JP4411728B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、環状オレフィン系樹脂および芳香族ビニル−極性基を有するビニル系共重合体からなるもので、さらに詳しくは透明性と低複屈折性等に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明樹脂は自動車部品、照明機器、電気部品など通常の透明性が要求される成形品の材料として用いられ、特に最近においては、光学的性質が重視される光学材料としての応用が進みつつある。
【0003】
かかる用途に好適に用いられる透明樹脂として、ポリカーボネート系樹脂やアクリル系樹脂が知られている。しかし、アクリル系樹脂は透明性に優れているが、耐熱性や耐水性等の点で問題がある。一方、ポリカーボネート系樹脂は、耐熱性や耐水性においてはアクリル系樹脂より優れているが、複屈折率が高いなどの問題がある。
【0004】
最近では、透明性、耐水性(低吸水性)、低複屈折性、耐熱性などを兼ね備えている環状ポリオレフィン系樹脂が光学材料用の透明樹脂として用いられてきている。従来公知の環状ポリオレフィン系樹脂は、十分に低い複屈折率を有するものでない。
【0005】
複屈折を低くさせる方法としてポリマーブレンドがあり、いくつか検討されている。例えば、特開平11−323098では極性基含有ポリスチレンと環状ポリオレフィン系樹脂とのポリマーブレンドにより従来に比べて低複屈折性を有するブレンド体を得ている。しかし、ブレンド物の着色などの問題があり、また複屈折率も十分満足できるものではなかった。また、相分離などの要因により透明性が損なわれたり、耐熱性が大きく低下する欠点もあった。
【0006】
このような状況から、さらに優れた低複屈折性を有する透明樹脂(熱可塑性樹脂組成物)の開発が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、従来公知の環状オレフィン系樹脂が有する諸特性(低吸水性、耐熱性)を保持しながら、さらに優れた透明性、低複屈折性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(イ)特定の環状オレフィン系樹脂および(ロ)無水マレイン酸の結合含有量が2〜10重量%である芳香族ビニル−無水マレイン酸共重合体を含有してなる熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
また本発明は、上記(イ)成分の含有量と(ロ)成分の含有量の比が、(イ)成分100重量部に対し(ロ)成分0.01〜1000重量部である熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について詳細に説明する。
<(イ)成分>
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する(イ)成分としては、下記[1]または[2]に示すいずれかの重合体である。
[1] 下記一般式(I)で表される単量体(以下、「特定単量体」という。)の開環重合体、特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体のいずれかである開環(共)重合体の水素添加重合体
[2] 特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
【0011】
【化2】
〔式中、R1〜R4は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または−(CH 2 )nCOOR 5 (R 5 は炭素数1〜12のアルキル基、nは0〜5の整数を表す)であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1とR2またはR3とR4は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。〕
【0012】
上記の特定単量体から得られる環状オレフィン系樹脂〔(イ)成分〕は、(ロ)成分との相溶性を向上させる観点から、分子構造中に−(CH 2 )nCOOR 5 等の極性基を含有していることが好ましい。
【0013】
<特定単量体>
好ましい特定単量体としては、上記一般式(I)中、R1およびR3が水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2およびR4が水素原子または−(CH 2 )nCOOR 5 であって、R2およびR4の少なくとも一つは水素原子および炭化水素基以外のハロゲン原子または−(CH 2 )nCOOR 5 を示し、mが0〜3の整数、pが0〜3の整数であり、m+pが0〜4(更に0〜2、特に1)であるものを挙げることができる。
【0014】
また、特定単量体のうち、式−(CH2)nCOOR5で表される極性基を有する特定単量体は、得られる熱可塑性樹脂組成物が高いガラス転移温度と低い吸湿性を有するものとなる点で好ましい。また、nは通常0〜5であるが、nの値が小さいものほど、得られる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0である特定単量体は、その合成が容易である点で好ましい。さらに、上記一般式(I)においてR1またはR3がアルキル基であることが好ましく、当該アルキル基の炭素数は1〜4であることが好ましく、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。特に、このアルキル基が上記の式−(CH2)nCOOR5で表される極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが好ましい。また、一般式(I)においてmが1である特定単量体は、ガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂組成物が得られる点で好ましい。
【0015】
上記一般式(I)で表わされる特定単量体の具体例としては、次のような化合物が挙げられる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]−8−デセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、 ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、 トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ジメタノオクタヒドロナフタレン、
エチルテトラシクロドデセン、
6−エチリデン−2−テトラシクロドデセン、
トリメタノオクタヒドロナフタレン、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン、
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、 5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、 5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、 8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどを挙げることができる。
【0016】
これらの特定単量体のうち、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、ペンタシクロ〔7.4.0.12,5 .19,12.08,13〕−3−ペンタデセンは、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物が耐熱性に優れたものとなる点で好ましく、特に、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセンは、(ロ)成分との相溶性に優れた環状オレフィン系樹脂が得られることから好ましい。
【0017】
<共重合性単量体>
(イ)成分を得るための開環重合工程においては、上記の特定単量体を単独で開環重合させてもよいが、当該特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させてもよい。
【0018】
この場合に使用される共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、トリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。
【0019】
<開環重合触媒>
本発明において、開環重合反応はメタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えばMg、Caなど)、IIB族元素(例えばZn、Cd、Hgなど)、III B族元素(例えばB、Alなど)、IVA族元素(例えばTi、Zrなど)あるいはIVB族元素(例えばSi、Sn、Pbなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。またこの場合に触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
【0020】
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6、MoCl5、ReOCl3など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0021】
(b)成分の具体例としては、n−C4H9Li、(C2H5)3Al、(C2H5)2AlCl、(C2H5)1.5AlCl1.5、(C2H5)AlCl2 、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−240517号公報に記載の化物を挙げることができる。
【0022】
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、更に特開平1−240517号公報に示される化合物を使用することができる。
【0023】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体とのモル比で「(a)成分:特定単量体」が、通常1:500〜1:50000となる範囲、好ましくは1:1000〜1:10000となる範囲とされる。
【0024】
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲とされる。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲とされる。
【0025】
<分子量調節剤>
開環重合体の分子量の調節は重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。
【0026】
ここに、好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。
【0027】
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、開環重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルとされる。
【0028】
<開環重合反応用溶媒>
開環重合反応において用いられる溶媒(特定単量体、メタセシス触媒および分子量調節剤を溶解する溶媒)としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;アリールなどの化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、「溶媒:特定単量体(重量比)」が、通常1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
【0029】
<水素添加触媒>
以上のようにして得られる開環(共)重合体は、そのまま(イ)成分として使用することもできるが、水素添加された水素添加(共)重合体を(イ)成分として使用することが好ましい。
【0030】
水素添加反応は、通常の方法、すなわち、開環(共)重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
【0031】
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が公知である。
【0032】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。
【0033】
これらの水素添加触媒は、「開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)」が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
このように、水素添加することにより得られる水素添加(共)重合体は優れた熱安定性を有するものとなり、成形加工時や製品としての使用時の加熱によってはその特性が劣化することはない。ここに、水素添加率は、通常50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは97%以上、就中99%以上である。
【0034】
<飽和共重合体を構成する不飽和二重結合含有化合物>
飽和共重合体よりなる(イ)成分を得るために、特定単量体との共重合反応に供される不飽和二重結合含有化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなど炭素数2〜12のものが好ましく、さらに好ましくは2〜8のオレフィン系化合物を挙げることができる。
【0035】
<飽和共重合体を得る際に使用する触媒>
特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との共重合反応に使用される触媒としては、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が用いられる。バナジウム化合物としては、一般式VO(OR)aXbまたはV(OR)cXd(ただし、Rは炭化水素基、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4)で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与体付加物が用いられる。電子供与体としてはアルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アルコキシシラン等の含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアナート等の含窒素電子供与体などが挙げられる。有機アルミニウム化合物触媒成分としては、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合あるいはアルミニウム−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種が用いられる。
触媒成分の比率はバナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al/V)で2以上、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20の範囲である。
【0036】
<飽和共重合体を得る際に使用する溶媒>
特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との共重合反応に使用される溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素およびそのハロゲン誘導体を挙げることができ、これらのうち、シクロヘキサンが好ましい。
【0037】
本発明で用いられる(イ)成分の30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh )は、0.2〜5dl/gであることが好ましい。また(イ)成分の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が通常5,000〜1,000,000であり、好ましくは6,000〜500,000、さらに好ましくは7,000〜300,000、特に好ましくは8,000〜100,000である。また重量平均分子量(Mw)は通常7,000〜2,000,000であり、好ましくは10,000〜1,000,000、さらに好ましくは15,000〜500,000、特に好ましくは20,000〜300,000である。
【0038】
<(ロ)成分>
次に(ロ)芳香族ビニル−無水マレイン酸共重合体は、芳香族ビニル化合物を主成分とするランダムあるいはブロック共重合体である。
【0039】
<芳香族ビニル化合物>
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、2-メチル−4-ヒドロキシスチレン、ビニルベンジルアルコール、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、2−フェニルアクリル酸、メチル−4−ビニルベンゾエ−ト、エチル−4−ビニルベンゾエ−ト、4−ビニルベンジルアセート、4−アセトキシスチレン、p−ブテニルアセトフェノン、m−イソプロピルアセトフェノン、2−ブチルアミドスチレン、4−メチルアミドスチレン、p−スルホンアミドスチレン、3−アミノスチレン、4−アミノスチレン、2−イソプロペニルアニリン、ビニルベンジルジメチルアミン、3−ニトロスチレン、4−ニトロスチレン、3−シアノスチレン、4−シアノスチレン、ビニルフェニルアセトニトリル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン、どがあげられる。これらの中ではスチレン、α−メチルスチレンが好ましく、なかでもスチレンが好ましい。
【0040】
これらの芳香族ビニル単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(ロ)成分には、上記芳香族ビニル化合物および無水マレイン酸の他に、これらと共重合可能な化合物を共重合してもよい。かかる化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、N−アルキルマレイミド、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。
【0041】
<(ロ)成分の調整>
(ロ)成分として特に好適な芳香族ビニル共重合体としては、無水マレイン酸−スチレン共重合体があげられる。
【0042】
(ロ)成分中、無水マレイン酸の結合含有量は、2〜10重量%である。2重量%未満ではポリスチレンと同様に相分離を起こしやすく、組成物が白濁しやすくなる。また、10重量%を超える場合においてもポリマーが白濁しやすい。
【0043】
優れた透明性および低複屈折性を兼ね備えた熱可塑性樹脂組成物を得るためには、(イ)成分と(ロ)成分とは完全相溶系であることが好ましい。
そのため、(イ)成分の種類に応じて、(ロ)成分の種類、分子量および含有量を選ぶことが好ましい。
【0044】
なお、(イ)成分と(ロ)成分とを完全相溶系にするために、さらに相溶化剤を配合してもよい。
ここに(ロ)成分の分子量としてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜1,000,000であることが好ましく、さらに好ましくは2,000〜800,000、より好ましくは5,000〜500,000、特に好ましくは10,000〜300,000である。500未満では複屈折低減の効果が乏しく、また、1,000,000以上では相溶性が悪く、ポリマーが白濁しやすい。
【0045】
(ロ)成分を構成する芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸とのランダム重合体は塊状重合、溶液重合、沈殿重合、乳化重合、縣濁重合、塊状−縣濁重合法などの方法で製造することができる。(ロ)成分を得るための(共)重合反応に使用される重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知のラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤、配位重合触媒などを例示することができる。
【0046】
また、(ロ)成分含有量としては、(イ)成分100部あたり、通常0.01〜1000重量部とされ、好ましくは、0.1〜100重量部、さらに好ましくは、0.5〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部とされる。
【0047】
(ロ)成分の配合量が0.01重量部未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の複屈折率が十分に低いものとはなり難い。一方、配合量が1000重量部を超える場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性および透明性が低い。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性を有するものが好ましい。かかる透明性としては、試験片(厚さ3mm)を作製し、ASTM D1003に準じて全光線透過率を測定した値が、通常70%以上であるものがよく、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上のものである。
【0049】
本発明の樹脂組成物には、(イ)成分および(ロ)成分以外の樹脂成分として炭化水素樹脂を含有させてもよい。
かかる炭化水素樹脂としてはC5系樹脂(炭素数5の不飽和化合物を主構成成分とする重合体)、C9系樹脂、C5系/C3系混合樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、オレフィン/ビニル置換芳香族系化合物共重合体系樹脂、シクロペンタジエン系化合物/ビニル置換芳香族系化合物の共重合体系樹脂、前記樹脂の水素添加物およびビニル置換芳香族系樹脂の水素添加物などがあげることができる。
【0050】
本発明の樹脂組成物には、公知の酸化防止剤、たとえば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−ジオキシ−3,3−ジ−t−ブチル−5,5−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドキシフェニル)プロピオネート}メタン;紫外線吸収剤、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどを添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0051】
本発明の樹脂組成生物を製造する方法としては、例えば、(イ)成分と(ロ)成分と任意成分とを、単軸押出機、ニ軸押出機などの連続式、ロール混練機、バンバリーミキサーなどのバッチ式の装置などを用いて混合することによりペレット状の樹脂組成物を得る方法。該当(イ)と(ロ)成分を適当の溶媒に溶解して溶液を調整し、(イ)と(ロ)成分を溶液状でブレンドすることによりペッレット状の樹脂組成物を得る方法が挙げられる。
【0052】
本発明の樹脂組成物によれば、公知の成形手段、例えば射出成形法、圧縮成形法、押し出し成形法、溶液キャスト成形などを用いて成形品を作成することができる。ここの成形品の形状としても限定されるものではない。また、キャスト成形法によってフィルム状の成形品を得ることができる。
【0053】
また、本発明の樹脂組成物により作製された成形品の表面に、無機化合物、シランカップリング剤などの有機シリコン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂などからなるハードコート層を形成することができる。ハードコート層の形成手段としては、熱硬化法、紫外線硬化法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法をあげることができる。これによって、成形品の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐磨耗性および耐水性などを向上させることができる。
【0054】
本発明の樹脂組成物の用途は特に限定されるものではなく、広い範囲にわたって使用することができ、例えば、一般カメラ用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、望遠鏡用レンズ、眼鏡用レンズ、レーザービーム用レンズなどのレンズ類、プリズム、回折格子、液晶表示用照明装置、光学式ビデオディスク、オーディオディスク、文書ファイルディスク、CD、MD、DVD用ピックアップレンズ、メモリディスクなどの光ディスク類、光ファイバーなどの光学材料、導光板、受像転写シートやタッチパネル、位相差フィルムなどの各種フィルム、液晶セルなどのシート、封止剤、無機または有機化合物のバインダーとして特に好適に使用することができる。
【0055】
実施例
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がこれらによって制限されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を示す。
【0056】
調整例(A-1)
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン250部、1−ヘキセン41部、トルエン750部を窒素置換した反応容器に仕込み、80度に加熱した。この反応溶液に、トリエチルアルミニウムへキサン溶液(1.5モル/l)0.62部、t−ブタノ−ル/メタノール変性した6塩化タングステントルエン溶液(0.05モル/l)3.7部を添加し、80度で3時間反応させることにより開環重合体を得た。重合転化率は97%であった。
【0057】
ここで得られた重合溶液4000部をオートクレーブに仕込み、RuHCl(CO)[P(C6H5)3]3を0.48部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165度で3時間水素添加反応を行った。得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、大量のメタノールにより反応溶液を凝固させた。得られたポリマーの水添率は100%であり、数平均分子量は19800、重量平均分子量は62000(GPC測定、ポリスチレン換算)であった。
【0058】
調整例(A-2)
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン200部を用いたこと以外前記の生成法と同様にして開環重合体、水添付加反応および凝固回収を行って水素付加重合体を得た。
水添率は100%であり、数平均分子量は19200、重量平均分子量は58000(GPC測定、ポリスチレン換算)であった。
【0059】
調整例(A-3)
窒素置換した反応容器にモレキュラーシーブ(4A)により脱水乾燥させたシクロヘキサン2000部を入れ、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン75部とエチルアルミニウムセスキクロライドのノルマルヘキサン溶液(1mol/L)6.6部とを添加した。反応温度を10度に保ち反応容器内に、エチレンと窒素の混合ガス(エチレン流量:10L/H、窒素流量:40L/)を10分間供給した。その後、この溶液にVO(OC2H5)Cl2のノルマルヘキサン溶液(0.07mol/L)23部を滴下ロートより滴下して共重合反応を開始し、前記の混合ガスを通しながら反応させた。30分後に少量のメタノールを加え、重合反応を停止させた。この反応混合液を大量のメタノール中に注いで凝固させた。得られた重合体の数平均分子量は21000、重量平均分子量は63000(GPC測定、ポリスチレン換算)であった。
【0060】
<調整例B1>
窒素置換した反応容器にスチレン92部、無水マレイン酸8部、AIBNを0.1部、トルエン200部を加え、90℃で3時間反応させ、スチレン−無水マレイン酸共重合体(共重合体モル比95/5)を得た。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は70000(GPC測定、ポリスチレン換算)であった。
【0061】
<調整例B2>
窒素置換した反応容器に4−メチルスチレン92部、無水マレイン酸8部、AIBNを0.1部、トルエン200部を加え、90℃で3時間反応させ、4−メチルスチレン−無水マレイン酸共重合体(共重合体モル比92/8)を得た。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は65000(GPC測定、ポリスチレン換算)であった。
【0062】
<調整例B3>
窒素置換した反応容器に4−メチルスチレン92部、4−アセトキシスチレン4部、無水マレイン酸4部、AIBNを0.1部、トルエン200部を加え、90℃で3時間反応させ、4−メチルスチレン−4−アセトキシスチレン−無水マレイン酸共重合体(共重合体モル比92/4/4)を得た。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は63000(GPC測定、ポリスチレン換算)であった。
【0063】
表1に従い調整例(A1)で得られた環状ポリオレフィン系樹脂100部と調整例(B1)で得られた芳香族ビニル−極性基含有ビニル共重合体5部とを混合し、混合物を260℃にてペッレト化することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物{以下「樹脂組成物(C1)」}を得た。
【0064】
表1に従い調整例(A1)で得られた環状ポリオレフィン系樹脂100部と調整例(B2)で得られた芳香族ビニル−無水マレイン酸5部とを混合し、混合物を260℃にてペッレト化することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物{以下「樹脂組成物(C2)」}を得た。
【0065】
表1に従い調整例(A1)で得られた環状ポリオレフィン系樹脂100部と調整例(B3)で得られた芳香族ビニル−無水マレイン酸共重合体5部とを混合し、混合物を260℃にてペッレト化することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物{以下「樹脂組成物(C3)」}を得た。
【0066】
表1に従い調整例(A2)で得られた環状ポリオレフィン系樹脂100部と調整例(B1)で得られた芳香族ビニル−無水マレイン酸共重合体5部とを混合し、混合物を260℃にてペッレト化することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物{以下「樹脂組成物(C4)」}を得た。
【0067】
表1に従い調整例(A3)で得られた環状ポリオレフィン系樹脂100部と調整例(B1)で得られた芳香族ビニル−無水マレイン酸共重合体5部とを混合し、混合物を260℃にてペッレト化することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物{以下「樹脂組成物(C5)」}を得た。
【0068】
<比較例1〜3>
調整例(A1)〜(A3)で得られた環状ポリオレフィン系樹脂(A1)〜(A3)をペレット化した。
【0069】
<比較例4>
表1に示す処方に従い、調整例1で得れらた環状ポリオレフィン系樹脂(A1)100部とポリスチレン(Mw=70000)5部とを混合し、この混合物をにニ軸押出機で260℃にてペッレト化することにより、比較用の熱可塑性樹脂組成物{以下「樹脂組成物(D1)」という。}を得た。
【0070】
<比較例5>
表1に示す処方に従い、調整例1で得れらた環状ポリオレフィン系樹脂(A1)100部とスチレン−無水マレイン酸共重合体(75重量%:25重量%)(Mw=70000)5部とを混合し、この混合物をにニ軸押出機で260℃にてペッレト化することにより、比較用の熱可塑性樹脂組成物{以下「樹脂組成物(D2)」という。}を得た。
【0071】
樹脂組成物の評価
複屈折性(レターデーションの測定)
実施例の1〜5で得られた樹脂組成物(C1〜C5)のペレット、比較例1〜3で得られた環状ポリオレフィン系樹脂(A1〜A3)、比較例5で得られた樹脂組成物(D1)のペレットを用い、射出成形機によって直径5mm、最大肉厚2mmのピックアップレンズを作製した。これらをひずみ検査計「LSM-501」{(株)ルケオ社製}を用いセナルモン法によるレターデーションを測定した。結果を表1に示す。
【0072】
透明性(全透過率の測定)
樹脂組成物(C1〜C5)のペレット、環状ポリオレフィン系樹脂(A1〜A3)、樹脂組成物(D1)のペレットを用い、射出成形機によって、透明性を評価するための試験片(厚さ3mm)を作製し、ASTM D1003に準じて全光線透過率を測定した。結果を併せて表1に示す。
【0073】
耐熱性(熱変形温度の測定)
樹脂組成物(C1〜C5)のペレット、環状ポリオレフィン系樹脂(A1〜A3)、樹脂組成物(D1)のペレットを用い、射出成形機によって、耐熱性を評価するための試験片(厚さ0.64mm×1.27mm×127mm)を作製し、 ASTM D648(18.6Kg/cm2、1/4")に準じて熱変形温度を測定した。結果を併せて表1に示す。
【0074】
耐水性(吸水率の測定)
樹脂組成物(C1〜C5)のペレット、環状ポリオレフィン系樹脂(A1〜A3)、樹脂組成物(D1)のペレットを用い、射出成形機によって、耐水性を評価するための試験片(厚さ3mm×40mm×80mm)を作製た。この試験片の重量W0を測定し23℃の水中に24時間浸漬した後の重量W1を測定し、下記の数式により吸水率を算出した。結果を併せて表1に示す。
【0075】
【数1】
【0076】
【表1】
[発明の効果]
本発明の共重合体ブレンドは従来の環状脂肪族ポリマーの透明性かつ低複屈折を付与しこれらの特性を生かして、レンズ、液晶ディスプレイの導光板、光学シート、光学フィルムなどの光学材料、光ディスク、センサー類などに用いることができる。
Claims (4)
- (イ)下記[1]または[2]で表されるいずれかの重合体である環状オレフィン系樹脂および(ロ)無水マレイン酸の結合含有量が2〜10重量%である芳香族ビニル−無水マレイン酸共重合体を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
[1] 下記一般式(I)で表される単量体(以下、「特定単量体」という。)の開環重合体、特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体のいずれかである開環(共)重合体の水素添加重合体
[2] 特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
【0001】
〔式中、R1〜R4は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または−(CH 2 )nCOOR 5 (R 5 は炭素数1〜12のアルキル基、nは0〜5の整数を表す)であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1とR2またはR3とR4は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。〕 - (イ)成分の含有量と(ロ)成分の含有量の比が、(イ)成分100重量部に対し(ロ)成分0.01〜1000重量部である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 特定単量体が、一般式(I)において、mが1で、かつpが0である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 特定単量体が、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、ペンタシクロ〔7.4.0.12,5 .19,12.08,13〕−3−ペンタデセンから選ばれた少なくともいずれかである請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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