JP4419625B2 - 車両用制振制御装置および車両用制振制御方法 - Google Patents

車両用制振制御装置および車両用制振制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、電動機を動力源として備える車両の制振制御装置および車両用制振制御方法に関する。
従来、車両情報に基づいて設定される第1のトルク目標値に、トルク指令値に基づいて求められるモータ回転速度の推定値と、モータ回転数の検出値との偏差に基づいて算出される第2のトルク目標値を加算して、モータトルク指令値とする制振制御装置が知られている(特許文献1参照)。
特開2003−9566号公報
しかしながら、従来の制振制御装置では、トルク指令値が出力されてから、実際にモータが指令トルクを発生するまでの間に時間的な遅れが存在するために、モータ回転速度の推定値と実際のモータ回転速度との間に位相差が生じ、制振制御の効果が減少するという問題があった。
(1)本発明による車両用制振制御装置は、車両情報に基づいて算出される第1のトルク目標値に対して、車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性のモデルGp(s)および車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性の理想モデルGm(s)で構成されるGm(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタ処理を施して、第1のトルク目標修正値を算出する。また、バンドパスフィルタの特性を有する伝達特性H(s)および伝達特性のモデルGp(s)で構成されるH(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタを用いて、モータ回転速度推定値およびモータ回転速度検出値の偏差に基づいて、第2のトルク目標値を算出する。この第2のトルク目標値と、第1のトルク目標修正値とを加算して得られるトルク指令値を所定時間遅らせて、モータ回転速度推定手段に入力することを特徴とする。
(2)本発明による車両用制振制御装置は、車両情報に基づいて算出される第1のトルク目標値に対して、車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性のモデルGp(s)および車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性の理想モデルGm(s)で構成されるGm(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタ処理を施して、第1のトルク目標修正値を算出する。また、バンドパスフィルタの特性を有する伝達特性H(s)および伝達特性のモデルGp(s)で構成されるH(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタを用いて、モータ回転速度推定値およびモータ回転速度検出値の偏差に基づいて、第2のトルク目標値を算出する。この第2のトルク目標値と、第1のトルク目標修正値とを加算して得られるトルク指令値に対して、モータの出力トルクの立ち上がり特性に応じたフィルタ処理を施して、モータ回転速度推定手段に出力することを特徴とする。
(3)本発明による車両用制振制御装置は、車両情報に基づいて算出される第1のトルク目標値に対して、車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性のモデルGp(s)および車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性の理想モデルGm(s)で構成されるGm(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタ処理を施して、第1のトルク目標修正値を算出する。また、バンドパスフィルタの特性を有する伝達特性H(s)および伝達特性のモデルGp(s)で構成されるH(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタを用いて、モータ回転速度推定値およびモータ回転速度検出値の偏差に基づいて、第2のトルク目標値を算出する。この第2のトルク目標値の位相を補正し、位相補正後の第2のトルク目標値と、第1のトルク目標修正値とを加算してトルク指令値を算出することを特徴とする。
(4)本発明による車両用制振制御方法は、車両情報に基づいて基本トルク指令値を算出し、基本トルク指令値に対して、車両の振動を抑制するフィルタ処理を施して第1のトルク目標値を算出し、最終的なトルク指令値を所定時間遅らせてから、モータ回転速度を推定するモータ回転速度推定手段に出力し、モータ回転速度推定手段によって推定されるモータ回転速度と実モータ回転速度との偏差に基づいて、第2のトルク目標値を算出し、第1のトルク目標値および第2のトルク目標値を加算して得られる最終的なトルク指令値に基づいて、モータを駆動することを特徴とする。
(5)本発明による車両用制振制御方法は、車両情報に基づいて基本トルク指令値を算出し、基本トルク指令値に対して、車両の振動を抑制するフィルタ処理を施して第1のトルク目標値を算出し、最終的なトルク指令値に対して、モータの出力トルクの立ち上がり特性に応じたフィルタ処理を施し、フィルタ処理が施された最終的なトルク指令値から推定されるモータ回転速度と実モータ回転速度との偏差に基づいて、第2のトルク目標値を算出し、第1のトルク目標値および第2のトルク目標値を加算して得られる最終的なトルク指令値に基づいて、モータを駆動することを特徴とする。
(6)本発明による車両用制振制御方法は、車両情報に基づいて基本トルク指令値を算出し、基本トルク指令値に対して、車両の振動を抑制するフィルタ処理を施して第1のトルク目標値を算出し、最終的なトルク指令値から推定されるモータ回転速度と実モータ回転速度との偏差に基づいて、第2のトルク目標値を算出し、第2のトルク目標値の位相を補正し、第1のトルク目標値および位相が補正された第2のトルク目標値を加算して得られる最終的なトルク指令値に基づいて、モータを駆動することを特徴とする。
本発明による車両用制振制御装置および車両用制振制御方法によれば、モータ回転速度推定値と、モータ回転速度検出値との間の位相差を解消して、制振制御の効果を向上させることができる。
−第1の実施の形態−
図1は、本発明の第1の実施の形態における車両用制振制御装置を備えた電気自動車の全体構成を示すブロック図である。この車両は、3相交流モータ5の回転力が車輪7a,7bに伝達されることにより駆動する。回転速度センサ6は、モータ5の回転速度を検出する。
アクセル開度センサ1は、アクセル開度を検出して、モータトルク設定部2に出力する。モータトルク設定部2は、アクセル開度センサ1により検出されたアクセル開度と、回転速度センサ6により検出されるモータ5の回転速度とに基づいて、第1のトルク目標値Tm1*を設定する。
制振制御部3は、モータトルク設定部2により設定された第1のトルク目標値Tm1*と、回転速度センサ6により検出されるモータ5の回転速度とを入力して、モータトルク指令値T*を算出する。モータトルク指令値T*を算出する方法については、後述する。モータトルク制御部4は、制振制御部3により算出されたモータトルク指令値T*と、3相交流モータ5の出力トルクが一致するように制御する。
図2は、モータトルク設定部2および制振制御部3の具体的な構成を示すブロック図である。モータトルク設定部2は、トルクマップ21と、Gm(s)/Gp(s)なる特性を有する制御ブロック22とを備える。Gp(s)は、車両へのトルク入力とモータ回転速度との間の伝達特性を示すモデルであり、Gm(s)は、車両へのトルク入力とモータ回転速度の応答目標との間の伝達特性を示すモデル(理想モデル)である。
トルクマップ21は、複数のアクセル開度に対するモータ5の回転速度とモータ5の出力トルクとの関係を示すマップであり、アクセル開度センサ1により検出されるアクセル開度、および、回転速度センサ6により検出されるモータ5の回転速度に基づいて、トルク目標値Tm*を求める。制御ブロック22は、振動を抑制するためのフィードフォワード制御を行う。すなわち、トルク目標値Tm*をGm(s)/Gp(s)なるフィルタに通すことにより、制振効果の高い第1のトルク目標値Tm1*を求める。なお、トルク目標値Tm*を第1のトルク目標値と呼ぶ場合には、トルク目標値Tm1*は、第1のトルク目標修正値と呼ぶことができる。
制振制御部3は、伝達特性Gp(s)を有する制御ブロック31と、減算器32と、H(s)/Gp(s)なる伝達特性を有する制御ブロック33と、加算器34と、時間遅れ制御器35とを備える。加算器34は、上述した制御ブロック22から出力される第1のトルク目標値Tm1*と、後述する制御ブロック33から出力される第2のトルク目標値Tm2*とを加算して、トルク指令値を算出する。
加算器34による加算結果(トルク指令値)は、図示しないインバータを介して、モータ5に入力されるとともに、時間遅れ制御器35に入力される。図2では、モータ5を示す制御ブロックを、Gp'(s)なる伝達特性を有する制御ブロック11で表している。なお、制御ブロック11には、加算器34から出力されるトルク指令値と、外部から入力される外乱Tdの加算値が入力される。
時間遅れ制御器35は、加算器34から出力されたトルク指令値を所定の時間だけ遅らせて、制御ブロック31に出力する。この所定の時間は、モータ5を示す制御ブロック11にトルク指令値が入力されてから指令トルクが発生するまでの時間、および、モータ5の回転速度が検出されて、後述する減算器32に入力するまでの時間を加算した時間である。
制御ブロック31は、時間遅れ制御器35を介して入力されるトルク指令値に基づいて、モータ5の回転速度を推定する。減算器32は、制御ブロック31で推定されたモータ回転速度と、実際のモータ回転速度ωmとの偏差を算出する。すなわち、時間遅れ制御器35は、制御ブロック31で求められるモータ回転速度推定値と、実際のモータ回転速度検出値ωmとの位相差が零になるように、時間遅れを設定する。
H(s)/Gp(s)なる伝達特性を有する制御ブロック33は、減算器32から入力されるモータ回転速度の偏差に基づいて、制振制御のフィードバック成分である第2のトルク目標値Tm2*を求める。ここで、H(s)は、中心周波数が車両の駆動系のねじり共振周波数と一致しているバンドパスフィルタの特性を有する。制御ブロック33により算出された第2のトルク目標値Tm2*は、加算器34に入力される。
図3(a)は、第1のトルク目標値Tm1*を0(Nm)から200(Nm)に変更し、かつ、外乱Tdが20(Nm)入力された場合に、モータ5から出力されるトルクの変化を示す図であり、図3(b)は、その時のモータ回転速度の変化を示す図である。ここで、モータ5を示す制御ブロック11にトルク指令値が入力されてから指令トルクが発生するまでの無駄時間を2(ms)、出力トルクが指令トルクに収束するまでの応答時定数を10(ms)、モータ5の回転速度が検出されて、減算器32に入力されるまでの時間を4(ms)とする。従って、時間遅れ制御器35における遅れ時間は、6(ms)とする。図3(a)および図3(b)において、実線は、第1の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合の結果であり、点線は、時間遅れ制御器35を設けずに制御を行った場合の結果である。
図3(a)に示すように、時間遅れ制御器35を備えた第1の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合には、時間遅れ制御器35を設けずに制御を行った場合に比べて、出力トルクが指令トルクに一致するまでの時間が短くなる。また、図3(b)に示すように、第1の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合には、モータ回転速度の変動も低減している。
第1の実施の形態における車両用制振制御装置によれば、トルク指令値に基づいてモータ5の回転速度推定値を求める制御ブロック31の前に時間遅れ制御器35を設け、減算器32に入力されるモータ回転速度推定値と、モータ回転速度検出値との間の位相差が0になるようにしたので、制振制御の効果を向上させることができる。
−第2の実施の形態−
図4は、第2の実施の形態における車両用制振制御装置において、モータトルク設定部2および制振制御部3aの具体的な構成を示すブロック図である。図2に示すブロック図との相違は、制振制御部3aに制御ブロック36が追加されていることである。すなわち、時間遅れ制御器35と、制御ブロック31の間に制御ブロック36が設けられている。制御ブロック36は、モータ5の出力トルクが指令トルクに収束するまでの応答時定数に相当する伝達特性を有するフィルタを備えている。
図5は、トルク指令値と、モータ5から出力されるトルクとの関係を示す図である。図5に示すように、モータ5から出力されるトルクが指令トルクに収束するまでには、所定の応答時定数が存在する。従って、トルク指令値を制御ブロック31に入力する前に制御ブロック36に通すことにより、さらに、実際のモータ回転速度ωmと推定回転速度との間の位相差を低減させることができる。
図6(a)は、第1のトルク目標値Tm1*を0(Nm)から200(Nm)に変更し、かつ、外乱Tdが20(Nm)入力された場合に、モータ5から出力されるトルクの変化を示す図であり、図6(b)は、その時のモータ回転速度の変化を示す図である。図3(a)および図3(b)と同様に、制御ブロック11にトルク指令値が入力されてから指令トルクが発生するまでの無駄時間を2(ms)、出力トルクが指令トルクに収束するまでの応答時定数を10(ms)、モータ5の回転速度が検出されて、減算器32に入力されるまでの時間を4(ms)とする。また、図6(a)および図6(b)において、実線は、第2の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合の結果であり、点線は、第1の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合の結果である。
図6(a)に示すように、第2の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合には、第1の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合に比べて、出力トルクが指令トルクに一致するまでの時間がさらに短くなる。また、図3(b)に示すように、第2の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合には、モータ回転速度の変動もさらに抑制される。
第2の実施の形態における車両用制振制御装置によれば、第1の実施の形態における車両用制振制御装置の構成に加えて、制御ブロック31の前に、モータ5の出力トルクが指令トルクに収束するまでの応答時定数に相当する伝達特性を有するフィルタを備える制御ブロック36を設けた。これにより、モータ回転速度推定値とモータ回転速度検出値との間の位相差がさらに低減するので、制振制御の効果をさらに高めることができる。
−第3の実施の形態−
図7は、第3の実施の形態における車両用制振制御装置において、モータトルク設定部2および制振制御部3bの具体的な構成を示すブロック図である。図4に示すブロック図との相違は、制振制御部3b内に設けられている制御ブロック33aの伝達特性である。すなわち、第1および第2の実施の形態における車両用制振制御装置が備える制御ブロック33が有するフィルタの伝達特性がH(s)/Gp(s)であったのに対し、制御ブロック33aが有するフィルタの伝達特性は、H'(s)/Gp(s)である。
第1および第2の実施の形態では、フィルタH(s)を、中心周波数を車両の駆動系のねじり共振周波数と一致させたバンドパスフィルタとしていた。第3の実施の形態における車両用制振制御装置では、フィルタH'(s)の中心周波数を、トルク指令値の出力から実際にモータ5が指令トルクを発生するまでの無駄時間、トルクの立ち上がり特性、モータ回転速度の検出に伴う時間遅れ等の遅れ時間に基づいて算出される周波数分だけシフト(位相補償)させる。
以下では、モータ5の出力トルクの応答が無駄時間t1(sec)で応答時定数τ(sec)の1次遅れであり、モータ回転速度の検出に伴う時間遅れをt2(sec)、ねじり共振周波数をfp(Hz)(=ωp(rad/s)/2π)とした場合の位相補償後の中心周波数fc(Hz)(=ωc(rad/s)/2π)を求める。
応答時定数τの1次遅れを伝達関数で表すと、次式(1)となる。ただし、sはラプラス演算子である。
1/(1+τs) …(1)
式(1)に、s=j×ωpを代入すると、
1/(1+τs)=1/(1+τ×j×ωp)
=(1−τ×j×ωp)/(1−τ×j×ωp)(1+τ×j×ωp)
=[1/(1+(τ×ωp)2)]
+[(−τ×ωp)/(1+(τ×ωp)2)]j …(2)
ここで、式(2)を、A+Bjとおくと、1次遅れ成分による位相補償後の位相αは、
α=tan-1(B/A)=tan-1(−τ×ωp) …(3)
となる。
また、無駄時間成分による位相補償後の位相βは、次式(4)により表される。
β=ωp×t=ωp×(t1+t2) …(4)
従って、トータルの位相補償補後の位相γは、次式(5)により表される。
γ=α+β …(5)
バンドパスフィルタH(s)を1次のハイパスフィルタとローパスフィルタとで構成した場合の伝達関数は、次式(6)となる。
[ωc/(ωc+s)]×[s/(ωc+s)]
=(ωc×s)/(ωc+s)2 …(6)
式(6)に、s=j×ωpを代入すると、
=(ωc×j×ωp)/(ωc2+2×ωc×j×ωp−ωp2
=(ωc×j×ωp)/[(ωc2−ωp2)+(2×ωc×ωp)×j]
=(ωc×j×ωp)×[(ωc2−ωp2)−(2×ωc×ωp)×j]
/[(ωc2−ωp22+(2×ωc×ωp)2
=[((ωc2−ωp2)×ωc×ωp)×j+2×ωc2×ωp2
/[(ωc2+ωp22
=[(2×ωc2×ωp2)/(ωc2+ωp22
+[((ωc2−ωp2)×ωc×ωp)/(ωc2+ωp22]×j …(7)
ここで、式(7)を、C+Djとおくと、
tanγ=D/C
=((ωc2−ωp2)×ωc×ωp)/(2×ωc2×ωp2
=(ωc2−ωp2)/(2×ωc×ωp) …(8)
式(8)を変形すると、次式(9)が導かれる。
ωc2−(2×ωc×ωp×tanγ)−ωp2 =0 …(9)
式(9)の2次方程式を解くと、ωcは、次式(10)により表される。
ωc=[(2×tanγ×ωp)+√((−2×tanγ×ωp)2+4×ωp2)]/2 …(10)
従って、位相補償後の中心周波数fcは、次式(11)により表される。
fc=ωc/2π
=[(2×tanγ×ωp)+√((−2×tanγ×ωp)2+4×ωp2)]/(4π)
…(11)
図8は、ねじり共振周波数fpが10(Hz)、モータ回転速度の検出に伴う時間遅れが4(ms)、モータ5の出力トルクの応答が無駄時間2(ms)であり、かつ、応答時定数が10(ms)の1次遅れの特性を有している場合に、中心周波数をシフトさせた時とシフトさせない時のバンドパスフィルタH(s)のボード線図である。図8(a)は、ゲイン特性曲線を示し、図8(b)は、位相特性曲線を示している。
図8(a),(b)において、ねじり共振周波数fpに対して、中心周波数をシフトさせた場合の結果を実線で示し、中心周波数をシフトさせない場合の結果を点線で示す。この場合、式(11)より、位相補償後の中心周波数fcは、約16.9(Hz)となる。図8に示すように、中心周波数をシフトさせない場合には、10(Hz)入力に対して位相差が0(deg)であるのに対し、中心周波数をシフトさせた場合には、位相が約29(deg)進んでいる。
図9(a)は、第1のトルク目標値Tm1*を0(Nm)から200(Nm)に変更し、かつ、外乱Tdが20(Nm)入力された場合に、モータ5から出力されるトルクの変化を示す図であり、図9(b)は、その時のモータ回転速度の変化を示す図である。図3および図6の場合と同様に、制御ブロック11にトルク指令値が入力されてから指令トルクが発生するまでの無駄時間を2(ms)、出力トルクが指令トルクに収束するまでの応答時定数を10(ms)、モータ5の回転速度が検出されて、減算器32に入力されるまでの時間を4(ms)とする。
図9(a)および図9(b)において、実線は、第3の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合の結果(位相補償あり)であり、点線は、第2の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合の結果(位相補償なし)である。図9(b)に示すように、第3の実施の形態における車両用制振制御装置によれば、さらにモータ回転速度の変動を抑制することができる。
第3の実施の形態における車両用制振制御装置によれば、第2の実施の形態における車両用制振制御装置の構成に加えて、加算器34に第2のトルク目標値Tm2*を入力させる(フィードバックさせる)際に、位相を補正するので、さらに、制振効果を向上させることができる。
−第4の実施の形態−
図10は、第4の実施の形態における車両用制振制御装置において、モータトルク設定部2および制振制御部3bの具体的な構成を示すブロック図である。図7に示すブロック図との相違は、制振制御部3c内に設けられている制御ブロック33bの伝達特性である。すなわち、第3の実施の形態における車両用制振制御装置では、H(s)/Gp(s)なるフィルタのうち、バンドパスフィルタH(s)の中心周波数をシフトさせて、H'(s)/Gp(s)なるフィルタを用いたが、第4の実施の実施の形態における車両用制振制御装置では、このフィルタH'(s)/Gp(s)に対して、ゲインG'をかけたフィルタG'H'(s)/Gp(s)を用いる。
バンドパスフィルタH(s)の中心周波数をシフトさせた場合、図8(a)に示すボード線図から明らかなように、10(Hz)入力に対するゲインが減少する。従って、第4の実施の実施の形態における車両用制振制御装置では、ゲインG'を設定することにより、上述したゲイン減少を補償する。ゲインG'の設定方法について、以下で説明する。
応答時定数τ(sec)の1次遅れを表した伝達関数は、上式(2)で表され、式(2)をA+Bjと置き換えると、応答時定数τの1次遅れによるゲインG1は、次式(12)により表される。
G1=√(A2+B2)=√[1/(1+(τ×ωp)2)] …(12)
バンドパスフィルタH(s)を1次のハイパスフィルタおよびローパスフィルタにより構成した場合の伝達関数は、上式(7)で表され、式(7)をC+Djと置き換えると、周波数fp(Hz)入力に対するバンドパスフィルタH(s)の位相補償によるゲインG2は、次式(13)により表される。
G2=√(C2+D2
=√[[(2×ωc2×ωp22+(ωc×ωp×(ωc2−ωp2))2]/(ωc2+ωp24
…(13)
上式(12)および(13)を次式(14)に代入することにより、補償するゲインG'を算出することができる。
G'=1/(G1×G2) …(14)
図11(a),(b)は、位相補償後の中心周波数fcを約16.9(Hz)とし、さらに、ゲインG'によりゲイン補償を行った場合のボード線図である。図11(a)は、ゲイン特性曲線を示し、図11(b)は、位相特性曲線を示している。図11(a),(b)において、点線L1は、フィルタH(s)の中心周波数を車両の駆動系のねじり共振周波数(10Hz)と一致させた場合の結果、実線L2は、フィルタH'(s)の中心周波数をシフトさせて約16.9(Hz)とした時の結果、一点鎖線L3は、フィルタH'(s)の中心周波数をシフトさせて約16.9(Hz)とし、かつ、ゲインG'によりゲイン補償を行った場合の結果である。
図11(a)に示すように、第3の実施の形態における車両用制振制御装置では、10(Hz)入力に対するゲインが減少してしまうが、第4の実施の形態における車両用制振制御装置では、フィルタH(s)の中心周波数を車両の駆動系のねじり共振周波数(10Hz)と一致させた場合のゲインと一致させることができる。
図12(a)は、第1のトルク目標値Tm1*を0(Nm)から200(Nm)に変更し、かつ、外乱Tdが20(Nm)入力された場合に、モータ5から出力されるトルクの変化を示す図であり、図12(b)は、その時のモータ回転速度の変化を示す図である。図3,図6,図9の場合と同様に、制御ブロック11にトルク指令値が入力されてから指令トルクが発生するまでの無駄時間を2(ms)、出力トルクが指令トルクに収束するまでの応答時定数を10(ms)、モータ5の回転速度が検出されて、減算器32に入力するまでの時間を4(ms)とする。
図12(a)および図12(b)において、実線は、ゲイン補償を行う第4の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合の結果であり、点線は、ゲイン補償を行わない第3の実施の形態における車両用制振制御装置により制御を行った場合の結果である。図12(b)に示すように、第4の実施の形態における車両用制振制御装置によれば、モータ回転速度の変動をさらに抑制することができる。
第4の実施の形態における車両用制振制御装置によれば、第3の実施の形態における車両用制振制御装置の構成に加えて、第2のトルク目標値Tm2*の位相補償に伴うゲインの減少に対して、ゲイン補償を行うので、制振効果をさらに向上させることができる。
本発明は、上述した各実施の形態に限定されることはない。例えば、第2の実施の形態における車両用制振制御装置では、図2に示す第1の実施の形態における車両用制振制御装置の構成に加えて、制御ブロック36を設けた。しかし、時間遅れ制御器35を設けない構成に、制御ブロック36を設けるようにしてもよい。
また、第3の実施の形態における車両用制振制御装置において、時間遅れ制御器35を設けないようにしてもよいし、制御ブロック36を設けないようにしてもよい。例えば、時間遅れ制御器35および制御ブロック36を設けない構成において、制御ブロック33の代わりに、伝達特性がH'(s)/Gp(s)であるフィルタを有する制御ブロック33aを設けても良い。
上述した各実施の形態では、モータ5の出力トルクの応答を「無駄時間+1次遅れ」として説明したが、「無駄時間+2次遅れ」のような応答を示す場合でも、制御対象に合わせた伝達特性を有する制御ブロックを設けるようにすればよい。
上述した説明では、車両用制振制御装置を電気自動車に適用した例について説明したが、ハイブリッド電気自動車に適用することもできる。
特許請求の範囲の構成要素と第1〜第4の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、回転速度センサ6が回転速度検出手段を、モータトルク制御部4がモータ制御手段を、トルクマップ21が第1のトルク目標値算出手段を、制御ブロック22が第1のトルク目標修正値算出手段を、制御ブロック31がモータ回転速度推定手段を、制御ブロック33が第2のトルク目標値算出手段を、加算器34が加算手段を、時間遅れ制御器35が時間遅延手段を、制御ブロック36が応答特性補正手段をそれぞれ構成する。また、制御ブロック33aが第2のトルク目標値算出手段および位相補正手段を、制御ブロック33bがゲイン補償手段をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
本発明の第1の実施の形態における車両用制振制御装置を備えた車両の全体構成を示すブロック図 モータトルク設定部2および制振制御部3の具体的な構成を示すブロック図 図3(a)は、第1のトルク目標値Tm1*を0(Nm)から200(Nm)に変更し、かつ、外乱Tdが20(Nm)入力された場合に、モータ5から出力されるトルクの変化を示す図であり、図3(b)は、その時のモータ回転速度の変化を示す図である。 第2の実施の形態における車両用制振制御装置において、モータトルク設定部2および制振制御部3aの具体的な構成を示すブロック図 トルク指令値と、モータ5から出力されるトルクとの関係を示す図 図6(a)は、第2の実施の形態における車両用制振制御装置において、第1のトルク目標値Tm1*を0(Nm)から200(Nm)に変更し、かつ、外乱Tdが20(Nm)入力された場合に、モータ5から出力されるトルクの変化を示す図であり、図6(b)は、その時のモータ回転速度の変化を示す図 第3の実施の形態における車両用制振制御装置において、モータトルク設定部2および制振制御部3bの具体的な構成を示すブロック図 ねじり共振周波数fpが10(Hz)、モータ回転速度の検出に伴う時間遅れが4(ms)、モータ5の出力トルクの応答が無駄時間2(ms)であり、かつ、応答時定数が10(ms)の1次遅れの特性を有している場合に、中心周波数をシフトさせた時とシフトさせない時のバンドパスフィルタH(s)のボード線図 図9(a)は、第3の実施の形態における車両用制振制御装置において、第1のトルク目標値Tm1*を0(Nm)から200(Nm)に変更し、かつ、外乱Tdが20(Nm)入力された場合に、モータ5から出力されるトルクの変化を示す図であり、図9(b)は、その時のモータ回転速度の変化を示す図 第4の実施の形態における車両用制振制御装置において、モータトルク設定部2および制振制御部3bの具体的な構成を示すブロック図 位相補償後の中心周波数fcを約16.9(Hz)とし、さらに、ゲインG'によりゲイン補償を行った場合のボード線図 図12(a)は、第4の実施の形態における車両用制振制御装置において、第1のトルク目標値Tm1*を0(Nm)から200(Nm)に変更し、かつ、外乱Tdが20(Nm)入力された場合に、モータ5から出力されるトルクの変化を示す図であり、図12(b)は、その時のモータ回転速度の変化を示す図
符号の説明
1…アクセル開度センサ
2…モータトルク設定部
3…制振制御部
4…モータトルク制御部
5…モータ
6…回転角センサ
7a,7b…車輪
11…制御ブロック
21…トルクマップ
22…制御ブロック
31…制御ブロック
32…減算器
33,33a,33b…制御ブロック
34…加算器
35…時間遅れ制御器
36…制御ブロック
41…電流指令値算出部
42…電流制御部
43…dq/3相変換部
44…電力変換部
45…3相/dq変換部
46a,46b…電流センサ
61…回転位置センサ
62…位相速度演算部

Claims (8)

  1. モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
    トルク指令値に基づいて、前記モータを制御する電動モータ制御手段と、
    車両情報に基づいて、第1のトルク目標値を算出する第1のトルク目標値算出手段と、
    前記第1のトルク目標値算出手段により算出された第1のトルク目標値に対して、車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性のモデルGp(s)および車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性の理想モデルGm(s)で構成されるGm(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタ処理を施して、第1のトルク目標修正値を算出する第1のトルク目標修正値算出手段と、
    前記伝達特性のモデルGp(s)に相当する特性を有するフィルタを備え、前記トルク指令値に基づいて、前記モータの回転速度推定値を求めるモータ回転速度推定手段と、
    バンドパスフィルタの特性を有する伝達特性H(s)および前記伝達特性のモデルGp(s)で構成されるH(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタを備え、前記モータ回転速度推定手段にて推定されたモータ回転速度推定値と、前記回転速度検出手段により検出されたモータ回転速度との偏差に基づいて、第2のトルク目標値を算出する第2のトルク目標値算出手段と、
    前記第2のトルク目標値算出手段により算出される第2のトルク目標値の位相を補正する位相補正手段と、
    前記位相補正手段により位相が補正された第2のトルク目標値と、前記第1のトルク目標修正値算出手段により算出された第1のトルク目標修正値とを加算して、前記トルク指令値を算出する加算手段とを備え、
    前記位相補正手段は、車両の駆動系のねじり共振周波数を基準として、前記バンドパスフィルタの中心周波数をシフトさせることにより、前記第2のトルク目標値の位相を補正し、
    前記位相補正手段は、前記トルク指令値が出力されてから前記モータが指令トルクを発生するまでの時間遅れ、前記回転速度検出手段によるモータ回転速度の検出遅れ、および、前記モータの出力トルクの立ち上がり特性のうち、少なくともいずれか一つの要素に基づいて、前記バンドパスフィルタの中心周波数をシフトさせる量を決定することを特徴とする車両用制振制御装置。
  2. 請求項に記載の車両用制振制御装置において、
    前記位相補正手段により前記第2のトルク目標値の位相を補正した際に生ずるゲインの減少を補償するゲイン補償手段をさらに備えることを特徴とする車両用制振制御装置。
  3. 請求項に記載の車両用制振制御装置において、
    前記ゲイン補償手段は、車両の駆動系のねじり共振周波数におけるゲイン減少量を補償することを特徴とする車両用制振制御装置。
  4. 請求項1に記載の車両用制振制御装置において、
    前記加算手段により算出されるトルク指令値を所定時間遅らせて前記モータ回転速度推定手段に出力する時間遅延手段をさらに備えることを特徴とする車両用制振制御装置。
  5. 請求項に記載の車両用制振制御装置において、
    前記時間遅延手段は、前記トルク指令値が出力されてから前記モータが指令トルクを発生するまでの時間遅れ、および、前記回転速度検出手段によるモータ回転速度の検出遅れ時間のうち、少なくともいずれか一方の時間に基づいて、前記所定時間を決定することを特徴とする車両用制振制御装置。
  6. 請求項またはに記載の車両用制振制御装置において、
    前記トルク指令値を前記モータ回転速度推定手段に入力する前に、前記モータの出力トルクの立ち上がり特性に応じたフィルタ処理を施す応答特性補正手段をさらに備えることを特徴とする車両用制振制御装置。
  7. 請求項4または6に記載の車両用制振制御装置において、
    前記位相補正手段は、前記時間遅延手段における遅延時間、または、前記応答特性補正手段が有するフィルタの特性に基づいて、前記補正する位相量を決定することを特徴とする車両用制振制御装置。
  8. モータの回転速度を検出し、
    トルク指令値に基づいて、前記モータを制御し、
    車両情報に基づいて、第1のトルク目標値を算出し、
    前記第1のトルク目標値算出手段により算出された第1のトルク目標値に対して、車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性のモデルGp(s)および車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性の理想モデルGm(s)で構成されるGm(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタ処理を施して、第1のトルク目標修正値を算出し、
    前記トルク指令値に基づいて、前記伝達特性のモデルGp(s)に相当する特性を有するフィルタ処理を施して、前記モータの回転速度推定値を求め、
    前記モータ回転速度推定手段にて推定されたモータ回転速度推定値と、前記回転速度検出手段により検出されたモータ回転速度との偏差に基づいて、バンドパスフィルタの特性を有する伝達特性H(s)および前記伝達特性のモデルGp(s)で構成されるH(s)/Gp(s)なる特性を有するフィルタ処理を施して、第2のトルク目標値を算出し、
    前記第2のトルク目標値算出手段により算出される第2のトルク目標値の位相を補正し、
    前記位相補正手段により位相が補正された第2のトルク目標値と、前記第1のトルク目標修正値算出手段により算出された第1のトルク目標修正値とを加算して、前記トルク指令値を算出し
    前記第2のトルク目標値の位相は、車両の駆動系のねじり共振周波数を基準として、前記バンドパスフィルタの中心周波数をシフトさせることにより、補正され、
    前記バンドパスフィルタの中心周波数は、前記トルク指令値が出力されてから前記モータが指令トルクを発生するまでの時間遅れ、前記回転速度検出手段によるモータ回転速度の検出遅れ、および、前記モータの出力トルクの立ち上がり特性のうち、少なくともいずれか一つの要素に基づいて、決定されるシフト量でシフトされることを特徴とする車両用制振制御方法。
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