JP4411403B2 - 窒化アルミニウム焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化アルミニウム焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体搭載用セラミックス基板の表面に、導電性を有する金属回路層をろう材で接合し、更に金属回路層の所定位置に半導体素子を搭載した回路基板が用いられている。回路基板が信頼高く動作するためには、半導体素子が発生する熱を放散し、半導体素子の温度が過大とならないようにすることが肝要であり、セラミックス基板材料には、電気絶縁性に加えて、優れた放熱特性を発現するように高熱伝導率が要求されている。近年、回路基板の小型化、パワーモジュールの高出力化が進む中、小型軽量化モジュールにおいては、窒化アルミニウム基板が注目されている。
【0003】
窒化アルミニウム基板となる窒化アルミニウム焼結体は、例えば、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤と有機バインダーを含む成形体を、空気、窒素、不活性ガス等の雰囲気下、350〜600℃に加熱して有機バインダー成分を除去する脱脂工程、カーボンヒーター等の抵抗発熱炉(バッチ炉)を用いて、窒素等の非酸化性ガス雰囲気下、焼結温度1800〜2000℃で4〜10時間保持する焼成工程、焼成炉の電源を切って放冷する冷却工程を経由して製造されている。
【0004】
窒化アルミニウムは、共有結合性が強く難焼結性材料であるため、焼結助剤が用いられる。焼結助剤としては、イットリア(Y2O3)等の希土類酸化物を基本に、酸化カルシウム(CaO)等のアルカリ土類金属酸化物等の種々の化合物が提案されている(例えば特開昭60−127267号公報、特開昭61−10071号公報、特開昭60−71575号公報)。
【0005】
焼結助剤の作用は、窒化アルミニウム粉末に含まれる酸素と反応して液相を生成し、窒化アルミニウム焼結体の緻密化を行うと共に、熱伝導性を阻害する酸素やFe、Ca等の陽イオン金属成分を粒界相に固定することによって高熱伝導化が行われる、と考えられている。
【0006】
たとえば、イットリア(Y2O3)は、窒化アルミニウム粉末の酸素及び窒化アルミニウム粒子表面のアルミナと反応して、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(3Y2O3・5Al2O3)、イットリア・アルミナ化合物(Y2O3・Al2O3)、イットリア・アルミナ・金属化合物(2Y2O3・Al2O3・MxOy)等の複合酸化物を形成し、緻密化と高熱伝導化を促進する。また、これらの複合酸化物は、焼成時は窒化アルミニウム粒子の周囲に液相を生成するが、焼成後は窒化アルミニウム結晶粒の粒界相にガラス質又は結晶質となって残存し、窒化アルミニウム焼結体の構成成分となっている。
【0007】
このように、焼結助剤特に希土類酸化物を基本する焼結助剤の使用によって、窒化アルミニウム焼結体は著しく緻密化し高熱伝導化を達成できたが、その機械的特性、特に曲げ強度においてまだ不十分であった。曲げ強度が小さいと、窒化アルミニウム基板面に設けられた金属回路層に半導体素子を実装する際に破損したり、半導体素子の作動に伴う繰り返しの熱サイクルによって、金属回路層の接合部付近の窒化アルミニウム基板にクラックが発生しやすくなり、耐熱サイクル特性及び信頼性が高まらないという問題があった。とくに最近では、パワーモジュール用セラミックス基板や半導体製造装置用治具等においては、従来以上に厳しいヒートサイクル下における使用が多くなってきており、耐熱衝撃性ひいては曲げ強度を向上させる必要が急務となっている。
【0008】
そこで、窒化アルミニウム焼結体の機械的強度を向上させるために、例えば特開平6−219849号公報には、窒化アルミニウム焼結体に熱衝撃を与える方法が、特開平7−172921号公報には、Si成分、Al2O3等の添加により焼結体の結晶粒の大きさと粒度分布を制御する方法などが提案されている。
【0009】
しかしながら、上記熱衝撃を与える方法では、熱伝導率を害することなく曲げ強度を向上することができるが、曲げ強度は400MPa以下であり、十分な強度改善効果が得られていない。また、上記焼結体の結晶粒の大きさと粒度分布を制御する方法では、微細な窒化アルミニウム粉を原料に用いる必要があり、また焼結体の1μm毎の粒度構成割合を厳密に制御しなければならないため、生産性に問題があった。
【0010】
一方、特開2000−3277号公報には、アクリル共重合体を有機バインダーとし、窒化アルミニウム焼結体の残留炭素量を極力少なくしてプラズマ耐食性を向上させる発明が提案されている。しかし、この公報には、脱脂工程で所定量の炭素を積極的に残し、その後に焼成を行って、曲げ強度400MPa以上、熱伝導率150W/m・k以上の窒化アルミニウム焼結体を歩留まりよく生産性を高めて製造することについては記載されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記に鑑み、熱衝撃を与えたり、結晶粒の大きさと粒度分布の制御を行わなくても、曲げ強度400MPa以上、熱伝導率150W/m・k以上の窒化アルミニウム焼結体を、歩留まりよく生産性を高めて製造する方法を提供することである。本発明の目的は、アクリル系樹脂を有機バインダーとする成形体を成形し、それを所定量の炭素分を残留するよに脱脂した後、急速加熱することによって達成することができる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、窒化アルミニウム粉末と、希土類化合物からなる焼結助剤と、アクリル系樹脂からなる有機バインダーとを含む成形体を、脱脂後焼成する工程を経由させて窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、上記脱脂を、残留炭素分が2.0%(質量%、以下同じ)以下(0を含まず)となるように行い、また上記焼成を、1500℃以上からの昇温速度を10℃/分以上にして1600〜1900℃まで高め、この温度範囲内で保持して行うことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法である。この場合において、成形体の窒化アルミニウム粉末と焼結助剤の割合が、平均粒子径3μm以下、酸素量2%以下の窒化アルミニウム粉末100部(質量部、以下同じ)に対し、希土類化合物を酸化物換算で1〜10部、アルミナ0.1〜5部であることが好ましい。また、脱脂と焼成は連続して行うことが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0014】
本発明は、窒化アルミニウム粉末と、希土類化合物からなる焼結助剤と、アクリル系樹脂からなる有機バインダーとを含む成形体を、脱脂後焼成する工程を経由させることを基本技術とし、脱脂と焼成の各条件を適正化したところに大きな特徴がある。
【0015】
本発明で使用される窒化アルニミウム粉末は、直接窒化法、アルミナ還元法等公知の方法で製造された粉末で十分であるが、酸素含有量が2%以下、炭素量1000ppm以下であることが好ましい。酸素含有量が2%超であるか、炭素量1000ppm超であると、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率を150W/mK以上にすることが困難となる。また、窒化アルミニウム粉末の粒度は、平均粒子径で3μm以下、特に1μm以下が好ましい。平均粒子径が3μmを超えると、焼結密度が低下し、曲げ強度および熱伝導率に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0016】
希土類化合物からなる焼結助剤としては、Y、La、Ce、Ho、Yb、Gd、Nb、Sm、Dy等の希土類元素の酸化物、フッ化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩から選ばれた一種又は二種以上が使用される。希土類化合物はアルミナと併用されることが好ましい。焼結助剤の粒度は、平均粒子径で10μm以下、特に1μm以下であることが好ましい。平均粒子径が10μmを超えると、焼結密度が低下し、曲げ強度及び熱伝導率に悪影響を及ぼす場合がある。
【0017】
焼結助剤の割合は、窒化アルミニウム粉末100部に対して希土類化合物が酸化物換算で1〜10部であることが好ましく、アルミナと併用する場合は、アルミナ0.1〜5部であることが好ましい。希土類化合物が酸化物換算で1部未満であると、焼結体の密度が上がらず、曲げ強度や熱伝導率が向上しない恐れがある。また、10部を超過すると、相対的に窒化アルミニウム粉末の割合が少なくなるので、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率を150W/mK以上にすることが困難となる。アルミナが0.1部未満では更なる緻密化の向上効果が少なく、逆に5部を超えると酸素量が多くなり、焼結体の熱伝導率を阻害する恐れがある。窒化アルミニウム粉末と焼結助剤の混合には、ボールミル、ロッドミル、ボールトンミルやミキサー等が使用される。
【0018】
本発明において、アクリル系樹脂を有機バインダーとして用いる理由は、アクリル系樹脂は、窒素雰囲気下の脱脂温度条件において、他の有機バインダーよりも熱分解性が良く、残留炭素分の制御が容易に行うことができるからである。アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリエート、ポリエチルメタクリエート、ポリブチルメタクリエート等が使用できる。
【0019】
アクリル系樹脂の割合は、窒化アルミニウム粉末100部に対して0.5〜30部、特に1〜10部であることが好ましい。0.5部より少ないと、十分な成形体強度が得られず、容易に割れを生じる。また、30部より多いと、脱脂処理に多大な時間がかかる上に、脱脂体の強度が低くなる。
【0020】
成形体は、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、有機バインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤等を混合し、押出成形法、ドクターブレード法、プレス成形法等により所望形状に成形することによって製造される。ドクターブレード法は、成形が容易であるが、有機溶剤を乾燥除去する際に防爆設備が必要となり、またスラリーの特性上、1mm以上の厚いシートを成形するのは困難となる。プレス成形法では、0.5mm以下の薄物の成形が困難である。これに対し、押出成形は、シートの厚みの選択の自由度が大きく、また窒化アルミニウム粉末をオレイン酸等の疎水基を有する有機化合物等で前処理しておくことによって水系成形が可能となり、連続化とコスト低減化を図ることができる。
【0021】
本発明において、上記成形体は、残留炭素分が2.0%以下(0を含まず)、好ましくは0.2〜1.0%にまで脱脂されることが重要となる。具体的には、窒素ガス雰囲気中、温度350〜600℃で1〜20時間保持されて脱脂される。これによって、焼成時に窒化アルミニウム粒子と液相化した焼結助剤との濡れ性が著しく向上し、曲げ強度400MPa以上、熱伝導率150W/m・k以上の窒化アルミニウム焼結体を歩留まりよく生産性を高めて製造することが可能となる。残留炭素分が2.0%を超えると、過剰のカーボンが焼結性を阻害するため緻密な焼結体が得られなくなる。
【0022】
この理由は定かでないが、以下のように考えられる。すなわち、残留炭素分は焼成工程において、Al2O3+3C+N2→2AlN+3CO、に従い、窒化アルミニウムを生成する。この窒化アルミニウムは微細な粒子であり、表面エネルギーが高く、液相との濡れ性が良いので、残留炭素分を制御することにより、後述するように、AlNの2粒子界面に存在する粒界相の量が3重点に存在する量よりも多くなることに関係している。
【0023】
本発明においては、脱脂体は次いで焼成される。焼成は、窒素等の非酸化性ガス雰囲気下、1600〜1900℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜5時間保持して行われる。本発明で重要なことは、温度1500℃からの昇温速度を10℃/分以上の急速加熱を行って所定の保持温度まで昇温することである。この昇温速度は、従来法のバッチ炉を用いた典型例の1〜2℃/分、どんなに速くても5℃/分程度であったことと比較して特異的である。
【0024】
本発明において、10℃/分以上の急速加熱を行う理由は、次のとおりである。すなわち、焼結助剤として、例えばイットリア(Y2O3)とアルミナ(Al2O3)を用いた場合、イットリアはアルミナ(添加アルミナと窒化アルミニウム粒子表面に存在するアルミナの両方)と反応し、希土類アルミニウム酸化物を生成する。この場合の反応性は、窒化アルミニウム粒子表面に存在するアルミナよりも添加アルミナの方が活性となる。このため、昇温速度が速くなるほど、イットリアは添加アルミナと優先的に希土類アルミニウム酸化物を生成するようになり、窒化アルミニウム粒子の表面にはアルミナ層が保たれる状態となる。1500℃以上の温度では、希土類アルミニウム酸化物は液相を生成するが、この液相は酸化物であるために窒化アルミニウム粒子表面に存在するアルミナ層との濡れ性が向上し、3重点よりも2粒子界面により多くの粒界相が出現する、ことと関係している。窒化アルミニウム粒子の表面にはアルミナ層が存在しているため、アルミナと併用しなくても同様の挙動が発現する。昇温速度の上限はなく、できるだけ速いことが望ましい。
【0025】
本発明においては、上記脱脂と焼成とを連続して行うことによって生産性が更に高まる。しかも、ワーク間の熱履歴に差が生じないために品質のばらつきも小さくなる。具体的には、プッシャー、ベルト、ローラー等により、成形体を入口から、脱脂ゾーン、焼成ゾーン、冷却ゾーンへと連続的に搬送し、出口から焼結体を取り出すことができる連続炉を用いることである。
【0026】
以下、この連続炉を用いる方法について、図面に基づき更に詳しく説明する。図1は、本発明で好適に使用される連続炉の概念図、図2は、その概略正面図である。
【0027】
この例は、インナーボックス5とアウターボックス3を備えた多重箱を有し、PN2 in>PN2 out となるように調節された連続炉の一端のインナーボックス内に、成形体8を供給しつつ、脱脂・焼成・冷却の各工程を連続して行わせ、他端から焼結体を取り出すものである。ここで、PN2 inはインナーボックス内の非酸化性ガス分圧であり、PN2 out はインナーボックスとアウターボックスとの間の非酸化性ガス分圧である。非酸化性ガスとしては、窒素ガスが最適であるが、それ以外にもヘリウムガス、水素ガス、一酸化炭素ガス、あるいは窒素ガスを含めこれらのガスの二種以上の混合ガスが用いられる。
【0028】
多重箱は、連続炉の炉壁1内に収容されている。成形体と焼結体の搬送には、インナーボックス内に設置されたプッシャー、ベルト、ローラー等によって行われる。図には、プッシャー6の例が示されている。成形体の搬入口と焼結体の取り出し口は、連続炉内の酸素濃度が高まらないようにダンパー等の仕切りを設けることが好ましい。脱脂ゾーン、焼成ゾーンの長さは、上記条件で処理が行えるように決められている。
【0029】
多重箱を構成するインナーボックス5とアウターボックス3の材質には、窒化硼素・窒化珪素等の窒化物セラミックス、炭化ケイ素等の炭化物セラミックス、更には炭素質等が用いられる。カーボンガスの影響を最小限にするため、インナーボックスの材質を相対密度70%以上の窒化硼素とするのが好ましい。インナーボックスの大きさは処理量で決定され、アウターボックスの大きさは、PN2 in>PN2 out の調整が容易に行えるように決定される。具体的には、インナーボックスとアウターボックスとの間の容積が、インナーボックス容積よりも大きいことが望ましく、特に2倍以上大きいことである。
【0030】
炉壁1とヒーター2は、インナーボックスの外側に位置するので、それらの材質はコスト的に優位な炭素質が好適となる。ヒーター2は、インナーボックスとアウターボックスの間に配置することが好ましく、これによってインナーボックス内の均熱を高める利点がある。ヒーターのかわりに、高周波加熱、マイクロ波加熱を加熱源として用いることができる。
【0031】
PN2 in>PN2 out の調整は、例えば非酸化性ガスを直接インナーボックス内のみに導入し、アウターボックスにはインナーマッフルを経由した非酸化性ガスのみが流れるようにガスの出入り口の形状や設置場所を調整する方法、インナーボックス内に導入する非酸化性ガス流量をアウターボックス内に導入するそれよりも多くする方法等によって行うことができる。
【0032】
成形体8は、セッター7の上に敷粉を介して複数個が段積みされる。セッターと敷粉には窒化硼素質のものが好適に使用される。また、搬送時の振動やベルトのがたつきによる成形体ずれ防止のために段積みされた最上面にタングステン等の重しをのせることが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法によれば、窒化アルミニウム焼結体の組織は、窒化アルミニウム粒子とその粒子間を埋める粒界相からなるものであって、窒化アルミニウム粒子の大きさは0.5〜20μmで、粒界相は希土類アルミニウム酸化物を主体とし、しかもAlNの2粒子界面に存在する粒界相の量が3重点に存在する量よりも多くなる。好ましくは、2粒子界面に存在する粒界相の割合が60%以上、特に70%以上、更には80%以上であり、3重点に存在する粒界相の割合が40%以下、特に30%以下、更には20%以下にすることが可能である。これによって、曲げ強度400MPa以上、熱伝導率150W/m・k以上の窒化アルミニウム焼結体となる。
【0034】
ここで、希土類アルミニウム酸化物とは、希土類元素をRとすると、RxAlyOz(x、y、z>0)で表される化合物である。たとえば、希土類元素がイットリウムである場合、Y4Al2O9、YAlO3、Y3Al5O12などの酸化物である。これらの酸化物は、単一でも2種以上でもよいが、単一で粒界相を構成していることが好ましい。なぜならば、2種以上の酸化物で粒界相が構成されていると、それぞれの熱膨張率の違いや、溶解−析出の挙動の違いによって、残留応力が粒界相に発生しやすく、高曲げ強度を有する窒化アルミニウム焼結体とすることが困難となるからであり、しかも冷却時に3重点に初晶が形成され、それを核として粒界相が3重点に凝集遍析して高曲げ強度の発現を阻害するようになる。これと同様な理由によって、粒界相は希土類アルミニウム酸化物を主体とする、具体的には95%以上(100%を含む)で構成されていることが好ましい。残部成分は、原料の不純物等に由来するCa、Mg等の不可避酸化物である。
【0035】
希土類アルミニウム酸化物の定量は、アルカリ溶解法(分析化学,Vol.37,No.12,pp.1133−1137(1996)に準ずる)によって窒化アルミニウム粒子を溶解し、未溶解物を105℃−2時間乾燥した後、粉砕して粉末状にしたものをX線回折法により各々のピーク強度比から求めることができる。
【0036】
また、3重点とは、窒化アルミニウム焼結体の研磨破面を走査型電子顕微鏡等で観察した際に窒化アルミニウム3粒子間に挟まれてできる粒界相であり、2粒子界面とは、相対する窒化アルミニウムの2粒子の面と面の間に形成される粒界相を意味する。3重点と2粒子界面における粒界相の存在比は、窒化アルミニウム焼結体の破面を研磨した後、走査型電子顕微鏡等で観察した像をもとに、それらの面積比によって求めることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例と比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0038】
実施例1〜11 比較例1、2
窒化アルミニウム粉末100部に対し、希土類化合物(平均粒径約1.0μm)、α−Al2O3(平均粒径0.7μm)を表1に示す割合で配合してボールミルにより混合した。さらに、有機系バインダーとしてアクリル樹脂を表1に示す量を配合し、水10部を配合しミキサーにより混合した。ついで、スクリュー式成型機により、シート(幅80mm、厚さ1.2mm)を成形し、100℃で1時間乾燥した後、50×50mmの形状に切り落として成形体を得、表面に離形剤として窒化硼素粉末スラリーを塗布しながら、窒化硼素製セッターの上に20枚段積みし、最上面にタングステン板を配置した。
【0039】
ついで、この成形体の段積みされたものをセッターごとプッシャー搬送式の連続炉の一端から供給し、窒素雰囲気中、脱脂・焼成・冷却を行い、他端から窒化アルミニウム焼結体を取り出した。このような処理操作を連続的に行った。なお、上記連続炉は、アウターボックス3が炭素質、インナーボックス5が窒化硼素質であり、両者の間に炭素製ヒーター2が設置されている。窒素ガスは、非酸化性ガス導入管4を通してインナーボックス内に直接流入されており、インナーボックスに形成された所定の穴からアウターボックス内に流入し、非酸化性ガス排出管から炉外に排出される構造となっている(図2参照)。PN2 inは0.105MPaであり、PN2 out は0.101MPaである。また、脱脂ゾーンは350〜600℃を1時間かけて通過させ、焼成ゾーンは1500〜1800℃を表1に示す昇温速度となるように通過させた。脱脂体の残留炭素量を、赤外線吸収法を用いた炭素硫黄分析装置により測定し、表1に示した。
【0040】
比較例3
アクリル樹脂の代わりにセルロース系バインダー(信越化学工業社製商品名「メトローズ60SH−4000」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして窒化アルミニウム焼結体を製造した。
【0041】
得られた窒化アルミニウム焼結体について、密度、室温の3点曲げ強度及び熱伝導率を測定し、測定数10点の平均値と、最大値、最小値を求めた。密度は、アルキメデス法により測定した。曲げ強度は、窒化アルミニウム焼結体から強度試験体(40×20×1mm)を研削加工し、JIS R 1601に準じて室温で測定した。熱伝導率は、円板試験体(直径10mm×3mm)を作製し、レーザーフラッシュ法により測定した。それらの結果を表2に示す。
【0042】
また、2粒子界面における粒界相と3重点における粒界相との存在比率を上記に従い、測定した。その結果を表2に示す。なお、粒界相は、いずれもYAlO3、又はY3Al5O12を主体としていることをX線回折によって確認した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1、2からわかるように、本発明の製造方法によれば、熱伝導率150W/m・K、3点曲げ強度が400MPa以上の窒化アルミニウム焼結体を、焼結体間のばらつきを少なくして(歩留まりよく)、生産性を高めて製造することができた。
【0046】
【発明の効果】
本発明の窒化アルミニウム焼結体の製造方法によれば、熱衝撃を与えたり、結晶粒の大きさと粒度分布の制御を行わなくても、曲げ強度400MPa以上、熱伝導率150W/m・k以上の窒化アルミニウム焼結体を、歩留まりよく生産性を高めて製造することができる。
【0047】
本発明で製造された窒化アルミニウム焼結体は、厳しい使用条件で用いられる回路基板、例えばパワーモジュール用の回路基板のセラミックス基板として好適な材料である。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続炉の概念図
【図2】連続炉の一例を示す概略正面図
【符号の説明】
1 炉壁
2 ヒーター
3 アウターボックス
4 非酸化性ガス導入管
5 インナーボックス
6 プッシャー
7 セッター
8 成形体
9 非酸化性ガス排出管
PN2 in インナーボックス内の非酸化性ガス分圧
PN2 out インナーボックスとアウターボックスとの間の非酸化性ガス分圧
Claims (2)
- 窒化アルミニウム粉末と、希土類化合物及びアルミナからなる焼結助剤と、アクリル系樹脂からなる有機バインダーとを含む成形体を、脱脂後焼成する工程を経由させて窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、希土類化合物が窒化アルミニウム粉末100質量部に対して酸化物換算で1〜10質量部、アルミナが窒化アルミニウム粉末100質量部に対して0.1〜5質量部であり、上記脱脂を、残留炭素分が0.2〜2.0質量%となるように行い、また上記焼成を、1500℃以上からの昇温速度を10℃/分以上にして1600〜1900℃まで高め、この温度範囲内で保持して行うことを特徴とする、曲げ強度400MPa以上、並びに熱伝導率150W/m・k以上の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 脱脂と焼成を連続して行うことを特徴とする請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
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