JP4415790B2 - 内燃機関の吸気制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、内燃機関のシリンダ内に吸入される吸入空気量を制御する吸気制御装置に関し、特に、吸気弁のバルブリフト特性の可変制御によって吸入空気量の制御を達成するようにした内燃機関の吸気制御装置に関する。
ガソリン機関においては、一般に吸気通路中に設けたスロットル弁の開度制御によって吸気量を制御しているが、良く知られているように、この種の方式では、特にスロットル弁開度の小さな中低負荷時におけるポンピングロスが大きい、という問題がある。これに対し、吸気弁の開閉時期やリフト量を変化させることで、スロットル弁に依存せずに吸気量を制御しようとする試みが以前からなされており、この技術を利用して、ディーゼル機関と同様に吸気系にスロットル弁を具備しないいわゆるスロットルレスの構成を実現することが提案されている。
特許文献1には、本出願人が先に提案した吸気弁のリフト量および作動角さらにはそのリフトの中心角を連続的に可変制御し得る可変動弁機構が開示されている。この種の可変動弁機構によれば、上述のように、スロットル弁の開度制御に依存せずにシリンダ内に流入する空気量を可変制御することが可能であり、特に負荷の小さな領域において、いわゆるスロットルレス運転ないしはスロットル弁の開度を十分に大きく保った運転を実現でき、ポンピングロスの大幅な低減が図れる。
特開2001−263105号公報
しかしながら、上記のように、2つの可変動弁機構を備え、機関運転状態に応じて吸気弁の作動角およびその中心角を互いに独立して可変制御する構成においては、運転状態が急に変化する過渡時に、2つの可変動弁機構がそれぞれ目標値に対しある程度の遅れをもって作動することから、吸入空気量が目標値からずれてしまう。特に、2つの可変動弁機構の中で、それぞれの機構的な遅れに比較的大きな差(つまり一方の遅れが比較的小さいのに他方の遅れが比較的大きい)がある場合に、その遅れの大きな方に影響されて吸入空気量が目標値からずれ、特に加速時におけるトルク応答性が悪化する可能性がある。
発明は、内燃機関の吸気弁の作動角を連続的に変更可能な第1可変動弁機構と、上記作動角の中心角を連続的に変更可能な第2可変動弁機構と、を備えているが、ある目標値へ変化するときに、第1可変動弁機構の機構的な遅れは比較的小さく、第2可変動弁機構の機構的な遅れは比較的大きい、ということを前提としている。例えば、上記第1可変動弁機構は電動アクチュエータにより駆動され、かつ上記第2可変動弁機構は油圧式アクチュエータにより駆動される場合には、特に機関の潤滑油圧が低い機関低速域などでは、第2可変動弁機構の遅れがかなり大きくなることがあり得る。
第1の発明は、アクセル開度と機関回転数とから静的目標負荷を求める静的目標負荷算出手段と、上記静的目標負荷と機関回転数とから上記第2可変動弁機構の目標中心角を算出する第2可変動弁機構目標角度算出手段と、この目標中心角に向かって変化する第2可変動弁機構の実際の中心角を検出ないしは算出して、第2可変動弁機構実角度相当値として出力する第2可変動弁機構実角度出力手段と、上記静的目標負荷に遅れ処理を施して動的目標負荷を算出する動的目標負荷算出手段と、作動角と中心角と機関回転数とこれらにより実現される負荷との四者の既知の関係に基づき、上記第2可変動弁機構実角度相当値と機関回転数と上記動的目標負荷と、から、上記第1可変動弁機構の目標作動角を算出する第1可変動弁機構目標角度算出手段と、を備えている。
すなわち、機構的な遅れの大きな第2可変動弁機構については、目標負荷と機関回転数とから目標中心角が与えられる。これにより、第2可変動弁機構は、この目標中心角へ向かって動作し、実際の中心角は徐々に変化していく。これに対し、機構的な遅れが相対的に小さい第1可変動弁機構については、徐々に変化していく中心角の実際の状態、つまり第2可変動弁機構実角度相当値を考慮して、その実際の中心角の下で目標負荷が得られるように、目標作動角が与えられる。第1可変動弁機構は、この目標作動角へ向かって比較的速やかに変化するので、アクセル開度に応じた負荷が実現される。
上記第2可変動弁機構実角度出力手段は、例えば、第2可変動弁機構の動作角度を測定するセンサにより得られた現在の中心角を、第2可変動弁機構実角度相当値として出力する。このようにすれば、実角度相当値を正確に得られる。
この場合、目標中心角と、第2可変動弁機構の動作角度を測定するセンサにより得られた現在の中心角と、の差から、現在の運転状態が過渡であるか定常であるかの判定を行い、定常であると判定した場合は目標中心角をそのまま第2可変動弁機構実角度相当値として出力するようにしてもよい。
あるいは上記第2可変動弁機構実角度出力手段は、第2可変動弁機構の目標中心角から推定される現在の中心角を、第2可変動弁機構実角度相当値とする。これによりセンサの測定誤差やノイズ等による値の振れがない実角度相当値が得られる。
上記の第1可変動弁機構目標角度算出手段における作動角と中心角と機関回転数とこれらにより実現される負荷との四者の既知の関係は、実測したデータ等から作成した多次元マップとして備えることができる。
記動的目標負荷は、例えば、運転者の感覚により適合したトルク応答性となるように、静的目標負荷に遅れ処理等の修正を加えたものであり、機構的な遅れが大きな第2可変動弁機構の目標中心角の算出の基礎として修正前の静的目標負荷を用いることで、過渡時の実際の中心角の遅れがより小さくなる。
また、第2の発明は内燃機関の吸気弁の作動角を連続的に変更可能な第1可変動弁機構と、上記作動角の中心角を連続的に変更可能な第2可変動弁機構と、アクセル開度と機関回転数とから静的目標負荷を求める静的目標負荷算出手段と、上記静的目標負荷に遅れ処理を施して動的目標負荷を算出する動的目標負荷算出手段と、上記動的目標負荷と機関回転数とから上記第2可変動弁機構の目標中心角を算出する第2可変動弁機構目標角度算出手段と、この目標中心角に向かって変化する第2可変動弁機構の実際の中心角を検出ないしは算出して、第2可変動弁機構実角度相当値として出力する第2可変動弁機構実角度出力手段と、作動角と中心角と機関回転数とこれらにより実現される負荷との四者の既知の関係をマップ化した多次元マップを参照して、上記第2可変動弁機構実角度相当値と機関回転数と上記動的目標負荷と、から、上記第1可変動弁機構の目標作動角を算出する第1可変動弁機構目標角度算出手段と、を備えている。
なお、第1,第2可変動弁機構の応答性つまり機構的な遅れの大小を厳密に比較・評価するのは、変化の対象が作動角と中心角とで異なるのみならず、ある一定のアクセル開度変化に対しても機関運転条件等によって各々の変化量が異なることから、一般に困難であると言えるが、実用上は、いつかの基準で対比することができる。例えば、アクセル開度に応じた目標負荷から各々の目標値を単純に与えるものと仮定して、内燃機関のアイドル状態から全開までアクセル開度を急激に変化させたときに、各可変動弁機構が全開に対応する各々の目標値に到達するまでの所要時間の長短によって、評価することが可能である。あるいは、各アクチュエータを通常の速度で動かして、第1可変動弁機構が最小作動角から最大作動角に変化するまでに必要な所要時間と、第2可変動弁機構が最遅角位置から最進角位置に変化するまでに必要な所要時間と、の対比によって評価することができる。あるいは、低負荷域からの加速時には、一般に、吸気弁閉時期が下死点に近付くように、作動角が増加するとともに中心角が遅角し、両者により定まる吸気弁閉時期が主に吸入空気量を左右するので、単位時間当たりの第1可変動弁機構による吸気弁閉時期の変化量と第2可変動弁機構による吸気弁閉時期の変化量との対比、などによっても評価が可能である。
この発明によれば、過渡時、特に加速時に、トルク応答性を高めることができる。特に、第1,第2可変動弁機構の中で、一方つまり第2可変動弁機構の機構的な遅れが大きい場合に、その影響を効果的に抑制することができる。
図1は、この発明に係る内燃機関の吸気弁駆動制御装置のシステム構成を示す構成説明図であって、内燃機関1は、吸気弁3と排気弁4とを有し、かつ吸気弁3の動弁機構として、吸気弁3のリフト・作動角を連続的に拡大・縮小させることが可能な第1可変動弁機構(VEL)5および作動角の中心角を連続的に遅進させることが可能な第2可変動弁機構(VTC)6を備えている。また、吸気通路7には、モータ等のアクチュエータにより開度が制御される負圧制御弁2が設けられている。ここで、上記負圧制御弁2は、吸気通路7内に、ブローバイガスの処理などのために必要な僅かな負圧(例えば−50mmHg)を発生させるために用いられており、吸入吸気量の調整は、上記第1、第2可変動弁機構5、6により吸気弁3のリフト特性を変更することで行われる。
より詳しくは、所定の低負荷側の領域(第1の領域)では、吸入負圧が一定(例えば−50mmHg)となるように負圧制御弁2の開度(目標開度tBCV)が制御される。そして、この一定の負圧を発生させながらリフト特性の変更で実現できる最大負荷を要求負荷が超える高負荷側の領域(第2の領域)では、その限界となる点のリフト特性に固定され、負荷、例えばアクセル開度APOの増加に伴い、負圧制御弁2の開度がさらに増加する。つまり、ある負荷までは比較的弱い吸入負圧を維持しつつ吸気弁3のリフト特性を変更することで吸入空気量の調整が行われ、全開領域に近い高負荷側の領域では、吸入負圧を減少させることによって、吸入空気量の調整が行われる。
これらの第1、第2可変動弁機構5、6および負圧制御弁2は、コントロールユニット10によって制御されている。
また、燃料噴射弁8が吸気通路7に配置されており、上記のように吸気弁3もしくは負圧制御弁2により調整された吸入空気量に応じた量の燃料が、この燃料噴射弁8から噴射される。従って、内燃機関1の出力は、第1の領域では、第1、第2可変動弁機構5、6により吸入空気量を調整することによって制御され、第2の領域では、負圧制御弁2により吸入空気量を調整することによって制御される。
上記のコントロールユニット10は、運転者により操作されるアクセルペダルに設けられたアクセル角度センサ11からのアクセル開度信号APOと、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数信号Neと、吸入空気量センサ13からの吸入空気量信号と、を受け取り、これらの信号に基づいて、燃料噴射量、点火時期、第1可変動弁機構目標角度(目標作動角)、第2可変動弁機構目標角度(目標中心角)をそれぞれ演算する。そして、要求の燃料噴射量および点火時期を実現するように燃料噴射弁8および点火プラグ9を制御するとともに、第1可変動弁機構目標角度、第2可変動弁機構目標角度を実現するための制御信号を、第1可変動弁機構5のアクチュエータおよび第2可変動弁機構6のアクチュエータへそれぞれ出力する。ここで、上記第1可変動弁機構5は、電動モータを用いたアクチュエータによって駆動され、第2可変動弁機構6は、機関潤滑油圧を油圧源とする油圧式アクチュエータによって駆動される。そして、目標値が変化したときの第1可変動弁機構5の機構的な遅れは比較的小さく、第2可変動弁機構6の機構的な遅れは比較的大きい。なお、上記第1可変動弁機構5および第2可変動弁機構6は、その機械的な構成は公知であり、例えば上述した特許文献1に記載の装置と同様の構成を有している。従って、その詳細な説明は省略する。
図2は、本発明の制御の第1実施例を示し、上記の構成における、第1可変動弁機構目標角度tVEL、第2可変動弁機構目標角度tVTCおよび負圧制御弁目標開度tBCVを算出する処理の概略的なフローチャートである。なお、ここでは、負荷を表す負荷パラメータとして、体積効率ηVを用いているが、これに代えて、他の負荷を表すパラメータを用いてもよい。まず、アクセル開度APOとエンジン回転数Neから静的目標体積効率tηVsを算出し(ステップ01)、この静的目標体積効率tηVsに後述する適宜な修正を加えて動的目標体積効率tηVを算出する(ステップ02)。次に、この動的目標体積効率tηVとエンジン回転数Neから第2可変動弁機構目標角度tVTCを算出し(ステップ03)、かつこの目標角度tVTCに対する第2可変動弁機構6の応答性遅れを考慮して第2可変動弁機構実角度相当値arVTCを算出する(ステップ04)。そして、この第2可変動弁機構実角度相当値arVTCを用いて、第1可変動弁機構目標角度tVELを算出する(ステップ05)。また、動的目標体積効率tηVから負圧制御弁目標開度tBCVを算出する(ステップ06)。このように、第1実施例では、第2可変動弁機構目標角度tVTCおよび第1可変動弁機構目標角度tVELを、いずれも静的目標体積効率tηVsではなく動的目標体積効率tηVを用いて算出する。
図3は、上述した第2可変動弁機構6の実角度相当値arVTCの算出処理を示すフローチャートであって、上記ステップ04の詳細を示す。この実施例では、センサによらずに、第2可変動弁機構目標角度tVTCから実角度相当値arVTCを推定するものとする。これは、基本的には第2可変動弁機構6の既知の応答特性に沿って徐々に変化していく実際の中心角の値を推定しようとするものであって、まず、アクチュエータの無駄時間に相当する無駄時間処理を行い(ステップ11)、加重平均処理を行った後(ステップ12)、変化率リミッタにより急激な変化を制限して、第2可変動弁機構実角度相当値arVTCを算出する(ステップ13)。最後に、次の加重平均処理に用いる1ステップ前実角度相当値arVTCzを更新する(ステップ14)。
図4は、この第1実施例の制御の内容を機能ブロック図として示したものである。ここで、APOはアクセル開度、Neはエンジン回転数、であり、これらに基づいて、静的目標体積効率演算部21において、静的目標体積効率tηVsが算出され、動的目標体積効率演算部22において、この静的目標体積効率tηVsを修正した動的目標体積効率tηVが算出される。この動的目標体積効率tηVとエンジン回転数Neとに基づいて、負圧制御弁目標開度演算部23において負圧制御弁目標開度tBCVが算出される。負圧制御弁2の開度は、この目標開度tBCVに沿って制御される。同じく、動的目標体積効率tηVとエンジン回転数Neとに基づいて、第2可変動弁機構目標角度算出マップmpVTC24から第2可変動弁機構目標角度tVTCを検索する。第2可変動弁機構6は、この目標角度tVTCに沿って制御される。そして、この第2可変動弁機構目標角度tVTCとエンジン回転数Neとに基づいて、第2可変動弁機構実角度相当値演算部25において、徐々に変化していく実際の中心角に相当する第2可変動弁機構実角度相当値arVTCが算出される。第1可変動弁機構目標角度設定マップmpVEL26は、作動角VELと中心角VTCとエンジン回転数Neとこれらにより実現される負荷つまり体積効率ηVとの四者の既知の関係をマップ化した多次元マップからなり、この第1可変動弁機構目標角度設定マップmpVEL26を参照して、動的目標体積効率tηVと第2可変動弁機構実角度相当値arVTCとエンジン回転数Neとに基づいて、これら3つのパラメータに対応する第1可変動弁機構目標角度tVELの値を検索する。
ここで、動的目標体積効率演算部22は、例えば、運転者の感覚により適合するような特性に、静的目標体積効率tηVsに遅れ処理等の修正を加えるものであり、過渡時のトルク応答性が好ましいものとなるように任意の特性に設定することが可能である。また、第2可変動弁機構目標角度算出マップmpVTC24には、定常で燃焼安定性を満たしながら燃費が最良となる作動角が目標角度tVTCとして割り付けられている。
なお、図示の実施例では、第2可変動弁機構目標角度算出マップmpVTC24から検索された目標角度tVTCを最終的な第2可変動弁機構目標角度tVTCとしているが、第2可変動弁機構目標角度算出マップmpVTC24から検索された目標角度tVTCにさらに過渡補正を行った値を最終的な第2可変動弁機構目標角度tVTCとしてもよい。また、第1可変動弁機構目標角度設定マップmpVEL26から直接、第1可変動弁機構目標角度tVELを検索しているが、作動角VELと中心角VTCとエンジン回転数Neと体積効率ηVとの関係を用いて、第1可変動弁機構目標角度tVELを演算により求めるようにしてもよい。
また図5は、上記第1実施例の上記第2可変動弁機構実角度相当値演算部25の詳細を示す機能ブロック図であり、前述した図3のフローチャートに相当する。前述したように、第2可変動弁機構目標角度tVTCに基づいて、無駄時間処理部31において無駄時間処理後目標角度tVTCdが算出される。この無駄時間処理後目標角度tVTCdとエンジン回転数Neおよび1ステップ前実角度相当値arVTCzに基づいて、加重平均処理部32において加重平均処理後目標角度tVTCkが算出される。そして、変化率リミッタ処理部33を介して第2可変動弁機構実角度相当値arVTCが出力されるとともに、これが、次の1ステップ前実角度相当値arVTCzとして加重平均処理部32に戻される。
次に、図6および図7に基づいて、上記実施例の作用を説明する。
図6は、上記第1実施例による過渡(加速)時の作用を示すタイムチャートである。これは、内燃機関の回転数がある回転数で一定に保たれていると仮定して、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度APO)を増やす過渡走行を行った際の作用であり、(a)目標体積効率tηV、(b)第1可変動弁機構角度(作動角)VEL、(c)第2可変動弁機構角度(中心角)VTC、(d)エンジントルク、の変化を対比して示している。ここで、第1可変動弁機構5の機構的な応答性は第2可変動弁機構6の応答性に比べて非常によく、無視できるものと仮定する。
走行中に時間t1からt3までアクセル開度の踏み込み量を増やすと、アクセル開度APOに対応した静的目標体積効率tηVsが(a)の符号A1で示す線のように得られ、動的目標体積効率tηVが(a)の符号A2で示す線のように得られる。
ここで、仮に、過渡時の補正を行わないものとして、この動的目標体積効率tηVから、あらかじめ体積効率ごとに設定されている静的な目標設定に基づき、第1可変動弁機構目標角度および第2可変動弁機構目標角度を算出したとすると、(b)の符号B1および(c)の符号C1でそれぞれ示す線のような特性となる。そして、それぞれの実際の角度、特に機構的な遅れを有する第2可変動弁機構6の実角度は、(c)の符号C2で示す線のような特性となり、この第2可変動弁機構6の中心角VTCの応答遅れの影響により、実際の内燃機関のトルク応答は、(d)の符号D1で示す線のような特性となる。なお、以下では、このように過渡時の補正を行わない例を「比較例」と呼ぶ。
これに対し、本実施例では、第1可変動弁機構5の目標角度tVELが、遅れを伴って変化する第2可変動弁機構6の実角度相当値arVTCを基礎として算出される。つまり、作動角VELと中心角VTCとエンジン回転数Neとこれらにより実現される体積効率ηVとの四者の関係を用いることにより、(a)の符号A2で示す動的目標体積効率tηVと(c)の符号C2で示す第2可変動弁機構6の実角度相当値arVTCとエンジン回転数Neとから、(b)の符号B2で示す線のように、要求される体積効率tηVを満たし得る第1可変動弁機構5の目標角度tVELが算出される。その結果、(d)の符号D2で示す線のように、目標とする動的目標体積効率tηVと同等のトルク応答が得られ、比較例のトルク応答より改善された特性となる。
図7は、上記のような過渡走行の際の吸気弁の最大リフト点(換言すれば中心角におけるリフト)の推移(変化の軌跡)と体積効率ηVを併せて示したグラフである。図の横軸が中心角VTC、縦軸が作動角(換言すればリフト)VELを示し、両者の組み合わせとして最大リフト点が定まる。そして、この最大リフト点は、体積効率ηVに相関する。なお、体積効率ηVは等高線状に示されているが、図示した範囲では、図の右上側が高負荷側つまり体積効率ηVが大となる。図6で例示した加速走行では、目標とする体積効率ηVが、符号Aで示す低負荷側の点から、符号Bで示す高負荷側の点まで増加する。
前述した比較例では、第1可変動弁機構5の目標角度tVELおよび第2可変動弁機構6の目標角度tVTCが、図中に黒丸で示す静的な目標設定に基づいて算出される結果、目標角度による最大リフト点は符号Xで示す線のように得られる。ここで、図6における時間t2の時点を考えると、動的目標体積効率tηVは、図6の符号A0で示す値であり、図7では符号Zで示す線が相当する。このとき、比較例では、第1可変動弁機構5の目標角度tVELおよび第2可変動弁機構6の目標角度tVTCは、それぞれ符号T10、T2で示す値となり、最大リフト点は符号C1で示す点となる。しかし、実際には、第2可変動弁機構6は応答遅れを伴うので、中心角VTCの実角度(これは推定される第2可変動弁機構実角度相当値arVTCに相当する)は、符号R2で示す値となり、この結果、最大リフト点は符号C2で示す点となる。従って、等高線状の体積効率ηVとの関係から理解できるように、実現できる体積効率ηVは、符号Zで示す動的目標体積効率tηVよりも小さくなってしまう。
これに対し本実施例では、作動角VELと中心角VTCとエンジン回転数Neとこれらにより実現される体積効率ηVとの関係をマップ化した第1可変動弁機構目標角度設定マップmpVEL26を参照して、第2可変動弁機構実角度相当値arVTCに対応する第1可変動弁機構目標角度tVELが検索されるので、図7に符号R2で示す第2可変動弁機構実角度相当値arVTCの下で、符号Zで示す動的目標体積効率tηVを満たす最大リフト点(符号C3)となるように、符号T1で示すように、第1可変動弁機構目標角度tVELが与えられる。その結果、過渡走行中の最大リフト点の推移は符号Yで示す矢印のようになる。つまり、第1可変動弁機構目標角度tVELは、線Xで示す静的な目標角度に比べて作動角VELが大きくなる方向に補正される。
次に、図8〜図11に基づいて、本発明の制御の第2実施例を説明する。
図8は、第2実施例において、第1可変動弁機構目標角度tVEL、第2可変動弁機構目標角度tVTCおよび負圧制御弁目標開度tBCVを算出する処理の概略的なフローチャートである。ここでは、第1実施例と同様に、負荷を表す負荷パラメータとして、体積効率ηVを用いているが、これに代えて他の負荷を表すパラメータを用いてもよい。この第2実施例は、第2可変動弁機構目標角度tVTCを静的目標体積効率tηVsから算出し、第1可変動弁機構目標角度tVELを動的目標体積効率tηVから算出するようにしたものであって、まず、アクセル開度APOとエンジン回転数Neから静的目標体積効率tηVsを算出し(ステップ01)、この静的目標体積効率tηVsとエンジン回転数Neから第2可変動弁機構目標角度tVTCを算出する(ステップ02)。次に、静的目標体積効率tηVsに適宜な修正を加えて動的目標体積効率tηVを算出する(ステップ03)。また、第1実施例と同じく第2可変動弁機構目標角度tVTCに対する第2可変動弁機構実角度相当値arVTCを算出し(ステップ04)、この第2可変動弁機構実角度相当値arVTCを用いて第1可変動弁機構目標角度tVELを算出する(ステップ05)。また、動的目標体積効率tηVから負圧制御弁目標開度tBCVを算出する(ステップ06)。このように、第2実施例では、第2可変動弁機構目標角度tVTCを、動的目標体積効率tηVではなく修正前の静的目標体積効率tηVsを用いて算出する。
図9は、この第2実施例の制御の内容を機能ブロック図として示したものである。ここで、アクセル開度APOおよびエンジン回転数Neに基づいて、静的目標体積効率演算部21において、静的目標体積効率tηVsが算出され、動的目標体積効率演算部22において、この静的目標体積効率tηVsを修正した動的目標体積効率tηVが算出される。この動的目標体積効率tηVとエンジン回転数Neとに基づいて、負圧制御弁目標開度演算部23において負圧制御弁目標開度tBCVが算出される。一方、修正前の静的目標体積効率tηVsとエンジン回転数Neとに基づいて、第2可変動弁機構目標角度算出マップmpVTC24から第2可変動弁機構目標角度tVTCを検索する。そして、この第2可変動弁機構目標角度tVTCとエンジン回転数Neとに基づいて、第2可変動弁機構実角度相当値演算部25において、徐々に変化していく実際の中心角に相当する第2可変動弁機構実角度相当値arVTCが算出される。第1実施例と同じく、第1可変動弁機構目標角度設定マップmpVEL26は、作動角VELと中心角VTCとエンジン回転数Neとこれらにより実現される負荷つまり体積効率ηVとの四者の既知の関係をマップ化した多次元マップからなり、この第1可変動弁機構目標角度設定マップmpVEL26を参照して、動的目標体積効率tηVと第2可変動弁機構実角度相当値arVTCとエンジン回転数Neとに基づいて、これら3つのパラメータに対応する第1可変動弁機構目標角度tVELの値を検索する。
前述したように、動的目標体積効率演算部22は、例えば、運転者の感覚により適合するような特性に、静的目標体積効率tηVsに遅れ処理等の修正を加えるものであり、過渡時のトルク応答性が好ましいものとなるように任意の特性に設定することが可能である。また、第2可変動弁機構目標角度算出マップmpVTC24には、定常で燃焼安定性を満たしながら燃費が最良となる作動角が目標角度tVTCとして割り付けられている。
また、図示の実施例では、第2可変動弁機構目標角度算出マップmpVTC24から検索された目標角度tVTCを最終的な第2可変動弁機構目標角度tVTCとしているが、第2可変動弁機構目標角度算出マップmpVTC24から検索された目標角度tVTCにさらに過渡補正を行った値を最終的な第2可変動弁機構目標角度tVTCとしてもよい。また、第1可変動弁機構目標角度設定マップmpVEL26から直接、第1可変動弁機構目標角度tVELを検索しているが、作動角VELと中心角VTCとエンジン回転数Neと体積効率ηVとの関係を用いて、第1可変動弁機構目標角度tVELを演算により求めるようにしてもよい。
次に、図10および図11に基づいて、上記第2実施例の作用を説明する。
図10は、上記第2実施例による過渡(加速)時の作用を示すタイムチャートである。これは、内燃機関の回転数がある回転数で一定に保たれていると仮定して、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度APO)を増やす過渡走行を行った際の作用であり、(a)目標体積効率tηV、(b)第1可変動弁機構角度(作動角)VEL、(c)第2可変動弁機構角度(中心角)VTC、(d)エンジントルク、の変化を対比して示している。ここで、第1可変動弁機構5の機構的な応答性は第2可変動弁機構6の応答性に比べて非常によく、無視できるものと仮定する。
走行中に時間t1からt3までアクセル開度の踏み込み量を増やすと、アクセル開度APOに対応した静的目標体積効率tηVsが(a)の符号A1で示す線のように得られ、動的目標体積効率tηVが(a)の符号A2で示す線のように得られる。
ここで、仮に、過渡時の補正を行わないものとして、この動的目標体積効率tηVから、あらかじめ体積効率ごとに設定されている静的な目標設定に基づき、第1可変動弁機構目標角度および第2可変動弁機構目標角度を算出したとすると、(b)の符号B1および(c)の符号C11でそれぞれ示す線のような特性となる。そして、それぞれの実際の角度、特に機構的な遅れを有する第2可変動弁機構6の実角度は、(c)の符号C21で示す線のような特性となり、この第2可変動弁機構6の中心角VTCの応答遅れの影響により、実際の内燃機関のトルク応答は、(d)の符号D11で示す線のような特性となる。なお、以下では、このように過渡時の補正を行わない例を「比較例」と呼ぶ。
これに対し、第2実施例では、静的目標体積効率tηVsから第2可変動弁機構目標角度tVTCを算出するので、該第2可変動弁機構目標角度tVTCは、(c)の符号C12で示す線のように得られ、第2可変動弁機構6の実角度(arVTC)は、該目標角度tVTCを動的目標体積効率tηVから算出する場合(C21)よりも遅角側になり、(c)の符号C22で示す線のような特性となる。
なお、仮に、このC22の特性の中心角VTCとB1の特性の作動角VELとによれば、トルク応答は、(d)の符号D12で示す線のような特性となる。以下では、これを「第2の比較例」と呼ぶこととする。
そして、本実施例では、前述した第1実施例と同じく、第1可変動弁機構5の目標角度tVELが、遅れを伴って変化する第2可変動弁機構6の実角度相当値arVTCを基礎として算出される。つまり、作動角VELと中心角VTCとエンジン回転数Neとこれらにより実現される体積効率ηVとの四者の関係を用いることにより、(a)の符号A2で示す動的目標体積効率tηVと(c)の符号C22で示す第2可変動弁機構6の実角度相当値arVTCとエンジン回転数Neとから、(b)の符号B2で示す線のように、要求される体積効率tηVを満たし得る第1可変動弁機構5の目標角度tVELが算出される。その結果、(d)の符号D2で示す線のように、目標とする動的目標体積効率tηVと同等のトルク応答が得られ、比較例のトルク応答より改善された特性となる。
図11は、上記第2実施例による過渡走行の際の吸気弁の最大リフト点の推移(変化の軌跡)と体積効率ηVを併せて示したグラフであり、前述した図7と同様のものである。図10で例示した加速走行では、目標とする体積効率ηVが、符号Aで示す低負荷側の点から、符号Bで示す高負荷側の点まで増加する。
前述した比較例では、第1可変動弁機構5の目標角度tVELおよび第2可変動弁機構6の目標角度tVTCが静的な目標設定から算出される結果、目標角度による最大リフト点は、符号X1で示す線のように得られる。また、本実施例のように静的目標体積効率tηVsから第2可変動弁機構目標角度tVTCを算出した場合、該第2可変動弁機構目標角度tVTCは、動的目標体積効率tηVから算出した場合よりも遅角側に得られるので、目標角度の最大リフト点は、符号X2で示す線のように得られる。ここで、図10における時間t2での場合を考えると、動的目標体積効率tηVは、図10の符号A0で示す値であり、図11では符号Zで示す線が相当する。このとき、比較例では、第1可変動弁機構5の目標角度tVELおよび第2可変動弁機構6の目標角度tVTCは、それぞれ符号T10、T21で示す値となり、最大リフト点は符号C11で示す点となる。しかし、実際には、第2可変動弁機構6は応答遅れを伴うので、中心角VTCの実角度(あるいは推定される実角度相当値)は、符号R21で示す値となり、この結果、最大リフト点は符号C21で示す点となる。従って、実現できる体積効率ηVは、符号Zで示す動的目標体積効率より小さくなってしまう。
また、第2可変動弁機構目標角度tVTCを静的目標体積効率tηVsから算出する場合の第2の比較例では、第1可変動弁機構5の目標角度tVELおよび第2可変動弁機構6の目標角度tVTCは、それぞれ符号T10、T22で示す値となり、最大リフト点は符号C12で示す点となる。しかし、実際には、第2可変動弁機構6の応答遅れにより中心角VTCの実角度は、符号R22で示す値となり、最大リフト点は符号C22で示す点となって、実現できる体積効率ηVは、やはり符号Zで示す動的目標体積効率より小さくなってしまう。
これに対し本実施例では、作動角VELと中心角VTCとエンジン回転数Neとこれらにより実現される体積効率ηVとの関係をマップ化した第1可変動弁機構目標角度設定マップmpVEL26を参照して、第2可変動弁機構実角度相当値arVTCに対応する第1可変動弁機構目標角度tVELが検索されるので、図11に符号R22で示す第2可変動弁機構実角度相当値arVTCの下で、符号Zで示す動的目標体積効率tηVを満たす最大リフト点(符号C3)となるように、符号T1で示すように、第1可変動弁機構目標角度tVELが与えられる。その結果、過渡走行中の最大リフト点の推移は符号Y2で示す矢印のようになる。つまり、第1可変動弁機構目標角度tVELは、線X1で示す静的な目標角度に比べて作動角VELが大きくなる方向に補正される。
また、符号Y1で示す第1実施例での最大リフト点の推移と比較して、第2実施例によれば、静的な目標角度を示す線X1からの第1可変動弁機構目標角度tVELの補正量がより小さくなる。
本発明に係る内燃機関の吸気制御装置のシステム構成を示す構成説明図。 吸気制御の第1実施例を示すフローチャート。 そのステップ04の詳細を示すフローチャート。 第1実施例の制御の機能ブロック図。 第2可変動弁機構実角度相当値演算部の詳細を示すブロック図。 第1実施例による加速時の補正を示すタイムチャート。 この加速の際の最大リフト点の推移を示すグラフ。 吸気制御の第2実施例を示すフローチャート。 第2実施例の制御の機能ブロック図。 第2実施例による加速時の補正を示すタイムチャート。 この加速の際の最大リフト点の推移を示すグラフ。
符号の説明
2…負圧制御弁
5…第1可変動弁機構
6…第2可変動弁機構
10…コントロールユニット
11…アクセル開度センサ

Claims (7)

  1. 内燃機関の吸気弁の作動角を連続的に変更可能な第1可変動弁機構と、
    上記作動角の中心角を連続的に変更可能な第2可変動弁機構と、
    アクセル開度と機関回転数とから静的目標負荷を求める静的目標負荷算出手段と、
    上記静的目標負荷と機関回転数とから上記第2可変動弁機構の目標中心角を算出する第2可変動弁機構目標角度算出手段と、
    この目標中心角に向かって変化する第2可変動弁機構の実際の中心角を検出ないしは算出して、第2可変動弁機構実角度相当値として出力する第2可変動弁機構実角度出力手段と、
    上記静的目標負荷に遅れ処理を施して動的目標負荷を算出する動的目標負荷算出手段と、
    作動角と中心角と機関回転数とこれらにより実現される負荷との四者の既知の関係に基づき、上記第2可変動弁機構実角度相当値と機関回転数と上記動的目標負荷と、から、上記第1可変動弁機構の目標作動角を算出する第1可変動弁機構目標角度算出手段と、
    を有することを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
  2. 上記第2可変動弁機構実角度出力手段は、第2可変動弁機構の動作角度を測定するセンサにより得られた現在の中心角を、第2可変動弁機構実角度相当値とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
  3. 上記第2可変動弁機構実角度出力手段は、第2可変動弁機構の目標中心角に対し第2可変動弁機構を駆動するアクチュエータの無駄時間に相当する無駄時間処理を行い、加重平均処理を行った後、変化率リミットにより急激な変化を制限して得た中心角を、第2可変動弁機構実角度相当値とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
  4. 上記第2可変動弁機構実角度出力手段は、目標中心角と、第2可変動弁機構の動作角度を測定するセンサにより得られた現在の中心角と、の差から、現在の運転状態が過渡であるか定常であるかの判定を行い、定常であると判定した場合は目標中心角をそのまま第2可変動弁機構実角度相当値として出力することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の吸気制御装置。
  5. 作動角と中心角と機関回転数とこれらにより実現される負荷との四者の既知の関係を、多次元マップとして備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
  6. 上記第1可変動弁機構は電動アクチュエータにより駆動され、上記第2可変動弁機構は油圧式アクチュエータにより駆動されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
  7. 内燃機関の吸気弁の作動角を連続的に変更可能な第1可変動弁機構と、
    上記作動角の中心角を連続的に変更可能な第2可変動弁機構と、
    アクセル開度と機関回転数とから静的目標負荷を求める静的目標負荷算出手段と、
    上記静的目標負荷に遅れ処理を施して動的目標負荷を算出する動的目標負荷算出手段と、
    上記動的目標負荷と機関回転数とから上記第2可変動弁機構の目標中心角を算出する第2可変動弁機構目標角度算出手段と、
    この目標中心角に向かって変化する第2可変動弁機構の実際の中心角を検出ないしは算出して、第2可変動弁機構実角度相当値として出力する第2可変動弁機構実角度出力手段と、
    作動角と中心角と機関回転数とこれらにより実現される負荷との四者の既知の関係をマップ化した多次元マップを参照して、上記第2可変動弁機構実角度相当値と機関回転数と上記動的目標負荷と、から、上記第1可変動弁機構の目標作動角を算出する第1可変動弁機構目標角度算出手段と、
    を有することを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
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