JP4417456B2 - 4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンの改良された製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンは、その重合抑制効果に優れていることから、重合性のモノマー類の製造工程、精製工程、貯蔵工程などにおいて該モノマーの重合を抑制し装置内での重合による汚れを防ぎ装置の運転効率を上げる、あるいはモノマーの収率を向上させるなどの目的に卓越した効果の故に注目されている。4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンの製造は、下記反応式に示すように4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを過酸化水素で酸化して行うのが一般的である。
【0003】
【化1】
【0004】
この酸化反応に際し、触媒としてヘテロポリ酸塩類を用いる方法(特開平6−247932号公報)、二価の金属塩を用いる方法(特開平6−87830号、特開平6−100538号公報)、タングステン酸類あるいは酸化バナジウムなどの酸化触媒にエチレンジアミン、四酢酸などの助触媒を用いる方法(特公昭44−12142号公報)、二酸化炭素の存在下に行う方法(特開平8−3136号公報)などが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの触媒を用いる酸化反応では、用いた触媒が反応混合物に溶解した形態で夾雑しているため、反応終了後にはどうしても抽出や再結晶といった精製を入念に行う必要があり、製品の精製工程が大きな障害となっていた。
【0006】
また、二酸化炭素の存在下に行う方法では、反応後の過酸化水素残留量を少なくするため、反応に用いる過酸化水素量を減少させることを示しているが、この方法では酸化反応を完全に行なわさせることは困難であり、製品中に未反応成分を含み、高純度製品を得るための精製工程が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、酸化反応並びに反応後の残存過酸化水素の分解に工夫を加え、抽出や再結晶といった特別の精製工程を経ずとも高純度の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンを容易に製造し得る方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、過酸化水素による4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの酸化反応を検討した結果、反応容器の接液部に過酸化水素に不活性な材質を用い、かつ酸化反応終了後に残存する過酸化水素を分解し得る能力を有するとともに反応液に実質溶解しない金属酸化物を用いることにより高純度の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンが容易に得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを過酸化水素を用いて酸化し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンを製造する方法において、接液部が合成樹脂あるいはガラスよりなる反応容器を用い、酸化触媒の不存在下に酸化反応を行わせしめ、酸化反応終了後に酸化ニッケルおよび二酸化マンガンのうちの少なくとも1種の金属酸化物を添加して残存する過酸化水素を分解し、しかる後に該金属酸化物を固液分離操作によって除去することを特徴とする4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、先ず4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと過酸化水素の酸化反応を、接液部が合成樹脂あるいはガラスよりなる反応容器を用いて行う。
【0011】
反応は、通常水媒体中で行われる。反応時の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの水中濃度は任意に選ばれるが、操作を行う上では、原料である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンがスラリー又は均一溶液で攪拌できる程度であればよく、通常スラリー濃度40〜70重量%で開始する。反応は過酸化水素を滴下して進めるので、過酸化水素中の水、及び反応で生成した水が反応系に加わるので、反応の後半では希釈され、攪拌はより容易になる。
【0012】
過酸化水素は任意の濃度の水溶液が用いられるが、通常10〜60%濃度の水溶液を用いる。反応に用いる過酸化水素の量は、理論量の1.0から2倍、好ましくは1.1〜1.5倍用いる。実際上は、反応中適宜反応液を採取し、例えばガスクロマトグラフィー分析を行うことにより反応の進行を追跡し、反応時間と反応率から、過酸化水素の添加量を調整して最適値を決定することが望ましい。
【0013】
反応系のpHは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを水中スラリーとするだけで、10〜11となるので、特にpH調整せずともそのまま反応を開始させるのがよい。過酸化水素を添加し反応を行わせた後でも、pHは8〜10である。
【0014】
反応は60〜95℃、好ましくは80〜90℃、さらに好ましくは85℃で行う。原料水溶液を該温度範囲に維持したまま、過酸化水素水を少しづつ添加し、酸化反応を開始させる。この温度範囲より低いと反応の進行が遅く、またこの温度範囲より高いと生成した4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンの熱劣化が急速に進行することから好ましくないことがある。
【0015】
過酸化水素水を滴下して反応が開始したならば、系内への加熱を停止し、酸化反応による発熱と外部からの冷却により上記温度範囲を維持する。勿論所望の温度に維持できなくなったら、過酸化水素水の滴下速度を調節したり、あるいは外部加熱、あるいは冷却の強化により温度調節を行う。
【0016】
工業的規模で実施する際に使用される反応容器の材質は、鋼やステンレスが一般的であるが、本発明においては反応容器あるいは少なくとも接液部の材質には合成樹脂あるいはガラスを用いる。反応容器が合成樹脂あるいはガラスで構成されたものでもよく、あるいは鉄等金属製の容器の該接液部を合成樹脂あるいはガラスで表面ライニングしたものでもよい。合成樹脂としては、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、例えば「テフロン」(商品名)など)、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂などがある。しかし、酸化反応という特殊な反応を考慮すると、テフロンあるいはガラスが好ましい。
【0017】
鋼、ステンレスなどの鉄系材料では、これら鉄系材料の表面で過酸化水素の自己分解が促進されるので、過酸化水素が反応に有効に用いられず不利益である。
【0018】
反応の進行程度はガスクロマトグラフィー等の分析機器を用い、原料である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの減少と、製品である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンの生成をみることにより知ることが出来る。
【0019】
反応容器の接液部に合成樹脂あるいはガラスを用いることにより過酸化水素の不必要な分解が抑えられ、反応終了後に過剰の過酸化水素が残る。そこで、酸化反応が完了したならば、60〜80℃に維持したまま、酸化ニッケル、および/あるいは二酸化マンガンを添加して残存する過酸化水素を分解する。
【0020】
本発明の方法において用いられる残存する過酸化水素を分解させるために、酸化ニッケルおよび二酸化マンガンは、どちらか一方を単独、あるいは両者を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
酸化ニッケルおよび/あるいは二酸化マンガンは、粉末として、または粉末集合体である顆粒状として、または金属表面の酸化皮膜として、更に適当な担体表面に固定した形状等で添加する。または、反応容器から外部に循環するような流れの中で原料溶液に接触するようにしても良い。
【0022】
過酸化水素を分解するために加えられる金属酸化物の量は、残存する過酸化水素の量、金属酸化物の表面積、反応液に対する接触効率等により異なり一律に規定できないが、一般的には4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンに対し100〜10000ppm、好ましくは300〜3000ppmである。
【0023】
この金属酸化物の添加方法については、紛体の形態で直接添加するのが最も少ない使用量で反応を完結し得る。
【0024】
酸化ニッケルおよび二酸化マンガンは、固体であり、中性からアルカリ性の反応媒体中に実質溶解しないので、反応液中の過酸化水素が分解消失した後、適当な固液分離操作、例えば濾過、デカンテーション、遠心分離により簡単に分離できる。このため、生成物である、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンは抽出、再結晶等の精製工程を要しないほどに高純度で得ることができる。
【0025】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。
【0026】
【実施例】
[実施例に用いた化合物]
2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、酸化ニッケル、二酸化マンガン:
いずれも関東化学(株)試薬を用いた。
過酸化水素:
東海電化工業株式会社製
【0027】
実施例1
内部をテフロンライニング加工を施した容器に、脱イオン水227.2kgを入れ85℃に加温してから、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン345.4kg(2.2キロモル)を加えて攪拌し、スラリー状とした。
【0028】
液温を85℃に維持し、攪拌しながら1時間かけて35%過酸化水素水427.4kg(4.4キロモル)を滴下した。全量の過酸化水素水を添加した後、70℃とし、この温度で10時間撹拌を続け反応を完結せしめた。
【0029】
反応終了後、粉末状の二酸化マンガンを300g添加し、70℃で3時間攪拌した後、ラインフィルターで二酸化マンガンを濾別し、濃度38.7%の2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オン水溶液を958kg得た(収率98.0%)。
【0030】
実施例2
ガラス製容器に、脱イオン水297.4gを加えて85℃に加熱してから、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン314.0g(2.0モル)を入れて攪拌し、スラリー状とした。
【0031】
このスラリーを85℃に保ちながら、攪拌下1時間かけて35%過酸化水素水388.6g(4.0モル)を滴下し、滴下してから75℃とし、この温度で10時間撹拌を続けた。
【0032】
反応終了後、粉末状の酸化ニッケルを1.0g添加し、70℃で3時間攪拌した後、ガラス濾紙で吸引濾過して酸化ニッケルを除去し、濾別後の水溶液を減圧乾燥して結晶状の2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オン339.5g(収率98.7%)を得た。
【0033】
比較例1
ステンレス製容器を用いて実施例2と同じ方法で反応を行った。
【0034】
ステンレス製容器に、脱イオン水297.4gを加えて85℃に加熱してから、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン314.0g(2.0モル)を入れて攪拌し、スラリー状とした。
【0035】
このスラリーを85℃に保ちながら、攪拌下1時間かけて35%過酸化水素水388.6g(4.0モル)を滴下し、滴下してから70℃とし、この温度で10時間撹拌を続けた。
【0036】
反応終了後、粉末状の酸化ニッケルを1.0g添加し、70℃で3時間攪拌した後、ガラス濾紙で吸引濾過して酸化ニッケルを除去し、濾別後の水溶液を減圧乾燥して2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オン82.6gと原料2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン237.1gの混合品を得た(2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オン収率23%)。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オンを高収率で、かつ反応後に固液分離操作を行うだけで、高純度で製造することができる。
Claims (1)
- 4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを過酸化水素で酸化して4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンを製造する方法において、接液部が合成樹脂あるいはガラスよりなる反応容器を用い、酸化触媒の不存在下に、酸化反応を行わせしめ、酸化反応終了後に酸化ニッケルおよび二酸化マンガンのうちの少なくとも1種の金属酸化物を添加して残存する過酸化水素を分解し、しかる後に該金属酸化物を固液分離操作によって除去することを特徴とする4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オンの製造方法。
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