JP4415629B2 - インクカートリッジ - Google Patents

Description

本発明は、インク注入装置によって複数種類のインクのうちのいずれか１種類である所定のインクが注入されるインクカートリッジに関するものである。

インクジェットプリンタでは、複数種類のカラーインクを用いることによって高画質のカラー印字が行われるのが一般的である。従って、かかるプリンタには、複数種類のカラーインクがそれぞれ注入された複数のインクカートリッジが装着可能になっている。ここで、インクカートリッジとしては、複数種類のカラーインクについて同一形状のものが用いられることが多い。

インクカートリッジには、識別用ブロックが組付部品として組み付けられているものがある（例えば、特許文献１参照）。この識別用ブロックには、記録装置側の所定の位置に設けられた識別片に適合する切り欠き溝が形成されている。そして、切り欠き溝の溝底の位置（切り欠き溝の長さ）およびこれら各位置に対応する識別片の先端位置（識別片の長さ）がインクの種類に対応するように設定されており、記録装置に対するインクカートリッジの誤装着が防止される。
特開２００３−１４５７９２号公報

ここで、インクカートリッジが透明の部材から構成されている場合は、インクカートリッジの外見からインクの種類を容易に確認することができる。一方、インクの品質保持のためにインクカートリッジが不透明の部材で構成されている場合には、インクカートリッジの外見からインクの種類を確認するのが困難である。このとき、上述のようにインクカートリッジが識別用ブロックを有しているとしても、識別用ブロックには切り欠き溝が形成させているだけなので、インクカートリッジの外見からインクの種類を確認するのは難しい。従って、例えばインクカートリッジがインクの種類ごとに分類される場合には、その分類作業は作業者にとって著しく煩雑なものとなる。

また、このような問題はインクカートリッジに対してインクの注入作業が行われた後の作業においても同様に生じると考えられる。インクカートリッジの製造時においては、複数種類のカラーインクのそれぞれに対応するインク分注機（インク注入装置）によって、複数種類のカラーインクがそれぞれインクカートリッジ内に注入される。そして、インクカートリッジが不透明の部材で構成されている場合には、インクカートリッジの外見からインクの種類を容易に確認できるようにするために、作業者によってインクの種類を識別するためのラベルがインクカートリッジに貼付されることが多い。しかしながら、作業者によってラベルが貼付される場合には、インクカートリッジ内に注入されたインクの種類とは異なるインクに対応するラベルが誤って貼付される可能性がある。

そこで、本発明の主な目的は、インク注入装置でのインクの誤注入を防止することができると共に、インクカートリッジ内に注入されたインクの種類を容易に確認することができるインクカートリッジに関するものである。

課題を解決するための手段および発明の効果

本発明のインクカートリッジは、複数種類のインクのうちのいずれか１種類である所定のインクがインク注入装置により注入されるカートリッジ本体と、注入される前記所定のインクの種類を表示する表示部と、インクの種類に応じて異なる複数の位置のうち前記表示部により表示される前記所定のインクに対応する位置に設けられており、前記カートリッジ本体が装着されるインク注入装置において注入される前記所定のインクを識別する際に検出される被検出部とを備え、 前記表示部は、前記複数種類のインクにそれぞれ対応して前記カートリッジ本体の表面に記された複数のインク識別マークと、前記カートリッジ本体に取り付けられ、前記複数のインク識別マークから選択された１つのインク識別マーク以外のインク識別マークを覆うカバー部材とを有し、前記被検出部は、前記カバー部材の所定の位置に設けられた突起部である。

この構成によると、インクカートリッジをインク注入装置に装着する前に、インク注入装置の作業者はインクカートリッジに注入されるインクの種類を表示部により容易に確認することができる。また、インク注入装置において、インクカートリッジのインクの種類に応じて設けられた被検出部を検出することによってインクカートリッジに注入されるインクの種類を識別可能にすることができる。その結果、インク注入装置において、インクカートリッジの表示部に表示された種類と異なる種類のインクが誤ってインクカートリッジに注入されるのを防止することができる。さらに、インク注入後においても、インクカートリッジに注入されたインクの種類を表示部により容易に確認することができる。しかも、この構成によると、カバー部材をカートリッジ本体に取り付ける際に、複数のインク識別マークから選択された１つに対応させて、カバー部材の取付位置を適宜設定する（回転位置を設定する場合を含む）だけで、複数種類のインクのそれぞれに対応する複数のインク識別マークのいずれかを表示させることができる。従って、複数種類のインクごとに異なるカートリッジ本体およびカバー部材を用いる必要はなく、インクの種類にかかわらず共通のカートリッジ本体およびカバー部材を用いることができる。さらに、この構成によると、被検出部としてカバー部材の所定の位置に突起部を設けることによって、複数のインク識別マークから選択された１つのインク識別マークを露出させるようにカバー部材の取付位置を設定するだけで、被検出部の位置を選択されたインク識別マークに対応する位置に設定できるため、選択されたカラー（インク識別マーク）に対応する位置に被検出部の位置を設定する作業を省くことができる。また、カバー部材に別部品である被検出部を取り付ける場合と比較して、部品数を減らすこともできるので、製造コストを低減することができる。

本発明のインクカートリッジにおいて、前記被検出部は、前記カートリッジ本体が装着されるインクジェットプリンタに設けられた、前記カートリッジ本体に注入されたインクの種類を識別するインク識別手段によっても検出可能であるのが好ましい。

この構成によると、インクジェットプリンタでは、インク識別手段により、インクカートリッジのインクの種類に応じて設けられた被検出部を検出することによってインクカートリッジに注入されたインクの種類が識別される。その結果、インクカートリッジをインクジェットプリンタに装着する場合に、インクジェットプリンタにおいて、インクカートリッジの表示部に表示された種類と異なる種類のインクの装着位置に、誤ってインクカートリッジが装着されるのを防止することができる。また、このとき、インク注入装置でのインク誤注入およびインクジェットプリンタでのインクカートリッジの誤装着を防止するために、共通の被検出部を用いることができる。従って、複数の被検出部を設ける場合と比較して、製造工程が簡略化されると共に、製造コストを低減することができる。

別の観点において、本発明のインクカートリッジは、複数種類のインクのうちのいずれか１種類である所定のインクがインク注入装置により注入されるカートリッジ本体と、注入される前記所定のインクの種類を表示する表示部と、インクの種類に応じて異なる複数の位置のうち前記表示部により表示される前記所定のインクに対応する位置に設けられた被嵌合部とを備え、前記カートリッジ本体は、前記被嵌合部が前記インク注入装置の前記所定のインクの種類に対応する嵌合部と嵌合したときに、前記インク注入装置でのインクの注入が許容され、前記表示部は、前記複数種類のインクにそれぞれ対応して前記カートリッジ本体の表面に記された複数のインク識別マークと、前記カートリッジ本体に取り付けられ、前記複数のインク識別マークから選択された１つのインク識別マーク以外のインク識別マークを覆うカバー部材とを有し、前記被嵌合部は、前記カバー部材の所定の位置に設けられた突起部である。

この構成によると、インクカートリッジをインク注入装置に装着する前に、インク注入装置の作業者はインクカートリッジに注入されるインクの種類を表示部により容易に確認することができる。また、インクカートリッジがインク注入装置の装着部に装着されたときに、インクカートリッジのインクの種類に応じて設けられた被嵌合部がそのインクの種類に対応するインク注入装置の嵌合部と嵌合した場合に限って、インク注入装置でのインクの注入が許容される。その結果、インク注入装置において、インクカートリッジの表示部に表示された種類と異なる種類のインクが誤ってインクカートリッジに注入されるのを防止することができる。しかも、この構成によると、カバー部材をカートリッジ本体に取り付ける際に、複数のインク識別マークから選択された１つに対応させて、カバー部材の取付位置を適宜設定する（回転位置を設定する場合を含む）だけで、複数種類のインクのそれぞれに対応する複数のインク識別マークのいずれかを表示させることができる。従って、複数種類のインクごとに異なるカートリッジ本体およびカバー部材を用いる必要はなく、インクの種類にかかわらず共通のカートリッジ本体およびカバー部材を用いることができる。さらに、この構成によると、被嵌合部としてカバー部材の所定の位置に突起部を設けることによって、複数のインク識別マークから選択された１つのインク識別マークを露出させるようにカバー部材の取付位置を設定するだけで、被嵌合部の位置を選択されたインク識別マークに対応する位置に設定できるため、選択されたカラー（インク識別マーク）に対応する位置に被嵌合部の位置を設定する作業を省くことができる。また、カバー部材に別部品である被嵌合部を取り付ける場合と比較して、部品数を減らすこともできるので、製造コストを低減することができる。

本発明のインクカートリッジにおいて、前記被嵌合部は、前記カートリッジ本体が装着されるインクジェットプリンタに、前記所定のインクの種類に対応して設けられた嵌合部に対して嵌合可能であるのが好ましい。

この構成によると、インクカートリッジのインクの種類に応じて設けられた被嵌合部はインクジェットプリンタのそのインクの種類に対応する嵌合部に対しても嵌合可能である。その結果、インクカートリッジをインクジェットプリンタに装着する場合に、インクジェットプリンタにおいて、インクカートリッジの表示部に表示された種類と異なる種類のインクが注入されたインクカートリッジの装着位置に、インクカートリッジが誤って装着されるのを防止することができる。また、このとき、インク注入装置でのインクの誤注入およびインクジェットプリンタでのインクカートリッジの誤装着を防止するために、共通の被嵌合部を用いることができる。従って、個別に被嵌合部を設ける場合と比較して、製造工程が簡略化されると共に、製造コストを低減することができる。

本発明のインクカートリッジにおいて、前記複数のインク識別マークは、円周方向に並べられて円形状に配置されており、前記カバー部材は、その裏面側に突出状に形成されて、前記カートリッジ本体のうちの複数のインク識別マークにより構成される円の中心部に形成された装着孔に回転自在に装着される軸部と、その外周側部分に形成され、前記カバー部材が前記カートリッジ本体に取り付けられた状態で複数のインク識別マークから選択された１つのインク識別マークが外部から見えるようにするための窓部とを有し、前記カバー部材を前記軸部を中心に回転させることにより、前記窓部を注入される前記所定のインクに対応するインク識別マークの位置に合わせることが可能に構成されているのが好ましい。

この構成によると、カバー部材を軸部を中心にして回転させることによって、円周方向に並べて配置された複数のインク識別マークのうちのインク注入装置において注入されるインクの種類に対応するものを容易に選択することができる。

本発明のインクカートリッジにおいて、前記カートリッジ本体には、前記カバー部材の回転方向の位置を決めるための複数の位置決め溝が形成され、前記カバー部材の裏面側には、前記複数の位置決め溝にそれぞれ係合する複数の突出係合部が裏面側へ突出状に形成され、前記軸部は、前記複数の突出係合部よりも裏面側への突出量が大きいのが好ましい。

この構成によると、まず軸部をカートリッジ本体の装着孔に装着して、その軸部を中心にカバー部材を回転させて、窓部の位置を所定のインク識別マークに対応する位置に調整した後で、突出係合部を位置決め溝に係合させることができる。従って、複数のインク識別マークのうちの１つを選択しながら、カバー部材をカートリッジ本体に取り付ける作業が容易になる。

以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図１は、本発明の実施の形態に係るインクカートリッジが装着されたインクジェットプリンタの概略構成を示す図である。なお、図１では、ブラックのインクが注入されたインクカートリッジ２およびそれが装着されるバッファタンク３だけが図示されている。

インクジェットプリンタ１は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの４色のカラーインクがそれぞれ充填された複数のインクカートリッジ２と、それらのインクカートリッジ２を着脱可能に装着すると共にインクカートリッジ２からインク導入管３５を介して供給されるインクを貯留するバッファタンク３と、そのバッファタンク３から供給チューブ４を介して供給されるインクを用紙Ｐに対して吐出するインクジェットヘッド５（以下、単に「ヘッド５」と称する）と、ヘッド５が搭載され直線方向に往復動作するキャリッジ６と、このキャリッジ６が往復移動する際のガイドとなるキャリッジ軸７と、用紙Ｐを搬送する搬送機構８とを備えている。

インクカートリッジ２は、インクを収納するインク容器２ａを有している。そして、インク容器２ａのインク注入面２ｂ（図１では下方の壁面であって、インクカートリッジ２がバッファタンク３に装着されたときに底面となる壁面）には、インク導入管３５および外気導入管３６を受け入れるための２つの挿入部２１、２２が設けられている。挿入部２１、２２には、インクカートリッジ２の内部を密封状態にする栓２３、２４が圧縮状態でそれぞれ嵌入されている。ここで、栓２３、２４は、インク容器２ａのインク注入面２ｂに開口される導入口２５、２６を介してインク容器２ａ内のインクと接している。

インク容器２ａのインク注入面２ｂには、導入口２５を囲むように配置され且つインク注入面２ｂに対向する閉塞面２ｃ（図１では上方の壁面）に向かって突出した比較的短い筒状のインク通路部２７が設けられている。そして、インク通路部２７の先端部は開放されており、インク容器２ａ内の空間とインク通路部２７内の空間とが連通している。また、インク通路部２７の側壁（図１では紙面手前側の側壁および紙面奥側の側壁）には、２つのスリット２７ａが形成されている。２つのスリット２７ａは、いずれも矩形状の空隙を有する開口であって、インク通路部２７の対角線上に配置されている。これらのスリット２７ａは、インク容器２ａ内のインクをほぼすべて使い切るためのものである。

また、インク容器２ａのインク注入面２ｂには、導入口２６を囲むように配置され且つインク注入面２ｂに対向する閉塞面２ｃに向かって突出した比較的短い筒状の外気通路部２８が設けられている。そして、外気通路部２８の先端部は開放されており、インク容器２ａ内の空間と外気通路部２８内の空間とが連通している。また、外気通路部２８の側壁（図１では紙面手前側の側壁および紙面奥側の側壁）には、２つのスリット２８ａが形成されている。２つのスリット２８ａは、いずれも矩形状の空隙を有する開口であって、外気通路部２８の対角線上に配置されている。これらのスリット２８ａは、外気通路部２８の内部にインクが残らないようにし、インク容器２ａ内のインクをほぼすべて使い切るためのものである。

バッファタンク３には、インクカートリッジ２内に貯留されたインクを導出してヘッド５に供給するための中空針状のインク導入管３５と、そのインク導入管３５からインクが導出されることに伴って外気をインクカートリッジ２内に導入するための中空針状の外気導入管３６とが、天井壁３ａを貫通して略平行に突出して配設されている。また、バッファタンク３内には、インク導入管３５の下端部に接続される筒状のインク通路部３１が設けられていると共に、外気導入管３６の下端部に接続される筒状の外気通路部３２が設けられている。ここで、インク通路部３１および外気通路部３２は、いずれもバッファタンク３の天井壁３ａから内部に向かって突出しており、それらの根本部にインク導入管３５および外気導入管３６のそれぞれの下端部が配置されている。なお、外気通路部３２の下端開口部は、インク通路部３１の下端開口部よりも高い位置に配置されている。

インクカートリッジ２がバッファタンク３に装着される場合には、インク導入管３５および外気導入管３６の先端が栓２３、２４にそれぞれ突き刺されて、インクカートリッジ２内に進入する。そして、インク導入管３５および外気導入管３６の先端がインクカートリッジ２内のインクと接触する。なお、栓２３、２４は、例えばブチルゴム等の弾性材料で形成されており、インク導入管３５および外気導入管３６が突き刺し可能であって、圧縮状態で挿入部２１、２２に嵌入されているので、インク導入管３５および外気導入管３６を抜いた後でも弾性作用によってインク容器２ａ内は密閉状態に復元される。

さらに、バッファタンク３の上部には、上端が開放された外気接続路３３が設けられている。従って、バッファタンク３内の上部空間は、外気接続路３３によって外気に連通している。

また、インク容器２ａのインク注入面２ｂ近傍において、２つの挿入部２１、２２の延長線上近傍であって挿入部２１に近接する位置には、表示部４０に含まれるインク識別部材５０を装着するための装着部４１が設けられている（図２参照）。そして、バッファタンク３の天井壁３ａには、インクカートリッジ２に装着されたインク識別部材５０の突起部５４（被嵌合部、図３参照）が嵌合可能な嵌合孔３８（嵌合部）が設けられている。なお、インク容器２ａの装着部４１および表示部４０に含まれるインク識別部材５０の詳細な構成については後で詳述する。

このようにして、インクカートリッジ２がバッファタンク３に装着された後、ヘッド５からインクが用紙Ｐ上へ吐出される場合には、その吐出分のインクが供給チューブ４を介してバッファタンク３からヘッド５に供給される。このインクの供給に伴って、バッファタンク３内のインクの液面高さが降下し、外気通路部３２の下端開口部がバッファタンク３内の上部空間に露出される。その結果、外気が、外気接続路３３、バッファタンク３の上部空間、外気通路部３２を介して、外気導入管３６からインクカートリッジ２内に導入される。

そして、外気がインクカートリッジ２内に導入されると、インクカートリッジ２内のインクが、インク導入管３５を介して、バッファタンク３内へ導入される。このバッファタンク３内へインクが導入されることによって、バッファタンク３内では、インクの液面高さが再び上昇して、外気通路部３２の下端開口部がインクに浸漬される。その結果、バッファタンク３内のインクの液面高さは、外気通路部３２の下端開口部とほぼ同じ高さ近傍に保たれる。なお、この定常状態においては、インク通路部３１の下端開口部はバッファタンク３内のインクに浸漬しており、外気通路部３２の下端開口部はバッファタンク３内のインク液面に接触している。その後、インクカートリッジ２内のインクがすべて消費された場合には、引き続き、バッファタンク３内のインクが消費されてインクの液面高さの低下により、外気通路部３２の下端開口部がインクと接触しなくなる。

ヘッド５は、インクを吐出する複数のノズルを有している。従って、バッファタンク３から供給チューブ４を介してヘッド５に供給されたインクは、複数のノズルから吐出される。つまり、記録動作時には、キャリッジ６が往復移動するのに伴って、ヘッド５も往復移動しながらインクを吐出して、用紙Ｐ上に印字が行われる。

次に、インク容器２ａの装着部４１および表示部４０に含まれるインク識別部材５０の詳細な構成について、図２および図３を参照して説明する。図２（ａ）および図２（ｂ）は、図１に示すインクカートリッジの上面図、横断面図である。図３（ａ）〜図３（ｃ）は、図１に示すインク識別部材５０の上面図、側面図、下面図である。

インクカートリッジ２のインク容器２ａのインク注入面２ｂには、円形の凹部４２が設けられており、凹部４２の底面には装着部４１が設けられている。装着部４１は、インク識別部材５０をインク容器２ａに装着するための開口である。装着部４１は、２つの挿入部２１、２２の延長線上に配置され凹部４２と同心状に形成された略円形の中心溝４１ａと、中心溝４１ａから外側に向かって延在する４つの位置決め溝４１ｂとから構成されている。ここで、４つの位置決め溝４１は、９０度おきに配置されている。従って、装着部４１は全体として略十字状に形成されている。

表示部４０は、インクカートリッジ２に注入されるインクの種類（ここではインクの色）を表示するためのものであって、文字部４５と、インク識別部材５０とを有している。文字部４５は、凹部４２の底面にインク容器２ａの装着部４１を囲むように設けられた円形の領域である。そして、文字部４５には、インク識別マークすなわちインクジェットプリンタ１に用いられるインクカラーであるブラック、シアン、イエロー、マゼンタに対応する４つのカラーマーク「Ｋ」、「Ｃ」、「Ｙ」、「Ｍ」が成型にて刻印されている。ここで、４つのカラーマークは、インク容器２ａの装着部４１の４つの位置決め溝４１ｂのそれぞれの間に配置されている。つまり、４つのカラーマークは、略十字状の装着部４１の直交する２本のラインの内側中央に配置されている。また、４つのカラーマークは、中心溝４１ａを中心とする円周方向に９０度おきに並べられている。

インク識別部材５０は、図３に示すように、カバー部材５１と、カバー部材５１の上面から突出する突起部５４と、カバー部材５１の下面から突出する軸部５５および係合部５６とを有している。

カバー部材５１は、凹部４２より若干小さい円形の円板状の部材であって、その縁部近傍には１つの円形の貫通孔５８が形成されている。なお、カバー部材５１の貫通孔５８は、その下面の４つの係合部５６のうちの隣り合う２つの係合部５６の間に形成されている（図３（ｃ）参照）。従って、インク識別部材５０がインク容器２ａの装着部４１に装着された場合には、カバー部材５１は、文字部４５の４つのカラーマークのいずれか１つだけが貫通孔５８から見えるようにして、その他の３つのカラーマークを覆うことができる。従って、カバー部材５１の貫通孔５８内に配置された１つのカラーマークを作業者は容易に確認することができる。

カバー部材５１の上面側の突起部５４は、円柱状突起体５２と、板状突起体５３とから構成されている。ここで、円柱状突起体５２は、カバー部材５１の中心位置から偏心した位置（中心位置ではない位置）に配置されている。また、板状突起体５３の一端部は円柱状突起体５２に連結されている。なお、突起部５４の形状は、後述するように、インク分注機の装着部の嵌合孔およびインクジェットプリンタのバッファタンクの嵌合孔の形状とほぼ同じになっている。

カバー部材５１の下面側の軸部５５は、カバー部材５１の下面の中心位置から突出するように形成された略円柱状の部材である。また、４つの係合部５６は、カバー部材５１の下面から突出するように形成された板状部材である。そして、４つの係合部５６は、カバー部材５１の中心に設けられた軸部５５からカバー部材５１の半径方向に沿って設けられ９０度おきに配置されている。従って、軸部５５および４つの係合部５６は、カバー部材５１を下方から見た場合には、全体として略十字状に形成されている。また、軸部５５は、４つの係合部５６よりもカバー部材５１の下面からの突出量が大きくなっている。

そして、軸部５５の外径は、インク容器２ａの装着部４１に形成された中心溝４１ａの径とほぼ同じであって、軸部５５は中心溝４１ａに嵌挿可能である。また、４つの係合部５６の幅および長さは、インク容器２ａの装着部４１に形成された４つの位置決め溝４１ｂの幅および長さとほぼ同じであって、４つの係合部５６は位置決め溝４１ｂに嵌挿可能である。従って、軸部５５および４つの係合部５６を中心溝４１ａおよび位置決め部４１ｂに挿入することによって、インク識別部材５０をインク容器２ａの装着部４１に装着することができる。

なお、４つの係合部５６はいずれも同じ形状であって、互いに等角度おきに形成されているため、インク識別部材５０をインク容器２ａの装着部４１に装着する場合に、インク識別部材５０を９０度ずつ回転させることによって、４つの装着状態が可能となる。言い換えると、インク識別部材５０は、互いに異なる４つの回転位置において装着部４１に装着可能である。ここで、４つの装着状態においては、文字部４５に対するインク識別部材５０の上面の突起部５４の位置関係が各々異なっている（図５参照）。

次に、インクカートリッジ２の製造時において、インク識別部材５０がインク容器２ａの装着部４１に装着される際の動作について、図４を参照して説明する。図４は、インク識別部材５０がインク容器２ａの装着部４１に装着される際の動作を説明するための図である。

まず、作業者は、図４（ａ）に示すように、インク識別部材５０をインク容器２ａの装着部４１のほぼ上方に配置する。引き続き、作業者は、図４（ｂ）に示すように、インク識別部材５０の軸部５５の先端部近傍を、インク容器２ａの装着部４１の中心溝４１ａに挿入する。ここで、作業者は、インクカートリッジ２に注入されるインクの種類を確認する。従って、作業者によって、インクカートリッジ２に注入されるインクに対応するカラーマーク、つまり、インク識別部材５０を装着した場合に貫通孔５８から見えるカラーマークが選択される。

すると、作業者は、インク識別部材５０の軸部５５の先端部近傍がインク容器２ａの装着部４１の中心溝４１ａに挿入された状態で、インク識別部材５０を軸部５５を中心として回転させて、インク識別部材５０の向き（回転位置）を調整する。このとき、作業者は、インク識別部材５０の貫通孔５８がインクカートリッジ２に注入されるインクに対応するカラーマーク上に配置されると共に、４つの係合部５６が装着部４１の４つの位置決め溝４１ｂに嵌挿されるように、インク識別部材５０の向きを調整する。

このようにして、インク識別部材５０の向きを調整した後で、作業者は、図４（ｃ）に示すように、インク識別部材５０の４つの係合部５６を装着部４１の４つの位置決め溝４１ｂに完全に挿入する。その結果、インク識別部材５０が、所望の向きに設定された状態でインク容器２ａに装着される。なお、このとき、カバー部材５１は、凹部４２に収容され、インク容器２ａの外面からは突起部５４だけが突出する状態になる。

ここで、図５には、インク識別部材５０がインク容器２ａの装着部４１に装着された場合のインクカートリッジ２の上面図が図示されている。なお、図５（ａ）〜（ｄ）は、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのインクがそれぞれ注入されるインクカートリッジの上面図を示している。図５（ａ）〜（ｄ）に示すように、インク識別部材５０の貫通孔５８から４つのカラーマークのいずれかを確認することができる。

ブラックのインクが注入されるインクカートリッジ２では、図５（ａ）に示すように、文字部４５に形成された「Ｋ」のカラーマークをインク識別部材５０の貫通孔５８から確認することができる。そして、このとき、インク識別部材５０の突起部５４が２つの挿入部２１、２２の延長線と平行になると共に、円柱状突起体５２が板状突起体５３よりも挿入部２１から離反するように（図５では右方向に）配置されている。

また、シアンのインクが注入されるインクカートリッジ２では、図５（ｂ）に示すように、文字部４５に形成された「Ｃ」のカラーマークをインク識別部材５０の貫通孔５８から確認することができる。そして、このとき、インク識別部材５０の突起部５４が２つの挿入部２１、２２の延長線と直交すると共に、円柱状突起体５２が前記延長線に対して一方向に（図５では前記延長線よりも上方向に）配置されている。

また、イエローのインクが注入されるインクカートリッジ２では、図５（ｃ）に示すように、文字部４５に形成された「Ｙ」のカラーマークをインク識別部材５０の貫通孔５８から確認することができる。そして、このとき、インク識別部材５０の突起部５４が２つの挿入部２１、２２の延長線と平行になると共に、円柱状突起体５２が板状突起体５３よりも挿入部２１から近接するように（図５では左方向に）配置されている。

また、マゼンタのインクが注入されるインクカートリッジ２では、図５（ｄ）に示すように、文字部４５に形成された「Ｍ」のカラーマークをインク識別部材５０の貫通孔５８から確認することができる。そして、このとき、インク識別部材５０の突起部５４が２つの挿入部２１、２２の延長線と直交すると共に、円柱状突起体５２が前記延長線に対して他方向に（図５では前記延長線よりも下方向に）配置されている。

このように、インク識別部材５０はインク容器２ａの装着部４１に４つの異なる回転位置で装着することができ、インクカートリッジ２に注入されるインクの色、すなわち、貫通孔５８を通じて表示させる色にしたがって、２つの挿入部２１、２２に対するインク識別部材５０の突起部５４を互いに異なる４つの位置に設定できるようになっている。また、貫通孔５８を通じて表示させるカラーマークを選択するだけで、突起部５４の位置を選択したカラーに対応する位置に設定できるため、突起部５４の位置を設定するためだけに特別な作業を要することがなく、作業コストが低減される。

以上説明した本実施の形態に係るインクカートリッジ２によれば、１種類のインク容器２ａと１種類のインク識別部材５０との２種類の部品によって、誤注入を防止する機能（互いに異なる位置に設定される突起部５４）と、注入されるインク種類を表示する機能（文字部４５に刻印された４つのカラーマークと貫通孔５８）とを有する４種類のインクカートリッジを作り分けることができるため、インク誤注入が防止されインクの種類の確認が容易な４種類のインクカートリッジを低コストにて製造することができる。

次に、本実施の形態に係るインクカートリッジ２内にインクを注入するためのインク分注機の装着部近傍の構成、および、インクカートリッジ２がインク分注機の装着部に装着される際の動作について、図６および図７を参照して説明する。

なお、図６では、ブラックのインクを注入するためのインク分注機６０の装着部６０ａ近傍の概略構成を示すと共に、その装着部６０ａにブラックのインクが注入されるインクカートリッジ２が装着される場合について示している。図６（ａ）、（ｂ）は、インク分注機６０の装着部６０ａ近傍の上面透視図、横断面図である。図６（ｃ）は、インク分注機６０の装着部６０ａに装着される直前のインクカートリッジ２を示す図であって、図６（ｄ）は、インク分注機６０の装着部６０ａにインクカートリッジ２が装着された状態を示す図である。

インク分注機６０の装着部６０ａには、インクカートリッジ２内にインクを注入するための中空針状の注入ノズル６１と、インクカートリッジ２内の空気を外部に抜くための中空針状の空気抜きノズル６２とが設けられている。従って、インクカートリッジ２がインク分注機６０の装着部６０ａに装着される場合には、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２がインクカートリッジ２の２つの挿入部２１、２２の栓２３、２４にそれぞれ突き刺されて、インクカートリッジ２内に進入するようになっている。

ブラックのインクを注入するためのインク分注機６０の装着部６０ａでは、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線上近傍に、嵌合孔６３が設けられている。嵌合孔６３は、円形部６３ａと、伸延部６３ｂとから構成されている。そして、円形部６３ａの径はインク識別部材５０の突起部５４の円柱状突起体５２の外径とほぼ同じであって、伸延部６３ｂの幅および長さは板状突起体５３の幅および長さとほぼ同じである。従って、嵌合孔６３の形状はインク識別部材５０の突起部５４の形状とほぼ同じである。

そして、嵌合孔６３は、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線と平行になると共に、円形部６３ａが伸延部６３ｂよりも空気抜きノズル６２から離反するように（図７では右方向に）配置されている。このように、装着部６０ａでは、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２に対する嵌合孔６３の位置関係が、ブラックのインクが注入されるインクカートリッジ２の挿入部２１、２２に対するインク識別部材５０の突起部５４の位置関係とほぼ一致している（図５（ａ）参照）。

従って、図６（ｃ）に示すようなブラックのインクが注入されるインクカートリッジ２、つまり、インク容器２ａの装着部４１に対してインク識別部材５０がその貫通孔５８から「Ｋ」のカラーマークが見えるように装着されたインクカートリッジ２をインク分注機６０の装着部６０ａに近づけて、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２を栓２３、２４にそれぞれ突き刺すと、図６（ｄ）に示すように、インク識別部材５０の突起部５４が装着部６０ａの嵌合孔６３に嵌合して、インクカートリッジ２のインク分注機６０の装着部６０ａへの装着が完了する。

ここで、ブラック以外のカラーのインクが注入されるインクカートリッジ２、つまり、インク容器２ａの装着部４１に対してインク識別部材５０がその貫通孔５８から「Ｃ」、「Ｙ」、「Ｍ」のいずれかのカラーマークが見えるように装着されたインクカートリッジ２をインク分注機６０の装着部６０ａに近づけた場合を考える。

このとき、ブラックのインクを注入するためのインク分注機６０の装着部６０ａの注入ノズル６１および空気抜きノズル６２に対する嵌合孔６３の位置関係は、これらのインクカートリッジ２の挿入部２１、２２に対するインク識別部材５０の突起部５４の位置関係（図５（ｂ）〜図５（ｃ））参照）と異なっているので、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２を栓２３、２４にそれぞれ突き刺したとしても、インク識別部材５０の突起部５４が装着部６０ａの嵌合孔６３に嵌合しない。従って、ブラックのインクを注入するためのインク分注機６０の装着部６０ａに対しては、ブラックのインクが注入されるインクカートリッジ２だけが装着可能であって、ブラック以外のカラーのインクが注入されるインクカートリッジ２が誤って装着されることはない。

図７には、４つのカラーインクをそれぞれ注入するためのインク分注機の装着部近傍の上面透視図が図示されている。なお、図７（ａ）は、ブラックのインクを注入するためのインク分注機６０の装着部６０ａの構成を示す図であって、図６（ａ）と同じ図である。同様に、図７（ｂ）〜（ｃ）は、シアン、イエロー、マゼンタのインクをそれぞれ注入するためのインク分注機７０、８０、９０の装着部７０ａ、８０ａ、９０ａの構成を示す図である。

シアン、イエロー、マゼンタのインクをそれぞれ注入するためのインク分注機７０、８０、９０の装着部７０ａ、８０ａ、９０ａについても、ブラックのインクのインク分注機６０の装着部６０ａと同様に、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２が設けられている。

また、シアン、イエロー、マゼンタのインクを注入するためのインク分注機７０、８０、９０の装着部７０ａ、８０ａ、９０ａでは、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線上近傍に、嵌合孔７３、８３、９３がそれぞれ設けられている。嵌合孔７３、８３、９３は、円形部７３ａ、８３ａ、９３ａと、伸延部７３ｂ、８３ｂ、９３ｂとからそれぞれ構成されている。そして、円形部７３ａ、８３ａ、９３ａの径はインク識別部材５０の突起部５４の円柱状突起体５２の外径とほぼ同じであって、伸延部７３ｂ、８３ｂ、９３ｂの幅および長さは板状突起体５３の幅および長さとほぼ同じである。従って、嵌合孔７３、８３、９３の形状はインク識別部材５０の突起部５４の形状とほぼ同じである。

そして、インク分注機７０の嵌合孔７３は、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線と直交すると共に、円形部７３ａが前記延長線に対して一方向に（図７では前記延長線よりも上方向に）配置されている。このように、インク分注機７０の装着部７０ａでは、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２に対する嵌合孔７３の位置関係が、シアンのインクが注入されるインクカートリッジ２の挿入部２１、２２に対するインク識別部材５０の突起部５４の位置関係とほぼ一致している（図５（ｂ）参照）。

また、インク分注機８０の嵌合孔８３は、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線と平行になると共に、円形部８３ａが伸延部８３ｂよりも空気抜きノズル６２に近接するように（図７では左方向に）配置されている。このように、インク分注機８０の装着部８０ａでは、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２に対する嵌合孔８３の位置関係が、イエローのインクが注入されるインクカートリッジ２の挿入部２１、２２に対するインク識別部材５０の突起部５４の位置関係とほぼ一致している（図５（ｃ）参照）。

また、インク分注機９０の嵌合孔９３は、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線と直交すると共に、円形部９３ａが前記延長線に対して他方向に（図７では前記延長線よりも下方向に）配置されている。このように、インク分注機９０の装着部９０ａでは、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２に対する嵌合孔９３の位置関係が、マゼンタのインクが注入されるインクカートリッジ２の挿入部２１、２２に対するインク識別部材５０の突起部５４の位置関係とほぼ一致している（図５（ｄ）参照）。

従って、シアンのインクを注入するためのインク分注機７０の装着部７０ａに対してはシアンのインクが注入されるインクカートリッジ２だけが装着可能であり、イエローのインクを注入するためのインク分注機８０の装着部８０ａに対してはイエローのインクが注入されるインクカートリッジ２だけが装着可能であり、マゼンタのインクを注入するためのインク分注機９０の装着部９０ａに対してはマゼンタのインクが注入されるインクカートリッジ２だけが装着可能である。その結果、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのいずれのインクが注入されるインクカートリッジ２についても、それぞれのカラーインクを注入するためのインク分注機の装着部だけに装着可能であるため、それぞれのカラーインクが注入されるインクカートリッジ２が異なるインクを注入するためのインク分注機の装着部に誤って装着されることはない。

このようにして、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのいずれのインクが注入されるインクカートリッジ２には、それぞれの色に対応するインク分注機の装着部に装着されることによって、それぞれのカラーインクが注入される。以上をもってインクカートリッジ２の製造が完了する。その後、それらのインクカートリッジ２は、記録を行う際に、インクジェットプリンタ１に装着される。ここで、インクジェットプリンタ１には、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれに対応する４つのバッファタンク３が設けられている。

ここで、バッファタンク３には、上述したように、その天井壁３ａから突出するインク導入管３５および外気導入管３６が配設されている。そして、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれに対応するバッファタンク３には、インク導入管３５および外気導入管３６の延長線上近傍には、図１に示すように、嵌合孔３８が設けられている。なお、嵌合孔３８の形状は、インク識別部材５０の突起部５４の形状とほぼ同じである。

そして、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれに対応するバッファタンク３のインク導入管３５および外気導入管３６に対する嵌合孔３８の位置関係は、インクジェットプリンタ１のブラック、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれのインクが注入されたインクカートリッジ２の挿入部２１、２２に対するインク識別部材５０の突起部５４の位置関係とほぼ一致している。なお、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれに対応するバッファタンク３のインク導入管３５および外気導入管３６に対する嵌合孔３８の位置関係は、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれに対応するインク分注機の装着部の注入ノズル６１および空気抜きノズル６２に対する嵌合孔の位置関係とそれぞれ同様であるので、詳細な説明は省略する（図７参照）。

その結果、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれのインクが注入されたインクカートリッジ２がインクジェットプリンタ１に装着される場合に、インクカートリッジ２は、その表示部４０に表示された種類のインクに対応するバッファタンク３にだけ装着可能であるため、それぞれのカラーインクが注入されたインクカートリッジ２が異なる色に対応するバッファタンク３に誤って装着されることはない。

以上のように、本実施の形態では、インク分注機によりインクカートリッジ２にインクを注入する前に、インク注入装置の作業者はインクカートリッジ２に注入されるインクの種類を表示部４０の文字部４５により容易に確認することができる。また、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれのインクを注入するためのインク分注機の装着部には、インクカートリッジ２に注入されるインクの種類に応じた位置関係にある突起部５４だけが嵌合可能な嵌合孔が設けられている。その結果、インク分注機において、インクカートリッジ２のインク識別部材５０の突起部５４が、それに注入されるインクの種類に対応するインク分注機の嵌合孔と嵌合した場合に限って、インク分注機でのインクの注入が許容される。従って、インクカートリッジ２の表示部４０の文字部４５に表示されたカラーマークのうち貫通孔５８から確認可能なカラーマークに対応するインクと異なるインクが誤ってインクカートリッジ２に注入されるのを防止することができる。さらに、インク注入後においても、インクカートリッジ２に注入されたインクの種類を表示部４０により容易に確認することができる。

また、インクカートリッジ２に注入されるインクの種類に応じた位置関係にある突起部５４は、インクジェットプリンタ１のインクの種類ごとのバッファタンク３に設けられた嵌合孔３８に対しても嵌合可能である。その結果、インクカートリッジ２をインクジェットプリンタ１に装着する場合に、インクジェットプリンタ１において、インクカートリッジ２の表示部４０に表示された種類と異なる種類のインクが注入されたインクカートリッジ２の装着位置に、インクカートリッジ２が誤って装着されるのを防止することができる。また、このとき、インク分注機でのインクの誤注入およびインクジェットプリンタ１でのインクカートリッジ２の誤装着を防止するために、共通の突起部５４を用いることができる。従って、製造工程が簡略化されると共に、製造コストを低減することができる。

また、表示部４０は、４つのカラーマークが形成された文字部４５と、文字部４５上に装着されるインク識別部材５０とを有しており、インク識別部材５０をインク容器２ａの装着部４１に装着する場合に、インク識別部材５０の取付位置（回転位置）を変更することにより、４つのカラーマークのいずれかを表示させることができる。従って、４つのカラーインクごとに異なるインク容器２ａおよびインク識別部材５０を用いなくても、インクの種類にかかわらず共通のインク容器２ａおよびインク識別部材５０を用いることができる。

また、インクカートリッジ２のインク識別部材５０の突起部５４が、インク分注機の装着部の嵌合孔に嵌合される構成であるので、インク識別部材５０に別部品である被嵌合部を取り付ける場合と比較して、部品数を減らすこともできるので、製造コストを低減することができる。

また、インク識別部材５０を、その軸部５５を中心にして回転させることによって、４つのカラーマークのうちのインク分注機により注入されるインクの種類に対応するものを容易に選択することができる。

また、インク識別部材５０の下面において、軸部５５の突出量が係合部５６の突出量よりも大きくなっているので、インク識別部材５０をインク容器２ａの装着部４１に装着する場合に、まず軸部５５を装着孔４１に装着して、その軸部５５を中心にインク識別部材５０を回転させて、貫通孔５８の位置をインク分注機により注入されるインクのカラーマークに対応する位置に調整した後で、係合部５６を位置決め溝４１ｂに係合させることができる。従って、インク識別部材５０をインク容器２ａに取り付ける作業が容易になる。

以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、インクカートリッジ２に注入されるインクの種類に応じた位置関係にある突起部５４は、インクジェットプリンタ１のインクの種類ごとのバッファタンク３に設けられた嵌合孔３８に対しても嵌合可能であるが、突起部５４が、インク分注機の装着部の嵌合孔に嵌合であればよく、必ずしもインクジェットプリンタ１のバッファタンク３の嵌合孔に嵌合可能でなくてもよい。なお、インクカートリッジ２に対して、インク分注機の装着部の嵌合孔に嵌合可能な突起部５４とは別に、インクジェットプリンタ１のバッファタンク３の嵌合孔に嵌合可能な突起部を設けることも可能である。

また、上述の実施の形態では、インク識別部材５０をインク容器２ａの装着部４１に装着する場合に、カバー部材５１の取付位置を変更することにより、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのインクに対応する４つのカラーマークのいずれかを表示させることができるが、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタのインクのそれぞれに対して、インク識別部材がインク容器に対して一体に形成されていてもよい。

また、上述の実施の形態では、インク識別部材５０の下面において、軸部５５の突出量が係合部５６の突出量よりも大きくなっているが、軸部５５の突出量は、係合部５６の突出量と同じであってもよいし、それよりも小さくてもよい。

また、上述の実施の形態では、インクの種類は４種類であったが、これに限られることなく、３種類以下であっても５種類以上であってもよい。例えばインクが６種類ある場合に本発明を適用するときは、位置決め溝４１ｂおよび係合部５６を６０度おきに６つ配置し、文字部４５に６つの文字を６０度おきに刻印すればよい。

また、上述の実施の形態では、インクカートリッジ２のインク識別部材５０のインクの種類に応じた位置関係にある突起部５４が、そのインクの種類に応じたインク分注機の装着部の嵌合孔に嵌挿されることによって、インク分注機でのインクの誤注入が防止されているが、インクカートリッジ２がインクの種類に応じて異なる位置に設けられた被検出部を有しており、インク分注機のインク識別手段によって被検出部が検出されることによって、インク分注機でのインクの誤注入が防止されてもよい。

例えば上述の実施の形態において、注入されるインクの種類に応じて異なる位置に設けられた突起部５４を被検出部とし、インク分注機に被検出部を検出するインク識別手段を設けることでも可能である。この場合について、図８および図９を参照して説明する。なお、図８は、ブラックのインクを注入するためのインク分注機６０の装着部６０ａに、ブラックのインクが注入されるインクカートリッジ２が装着される場合を示すものであり、図９は、インク分注機６０、７０、８０、９０のブラック、シアン、イエロー、マゼンタの４色にそれぞれ対応する装着部６０ａ、７０ａ、８０ａ、９０ａに各々設けられるインク識別手段と、装着部６０ａ、７０ａ、８０ａ、９０ａに装着されたインクカートリッジ２との位置関係を示したものである。

インク識別手段は、インク分注機に設けられた発光部７１と受光部７２からなる透過型の光センサ７３から構成されている。図８および図９（ａ）に示されるように、インク分注機６０のブラックに対応するインクカートリッジ２が装着される装着部６０ａには、装着されたブラックに対応するインクカートリッジ２の円柱状突起体５２の先端を検知可能な位置に光センサ７３が設けられている。より具体的には、光センサ７３の発光部７１と受光部７２は、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線と直交しインク分注機６０に装着されたインクカートリッジ２の板状突起体５３よりも高い位置で円柱状突起体５２の先端を通過する仮想直線上において、円柱状突起体５２の先端を挟んで設置されている。よって、この光センサ７３は、板状突起体５３によって遮光されることはなく、ブラックに対応するインクカートリッジ２が装着部６０ａに装着されたときに限って、円柱状突起体５２の先端によって遮光されるように配されている。

また、インク分注機７０のシアンに対応するインクカートリッジ２が装着される装着部７０ａには、発光部７１と受光部７２が、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線と平行であってインク分注機７０に装着されたインクカートリッジ２の板状突起体５３よりも高い位置で円柱状突起体５２の先端を通過する仮想直線上において、円柱状突起体５２の先端を挟んで設置されている。よって、この光センサ７３は、板状突起体５３によって遮光されることはなく、シアンに対応するインクカートリッジ２が装着部７０ａに装着されたときに限って、円柱状突起体５２の先端によって遮光されるように配されている。

また、インク分注機８０のイエローに対応するインクカートリッジ２が装着される装着部８０ａには、発光部７１と受光部７２が、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線と直交しインク分注機８０に装着されたインクカートリッジ２の板状突起体５３よりも高い位置で円柱状突起体５２の先端を通過する仮想直線上において、円柱状突起体５２の先端を挟んで設置されている。よって、この光センサ７３は、板状突起体５３によって遮光されることはなく、イエローに対応するインクカートリッジ２が装着部８０ａに装着されたときに限って、円柱状突起体５２の先端によって遮光されるように配されている。

また、インク分注機９０のマゼンタに対応するインクカートリッジ２が装着される装着部９０ａには、発光部７１と受光部７２が、注入ノズル６１および空気抜きノズル６２の延長線と平行であってインク分注機９０に装着されたインクカートリッジ２の板状突起体５３よりも高い位置で円柱状突起体５２の先端を通過する仮想直線上において、円柱状突起体５２の先端を挟んで設置されている。よって、この光センサ７３は、板状突起体５３によって遮光されることはなく、マゼンタに対応するインクカートリッジ２が装着部９０ａに装着されたときに限って、円柱状突起体５２の先端によって遮光されるように配されている。

このように、インク分注機のインク識別手段（光センサ７３）により被検出部（突起部５４の円柱状突起体５２）を検出することで、装着部６０ａ、７０ａ、８０ａ、９０ａに装着されたインクカートリッジのインクの種類の適否を識別するように構成したため、異なる種類のインクカートリッジが誤って装着されたことを認識し、誤注入を未然に防止することができる。

さらに、インク分注機の制御手段が、インク識別手段が被検出部を検出したときに発する検出信号を受けた場合にインク注入手段（例えば注入ノズル６１）を作動可能とし、検出信号を受けていない場合はインク注入手段を作動不可能とするように制御することで、誤注入を完全に防止する注入禁止手段を構成することができる。なお、被検出部は、円柱状突起体５２に限らず、切り欠き、バーコード等でもよく、インク識別手段は、透過型の光センサ７３に限らず、反射型の光センサやバーコードリーダであってもよい。

本発明の実施の形態に係るインクカートリッジが装着されたインクジェットプリンタの概略構成を示す図である。 図２（ａ）は、図１に示すインクカートリッジの上面図である。 図２（ｂ）は、図１に示すインクカートリッジの横断面図である。 図３（ａ）は、図１に示すインク識別部材の上面図である。 図３（ｂ）は、図１に示すインク識別部材の側面図である。 図３（ｃ）は、図１に示すインク識別部材の下面図である。 インク識別部材がインク容器の装着部に装着される際の動作を説明するための図である。 インク識別部材がインク容器に装着された場合のインクカートリッジの上面図である。 図６（ａ）は、インク分注機の装着部近傍の上面透視図である。 図６（ｂ）は、インク分注機の装着部近傍の横断面図である。 図６（ｃ）は、インク分注機の装着部に装着される直前のインクカートリッジ２を示す図である。 図６（ｄ）は、インク分注機の装着部にインクカートリッジ２が装着された状態を示す図である。 図７（ａ）は、ブラックのインクをそれぞれ注入するためのインク分注機の装着部の構成を示す図である。 図７（ｂ）は、シアンのインクをそれぞれ注入するためのインク分注機の装着部の構成を示す図である。 図７（ｃ）は、イエローのインクをそれぞれ注入するためのインク分注機の装着部の構成を示す図である。 図７（ｄ）は、マゼンタのインクをそれぞれ注入するためのインク分注機の装着部の構成を示す図である。 ブラックのインクを注入するためのインク分注機の装着部に、ブラックのインクが注入されるインクカートリッジが装着される状態を示す図である。 インク分注機のブラック、シアン、イエロー、マゼンタの４色にそれぞれ対応する装着部に各々設けられるインク識別手段と、装着部に装着されたインクカートリッジとの位置関係を示す図である。

１ インクジェットプリンタ
２ インクカートリッジ
２ａ インク容器（カートリッジ本体）
３ バッファタンク
３８ 嵌合孔（嵌合部）
４０ 表示部
４１ 装着部
４１ａ 中心溝
４２ｂ 位置決め溝
４５ 文字部（インク識別マーク）
５０ インク識別部材
５１ カバー部材
５４ 突起部（被嵌合部，被検出部）
５５ 軸部
５６ 係合部（突出係合部）
５８ 貫通孔（窓部）
６０、７０、８０、９０ インク分注機（インク注入装置）
６０ａ、７０ａ、８０ａ、９０ａ 装着部
６１ 注入ノズル
６３、７３、８３、９３ 嵌合孔（嵌合部）
７３ 光センサ（インク識別手段）

Claims (6)

1. 複数種類のインクのうちのいずれか１種類である所定のインクがインク注入装置により注入されるカートリッジ本体と、
   注入される前記所定のインクの種類を表示する表示部と、
   インクの種類に応じて異なる複数の位置のうち前記表示部により表示される前記所定のインクに対応する位置に設けられており、前記カートリッジ本体が装着される前記インク注入装置において注入される前記所定のインクを識別する際に検出される被検出部とを備え、
   前記表示部は、
   前記複数種類のインクにそれぞれ対応して前記カートリッジ本体の表面に記された複数のインク識別マークと、
   前記カートリッジ本体に取り付けられ、前記複数のインク識別マークから選択された１つのインク識別マーク以外のインク識別マークを覆うカバー部材とを有し、
   前記被検出部は、前記カバー部材の所定の位置に設けられた突起部であることを特徴とするインクカートリッジ。
2. 前記被検出部は、前記カートリッジ本体が装着されるインクジェットプリンタに設けられた、前記カートリッジ本体に注入されたインクの種類を識別するインク識別手段によっても検出可能であることを特徴とする請求項１に記載のインクカートリッジ。
3. 複数種類のインクのうちのいずれか１種類である所定のインクがインク注入装置により注入されるカートリッジ本体と、
   注入される前記所定のインクの種類を表示する表示部と、
   インクの種類に応じて異なる複数の位置のうち前記表示部により表示される前記所定のインクに対応する位置に設けられた被嵌合部とを備え、
   前記カートリッジ本体は、前記被嵌合部が前記インク注入装置の前記所定のインクの種類に対応する嵌合部と嵌合したときに、前記インク注入装置でのインクの注入が許容され、
   前記表示部は、
   前記複数種類のインクにそれぞれ対応して前記カートリッジ本体の表面に記された複数のインク識別マークと、
   前記カートリッジ本体に取り付けられ、前記複数のインク識別マークから選択された１つのインク識別マーク以外のインク識別マークを覆うカバー部材とを有し、
   前記被嵌合部は、前記カバー部材の所定の位置に設けられた突起部であることを特徴とするインクカートリッジ。
4. 前記被嵌合部は、前記カートリッジ本体が装着されるインクジェットプリンタに、前記所定のインクの種類に対応して設けられた嵌合部に対して嵌合可能であることを特徴とする請求項３に記載のインクカートリッジ。
5. 前記複数のインク識別マークは、円周方向に並べられて円形状に配置されており、
   前記カバー部材は、
   その裏面側に突出状に形成されて、前記カートリッジ本体のうちの複数のインク識別マークにより構成される円の中心部に形成された装着孔に回転自在に装着される軸部と、
   その外周側部分に形成され、前記カバー部材が前記カートリッジ本体に取り付けられた状態で複数のインク識別マークから選択された１つのインク識別マークが外部から見えるようにするための窓部とを有し、
   前記カバー部材を前記軸部を中心に回転させることにより、前記窓部を注入される前記所定のインクに対応するインク識別マークの位置に合わせることが可能に構成されていることを特徴とする請求項１〜４のいずれか１項に記載のインクカートリッジ。
6. 前記カートリッジ本体には、前記カバー部材の回転方向の位置を決めるための複数の位置決め溝が形成され、
   前記カバー部材の裏面側には、前記複数の位置決め溝にそれぞれ係合する複数の突出係合部が裏面側へ突出状に形成され、
   前記軸部は、前記複数の突出係合部よりも裏面側への突出量が大きいことを特徴とする請求項５に記載のインクカートリッジ。

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