JP4410902B2 - 車両用空調制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用空調制御装置、特に、ディーゼルエンジン車に適した車両用空調制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジン等では、アイドリング時、エンジン冷却水温度が低下し、吹出温度が低下した場合、乗員に不快感を与えないように、エアミックスダンパの開度を吹出温度が高くなるように補正していた。
【0003】
ところが、内気温度が安定した後にアイドリング状態となり、吹出温度が低下するような場合には、内気センサによる検出温度は吹出温度に比べて遅れて低下するため、エアミックスダンパの制御が遅れ、その結果乗員に不快感を与えることがあった。
【0004】
このため、吹出温度が変化しないように、エンジン冷却水温度に基づいてエアミックスダンパの開度を補正するものが種々提案されている(実公平2−2657号公報、実開昭60−13805号公報、特開平4−244409号公報等参照)。これによれば、エンジン冷却水温度が低下すれば、エアミックスダンパの開度を補正し、ヒータコアを通過させる空気量を増大させることにより、車内への吹出温度の低下を防止することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のように、エンジン冷却水温度のみによってエアミックスダンパの開度を補正すると、ウォームアップ時、適切な空調制御ができなくなるという問題がある。具体的には、エンジン冷却水温度が同一であっても、ウォームアップ時と、内気温度が安定した後のアイドリング時とで比較すると、ウォームアップ時の方が吹出温度は高く、内気センサでの検出温度は低くなる。これは、内気温度が安定した後のアイドリング時に於ける内気センサでの検出温度の変化が、ウォームアップ時に於ける内気センサでの検出温度の変化に比べて遅れるためである。このため、内気温度の安定後のアイドリング時に、乗員に不快感を与えないように、エンジン冷却水によるエアミックスダンパの開度を補正すると、ウォームアップ時に補正し過ぎとなり、乗員に不快感を与えてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、エアミックスダンパの開度補正を適切に行うことのできる車両用空調制御装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
車内外諸条件に基づいて決定したエアミックスダンパの開度をエンジン冷却水温度に基づいて補正する車両用空調制御装置において、
エンジン始動直後のウォームアップ時であるか否かを判断し、ウォームアップ時でなく、かつ、アイドリング状態であると判断した場合にのみ、エンジン冷却水温度に基づいて前記エアミックスダンパの開度を補正可能としたものである。
【0008】
この構成により、エアミックスダンパの開度は、ウォームアップ時には補正しないため、安定後で車両がアイドリング状態にある場合に最も適した値とすることができる。
【0009】
前記ウォームアップ時であるか否かの判断は、エンジン始動直後からの経過時間に基づいて行えばよい。
前記車両がアイドリング状態であるか否かの判断は、車速に基づいて行うこともできる。
特に、前記エアミックスダンパの開度を、外気温度に基づいて二次補正すると、運転状況に応じた適切な吹出温度を得ることができる点で好ましい。
前記二次補正は、次式に従って行うようにすればよい。
ST W =(85−T WM )×ST K
ST W :補正開度(%)
WM :エンジン冷却水温度(℃)
ST K :外気温度に応じて決定される補正係数(%/℃)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る車両用空調装置の概略図を示す。この車両用空調装置では、車内前方部に配設した空調ユニット1内に、上流側から内外気切替ダンパ2、送風ファン3、エバポレータ4、エアミックスダンパ5、ヒータコア6をそれぞれ配設したものである。エアミックスダンパ5の開度は制御装置7からの制御信号に基づいて決定する。
【0012】
内外気切替ダンパ2は、その回動位置によって空調ユニット1を車内又は車外に連通する。
【0013】
送風ファン3は、ブロアモータ8の駆動により回転し、空調ユニット1内に内気又は外気を導入し、車内側へと送風する。
【0014】
エバポレータ4は、内部を図示しないクーラーサイクルを循環する冷媒が通過することにより、外部を通過する内気又は外気を冷却及び除湿する。
【0015】
エアミックスダンパ5は、エバポレータ4で冷却及び除湿された空気を分流し、一方をそのまま通過させると共に、他方をヒータコア6へと導く。
【0016】
制御装置7は、外気センサ9、内気センサ10、日射センサ11、エンジン冷却水温度センサ12等からの検出信号に基づいて、後述するようにして所定の演算を行い、エアミックスダンパ5の開度を決定する。外気センサ9は、車両前方部に配設されて外気温度を検出する。内気センサ10は、車内前方部の足元に配設されて内気温度を検出する。日射センサ11は、車内前方部に配設されて日射量を検出する。エンジン冷却水温度センサ12は、ヒータコア6に配設され、エンジン冷却水温度を検出する。
【0017】
ヒータコア6は、エアミックスダンパ5によって分流された通路の一方に配設され、内部をエンジン冷却水が流動することにより、外部を通過する空気を加熱する。
【0018】
次に、前記車両用空調装置の動作を図2のフローチャートに従って説明する。
【0019】
まず、各種センサから入力される検出信号(車内外諸条件)を読み込む(ステップS1)。そして、これら車内外諸条件に基づいて従来同様の演算を行い、内外気切替ダンパ2の回動位置を決定し(ステップS2)、ブロアモータ8の駆動(ステップS3)及びコンプレッサの駆動(ステップS4)を開始すると共に、従来同様、車内外諸条件に基づいて所定の演算処理を行うことによりエアミックスダンパ5の開度を決定する(ステップS5)。
【0020】
続いて、エンジン始動直後のウォームアップ時であるか否かを判断する(ステップS6)。例えば、エンジンの始動からの経過時間が所定時間(例えば、15分)を越えていなければ、ウォームアップ時であると判断する。
【0021】
ウォームアップ時であれば、前記ステップS5で演算した値をエアミックスダンパ5の開度とする。これは、ウォームアップ時、車内全体が低温状態であり、吹出温度と内気センサ10の検出温度との間に一定の相関関係があるので、従来のようにエンジン冷却水温度を利用することなく、従来通りに演算を行っても問題がないからである。
【0022】
ウォームアップ時でなければ、内気温度がほぼ設定した目標温度となった安定時であると推測されるので、今度は車両がアイドリング状態にあるか否かを判断する(ステップS7)。車両がアイドリング状態であるか否かは、例えば、車速に基づいて判断する(ここでは、車速が0km/hのときをアイドリング状態としている。)。アイドリング状態になければ、前記ステップS5で演算した値をエアミックスダンパ5の開度とする。アイドリング状態であれば、前記ステップS1で読み込んだエンジン冷却水温度センサ12及び外気センサ9での検出温度に基づいて次式に従って開度の補正値を演算する(ステップS8)。すなわち、従来同様の演算により得られた値に、次式で得られた補正値を加算する二次補正を行うことにより、エアミックスダンパ5の開度を決定する(ステップS9)。なお、エアミックスダンパ5がフルコールド位置(ヒータコア6への空気の流入を阻止した状態)にある場合の開度が0%、フルホット位置(全空気がヒータコア6を通過する状態)にある場合の開度が100%である。
【0023】
【数1】
STW=(85−TWM)×STK
STW:補正開度(%)
WM:エンジン冷却水温度(℃)
STK外気温度に応じて決定される補正係数(%/℃)
【0024】
補正係数STKは、図3のグラフに示すように、外気センサ9で検出される外気温度によって変化させる。すなわち、外気温度が0℃を越えるまでは、一律に0.6を使用し、0℃を越え、10℃に至るまでは徐々に小さくし、10℃を越えた後は0とする。ここでは、外気温度が0℃以下では、エンジン冷却水の温度低下が吹出温度低下に与える影響が大きいことが予想されるので、補正係数STKを最大値にしている。しかし、外気温度が0℃を越えると、エンジン冷却水の温度低下が吹出温度低下に与える影響が小さくなることが予想されるため、補正係数STKを徐々に小さくしている。そして、外気温度が10℃を越えれば、エンジン冷却水温度の低下による影響がないものと判断し、補正係数STKは0としている。
【0025】
なお、前記実施形態では、ウォームアップ時であるか否かをエンジンの始動からの経過時間で判断したが、内気センサ10での検出温度に基づいて判断してもよい。すなわち、目標温度と内気センサ10での検出温度の差が所定温度(例えば、5℃)以上のときはウォームアップ時であると判断してもよい。
【0026】
また、前記実施形態では、車両がアイドリング状態にあるか否かを車速で判断したが、エンジン回転数や車両からのアイドリング状態信号に基づいて判断してもよい。すなわち、エンジン回転数が所定回転数(例えば、1000rpm)以下であれば、アイドリング状態であると判断してもよいし、ECU(エンジンコントロールユニット)から車速が0km/hのときに出力させる信号に基づいて判断してもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る車両用空調制御装置によれば、エアミックスダンパの開度を、エンジンのウォームアップ時、安定後で車両がアイドリング状態であると判断した場合にのみ補正するので、従来のように、ウォームアップ時と、安定後で車両がアイドリング状態である場合のいずれかの時期で不具合が発生することがなく、空調状態を快適なものとすることが可能となる。
【0028】
特に、外気温度に基づいてエアミックスダンパの開度を二次補正するので、運転状況の変化に拘わらず、適切な吹出温度を得ることができ、空調状態をより一層快適なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態に係る車両用空調装置の概略図である。
【図2】 図1の車両用空調装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】 図1のエアミックスダンパの開度補正処理に於ける補正係数を決定するためのグラフである。
【符号の説明】
1…空調ユニット
5…エアミックスダンパ
6…ヒータコア
7…制御装置
9…外気センサ
10…内気センサ
11…日射センサ
12…エンジン冷却水温度センサ

Claims (5)

  1. 車内外諸条件に基づいて決定したエアミックスダンパの開度をエンジン冷却水温度に基づいて補正する車両用空調制御装置において、
    エンジン始動直後のウォームアップ時であるか否かを判断し、ウォームアップ時でなく、かつ、アイドリング状態であると判断した場合にのみ、エンジン冷却水温度に基づいて前記エアミックスダンパの開度を補正可能としたことを特徴とする車両用空調制御装置。
  2. 前記ウォームアップ時であるか否かの判断は、エンジン始動直後からの経過時間に基づいて行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調制御装置。
  3. 前記車両がアイドリング状態であるか否かの判断は、車速に基づいて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調制御装置。
  4. 前記補正されたエアミックスダンパの開度を、外気温度に基づいて二次補正するようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用空調制御装置。
  5. 前記二次補正は、次式に従って行うことを特徴とする請求項4に記載の車両用空調制御装置。
    ST W =(85−T WM )×ST K
    ST W :補正開度(%)
    WM :エンジン冷却水温度(℃)
    ST K :外気温度に応じて決定される補正係数(%/℃)
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