコーナリングパワーの値を100 としたときの指数比で示したものである。
【0023】
この図から、最外コード層8のコード8aの前記配設角度が45〜115 °の範囲内であるタイヤは、従来タイヤと同等以上のコーナリングパワーを有しているのがわかる。これは、最外コード層8が十分なつっかえ棒的作用を発揮する結果として、交差ベルトの円周方向剛性が高まるためであると考えられる。
従って、この発明では最外コード層8のコード8aの前記配設角度を45〜115 °の範囲内とした。
【0024】
尚、上述した構成にするだけでは、タイヤが路面上に存在するある程度大きな石等の突起物上を踏みつけ、ベルト5の最外コード層8のコード8aに、図3に示すような曲げの内側になるような圧縮力を受けた場合に、最外コード層8のコード8aに局所的な座屈(バックリング)が発生するおそれがあり、その結果、コード破断を生じる可能性がある。
【0025】
そこで、この発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、上記構成に加えて、さらに最外コード層8の被覆ゴム8bの圧縮弾性率を200kgf/mm2以上にすることを必須の発明特定事項とし、このような構成を採用することによって、図3に示すような場合であっても座屈が生じにくくなり、最外コード層8のコード8aの破断を十分に抑制することができ、この結果、軽量化を図るためベルトを3層のコード層で構成した場合に不足しがちであった耐久性を、ベルトを4層のコード層で構成した従来タイヤと同等レベルの耐久性にまで高めることができることに成功したのである。
【0026】
また、この他の実施形態としては、例えば、図4及ぶ図5に示すように、最内コード層6及び中間コード層7のうちの少なくとも一方のコード層の端部に、これを包み込むゴム材料からなるエンドカバー11を配設し、エンドカバー11は、それを配設したコード層6,7の内面12a 及び外面12b に対向する部分のうちの少なくとも一方が、前記コード層6,7のコード延在位置14( より厳密には、コード中心位置) とコード間位置15( より厳密にはコード中心間距離の中点位置) とにそれぞれ山13a と谷13b とが対応する波状の外面形状13を有し、これら山谷間の高低差Hを0.05〜0.25mmの範囲内にすることによって、特に、交差ベルト層間でのセパレーションを抑制することができ、これによって、タイヤの耐久性がより一層向上する。
【0027】
エンドカバー11を波状の外面形状にした場合の、これら山谷間の高低差Hを0.05〜0.25mmの範囲内に限定するのは、この範囲よりも小さいと交差ベルト層間(具体的には最内コード層6と中間コード層7との間)でのセパレーションを抑制する効果が薄らぐからであり、また、この範囲よりも大きくするとベルトはり付け成型時において谷部にて空気がたまり易くなり、空気がたまってしまうとその部分でのゴムは接着しないので、かえってセパレーションを悪化させてしまうからである。
【0028】
エンドカバー11を波状の外面形状にする方法としては、未加硫状態のコード層をカレンダーロールで製造する際に用いる、ゴム被覆直前で多数本のコードを配列方向に引き揃えるコム(櫛)ロールと同様なロールでゴム被覆後の未加硫コード層を表裏両面から圧着するか又は未加硫被覆ゴムのゲージをなるべく薄くすることによって形成するのが好ましい。尚、後者の場合には、ゴムゲージが薄すぎるとコードが露出しやすくなり、露出したコード部分が存在すると、該部分で接着破壊が生じやすくなるため、このことを考慮に入れてゴムゲージ厚さを設定する必要がある。
【0029】
さらに、図6に示すように、上記エンドカバーの代わりに、最内コード層6及び中間コード層7のうちの少なくとも一方のコード層の端部に、全周にわたってコード端を被覆するゴム層16を設け、ゴム層16の幅aを0.05〜5.00mmにすることによっても、交差ベルト層間でのセパレーションを抑制することができ、これによって、タイヤの耐久性がより一層向上する。
【0030】
ゴム層16の幅aを0.05〜5.00mmに限定するのは、この範囲よりも小さいと交差ベルト層間でのセパレーションを抑制する効果が薄らぐからであり、また、この範囲よりも大きくするとベルト送り出し装置からベルトが送り出される時にゴム層部分がたれ下ったり、めくれ上ったりしてベルト成型時に不具合が生じ易くなるからである。特にこのゴム層の巾が大きい分には性能上問題はないが、上記理由により作りにくくなる。
【0031】
尚、ゴム層16を設ける場合には、エンドカバー11は設けなくてもよいが、ゴム層16とともにエンドカバー11を設けることもできる。この場合には、必ずしも先に述べたような外面形状にする必要はなく、また、ゴム層16には、生産性の点からコード層6,7 の被覆ゴムと同じ配合組成のものを使用することが好ましい。
【0032】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0033】
【実施例】
次に、この発明に従う重荷重用空気入りラジアルタイヤを試作し、性能評価を行ったので説明する。
・実施例1
試作した発明例1 〜14のタイヤは、タイヤサイズが11R22.5 であり、図 1に示すような3層のコード層6 〜8 でベルト5 を構成し、最内コード層6及び中間コード層7のコード6a及び7aには1 +6 ×0.34のスチールコードを用い、コードの打ち込み数を18.0本/50mm とした。これらのコード6a及び7aの切断伸びはいずれも2.5 %であった。
また、最外コード層8のコード8aには、いずれの発明例とも4本のスチールフィラメントを撚り合わせてなるストランドの4本をさらに同一方向に撚り合わせて4 ×4 ×0.23のコード構造を有する高伸長性のストランドロープを用い、コードの打ち込み数を14.7本/50mm とした。このロープの切断伸びは3.0 %であった。
各コード層6 〜8 の、配設層数、コードの配設角度、及び最外コード層8 の被覆ゴム8bの圧縮弾性率については表1に示す。
カーカス2 は、3+9+15×0.175 のスチールコードをラジアル方向に配列した1プライで構成し、その他のタイヤ構造については、通常のトラック・バス用の空気入りラジアルタイヤとほぼ同様なものを使用した。
【0034】
また、比較のため、ベルトを4層のコード層で構成したタイヤ(従来例)、ベルトの配設角度と最外コード層の被覆ゴムの圧縮弾性率の少なくとも一方がこの発明の範囲外であるタイヤ(比較例1〜6)についても、表1に同様に併記した。
尚、従来例及び比較例1 〜6 はいずれも、ベルトを構成するすべてのコード層に1 +6 ×0.34のスチールコードを用い、コードの打ち込み数を18.0本/50mm とした。これらのコードの切断伸びはいずれも2.5 %であった。
【0035】
【表1】
【0036】
(試験方法)
上記各供試タイヤの耐久性を以下に示す3つの試験の結果から評価し、また、コーナリングパワーについても測定し、その測定値からコーナリング性を評価した。
【0037】
A.ベルトのカット試験
タイヤのクラウンセンター部に最も近いリブ溝に、90°の角度の先端部をもつ鉄製の充填物をはめ込んだいわゆる“ 石噛み状態" にしたタイヤに、7.5kgf/cm2の内圧を適用し、荷重2750kgf を負荷した状態で1万キロメートル走行させ、その後、このタイヤを分解して、最外コード層のコードが破断しているか否かを調べ、このコード破断の有無で耐久性を評価した。表1にその評価結果を示す。
【0038】
B.最外コード層のコード折れ試験
半径30Rの半球をドラム表面に設置し、この半球を内圧7.5kgf/cm2, 荷重2750kgf を作用させたタイヤのほぼトレッド幅方向中央部に位置するように設定し、この状態で1万キロメートル走行させ、その後、このタイヤを分解して、最外コード層のコードが破断しているか否かを調べ、このコード破断の有無で耐久性を評価した。表1にその評価結果を示す。
【0039】
C.交差ベルト層の耐久性試験
タイヤ内圧7.5kgf/cm2, 荷重2750kgf 、そして横力を0.3 Gかけた状態のタイヤで1千キロメートル走行させ、その後、このタイヤを分解して、中間コード層の端部に発生している亀裂長さを測定し、これによって評価した。表1にその評価結果を示す。尚、この表中の数値は従来例を100 とした指数比で表してあり、この数値は大きいほど優れている。
【0040】
D.コーナリング性の評価試験
タイヤ内圧7.5 kgf/cm2,荷重2750kgf の条件にしたタイヤ車輪( リムサイズ:8.25)をドラム上で走行させ、スリップ角度を1 〜4 °の範囲で1 °ずつふっていき、各角度で測定した横力の値からコーナリングパワーを算出し、これらのコーナリングパワーの平均値からコーナリング性を評価した。表1にその評価結果を示す。尚、この表中の数値は従来例を100 とした指数比で表してあり、この数値は大きいほど優れている。
【0041】
表1の結果から、発明例1〜14は、試験A及びBでは、最外コード層のコードが破断せずに健全な状態で維持してあり、また試験Cでは、従来例と同等以上の耐久性を有しており、さらにコーナリング性についても従来例と同等以上であった。
一方、比較例1〜6は、耐久性とコーナリング性の少なくとも一方が劣っていた。
【0042】
・実施例2
次に、実施例1で使用した発明例1のタイヤの構成のうち、最外コード層のコードに、表2に示すように、コード構造と撚りピッチの少なくとも1方を変えることにより、コードの切断伸びが3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%である高伸長性コードを用いた発明例a〜fのタイヤを作製し、各タイヤについて、コード破断のしやすさの指標となるカットエネルギーを測定し、これによって、ベルト耐久性を評価した。
【0043】
E.カットエネルギーの測定によるベルト耐久性の評価
カットエネルギーは、タイヤのセンターライン位置に、一辺が60mmの正三角形で、厚みが40mmの三角刃を具えた刃型プランジャー(0°) の三角刃を1mm/sec.の速度で押しつけていき、破断( バースト) するまでのプランジャーの押込み力(kgf) と押込み量(cm)を測定し、これらの積を2で除したときの数値をカットエネルギー(kgf・cm) とし、これによりベルト耐久性を評価した。表2にその評価結果を示す。尚、この表中の数値は実施例1の従来例を100 とした指数比で表してあり、この数値は大きいほど優れている。
【0044】
【表2】
【0045】
表2の結果から、発明例1よりも最外コード層に用いるコードの切断伸びが大きい発明例a〜fは、いずれも耐久性が発明例1よりもさらに優れている。
【0046】
【発明の効果】
この発明によれば、軽量化のため、ベルトを3層のコード層で構成した重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、そのコーナリング性等のタイヤ全般性能を維持・向上させつつ、耐久性を向上させることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従う重荷重用空気入りラジアルタイヤのトレッド部の一部を抜き出して示した斜視図であり、ベルト構造を示すためにトレッド部の一部分を切り取ってある。
【図2】ベルトのみを抜き出して示した平面図である。
【図3】タイヤが路面30上に存在するある程度大きな石等の突起物31を踏みつけた場合にの状態を示す図である。
【図4】最内コード層6及び/又は中間コード層7の端部にエンドカバー11を配設したときの状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示すエンドカバー付きコード層6 又は7 をタイヤ幅方向断面で見た場合の要部拡大図である。
【図6】最内コード層6 及び/又は中間コード層7 の端部に追加ゴム部16を設けたときの状態を示す斜視図である。
【図7】ゴムの圧縮弾性率を測定するための装置を示す図である。
【図8】従来例に使用したタイヤの幅方向半断面図である。
【図9】最外コード層8のコード8aの前記配設角度とコーナリングパワー(CP)との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 重荷重用空気入りラジアルタイヤ
2 ラジアルカーカス
3 カーカス2のクラウン部
4 トレッド部
5 ベルト
6 最内コード層
7 中間コード層
8 最外コード層
9 交差ベルト層
10 タイヤ円周を含む平面
11 エンドカバー
12a コード層6 又は7 の内面
12b コード層6 又は7 の外面
13 エンドカバー11の外面
14 コード層6又は7のコード延在位置
15 コード層6又は7のコード間位置
16 ゴム層
Claims (4)
- 一対のビード部内にそれぞれ埋設したビードコア間でトロイド状に連なるラジアルカーカスのクラウン部外周に、トレッド部を強化するベルトを具え、このベルトは3層のゴム被覆したコード層からなり、これらコード層のうちの、最内コード層及び中間コード層を、コードがタイヤ円周を含む平面を挟んで逆向きの配列になる方向に積層して、これらのコード層で交差ベルト層を形成してなる重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、
最内コード層及び中間コード層のコードは、前記平面に対する配設角度が10〜25°の範囲内にあり、
最外コード層のコードが高伸長性コードであり、その前記配設角度が前記平面から中間コード層のコードの前記配設角度を測定した向きに測って45〜115 °の範囲内であり、
最外コード層の被覆ゴムの圧縮弾性率が200kgf/mm2以上であることを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤ。 - 前記高伸長性コードは切断伸びが4%以上である請求項1記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 最内コード層及び中間コード層のうちの少なくとも一方のコード層の端部に、これを包み込むゴム材料からなるエンドカバーを配設し、エンドカバーは、それを配設したコード層の内面及び外面に対向する部分のうちの少なくとも一方が、前記コード層のコード延在位置とコード間位置とにそれぞれ山と谷とが対応する波状の外面形状を有し、これら山谷間の高低差が0.05〜0.25mmの範囲内にある請求項1又は2記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 最内コード層及び中間コード層のうちの少なくとも一方のコード層の端部に、全周にわたってコード端を被覆するゴム層を設け、ゴム層の幅が0.05〜5.00mmである請求項1、2又は3記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
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