JP4416060B2 - 動力伝動用ベルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は動力伝動用ベルトに係り、詳しくは特定のエチレン−α−オレフィンエラストマーを接着ゴム層と圧縮ゴム層の少なくとも一方に用いることにより、優れた屈曲疲労性、耐熱性を有し、かつ耐寒、耐摩耗性、耐粘着摩耗性を備えた高耐久性動力伝動用ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギー化、コンパクト化の社会的要請を背景に、自動車のエンジンルーム周辺の雰囲気温度は従来に比べて上昇して来ている。これにともなって動力伝動用ベルトの使用環境温度も高くなってきた。従来、動力伝動用ベルトは主として天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが使用されてきたが、高温雰囲気下では、硬化した圧縮ゴム層で早期にクラックを生じるという問題が発生した。
【0003】
このようなベルトの早期破損現象に対し、従来からクロロプレンゴムの耐熱性の改善が検討され、ある程度の改良が行なわれてきたもののクロロプレンゴムを使用している限り限界があって現在のところ充分な効果を得るには至っていない。
【0004】
このため、耐熱性に優れるクロロスルフォン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム等のように主鎖が高度に飽和され、又は完全に飽和されているゴムの使用が検討されている。このうち、一般にクロロスルフォン化ポリエチレンは動的疲労性、耐摩耗性、耐油性においてはクロロプレンゴムと同等であるが、耐水性においては加硫系、特に受酸剤の影響が大きいことが知られている。通常、クロロスルフォン化ポリエチレンの受酸剤としてはMgO、PbO等の酸化物が使用されていた。
【0005】
しかし、PbO、Pb3 O4 等の鉛化合物の受酸剤を使用すれば、耐水性の良好なベルトが得られるが、公害、衛生上の問題から鉛化合物の使用は好ましくない。又、MgOを受酸剤として使用した場合には、架橋反応中に生成するMgCl2 により耐水性は著しく損なわれ、ベルトへの適応は不適当であった。一方、金属酸化物以外の受酸剤としてエポキシ系の受酸剤を使用すれば、耐水性の良好な組成物を得ることは可能であるが、臭気の問題等が生じて人体に不快感を与える問題があった。
【0006】
また、この動力伝動用ベルトはクロロプレンゴムを用いたベルトに比べると高温雰囲気下でのベルト走行寿命が大きく向上し優れた耐熱性を有しているが、−30°C以下の低温雰囲気下でのベルト走行寿命が劣ることが明らかになった。この理由として、従来のクロロスルフォン化ポリエチレンゴムは、ポリエチレンをクロロスルフォン化したもので、塩素を含有しているため低温下では塩素の凝集エネルギ−が大きくなって低温領域でゴムの硬化が起こってゴム弾性を欠き、割れ易くなるためと推定される。
【0007】
このため、最近では、クロロプレンゴムに代わってα−β−不飽和有機酸の金属塩で補強されたエチレン−α−オレフィンエラストマーを伝動ベルトに使用することが提案され、特表平9−500930号公報に開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴムのようなエチレン−α−オレフィンエラストマーはクロロプレンゴムに比べて耐熱、耐寒性に優れているが、パーオキサイド加硫させたものでは屈曲疲労性に劣り、特にベルト走行時に高温雰囲気下で小径プーリを用いたレイアウトでは短時間でベルトゴムに亀裂が発生してしまうことがあった。
【0009】
一方、硫黄加硫系を用いたエチレン−α−オレフィンエラストマーは、パーオキサイド加硫させた場合に比べて屈曲疲労性は向上するが、架橋度を十分に上げることが困難で走行時に摩耗が激しく、とりわけVリブドベルトでは摩耗粉がリブ山間の底部に蓄積され、ベルト走行時に摩耗粉がベルトゴム表面に粘着(粘着摩耗)して発音しやすかった。
【0010】
本発明はこのような問題に対処するものであり、優れた屈曲疲労性、耐熱性を有し、かつ耐寒、耐摩耗性、耐粘着摩耗性を備えた高耐久性動力伝動用ベルトを提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1の発明では、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる伝動ベルトにおいて、接着ゴム層と圧縮ゴム層の少なくとも一方にエチレン−α−オレフィンエラストマーをパーオキサイド加硫したゴム組成物が使用され、該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のジエン含量を0.1〜3.5重量%にし、更にエチレン含量が50〜75重量%であり、そしてパーオキサイドの共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドをエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して0.2〜10重量部添加したため、ベルトの屈曲疲労性を大きく改善し、また優れた耐熱性、耐寒性、耐摩耗性を有する動力伝動用ベルトに仕上げることができる。
【0013】
本願の請求項2の発明では、エチレン−α−オレフィンエラストマーがジエン成分としてエチリデンノルボルネン、もしくはジシクロペンタジエンを有している動力伝動用ベルトにある。
【0015】
本願の請求項3の発明では、動力伝動用ベルトがベルト長手方向にそって心線を埋設した接着ゴムと、ベルトの周方向に延びる複数のリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトである。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1に示すVリブドベルト1は、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維を素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線2を接着ゴム層3中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層4を有している。この圧縮ゴム層4にはベルト長手方向にのびる断面略三角形の複数のリブ部7が、またベルト表面には付着したゴム付帆布5が設けられている。
【0017】
他のベルトとしてカットエッジタイプのVベルト21にも使用される。このベルト21は、図2に示すように心線23を埋設した接着ゴム層24と圧縮ゴム26とから構成され、更に上記接着ゴム層24及び圧縮ゴム層26の各表面層にゴム付帆布22を積層している。
【0018】
前記圧縮ゴム層4、26と接着ゴム層3、24の少なくとも一方に使用されるエチレン−α−オレフィンエラストマーは、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)からなるゴムをいう。ジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどがあげられる。
【0019】
該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のジエン含量は、0.1〜3.5重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%であり、0.1重量%未満では、ベルト走行によりゴムが軟化して劣化し、発音しやすくなる。一方、3.5重量%を超えると、ジエン成分がポリマー主鎖であるエチレン−プロピレン鎖の屈曲の妨げに大きく関与し、ベルト屈曲走行時に圧縮ゴム層に亀裂が発生しやすくなる。
【0020】
上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。
【0021】
尚、エチレン−α−オレフィンエラストマーはジエン含量の違うものをブレンドしてもよく、ブレンドするポリマーの数は問わないが、総ジエン含量は前記の範囲を満足する必要がある。また、ブレンドはジエン成分を含有するエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーとジエン成分を含有しないエチレン−プロピレンコポリマー等の間で行われてもかまわない。
【0022】
エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーでは硫黄加硫させるための架橋サイトとして二重結合を有するジエン成分を分子内に導入しているが、ジエン含量が少ないと架橋密度が小さくなるため、市販品ではジエン含量が3.5重量%を超えるものが多い。パーオキサイド加硫させる場合でも、ジエン含量が少なくなると、架橋密度が低下し、粘着摩耗しやすくなる。
【0023】
この粘着摩耗を防ぐために使用される好ましいエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、エチレン含量が50〜75重量%のものがよい。エチレン含量が50重量%未満の場合には、ベルト走行時に摩耗量が多くなり、また粘着摩耗が発生しやすくなる。一方、75重量%を超えるとエチレン鎖の結晶化のため耐寒性が低下する。
【0024】
また、パーオキサイドの共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドを添加することができる。N,N’−m−フェニレンジマレイミドの添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して0.2〜10重量部であり、0.2重量部未満の場合には、架橋密度が小さくなり耐摩耗性、耐粘着摩耗性の改善効果が小さく、一方10重量部を越えると加硫ゴムの伸びの低下が著しく、耐屈曲性に問題が生じる。
【0025】
更に、硫黄をエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して0.01〜1重量部添加することにより、加硫ゴムの伸びの低下を制御することができる。1重量部を越えると、物性が低下し、ベルト走行時の摩耗性が大きく、粘着摩耗性が発生する。
【0026】
上記有機過酸化物としては、通常、ゴム、樹脂の架橋に使用されているジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2・5−ジメチル−2・5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3,1・3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1・1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等があり、熱分解による1分間の半減期が150〜250°Cのものが好ましい。
その添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して約1〜8重量部であり、好ましくは1.5〜4重量部である。
【0027】
また、圧縮ゴム層4、26には、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、アラミドからなる短繊維を混入して圧縮ゴム層4、26の耐側圧性を向上させるとともに、プーリと接する面になる圧縮ゴム層4、26の表面をグラインダーによって研磨加工して該短繊維を突出させる。圧縮ゴム層4、26の表面の摩擦係数は低下して、ベルト走行時の騒音を軽減する。これらの短繊維のうち、剛直で強度を有し、しかも耐摩耗性を有するアラミド短繊維が最も効果がある。
【0028】
上記アラミド短繊維が前述の効果を充分に発揮するためには、アラミド繊維の繊維長さは1〜20mmで、その添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して1〜30重量部である。このアラミド繊維は分子構造中に芳香環をもつアラミド、例えば商品名コーネックス、ノーメックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等である。
【0029】
また、圧縮ゴム層4、26には、マトリクスゴムであるエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して、エチレン−α−オレフィンエラストマーと繊維径1.0μm以下、好ましくは0.05〜0.8μmの微小短繊維とをグラフト結合した微小短繊維強化ゴムを繊維分で1〜50重量部、好ましくは5〜25重量部含有してもよい。上記微小短繊維強化ゴムの配合量が1重量部未満では耐摩耗性が充分でなく、また50重量部を越えるとゴム組成物の伸びが低下し、耐熱性、耐屈曲性が低下する。
【0030】
この微小短繊維強化ゴムは、これを構成しているエチレン−α−オレフィンエラストマーが圧縮ゴム層4,26のマトリクスゴムのエチレン−α−オレフィンエラストマーと全く同質かもしくは類似しているため、マトリクスゴムと良好に接合する。このため、微小短繊維強化ゴムとマトリクスゴムとの間、あるいは微小短繊維強化ゴム中でもエチレン−α−オレフィンエラストマーと微小短繊維とが化学結合しているため、圧縮ゴム層4、26では亀裂が入りにくく、たとえ亀裂が発生しても伝播しにくい。
【0031】
この微小短繊維強化ゴムはゴム成分を連続相とし、その中に微小短繊維が微細な形態で分散し、微小短繊維はその界面でゴム成分と強固な化学結合、あるいは相互作用している。このため、これを含んだゴム層には亀裂が入りにくく、しかも亀裂が入っても伝播しにくい。しかも、これを使用したベルトも耐熱性、耐寒性、耐屈曲性、耐摩耗性に優れる。
【0032】
更に、圧縮ゴム層4、26には、必要に応じてカーボンブラック、シリカなどの補強剤、クレー、炭酸カルシウムなどの充填剤、軟化剤、加工助剤、老化防止剤、TAICなどの共架橋剤などの各種薬剤を添加してもよい。
【0033】
また、エチレン−α−オレフィンエラストマーとともにニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロプレン、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、CSM、ACSM、SBRをブレンドすることもできる。
【0034】
水素化ニトリルゴムは水素添加率80%以上で、耐熱性及び耐オゾン性の特性を発揮するために、好ましくは90%以上が良い。水素添加率80%未満の水素化ニトリルゴムは、耐熱性及び耐オゾン性は極度に低下する。耐油性及び耐寒性を考慮すると、結合アクリロニトリル量は20〜45%の範囲が好ましい。
【0035】
クロロスルフォン化ポリエチレンは塩素含有量15〜35重量%、好ましくは25〜32重量%で、かつ硫黄含有量が0.5〜2.5重量%の範囲になるようにクロロスルフォン化した直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0036】
心線2、23にはポリエチレンテレフタレート繊維、エチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維、ポリアミド繊維からなるロープが使用され、ゴムとの接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL液)に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行なった後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0037】
本発明で使用するエチレン−2,6−ナフタレートは、通常ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下に適当な条件のもとにエチレングリコールと縮重合させることによって合成させる。このとき、エチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加すれば、共重合体ポリエステルが合成される。
【0038】
上記心線の接着処理は、まず(1)未処理コードをエポキシ化合物やイソシアネート化合物から選ばれた処理液を入れたタンクに含浸してプレディップした後、(2)160〜200°Cに温度設定した乾燥炉に30〜600秒間通して乾燥し、(3)続いてRFL液からなる接着液を入れたタンクに浸漬し、(4)210〜260°Cに温度設定した延伸熱固定処理機に30〜600秒間通して−1〜3%延伸して延伸処理コードとする。
【0039】
RFL液はレゾルシンとホルマリンとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR等である。
【0040】
上記カバー帆布5、22は綿、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アラミド繊維からなる糸を用いて、平織、綾織、朱子織等に製織した布である。無論、カバー帆布5、22を使用しない場合もある。
【0041】
また、上記ベルト1、21に使用する圧縮ゴム層4、26のゴム組成物には、通常使用されるカーボンブラック、可塑剤、老化防止剤、加工助剤を配合することができる。前記各成分を混合する方法としては特に制限はなく、例えばバンバリーミキサー、ニーダー等を用い、適宜公知の手段、方法によって混練することができる。
【0042】
Vリブドベルト1の製造方法の一例は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に1〜複数枚のカバー帆布とクッションゴム層とを巻き付けた後、この上にロープからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮ゴム層を順次巻き付けて積層体を得た後、これを加硫して加硫スリーブを得る。
次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の加硫スリーブに当接するように移動して加硫スリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研削する。
このようにして得られた加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該加硫スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜6、比較例1〜6
本実施例で製造したVリブドベルトでは、ポリエステル繊維のロープからなる心線を接着ゴム層内に埋設し、その上側にゴム付綿帆布を2プライ積層し、他方接着ゴム層の下側に設けた圧縮ゴム層に3個のリブをベルト長手方向に配したものである。
得られたVリブドベルトはRMA規格による長さ975mmのK型3リブドベルトであり、リブピッチ3.56mm、リブ高さ2.9mm、ベルト厚さ5.3mm、リブ角度40°である。
【0044】
ここで圧縮ゴム層を表1に示すゴム組成物から調製し、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延したものを用いた。圧縮ゴム層には短繊維が含まれベルト幅方向に配向している。接着ゴム層は表1に示すゴム組成物からカット糸を除去したゴム配合になる。
また、比較例6ではクロロプレンゴム配合物を圧縮ゴム層および接着ゴム層に使用した場合を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
ベルトの製造方法は従来の方法であり、まずフラットな円筒モールドに2プライのゴム付綿帆布を巻いた後、接着ゴム層を巻き付けて、心線をスピニングし、圧縮ゴム層を設置した後、圧縮ゴム層の上に加硫用ジャケットを挿入する。次いで、成形モールドを加硫缶内に入れ、加硫した後、筒状の加硫スリーブをモールドから取り出し、該スリーブの圧縮ゴム層をグラインダーによってリブに成形し、成形体から個々のベルトに切断する工程からなっている。
【0047】
このようにして得られたVリブドベルトの耐熱屈曲性試験、粘着摩耗試験、および耐寒走行試験の結果は表2、3に示される。
【0048】
耐熱屈曲性試験の評価に用いた走行試験機は、駆動プーリ(直径60mm)、アイドラープーリ(直径50mm)、従動プーリ(直径50mm)、テンションプーリ(直径50mm)、そしてアイドラープーリ(直径50mm)とを順に配置したものである。試験機の各プーリにベルトを掛架し、ベルトのアイドラープーリへの巻き付け角度を90°にし、雰囲気温度130℃、駆動プーリの回転数5000rpm、ベルト張力が800N/リブになるように駆動プーリに荷重を付与した後、走行させ、心線に達する亀裂が6個発生するまでの時間を調べた。
【0049】
粘着摩耗試験では、3リブのVリブドベルトを室温下で駆動プーリ(直径120mm)、従動プーリ(直径120mm)、これにアイドラープーリ(直径45mm)に設置し、従動プーリに負荷12馬力、アイドラープーリの取付荷重85kgf、回転数4900で48時間走行させた後のベルト表面の粘着摩耗の有無を調べた。
【0050】
更に、耐寒走行試験の評価方法は、3リブのVリブドベルトを駆動プーリ(直径140mm)とテンションプーリ(直径45mm)と背面アイドラプーリ(直径70mm)に掛架し、テンションプーリに85kgfの荷重を与て、−40°Cの雰囲気下で回転数700rpmで18時間予冷後、1分間走行させ、その後2分間停止し、これを繰り返して心線に達する亀裂が4個発生するまでの時間を調べた。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表2、3の走行試験の結果から明らかなように、リブ部としてジエン含量が0.1〜3.5重量%であり、またエチレン含量が50〜75重量%であるEPDMゴム組成物を用いた本実施例のベルトは、比較例のベルトに比べ粘着摩耗もなく、耐熱屈曲性、更には耐寒走行にも優れていることが判る。
特に、比較例5においてはエチレン含量が50重量%未満になると、粘着摩耗が発生する。
【0054】
【発明の効果】
以上のように本願の請求項の発明では、接着ゴム層と圧縮ゴム層の少なくとも一方にエチレン−α−オレフィンエラストマーをパーオキサイド加硫したゴム組成物が使用され、該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のジエン含量を0.1〜3.5重量%にし、更にエチレン含量を50〜75重量%に特定し、そしてパーオキサイドの共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドをエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して0.2〜10重量部添加したため、ベルトの屈曲疲労性を改善し、優れた耐熱性、耐寒性、耐摩耗性をもつ動力伝動用ベルトの仕上げることができ、またベルト走行時の粘着摩耗を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るVリブドベルトの縦断面図である。
【図2】本発明に係るVカットエッジタイプのVベルトの縦断面図である。
【符号の説明】
1 Vリブドベルト
2、23 心線
3、24 接着ゴム層
4 、26 圧縮ゴム層
5、22 ゴム付帆布
7 リブ部
21 Vベルト
Claims (3)
- ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる伝動ベルトにおいて、接着ゴム層と圧縮ゴム層の少なくとも一方にエチレン−α−オレフィンエラストマーをパーオキサイド加硫したゴム組成物が使用され、該エチレン−α−オレフィンエラストマー中のジエン含量が0.1〜3.5重量%であり、更にエチレン含量が50〜75重量%であり、そしてパーオキサイドの共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドをエチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して0.2〜10重量部添加したことを特徴とする動力伝動用ベルト。
- エチレン−α−オレフィンエラストマーがジエン成分としてエチリデンノルボルネン、もしくはジシクロペンタジエンを有している請求項1記載の動力伝動用ベルト。
- 動力伝動用ベルトがベルト長手方向にそって心線を埋設した接着ゴムと、ベルトの周方向に延びる複数のリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトである請求項1、または2記載の動力伝動用ベルト。
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