JP4412757B2 - 大腸ガン予防剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は日常の食生活で無理なく摂取可能な新規大腸ガン予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
日本における死因のトップはガンである。なかでも、大腸ガン(直腸ガン+結腸ガン)の占める割合が高く、将来この傾向はますます強まり、21世紀には胃ガンを追い抜くものと予想されている。
大腸ガンの発生には環境的因子が大きく関わっていると考えられ、その因子の一つが食生活の急激な欧米化である。動物性の脂肪やタンパク質を中心とする食生活では、肉類の消化・吸収のために発ガン性物質を生成するといわれる多量の胆汁酸を分泌しなければならないからである。
また、発ガンの因子として近年注目されているのがフリーラジカル、活性酸素である。これらは、熱、光、喫煙や排気ガス、紫外線などといった環境的因子を体内に取り込むことにより発生し、また体内で生理的に発生することも知られている。そして、このフリーラジカル、活性酸素が生体膜、組織を構成する脂質、タンパク質、核酸を攻撃して酸化反応を起こし、それによる障害が蓄積して、ついには発ガンに結びつくと考えられている。
【0003】
大腸ガンは早期に発見すれば完全に治療することができると言われている。しかし進行する前のポリープの段階では発見することが難しく、これら発ガン性物質を、体内に取り込まない、あるいは速やかに体外に排出するための様々な試みがなされてきた。
そこで近年話題になっているのが食物繊維である。食物繊維とは「人の消化酵素で消化されない成分」を一括して称しており、食物として摂取されることにより糞便量を増加させ、腸管のぜん動運動を亢進させるので、腸内内容物の腸内通過時間を短縮させ、大腸内で生成される腐敗産物や発ガン性物質の量を減少させるものと考えられている。また、腐敗産物や発ガン物質が腸管膜と接触する時間が短縮することによって発ガンが抑制される可能性もある。水不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に大別され、水不溶性食物繊維としてはセルロース、リグニン、ヘミセルロースA、ヘミセルロースC、キチン、コラーゲン等があり、水溶性食物繊維としてはペクチン、コンニャクマンナン、アルギン酸ナトリウム、カラゲーナン、寒天、カルボキシメチルセルロース、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等が例示される。しかしながら、食物繊維の種類によりその効果は様々であり、また、非栄養成分であるだけでなく、過剰摂取により腹部の充満感や下痢を伴う等、多くの課題を抱えている。
さらに食物繊維以外の大腸ガン予防物質としてポリフェノール等の抗酸化剤が報告されているが、これらは日常の生活で摂取するのは極めて困難な量を必要とするため、現時点で大腸ガン予防剤の多くは食物繊維を有効成分としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決すべく、安全でかつ低濃度で優れた大腸ガン予防効果を有し、日常の食生活に適宜取り入れて無理なく摂取できる新規大腸ガン予防剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、繭タンパク質のセリシンが、低濃度で大腸ガンの予防に有効であることを見出し、本物質を有効成分とする安全性の高い、優れた大腸ガン予防物質を得ることに成功した。
即ち、本発明は、セリシンの加水分解物を有効成分とする大腸ガン予防剤である。
本発明で用いるセリシンとしては通常、繭又は生糸由来のセリシンの加水分解物が好ましく用いられる。非加水分解物としてのセリシンは、繭又は生糸から一般的に行われる抽出方法で得ることができる。例えば以下のようにして純度90%以上の高精製度単一タンパク質の状態で抽出できる。
即ち、繭又は生糸に含有されるセリシンを水によって抽出し、例えば次の(1)、(2)のいずれかの方法で回収する。
(1)メタノール、エタノール、ジオキサン等の水溶性有機溶媒を混合してセリシンを析出させた後、これを濾別乾燥して、セリシン粉体として得る。
(2)特開平4−202435号公報に提案されているように、限外濾過膜もしくは逆浸透膜に付した後、乾燥することによりセリシン粉体を得る。
またセリシンの加水分解物は、繭又は生糸から一般的に行われる抽出方法で得ることができる。例えば以下のようにして純度90%以上の高精製度タンパク質(ペプチド)の状態で抽出できる。
即ち、繭又は生糸に含有されるセリシンを、電気分解した水や、酸、アルカリ、もしくは酵素などによって部分加水分解して抽出してから、例えば上記(1)、(2)のいずれかの方法で回収する。
【0006】
セリシンは天然物由来であり、人体への安全性が高く、食品、健康食品、特定保険用食品などに添加することができるため、日常の食生活において無理なく摂取することができる。その添加量は通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。少量であっても十分な効果を示すが、毒性が無く、水溶性にも優れるため多量に添加ないし摂取しても特段の問題は生じない。通常投与量は1日体重kg当り1mg〜1gである。投与方法としては経口投与、非経口投与のいずれでもよい。その剤型としては、溶液状、ゲル状、スティック状、顆粒状、錠剤、また大腸において効率よくその作用を発現させるためにカプセル状等としてもよく、その剤型は様々である。
【0007】
【実施例】
〔製造例1〕
繭1kgを水50L(リットル)中で95℃にて2時間処理し、セリシンを抽出した。得られた抽出液を平均孔径0.2μmのフィルターで濾過し、凝集物を除去した後、濾液を逆浸透膜により脱塩し、濃度0.2%の無色透明のセリシン水溶液を得た。この水溶液をエバポレーターを用いてセリシン濃度約2%にまで濃縮した後、凍結乾燥を行って、純度95%以上、平均分子量100,000のセリシン粉体(以下セリシンH)100gを得た。
【0008】
〔製造例2〕
繭1kgを0.2%炭酸ナトリウム水(pH11〜12)50L中で95℃にて2時間処理し、セリシン加水分解物を抽出した。得られた抽出液を平均孔径0.2μmのフィルターで濾過し、凝集物を除去後、濾液を逆浸透膜により脱塩し、濃度0.2%の無色透明のセリシン加水分解物抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターを用いてセリシン濃度約2%にまで濃縮した後、凍結乾燥を行って、純度90%以上、平均分子量20,000のセリシン加水分解物粉体(以下セリシンL)100gを得た。
【0009】
〔試験例1〕
実験動物として、初体重23〜28gのICR系雄マウス(日本チャールズリバー(株))を用い、1群12匹とした。金網のある金属ケージに4匹づつ入れ、12時間明暗交替(8:00AM〜8:00PMは明、8:00PM〜翌8:00AMは暗)の恒温(24±1℃)の動物室にて飼育した。1週間、市販の固形飼料(オリエンタル酵母(株))を与えた後、実験食(表1)に切り替え、35日間飼育した。飼育開始から最初の3週間、計3回体重Kg当たり20mgの1,2−ジメチルヒドラジンを皮下注射で投与した。飼育期間中は蒸留水と食餌を自由に与え、体重と摂食量を測定した(表2)。
解剖は、動物を軽くジエチルエーテルで麻酔し、断頭により採血後、大腸をすばやく取り出した。大腸は切り開いてペーパータオル上に広げ、ホルマリン固定した。その後大腸を水洗し、0.1%(w/v)メチレンブルー中で5分間振盪し染色した。実体顕微鏡(40倍)で大腸表面を観察し、大腸の前ガン病変であるAberrant crypt foci(ACF)数を観察した(表3)。なお有意差の判定にはDuncanの多重比較検定を用いた。
結果を表2,3に示した。コントロールとセリシン各群では体重及び摂食量に有意差はなかったものの(表2)、ACFではセリシン群でその濃度に依存した、有意な低下が見られた。従ってセリシンが大腸の前ガン病変を抑制することが示された(表3)。
【0010】
【表1】
【0011】
【表2】
【0012】
【表3】
【0013】
〔試験例2〕
本試験では試験例1に比べて飼育期間を14週間に延長しガンが形成するまで飼育を行い、セリシンの大腸ガン抑制に及ぼす効果を確認した。
実験動物として、初体重23〜28gのICR系雄マウス(日本SLC(株))を用い、1群40匹とした。金網のある金属ケージに4匹づつ入れ、12時間明暗交替(8:00AM〜8:00PMは明、8:00PM〜翌8:00AMは暗)の恒温(24±1℃)の動物室にて飼育した。1週間、市販の固形飼料(オリエンタル酵母(株))を与えた後、実験食(表1、ただしセリシンHの代わりにセリシンLを用いた)に切り替え、98日間飼育した。飼育開始から最初の10週間、週1回体重Kg当たり10mgの1,2−ジメチルヒドラジンを皮下注射で投与した。飼育期間中は蒸留水と食餌を自由に与え、体重と摂食量を測定した。
解剖は動物を軽くジエチルエーテルで麻酔し、断頭により採血後、大腸をすばやく取り出した。大腸は切り開いてペーパータオル上に広げ、ホルマリン固定した。その後大腸を水洗し、0.1%(w/v)メチレンブルー中で5分間振盪し染色した。実体顕微鏡(40倍)で大腸表面を観察し、ガンの数を観察した。なお腫瘍発生率及びマウス1匹当たりの腫瘍数の有意差判定には、それぞれDuncanの多重比較検定、χ2-検定を用いた。
この結果、対照群とセリシン群では体重及び摂食量に有意差はなかったものの(表4)、マウス1匹当たりのガンの数はセリシン摂取マウスの方が低い値を示した(表5)。またガンを形成した割合も、セリシン摂取マウスの方が有意に低い値を示した。従ってセリシンは大腸ガンの形成を抑制することが示された。
【0014】
【表4】
【0015】
【表5】
【0016】
【発明の効果】
本発明の大腸ガン予防剤は、低濃度において大腸ガンの発生・成長の抑制に優れた効果を示す。水溶性であるため利用範囲が広く、食品、特別用途食品、外用薬、医薬品等の製品に用いることができ、日常生活において無理なく経口摂取できる。また本発明の大腸ガン予防剤は天然物由来のタンパク質としての特性を持ち、生体内では高い安全性を有するので、たとえ大量に摂取したとしても無害であり、体内では栄養源として利用されうる。
さらに本発明品は無味、無臭であるため食品に添加した場合、においや味といった官能特性に影響を与えない。
更に、本発明の大腸ガン予防剤は、繭又は生糸の溶媒抽出物から、容易にしかも単一のタンパク質としては高い純度で抽出できるため、安価に得られ、しかも水溶液の色が無色透明であるので、消色する必要が無く、複雑な処理工程を必要としないという大きな利点がある。
Claims (2)
- セリシンの加水分解物を有効成分とする大腸ガン予防剤。
- セリシンの加水分解物が繭又は生糸から抽出した天然セリシンの加水分解物である請求項1記載の大腸ガン予防剤。
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