JP3698006B2 - 内燃機関の吸気弁駆動制御装置 - Google Patents

内燃機関の吸気弁駆動制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機関運転状態に応じて吸気弁の作動角やその中心角を変えることができる内燃機関の吸気弁駆動制御装置に関する。
【0002】
なお、本明細書で用いられる「作動角」は、実質的な吸気弁(又は排気弁)の開弁期間に対応しており、一般的に、クランクシャフトの回転角の範囲(°)で表される。また、「中心角」は、上記作動角の中心角度あるいはバルブリフトが最大となるときの角度に対応しており、一般的に、クランクシャフトの回転角度(°)で表される。
【0003】
【従来の技術】
周知のように、機関低回転低負荷時における燃費の改善や安定した運転性並びに高回転高負荷時における吸気の充填効率の向上による十分な出力を確保する等のために、吸気弁の作動角やその中心角を機関運転状態に応じて変えることができる吸気弁駆動制御装置が従来から種々提案されている。
【0004】
図15は、従来の吸気弁駆動制御装置に係る作動角の制御マップを示している(自動車技術会 学術講演会 前刷集966;1996年10月発行)。この装置は、吸気弁の作動角の中心角を連続的に変化させる可変動弁機構を備えており、矢印A1に示すように、低中負荷域では負荷の増加に伴い中心角を進角させ、更に負荷が増加すると中心角を逆に遅角させている。また、矢印B1に示すように、低回転域では回転速度の増加に伴い中心角を進角させ、更に回転速度が増加すると中心角を逆に遅角させている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る内燃機関の吸気弁駆動制御装置は、吸気弁の作動角を変化させる第1可変動弁機構と、上記作動角の中心角を変化させる第2可変動弁機構と、を備え、機関運転状態に応じて上記作動角及び中心角を互いに独立して連続的に可変制御することが可能である。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、機関運転状態に応じて、吸気弁の作動角及びその中心角を互いに独立して適切に可変制御することにより、更なる燃費の改善や出力の向上を図ることを一つの目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る内燃機関の吸気弁駆動制御装置は、吸気弁の作動角を変化させる第1可変動弁機構と、上記作動角の中心角を変化させる第2可変動弁機構と、を備え、機関運転状態に応じて上記作動角及び中心角を連続的に可変制御することが可能である。
【0008】
そして請求項1の発明は、吸気弁の開弁時期が上死点以降で吸気弁の閉弁時期が下死点より進角している低負荷域では、負荷の増加に応じて中心角を進角させるとともに、この中心角の変化量を作動角の変化量よりも大きくし、上記低負荷域よりも負荷が高い中負荷域では、負荷の増加に応じて作動角を増加させるとともに、この作動角の変化量を中心角の変化量よりも大きくすることを特徴としている。
【0009】
従って、低負荷域の中でも特に負荷の小さい極低負荷時には、吸気弁の閉弁時期が相対的に(下死点側へ)遅角して、有効圧縮比が増し、燃焼の安定化が図られるとともに、吸気弁の開弁時期が相対的に(上死点から離れるように)遅角して、開弁時の差圧が増してガス流動が強化され、燃焼の安定化が図られるとともに、作動角が抑制され、フリクションの低減化を図ることができる。
【0010】
また、低負荷域では、負荷の増加に伴って、吸気弁の閉弁時期が相対的に(下死点から離れるように)進角するために、吸入空気量の抑制に伴ってスロットル開度が増してポンピングロスが低減され、燃費の向上が図られるとともに、吸気弁の開弁時期が相対的に(上死点側)へ進角するため、ポンピングロスが低減され、燃費の向上を図ることができる。
【0011】
更に、中負荷域では、負荷の増加に伴って、開弁時期が(排気弁の閉弁時期よりも)進角することにより、残留ガスが吸気に取り込まれて、ポンピングロスの低減化が図られるとともに、バルブオーバーラップの増加による吸入空気中の新気の減少を、閉弁時期が遅角することにより補うことができる。従って、安定した燃焼を確保しつつ、燃費の改善を図ることができる。
【0012】
また、請求項2の発明は、上記中負荷域よりも負荷が高い高負荷域では、負荷の増加に応じて中心角を遅角させるとともに、この中心角の変化量を作動角の変化量よりも大きくすることを特徴としている。
【0013】
この結果、高負荷域では、負荷の増加に伴って、開弁時期を相対的に遅角させて上死点側へ戻すことにより、バルブオーバーラップによる残留ガスの割合を低減しつつ、閉弁時期を(下死点側へ)適宜に遅角させて充填効率を向上させることにより、出力トルクの向上を図ることができる。
【0014】
請求項3の発明は、吸気弁の開弁時期が上死点以降で吸気弁の閉弁時期が下死点より進角している低回転域では、機関の回転速度の増加に応じて、中心角を進角させるとともに、この中心角の変化量を作動角の変化量よりも大きくし、上記低回転域よりも機関の回転速度が高い中回転域では、機関の回転速度の増加に応じて、作動角を増加させるとともに、この作動角の変化量を中心角の変化量よりも大きくすることを特徴としている。
【0015】
従って、低回転域の中でも特に機関の回転速度の低い極低回転時には、吸気弁の閉弁時期が相対的に(下死点側へ)遅角して、有効圧縮比が増し、燃焼の安定化が図られるとともに、吸気弁の開弁時期が相対的に(上死点から離れるように)遅角することにより、開弁時の差圧が増してガス流動が強化され、燃焼の安定化が図られるとともに、作動角が抑制され、フリクションの低減化を図ることができる。
【0016】
また、低回転域では、機関の回転速度の増加に伴って、吸気弁の閉弁時期が相対的に(下死点から離れるように)進角するために、吸入空気量の抑制に伴ってスロットル開度が増してポンピングロスが低減され、燃費の向上が図られるとともに、吸気弁の開弁時期が相対的に(上死点側へ)進角するため、ポンピングロスが低減され、燃費の向上を図ることができる。
【0017】
更に、中回転域では、機関の回転速度の増加に伴って、開弁時期が(排気弁の閉弁時期よりも)進角することにより、残留ガスが吸気に取り込まれて、ポンピングロスの低減化が図られるとともに、バルブオーバーラップの増加による吸入空気中の新気の減少を、閉弁時期が遅角することにより補うことができる。従って、安定した燃焼を確保しつつ、燃費の改善を図ることができる。
【0018】
また、高回転域では、回転速度の増加に伴い、機関のフリクションが増加し、要求空気量が増えるため、作動角を増加させる必要があるとともに、充填効率が最大となる時期の遅れに対応して閉弁時期を遅らせることが望ましい。
【0019】
そこで、好ましくは請求項4の発明のように、上記中回転域よりも機関の回転速度が高い高回転域では、機関の回転速度の増加に応じて、開弁時期を略一定として閉弁時期が遅角するように、作動角を増加させると同時に中心角を遅角させる。
【0020】
請求項5の発明は、中負荷域における極低回転時では、吸気弁の開弁時期を略上死点近傍とし、かつ、上記極低回転時を含めた中負荷域における低中回転域では、機関の回転速度の増加に伴って、作動角を増加させるとともに、この作動角の変化量を中心角の変化量よりも大きくすることを特徴としている。
【0021】
この場合、ガス流動強化ディバイスにより、極低回転域における燃焼が比較的安定化されるため、極低回転域での吸気弁の開弁時期を略上死点近傍まで進角させることが可能となり、特に極低回転域での燃費の向上を図ることができる。
【0022】
また、機関の回転速度の増加に伴って、開弁時期が進角し、バルブオーバーラップの増加によるポンピングロスの低減化が促進されるとともに、閉弁時期が遅角するために、オーバーラップの増加に伴う吸入空気中の新気の減少を補うことができる。
【0023】
上記第1可変動弁機構は、好ましくは請求項6の発明のように、クランクシャフトと連動して回転する駆動軸と、この駆動軸に揺動可能に取り付けられ、上記吸気弁を駆動する揺動カムと、上記駆動軸に偏心して設けられ、この駆動軸と一体的に回転する駆動カムと、この駆動カムに回転可能に外嵌するリング状リンクと、上記駆動軸と略平行に配置された制御軸と、この制御軸に偏心して設けられ、この制御軸と一体的に回転する制御カムと、この制御カムの外周に回転可能に外嵌するとともに、一端で上記リング状リンクと連結するロッカーアームと、このロッカーアームの他端と上記揺動カムとを連結するロッド状リンクと、を有する。
【0024】
この場合、駆動カムとリング状リンクとの摺接部分や制御カムとロッカアームとの摺接部分等が面接触となっているため、潤滑が行い易く、耐久性,信頼性が向上する。また、駆動軸と同軸上に駆動カムや揺動カムが配置されている等の関係で、制御精度に優れるとともにコンパクトで、車両搭載性が向上する。
【0025】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、吸気弁の作動角及びその中心角を適切に制御することにより、運転状態に応じた適切な作動角特性を得ることができ、著しい燃費の改善や出力トルクの向上を図ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1〜3は、本発明に係る内燃機関の吸気弁駆動制御装置の機械的構成を示している。図1に示すように、シリンダヘッド11には、1気筒あたり2つの吸気弁12,12及び2つの排気弁(図示省略)が図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられている。そして、この吸気弁駆動制御装置は、吸気弁12,12の作動角を変化させる第1可変動弁機構1と、上記作動角の中心角を変化させる第2可変動弁機構2と、を備え、周知のCPU及びメモリ等を備えたコントローラ37によって、上記の作動角及び中心角を機関運転状態に応じて連続的に制御することができる。
【0028】
第1可変動弁機構1は、図1〜3に示すように、シリンダヘッド11上部の軸受14に回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、この駆動軸13に、圧入等により固設された偏心回転カムである2つの駆動カム15,15と、駆動軸13に揺動自在に支持されて、各吸気弁12,12の上端部に配設されたバルブリフター16,16の平坦な上面16a,16aに摺接して各吸気弁12,12を開作動させる揺動カム17,17と、駆動カム15と揺動カム17,17との間に連係されて、駆動カム15の回転力を揺動カム17,17の揺動力として伝達する伝達機構18と、この伝達機構18の作動位置を可変制御する制御機構19と、を備えている。
【0029】
駆動軸13は、気筒列方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた第2可変動弁機構2のタイミングスプロケット40に巻装された図外のタイミングチェーン等を介して機関のクランクシャフトから回転力が伝達されている。
【0030】
軸受14は、図1に示すようにシリンダヘッド11の上端部に設けられて、駆動軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、このメインブラケット14aの上端部に設けられて、後述する制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a,14bが一対のボルト14c,14cによって上方からシリンダヘッド11へ共締め固定されている。
【0031】
両駆動カム15は、図2,図3に示すようにほぼリング状を呈し、カム本体15aと、このカム本体15aの一側部に一体に設けられた相対的に小径な筒状部15bとからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xが駆動軸13の軸心Yから径方向へ所定量だけオフセットし、かつ、駆動軸13と一体的に回転するようになっている。また、この各駆動カム15は、両バルブリフター16,16と干渉しないように、その軸方向外側位置で、駆動軸挿通孔15cを介して駆動軸13に圧入固定されていると共に、両方のカム本体15a,15aの外周面15d,15dが同一のカムプロフィールに形成されている。
【0032】
揺動カム17は、一端部側の円環状の基端部20には駆動軸13が嵌挿されて回転自在に支持される支持孔20aが貫通形成されていると共に、他端部のカムノーズ部21にピン孔21aが貫通形成されている。また、揺動カム17の下面には、カム面22が形成され、基端部20側の基円面22aとこの基円面22aからカムノーズ部21側に円弧状に延びるランプ面22bとこのランプ面22bの先端側に有するリフト面22cとが形成されており、この基円面22aとランプ面22b及びリフト面22cとが、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面16a所定位置に当接するようになっている。
【0033】
伝達機構18は、図2に示すように駆動軸13の上方に配置されたロッカアーム23と、このロッカアーム23の一端部23aと駆動カム15とを連係するリング状リンク24と、ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17とを連係する連係部材であるロッド状リンク25とを備えている。
【0034】
各ロッカアーム23は、図2,図3に示すように、平面視で略へ字状をなすベルクランク状に折曲形成され、中央に有する筒状基部23cが後述する制御カム33に回転自在に外嵌,支持されている。また、各基部23cの軸方向外側部から突出する一端部23aには、リング状リンク24と相対回転自在に連結するピン26が嵌入されるピン孔23dが貫通形成されている一方、各基部23cの軸方向内側部から突出する他端部23bには、各ロッド状リンク25の一端部25aと相対回転自在に連結するピン27が嵌入されるピン孔23eが形成されている。
【0035】
リング状リンク24は、比較的大径な円環状の基部24aと、この基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、駆動カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、ピン26が回転自在に挿通するピン孔24dが貫通形成されている。
【0036】
ロッド状リンク25は、図2にも示すように所定長さのほぼく字形状に折曲形成され、両端部25a,25bにはロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17のカムノーズ部21の各ピン孔23e,21aに嵌入した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔25c,25dが貫通形成されている。
【0037】
尚、各ピン26,27,28の一端部には、リング状リンク24やロッド状リンク25の軸方向の移動を規制するスナップリング29,30,31,が設けられている。
【0038】
制御機構19は、機関前後方向に配設された制御軸32と、この制御軸32の外周に固定されてロッカアーム23の揺動支点となる制御カム33と、制御軸32の回転位置を制御する電動アクチュエータである電動モータ34とから構成されている。
【0039】
制御軸32は、駆動軸13と並行に設けられて、前述のように軸受14のメインブラケット14a上端部の軸受溝とサブブラケット14bとの間に回転自在に支持されている。一方、各制御カム33は、夫々円筒状を呈し、図2に示すように軸心P1位置が制御軸32の軸心P2からα分だけ偏倚しており、制御軸32と一定的に回転する。
【0040】
電動モータ34は、駆動シャフト34aの先端部に設けられた第1平歯車35と制御軸32の後端部に設けられた第2平歯車36との噛合いを介して、制御軸32に回転力を伝達するようになっていると共に、機関の運転状態を検出するコントローラ37からの制御信号によって駆動するようになっている。
【0041】
一方、第2可変動弁機構2は、図1に示すように、駆動軸13の先端部側に設けられ、図外のタイミングチェーンによって機関のクランクシャフトから回転力が伝達されるタイミングスプロケット40と、駆動軸13の先端部にボルト41によって軸方向から固定されたスリーブ42と、タイミングスプロケット40とスリーブ42との間に介装された筒状歯車43と、この筒状歯車43を駆動軸13の前後軸方向へ駆動させる駆動機構である油圧回路44と、から大略構成されている。
【0042】
タイミングスプロケット40は、筒状本体40aの後端部にチェーンが巻装されるスプロケット部40bがボルト45により固定されていると共に、筒状本体40aの前端開口がフロントカバー40cによって閉塞されている。また、筒状本体40aの内周面には、はす歯形のインナ歯46が形成されている。
【0043】
スリーブ42は、後端側に駆動軸13の先端部が嵌合する嵌合溝が形成されていると共に、前端部の保持溝内にはフロントカバー40cを介してタイミングスプロケット40を前方に付勢するコイルスプリング47が装着されている。また、スリーブ42の外周面には、はす歯形のアウタ歯48が形成されている。
【0044】
筒状歯車43は、軸直角方向から2分割されて前後の歯車構成部がピンとスプリングによって互いに接近する方向に付勢されていると共に、内外周面には各インナ歯46とアウタ歯48に噛合いするはす歯形の内外歯が形成されており、前後に形成された第1,第2油圧室49,50へ相対的に供給される油圧によって各歯間を摺接しながら前後軸方向へ移動するようになっている。また、この筒状歯車43は、フロントカバー40cに突当った最大前方移動位置で吸気弁12を最遅角位置に制御する一方、最大後方移動位置で最進角位置に制御するようになっている。さらに、第2油圧室50内に弾装されたリターンスプリング51によって第1油圧室49の油圧が供給されない場合に最大前方移動位置に付勢されるようになっている。
【0045】
油圧回路44は、図外のオイルパンと連通するオイルポンプ52の下流側に接続されたメインギャラリ53と、このメインギャラリ53の下流側で分岐して第1,第2油圧室49,50に接続された第1,第2油圧通路54,55と、分岐位置に設けられたソレノイド型の流路切換弁56と、この流路切換弁56に接続されたドレン通路57とから構成されている。
【0046】
流路切換弁56は、第1可変動弁機構1の電動モータ34を駆動制御する同じコントローラ37からの制御信号によって切換駆動されるようになっている。
【0047】
コントローラ37は、クランク角センサからの機関回転数信号、エアフローメータからの吸気流量信号(負荷)及び機関油温センサなどの各種のセンサからの検出信号に基づいて現在の機関運転状態を演算等により検出すると共に、制御軸32の現在の回転位置を検出する第1位置検出センサ58や駆動軸13とタイミングスプロケット40との相対回動位置を検出する第2位置検出センサ59からの検出信号に基づいて、電動モータ34及び流路切換弁56に制御信号を出力している。
【0048】
このような構成により、クランクシャフトに連動して駆動軸13が回転すると、駆動カム15を介してリング状リンク24が並進移動するとともに、ロッカアーム23及びロッド状リンク25を介して揺動カム17が揺動し、吸気弁12が開閉駆動される。
【0049】
また、第1可変動弁機構1の制御軸32を駆動制御することにより、ロッカアーム23の揺動中心となる制御カム33の軸心P2の位置が変位し、これにより各リンクの姿勢が変化し、吸気弁12の作動角が連続的に変化する。
【0050】
ここで、第1可変動弁機構1では、その構造上、図4(a)に示すように、吸気弁12の作動角の変化量に対し、その作動角の中心角の変化量が非常に小さく、実質的に中心角は略一定(θ1)となる。
【0051】
なお、図4は、クランクシャフトの回転角に対する吸気弁12及び排気弁(図示省略)のバルブリフト特性を示している。ここで、作動角の変化量は、例えば図4(a)に示すように、吸気弁12の開弁時期(IVO)の減少量(又は増加量)Aと閉弁時期(IVC)の減少量(又は増加量)Bとの平均値(A+B)/2として求められる。また、中心角の変化量は、例えば図4(b)に示すように、吸気弁12の進角量(又は遅角量)A’と閉弁時期の進角量(又は遅角量)B’との平均値(A’+B’)/2として求められる。
【0052】
このような可変動弁機構1では、駆動カム15とリング状リンク24との摺接部分や制御カム33とロッカアーム23との摺接部分等が面接触となっているため、潤滑が行い易く、耐久性,信頼性に優れている。また、駆動軸13と同軸上に駆動カム15及び揺動カム17が配置されているため、制御精度に優れるとともにコンパクトで、車両搭載性が良い。
【0053】
一方、第2可変動弁機構2の流路切換弁56を駆動制御することにより、クランクシャフトの回転角に対する駆動軸13の回転角が連続的に変化する。この結果、図4(b)に示すように、吸気弁12の作動角が略一定のまま、その中心角が連続的に変化する。具体的には、流路切換弁56を図1の状態から右方へ駆動すると、第1油圧通路54とメインギャラリ53とが連通するとともに、第2油圧通路55とドレン通路57とが連通する。これにより、筒状歯車43は、最前方位置から最後方位置までを移動し、したがって、吸気弁12の作動角の中心角は、最遅角状態から最進角状態まで連続的に可変制御される。
【0054】
図5〜9は、本発明に係る吸気弁の作動角及びその中心角の設定,制御の第1実施例を示している。なお、図5,6,8は、機関の負荷(トルク)及び回転数(速度)をパラメータとする、吸気弁の作動角(実線)及びその中心角(一点鎖線)の特性を示す三次元の制御マップで、この制御マップに基づいて、第1可変動弁機構1及び第2可変動弁機構2を駆動して、実際の中心角及び作動角が可変制御される。図5の矢印Cは作動角の増加方向を表しており、矢印Dは中心角の進角方向を表している。また、図7,9は、所定の負荷,回転時F1〜F8における作動角を模式的に示している。
【0055】
先ず、図6,7を参照して、極低回転域及び高回転域を除く低中回転域(常用回転域)における、負荷の増加に伴う作動角及び中心角の変化について説明する。
【0056】
▲1▼低負荷域(極低負荷時F1〜低中負荷時F2)では、要求される吸入空気量が相対的に少ないため、基本的に、吸気弁12の開弁時期(IVO)が上死点以降に設定され、吸気弁12の閉弁時期(IVC)が下死点よりも進角して設定される。
【0057】
このような低負荷域では、IVCを早めることにより、吸入空気量を低減させてスロットルの開度を相対的に増加させ、ポンピングロスを低減して燃費の向上を図りたい。しかしながら、極低負荷時F1等にIVCをあまり早くし過ぎると、有効圧縮比が小さくなって燃焼が不安定となるおそれがある。従って、負荷の増加に応じてIVCを進角させることにより、良好な燃焼状態を確保しつつ、ポンピングロスを低減し、燃費の向上を図ることができる。
【0058】
また、極低負荷時F1には、IVOを上死点よりも遅角させることにより、開弁時の差圧が増してガス流動が強化され、燃焼の安定化を図ることができ、かつ、作動角が抑制されるためにフリクションの低減効果が得られる。そして、負荷の増加にともなって、燃焼が安定化するとともに要求空気量が増加するため、IVOを上死点側へ進角させることが望ましい。
【0059】
従って、低負荷域では、負荷の増加に伴い、IVOが進角するとともにIVCが進角するように、作動角を略一定として、主に中心角を進角させる。つまり、中心角の変化量を作動角の変化量よりも大きくする。
【0060】
▲2▼中負荷域(低中負荷時F2〜中高負荷時F3)では、負荷の増加に応じて、燃焼が安定化しつつ要求空気量が多くなるため、IVOを上死点よりも早めるとともにIVCを下死点側へ遅らせるように、中心角を略一定として、主に作動角を増加させる。つまり、作動角の変化量を中心角の変化量よりも十分に大きくする。
【0061】
これにより、中負荷域では、負荷の増加に応じて、IVOが排気弁の閉弁時期よりも進角して(バルブオーバーラップ)、残留ガスが吸気に取り込まれ、ポンピングロスが低減し、燃費の向上を図ることができる。また、オーバーラップの増加に伴って減少する吸入空気中の新気を、IVCの遅角によって補うことができる。
【0062】
▲3▼高負荷域(中高負荷時F3〜最大負荷時F4)では、最大負荷時F4にIVOが上死点近傍まで戻されるように、負荷の増加に応じてIVOを遅らせることにより、オーバーラップによる残留ガスの割合を低減することが望ましい。また、主に充填効率を上げてトルク向上を図るために、負荷の増加に伴ってIVCを遅らせる必要がある。従って、高負荷域では、負荷の増加に応じて、IVO及びIVCの両者を遅らせて有効にトルクを発生させるように、作動角を略一定として、主に中心角を遅角させる。すなわち、中心角の変化量を作動角の変化量よりも十分に大きくする。
【0063】
次に、図8,9を参照して、極低負荷域及び高負荷域を除く低中負荷域(常用負荷域)における、機関の回転速度の増加に伴う作動角及び中心角の変化について説明する。
【0064】
▲4▼低回転域(極低回転時F5〜低中回転時F6)では、要求される吸入空気量が相対的に少ないため、基本的に、IVOが上死点以降に設定され、IVCが下死点よりも進角するように設定される。
【0065】
このような低回転域では、IVCを早めることにより、吸入空気量を低減させてスロットルの開度を相対的に増加させ、ポンピングロスを低減して燃費の向上を図りたい。しかしながら、極低回転時F5では、吸入空気の流速が遅く、ガス流動も弱いため、IVCがあまり早過ぎると、有効圧縮比が小さくなって燃焼が不安定となるおそれがある。従って、機関回転速度の増加に応じてIVCを進角させることにより、良好な燃焼状態を確保しつつ、ポンピングロスを低減し、燃費の向上を図ることができる。
【0066】
また、極低回転時F5には、IVOを上死点よりも遅角して設定することにより、開弁時の差圧が増してガス流動が強化され、燃焼の安定化を図ることができ、かつ、作動角が相対的に抑制されるためにフリクション低減の効果が得られる。そして、回転速度の増加にともなって、燃焼が安定化するとともに要求空気量が増加するため、IVOを上死点側へ進角させることが望ましい。
【0067】
従って、このような低回転域では、回転速度の増加に伴い、IVOが進角するとともにIVCが進角するように、作動角を略一定として、主に中心角を進角させる。つまり、中心角の変化量を作動角の変化量よりも大きくする。
【0068】
▲5▼中回転域(低中回転時F6〜中高回転時F7)では、機関の回転速度の増加に応じて、燃焼が安定化しつつ要求される空気量が多くなるため、IVOを上死点よりも早めるとともにIVCを下死点側へ遅らせるように、中心角を略一定として、主に作動角を増加させる。つまり、作動角の変化量を中心角の変化量よりも十分に大きくする。
【0069】
これにより、機関の回転速度の増加に応じて、IVOが排気弁の閉弁時期よりも進角して、バルブオーバーラップが増加するため、残留ガスが吸気に取り込まて、ポンピングロスが低減し、燃費の向上を図ることができる。また、オーバーラップの増加に伴って減少する吸入空気中の新気を、IVCの遅角によって補うことができる。
【0070】
▲6▼高回転域(中高回転時F7〜最高回転時F8)では、機関の回転速度の増加に伴って、機関のフリクションが増加するとともに要求空気量が増えるため、作動角を大きくする必要がある。また、回転速度の増加に伴って吸入流速が速くなるため、最大の吸入効率を得るIVCは遅くなる。従って、このような高回転域では、機関の回転速度の増加に伴って、IVOを略一定としつつIVCが遅角するように、作動角を増加させると同時に中心角を遅角させる。すなわち、作動角の広がり量と中心角の遅角量を略同一にすることで、燃費の向上を図ることができる。
【0071】
図10,11は、吸気弁の作動角及び中心角の設定,制御の第2実施例を示している。このような設定は、例えば図12〜14に示すように、吸気系にガス流動強化ディバイスとしてのスワールコントロールバルブ105が設けられた内燃機関に好適に用いられる。
【0072】
先ず、図12〜14を参照して構成を説明する。図12に示すように、吸入空気は吸気マニホールド102及び吸気ポート103を介して各気筒の燃焼室104に分配して供給される。図14に示すように、吸気ポート103は下流側で2つの吸気ポート103a,103bに分岐されており、これらの吸気ポート103a,103b毎に設けられる2つの吸気弁12,12がリフトすることで、燃焼室104内に空気が吸引される。
【0073】
上記のスワールコントロールバルブ105は、吸気ポート103近傍のマニホールド102に配設されており、図13,14に示すように、一方の吸気ポート103a側に切欠105aが形成されている。従って、このスワールコントロールバルブ105を閉じた状態では、主に吸気ポート3aのみから新気が燃焼室104内に供給され、燃焼室104内に強いスワールが生成される。
【0074】
次に、図10,11を参照して、極低負荷域及び高回転域を除く低中負荷域(常用負荷域)における、回転速度の増加に伴う吸気弁の作動角及びその中心角の変化について説明する。
【0075】
矢印▲7▼は、低中回転域(極低回転時F9〜中高回転時F10)に対応している。このような低中回転域においては、極回転時F9であっても、吸気系に設けられたガス流動強化ディバイス(スワールコントロールバルブ105)を閉じることにより、比較的燃焼が安定するため、IVOを上死点近傍まで早めることが可能で、これによりポンピングロスを減らして燃費向上を図ることができる。
【0076】
そして、回転速度の増加に伴い、IVOを排気弁の閉弁時期よりも早くし(バルブオーバーラップ)、残留ガスを吸気に取り込み、更にポンピングロスを低減することが望ましい。これと同時に、IVCを遅らせることによって、オーバーラップの増加に伴う吸入空気中の新気の減少を補うことが望ましい。
【0077】
そこで、低中回転域では、機関の回転速度の増加に伴って、中心角を略一定として、作動角を増加させる。すなわち、作動角の変化量を中心角の変化量よりも十分に大きくする。
【0078】
以上のように、上記第1,第2実施例では、機関の負荷,回転速度の一方を一定として、他方を増加させた場合についてのみ説明してきたが、実際には、負荷及び回転速度の両者をパラメータとして、図5又は図10に示すような制御マップに基づいて、全運転領域にわたって作動角及びその中心角を適切に可変制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る吸気弁駆動制御装置の一実施形態を示す内燃機関の縦断面対応図。
【図2】上記吸気弁駆動制御装置の第1可変動弁機構を示す上面対応図。
【図3】上記第1可変動弁機構を示す断面対応図。
【図4】上記吸気弁駆動制御装置による吸気弁の作動角及びその中心角の変化の様子を示す特性図。
【図5】本発明の第1実施例に係る作動角及びその中心角の制御マップ。
【図6】上記第1実施例に係る作動角及びその中心角の制御マップ。
【図7】図6のF1〜F4時の作動角を模式的に示す円グラフ。
【図8】上記第1実施例に係る作動角及びその中心角の制御マップ。
【図9】図8のF5〜F8時の作動角を模式的に示す円グラフ。
【図10】本発明の第2実施例に係る作動角及びその中心角の制御マップ。
【図11】図10のF9,F10時の作動角を模式的に示す円グラフ。
【図12】第2実施例に係るガス流動強化ディバイス(スワールコントロールバルブ)が適用された内燃機関の断面対応図。
【図13】上記スワールコントロールバルブを単体で示す正面図。
【図14】上記スワールコントロールバルブを含む吸気系を模式的に示す構成図。
【図15】従来例に係る吸気弁の作動角の中心角の制御マップ。
【符号の説明】
1…第1可変動弁機構
2…第2可変動弁機構
37…コントローラ

Claims (6)

  1. 吸気弁の作動角を変化させる第1可変動弁機構と、上記作動角の中心角を変化させる第2可変動弁機構と、を備え、機関運転状態に応じて上記作動角及び中心角を互いに独立して連続的に可変制御する内燃機関の吸気弁駆動制御装置であって、
    吸気弁の開弁時期が上死点以降で吸気弁の閉弁時期が下死点より進角している低負荷域では、負荷の増加に応じて中心角を進角させるとともに、この中心角の変化量を作動角の変化量よりも大きくし、
    上記低負荷域よりも負荷が高い中負荷域では、負荷の増加に応じて作動角を増加させるとともに、この作動角の変化量を中心角の変化量よりも大きくすることを特徴とする内燃機関の吸気弁駆動制御装置。
  2. 上記中負荷域よりも負荷が高い高負荷域では、負荷の増加に応じて中心角を遅角させるとともに、この中心角の変化量を作動角の変化量よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気弁駆動制御装置。
  3. 吸気弁の作動角を変化させる第1可変動弁機構と、上記作動角の中心角を変化させる第2可変動弁機構と、を備え、機関運転状態に応じて上記作動角及び中心角を互いに独立して連続的に可変制御する内燃機関の吸気弁駆動制御装置であって、
    吸気弁の開弁時期が上死点以降で吸気弁の閉弁時期が下死点より進角している低回転域では、機関の回転速度の増加に応じて、中心角を進角させるとともに、この中心角の変化量を作動角の変化量よりも大きくし、
    上記低回転域よりも機関の回転速度が高い中回転域では、機関の回転速度の増加に応じて、作動角を増加させるとともに、この作動角の変化量を中心角の変化量よりも大きくすることを特徴とする内燃機関の吸気弁駆動制御装置。
  4. 上記中回転域よりも機関の回転速度が高い高回転域では、機関の回転速度の増加に応じて、上記吸気弁の開弁時期を略一定として閉弁時期が遅角するように、作動角を増加させるとともに中心角を遅角させることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の吸気弁駆動制御装置。
  5. 吸気弁の作動角を変化させる第1可変動弁機構と、上記作動角の中心角を変化させる第2可変動弁機構と、吸入空気のガス流動を強化するガス流動強化ディバイスと、を備え、機関運転状態に応じて上記作動角及び中心角を互いに独立して連続的に可変制御する内燃機関の吸気弁駆動制御装置であって、
    中負荷域における極低回転時では、吸気弁の開弁時期を略上死点近傍とし、
    かつ、上記極低回転時を含めた中負荷域における低中回転域では、機関の回転速度の増加に伴って、作動角を増加させるとともに、この作動角の変化量を中心角の変化量よりも大きくすることを特徴とする内燃機関の吸気弁駆動制御装置。
  6. 上記第1可変動弁機構は、
    クランクシャフトと連動して回転する駆動軸と、
    この駆動軸に揺動可能に取り付けられ、上記吸気弁を駆動する揺動カムと、
    上記駆動軸に偏心して設けられ、この駆動軸と一体的に回転する駆動カムと、
    この駆動カムに回転可能に外嵌するリング状リンクと、
    上記駆動軸と略平行に配置された制御軸と、
    この制御軸に偏心して設けられ、この制御軸と一体的に回転する制御カムと、
    この制御カムの外周に回転可能に外嵌するとともに、一端で上記リング状リンクと連結するロッカーアームと、
    このロッカーアームの他端と上記揺動カムとを連結するロッド状リンクと、を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の吸気弁駆動制御装置。
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