JP4411378B2 - 取付け自在型洗浄蓋及びそれを用いる洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器の洗浄に用いられる洗浄蓋に関し、より詳細には、容器の使用後に、この洗浄蓋を用いて、洗浄液のオーバフロー、飛沫飛散等を防止させながら、容器及び攪拌系(撹拌翼、撹拌軸等)を効果的に洗浄できる装着が自在な簡便型の洗浄蓋に関する。
また、本発明は、使用後の縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器に、簡便に装脱着することができて、従来のように撹拌翼系を分解・取り外しすることなく、作業安全性及び作業環境性に優れ、しかも、効率よく洗浄することができる洗浄蓋を用いる洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、各種の産業分野で、液体と液体を混合する液液系に、液体中に固体を分散させて撹拌溶解させる固液系に、または、固体を溶液に懸濁させて安定な懸濁固液系を得る等に縦型撹拌翼を設けた実験室スケールから工業スケールの容量大小の開放縦型円筒容器が広く用いられている。このような混合処理や、分散溶解処理又は懸濁処理は、通常、撹拌下において実施されているのが一般的である。
このような処理後において、容器内周壁や、撹拌系の特に気液境界面には、未溶解又は未懸濁の固体成分がケーキ状に付着する傾向にある。また、粘度の高い液体においても、攪拌系や、容器内壁等に液体等が付着して残留する傾向にある。従って、混合、溶解等の作業が終了した後、攪拌系や、容器の再使用に際しては、これらの付着物を洗浄等によって除去しなければならない。
【0003】
このような付着物の洗浄処理による作業は、従来から、撹拌系に付着物が付着した状態で、手作業で、シャワーブラッシングさせるか、又はこのようなシャワーブラシングによる手作業が困難である場合には、攪拌系及び容器内の付着物を洗浄液で長時間十分に浸漬させるか、又は洗浄液が容器からオーバフローしないようにして、長時間の撹拌洗浄処理をするか、更には、容器内から撹拌系を分解・取り外して、手作業で洗浄ブラッシングさせる等の処理が行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような状況下にあって、液液系の混合や、固液系の撹拌溶解又は懸濁分散等が係わる分野には、縦型攪拌翼を設けた開放縦型円筒容器が多用されている。通常、再使用に当たっては、容器内壁及び攪拌系(撹拌翼及び撹拌軸等)の付着物を予め洗浄等によって除去・清浄化される。
既に上述した如く、このような洗浄処理においては、洗浄液として、水系又は有機溶剤等の非水系、更には両者を組合わせて使用する。
また、これらの洗浄作業は、通常、撹拌系を容器に装着させた状態で、人手による手作業で実施されている。これらの作業は、不注意を含めて極めて危険性を伴う作業であり、又は作業環境の安全性や、労働衛生等の観点から、極力避けなければならない。
また、必要に応じて洗浄液として、非水系の有機溶剤を使用する場合には、従来法では、特に、攪拌下に洗浄処理をする場合に、洗浄液の容器外へのオーバフローや、飛沫飛散等を伴う。従って、容器の蓋には、シール性を必要とし、作業性に問題があった。
また、攪拌系を分解・取り外しして、洗浄処理をする場合にも、その作業環境や、作業者が、有機溶剤で汚染される。
従って、このような洗浄処理は、その作業安全性や、労働安全衛生上の問題のみならず、引火等による火災の危険性等からも、人手を要する処理作業は、絶対に避けるべき重要な課題である。
【0005】
以上から、本発明の目的は、縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器を、液液系の混合や、固液系の撹拌溶解又は安定な懸濁分散体を得る等の分野に用いた後、従来のように人手を要さずに、特に、撹拌系を分解することなく、しかも、洗浄液を容器からオーバフロー及び飛沫飛散等を効果的に防止して、撹拌系を含めた容器内を効率よく洗浄できる洗浄冶具としての洗浄蓋を提供することである。
また、本発明の他の目的は、この洗浄蓋を用いて、使用後の縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器を、労働安全衛生等に優れ、しかも、効果的に洗浄除去できる、洗浄蓋を用いる洗浄方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記課題に鑑みて、鋭意検討した結果、撹拌系等を容器内から分解・取り外しすることなく、容器内の洗浄液の撹拌下に生ずる容器内壁面を上昇する旋回渦流に着目し、更には洗浄液のオーバフローや、飛沫飛散を防止させるため、装着が簡便な分割式の被せ蓋形式等に着目することで、効果的に容器内の付着物、特に、従来のように人手を要し、洗浄除去が困難であった撹拌軸面や攪拌翼の軸への取り付け部分等の付着物を効果的に除去できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器を用いて、例えば、液体中に液体を混合する液液系や、液体中に固体を分散させて撹拌溶解させる固液系や、または、固体物を溶液に撹拌分散させて安定に懸濁させる懸濁固液系等に使用した後、容器内に洗浄液を充填させて、攪拌洗浄する場合において、所定の撹拌下に生ずる旋回渦流を、容器外へのオーバフローや、飛沫飛散等を効果的に完全に防止できる。
しかも、所定の攪拌下に生ずる洗浄液の旋回渦流を、攪拌軸方向に向けて、一層加速放流させながら容器内を循環・分配・放流(加速射出)させて、容器内壁面、撹拌翼面及び撹拌軸面上等に付着する粘性液体や、ケーキ状物に対して、洗浄作用を発揮させる取付け自在で、簡便型の洗浄蓋を提供する。
【0008】
この洗浄蓋は、容器に容易に装脱着することができる上蓋と中蓋とを有する一体形の構造体である。装着に際して、攪拌軸を挟んで、少なくとも2等分に分割されて、容器外周縁上にその上蓋を介して支持されることを特徴とする。
また、この中蓋は、上蓋の下部面に所定の間隔で設けられており、その間隔が自在に可変できるように上蓋に係止されている。
また、撹拌軸を挟んで、少なくとも2等分に分割されるこの中蓋は、撹拌下に容器内壁面に沿って上昇する洗浄液の旋回渦流を容器内周面から撹拌軸方向へ流れを変える転流盤としての転流作用を発揮させる。
また、この転流盤の下部面の複数箇所には、転流盤面に、攪拌軸に向かって放射状に、且つ互いに等間隔に転流ガイド板を設けていることが特徴である。この転流ガイド板によって、洗浄液の旋回渦流を、転流と同時に、V字形渦流が形成されて露出した撹拌軸面に向けて放射状に分配・放流させる。
【0009】
また、本発明によれば、縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器を使用した後に、洗浄液を充填したこの容器に、本発明による洗浄蓋を装着させて、この容器内の容器内壁、撹拌翼、撹拌軸面更には攪拌翼の軸取付け部等に付着する粘性のある液体や、ケーキ状物を、効果的に洗浄除去させる洗浄蓋を用いる洗浄方法を提供する。
【0010】
すなわち、洗浄除去を必要とする容器に装着させた本発明による洗浄蓋は、上述した如く、上蓋と中蓋とを有する構造体であって、攪拌軸を挟んで、少なくとも2等分に分割された状態で、容器外周縁上にその上蓋を介して支持・装着する。装着させた洗浄蓋の中蓋である転流盤は、上蓋と所定の等間隔を有するように自在に可変させて、上蓋に係止する。また、この転流盤の下部面には、攪拌軸に対して放射状の複数箇所に転流ガイド板がそれぞれ設けられている。
【0011】
容器内に、洗浄液が充填されている状態で、攪拌系を所定の攪拌速度で回転させると、洗浄液がV字形の旋回渦流を形成して容器内周壁面を上昇した洗浄液が、この転流盤面を介して回転軸方向へ向けて転流される。
同時に転流された洗浄液は、複数個の転流ガイド板を介して順次、その流れが容器外周から撹拌軸面に向けて、加速流として放射状に分配放流されることを特徴とする。
【0012】
これによって、旋回渦流をオーバフローや飛沫飛散させることなく、容器内周壁面を急上昇する旋回渦流によって、容器内周面が洗浄される。すなわち、中蓋の外周部から僅かばかり容器内周面沿いに上昇する洗浄液は、この上蓋と中蓋である転流盤と間に所定の間隔が設けられているので、その空間でその上昇流速は緩和されて中蓋上に落下すると同時に、上蓋によって遮られる。従って、洗浄液を撹拌下に旋回渦流として容器内周壁面を加速上昇させても、洗浄液のオーバフローや、飛沫飛散等が、効果的に完全に防止される。
【0013】
次いで、転流盤で攪拌軸方向に転流された洗浄液の旋回渦流が、上述した転流盤の複数箇所に設けた転流ガイド板によって、V字形に形成された旋回渦流で露出された攪拌軸面に放射状に加速・分配放流される。これによって、露出した攪拌軸面が、放射状に洗浄液でシャワーリングされて、攪拌軸面に付着する粘性液体や、ケーキ状物を除去する。
【0014】
以上により、本発明による洗浄蓋を用いて洗浄処理をすることにより、旋回渦流として加速された洗浄液が、オーバフローや、飛沫飛散を起こすことなく、しかも、従来のように飛沫飛散等の防止のために、蓋にシール性を施す必要がなく、容器内を循環流、分配流、放流(射出流)として循環されて、容器内の容器内壁面、撹拌翼面、特に撹拌軸面等の付着する粘性液体や、ケーキ状物を効果的に洗浄除去するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、図1〜図5を参照しながら、本発明による洗浄蓋及びその洗浄蓋を装着させた縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器の洗浄方法について、その実施形態を更に説明する。
【0016】
<洗浄蓋>
本発明による洗浄蓋について図1〜3を参照して説明すると、図1に示す如く、本発明による洗浄蓋は、上蓋1と中蓋2との構造体である。この中蓋2上には係止板4が固定されていて、この係止板4は、上蓋1に設ける装着孔を貫通するように挿入されて、図1に示す如く、上蓋と中蓋との間隔hが所定の間隔となるように係止板を、例えば、U字型の止め金具をビス止めして適宜上蓋に係止させて固定させられる。
また、本発明による洗浄蓋は、必要に応じて、例えば、洗浄液が水系であって、特に、飛沫飛散が発生しても洗浄処理の作業に支障を来さない場合には、図示されてはいないが、上蓋を設けずに、同じく少なくとも2等分分割型の中蓋としての転流盤のみからなる洗浄蓋を、攪拌軸を挟むようにして、容器の外周縁上に係止するように装着させて洗浄処理をすることができる。
【0017】
また、この上蓋と中蓋との一体形の構造体である洗浄蓋を、図2及び3を参照して説明すると、図3に示す如く、撹拌軸5を挟むようにして、容器6に装着され、図2に示す如く、この一体形の構造体は2等分に分割されている。これによって、容器に装着するに際して、撹拌軸を挟み込むようにして、容器6の外周縁上に、その上蓋を支持させるようにして、極めて簡便に装着させることができる。また、必要に応じて、この上蓋−中蓋からなる洗浄蓋は、3又は4等分に、適宜分割させることもできる。
【0018】
この上蓋と中蓋との所定の間隔hは、本発明においては、自在に可変させて使用することができる。従って、必要に応じて、この間隔を零から、好ましくは、容器6の内高の1/10〜1/3の範囲で自在に可変させて使用することができる。
ここで、この間隔h=0(零)とは、撹拌下の旋回渦流の洗浄液が中蓋の外周部沿いに容器内周面を上昇してオーバフローの心配のない場合である。一方、通常は、攪拌下の旋回渦流を効果的に利用する観点から、本発明おいては、所定の間隔を両者間に設けて使用することが好適である。
既に上述した如く、本発明においては、この中蓋の主効果である旋回渦流を転流させる効果である。本発明においては、容器内壁面を上昇する旋回渦流の大部分がここで転流されるので、中蓋を超えて外周部沿いに容器内周面を上昇する洗浄液が、極端に低減されるか、又はほとんど防止される。
【0019】
また、この旋回渦流の容器内周面に沿っての上昇流は、通常、攪拌速度だけてコントロールさせるものではない。すなわち、使用する撹拌翼の種類及びその形状、内容液の粘度等の液性等に大きく影響され、一概に攪拌速度を特定することができないし、本発明においては、特に攪拌速度に限定させることなく、適宜この洗浄蓋を使用することができる。
例えば、容器径30cm〜60cmの開放型円筒容器において、その撹拌速度が50〜250rpm、好ましくは、50〜160rpmにおいて、オーバフローや飛沫飛散を完全に防止させる中蓋として、上述した間隔hが設けられている。また、既に上述した如く、図1に示すこの中蓋2とは、本発明における転流盤2であって、この転流盤の下部面に転流ガイド板3が、ほぼ垂直に固定させることが好適である。
【0020】
また、この転流ガイド板3は、図2に示す如く、洗浄盤を容器に装着した状態で、図2から明らかなように、この転流ガイド板3は、撹拌軸に対して、放射状であって、且つ等間隔に転流盤に設けられることが好適である。更に、この転流ガイド板を設ける個数は、特に限定されないが、好ましくは2〜6箇所、好ましくは、4箇所に適宜好適に設けることができる。この転流ガイド板の個数が上限値を超えても、転流・分配された洗浄液の加速流同士が、攪拌軸面に放流される途中で衝突し合って、その洗浄力を低下させる傾向から好ましくない。
【0021】
また、この洗浄蓋が容器に装着された状態において、本発明においては、図1に示す如く、上蓋1の径D1は、上蓋が容器の外周縁上に支持されるに十分な大きさの径であればよく、また、中蓋(転流盤)2の径D2は、容器内周径より小さく、容器内周面と中蓋外周縁と間に、0.2〜30mm程度の間隙を有するように中蓋径D2にすれば好適である。
【0022】
また、上蓋1の内孔径d1 は、少なくとも、撹拌軸に上蓋が摺接しない程度の間隙となるような内孔径であればよく、また、中蓋(転流盤)2の内孔径d2との関係において、d2>d1 であることが好適である。また、これによって、転流ガイド板3は、上記中蓋(転流盤)2の内孔内に張り出すように設けられ、その先端部が、d3≧d1であって、限りなく攪拌軸の近傍に達するように設けることになる。その結果、転流・分配された洗浄液が中蓋面に沿って旋回流となって逃げる分を、防止することができ、転流ガイド板で案内された洗浄液が、撹拌軸方向に向けて効果的に転流・分配・放流(又は加速された射出流のようにして撹拌軸面に放射させる)される。
【0023】
また、本発明によれば、上述した転流ガイド板3が、その側面図の図4(a)に示す如く、転流盤面に少なくとも直角に設けられているその転流ガイド板3の下方部が、洗浄蓋が容器に装着し、洗浄使用時の状態で、好ましくは、攪拌の回転方向に向かって所定の傾斜面3aを有していることを特徴としている。その傾斜角R[図4(a)参照]は、100〜170°、好ましくは、110〜160°の範囲にあれば好適である。
【0024】
また、本発明において、この転流ガイド板が、図4(b)に示す如く、好ましくは、洗浄使用時の状態で、攪拌の回転方向に向かって、転流盤面2に角度(R)が、45°以上で、90°未満、より好ましは、50〜80°の範囲にある鋭角Rの傾斜板が適宜転流ガイド板3として好適に使用される。
【0025】
そこで、本発明による洗浄蓋の作用効果について図5(a)〜(c)を参照して、以下に更に説明する。
まず、図5(a)において、洗浄液を充填された容器6内に、本発明に用いる中蓋2を装着させて、図5(a)に示す如く、十分に旋回渦流(SUF)を生ずるように撹拌翼を回転することにより、この(SUF)流は、容器内壁面を加速流として上昇する。ここで、通常、この中蓋2がなければ、この(SUF)流は、容器6の内周壁面に沿って、オーバフローするのが一般的である。
本発明においては、この転流盤(中蓋2)の作用により、図5(a)に示す如く、この(SUF)は、(T0)→流[図5(a)参照]として転流される。
【0026】
ここで、本発明においては、図5(b)に示す如く、この転流盤(中蓋2)には、転流ガイド板3が設けられているので、この(T0)→流は、この転流ガイド板3に案内されて、(T1,T2,T3)→流[図5(b)参照]として、転流された洗浄液は、撹拌軸5面に対して、一層加速されて分配・射出される。
【0027】
更に、既に上述した如く、本発明において、好ましくは、この転流ガイド板3が、図4(a)に示す如く、その下部面に適宜傾斜面3aを設けることが好適である。この傾斜面3aを設けることにより、図5(c)に示す如く、例えば、図5(b)で説明した(T3)→流が、この傾斜面の作用効果によって、更に加速させながら、その流量を増大させて、(T31,T32,T33)→流[図5(c)参照]として、洗浄液が、より一層加速されて撹拌軸方向に分配されて、放流(射出)される。
また、既に上述した如く、転流ガイド板が、図4(b)に示す傾斜板である場合には、転流された洗浄液が、最初から上述した(T31,T32,T33)→流[図5(c)参照]となるものである。
【0028】
また、本発明による洗浄蓋に用いられる材質には、特に限定されるものではなく、特に使用する洗浄液の液性にもよるが、鉄、アルミ、ステンレス、プラスチック等が適宜使用される。好ましくは、洗浄経過を目視下に実施されることから、本発明において、例えば、透明アクリル板が好適に使用される。
【0029】
<洗浄蓋を用いる洗浄方法>
以上のような本発明による洗浄蓋を、縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器に装着させることで、例えば、液体中に粘性の異なるまたは同等の液体を混合する液液系や、液体中に固体を分散させて撹拌溶解させる固液系に、または、固体物を溶液に懸濁させて安定な懸濁固液系を得る等の、縦型撹拌翼を設けた大小スケールの開放縦型円筒容器の洗浄に広く用ることができる。
通常、その用途にもよるが、使用後には、容器内壁、撹拌翼、撹拌軸面、攪拌翼の軸取付け部等に、粘性の液状物や、ケーキ状の固形物が付着する傾向にある。従って、このような容器を再使用するに際しては、撹拌翼を含む容器を洗浄して、これらの付着物を除去して清浄化させなければならない。
【0030】
そこで、このような容器に用いられる撹拌系は、その容器の容量が実験室スケールから、工業スケール等の容器スケールや、用途等によって、各種の撹拌翼が使用される。例えば、実験室スケールでは、通常、ネジ止めや、回転軸に溶接固定させたものが使われるが、工業スケールでは、組み立ての簡便さ、撹拌翼の交換の容易さ等から、撹拌翼をボスと称する円筒状の部品をボルトで回転軸に固定させる形式が一般的に用いられている。また、撹拌系は、その撹拌翼の形式から、平羽根、角度付き平羽根、湾曲羽根、傾斜パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、ファウドラー型、ブルマージン型、鋸歯型、大型翼等が挙げられる。
従って、従来からの工業スケールでの撹拌系は、その用途による撹拌翼自体の形状の違いや、撹拌翼を取り付けた撹拌軸においては、既に上述した理由により、特に、撹拌軸面に付着状物が多く付着する傾向にある。
【0031】
そこで、例えば、上述した付着状物が付着する傾斜パドル型の攪拌翼付き直径560mmの容器に、既に上述した如くの作用効果を発揮させる本発明による2等分の分割型の洗浄蓋を、撹拌軸を挟んで、その上蓋が、この容器外周縁上に支持するように被せて装着する。
洗浄蓋が装着された状態で、上蓋の下部面に設けられている中蓋との間隔が、自在に可変されて、その間隔を0〜30cm、好ましくは、10〜20cmに保持させて上蓋に中蓋(転流盤)を適宜に係止することができる。
また、この転流盤の下部面には、転流ガイド板の2〜6個、好ましくは、4個が、等間隔に攪拌軸に対して放射状に設けられている。
また、洗浄蓋が装着された状態で、容器内に充填されている洗浄液の液面が、この中蓋(転流盤)の下部面から0〜40cm部位になるように、好ましくは、5〜20cm部位になるように、適宜に洗浄液を充填させる。
また、この洗浄液は、水、又は容器及び攪拌系の材質を腐食させない限りにおいて、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸水溶液や、カセイソーダ等のアルカリ水溶液や、又は非水系の各種の有機溶媒等を適宜選んで使用することができる。
【0032】
次いで、撹拌翼を回転させるに際しては、その攪拌速度に特に限定されないが、通常、攪拌翼の種類によっても、その攪拌力に起因する旋回渦流の旋回流速度が異なる。しかしながら、後述する実施例に示す如く、本発明においては、通常、攪拌速度が、30〜150rpmの範囲にあれば、所望する洗浄力を発揮させることができる。すなわち、転流盤に放射状に設けた転流ガイド板の効果により、転流後の洗浄液の旋回流が、攪拌速度の割りに加速される。その結果、攪拌軸面に向かって放流される洗浄液の衝撃力が増大されて、優れた洗浄除去力を発揮されるものである。
【0033】
また、本発明おいては、好ましくは、転流ガイド板の下方部に、攪拌の回転方向に沿って所定の傾斜面を設けている。これによって、既に上述した理由により、各転流ガイド板に案内されて撹拌軸方向に向かう洗浄液が、一層加速されて、攪拌軸面に向けて放流される洗浄液流量が増大され[図5(c)を参照]、攪拌軸を中心に生じるV字形の旋回渦流で露出する攪拌軸面に対して、洗浄液が放流(加速射出)されて、その衝撃力をも加わって、回転軸面の洗浄をより効果的に向上させることができる。
【0034】
【実施例】
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらにいささかも限定されるものではない。
【0035】
参考例1
内容積約6l(内径180×内高250mm)のガラス製平底円筒フラスコに、液粘度5000mPa・sの溶剤系液状主剤(アクリル系粘着剤)5lと液粘度2mPa・sの溶剤型液状添加物(硬化剤)0.1lを入れ、撹拌翼として翼径100mm の3段傾斜パドル翼を使用して回転数85rpm で10分間混合を行い、容器内の混合液を別の容器に移した。
次いで、上記混合溶液が付着している容器、攪拌翼及び攪拌軸を洗浄するために、この混合に使用したガラス製フラスコに、洗浄液としてトルエンを5l入れ、洗浄液がオーバフローしない程度の回転数30で撹拌させたが、フラスコと撹拌翼の洗浄に15分を要した。
【0036】
参考例2
参考例1と同じ混合操作の後、洗浄液としてトルエンを5l入れて回転数を増やした。その結果、回転数が200rpm を超えると、容器から洗浄液がオーバフローした。
また、洗浄液が容器内周面に沿って攪拌軸を中心にV字形の旋回渦流となり、撹拌軸の上部が洗浄液から露出する。その結果、露出した撹拌軸部及び攪拌翼取付け部は、攪拌を15分以上継続させたが、この露出部は洗浄されず、手作業による洗浄ブラッシングを行った。
【0037】
実施例1
参考例1と同じ混合操作の後、洗浄液としてトルエンを5l入れて、本発明による取付け自在型洗浄蓋(2等分分割型、)を、転流蓋(転流ガイド板;3箇所)の位置が洗浄液の液面から10mm部位になるように取付け、回転数250rpm で撹拌洗浄を行った。
その結果、この強攪拌下に生ずる洗浄液の旋回渦流は、参考例2のようなオーバフローを全く起こさなかった。また、この旋回渦流が、転流蓋と転流ガイド板により撹拌軸方向に、効果的に分配放流されて、参考例2に見られた、攪拌軸上部の露出部に向かって、洗浄液が、3箇所の転流ガイド板に沿って放射状に放流(加速射出)されて、参考例2のような攪拌軸面の未洗浄部がなく、約2分で完全に洗浄することができた。
【0038】
比較例1
実施例1と同じ混合操作の後、洗浄溶剤としてトルエンを5l入れて、実施例1で用いた本発明の取付け自在型洗浄蓋から転流ガイドを取り外し、実施例1と同じ位置に取付け、回転数を250rpm で撹拌洗浄を行った。
その結果、洗浄液のオーバフローが生じなかったが、旋回渦流の中心では洗浄液から撹拌軸が露出し、露出した撹拌軸は15分以上撹拌洗浄を継続させたが攪拌軸を洗浄することができず、未洗浄部を手作業による洗浄ブラッシングを行った。
【0039】
比較例2
実施例1と同じ混合操作の後、洗浄溶剤としてトルエンを3l入れて、本発明の取付け自在型洗浄蓋を実施例1と同じ位置に取付け、回転数を250rpm で撹拌洗浄した。
洗浄液量が、少なく、旋回渦流が取付け自在型洗浄蓋の転流蓋にかからず、撹拌軸の上部が洗浄液から露出し、攪拌洗浄を15分以上継続させたが、攪拌軸の洗浄ができず、未洗浄部は手作業による洗浄ブラッシングを行った。
【0040】
参考例3
内容積約6l(内径180×内高250mm)のガラス製平底円筒フラスコに、液粘度10000mPa・sの溶剤型液状主剤(アクリル系粘着剤)4lと、固体フレーク状樹脂(粘着付与樹脂)1kgを入れ、撹拌翼として翼径126mm の製品名Hi−Fミキサー翼[綜研化学(株)製]を使用し、回転数85rpm で10分間溶解混合を行い、混合液を別の容器に移し、混合に使用したガラス製フラスコに、洗浄液として酢酸エチルを5l入れて回転数30rpm で撹拌させた。その結果、フラスコと撹拌翼の洗浄に15分を要した。
【0041】
実施例2
参考例3と同じ混合操作の後、洗浄溶剤として酢酸エチルを5l入れて、実施例1で用いた本発明の取付け自在型洗浄蓋を、転流板の位置が洗浄溶剤の液面から10mm部位になるように取付け、回転数を100rpm で撹拌洗浄した。その結果、約2分で完全に洗浄することができた。
【0042】
参考例4
200kg用(内径567×内高830mm)第1種鋼製オープンドラムに、液粘度10000mPa・sの溶剤系液状主剤(アクリル系粘着剤)100kgに炭酸カルシウムの粉体50kgを入れ、撹拌翼として翼径250mm のディスパー翼を使用し、回転数1500rpmで30分間分散混合を行った。
混合後、混合に使用した物とは別の200kg用第1種鋼製オープンドラムに、洗浄溶剤として酢酸エチルを160kg入れ、撹拌翼をセットし回転数1500rpm で30分間撹拌洗浄させた。
旋回渦流の発生により洗浄液から露出した撹拌軸の上部は、攪拌洗浄を30分以上継続させたが洗浄されず、未洗浄部を手作業による洗浄ブラッシングを行った。
【0043】
実施例3
参考例4と同じ分散混合操作の後、洗浄溶剤として酢酸エチルを150kg入れて、今回発明の取付け自在型洗浄蓋を、転流板の位置が洗浄溶剤の液面から50mm上になる様に取付け、回転数を1500rpm で撹拌洗浄した。その結果、オーバフローや、飛沫飛散が防止され、参考例4において、生じたV字形旋回渦流で露出された攪拌軸面に対しても、洗浄液が放射状に効果的に放流(加速射出)されて、その結果、未洗浄部を残すことなく、5分で洗浄を終了させることができた。
【0044】
参考例5
200kg用(内径567×内高830mm)第1種鋼製オープンドラムに、液粘度10000mPa・sの溶剤系液状主剤(アクリル系粘着剤)165kgと、液粘度2mPa・sの溶剤系の液状添加物(硬化剤)2.5kgを入れ、撹拌翼として翼径350mm のHi−Fミキサー翼[綜研化学(株)製]を使用し、回転数85rpm で30分間混合を行った。
混合後、別の200kg用第1種鋼製オープンドラムに、洗浄液の酢酸エチル160kgを入れ、撹拌翼をセットし回転数100rpm で30分間撹拌洗浄させた。
攪拌により洗浄液が、容器内周面を旋回流として上昇して、洗浄液から露出した撹拌軸の上部は、30分以上撹拌洗浄を継続させても洗浄されず、未洗浄部を手作業によって洗浄ブラッシングしなければならなかった。なお、この時、洗浄液のオーバフローを防止するために、シール材を施した蓋を取付ける必要があった。
【0045】
実施例4
参考例5と同じ混合操作の後、洗浄溶剤として酢酸エチルを150kg入れて、今回発明の取付け自在型洗浄蓋を、転流盤の位置が洗浄溶剤の液面から50mm部位になるように取付け、回転数を100rpm で撹拌洗浄を行った。その結果、実施例3と同様に、未洗浄部が無く、5分で洗浄を終了させることができた。
【0046】
【発明の効果】
以上から、本発明による洗浄盤を、洗浄を必要とする攪拌翼を装着した縦型円筒容器に被せ蓋として装着することにより、この洗浄蓋の転流蓋及び転流ガイド板によって、洗浄液のオーバフローや、飛沫飛散を効果的に防止することができる。
また、洗浄に際して、従来のように攪拌系を分解・取り外しすることなく、手作業による洗浄を要しないので、作業安全及び作業衛生上で著しく優れ、しかも、従来に比べて、極めて効果的に洗浄することができる。
また、この洗浄蓋は、上蓋と中蓋の転流蓋との簡便な一体形の構造体であって、且つ等分の分割型の被せ蓋式であることから、攪拌軸を挟んで、容器への装脱着が容易で、取付けが自在な簡便タイプの洗浄蓋を提供することができる。
【0047】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による洗浄蓋の一例を表す概略断面図である。
【図2】本発明による洗浄蓋を構成する中蓋である転流盤の一例を表す平面図である。
【図3】本発明の洗浄盤を容器に支持・固定させた例を示す概略断面図である。本発明に用いる中蓋の転流盤のオーバフロー防止を説明する概念図である
【図4】本発明に用いる転流ガイド板を示す図である。
【図5】本発明による洗浄盤を構成する転流盤と転流ガイド板の作用効果を説明する概念斜視図である。
【符号の説明】
1 上蓋
2 中蓋(又は転流盤)
3,3a 転流ガイド板
4 中蓋の係止板
5 撹拌軸
6 容器
h 上蓋と中蓋との間隔
SUF 洗浄液の旋回渦流
T0,T1,T2,T3 洗浄液の転流・分配放流
T31,T32,T33 転流ガイド板傾斜面の加速効果
Claims (8)
- 縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器の使用後に用いられる装脱着が容易な洗浄蓋において、
前記洗浄蓋が、攪拌軸を挟んで、少なくとも2等分に分割される、前記容器の外周縁を介して前記容器に係止される中蓋としての転流盤を有し、
前記転流盤の下部面の複数箇所に、攪拌軸に対して放射状に設けた転流ガイド板を有し、該転流ガイド板の下方部が、攪拌の回転方向に向かって所定の傾斜面を有していること特徴とする取付け自在型洗浄蓋。 - 縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器の使用後に用いられる装脱着が容易な洗浄蓋において、
前記洗浄蓋が、攪拌軸を挟んで、少なくとも2等分に分割される、前記容器外周縁上に支持される上蓋と、
前記上蓋の下部に、前記上蓋との間隔が自在に可変できるように前記上蓋に係止され、且つ攪拌軸を挟んで少なくとも2等分に分割される中蓋としての転流盤と、
前記転流盤の下部面の複数箇所に、攪拌軸に対して放射状に設けた転流ガイド板と、を有し、該転流ガイド板の下方部が、攪拌の回転方向に向かって所定の傾斜面を有していることを特徴とする取付け自在型洗浄蓋。 - 前記上蓋と中蓋との間隔が、容器内高の2分の1以下の範囲で自在に可変できることを特徴とする請求項2に記載の取付け自在型洗浄蓋。
- 前記転流ガイド板が、等間隔に2〜6部位の複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の取付け自在型洗浄蓋。
- 前記転流ガイド板が、前記転流盤に攪拌の回転方向に向かって鋭角に設けられている傾斜板であることを特徴とする請求項4に記載の取付け自在型洗浄蓋。
- 縦型攪拌翼を設ける開放縦型円筒容器の使用後に、洗浄液を充填する前記容器に洗浄蓋を装着させて、容器内壁、撹拌翼更には撹拌軸を洗浄する洗浄方法において、撹拌軸を挟んで少なくとも2等分に分割される前記洗浄蓋が、前記容器外周縁上に支持される上蓋と、前記上蓋の下部に、前記上蓋との所定の間隔が、自在に可変されるように前記上蓋に係止される中蓋である転流盤と、前記転流盤の下部面に、攪拌軸に対して複数箇所に放射状に設けている転流ガイド板とを有し、該転流ガイド板の下方部が、攪拌の回転方向に向かって所定の傾斜面を有し、洗浄に際して、攪拌軸を挟んで、少なくとも2等分に分割された前記上蓋を、前記容器外周縁上に支持させ、次いで、攪拌軸を挟んで少なくとも2等分に分割される中蓋としての転流盤を、前記上蓋と前記転流盤と間を所定の間隔に、自在に可変させ、且つ前記上蓋に係止させ、次いで、撹拌翼を回転させて、容器内周壁面を上昇する洗浄液の旋回渦流を、前記転流盤面を介して回転軸方向に転流させ、同時に転流された洗浄液を、前記転流ガイド板を介して順次、容器外周から撹拌軸方向に向けて、放射状に加速放流させて、前記洗浄液を加速循環流として、前記撹拌翼面、容器内壁面及び撹拌軸面に循環させることを特徴とする洗浄蓋を用いる洗浄方法。
- 前記中蓋と上蓋と間に、所定の間隔を設けることで、容器内周壁に沿って中蓋の上方向に上昇する洗浄液の上昇流を消失させることを特徴とする請求項6に記載の洗浄蓋を用いる洗浄方法。
- 前記転流ガイド板の下方部面に施された、攪拌の回転方向に向かう所定の傾斜面が、前記転流ガイド板で放射状に加速放流されて攪拌軸面に向かう洗浄液の流量を増大させることを特徴とする請求項6又は7に記載の洗浄蓋を用いる洗浄方法。
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