以下、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した信号処理装置の構成例を表している。
図1において、信号処理装置1は、例えば、光ディスク等の記録媒体からのデータを再生する再生システムに構成され、記録媒体より読み出される再生信号に対して信号処理を行う装置である。信号処理装置1は、量子化部12、適応等化処理部13、加算器14および15、データ検出部16、誤差情報処理部17、並びに同期検出復号部18により構成される。
信号処理装置1の入力端子11を介して入力された再生信号は、必要に応じて図示せぬLPF(Low Pass Filter)により高域成分の遮断が行われて、量子化部12に入力される。量子化部12は、A/D(Analog-to-Digital)変換器により構成され、再生信号にA/D変換を行う(すなわち、アナログ信号をデジタル信号に変換する)ことにより、量子化データを、適応等化処理部13に出力する。
適応等化処理部13は、入力された量子化データに対して、3次のボルテラフィルタを用いて適応等化処理を実行する。なお、詳しくは後述するが、適応等化処理部13は、実際には、3次のボルテラフィルタの1次元の項についての適応等化を行う適応等化処理部13−1、3次のボルテラフィルタの2次元の項についての適応等化を行う適応等化処理部13−2、および、3次のボルテラフィルタの3次元の項についての適応等化を行う適応等化処理部13−3が並列に接続されて構成されている。
適応等化処理部13−1乃至13−3は、また、必要に応じて、誤差情報処理部17から入力される誤差情報に基づいて、各次元の係数を更新する。なお、適応等化処理部13−1乃至13−3は、信号再生が安定しているなど、必要がなければ、固定の係数を用いて処理(すなわち、等化処理)を行うように構成してもよい。
加算器14は、適応等化処理部13−1の出力と適応等化処理部13−2の出力とを加算して出力する。加算器15は、加算器14からの出力と適応等化処理部13−3の出力とを加算する。すなわち、加算器15からは、適応等化処理部13−1乃至13−3からの総和が、等化後データとして、データ検出部16および誤差情報処理部17に出力される。
データ検出部16は、入力される等化後データに対して、例えば、パーシャルレスポンス(PR: Partial Response) (1,2,2,1)方式と最尤検出(ML: Maximum Likelihood Sequence Detection)方式を組み合わせたビタビ復号を行うことにより、0と1の2値であるチャネルビット列を検出し、誤差情報処理部17および同期検出復号部18に出力する。
誤差情報処理部17は、データ検出部16からのチャネルビット列からデータ検出部16で行ったPR等化の理想出力を得て、適応等化処理部13からの等化後データと理想出力の演算結果を、誤差情報として適応等化処理部13−1乃至13−3に出力する。このPR等化の理想出力は、例えば、PR(1,2,2,1)の場合、4区間のチャネルビット列を参照し、チャネルビットの1を+1、0を−1として、x1,x2,x2,x1で畳み込むことにより得られる。
すなわち、図1の信号処理装置1においては、適応等化処理部13、データ検出部16および誤差情報処理部17によりループが構成されている。
同期検出復号部18は、データ検出部16からのチャネルビット列から、所定の同期パターンを検出し、検出した同期パターンに基づいて、チャネルビット列を所定の位置から復号し、その復号結果であるデコードデータを出力端子19に出力する。デコードデータは、2値であり、データ情報またはその他の情報とされる。
次に、適応等化処理部13において実行される適応等化処理について詳しく説明する。
適応等化処理部13においては、3次のボルテラフィルタが用いられる。ボルテラフィルタは、文献「尿daptive Polynomial Filters V. John Mathews, IEEE SP Magazine, July, 1991 pp10-26」にも理論が記載されているように、最小誤差2乗法(LMS:Least Mean Square)や再帰最小2乗(RLS:Recursive Least Squares)などの適応等化理論に従ってその係数を最適化することができるフィルタである。
3次のボルテラフィルタは、時刻nでの入力をx(n)、フィルタ出力をy(n)とすると次の式(1)のように表される。
ただし、N1、N2、およびN3は、それぞれ1次、2次、および3次の項のフィルタの長さ(タップ数)を表す。
また、h1(i){i=0乃至N1-1}は1次元の係数である。h2(i,j){i=0乃至N2-1,j=0乃至N2-1}は、2次元の係数である。h3(i,j,k){i=0乃至N3-1,j=0乃至N3-1,k=0乃至N3-1}は、3次元の係数である。
式(1)を、入力をx、出力をy=f(x)としてマクローリン展開すると、式(2)のように表される。
記録媒体から読み出される再生信号が線形であるとすれば、式(2)において、右辺の第1項(直流成分)と第2項(基本波)が出力となる。しかしながら、この再生信号が非線形性を有するため、式(2)の第3項以降の基本波の整数倍の高調波が出力に含まれてくる。これらは、一般に高調波歪みと称される。
また、式(1)と式(2)を比較すると、式(1)の右辺の第1項、第2項、および第3項がそれぞれ、式(2)の右辺の第2項、第3項、および第4項に相当する。
すなわち、2次歪みは、波形の非対称性として現れるので、式(1)の右辺、すなわち、ボルテラフィルタの2次の項は、例えば再生信号の上下非対称性(アシンメトリ)の補正に有効となる。
さらに、3次歪みは、波形の歪みとなって現れるので、式(1)の右辺、すなわち、ボルテラフィルタの3次の項は、例えば再生信号の非線形な歪みの補正に有効となる。
したがって、適応等化処理部13を、並列した3段のボルテラフィルタの1次の項、2次の項、3次の項に対応した適応等化処理部13−1乃至13−3で構成することにより、適応等化処理部13−1により、線形の歪みが有効に補正され、適応等化処理部13−2により、上下非対称性(アシンメトリ)の歪みが有効に補正され、適応等化処理部13−3により、アシンメトリではない他の非線形な歪みが有効に補正されるので、2次元ボルテラフィルタを用いるよりも有効に波形の歪みが補正される。
これにより、エラーレートが改善され、記録媒体の再生において、信号処理装置1を用いることにより、より安定したデータが再生される。
なお、具体的には、適応等化処理部13−1は、式(1)の右辺の第1項として、所定の1次元のタップ数N1の演算を実行し、係数h1(i)と入力データ列(i)の積に対する総和を出力する。すなわち、係数h1(i)に対して対応する入力データは、1つである。
適応等化処理部13−2は、式(1)の右辺の第2項として、所定の2次元のタップ数N2の演算を実行し、係数h2(i,j)と入力データ列(i)*入力データ列(j)の積に対する総和を出力する。すなわち、係数h2(i,j)に対して対応する入力データは、2つである。なお、i=jにおいては、入力データは、同じ値を2乗することとなる。
適応等化処理部13−3は、式(1)の右辺の第3項として、所定の3次元のタップ数N3の演算を実行し、係数h3(i,j,k)と入力データ列(i)*入力データ列(j)*入力データ列(k)の積に対する総和を出力する。すなわち、係数h3(i,j,k)に対して対応する入力データは、3つである。なお、i=j=kにおいては、入力データは、同じ値を3乗することとなる。また、i,j,kのうちのいずれか2つの数字が同じ場合は、入力データは同じ値を2乗し、さらに他の異なる値と演算される。
以上のように、適応等化処理部13においては、適応等化処理部13−1乃至13−3により、各1係数に対して対応する最大の入力データ数が異なる3種の等化処理が並列して行われる。
その後、適応等化処理部13−1の出力と適応等化処理部13−2の出力は、加算器14により加算され、加算器14からの出力と適応等化処理部13−3の出力は、加算器15により加算されて、後段に出力される。すなわち、加算器15からは、3次のボルテラフィルタを用いて適応等化された等化後データが出力される。
また、適応等化処理部13においては、上述した3次のボルテラフィルタは、例えば、LMSの適応等化で係数が更新される。
具体的に説明すると、誤差情報処理部17においては、時刻nにおけるPR等化の理想出力d(n)と、フィルタ出力(等化後データ)y(n)の差分が演算され、誤差情報(エラー信号)e(n)が出力される。誤差情報e(n)は、次の式(3)で表される。
そして、適応等化処理部13−1乃至13−3においては、式(3)の誤差情報e(n)を用いて、時刻n+1のフィルタ係数がLMSアルゴリズムでそれぞれ更新され、更新された時刻n+1の各フィルタ係数は、次の式(4)乃至式(6)で表される。
ここで、式(4)乃至式(6)におけるμ1、μ2、μ3は、それぞれステップゲインである。なお、式(4)乃至式(6)に示されるように、2次の項は、1次の項の入力の2乗、さらに、3次の項は、1次の項の入力の3乗となるので、通常は、μ1>μ2>μ3となる。
次に、信号処理装置1の動作について説明する。
光ディスク等の記録媒体より読み出された再生信号が入力端子11を介して、信号処理装置1に入力されると、信号処理装置1は、再生信号の信号処理を開始する。
信号処理装置1による信号処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。なお、図2の例においては、時刻nにおける処理を説明する。また、以降の処理の説明においても、特に言及しない場合、時刻nにおける処理を説明するものとする。
信号処理装置1の入力端子11を介して入力された再生信号は、必要に応じて図示せぬLPF(Low Pass Filter)により高域成分の遮断が行われて、量子化部12に入力される。
再生信号が入力されると、量子化部12は、ステップS1において、再生信号(アナログ信号)をデジタル信号(量子化データ)にA/D変換し、量子化データを、適応等化処理部13−1乃至13−3に出力し、ステップS2に進む。
量子化部12から量子化データが入力されると、適応等化処理部13は、ステップS2乃至S4において適応等化処理を実行する。
すなわち、適応等化処理部13−1は、量子化部12からの量子化データを、入力データx(n)として入力すると、ステップS2において、1次元のタップ数N1の適応等化処理を実行する。すなわち、適応等化処理部13−1は、式(1)の右辺の第1項として、所定の1次元のタップ数N1の演算を実行し、係数h1(i)と入力データ列(i)の積に対する総和を加算器14に出力し、ステップS3に進む。
なお、このとき、係数h1(i)は、必要に応じて、1つ前の時刻n-1の後述するステップS7において誤差情報処理部17から入力される誤差情報e(n-1)を用いてLMSアルゴリズムで、係数h1(n,i)として更新されている。
また、適応等化処理部13−1は、必要に応じて、係数h1(i)を、後述するステップS7において誤差情報処理部17から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(4)を用いて係数h1(n+1,i)として更新する。
適応等化処理部13−2は、量子化部12からの量子化データを、入力データx(n)として入力すると、ステップS3において、2次元のタップ数N2の適応等化処理を実行する。すなわち、適応等化処理部13−2は、式(1)の右辺の第2項として、所定の2次元のタップ数N2の演算を実行し、係数h2(i,j)と入力データ列(i)*入力データ列(j)の積に対する総和を加算器14に出力し、ステップS4に進む。
なお、ステップS2の場合と同様に、このとき、係数h2(i,j)は、必要に応じて、1つ前の時刻n-1の後述するステップS7において誤差情報処理部17から入力される誤差情報e(n-1)を用いてLMSアルゴリズムで、係数h2(n,i,j)として更新されている。
また、適応等化処理部13−1は、必要に応じて、係数h2(i,j)を、後述するステップS7において誤差情報処理部17から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(5)を用いて係数h2(n+1,i,j)として更新する。
適応等化処理部13−3は、量子化部12からの量子化データを、入力データx(n)として入力すると、ステップS4において、3次元のタップ数N3の適応等化処理を実行する。すなわち、適応等化処理部13−3は、式(1)の右辺の第3項として、所定の3次元のタップ数N3の演算を実行し、係数h3(i,j,k)と入力データ列(i)*入力データ列(j)*入力データ列(k)の積に対する総和を加算器15に出力し、ステップS5に進む。
なお、ステップS3の場合と同様に、このとき、係数h3(i,j,k)は、必要に応じて、1つ前の時刻n-1の後述するステップS7において誤差情報処理部17から入力される誤差情報e(n-1)を用いてLMSアルゴリズムで、係数h3(n,i,j,k)として更新されている。
また、適応等化処理部13−1は、必要に応じて、係数h3(i,j,k)を、後述するステップS7において誤差情報処理部17から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(6)を用いて係数h3(n+1,i,j,k)として更新する。
なお、上述したステップS2乃至S4は、必ずしもこの順番に行われなくてもよい。すなわち、ステップS2乃至S4を並列で同時に動作せるようにしてもよいし、ステップS2乃至S4のうちのいずれかを先に動作させるようにしてもよい。
ステップS5において、加算器14および15は、適応等化処理部13−1乃至13−3からの出力を加算し、加算した結果である等化後データy(n)を、データ検出部16および誤差情報処理部17に出力し、ステップS6に進む。
すなわち、ステップS5においては、加算器14により適応等化処理部13−1の出力と適応等化処理部13−2の出力とが加算され、加算器15により加算器14からの出力と適応等化処理部13−3の出力とが加算される。すなわち、加算器15(適応等化処理部13)からは、適応等化処理部13−1乃至13−3からの総和が、等化後データy(n)として、データ検出部16および誤差情報処理部17に出力される。
データ検出部16は、ステップS6において、等化後データy(n)を、ビタビ復号し、チャネルビット列を誤差情報処理部17および同期検出復号部18に出力する。すなわち、データ検出部16は、等化後データy(n)に対して、例えば、PR(1,2,2,1)ML方式でビタビ復号を行うことにより、0と1の2値であるチャネルビット列を検出し、検出したチャネルビット列を、誤差情報処理部17および同期検出復号部18に出力し、ステップS7に進む。
誤差情報処理部17は、ステップS7において、誤差情報演算処理を実行する。すなわち、ステップS7において、誤差情報処理部17は、データ検出部16からのチャネルビット列からデータ検出部16で行ったPR等化の理想出力d(n)を得て、適応等化処理部13からの等化後データy(n)と理想出力d(n)の演算結果(例えば、差分)を、誤差情報e(n)として適応等化処理部13−1乃至13−3に出力し、ステップS8に進む。
ステップS7において出力された誤差情報e(n)は、時刻n+1のステップS2乃至S4の適応等化処理において必要に応じて用いられる。
同期検出復号部18は、ステップS8において、データ検出部16からのチャネルビット列から、所定の同期パターンを検出し、チャネルビット列の復号を行う。すなわち、同期検出復号部18は、データ検出部16からのチャネルビット列から、所定の同期パターンを検出し、検出した同期パターンに基づいて、チャネルビット列を所定の位置から復号し、その復号結果であるデコードデータを出力端子19に出力する。これにより、時刻nにおける信号処理は終了される。
以上のように、入力されるデータを、3次元ボルテラフィルタを用いて適応等化処理するようにしたので、この信号処理により得られたデコードデータは、高線密度における再生時に、2次元ボルテラフィルタを用いるよりも有効に波形の歪みが補正される。
これにより、エラーレートが改善され、記録媒体の再生において、信号処理装置1を用いることにより、より安定したデータが再生される。
図3は、本発明を適用した信号処理装置の他の構成例を表している。
図3の信号処理装置31は、図1の信号処理装置1に、適応等化制御部41が追加された点が異なるだけであり、対応する部分には対応する符号が付してあり、基本的に同じ構成であるのでその詳細な説明は適宜省略する。なお、図3の信号処理装置31の適応等化処理部13−1乃至13−3においては、係数更新の実行が初期設定として設定されており、係数更新が実行されるものとする。また、以降に説明する信号処理装置の適応等化処理部13−1乃至13−3においても、特に言及しなくても初期設定により係数更新が実行されるものとする。
図3の例において、適応等化制御部41は、所定の情報に基づいて、適応等化処理部13の各部(適応等化処理部13−1乃至13−3)の動作を設定することにより、適応等化処理部13−1乃至13−3を制御する。所定の情報とは、再生される記録媒体の種別の情報や記録媒体の再生時に、摂動等の特別な現象が発生した際の情報、すなわち、記録媒体内での突発的な発生情報などである。
例えば、適応等化制御部41には、図示せぬ再生制御部などから、所定の情報の一例としての再生対象の記録媒体の種別の情報が入力される。すなわち、適応等化制御部41は、入力される記録媒体の種別情報に基づいて、適応等化処理部13−1乃至13−3のうちの所定の適応等化処理部13の動作のON/OFFや係数更新のゲインの変更を設定する。なお、係数更新のゲインの変更に応じて、係数更新の速度が変更可能である。
この記録媒体の種別の情報とは、例えば、ディスクの密度に関する情報(高密度ディスク、低密度ディスクなど)、ディスクの書き換えに関する情報(書き換え可能、リードオンリーなど)、またはディスクフォーマットの情報(Blu-ray Discフォーマット、DVDフォーマットなど)があげられる。
具体的には、記録媒体の種別情報がディスクの密度に関する情報であった場合、適応等化制御部41は、再生するディスクの密度に応じて判定を行い、例えば、高密度ディスクのとき、すべての適応等化処理部13−1乃至13−3を動作させる(動作ONに設定する)のに対して、密度の低いディスクのとき、適応等化処理部13−3のみ、あるいは、適応等化処理部13−2および13−3の動作を停止(禁止)させる(動作OFFに設定する)ように制御する。
なお、動作OFFに設定された場合、適応等化処理部13−1乃至13−3においては、信号がスルーされるか、または、固定の係数で動作が実行される。
記録媒体の種別情報がディスクの書き換えに関する情報であった場合、適応等化制御部41は、再生するディスクが書き換え可能であるか否かに応じて判定を行い、例えば、ROM(Read Only Memory)ディスクのとき、すべての適応等化処理部13−1乃至13−3を動作させるのに対して、リライタブル(書き換え可能な)ディスクのとき、適応等化処理部13−3のみ、あるいは、適応等化処理部13−2および13−3の動作を停止させるように制御する。
記録媒体の種別情報がディスクフォーマットの情報であった場合、適応等化制御部41は、再生するディスクフォーマットの情報に応じて判定を行い、例えば、Blu-ray Discフォーマットのディスクのとき、すべての適応等化処理部13−1乃至13−3を動作させるのに対して、DVDフォーマットのディスクのとき、適応等化処理部13−3のみ、あるいは、適応等化処理部13−2および13−3の動作を停止させるように制御する。
なお、実際にフォーマットが変わる場合には、光学的なデータ読み取りの他、クロックや回転速度、PRML後の同期信号や復調テーブルなども切り替わる必要がある。
さらに、所定の情報の一例でとしての、記録媒体の再生時に、摂動等の特別な現象が発生した際の情報、すなわち、記録媒体内での突発的な発生情報について詳しく説明する。
例えば、適応等化制御部41には、記録媒体の再生時の突発的な発生情報として、同期検出復号部18からの同期信号検出情報が入力される。すなわち、同期検出復号部18は、データ検出部16からのチャネルビットから、所定の同期パターンを検出し、検出した同期パターンに基づいて、所定の位置から復号を行うとともに、同期パターンを検出したか否かを通知する同期信号検出情報を適応等化制御部41に供給する。
この入力される同期信号検出情報に基づいて、適応等化制御部41は、適応等化処理部13−1乃至13−3のうちの所定の適応等化処理部13の動作のON/OFFや係数更新のゲインの変更を設定する。
具体的には、記録媒体の再生時の突発的な発生情報が、同期検出復号部18からの同期信号検出情報であった場合、適応等化制御部41は、同期信号が安定して検出されているか否かに応じて判定を行い、例えば、同期信号が安定しているとき、適応等化処理部13−3のみ、あるいは、適応等化処理部13−2および13−3の動作を停止させるのに対して、同期信号が安定していないとき、すべての適応等化処理部13−1乃至13−3を動作させるように制御する。
すなわち、摂動の厳しいところにおいて各適応等化処理部13−1乃至13−3に対して個別な設定を与えることができる。
次に、信号処理装置31の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。なお、信号処理装置31の信号処理については、図2を参照して上述した信号処理と基本的に同様の処理を行うため、図4においては、適応等化制御部41の動作についてのみ、具体的に説明する。
例えば、光ディスク等の記録媒体が装着された場合、図示せぬ再生制御部は、光ピックアップなどで構成される読み出し部を制御して、記録媒体から特定の信号を読み出させることにより、記録媒体の種別を判別し、記録媒体の種別情報を、適応等化制御部41に供給する。
記録媒体の種別情報が入力されると、適応等化制御部41は、ステップS21において、記録媒体の情報(例えば、記録媒体の種別情報)を取得し、ステップS22に進み、上述したように記録媒体の種別情報に基づいて、適応等化処理部の動作(動作のON/OFFや係数更新ゲイン)を設定し、ステップS23に進む。
例えば、適応等化制御部41は、記録媒体の種別情報に基づいて、記録媒体が高密度ディスクであると判定し、すべての適応等化処理部13−1乃至13−3を動作させるように設定する。
一方、光ディスク等の記録媒体より読み出された再生信号が入力端子11を介して、信号処理装置31に入力されてくるので、信号処理装置31の各部は、ステップS23において、図2を参照して上述した信号処理を実行し、ステップS24に進む。
すなわち、ステップS23の信号処理により、量子化部12からの量子化データが入力データx(n)として、適応等化処理部13−1乃至13−3に入力される。このとき、各適応等化処理部13−1乃至13−3は、ステップS22において適応等化制御部41により設定された動作の内容(動作のON/OFFや係数更新ゲイン)に応じて、各次元の係数を更新し、入力データx(n)と係数の演算を行い、加算器14および15を介して、演算結果である等化後データy(n)を、データ検出部16および誤差情報処理部17に出力する。
等化後データy(n)は、データ検出部16により検出されたチャネルビット列として、同期検出復号部18に出力される。同期検出復号部18は、データ検出部16により検出されたチャネルビット列から所定の同期パターンを検出し、検出した同期パターンに基づいて、チャネルビット列を所定の位置から復号し、その復号結果であるデコードデータを出力端子19に出力するとともに、同期パターンを検出したか否かを通知する同期信号検出情報を適応等化制御部41に出力してくる。
これに対応して、適応等化制御部41は、ステップS24において、同期検出復号部18からの同期信号検出情報を取得し、ステップS25に進み、同期信号検出情報に基づいて、適応等化処理部の動作を変更するか否かを判定する。
例えば、同期信号検出情報に基づいて、同期信号が安定していると判定し、適応等化処理部13−3の動作を停止させる場合、適応等化制御部41は、ステップS25において、適応等化処理部13の動作を変更すると判定し、ステップS22に戻り、それ以降の処理を繰り返す。すなわち、ステップS22において、適応等化制御部41により適応等化処理部13の動作の設定が変更され、ステップS23においては、変更された動作の設定に応じて、信号処理が実行される。
また、同期信号検出情報に基づいて、同期信号が安定していないと判定された場合、適応等化制御部41は、ステップS25において、適応等化処理部の動作を変更しないと判定し、ステップS26に進み、記録媒体の再生処理を終了するか否かを判定する。
適応等化制御部41は、図示せぬ再生制御部からの停止信号に基づいて、ステップS26において、記録媒体の再生処理を終了すると判定した場合、適応等化制御処理を終了する。
また、ステップS26において、記録媒体の再生処理を終了しないと判定された場合、処理は、ステップS23に戻り、それ以降の処理を繰り返す。すなわち、ステップS23においては、変更されない動作の設定に応じて、信号処理が実行される。
以上のように、ディスクの種別に応じて、あるいは、摂動状況に応じて、適応等化処理部13−1乃至13−3の動作を制御するようにしたので、例えば、高線密度の場合や摂動の厳しいところでは、適応等化処理部13−1乃至13−3を適用させることにより、エラーレートを改善させ、高線密度ではない場合や摂動の厳しくないところでは、適応等化処理部13−3を停止させて、電力消費を抑えるなど、状況に応じた適応等化処理を行うことができる。
図5は、本発明を適用した信号処理装置のさらに他の構成例を表している。
図5の信号処理装置51は、所定のチャネルビット周波数にデータを同期させるデジタルPLL(Phase Locked Loop)61が追加され、誤差情報処理部17に代わって誤差情報処理部62が追加された点が図3の信号処理装置31と異なるだけであり、図1および図3の例に対応する部分には対応する符号が付してあり、基本的に同じ構成であるのでその詳細な説明は適宜省略する。
すなわち、図5の信号処理装置51においては、デジタルPLL61の前段まで、オーバーサンプリングで処理されてきたデータが、デジタルPLL61において、所望のサンプルに同期され、同期サンプルデータが出力される。
なお、説明の便宜上、図示を省略するが、図5の適応等化制御部41からの矢印は、図3の適応等化制御部41からの矢印と同様に、適応等化処理部13−1乃至13−3にそれぞれ入力されており、適当等化処理部13−1乃至13−3は、それぞれ、適応等化制御部41による動作の設定に応じて処理を実行する。
図5の例においては、量子化部12は、非同期で任意のクロックでA/D変換を行っている。このA/D変換におけるサンプリング(動作)周波数は、デジタルPLL61が同期させる所定のチャネルビット周波数に同期しておらず、所定のチャネルビット周波数に対してわずかに高い周波数(例えば、チャネルビット周波数の8/7倍)となっている。
すなわち、量子化部12は、チャネルビット周波数の8/7倍のオーバーサンプリングで、A/D変換を行い、量子化データを適応等化処理部13−1乃至13−3に出力する。
適応等化処理部13−1乃至13−3においては、オーバーサンプリングされた入力データに対して、それぞれ、適応等化制御部41による動作の設定に応じて、図3と同様の適応等化処理が行われ、各適応等化処理部13−1乃至13−3からの出力は、加算器14または加算器15に出力される。
すなわち、適応等化処理部13−1の出力と適応等化処理部13−2の出力は、加算器14において加算され、加算器14からの出力と適応等化処理部13−3の出力は、加算器15において加算され、加算器15からは、適応等化処理部13−1乃至13−3からの総和が等化後データとして、デジタルPLL61に出力される。
デジタルPLL61は、オーバーサンプリングで処理されてきた等化後データを、所望のサンプル(すなわち、所定のチャネルビット周波数)に同期させて、等化後同期サンプルデータとして、データ検出部16および誤差情報処理部62に出力する。また、デジタルPLL61は、サンプル同期の際の位相に関する情報を誤差情報処理部62に供給している。
データ検出部16は、入力される等化後同期サンプルに対して、例えば、PR(1,2,2,1)ML方式でビタビ復号を行うことにより、0と1の2値であるチャネルビット列を検出し、誤差情報処理部62および同期検出復号部18に出力する。すなわち、同期サンプルのチャネルビット列が、誤差情報処理部62および同期検出復号部18に出力される。
誤差情報処理部62は、誤差情報処理部17と同様に、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列からデータ検出部16で用いられたPR等化の理想出力を得て、適応等化処理部13からの等化後データと理想出力の演算結果(例えば、差分)を、誤差情報として適応等化処理部13−1乃至13−3に出力する。
なお、このとき、誤差情報処理部62は、デジタルPLL61からの位相に関する情報に基づいて、誤差情報に対し、サンプリング周波数(オーバーサンプリング)に応じた補正を行ってから、適応等化処理部13−1乃至13−3に出力する。この補正処理については、図8を参照して詳しく後述する。
同期検出復号部18は、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列から所定の同期パターンを検出し、検出した同期パターンに基づいて、チャネルビット列を所定の位置から復号し、その復号結果である同期サンプルのデコードデータを出力端子19に出力する。このとき、図5の同期検出復号部18も、同期パターンを検出したか否かを通知する同期信号検出情報を適応等化制御部41に供給する。
次に、信号処理装置51の動作について説明する。
光ディスク等の記録媒体より読み出された再生信号が入力端子11を介して、信号処理装置1に入力されると、信号処理装置51は信号処理を開始する。
信号処理装置51による信号処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。なお、図6のステップS51乃至S55、S57、およびS59は、図2のステップS1乃至S6、およびS8と、同期に関する動作の説明が追加されている点が異なるが、その他の基本的な処理は略同様であるため、その詳細な説明は適宜省略する。
信号処理装置51の入力端子11を介して入力された再生信号は、必要に応じて図示せぬLPFにより高域成分の遮断が行われて、量子化部12に入力される。
再生信号が入力されると、量子化部12は、ステップS51において、所定のサンプリング(動作)周波数(例えば、チャネルビット周波数の8/7倍のオーバーサンプリング)で、再生信号(アナログ信号)をデジタル信号にA/D変換し、量子化データを、適応等化処理部13−1乃至13−3に出力し、ステップS52に進む。
量子化部12から量子化データが入力されると、適応等化処理部13は、ステップS52乃至S54において適応等化処理を実行する。
すなわち、適応等化処理部13−1は、量子化部12からの量子化データを、入力データx(n)として入力すると、ステップS52において、適応等化制御部41の制御のもと(すなわち、適応等化制御部41による動作の設定に基づいて)、1次元のタップ数N1の適応等化処理を実行する。すなわち、適応等化処理部13−1は、式(1)の右辺の第1項として、所定の1次元のタップ数N1の演算を実行し、係数h1(n,i)と入力データ列(i)の積に対する総和を加算器14に出力し、ステップS53に進む。
なお、このとき、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h1(n,i)は、1つ前の時刻n-1の後述するステップS58において誤差情報処理部62から入力される誤差情報e(n-1)を用いてLMSアルゴリズムで更新されている。
また、適応等化処理部13−1は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h1(n,i)を、後述するステップS58において誤差情報処理部62から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(4)を用いて係数h1(n+1,i)として更新する。
適応等化処理部13−2は、量子化部12からの量子化データを、入力データx(n)として入力すると、ステップS53において、2次元のタップ数N2の適応等化処理を実行する。すなわち、適応等化処理部13−2は、式(1)の右辺の第2項として、所定の2次元のタップ数N2の演算を実行し、係数h2(n,i,j) と入力データ列(i)* 入力データ列(j)の積に対する総和を加算器14に出力し、ステップS54に進む。
なお、ステップS52の場合と同様に、このとき、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h2(n,i,j)は、1つ前の時刻n-1の後述するステップS58において誤差情報処理部62から入力される誤差情報e(n-1)を用いてLMSアルゴリズムで、更新されている。
また、適応等化処理部13−2は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h2(n,i,j)を、後述するステップS58において誤差情報処理部62から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(5)を用いて係数h2(n+1,i,j)として更新する。
適応等化処理部13−3は、量子化部12からの量子化データを、入力データx(n)として入力すると、ステップS54において、3次元のタップ数N3の適応等化処理を実行する。すなわち、適応等化処理部13−3は、式(1)の右辺の第3項として、所定の3次元のタップ数N3の演算を実行し、係数h3(n,i,j,k)と入力データ列(i)* 入力データ列(j) * 入力データ列(k)の積に対する総和を加算器15に出力し、ステップS55に進む。
なお、ステップS52の場合と同様に、このとき、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h3(n,i,j,k)は、1つ前の時刻n-1の後述するステップS58において誤差情報処理部62から入力される誤差情報e(n-1)を用いてLMSアルゴリズムで、更新されている。
また、適応等化処理部13−3は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h3(n,i,j,k)を、後述するステップS58において誤差情報処理部62から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(6)を用いて係数h3(n+1,i,j,k)として更新する。
これらのステップS52乃至S54における適応等化処理は、対象となるデータ列および次元が異なるだけであり基本的な処理は同様であるので、その詳細は、図9を参照してまとめて後述する。
なお、上述したステップS52乃至S54は、必ずしもこの順番に行われなくてもよい。すなわち、ステップS52乃至S54を並列で同時に動作せるようにしてもよいし、ステップS52乃至S54のうちのいずれかを先に動作させるようにしてもよい。
ステップS55において、加算器14および15は、適応等化処理部13−1乃至13−3からの出力を加算し、加算した結果である等化後データy(n)を、デジタルPLL61に出力し、ステップS56に進む。
デジタルPLL61は、ステップS56において、位相同期処理を実行する。すなわち、ステップS56において、デジタルPLL61は、オーバーサンプリングで処理されてきた等化後データy(n)を、所定のチャネルビット周波数に同期させ、同期させた等化後同期サンプルデータを、データ検出部16および誤差情報処理部62に出力し、ステップS57に進む。なお、このとき、デジタルPLL61は、サンプル同期の際の位相に関する情報も、誤差情報処理部62に供給する。この位相同期処理の詳細は、図11を参照して後述する。
データ検出部16は、ステップS57において、等化後同期サンプルデータy(n)を、例えば、ビタビ復号し、0と1の2値であるチャネルビット列を検出し、検出したチャネルビット列を誤差情報処理部62および同期検出復号部18に出力し、ステップS58に進む。
誤差情報処理部62は、ステップS58において、誤差情報演算処理を実行する。すなわち、ステップS58において、誤差情報処理部62は、データ検出部16からのチャネルビット列からデータ検出部16で行ったPR等化の理想出力d(n)を得て、適応等化処理部13からの等化後データy(n)と理想出力d(n)の差分を演算する。
さらに、誤差情報処理部62は、演算した結果に対して、デジタルPLL61からの位相に関する情報に基づいて、サンプリング周波数(オーバーサンプリング)に応じた補正を行い、誤差情報e(n)として適応等化処理部13−1乃至13−3に出力し、ステップS59に進む。この誤差情報演算処理の詳細は、図11を参照して後述する。
ステップS58において出力された誤差情報e(n)は、次の時刻n+1のステップS52乃至S54の適応等化処理において、適応等化制御部41の動作の設定に応じて用いられる。
同期検出復号部18は、ステップS59において、データ検出部16からのチャネルビット列から、所定の同期パターンを検出し、チャネルビット列を復号し、その復号結果である同期サンプルのデコードデータを出力端子19に出力する。なお、このとき、同期検出復号部18は、同期パターンを検出したか否かを通知する同期信号検出情報を適応等化制御部41に供給する。これに応じて、適応等化制御部41による図4のステップS25の処理が判定される。
以上により、時刻nにおける信号処理は終了される。
以上のように、入力されるデータを、3次元ボルテラフィルタを用いて適応等化処理するようにしたので、この信号処理により得られたデコードデータは、高線密度における再生時に、2次元ボルテラフィルタを用いるよりも有効に波形の歪みが補正される。
これにより、エラーレートが改善され、記録媒体の再生において、信号処理装置51を用いることにより、より安定したデータが再生される。
図7は、図5の信号処理装置のより詳細な構成例を表している。
図7の例においては、信号処理装置51の適応等化処理部13−1は、FIR(Finite Impulse Response)演算部71−1および係数更新部72−1から構成され、適応等化処理部13−2は、FIR演算部71−2および係数更新部72−2から構成され、適応等化処理部13−1は、FIR演算部71−3および係数更新部72−3から構成される。
量子化部12からの量子化データは、入力データx(n)として、FIR演算部71−1乃至71−3および係数更新部72−1乃至72−3に入力される。なお、以下、FIR演算部71−1乃至71−3および係数更新部72−1乃至72−3を個々に区別する必要がない場合、適宜、それぞれFIR演算部71および係数更新部72と称する。
FIR演算部71−1は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、時刻n-1において係数更新部72−1により演算された係数h1(n,i)(または固定の係数)と、時刻nにおいて入力された入力データx(n)の入力データ列(i)を演算する適応等化処理を行い、係数h1(n,i)と入力データ列(i)の積に対する総和を加算器14に出力する。
係数更新部72−1は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、時刻nにおいて入力された入力データx(n)と、位相補間補正部93から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(4)の演算を行うことにより、時刻n+1の係数h1(n+1,i)を更新する。
FIR演算部71−2は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、時刻n-1において係数更新部72−2により演算された係数h2(n,i,j)(または固定の係数)と、時刻nにおいて入力される入力データx(n)の入力データ列(i,j)を演算する適応等化処理を行い、係数h2(n,i,j)と入力データ列(i)*入力データ列(j)の積に対する総和を加算器14に出力する。
係数更新部72−2は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、時刻nにおいて入力された入力データx(n)と、位相補間補正部93から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(5)の演算を行うことにより、時刻n+1の係数h2(n+1,i,j)を更新する。
FIR演算部71−3は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、時刻n-1において係数更新部72−3により演算された係数h3(n,i,j,k)(または固定の係数)と時刻nにおいて入力される入力データx(n)の入力データ列(i,j,k)を演算する適応等化処理を行い、係数h3(n,i,j,k)と入力データ列(i)*入力データ列(j)*入力データ列(k)の積に対する総和を加算器15に出力する。
係数更新部72−3は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、時刻nにおいて入力された入力データx(n)と、位相補間補正部93から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(6)の演算を行うことにより、時刻n+1の係数h3(n+1,i,j,k)を更新する。
なお、図7の係数更新部72においては、例えば、所定のサンプリング周波数に同期して演算が実行される。
また、係数更新部72に入力される位相補間補正部93からの位相送り量の演算結果は、多少遅延が発生する。したがって、係数更新部72においては、この更新演算処理について必要な2つの入力(すなわち、入力データx(n)と誤差情報e(n))に対して、タイミングが調整される。
デジタルPLL61は、位相補間部81および位相同期処理部82により構成される。
位相補間(ITR(Interpolated Timing Recovery))部81は、位相のみ送ることが可能なFIRフィルタなどで構成され、位相同期処理部82からの演算結果に応じて、適応等化処理部13からの等化後データの位相を送ったり、位相を間引いたりすることで、適応等化処理部13からの等化後データを、位相同期処理部82からの演算結果に応じた所定の位相で同期させる。そして、位相補間部81は、同期させた等化後同期サンプルデータを、位相同期処理部82、データ検出部16、および誤差情報処理部62のエラー演算処理部92に出力する。
具体的には、位相補間部81は、位相同期処理部82からの位相送り量の演算結果をアドレスとした位相送り量マップを有しており、位相同期処理部82から位相送り量の演算結果が入力されると、適応等化処理部13からの等化後データに対して、位相送り量マップに対する位相補間フィルタ処理を行う。また、位相補間部81は、誤差情報処理部62の位相補間補正部93に、図5において上述したサンプル同期の際の位相に関する情報として、位相送り量情報を供給する。位相送り量情報の詳細は、図8を参照して後述する。
位相同期処理部82は、位相補間部81からの等化後同期サンプルデータを入力することで、同期ループを構成しており、等化後同期サンプルデータに基づいて、位相送り量を演算し、位相送り量の演算結果を位相補間部81に供給する。
誤差情報処理部62は、PR等化部91、エラー演算処理部92、および位相補間補正部93により構成される。
PR等化部91は、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列を、データ検出部16で用いられたPR(例えば、PR(1,2,2,1))等化を行い、所定のレベル幅における理想PRレベルをエラー演算処理部92に出力する。
エラー演算処理部92は、位相補間部81からの等化後同期サンプルデータと、PR等化部91からの理想PRレベルを演算(例えば、差分)し、演算により得られた結果を、位相補間補正部93に出力する。また、エラー演算処理部92に入力される等化後同期サンプルデータには、多少遅延が発生する。したがって、エラー演算処理部92においては、演算について必要な2つの入力(すなわち、等化後同期サンプルデータと理想PRレベル)に対して、タイミングが調整される。
位相補間補正(ITR−1(inverse))部93は、デジタルPLL61の位相補間部81に対応するものであり、エラー演算処理部92からの出力と、デジタルPLL61の位相補間部81からの位相送り量の情報を用いて、位相補間部81により送られた位相を逆に補正する処理を行う。
すなわち、位相補間補正部93は、位相補間部81からの位相送り量情報を用いた位相逆送り量マップを有しており、位相補間部81から位相送り量情報が入力されると、エラー演算処理部92からの出力に、位相逆送り量マップに対する位相補間フィルタ処理を行い、誤差情報として係数更新部72に出力する。これにより、誤差情報は、同期サンプルされる前の位相位置に戻される。
また、位相補間補正部93に入力される位相補間部81からの位相送り量情報には、多少遅延が発生する。したがって、位相補間補正部93においては、この位相逆補正処理について必要な2つの入力(すなわち、差分および位相送り量の演算結果)に対して、タイミングが調整される。
なお、位相補間補正部93における位相補正の方法を位相送り量の演算結果を用いた位相逆送り量マップを用いる場合を説明したが、例えば、文献「“A MMSE Interpolated Timing Recovery Scheme for The Magnetic Recording Channel ”,Zi-Ning Wu, John M. Cioffi, et al., Stanford Univ., 1997 IEEE p1625- p1629」に記載されているような直線補間を用いるようにしてもよい。
次に、図8を参照して、位相補間部81および位相補間補正部93の処理について説明する。
図8の例においては、等化後データの波形が示されており、等化後データの波形上には、オーバーサンプリング位置OP1乃至OP5と、位相補間部81によるPLLサンプリング位置PP1乃至PP4が示されている。
オーバーサンプリング位置OP1乃至OP5は、量子化部12によりサンプリングされた位置であり、位相補間部81に入力される等化後データは、オーバーサンプリング位置OP1乃至OP5でサンプリングされている。
位相補間部81は、オーバーサンプリング位置OP1を、位相同期処理部82からの演算結果に基づいて、位相量mu1−1で、PLLサンプリング位置PP1まで位相を送り、オーバーサンプリング位置OP2を、位相同期処理部82からの演算結果に基づいて、位相量mu1−2で、PLLサンプリング位置PP2まで位相を送る。
同様に、位相補間部81は、オーバーサンプリング位置OP3を、位相同期処理部82からの演算結果に基づいて、位相量mu1−3で、PLLサンプリング位置PP3まで位相を送る。量子化部12によりオーバーサンプリングされていることから、位相量mu1−1乃至1−3に示されるように、ステップ毎に送られる位相量が大きくなっている。
このため、あるオーバーサンプリング位置(図8の場合、オーバーサンプリング位置OP4)に位相量が進んだところで、間引き処理が行われる。すなわち、オーバーサンプリング位置OP4が間引かれるので、次のオーバーサンプリング位置OP5は、PLLサンプリング位置PP4まで位相が送られることになる。
なお、例えば、オーバーサンプル位置OP3が位相送りされる位相量mu1−3のステップ幅(細かさ)は、オーバーサンプリング位置OP3と位置OP4の128分割より求められている。
一方、位相補間補正部93には、位相補間部81により位相が送られたPLLサンプリング位置PP1乃至PP4でサンプリングされた等化後同期サンプルデータが入力される。
位相補間補正部93は、位相補間部81により送られたPLLサンプリング位置PP3を、もとのオーバーサンプリング位置OP3に戻すために、位相量mu2で位相を戻す。
ここで、例えば、位相量mu2のステップ幅(細かさ)は、PLLサンプリング位置PP3と位置PP2の128分割より求められている。すなわち、PLLサンプリングとオーバーサンプリングの位相量のステップ幅は異なっている。
しかしながら、位相送り量と位相戻し量(位相逆送り量)の関係は、位相量mu1−3と位相量mu2に示されるように、一意であるため、例えば、位相補間部81において、それぞれの位置の位相量(サンプルの移動量)を保持し、それを位相補間部81における位相送り量情報として供給すれば、位相補間補正部93において、これを演算することで、位相戻し量を得ることができる。
以上のように、位相補間補正部93においては、位相補間部81からの位相送り量情報を用いて、位相誤差情報が同期サンプルされる前の位相に戻されて、係数更新部72に供給される。これにより、係数更新部72においては、より望ましい更新演算が可能になる。
次に、図9のフローチャートを参照して、適応等化処理部13−3の適応等化処理の例を説明する。すなわち、図9は、図6のステップS54の3次元のタップ数N3の適応等化処理の例である。なお、図6のステップS52およびS53の適応等化処理も対象となる次元が異なるだけであり、図9の処理と基本的に同様の処理を行うため、その説明は省略する。
FIR演算部71−3は、ステップS71において、量子化データを入力データx(n)として入力すると、ステップS72に進み、適応等化制御部41の動作の設定に基づいて、適応等化処理がONであるか否かを判定する。
例えば、適応等化制御部41により、同期検出復号部18からの同期信号検出情報に基づいて同期信号が安定して検出されていると判定されて、適応等化処理部13−3の動作が停止(禁止)されるように設定されている場合、ステップS72において、適応等化処理がOFFであると判定され、FIR演算部71−3は、適応等化処理をせずに、ステップS75に進む。
一方、ステップS72において、適応等化処理がONであると判定された場合、FIR演算部71−3は、ステップS73に進み、係数更新部72−3により1つ前の時刻n-1において更新された係数h3(n,i,j,k)を用いて、時刻nにおいて入力された量子化データ(入力データ)x(n)の入力データ列(i,j,k)を演算し、ステップS74に進む。
FIR演算部71−3は、ステップS74において、ステップS73の演算結果、すなわち、係数h3(n,i,j,k)と入力データ列(i)*入力データ列(j)*入力データ列(k)の積に対する総和を加算器15に出力する。
その後、加算器15からの加算した結果である等化後データy(n)は、デジタルPLL61により所定の周波数に同期され、等化後同期サンプルデータy(n)としてデータ検出部16および誤差情報処理部62に出力される。
誤差情報処理部62は、上述した図6のステップS58において、データ検出部16からのチャネルビット列から、データ検出部16で行ったPR等化の理想出力d(n)を得て、デジタルPLL61からの等化後サンプルデータy(n)と理想出力d(n)の差分を演算し、演算した結果に対して、デジタルPLL61からの位相に関する情報に基づいて、サンプリング周波数に応じた補正を行い、誤差情報e(n)として係数更新部72−1乃至72−3に出力する。
係数更新部72−3は、ステップS75において、誤差情報処理部62からの誤差情報e(n)を入力し、ステップS76に進み、適応等化制御部41の動作の設定に基づいて、係数を更新するか否かを判定する。
例えば、適応等化制御部41により係数更新を行うと設定されている場合、ステップS76において、係数を更新すると判定され、係数更新部72−3は、ステップS77に進み、時刻nにおいて入力された入力データx(n)と、位相補間補正部93から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(6)の演算を行うことにより、次の時刻n+1の係数h3(n+1,i,j,k)を更新し、適応等化処理を終了し、図6のステップS54に戻り、ステップS55に進む。なお、このとき、適応等化制御部41により係数更新ゲインが設定されていれば、それに基づいて係数更新が行われる。
そして、ステップS77において更新された係数h3(n+1,i,j,k)は、次の時刻n+1のステップS73においてFIR演算部71−3により用いられる。
また、ステップS76において、係数を更新しないと判定された場合、係数更新部72−3により係数は更新されず、適応等化処理は終了され、処理は、図6のステップS54に戻り、ステップS55に進む。なお、この場合の次の時刻n+1のステップS73においては、更新されなかった係数、すなわち、固定の係数が用いられて、FIR演算部71−3の演算が実行される。
次に、図10のフローチャートを参照して、デジタルPLL61の位相同期処理の例を説明する。なお、図10は、図6のステップS56の位相同期処理の例である。
加算器15を介して、適応等化処理部13からの等化後データが入力されると、位相補間部81は、ステップS81において、1時刻前のステップS83において位相同期処理部82により演算された位相送り量の演算結果に基づいて、位相補間フィルタ処理を行うことにより、等化後データを所定の位相で同期させ、ステップS82に進む。
すなわち、位相補間部81は、位相同期処理部82からの位相送り量の演算結果をアドレスとした位相送り量マップを有しており、位相同期処理部82から位相送り量の演算結果が入力されると、位相送り量マップに対する位相補間フィルタ処理を行う。
位相補間部81は、ステップS82において、ステップS81のフィルタ処理結果としての等化後同期サンプルデータを、位相同期処理部82、データ検出部16、および誤差情報処理部62のエラー演算処理部92に出力し、ステップS83に進む。なお、このとき、位相補間部81は、誤差情報処理部62の位相補間補正部93に、位相送り量情報を供給する。
位相補間部81から等化後同期サンプルデータが入力されると、位相同期処理部82は、ステップS83において、等化後同期サンプルデータを用いて位相送り量を演算し、位相送り量の演算結果を位相補間部81に供給し、位相同期処理を終了し、図6のステップS56に戻り、ステップS57に進む。
なお、この位相送り量の演算結果は、1時刻以上後のステップS81において位相補間部81により用いられる。
次に、図11のフローチャートを参照して、誤差情報処理部62の誤差情報処理を説明する。なお、図11は、図6のステップS58の誤差情報処理の例である。
図6のステップS57において、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列が入力される。
PR等化部91は、ステップS91において、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列に対して、所定のPR等化、すなわちデータ検出部16で用いられたPR(1,2,2,1)等化を行い、所定のレベル幅における理想PRレベルをエラー演算処理部92に出力し、ステップS92に進む。
PR等化部91から理想PRレベルが入力されると、エラー演算処理部92は、ステップS92において、位相補間部81からの等化後同期サンプルデータと、PR等化部91からの理想PRレベルを演算(例えば、差分)し、演算により得られた結果を、位相補間補正部93に出力し、ステップS93に進む。なお、このとき、エラー演算処理部92においては、等化後同期サンプルデータと理想PRレベルに対して、タイミングが調整されている。
エラー演算処理部92からの結果が入力されると、位相補間補正部93は、ステップS93において、エラー演算処理部92からの結果と、デジタルPLL61の位相補間部81からの位相送り量の情報を用いて、位相の逆補正を行い、ステップS94に進み、位相の逆補正の結果を、誤差情報として係数更新部72に出力し、誤差情報処理を終了し、図6のステップS58に戻り、ステップS59に進む。
ステップS93およびS94の処理を具体的に説明すると、位相補間補正部93は、位相補間部81からの位相送り量情報を用いた位相逆送り量マップを有しており、位相補間部81から位相送り量情報が入力されると、エラー演算処理部92からの結果に対して、位相逆送り量マップに対する位相補間フィルタ処理を行い、その結果を、誤差情報として係数更新部72に出力する。これにより、誤差情報は、同期サンプルされる前の位相位置に戻される。
なお、位相補間補正部93においては、エラー演算処理部92からの結果(例えば、差分)および位相送り量の演算結果に対して、タイミングが調整されている。
以上のように、位相補間部81および位相補間補正部93において、それぞれ位相送り量マップおよび位相逆送り量マップを有し、位相補間部81から位相送り量情報を供給するようにしたので、従来のように直線補間を行うよりも戻される位相の精度が向上する。
したがって、位相補間補正部93においては、位相補間部81からの位相送り量情報を用いて、位相誤差情報が同期サンプルされる前の位相に、より確からしく戻されて、係数更新部72に供給される。これにより、係数更新部72においては、より望ましい更新演算が可能になる。
図12は、本発明を適用した信号処理装置の他の構成例を表している。なお、図12の信号処理装置101は、位相同期処理部82から、係数更新部72に対して、位相補間部81による位相補間を行ったタイミングに関する情報が入力されている点が異なるだけであり、その他の構成は、図7の信号処理装置51と基本的に同様の構成をしているので、その説明は適宜省略する。
図8を参照して上述したように、位相補間部81に入力される等化後データは、オーバーサンプリングされているため、位相補間部81においては、あるオーバーサンプリング位置(図8の場合、オーバーサンプリング位置OP4)に位相量が進んだところで、間引き処理が行われている。
したがって、位相補間部81により位相が送られた等化後同期サンプルデータを用いて得られる誤差情報は、位相補間補正部93において位相が、同期サンプルされる前の位相位置に戻されたとしても、位相補間部81において間引かれなかったクロック分しかない。
例えば、チャネルビット周波数の8/7倍のオーバーサンプリングされていた場合には、8クロックのうち、1クロック分の誤差情報は演算されていない。
したがって、上述した図7の係数更新部72においては、サンプリング周波数に同期して演算が実行されるので、8クロックのうち、1クロックは、例えば、前のクロックの誤差情報を用いて係数更新処理が行われている。
そこで、図12の例においては、位相同期処理部82は、サンプルデータの間引きを行ったタイミングを示すフラグ(すなわち、係数更新部72に係数更新処理を休ませるためのフラグ)を、間引き位置情報として、係数更新部72に供給する。
係数更新部72は、位相同期処理部82から供給される間引き位置情報に基づいて、例えば、8クロックのうち、1クロックは、係数更新を行わない。
これにより、誤差情報がないクロックでの無駄な係数更新処理を行わずにすむので、より性能が向上し、さらに電力消費を抑えることができる。
なお、間引き位置情報は、サンプルデータの間引きを行ったタイミングを示すフラグに限らず、例えば、サンプルデータの間引きを行ったクロックを発生させないようにしたチャネルビット周波数に同期した信号であってもよい。すなわち、サンプルデータの間引きを行ったタイミングがわかる情報であればよい。
次に、信号処理装置101の動作について説明するが、信号処理装置101による信号処理については、図5および図7の信号処理装置51の処理と基本的に同様の処理を行うため、その説明は繰り返しになるので省略し、信号処理装置51の処理と異なる処理である、デジタルPLL61の位相同期処理と、それに対応した係数更新部72の係数更新処理についてのみ説明する。
まず、図13のフローチャートを参照して、図12のデジタルPLL61の位相同期処理の例を説明する。なお、図6のステップS56の位相同期処理の例であり、図10の位相同期処理の他の例である。すなわち、図13のステップS121乃至S123は、図10のステップS81乃至S83と基本的に同様の処理であるため、その詳細な説明は省略する。
加算器15を介して、適応等化処理部13からの等化後データが入力されると、位相補間部81は、ステップS121において、1時刻前のステップS123において位相同期処理部82により演算された位相送り量の演算結果に基づいて、位相補間フィルタ処理を行うことにより、等化後データを所定の位相で同期させ、ステップS122に進む。
位相補間部81は、ステップS122において、ステップS121のフィルタ処理結果としての等化後同期サンプルデータを、位相同期処理部82、データ検出部16、および誤差情報処理部62のエラー演算処理部92に出力し、ステップS123に進む。なお、このとき、位相補間部81は、誤差情報処理部62の位相補間補正部93に、位相送り量情報を供給する。
位相補間部81から等化後同期サンプルデータが入力されると、位相同期処理部82は、ステップS123において、等化後同期サンプルデータを用いて位相送り量を演算し、位相送り量の演算結果を位相補間部81に供給し、ステップS124に進む。
位相同期処理部82は、ステップS124において、サンプルデータの間引きを行ったタイミングを示すフラグである間引き位置情報を、係数更新部72に供給し、位相同期処理を終了し、図6のステップS56に戻り、ステップS57に進む。
次に、図14のフローチャートを参照して、図12の係数更新部72−3の係数更新処理の例を説明する。なお、図14は、図9のステップS77の係数更新処理の他の例である。
図9のステップS75において、位置補間補正部93から誤差情報が入力され、ステップS76において適応等化制御部41の動作の設定に基づいて、係数を更新すると判定されている。
また、図12の係数更新部72−3には、上述した図13のステップS124において位相同期処理部82より間引き位置情報が供給されている。
係数更新部72−3は、ステップS131において、位相同期処理部82から供給される間引き位置情報のフラグがONであるか否かを判定し、間引き位置情報のフラグがONであると判定した場合、係数更新をする必要がないとし、係数更新をせずに、係数更新処理を終了し、図9のステップS77に戻り、適応等化処理を終了する。
一方、ステップS131において、間引き位置情報のフラグがOFFであると判定された場合、係数更新部72−3は、係数更新をする必要があるとし、ステップS132において、時刻nにおいて入力された入力データx(n)のデータ列(i,j,k)と、位相補間補正部93から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(6)の演算を行うことにより、次の時刻n+1の係数h3(n+1,i,j,k)を更新し、図9のステップS77に戻り、適応等化処理を終了する。
以上のように、図12の例においては、位相補間部81により間引き処理が行われたクロックでは、係数更新をさせないように、係数更新部72に、間引き位置情報を供給するようにしたので、無駄な演算が行われず、より性能が向上し、さらに電力消費を抑えることができる。特に、3段の係数更新部72−1乃至72−3が動作している場合にはかなり有効である。
図15を参照して、本発明の3次の適応等化ボルテラフィルタによる適応等化処理の効果について説明する。
図15の例においては、光ディスクのラジアル方向(ディスクの半径方向)の傾き(チルト)角度変化に対するエラーレートを示すグラフが示されており、横軸は、-1.0乃至1.3(deg)のディスクの半径方向の傾きを表しており、縦軸は、1.0E+00乃至1.0E-06のビットエラーレートを表している。
なお、図15の例の場合、重要なのは、各グラフがいわゆるバスタブカーブ(曲線)を得ることであるため、ディスクの半径方向の傾き=0.0度が、必ずしも摂動ゼロを示すものではない。
図15の各グラフは、波長405nm、NA=0.85の光源を用いて、光ディスクのラジアル方向の傾き角度を、プラス方向またはマイナス方向に摂動させて、容量が31GByte相当(直径12cm)の読み取り専用光ディスク(ROM)から最小ランd=1のRLL符号の再生データを取り込み、図12の信号処理装置101の構成において、次の3種類の方法で信号処理を行い、エラーレート測定を行った結果を示している。
グラフ121は、信号処理装置101において、適応等化処理部13−1のみを動作させて適応等化処理(すなわち、1次の適応等化処理)を行い、デジタルPLL61において同期サンプルを得たデジタルPLL61の出力を、データ検出部16によりビタビ復号PR(1,2,2,1)MLでチャネルビット化されたものを、オリジナルビット列と比較してエラーレートを計算した結果を示している。
グラフ122は、信号処理装置101において、適応等化処理部13−1および13−2を動作させて適応等化処理(すなわち、2次の適応等化処理)を行い、その後、グラフ121の場合と同様の処理によりチャネルビット化されたものをオリジナルビット列と比較してエラーレートを計算した結果を示している。
グラフ123は、信号処理装置101において、適応等化処理部13−1乃至13−3を動作させて適応等化処理(すなわち、本発明の3次の適応等化処理)を行い、その後、グラフ121の場合と同様の処理によりチャネルビット化されたものをオリジナルビット列と比較してエラーレートを計算した結果を示している。
すなわち、図15を見てわかるように、グラフ123は、どの傾き角度においても、グラフ121およびグラフ122に対してエラーレートが改善されている。特に、傾き角度の読み値が-0.2乃至+0.5(すなわち、バスタブカーブのボトム付近)においては、グラフ121が、エラーレートが略1.0E-04と1.0E-05の間を示し、グラフ122がエラーレートが略1.0E-05を示すのに対して、グラフ123は、エラーが略1.0E-06となった。なお、この場合のエラーレート測定サンプル数は、約120万サンプル数である。
以上のように、3次の適応等化処理を用いることにより、特に、ボトム付近におけるエラーレートは改善されるので、図12の信号処理装置101を備えた再生システムの安定性を向上させることができる。
さらに、ラジアル方向の傾き角度の大きいところ(すなわち、ビットエラーレートが1.0E-04より悪い位置)において、3次の適応等化処理を用いることでエラーレートが改善している。例えば、光ディスクのシステムフォーマットで、ECC(Error Check and Correct)が用いられる際の訂正可能な限界のラインが1.0E-04前後であるときは、ラジアル方向の傾き角度におけるドライブ性能のマージンを向上させることができる。
なお、図15の例においては、図12の信号処理装置101の構成を用いて3次適応等化処理の効果を説明したが、本実施の形態において説明される、3次適応等化処理を用いたその他の構成の信号処理装置(上述した信号処理装置1、31、および51、並びに後述する信号処理装置151、201、および251)についても、同様の効果が得られる。
図16は、本発明を適用した信号処理装置の他の構成例を表している。
図16の信号処理装置151は、アナログ等化部161およびデジタルPLL162が追加された点が、図3の信号処理装置31と異なるだけであり、図1および図3の例に対応する部分には対応する符号が付してあり、基本的に同じ構成であるのでその説明は繰り返しになるので、適宜省略する。
すなわち、図5の信号処理装置51において、適応等化処理部13の後段、かつ、データ検出部16の前段に配置されたデジタルPLL61が、図16の信号処理装置151においては、量子化部12の後段、かつ、適応等化処理部13の前段に配置されている。
図16の例において、アナログ等化部161は、入力された再生信号に、デジタルPLL162による位相同期のために予め設定されたアナログ等化を実行し、アナログ等化された信号を量子化部12に出力する。
アナログ等化部161におけるアナログ等化は、例えば、最小ラン出力を大きくするために高域強調を行うものである。なお、アナログ等化部161においては、適応等化ではなく、比較的簡素な等化が実行される。
量子化部12は、図5の量子化部12と同様に構成され、アナログ等化部161から入力されるアナログ等化された信号に対して、非同期で任意のクロック、例えば、チャネルビット周波数の8/7倍のオーバーサンプリングで、A/D変換を行い、量子化データを適応等化処理部13−1乃至13−3に出力する。
デジタルPLL162は、オーバーサンプリングで処理されてきた量子化データを、所望のサンプル(すなわち、所定のチャネルビット周波数)に同期させて、量子化同期サンプルデータとして、適応等化処理部13−1乃至13−3に出力する。
適応等化処理部13−1乃至13−3においては、同期された入力データに対して、それぞれ、適応等化制御部41による動作の設定に応じて、3次のボルテラフィルタを用いた適応等化処理が行われ、加算器14または加算器15に出力される。
すなわち、図16の信号処理装置151においては、デジタルPLL162の前段まで、オーバーサンプリングで処理されてきたデータが、デジタルPLL162において、所望のサンプルに同期され、同期サンプルデータが出力され、デジタルPLL162の後段である適応等化処理部13以降においては、同期サンプルデータが用いられて処理が実行される。
図17は、図16の信号処理装置のより詳細な構成例を表している。なお、図17の例において、図7の例に対応する部分には対応する符号が付してあり、基本的に同じ構成であるのでその説明は繰り返しになるので、適宜省略する。
図17の例においては、信号処理装置151のデジタルPLL162は、位相補間部181および位相同期処理部182により構成されている。
位相補間部181は、位相補間部81と同様に、位相のみ送ることが可能なFIRフィルタなどで構成され、位相同期処理部182からの演算結果に応じて、量子化部12からの量子化データの位相を送ったり、位相を間引いたりすることで、量子化部12からの量子化データを、位相同期処理部182からの演算結果に応じた所定の位相で同期させる。そして、位相補間部181は、同期させた量子化同期サンプルデータを、FIR演算部71−1乃至71−3および係数更新部72−1乃至72−3に出力する。
具体的には、位相補間部181は、位相同期処理部182からの位相送り量の演算結果をアドレスとした位相送り量マップを有しており、位相同期処理部182から位相送り量の演算結果が入力されると、量子化部12からの量子化データに対して、位相送り量マップに対する位相補間フィルタ処理を行う。
位相同期処理部182は、位相補間部181からの量子化同期サンプルデータを入力することで、同期ループを構成しており、量子化同期サンプルデータを用いて位相送り量を演算し、位相送り量の演算結果を位相補間部181に供給する。
適応等化処理部13−1は、図7の信号処理装置51と同様に、FIR(Finite Impulse Response)演算部71−1および係数更新部72−1から構成され、適応等化処理部13−2は、FIR演算部71−2および係数更新部72−2から構成され、適応等化処理部13−3は、FIR演算部71−3および係数更新部72−3から構成される。
各FIR演算部71は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、時刻nにおいて入力される量子化同期サンプルデータx(n)と各係数更新部72により演算された係数(または固定の係数)を演算し、その演算結果を出力する等化処理を行う。
各係数更新部72は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、前の時刻nにおいて入力された量子化同期サンプルデータx(n)と、誤差情報処理部17から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで演算を行うことにより、時刻n+1の係数を更新する。
誤差情報処理部62は、図7のPR等化部91、およびエラー演算処理部92により構成される。
PR等化部91は、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列を、データ検出部16で用いられたPR(例えば、PR(1,2,2,1))等化を行い、所定のレベル幅における理想PRレベルをエラー演算処理部92に出力する。
エラー演算処理部92は、加算器15からの等化後同期サンプルデータと、PR等化部91からの理想PRレベルを演算(例えば、差分)し、演算により得られた結果を、誤差情報として係数更新部72に出力する。また、エラー演算処理部92に入力される等化後同期サンプルデータには、多少遅延が発生する。したがって、エラー演算処理部92においては、演算について必要な2つの入力(すなわち、等化後同期サンプルデータと理想PRレベル)に対して、タイミングが調整される。
以上のように、信号処理装置151においては、位相補間部181および位相同期処理部182により構成される同期ループと、適応等化処理部13、データ検出部16および誤差情報処理部17により構成されるループがそれぞれ独立している。このため、ITRである位相補間部181に対応するITR−1としての図7の位相補間補正部93は必要なく、構成が簡単になる。
すなわち、図7を参照して上述したように、位相補間部81および位相同期処理部82により構成される同期ループが、適応等化処理部13、位相補間部81、データ検出部16および誤差情報処理部62により構成されるループに内包される信号処理装置51と較べて、単純な構成であり、安定させやすい。
これに対して、同期ループが、適応等化処理部13、位相補間部81、データ検出部16および誤差情報処理部62により構成されるループに内包される信号処理装置51は、信号処理装置151よりも、構成が複雑になる反面、より精度よく制御が行えるために性能がよいという利点がある。
次に、信号処理装置151の動作について説明する。
光ディスク等の記録媒体より読み出された再生信号が入力端子11を介して、信号処理装置151に入力されると、信号処理装置151は信号処理を開始する。
信号処理装置151による信号処理について、図18のフローチャートを参照して説明する。なお、図18のステップS154乃至S158、およびS160は、図6のステップS52乃至S55、S57、およびS59と、基本的な処理は略同様であるため、その詳細な説明は適宜省略する。
信号処理装置151の入力端子11を介して入力された再生信号は、アナログ等化部161に入力される。
再生信号が入力されると、アナログ等化部161は、ステップS151において、入力された再生信号に、デジタルPLL162による位相同期のために予め設定されたアナログ等化を行い、アナログ等化された信号を量子化部12に出力し、ステップS152に進む。
量子化部12は、アナログ等化された信号を入力すると、ステップS152において、所定のサンプリング(動作)周波数(例えば、チャネルビット周波数の8/7倍のオーバーサンプリング)で、アナログ等化された信号をデジタル信号にA/D変換し、量子化データを、デジタルPLL162に出力し、ステップS153に進む。
デジタルPLL162は、オーバーサンプリングで処理されてきた量子化データを、所望のサンプル(すなわち、所定のチャネルビット周波数)に同期させて、量子化同期サンプルデータとして、適応等化処理部13−1乃至13−3に出力し、ステップS154に進む。なお、ステップS153における位相同期処理は、図10を参照して上述した位相同期処理と基本的に同様の処理を行うため、その詳細な説明は省略する。
適応等化処理部13−1は、量子化同期サンプルデータを入力データx(n)として入力すると、ステップS154において、適応等化制御部41による動作の設定に基づいて、1次元のタップ数N1の適応等化処理を実行する。すなわち、FIR演算部71−1は、式(1)の右辺の第1項として、所定の1次元のタップ数N1の演算を実行し、係数h1(n,i)と入力データ列(i)の積に対する総和を加算器14に出力し、ステップS155に進む。
また、係数更新部72−1は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h1(i,j)を、後述するステップS159において誤差情報処理部17から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(4)を用いて係数h1(n+1,i)として更新する。
適応等化処理部13−2は、量子化同期サンプルデータを入力データx(n)として入力すると、ステップS155において、2次元のタップ数N2の適応等化処理を実行する。すなわち、FIR演算部71−2は、式(1)の右辺の第2項として、所定の2次元のタップ数N2の演算を実行し、係数h2(n,i,j)と入力データ列(i)*入力データ列(j)の積に対する総和を加算器14に出力し、ステップS156に進む。
また、係数更新部72−2は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h2(i,j)を、後述するステップS159において誤差情報処理部17から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(5)を用いて係数h2(n+1,i,j)として更新する。
適応等化処理部13−3は、量子化同期サンプルデータを入力データx(n)として入力すると、ステップS156において、3次元のタップ数N3の適応等化処理を実行する。すなわち、FIR演算部71−3は、式(1)の右辺の第3項として、所定の3次元のタップ数N3の演算を実行し、係数h3(n,i,j,k)と入力データ列(i)*入力データ列(j)*入力データ列(k)の積に対する総和を加算器15に出力し、ステップS157に進む。
また、係数更新部72−3は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、係数h3(n,i,j,k)を、後述するステップS159において誤差情報処理部17から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで、式(6)を用いて係数h3(n+1,i,j,k)として更新する。
これらのステップS154乃至S156における適応等化処理の詳細は、図9を参照して上述した適応等化処理と基本的な処理は同様であるので、その説明は省略する。
なお、上述したステップS154乃至S156も、ステップS52乃至S54と同様に、必ずしもこの順番に行われなくてもよい。すなわち、ステップS154乃至S156を並列で同時に動作せるようにしてもよいし、S154乃至S156のうちのいずれかを先に動作させるようにしてもよい。
ステップS157において、加算器14および15は、適応等化処理部13−1乃至13−3からの出力を加算し、加算した結果である等化後同期サンプルデータy(n)を、データ検出部16および誤差情報処理部17に出力し、ステップS158に進む。
データ検出部16は、ステップS158において、等化後データy(n)を、ビタビ復号し、チャネルビット列を誤差情報処理部17および同期検出復号部18に出力し、ステップS159に進む。
誤差情報処理部17は、ステップS159において、誤差情報演算処理を実行する。すなわち、ステップS159において、誤差情報処理部17は、データ検出部16からのチャネルビット列からデータ検出部16で行ったPR等化の理想出力d(n)を得て、適応等化処理部13からの等化後同期サンプルデータy(n)と理想出力d(n)の演算結果(例えば、差分)を、誤差情報e(n)として係数更新部72−1乃至72−3に出力し、ステップS160に進む。この誤差情報演算処理の詳細は、図19を参照して後述する。
ステップS160において出力された誤差情報e(n)は、次の時刻n+1のステップS154乃至S156の適応等化処理において必要に応じて用いられる。
同期検出復号部18は、ステップS160において、データ検出部16からのチャネルビット列から、所定の同期パターンを検出し、検出した同期パターンに基づいて、チャネルビット列を復号し、その復号結果である同期サンプルのデコードデータを出力端子19に出力する。なお、このとき、同期検出復号部18は、同期パターンを検出したか否かを通知する同期信号検出情報を適応等化制御部41に供給する。これに応じて、適応等化制御部41による図4のステップS25の処理が判定される。
以上により、時刻nにおける信号処理は終了される。
以上のように、入力データを、3次元ボルテラフィルタを用いて適応等化処理するようにしたので、この信号処理により得られたデコードデータは、高線密度における再生時に、2次元ボルテラフィルタを用いるよりも有効に波形の歪みが補正される。
また、信号処理装置151の構成によれば、簡単に構成することができ、安定性が向上される。
これにより、エラーレートが改善され、記録媒体の再生において、信号処理装置151を用いることにより、より安定したデータが再生される。
次に、図19のフローチャートを参照して、誤差情報処理部17の誤差情報処理を説明する。なお、図19は、図18のステップS159の誤差情報処理の例である。
図18のステップS158において、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列が入力される。
PR等化部91は、ステップS181において、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列に対して、所定のPR等化、すなわちデータ検出部16で用いられたPR(1,2,2,1)等化を行い、所定のレベル幅における理想PRレベルをエラー演算処理部92に出力し、ステップS182に進む。
PR等化部91から理想PRレベルが入力されると、エラー演算処理部92は、ステップS182において、演算器15からの等化後同期サンプルデータと、PR等化部91からの理想PRレベルを演算(例えば、差分)し、演算により得られた結果を、誤差情報として、係数更新部72に出力し、誤差情報処理を終了し、図18のステップS159に戻り、ステップS160に進む。なお、このとき、エラー演算処理部92においては、等化後同期サンプルデータと理想PRレベルに対して、タイミングが調整されている。
以上のように、信号処理装置151においては、位相補間部181および位相同期処理部182により構成される同期ループと、適応等化処理部13、データ検出部16および誤差情報処理部17により構成されるループがそれぞれ独立しており、誤差情報処理部17において、係数更新部72に出力する誤差情報に対して、位相を戻すことが必要ないので、信号処理装置151の構成が簡単になり、安定したシステムを構築することができる。
図20は、本発明を適用した信号処理装置のさらに他の構成例を表している。
図20の信号処理装置201は、量子化部12の前段のアナログ等化部161に代わって、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ211を、量子化部12の後段、かつデジタルPLL162の前段に配置した点が、図16の例の場合と異なるだけであり、図16の例に対応する部分には対応する符号が付してあり、基本的に同じ構成であるのでその説明は繰り返しになるので、適宜省略する。
すなわち、信号処理装置201においては、デジタルPLL162による位相同期のための等化が、アナログ等化部161によるアナログ信号を用いた等化の代わりに、FIRフィルタ211により量子化データに対して行われる。
したがって、量子化部12は、図5の量子化部12と同様に構成され、入力された再生信号に対して、非同期で任意のクロック、例えば、チャネルビット周波数の8/7倍のオーバーサンプリングで、A/D変換を行い、量子化データをFIRフィルタ211に出力する。
FIRフィルタ211は、量子化部12からの量子化データの高域成分を強調し、高域強調が強調された量子化データを、デジタルPLL162に出力する。
以上のように、信号処理装置201においても、信号処理装置151と同様に、位相補間部181および位相同期処理部182により構成されるデジタルPLL162内の同期ループと、適応等化処理部13、データ検出部16および誤差情報処理部17により構成されるループがそれぞれ独立しているので、誤差情報処理部17において、係数更新部72に出力する誤差情報に対して、位相を戻すことが必要ないので、信号処理装置201の構成が簡単になり、安定したシステムを構築することができる。
次に、信号処理装置201の動作について説明する。
光ディスク等の記録媒体より読み出された再生信号が入力端子11を介して、信号処理装置201に入力されると、信号処理装置201は信号処理を開始する。
信号処理装置201による信号処理について、図21のフローチャートを参照して説明する。
信号処理装置201の入力端子11を介して入力された再生信号は、必要に応じて図示せぬLPFにより高域成分の遮断が行われて、量子化部12に入力される。
再生信号が入力されると、量子化部12は、ステップS211において、所定のサンプリング(動作)周波数(例えば、チャネルビット周波数の8/7倍のオーバーサンプリング)で、アナログ等化された信号をデジタル信号にA/D変換し、量子化データを、FIRフィルタ211に出力し、ステップS212に進む。
FIRフィルタ211は、量子化部12からの量子化データが入力されると、ステップS212において、デジタルPLL162による位相同期のために量子化部12からの量子化データの高域成分を強調し、高域強調が強調された量子化データを、デジタルPLL162に出力し、ステップS213に進む。
なお、以下のステップS213乃至S220は、図18のステップS153乃至S160と、基本的な処理は同様であるため、その説明は繰り返しになるので省略する。
以上のように、入力される量子化データを、3次元ボルテラフィルタを用いて適応等化処理するようにしたので、この信号処理により得られたデコードデータは、高線密度における再生時に、2次元ボルテラフィルタを用いるよりも有効に波形の歪みが補正される。
また、信号処理装置201の構成によれば、簡単に構成することができ、安定性が向上される。
これにより、エラーレートが改善され、記録媒体の再生において、信号処理装置201を用いることにより、より安定したデータが再生される。
図22は、本発明を適用した信号処理装置の他の構成例を表している。
図22の信号処理装置251は、量子化部12とデジタルPLL162の代わりに、量子化部261とPLL262が追加された点が、図16の信号処理装置151と異なるだけであり、図16の例に対応する部分には対応する符号が付してあり、基本的に同じ構成であるのでその説明は繰り返しになるので、適宜省略する。
すなわち、図22の信号処理装置251は、量子化後の非同期でサンプリングしたデジタルデータの位相を同期させる手法ではなく、アナログデータを量子化する際に、所定のチャネルビット周波数に同期させるように構成されている。
図22の例においては、アナログ等化部161は、入力された再生信号に、PLL262による位相同期のために予め設定されたアナログ等化を実行し、アナログ等化された信号を量子化部261に出力する。
量子化部261は、アナログ等化部161から入力されるアナログ等化された信号に対して、PLL262からのサンプルクロックに従い、所定のチャネルビット周波数のタイミングで、A/D変換を行い、量子化同期サンプルデータを、PLL262および適応等化処理部13−1乃至13−3に出力する。
PLL262は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)282(図23)を内蔵し、量子化部261からの量子化同期サンプルデータに基づいて、位相変位量(位相誤差)を演算し、位相変位量を元に、所望のサンプルクロックを作成して、作成したサンプルクロックを、量子化部261に供給する。
適応等化処理部13−1乃至13−3においては、同期された入力信号に対して、それぞれ、適応等化制御部41による動作の設定に応じて、3次のボルテラフィルタを用いた適応等化処理が行われ、加算器14または加算器15に出力される。
図23は、図22の信号処理装置のより詳細な構成例を表している。なお、図23の例において、図17の例に対応する部分には対応する符号が付してあり、基本的に同じ構成であるのでその説明は繰り返しになるので、適宜省略する。
図23の例においては、信号処理装置251のPLL262は、位相誤差計算部281およびVCO部282により構成されている。
位相誤差計算部281は、量子化部261からの量子化同期サンプルデータを入力することで、同期ループを構成しており、入力した量子化同期サンプルデータに基づいて、位相変位量(位相誤差)を演算し、演算した位相変位量をVCO部282に出力する。
VCO部282は、位相誤差計算部281からの位相変位量をもとに、所望のサンプルクロックを作成して、作成したサンプルクロックを、量子化部261に供給する。
適応等化処理部13−1は、図17の信号処理装置151と同様に、FIR演算部71−1および係数更新部72−1から構成され、適応等化処理部13−2は、FIR演算部71−2および係数更新部72−2から構成され、適応等化処理部13−3は、FIR演算部71−3および係数更新部72−3から構成される。
各FIR演算部71は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、時刻nにおいて入力される量子化同期サンプルデータx(n)と各係数更新部72により演算された係数(または固定の係数)を演算し、その演算結果を出力する等化処理を行う。
各係数更新部72は、適応等化制御部41の動作の設定に応じて、前の時刻nにおいて入力された量子化同期サンプルデータx(n)と、誤差情報処理部17から入力される時刻nの誤差情報e(n)を用いてLMSアルゴリズムで演算を行うことにより、時刻n+1の係数を更新する。
誤差情報処理部17は、図17のPR等化部91、およびエラー演算処理部92により構成される。
PR等化部91は、データ検出部16からの同期サンプルのチャネルビット列を、データ検出部16で用いられたPR(例えば、PR(1,2,2,1))等化を行い、所定のレベル幅における理想PRレベルをエラー演算処理部92に出力する。
エラー演算処理部92は、加算器15からの等化後同期サンプルデータと、PR等化部91からの理想PRレベルを演算(例えば、差分)し、演算により得られた結果を、誤差情報として出力する。また、エラー演算処理部92に入力される等化後同期サンプルデータには、多少遅延が発生する。したがって、エラー演算処理部92においては、演算について必要な2つの入力(すなわち、等化後同期サンプルデータと理想PRレベル)に対して、タイミングが調整される。
以上のように、信号処理装置251においては、信号処理装置151の場合と同様に、位相誤差計算部281およびVCO部282により構成される同期ループと、適応等化処理部13、データ検出部16および誤差情報処理部17により構成されるループがそれぞれ独立している。このため、ITRである位相補間部181に対応するITR−1としての図7の位相補間補正部93は必要なく、構成が簡単になる。
次に、信号処理装置251の動作について説明する。
光ディスク等の記録媒体より読み出された再生信号が入力端子11を介して、信号処理装置251に入力されると、信号処理装置251は信号処理を開始する。
信号処理装置251による信号処理について、図24のフローチャートを参照して説明する。
信号処理装置251の入力端子11を介して入力された再生信号は、アナログ等化部161に入力される。
再生信号が入力されると、アナログ等化部161は、ステップS251において、入力された再生信号に、PLL262による位相同期のために予め設定されたアナログ等化を行い、アナログ等化された信号を量子化部261に出力し、ステップS252に進む。
量子化部261は、ステップS252において、アナログ等化部161から入力されるアナログ等化された信号に対して、PLL262からのサンプルクロックに従い、所定のチャネルビット周波数のタイミングで、A/D変換を行い、量子化同期サンプルデータを、PLL262および適応等化処理部13−1乃至13−3に出力し、ステップS253に進む。
PLL262は、ステップS253において、量子化部261からの量子化同期サンプルデータに基づいて、位相同期処理を実行する。すなわち、PLL262は、ステップS253において、量子化部261からの量子化同期サンプルデータに基づいて、位相変位量(位相誤差)を演算し、位相変位量を元に、所望のサンプルクロックを作成して、作成したサンプルクロックを、量子化部261に供給し、ステップS254に進む。
このサンプルクロックは、次の時刻n+1以降のステップS252のA/D変換処理に用いられる。また、この位相同期処理の詳細は、図25を参照して後述する。
なお、以下のステップS254乃至S260は、図18のステップS153乃至S160と、基本的な処理は略同様であるため、その説明は繰り返しになるので省略する。
次に、図25のフローチャートを参照して、PLL262の位相同期処理を説明する。なお、図25は、図24のステップS253の位相同期処理の例である。
図24のステップS252において、量子化部261により、PLL262からのサンプルクロックに従い、所定のチャネルビット周波数のタイミングで、A/D変換が行われた、量子化同期サンプルデータを、PLL262の位相誤差計算部281に出力してくる。
位相誤差計算部281は、量子化部261から量子化同期サンプルデータが入力されると、ステップS281において、入力した量子化同期サンプルデータに基づいて、位相変位量(位相誤差)を演算し、演算した位相変位量をVCO部282に出力し、ステップS282に進む。
VCO部282は、ステップS282において、位相誤差計算部281からの位相変位量をもとに、所望のサンプルクロックを作成して、作成したサンプルクロックを、量子化部261に供給し、位相同期処理を終了し、図24のステップS253に戻り、ステップS254に進む。
なお、位相変位量は、アナログ値であってもデジタル値であっても、それぞれの入力値に対応したVCO部282が構成されていれば、同様に動作させることができる。
以上のように、量子化後のデジタルデータではなく、アナログデータを量子化する際に、所定のチャネルビット周波数に同期させるように構成するようにしても、信号処理装置151と同様の効果を得ることができる。
なお、上述した適応等化処理部13においては、2次、3次は、必ずしもすべての係数(成分)を持たなくてもよい。
例えば、2次の係数がN2=3であるとき、係数は、(i,j)=(0,0),(0,1),(0,2),(1,0),(1,1),(1,2),(2,0),(2,1),(2,2)の成分を持つが、これらのうち、例えば、(i,j)=(0,0),(0,1),0,(1,0),(1,1),(1,2),0,(2,1),(2,2)所定の係数を持つようにしてもよい。この0は成分を持たないことを表す。
また、これらの係数は、対称成分については同一であるとする。すなわち、例えば、2次の係数がN2=3であるとき、係数は、(0,1)=(1,0)であり、このほか(0,2)=(2,0)、そして、(1,2)=(2,1)である。ところで、対角成分である(0,0),(1,1),(2,2)は、異なってよい。また、要素成分が同じであれば順序が異なっていてもよい。
すなわち、例えば、2次の係数がN2=3であるときの係数は、対角成分の3成分と、行列的に対になり得る対称成分の3成分との合計6成分あれば、構成することができる。また、適応等化処理部13において、係数は、リセット、初期値入力、クリアなどは、特に制限されない。すなわち、どのように行われてもよい。
また、上述したデータ検出部16において、PR(1,2,2,1)のビタビ復号を行うように説明したが、PR(1,2,2,1)以外のビタビ復号であってもよいし、出力がチャネルビットの2値であれば、ビタビ復号ではなく、他の復号方法であってもよい。なお、その場合、誤差情報処理部のPR等化部においては、前段のデータ検出部16のビタビ復号に応じたPR等化が行われ、ビタビ復号以外であった場合には、その復号方法に沿った等化により、理想信号が作成される。
さらに、位相補間部と位相補間補正部は、お互いに関連付けがなされていればよく、例えば、位相補間部からのテーブル参照情報(アドレス情報)で位相補間補正部が動作できれば、テーブルの形式は限定されない。
また、上記説明した信号処理装置においては、再生信号の状況に応じてゲイン制御(AGC(Automatic Gain Control circuit))、あるいはDCキャンセラ(DCC)などが追加されてもよい。
以上のように、本発明の信号処理装置によれば、適応等化処理を行う適応等化部として、1次、2次、さらに、3次の次元を有するフィルタを備えるようにしたので、高線密度における再生時に、1次や2次だけの場合よりも有効に波形の歪みを補正し、エラーレートを改善することができる。
これにより、より安定したデータ再生を行うことができる。
また、本発明の信号処理装置によれば、適応等化部を制御する適応等化制御部により、1次、2次、さらに、3次の次元を有するフィルタを制御するようにしたので、さまざまな条件下で、最適なデータ検出を行うことができる。
これにより、例えば、ディスクの種類によって、オーバークオリティな適応等化を制御できるので、再生品質の低下を最小限に留めつつ、省電力化することができる。また、例えば、ディスクの急激な摂動に対して、最適な適応等化が制御できるので、より安定したデータ再生を行うことができる。
さらに、本発明の信号処理装置によれば、位相同期部および誤差情報処理部を備えるようにしたので、1次、2次、さらに、3次の次元を有するフィルタの係数更新をより好適に行うことができる。
これにより、高線密度における再生時に、1次や2次だけの場合よりも有効に波形の歪みを補正し、エラーレートを改善することができる。
なお、上記説明においては、再生システム(装置)で用いられる信号処理装置として説明したが、もちろん、記録再生システム(装置)の再生処理を行う再生ブロックなどにも適用することができる。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。この場合、例えば、図1、図3、図5、図12、図16、図20、および図22の信号処理装置は、図26に示されるような信号処理装置401により構成される。
図26において、CPU(Central Processing Unit)411は、ROM(Read Only Memory) 412に記憶されているプログラム、または、記憶部418からRAM(Random Access Memory)413にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM413にはまた、CPU411が各種の処理を実行する上において必要なデータなどが適宜記憶される。
CPU411、ROM412、およびRAM413は、バス414を介して相互に接続されている。このバス414にはまた、入出力インタフェース415も接続されている。
入出力インタフェース415には、キーボード、マウスなどよりなる入力部416、CRT(Cathode Ray Tube),LCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部417、ハードディスクなどより構成される記憶部418、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部419が接続されている。通信部419は、図示しないネットワークを介しての通信処理を行う。
入出力インタフェース415にはまた、必要に応じてドライブ420が接続され、磁気ディスク431、光ディスク432、光磁気ディスク433、或いは半導体メモリ434などが適宜装着され、それから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部418にインストールされる。
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば、汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
この記録媒体は、図26に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク431(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク432(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク433(MD(Mini-Disk)(商標)を含む)、もしくは半導体メモリ434などよりなるパッケージメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM412や、記憶部418に含まれるハードディスクなどで構成される。
ここで、本明細書において、コンピュータに各種の処理を行わせるためのプログラムを記述する処理ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
また、プログラムは、1のコンピュータにより処理されるものであっても良いし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであってもよい。
なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
1 信号処理装置,12 量子化部,13,13−1乃至13−3 適応等化処理部,16 データ検出部,17 誤差情報処理部,18 同期検出復号部,31 信号処理装置,41 適応等化制御部,51 信号処理装置,61 デジタルPLL,62 誤差情報処理部,71−1乃至71−3 FIR演算部,72−1乃至72−3 係数更新部,81 位相補間部,82 位相同期処理部,91 PR等化部,92 エラー演算処理部,93 位相補間補正部,101,151 信号処理装置,161 アナログ等化部,162 デジタルPLL,181 位相補間部,182 位相同期処理部,201 信号処理装置,211 FIRフィルタ,251 信号処理装置,261 量子化部,262 PLL,281 位相誤差計算部,282 VCO部