JP4416278B2 - 排水ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空調装置に装備されてドレイン水の排水に使用される排水ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の排水ポンプは、下部に吸入口を、上部側面に吐出口を有するポンプ本体内に板状の羽根を有する回転体を収容し、この回転体をモータにより駆動して排水を行うもので、大きな揚程を必要とはしないが、空調装置の室内ユニットに備えられるので、静かな運転が必要とされる。特開平8−189662号公報には、本出願人が提案した低騒音の排水ポンプが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の排水ポンプにあっては、回転する羽根の内周に、水と空気との境界面が形成される。この気液境界面の形成は、運転条件、特にポンプ揚程により変化し、騒音の発生量も変化する。本発明は、揚程が変化しても、騒音発生を低い状態に保つことができる排水ポンプを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の排水ポンプは、下端部に吸入口を設け、上部側面に吐出口を設けたポンプ本体と、ポンプ本体に回転自在に納められる羽根部材と、該羽根部材を駆動するモータとからなり、上記羽根部材は、上記モータの出力軸に連結されるシャフト部と、シャフト部から半径方向に延びる板状の大径羽根と、大径羽根の下部に連結され上記出力軸の軸方向に延びる小径羽根と、上記大径羽根の外周縁を連結する円筒部材と、円筒部材の下部に設けられ上記大径羽根の下縁部に連結されるとともに開口部を有する底面部材とを備え、上記羽根部材の回転により上記円筒部材の内周面よりも外側に生じる気液境界面が上記円筒部材の上面に位置するように上記円筒部材が厚く形成されており、かつ上記大径羽根は、その外周縁が上記円筒部材の内側に位置するとともに上縁が上記円筒部材の上面よりも上方に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0005】
また、上記大径羽根の外周縁は、円筒部材の内面から上方に立ち上がる立ち上がり部を有しているか、又は、大径羽根の外周縁は、円筒部材の平面と平行に内径側に切り込まれた平坦面と該平坦面の端部から上方に立ち上がる立ち上がり部とを有しているように形成することができる。
【0006】
そして、上記大径羽根の上記立ち上がり部は、垂直面、円弧面、又はテーパー面形成することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明が適用される排水ポンプの使用状態を示す説明図である。全体を符号1で示す排水ポンプは、ポンプ本体10と、ポンプ本体10内に装備される羽根部材100を駆動するモータ50を有する。ポンプ本体10は、内部にポンプ室16が形成され、ポンプ室16に吸込口12と吐出口14が連通される。
【0008】
例えば、空調装置の室内ユニットに設けられるドレインパン60は、室内ユニット内で発生するドレイン水Dを収容する。排水ポンプ1は、このドレインパン60内のドレイン水Dを吸水し、吐出口14に連結されるホース70を介してドレイン水をユニット外へ排出する。この時の排水ポンプ1の揚程Hは、ドレイン水の量やユニットの設置個所等により変化する。
【0009】
図2は、ポンプ部の詳細を示す平面図と断面図である。ポンプ本体10の上部は開口しており、羽根部材100を挿入した後に蓋部材30をポンプ本体10に結合する。蓋部材30は、中央に羽根部材100のシャフト110が貫通する貫通32を有する。この貫通32を通って、ドレイン水が噴出する場合があるので、シール部材34を設けてモータ50側への水の飛散を防止する。
【0010】
羽根部材100は、樹脂を成形してつくられ、シャフト110と、シャフト110の下部から半径方向に延びる板状の大径羽根130を有する。図2の実施例では、4枚の大径羽根130を有する。
【0011】
大径羽根130の外周縁は、円筒部材120で連結される。この円筒部材120の下部は、半径方向内側に折り曲げられて、底面部材140として一体に連結される。底面部材140の中心部には、開口部150が形成される。
【0012】
したがって、大径羽根130の下縁部は、底面部材140と連結され、底面部材140の開口部150からテーパー縁132として突出し、小径羽根160に連結される。小径羽根160は4枚の板状の羽根を構成する。4枚の大径羽根130の中間部に、円筒部材120から底面部材140に沿って内側に延びる4枚の補助大径羽根135を設けてある。
【0013】
この羽根部材100を回転させて揚水を行うと、ポンプ室内の水は仮想線Wで示すような水と大気の境界面、即ち気液境界面が形成される。この気液境界面Wは、揚程Hにより形状が変化し、揚程Hが高いときには、円筒部材120の内側に気液境界面Wが形成される。この状態にあっては、空気の気泡の発生は少なく、また発生した気泡は円筒部材120の内側に閉じ込められるので、気泡に起因する騒音の発生は少ない。
【0014】
揚程Hが小さくなると、この気液境界面Wが半径方向に拡がり、気泡の発生量が増加する。そして、この気液境界面Wが羽根部材100の円筒部材120の上縁部に一致する近傍で、騒音が増大することが実験により確認された。この現象は、気液境界面 付近で発生する気泡が、円筒部材120上面で回転する大径羽根134や補助大径羽根135に衝突し、気泡がつぶされる際に騒音が発生することによるものと考えられる。上述した実験とその解析に基づいて、羽根部材の形状、構造の改良を図った。
【0015】
図3は、改良された羽根200を装備した排水ポンプのポンプ部の平面図と断面図を示す。羽根部材200は、樹脂を成形してつくられ、シャフト210と、シャフト210の下部から半径方向に延びる板状の大径羽根230を有する。図の実施例では、4枚の大径羽根230を有する。
【0016】
大径羽根230の外周縁は、円筒部材220で連結される。この円筒部材220の下部は、半径方向内側に折り曲げられて、底面部材240として一体に連結される。底面部材240の中心部には、開口部250が形成される。
【0017】
したがって、大径羽根230の下縁部は、底面部材240と連結され、底面部材240の開口部250からテーパー縁232として突出し、小径羽根260に連結される。小径羽根260は4枚の板状の羽根を構成する。4枚の大径羽根230の中間部に、円筒部材220の内周面から底面部材240に沿って内側に延びる4枚の補助大径羽根235を設けてある。
【0018】
図4は、円筒部材220の上面220aと大径羽根230の外周縁との形状、構造を示す説明図である。この羽根200にあっては、円筒部材220の厚さ寸法tを従来の羽根より大きくしてある。これは、円筒部材220の上面220a上に形成される気液境界面をスムーズに流し気泡の発生を抑制することを目的としている。大径羽根230の外周縁は、円筒部材220の内周面220bから上方に立ち上がる立ち上がり部を有している。
【0019】
大径羽根230(補助大径羽根235も同様であるので説明を省略する。)は直径寸法Dを有し、図の(a)の例においては、その外周縁を形成する立ち上がり部は、円筒部材220の内面220bからこれと平行に上方に立ち上がる垂直面230aに形成されている。
【0020】
図6は、横軸に大径羽根の外径寸法Dに対する円筒部材の厚さ寸法tの割合をパーセントで示し、例えば実用上の揚程が500mmの場合で、揚程を例えば100〜150mmに設定したときの騒音の発生量(縦軸に示す)を測定した実験結果を示す。大径羽根の外径寸法に対して、円筒部材の厚さ寸法を約5%以上としたときに、騒音の低減効果を得ることができることが判明した。
【0021】
これは、円筒部材120上面で回転する大径羽根が存在せず、かつ気液境界面を円筒部材120上に位置するように円筒部材120を厚く形成することで気泡の発生を抑制し、気液境界面の気泡と水をかき混ぜないことにより騒音が低減されていることに基づく。
【0022】
図4の(b)は、大径羽根230の外周縁を形成する立ち上がり部が円弧面230bに形成されている例を示し、図4の(c)は、大径羽根230の外縁部を形成する立ち上がり部がテーパー面230cに形成されている例を示す。
【0023】
図5は、大径羽根230の外周縁を円筒部材220の上面220aと同一の平面を形成するように変形方向内側に切り欠いて形成した平坦面230d、この平坦面230dの端部から上方に立ち上がる立ち上がり部とを有する例を示す。図5の(a)は、外周縁の立ち上がり部を垂直面230eに形成した例を、(b)は立ち上がり部を円弧面230fに形成した例を、(c)は立ち上がり部をテーパー面230gに形成した例を示す。いずれの形状においても、図6に示すような効果を得ることができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の排水ポンプは以上のように、回転体である羽根部材の羽根の周囲に形成される気液境界面が揚程により変化することを観察し、揚程の変化によって、気液境界面での気泡の発生を抑制するように羽根の形状、構造の改良を図ったものである。この改良により、排出ポンプ全体の構造を変更することなく、運転音の静かな排水ポンプを得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の排水ポンプの作用を示す説明図。
【図2】排水ポンプの気液境界面を示す説明図。
【図3】本発明の排水ポンプを示す説明図。
【図4】本発明の排水ポンプの要部を示す拡大図。
【図5】本発明の排水ポンプの要部を示す拡大図。
【図6】本発明の効果を示す説明図。
【符号の説明】
1 排水ポンプ
10 ポンプ本体
12 吸込口
14 吐出口
16 ポンプ室
30 蓋部材
50 モータ
60 ドレインパン
100 羽根部材
110 シャフト部材
120,220 円筒部材
130,230 大径羽根
140,240 底面部材
160,260 小径羽根
220a 円筒部材220の上面
220b 円筒部材220の内周面
230a 垂直面 230b 円弧面
230c テーパー面 230d 平坦面
230e 垂直面 230f 円弧面
230g テーパー面
気液境界面

Claims (7)

  1. 下端部に吸入口を設け、上部側面に吐出口を設けたポンプ本体と、ポンプ本体に回転自在に納められる羽根部材と、該羽根部材を駆動するモータとからなり、上記羽根部材は、上記モータの出力軸に連結されるシャフト部と、シャフト部から半径方向に延びる板状の大径羽根と、大径羽根の下部に連結され上記出力軸の軸方向に延びる小径羽根と、上記大径羽根の外周縁を連結する円筒部材と、円筒部材の下部に設けられ上記大径羽根の下縁部に連結されるとともに開口部を有する底面部材とを備え、上記羽根部材の回転により上記円筒部材の内周面よりも外側に生じる気液境界面が上記円筒部材の上面に位置するように上記円筒部材が厚く形成されており、かつ上記大径羽根は、その外周縁が上記円筒部材の内側に位置するとともに上縁が上記円筒部材の上面よりも上方に位置するように形成されていることを特徴とする排水ポンプ。
  2. 上記円筒部材の厚さは、上記大径羽根の外径寸法に対して5%〜11%に設定されていることを特徴とする請求項1記載の排水ポンプ。
  3. 上記大径羽根の上記周縁は、上記円筒部材の内面から上方に立ち上がる立ち上がり部を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の排水ポンプ。
  4. 上記大径羽根の上記周縁は、上記円筒部材の面と平行に内径側に切り込まれた平坦面と該平坦面の端部から上方に立ち上がる立ち上がり部とを有していることを特徴とする請求項1又は2記載の排水ポンプ。
  5. 上記大径羽根の上記立ち上がり部が垂直面形成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の排水ポンプ。
  6. 上記大径羽根の上記立ち上がり部が円弧面形成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の排水ポンプ。
  7. 上記大径羽根の上記立ち上がり部がテーパー面形成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の排水ポンプ。
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