本発明は、微小なミラーを往復振動させることにより光ビームを偏向させる振動ミラーを用いた光走査装置と、それを用いた光書込装置および画像形成装置に関し、例えばデジタル複写機やレーザプリンタ等の画像形成装置に用いられる光走査装置に適用され、光走査型のバーコード読み取り装置や車載用のレーザレーダ装置等へも応用が可能な技術である。
従来、光走査装置における光ビームを走査する偏向器としては、ポリゴンミラーやガルバノミラーが用いられている。しかし、より高解像度な画像と高速プリントを実現するには、ミラーの回転をさらに高速にしなければならず、軸受の耐久性や風損による発熱、騒音が課題となり、高速走査に限界がある。
これに対し、近年、シリコンマイクロマシニングを利用し、微小ミラーとそれを支持するねじり梁をシリコン基板で一体形成してなる振動ミラーが提案されている(特許文献1、2を参照)。このような振動ミラーは、共振を利用して往復振動させるので高速動作にもかかわらず、低騒音であり、さらに振動ミラーを回転する駆動力も小さいので消費電力も低く抑えられる。
このように振動ミラーを利用することで、従来のポリゴンミラーを用いる方法に比べ、小型で消費電力が少ない光走査装置が提供できるが、振れ角が小さく、反射面の大きさにも限界があるため、光路長の短い複数の光走査装置を並列に配置し、画像を主走査に分割して各々の記録幅を小さくして繋ぎ合わせる方式が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
上記したように、複数個の振動ミラーを用いて分割走査する場合には、各振動ミラーの共振周波数のバラツキが問題となる。つまり、共振周波数のバラツキが大きいと、複数の振動ミラーを共通の駆動周波数で駆動できない。
共振周波数のバラツキの発生要因としては、
(1)製造による加工バラツキ
(2)環境温度、湿度の変化によるバラツキ
(3)大気中で使用する場合の大気圧の変化によるバラツキ
等が挙げられる。上記した発生要因を回避することは難しく、従って、それぞれの共振周波数に合わせた駆動周波数で駆動するか、または、同一の駆動周波数でそれぞれを駆動する場合に、共振周波数がある範囲内のものだけを選別して使用するか(歩留まりが悪い)、あるいは複雑な駆動系の制御を付加して駆動せざるを得ない。
加工バラツキ(1)により発生する共振周波数のバラツキに対しては、振動ミラー作製工程において、振動ミラー及び捩り梁を形成後に、振動ミラーを駆動させた状態で、振動ミラー及び捩り梁またはその両方をエッチングまたはデポジッションすることにより質量変化させ(トリミング)、共振周波数を所定の範囲内に調整する方法がある(例えば、特許文献4〜7を参照)。しかし、この方法では製造工程中で調整しているため、完成後の実使用時の共振周波数との差を見込んだ調整が必要であり、調整ズレが発生し、上記(2)や(3)の使用環境下による共振周波数のバラツキには対応できない。
また、振動ミラーの共振周波数は基本的には弾性部材(捩り梁)の剛性と振動ミラーの慣性によって一意に決まるので、(2)の使用環境下の温度変動による共振周波数のバラツキに対しては、弾性部材である捩り梁に抵抗加熱によるヒータを設け、弾性部材の温度を一定に保つことにより、環境温度変化による剛性変化つまり周波数変化を抑える方法がある(例えば、特許文献8を参照)。しかし、この方法では、ヒータを設けることによる製造コストが上昇し、また継続的にヒータに通電するため、消費電力も上昇し、さらにヒータの発熱により弾性部材の温度を制御するため、環境温度の低下には対応できない。
その他、振動ミラーを熱膨張係数の異なるベース部材に接合固定し、温度変化によって発生する熱膨張係数の差により発生する応力を利用して、弾性部材の剛性変化と相殺させ、周波数変化を抑制する方法もある(例えば、特許文献9を参照)。しかし、この方法は、構造、材料、接合方法により応力の発生の仕方が変化し、効果的な応力発生の設計が難しい。
また、上記(3)の共振周波数のバラツキに対しては、通常、振動ミラーの揺動空間を密閉封止した構造を用いる。
さらに、上記(1)〜(3)に対しては、フィードバックで構成されている駆動回路を用いることにより、共振周波数で駆動させる方法がある(例えば、特許文献10を参照)。しかし、この方法は、電磁力で駆動する振動ミラーを対象としたもので、静電駆動型の振動ミラーには適用できない。その他、共振スキャナの近傍に温度センサを設置して、温度をモニターすることにより駆動周波数を補正する方法もあるが(例えば、特許文献11を参照)、温度センサや駆動回路系のコストが増加する。
特許第2924200号公報
第3011144号公報
特開2001−228428号公報
特開2002−40353号公報
特開2002−40355号公報
特開2002−228965号公報
特開平08−075475号公報
特開平9−197334号公報
特開2002−321195号公報
特開2002−277809号公報
特開平7−049462号公報
上記したように、振動ミラーの共振周波数は、作製時に発生する形状バラツキに起因する個体バラツキと、環境温度、湿度の変化に起因するバラツキ、大気中で使用する場合の大気圧の変化によるバラツキがある。そして、共振周波数のバラツキが大きい場合には、複数の振動ミラーを共通の駆動周波数で駆動できないという問題がある。
本発明は上記した問題点に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、振動ミラーの共振周波数のバラツキを低減し、また駆動周波数のバラツキ吸収幅を広くした光走査装置、光書込装置および画像形成装置を提供することにある。
本発明は、光ビームを反射するミラー面を有する振動ミラーと、前記振動ミラーを揺動自在に支持する一対の捩り梁を有する光走査装置において、前記振動ミラーは、化学反応により質量を可変にする質量変動部を備え、前記質量を可変にすることにより、前記振動ミラーの共振周波数を調整することを最も主要な特徴とする。
(1)本発明では、質量変動部の質量を変化させることにより共振周波数を調整できるので、振動ミラー作製時に発生する共振周波数のバラツキを吸収、低減できる。よって、共振周波数を揃えた特性にすることにより、共通の駆動周波数で駆動する場合、複雑な駆動系の制御を必要とせず、安定かつ制御の簡単な光走査装置が得られる。
(2)本発明の振動ミラーにガスを吸着する質量変動部を備えた構造では、ガスを吸着することにより振動ミラーの質量が増加し、共振周波数が下がる。ガスを吸着する質量変動部を用いるという方法は、その活性化方法も基本的には加熱させるだけなので、容易に振動ミラーの質量を調整することができ、振動ミラーの共振周波数のバラツキを低減できる。
(3)本発明の振動ミラーにガスを放出する質量変動部を備えた構造では、ガスを放出することにより振動ミラーの質量が減少し、共振周波数が上がる。ガスを放出する質量変動部を用いるという方法は、その活性化方法も基本的には加熱させるだけなので、容易に振動ミラーもしくは捩り梁の質量を調整することができ、振動ミラーの共振周波数のバラツキを低減できる。
(4)本発明の振動ミラーは、ガスを吸着する質量変動部とガスを放出する質量変動部の両方を備えているので、振動ミラーの質量調整つまり共振周波数の調整が両方向に可能となり、調整自由度が高く、調整幅が広がり、微調整が可能になる。
(5)本発明では、密閉封止された構造となっているために環境変化による共振周波数の変動に対して耐性がある。また、ガスを放出する質量変動部を用いた場合は、密閉封止した後に、活性化させることにより密閉封止空間の気圧変化による共振周波数の変動効果も付加されるので、周波数バラツキの調整範囲が広がる。また、質量変動部から放出されるガスを吸着することができる質量変動部も共に備えた構成の場合、密閉封止空間内でガスのやり取り(気圧の調整)をすることができ、更に調整範囲が広がる。
(6)本発明では、気圧変動源として、反応ガスをあらかじめ封入しておくことにより、ガスを吸着する質量変動部を用いたときに、気圧変化による共振周波数の変動効果も付加されるので、周波数バラツキの調整範囲が広がる。
(7)本発明では、共振ピークから外れた帯域で使うことにより、駆動周波数に対する調整幅が広がる。
(8)本発明の画像形成装置は、従来のポリゴンミラーを使用した画像形成装置に比べ、省電力性、静粛性に優れる。
振動ミラーの共振周波数のバラツキを低減するという本発明の目的を、従来技術のような質量負荷部、質量調整部にデポジッションやエッチングを行うことにより質量変化を起こすのではなく、化学反応を用いて質量を可変にする質量変動部(例えば、ガス吸着剤、ガス放出剤等)を設けることにより実現した。
本発明は、振動ミラーの質量変化を利用して共振周波数のバラツキを低減する。また、環境変化に対する周波数のバラツキに対しては、揺動空間を密閉封止する構造で対応する。また、密閉封止構造の場合は、密閉封止空間内でガスのやり取りを行なうことにより、気圧変化による周波数調整効果も付加される。さらに、共振点での利得を抑えた平坦な周波数特性を用い、共振ピークから外れた帯域を利用することにより、駆動周波数のバラツキ吸収幅を広くすることができる。
以下、本発明に係る質量変動部を備えた振動ミラーについて説明する。本実施例では、静電気力により駆動する静電駆動型の振動ミラーを例に説明するが、駆動方法が異なる他の駆動型の振動ミラーでも良い。
前述したように、振動ミラーの共振周波数は、作製時に発生する形状バラツキに起因する個体バラツキと、環境温度、湿度の変化に起因するバラツキ、大気中で使用する場合の大気圧の変化によるバラツキがある。共振周波数のバラツキが大きいと、複数の振動ミラーを共通の駆動周波数で駆動できない。
振動ミラーの質量変化を利用して共振周波数のバラツキを低減する方法があるが、振動ミラーの質量変化と、共振周波数の変化との関係は、質量が増加すると共振周波数が下がるという対応関係にある。
本発明は、化学反応を用いて質量を可変にする質量変動部を備え、振動ミラーの質量を変化させ、共振周波数を調整する。
図1は、本発明の実施例1に係る光走査装置とその製造方法を示す。図1(a)は、マイクロミラー1の上面図であり、(b)は、A−A’の断面図である。
マイクロミラー1は、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて作製され、エッチング加工を用いて、薄い方(例えば約60μm)の基板には振動ミラー2、一対のねじり梁3が形成され、また、それぞれの基板には振動ミラー側の櫛歯電極に対向する位置に櫛歯電極が形成されている。ここで、電極形状を櫛歯形状にすることにより、駆動電圧を低減することができる。また、SOI基板の厚い方の基板と薄い方の基板の両方の基板には、低抵抗の基板(導体)を用いているので、金属を形成することなく、基板自体が電極を兼ねている。そこで、振動ミラー2側の可動電極と、それに対向する固定電極とを絶縁分離するために、基板にスリット溝5(破線)を形成して、絶縁分離している。また、本実施例では、SOI基板の基板界面を反射ミラー面として用いた場合を示し、振動ミラーの反ミラー面側には、ミラーの軽量化を行いつつ剛性を確保するために、リブ状の加工を行っている。
本発明の振動ミラー2には、質量変動部4としてガス吸着剤またはガス放出剤が形成されている。本実施例では、振動ミラー2上に形成される質量変動部4は、反射ミラー面として利用する領域を避けて形成されている。
振動ミラー2に、質量変動部4としてガス吸着剤及びガス放出剤を形成したときの、質量変化による周波数変化の対応関係は、次の通りである。すなわち、振動ミラー2にガスを吸着する質量変動部4を備えた構造では、ガスを吸着することにより振動ミラーの質量が増加し、共振周波数が下がる。また、振動ミラー2にガスを放出する質量変動部4を備えた構造では、ガスを放出することにより振動ミラーの質量が減少し、共振周波数が上がる。 更に、振動ミラー2が、ガスを吸着する質量変動部4とガスを放出する質量変動部4を両方を備えた場合には、振動ミラー2の質量調整つまり共振周波数の調整が両方向に可能となり、調整の自由度が高く、調整幅が広がり、微調整が可能になる。
本実施例では、質量変動部4として、ガス吸着剤及びガス放出剤を用いる例を以下、説明する。
ガス吸着剤の例;
通常、気体等の吸着剤としては、無機質吸着剤(ゼオライト、シリカゲル、多孔質ガラス等)や有機質吸着剤(活性炭、吸着性樹脂等)や触媒金属等がある。ここでは、気体分子を吸着することにより、振動ミラーの質量を増加させたり、気圧を調整するために、不可逆的反応である化学吸着を選択的に発現させる吸着剤を選択すれば良い。具体的には、図2に示すように、使用される金属と半導体の例を挙げる(「触媒の科学」p122、産業図書)。その他には、例えば、Zr-V-Fe等の「燒結体」等がある。これは、作製時に多孔質状に形成できるので、高比表面積を得る場合に用いられる方法である。
ガス放出剤の例;
放出剤としては、例えば、可逆的反応である物理的吸着を用いた方法等が挙げられる。可逆的反応としては、低温吸着−高温脱離方式や加圧吸着−減圧脱離方式が挙げられ、例えば、低温吸着−高温脱離方式の場合は、活性炭や鉄に窒素を低温物理吸着させたものを用意しておき、後で加熱することにより物理吸着を絶つことにより、放出剤として用いることができる。
吸着剤(放出剤)の形成方法としては、吸着剤をターゲットに用いたスパッタリング法によって形成することができる。その際、吸着剤を形成したい場所に対応する位置に開口を有するメタルマスク等を用いることにより、所望の位置のみに選択的に形成可能となる。その他、吸着剤を粉末状にしたものを溶剤、バインダ等と混合したペースト状にしたものをスクリーン印刷法によって塗布した後、乾燥、焼成して形成することもできる。ここでも、スクリーンの開口を、吸着剤を形成したい場所に対応するように形成しておくことにより、所望の位置のみに選択的に形成可能となる。更に、多孔質状の吸着剤を作製する方法としては、吸着剤を主材とするペーストに樹脂を添加した混合体を固め、熱処理で樹脂を取り除いて作る等がある。
上記した吸着剤、放出剤の活性化方法(加熱する場合の条件)を説明する。ここでいう活性化とは、以下の二つの意味を含んでいる。例えば、吸着剤の場合は、(1)吸着反応を起こさせるのに必要な活性化エネルギーを与えること、(2)吸着剤の表面状態を活性化させることである。
例えば(1)の場合は、一般に金属表面上の気体の化学吸着にはほとんど活性化エネルギーを必要としないが、化学吸着の中でも、吸着の際に活性化エネルギーを必要とするものを活性化吸着といい、例えば、100℃での鉄触媒上への窒素の吸着は遅い活性化吸着である。
上記(2)については、図2に示される各種金属(吸着剤)は自然状態でそれら金属表面上に酸化物や炭化物等(吸着反応ストッパー層となる)が形成される。そこで、加熱することにより前記酸化物や炭化物等を金属内部へ拡散させることにより、金属表面を露出させ活性化することにより、化学吸着を起こすことができる(例えば、文献「Vacuum Packaging for microsensors by glass-silicon anodic bonding」,Sensors
and Actuators A,43(1994),p243-248,Fig2を参照)。
一方、放出剤については、ここでは物理吸着していた気体を脱離させるのに必要なエネルギーを与えることで、上記(1)を意する。
活性化手段としては、加熱すれば良いが、加熱条件としては必要な活性化エネルギーに相当する温度であれば良く、抵抗加熱でもレーザー加熱でも良い。但し、レーザー加熱の場合は、局所加熱が可能なので、デバイス信頼性のために、デバイス全体を加熱したくない場合や、気体の吸着量を細かく制御したい場合にはより有効である。このように、ガスを放出する質量変動部を用いるという方法は、その活性化方法も基本的には加熱させるだけなので、容易に振動ミラーの質量を調整することができ、振動ミラーの共振周波数のバラツキを低減できる。
吸着剤と放出剤の組み合わせの具体的手法を説明すると、吸着剤及び放出剤をそれぞれ単独で用いる場合は、図2を参照すればわかるように選択に自由度があるので、適合するガスとの組み合わせを選べば良い。また、振動ミラーに吸着剤と放出剤の両方を形成し、振動ミラーの質量を増加、減少の両方向に調整できるような構成を採る場合は、放出剤が放出した気体を吸着剤が吸着しないような組み合わせを用いれば良い。例えば、図2から分かるように、放出剤にAグループの元素を選び、吸着剤にB1、B2のグループの元素を選び、放出剤の放出ガスをN2に選べば、放出剤が放出したガス(N2)を吸着剤が吸着することはない。
なお、実施例1では、質量変動部として、ガス吸着剤及びガス放出剤を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、化学反応により質量を可変する質量変動部であれば、他の方法を用いても同様の効果が得られる。例えば、振動ミラー自体を酸化する方法や、振動ミラーにアルミを、例えばスパッタリングで形成し、アルミを陽極酸化処理してアルミナを形成する方法や、振動ミラーにゾルゲル法によってSiO2を形成する等の方法がある。
図3は、本発明の実施例2に係る光走査装置及びその製造方法を示す。図3(a)は、マイクロミラー1の上面図であり、(b)は、A−A’の断面図である。
本実施例は、実施例1の質量変動部の形成場所とは異なる場所に、質量変動部を形成した実施例である。マイクロミラーの作製方法は、図1とほぼ同様であるが、振動ミラー2の反ミラー面側に、ミラーの軽量化を行いつつ剛性を確保するためのリブ状の加工を行ってない点が異なる。リブ状加工は、振動ミラー2の剛性を確保することにより、ミラーの動的変形を抑制しているが、本実施例では、反射に関係のない反ミラー面の中央に、質量変動部4aを形成することにより、振動ミラー2の端部よりも中央部の質量を相対的に増加させ、ミラーの動的変形を低減させる効果も狙っている。
このように、質量変動部4aの形成位置は、振動ミラー2の共振周波数以外の他の特性や信頼性等を考慮して形成することも必要である。
図4は、本発明の実施例3に係る光走査装置及びその製造方法を示す。図4(a)は、マイクロミラー1の上面図であり、(b)、(c)は、A−A’の断面図である。本実施例は、実施例1のマイクロミラーが密閉封止された実施例である。
まず、振動ミラーの揺動空間を密閉封止した構造において、封止気圧を変えたときの振動ミラーの特性を説明する。周波数特性については、図5に封止気圧を変えたときの、f−θ(振れ角)曲線を示す。封止気圧を変えることにより、共振周波数や振れ角が変動することがわかる。また、封止気圧に対するピークの振れ角は、図6に示すような関係で変動する。本実施例は、このような関係を利用した光走査装置である。
図4(b)は、マイクロミラーを透明部6によって密閉封止した構造例を示し、(c)は、マイクロミラーを透明部6と封止容器を用いて密閉封止した構造例を示す。
図4(b)、(c)には、マイクロミラーと光ビームの入出射が行われる透明部6を備えた部材と、リード端子9を備えたベース基板7が接合された断面を示す。図4(b)において、それぞれの基板の接合は、はんだ接合、ガラス接合、エポキシ接着剤接合等から基板材質に合った好適な接合を選択してやれば良い。また、図4(c)において、マイクロミラーを内包する形の封止容器を用いた場合の封止容器は、例えばコバール材等を用い、溶接タイプの接合で封止する方法もある。
マイクロミラーの作製方法は、図1と同様であるので省略する。本実施例では、SOI基板の基板界面をミラー面として用いた場合を示し、その電極部がベース基板7側に形成しているので、図示するように、はんだボール8等を介してリード端子9に接続される(はんだボールが接触する個所の一部は絶縁膜が除去されており、導通が可能となる)。
上記したような密閉封止空間において、質量変動部としてガス吸着剤またはガス放出剤を用いた場合は、前述した質量変化による共振周波数の変化の他に、封止気圧の変動による共振周波数の変化が起こる。図7は、密閉封止空間におけるガス吸着/放出による周波数変化の対応関係を示す。
図7の対応関係により、質量変動部としてガス放出剤を用いた場合は、密閉封止した後に、活性化させることにより密閉封止空間の気圧変化による共振周波数の変動効果も付加されるので、設計次第で周波数のバラツキの調整範囲が広がる。
また、前記質量変動部から放出されるガスを吸着することができるガス吸着剤を質量変動部として共に備えた構成の場合、密閉封止空間内でガスのやり取り(気圧の調整)をすることができ、更に調整範囲が広がる。また、実施例3では、密閉封止された構造となっているため、環境変化による共振周波数の変動に対して耐性がある。
共振周波数を揃えるために、封止気圧を調整する場合、その振れ角も変動してしまうという問題があるが、図8に示されるf−θ特性と、図9に示される駆動電圧と振れ角の関係(V−θ特性)を比較して分かるように、振れ角の調整は駆動電圧で調整する方が格段に容易である。V−θ特性から分かるように、両者は通常の使用領域では、ほぼ比例関係なので、複雑なフィードバック回路を用いることなく、容易に振れ角の調整が可能となる。あるいは、最初から駆動電圧を高く設定しておいて、つまり振れ角を大きくとっておいて、それ以下の振れ角を走査に使うというような用い方をすれば、特に電圧調整も必要ではない。従って、ここでは、共振周波数のバラツキを調整することを主眼に説明しているが、その他の特性のバラツキの調整に用いることも可能である。
図10は、揺動空間の気圧を調整する手段を設けた、実施例4の光走査装置を示す。本実施例では、揺動空間の気圧を調整する手段として、ガス吸着剤及びガス放出剤と反応するガス10があらかじめ封入されている。
気圧変動源として、反応ガス10をあらかじめ封入しておくことにより、ガス吸着剤を用いたときに、気圧変化による共振周波数の変動効果も付加されるので、設計次第で周波数のバラツキの調整範囲が広がる。
上記説明した質量変動部4は、その化学反応による質量変化を用いた例で説明したが、さらに、質量変動部の形状をポーラス状に形成し、その高比表面効果により、質量変化の範囲を広くとることもできる。
次に、共振周波数のバラツキを吸収する手段について説明する。図8に示すf−θ特性において、共振ピーク(共振点)から外れた平坦な帯域「共振外安定領域」を利用することにより、駆動周波数のバラツキ吸収幅を広くすることができる。この共振外安定領域は広いほど良いが、この領域を広げるためには、共振点での利得を抑えた平坦な周波数特性にすれば良い。
共振外安定領域を広げるための方法を以下に例示する。
(1)振動ミラーを駆動する静電力の印加方法を工夫する(2段電極の静電駆動ミラー(図12、13)に特有)。
(2)振動ミラーの揺動空間を密閉封止し、圧力を調整する方法(振動ミラーの駆動方法にはよらず、全ての振動ミラーに共通)。
(1)の方法は、後述するように(図12〜14)、振動ミラーに常に静電トルクが発生するような方法を採ることにより、図8のような周波数特性において、振れ角の小さいところを全体的に大きくすることができ、共振外安定領域を拡大することができる。(2)の方法では、密閉封止された空間において、振動ミラーを駆動させる場合、封止空間内に封止されている気体による粘性抵抗が大きいと、振動ミラーの周波数特性は、共振点での利得が下がった(Q値の低い)平坦な周波数特性となる(図5参照)。従って、共振点ピークは下がるが、共振外安定領域が広い特性となる。
上記した実施例1〜4において、振動ミラーの質量が変化したときの共振振動数の変化について説明する。図11は、振動ミラーの各寸法を示す。
振動ミラーの寸法を、縦2a、横2b、厚さd、捩り梁の長さをL、幅cとすると、Siの密度ρ、材料定数Gを用いて、
質量M=4abρd
慣性モーメントI=(M/3)・a^2
バネ定数K=(G/2L)・{cd(c^2+d^2)/12}
となり、共振振動数fは、
f=(1/2π)・(K/I)^1/2 =(1/2π)・{Gcd(c^2+d^2)/24LI}^1/2
となる。
ここで、例えば、窒素分子を吸着した場合についての質量変化とそのときの周波数変化を示す。例えば、図1に示すように、吸着剤を、1×4mm^2の振動ミラーの周辺に幅100μm(厚さ:5μm)で形成したときの、吸着剤の外気に面する面積は、
内壁面:(0.8+3.8)*2*0.005=0.046 mm^2
外壁面:(1+4)*2*0.005=0.05 mm^2
上面:(0.8+4)*2*0.1=0.96 mm^2
の合計の1.056 mm^2となる。
吸着剤の固体表面状態(結晶面、非結晶面、欠陥等)や吸着分子の脱離について考慮せず、上記面積が窒素分子の単分子層で覆われるとすると(窒素の分子断面積σの大きさを外寸16.2A^2)、
吸着される窒素分子の総質量は、3.03×10^-10 gとなる。
これは、バルク形状の吸着剤で計算しているので、高比表面効果を使えるように、例えば多孔質状の吸着剤とし、表面面積が30倍とすると約1×10^-8 gとなる。
一方、本実施例で示す振動ミラーの形状は、1×4mm^2、厚さ60μmでリブ構造とすることにより質量を1/5にしており、そのときの質量の10%は約1.1×10^-8
gとなるので、振動ミラーの質量バラツキを相殺する質量変化を起こすことができる。
図12は、本発明の実施例6に係る光走査装置を示す。ここでは、振動ミラーモジュール200として説明する。なお、実施例6の光走査装置には、前述した実施例3または実施例4(図4または図10)が実装されている。また、図13は、光走査装置を構成する第1、第2の基板を示す。
振動ミラー基板は、2枚のSi基板206、207を酸化膜等の絶縁膜を介して接合して形成される。第1のSi基板206は厚さ60μmのSi基板からなり、振動ミラー202と、同一直線上で支持する捩り梁208を、エッチングにより形成する。つまり、第1のSi基板206から、動ミラー202と捩り梁208の部分が残るように、その周囲を抜き取り、固定枠210から分離して形成する。
振動ミラー202は、捩り梁208に対して対称に形成され、両端の縁部および対向する固定枠210の内辺には数μmのギャップを有して振動ミラー202側の櫛歯状の凹凸(可動電極)と互い違いに噛み合うよう櫛歯状の凹凸による第1の固定電極203、第2の固定電極204を形成している。振動ミラー202の表面にはAu等の金属被膜が蒸着されて反射面がつくられ、図13に示すように、各基板を絶縁層を介して接合した状態で島状に分離することで基板そのものを個別に電極として形成している。振動ミラー202の両端の凹凸部が第1、第2の可動電極(説明上分けているが同電位)、これら第1、第2の可動電極に対向する固定枠210の凹凸部が第1、第2の固定電極203、204(説明上分けているが同電位)となる。
第2の基板207は、140μmのSi基板からなり、エッチングにより中央部を貫通し、上記固定枠210に形成した凹凸部と重なり合う内辺には外郭が一致するように櫛歯状に凹凸を形成することで、第3、第4の固定電極211、212が形成され、振動ミラー202の揺動に沿って第1、第2の可動電極が噛み合うように通過する。
本実施例では、第1、第2の固定電極203、204には同位相の電圧パルスが印加され、第3の固定電極211には第1、第2の固定電極に印加する電圧パルスよりも進んだ位相の電圧パルスが印加され、第4の固定電極212には第1、第2固定電極に印加する電圧パルスよりも遅れた位相の電圧パルスが印加される。
図14は、振動ミラーの振れ角に対応して各電極間に発生する静電トルクの様子を示す。図15は、電極の断面を示す。図中、左回り方向の静電トルクを正としている。
振動ミラー202は、初期状態では水平であるが、第3の固定電極211に電圧を印加すると、対向する可動電極との間で負の方向での静電力を生じ、捩り梁208をねじって回転され、ねじり梁の戻り力と釣り合う振れ角まで傾く。
上記第3の固定電極211の電圧が解除されると、捩り梁208の戻り力で振動ミラー202は水平に戻るが、水平に戻る直前に第1、第2の固定電極203、204に電圧を印加することによって正の方向での静電力を生じ、水平に戻る。
続いて、第4の固定電極212に電圧を印加することによってさらに正の方向での静電トルクを増し、捩り梁208をねじって回転され、ねじり梁の戻り力と釣り合う振れ角まで傾く。
第4の固定電極212の電圧を解除すると、捩り梁208の戻り力で振動ミラー202は水平に戻るが、水平に戻る直前に第1、第2の固定電極203、204に電圧を印加することによって負の方向での静電力を生じ、水平に戻る。
第3の固定電極211の電圧を印加すると、対向する可動電極との間で負の方向での静電力を生じ、捩り梁208をねじって回転される。
上記したように、電極の切り換えを繰り返し行うことで、振動ミラー202は、その両端の可動電極が対向する第1、第2の固定電極を抜ける振れ角、実施例では約2°が確保されるように往復振動する。
ここで、振動ミラー202の慣性モーメント、捩り梁208の幅と長さを、走査する所望の駆動周波数に合わせ、捩り梁を回転軸とした1次共振モードの帯域にかかるよう設計することによって、励振されて著しく振幅が拡大され、振動ミラー202の両端の可動電極が対向する第3、第4の固定電極211、212を抜ける振れ角まで拡大することができる。これによって、第3、第4の固定電極211、212を抜けた振れ角でも水平に戻す方向の静電力、つまり第3の固定電極211では振動ミラー202に正の方向の静電力が生じるので、静電トルクの働く振れ角範囲を拡大でき、共振周波数を外れた駆動周波数においても大きな振れ角が維持できる。
図16は、駆動周波数に対する振れ角の特性を示す。駆動周波数を共振周波数に一致させれば、最も振れ角が大きくとれるが、共振周波数付近においては急峻に振れ角が変化する特性を有する。初期の段階では、振動ミラーの駆動制御部において固定電極に印加する駆動周波数を共振振動数に合うよう設定することができるが、温度変化等で共振周波数が変動すると振れ角が激減してしまうため、経時的な安定性に乏しい。また、後述する実施例のように、複数の振動ミラーを有する場合には、それぞれの振動ミラーの共振振動数がばらつくため、共通の駆動周波数で駆動できない。
このような問題点に対しては、前述した本発明の実施例により解決される。また、駆動方法としては、駆動周波数を振動ミラーと捩り梁からなる振動部固有の共振周波数近傍で、比較的振れ角変化の少ない、共振周波数から高めに外れた周波数帯域に設定することにより安定した振れ角で駆動することができる。本実施例において、共振周波数2kHzに対して駆動周波数を2.5kHzとし、印加電圧のゲイン(電圧値)を調整することにより、±5°の振れ角で安定に振動させることができた。この際、振動ミラーの加工誤差による共振振動数のバラツキ(本実施例では300Hz)、温度による共振周波数の変動(本実施例では3Hz)があっても、駆動周波数がいずれの共振周波数にもかからないような周波数帯域内に駆動周波数を設定することが望ましい。例えば、共振周波数が2kHzであれば、2.303Hz以上、または1.697Hz以下に駆動周波数を設定することが望ましい。
前述したように、振動ミラーの寸法を縦2a、横2b、厚さdとし、捩り梁の長さをL、幅cとし、Siの密度ρ、材料定数Gとすると、共振振動数fは、
f=(1/2π)・(K/I)^1/2 =(1/2π)・{Gcd(c^2+d^2)/24LI}^1/2
で表される。ここで、梁の長さLと振れ角θは比例関係にあるため
θ=A/I・f^2(Aは定数)
で表され、振れ角θは慣性モーメントIに反比例し、共振振動数fを上げるには慣性モーメントを低減しないと振れ角θが小さくなってしまう。
そこで、本実施例では振動ミラー反射面の裏側219の基板厚dを格子状に残し、それ以外をd/10以下の厚さまでエッチングにより肉抜きすることで、慣性モーメントを約1/5に低減している。これらの慣性モーメントに利くパラメータ、ねじり梁の寸法誤差等が共振周波数のばらつきを発生させる要因となる。
一方、空気の誘電率ε、電極長さH、印加電圧V、電極間距離δとすると
電極間の静電力F=εHV^2/2δ
となり、振れ角θ=B・F/I(Bは定数)とも表され、電極長さHが長いほど振れ角θが大きくなる。本実施例では、電極を櫛歯状とし、櫛歯数nに対して2n倍の駆動トルクを得ている。このように外周長をできるだけ長くして電極長をかせぐことで、低電圧でより大きい静電トルクが得られるように配慮している。
ところで、振動ミラーの速度υ、面積Eに対して、空気の密度ηとすると
空気の粘性抵抗P=C・ηυ^2・E^3(Cは定数)
が振動ミラーの回転に対向して働く。
本実施例では、第1、第2の基板206、207が接合されてなる振動ミラー基板を、中央部に凹状に振動ミラーの揺動空間を形成し、リード端子を備えたベース基板201上に、反射面を上側に向け、基体の外縁に形成された一対のV溝を結ぶ直線上に捩り梁208を合わせて、第1の基板206下面を基準にして装着し、また、第2の基板207上面にキャップ状に成形された透明製のカバー205を接合して振動ミラー202の揺動空間が密封されるようにしている。光ビームは、カバーに形成されたスリット窓213通じて入出射される。
カバー205の内側には、振動ミラー202と対向して対向ミラー215が、捩り梁と直交する方向に一体的に形成される。2枚の対向ミラー215は、スリット窓213を挟んで屋根状に144.7°の角度をなすよう基板面よりそれぞれ9°、26.3°傾けた傾斜面に、金属被膜を蒸着して対の反射面を形成する。
カバー205の底面は振動ミラー面と平行に形成され、第2の基板207の枠部上面に当接して接合されるが、この際、第2の基板207には、対向ミラーを位置決めするための指標214が両サイドにエッチングによって形成され、これに対向ミラーのエッジを合わせるように基板上でアライメントし、対向ミラーの方向を主走査方向に正確に位置合わせるすることができる。
図17は、光書込装置の副走査断面を示す。図18は、光書込装置の分解斜視図を示す。図19は、光書込装置の概略構成を示す。図19に示すように、本実施例の光書込装置は、前記実施例6の光走査装置を3個使用している。
図17において、半導体レーザ101から射出した光ビームは、カップリングレンズ110、シリンダミラー136を介して、振動ミラー401に対し捩り梁を含む副走査断面内で法線に対して副走査方向に約20°傾けてスリット窓404より入射される。振動ミラー401のミラー面で反射された光ビームは、第1の反射面402に入射され、ここで反射されて振動ミラー401に戻され、さらに反射した光ビームはスリット窓404を超えて第2の反射面403に入射され、振動ミラーとの間で3往復しながら反射位置を副走査方向に移動させ、合計5回の振動ミラーでの反射により再度、スリット窓から射出される。
本実施例では、このように複数回反射を繰り返すことで、振動ミラーの振れ角が小さくても大きな走査角が得られるようにし、光路長を短縮している。
いま、振動ミラーでの総反射回数N、振れ角αとすると、走査角θは2Nαで表せる。本実施例では、N=5、α=5°であるから最大走査角は50°となり、その内、35°を画像記録領域としている。振動ミラーの共振を利用することで印加電圧は微小で済み、発熱も少ないが、前記式から明らかなように記録速度、つまり共振周波数が速くなるに従って、捩り梁のばね定数Kを高める必要があり振れ角がとれなくなってしまう。そこで、上記したように、カバー205の内面側に対向ミラーを設けることで走査角を拡大し、記録速度によらず必要十分な走査角が得られるようにしている。
また、屋根状に対向して反射面を構成し、振動ミラーへの副走査方向での入射角度が繰り返し反射毎に正負、言いかえれば、反射に伴う進行方向が右向き、左向きに振り分けるようにすることで、斜入射に伴う被走査面での走査線の曲がりを抑え、直線性を維持するとともに、光軸と直交する面内での光束の回転が射出時には元の姿勢に戻るようにして、結像性能の劣化がおきないよう配慮している。
図18、図19において、光源である半導体レーザ101は、フレーム部材102に立設された壁に配備された段付きの貫通穴103に反対側からステム外周を基準に圧入され、段差部に鍔面を突き当てて光軸方向を位置決めする。U字状の凹部105にはUV接着剤を介してカップリングレンズ110の光軸が半導体レーザ101からの射出軸と合うように、また、射出光束が平行光束となるように発光点との光軸方向の位置決めを行い、凹部とカップリングレンズとの隙間のUV接着剤を硬化させて固定する。本実施例の場合、3つの光源部を有するが、全て同一構成である。
カップリングレンズ110より射出した光ビームは、一対の取付斜面109に接合配備され副走査方向に負の曲率を有するシリンダミラー136に入射され、副走査方向において振動ミラー面で集束する集束光束として振動ミラーモジュール(光走査装置)130のスリット窓213から入射される。
振動ミラーモジュール(光走査装置)130は、ねじり梁の方向が光軸方向に合うように、フレーム底面側に設けられた段付きの角穴104の裏側よりベース基板201の外縁を基準に位置決めされ、段差部に鍔面を突き当てて振動ミラー面の位置を合わせるが、本実施例の場合は、均等間隔に3つの振動ミラーモジュール(光走査装置)が単一のフレーム部材102により位置決めされる。
各振動ミラーモジュール(光走査装置)130は、プリント基板112に、ベース基板底面から突出したリード端子を各々スルーホールに挿入して半田付けし、フレーム部材102の下側開口をふさぐように基板上面を当接して固定すると同時に、回路接続がなされる。
プリント基板112には、半導体レーザの駆動回路、振動ミラーの駆動回路を構成する電子部品、および同期検知センサ113が実装されており、外部回路との配線が一括してなされる。一端をプリント基板112に結線されたケーブル115は半導体レーザ101のリード端子と接続される。
フレーム部材102は、ある程度剛性が確保できるガラス繊維強化樹脂やアルミダイキャスト等からなり、その両端部には画像形成装置本体の構造体に取付けるためのフランジ部131、133が形成されている。一方のフランジ部131は基準穴を備え、その内径に固定ネジ132の軸部をかん合させ、他方のフランジ部133は長穴を備え、固定ネジ132を貫通して各々バネ座金134を介して感光体に対向させて固定する。この際、基準穴を回転軸としたガタ分で被走査面(感光体)において各振動ミラーモジュール(光走査装置)のいずれかで走査された走査線が被走査面の移動方向yと直交する方向xに平行となるよう調節される。x方向は主走査方向、yは副走査方向である。
フレーム部材102の上面は角穴104の裏側に設けられた各振動ミラーモジュール(光走査装置)のミラー法線方向の突き当て面と平行な面となし、走査レンズを収納するハウジング106の底面より突出した2本の突起135をフレーム部材の係合穴に挿入して同面上での位置決めを行い、4隅をネジ止めして配備される。本実施例では、ネジ137はフレーム部材の貫通穴を介してプリント基板112に螺合され、フレーム部材を挟むように3部材一体に結合され、この後に上記半田付けがなされる。
ハウジング106には結像手段を構成する第1の走査レンズ116、第2の走査レンズ117が主走査方向に配列され、各々の走査領域がわずかに重なるように位置決めされて一体的に保持される。
第1の走査レンズ116は、副走査方向基準面の中央に突出され主走査方向の位置決めを行う突起120、および両端を係合して光軸方向の位置決めを行う平押面119を入射面側、出射面側各々に備え、ハウジングに一体形成された溝122に突起120を係合し、一対の切欠121の各々に各端の平押面119を挿入し波板バネ143で入射面側に押し付け、同面内での姿勢を保持することで、光軸と直交する同一面に走査レンズ同士の相対的な配置を合わせ、副走査方向基準面をハウジングから突出した一対の突起142の先端に突き当てることで、光軸と直交する面内での位置決めがなされて副走査方向の設置高さが決定され、カバー138と一体形成された板バネ141で押圧支持される。
一方、第2の走査レンズ117は、同様に副走査方向基準面の中央に突出され主走査方向の位置決めを行う突起123、両端に光軸方向の位置決めを行う平押面144を備え、ハウジングに一体形成された溝122に突起123を係合し、切欠121に平押面144を挿入し波板バネ143で出射面側に押し付け姿勢を保持するとともに、副走査方向基準面をハウジングから突出した突起145および副走査方向に繰り出し自在な調節ネジ146の先端に突き当てて設置高さを位置決めし、カバー138と一体形成された板バネ141で押圧支持される。147はカバー138を固定するネジである。
図19に示すように、本実施例の光書込装置は、実施例の光走査装置130を3個使用している。各光走査装置130に対応して、半導体レーザ101、カップリングレンズ110、シリンダレンズ136,第1の走査レンズ116,第2の走査レンズ117が装備され、各光走査装置130により被走査面(感光体ドラムの表面)を分割走査する。図19において、xは主走査方向、yは副走査方向である。第2の走査レンズ117の近傍には主走査の同期検知のために、走査光ビームをプリント基板112に実装された同期検知センサ113へ向けて反射するためのミラー128が配設されている。
なお、本実施例は、3個の光走査装置130を主走査方向に配列したが、光走査装置130の個数は必要に応じて増減し得ることは当然である。
図20は、本実施例に係る画像形成装置(カラーレーザプリンタ)の構成を示す。実施例8は、本発明の光走査装置を用いて構成された4つの光書込装置500によって各々に対応した感光体ドラム504に1色ずつ画像形成され、転写ベルト501の回転につれて色重ねがなされるタンデム方式のカラーレーザプリンタに適用した例であり、本実施例では、光ビームの射出方向が下向きとなるように光書込装置を配備している。
転写ベルト501は駆動ローラと2本の従動ローラとで支持され、移動方向に沿って均等間隔で各感光体ドラム504が配列される。感光体ドラム504の周囲には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックも各色に対応したトナーを補給する現像ローラ502およびトナーホッパ部503が配備され、また転写された後の残留トナーをブレードで掻き取り備蓄するクリーニング部508が一体的に配備される。
各色画像は、転写ベルト501の端に形成されたレジストマークを検出するセンサ505の信号をトリガとして、副走査方向の書出しタイミングをずらして、各光書込装置500によって潜像が形成され、現像部にてトナーをのせて転写ベルト501上で順次画像を重ねていく。用紙は給紙トレイ507から給紙コロ506により供給され、4色目の画像形成にタイミングを合わせてレジストローラ510により送り出され、転写部511にて転写ベルト501から4色同時に転写される。トナー像が転写された用紙は搬送ベルト515により定着器に送られる。転写されたトナー像は定着ローラ512により定着され、排出ローラ513により排紙トレイ514に排出される。
本実施例は、上記したように画像形成装置を構成しているので、従来のポリゴンミラーに比べ、消費電力が小さく、騒音も小さい等の効果を得ることができる。
本発明の実施例1に係る光走査装置とその製造方法を示す。
金属および半導体表面の化学吸着特性を示す。
本発明の実施例2に係る光走査装置及びその製造方法を示す。
本発明の実施例3に係る光走査装置及びその製造方法を示す。
封止気圧を変えたときの周波数特性の変化を示す。
封止気圧と振れ角の関係を示す。
密閉封止空間におけるガス吸着/放出による周波数変化の対応関係を示す。
共振周波数の個体バラツキを示す。
駆動電圧と振れ角の関係を示す。
揺動空間の気圧を調整する手段を設けた、実施例4の光走査装置を示す。
振動ミラーの各寸法を示す。
本発明の実施例6に係る光走査装置を示す。
光走査装置を構成する第1、第2の基板を示す。
振動ミラーの振れ角に対応して各電極間に発生する静電トルクの様子を示す。
電極の断面を示す。
駆動周波数に対する振れ角の特性を示す。
光書込装置の副走査断面を示す。
光書込装置の分解斜視図を示す。
光書込装置の概略構成を示す。
本発明の実施例に係る画像形成装置の構成を示す。
符号の説明
1 マイクロミラー
2 振動ミラー
3 捩り梁
4 質量変動部
5 スリット溝