JP4409724B2 - 差動プッシュプル方法及び光ディスク装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DVD或いはSDVD等の高密度な光ディスク(光磁気ディスクを含む)のトラッキング制御に適した差動プッシュプル方法及び光ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光ピックアップ装置においては、記録、再生又は消去動作に際して、照射ビームを光ディスクのトラックに追従させるため、トラッキングサーボ制御が必要とされる。このトラッキングサーボ制御に供するため、トラッキングエラー信号を検出し、トラックずれを補正するようにしている。
【0003】
このようなトラッキングエラー信号の検出方式としては、種々の方式があり、例えば、3ビーム方式やプッシュプル方式がある。しかし、3ビーム方式はディスクのトラック方向の傾きによってオフセットが生じ、プッシュプル方式はディスクのラジアル方向の傾きによってオフセットが生じるという欠点がある。
【0004】
これらの欠点を解消した方式として、差動プッシュプル方式がある。この方式は、例えば、光メモリシンポジウム’86,12月18日虎ノ門パストラル(東京)において「新しいトラッキングサーボ方式 差動プッシュプル法」により報告されている。この差動プッシュプル方式も、メインビームとサブビーム(サイドビーム)との3ビームを用いる方式であるが、サブビームのスポットの照射位置をトラックピッチの1/2だけずれた位置とし、メインビーム、サブビームの各々の反射光のプッシュプル信号を検出し、その差動をとることによりトラッキングエラー信号を検出する方式である。
【0005】
図6にトラッキングエラー信号の検出を差動プッシュプル方式により行うようにした従来の光ピックアップ装置の一例を示す。まず、半導体レーザ1から出射されたレーザビームは、コリメートレンズ2により平行ビームとされた後、回折格子3を経ることにより、複数のビームに分割される。分割されたこれらのビームは、ビームスプリッタ4を透過した後、対物レンズ5により光ディスク6面に微小なスポットSM ,SS1,SS2として集光照射される。これらのスポットSM ,SS1,SS2の光ディスク6からの反射ビームは、再び、対物レンズ5を透過して平行ビームとなり、ビームスプリッタ4で入射ビームと分離される形で反射されて一面が凸レンズ、他面がシリンドリカルレンズからなる複合レンズ7に向かう。そして、この複合レンズ7を透過して集光される形で受光部8により受光される。
【0006】
このような3ビームに対応して、受光部8は図7に示すように、8分割受光素子として形成されている。即ち、メインスポットSM に基づく0次光反射ビーム9aを受光する4分割受光素子10aと、サブスポットSS1,SS2に基づく±1次光反射ビーム9b,9cを受光するトラック横断方向に2分割された2分割受光素子10b,10cとより形成されている。
【0007】
次に、このような受光部8の検出信号を信号処理してトラッキングエラー信号ΔTを検出するための検出系の構成例を図8により説明する。ここに、4分割受光素子10aの各受光領域から得られる検出信号をA〜D、2分割受光素子10bの2つの受光領域から得られる検出信号をE,F、2分割受光素子10cの2つの受光領域から得られる検出信号をG,Hとする。
【0008】
まず、4分割受光素子10aから得られる検出信号A〜Dの内、トラック横断方向において同一側に位置する信号同士の和をとる加算器11a,11bと、これらの加算器11a,11bの出力信号間の差をとる差動器11cとが設けられている。また、2分割受光素子10bから得られる検出信号E,F間の差をとる差動器11dと、2分割受光素子10cから得られる検出信号G,H間の差をとる差動器11eとが設けられている。さらに、これらの差動器11d,11eの出力信号同士の和をとる加算器11fと、加算器11fの出力を定数P倍する増幅器11gとが設けられている。そして、差動器11cから得られる信号と増幅器11gを経て得られる信号との間の差をとる差動器11hが設けられている。これにより、トラッキングエラー信号ΔTは、
ΔT={(A+D)−(B+C)}−P{(E−F)+(G−H)}
により算出される。ただし、定数Pは、0次光によるメインスポットSM と、±1次光によるサブスポットSS1,SS2との光量比で決まる値である。これらの加算器11a,11b、差動器11c〜11e、加算器11f、増幅器11g及び差動器11hにより差動プッシュプル方式検出系11が形成されている。
【0009】
なお、情報信号RF、フォーカスエラー信号ΔFは、
RF=A+B+C+D
ΔF=(A+C)−(B+D)
により算出される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年では、光ディスクはより一層の高密度・大容量化を図るために、トラックピッチを狭める傾向にある。例えば、現行のCDではトラックピッチが1.6μmだったものが、DVDでは0.74μmとされ、さらに大容量のSDVDではトラックピッチがさらに狭くなる。
【0011】
このような狭いトラックピッチの光ディスクに対して、差動プッシュプル方式を用いてトラッキング制御を行うと、光ディスクの内外周で差動プッシュプル振幅が変動してしまう不具合を生ずる。
【0012】
これは、以下の理由による。光ディスクは円形であるためにグルーブG、ランドLにより形成されるトラックは弧を描く。そこで、図1に示すように、3つのスポットのスポット間隔をa、グルーブG・ランドL間の距離である(トラックピッチ)/2をb、タンジェンシャル方向(円周方向)にずれがない場合のスポット位置をSpot1、タンジェンシャル方向にずれがある場合のスポット位置をSpot2、タンジェンシャル方向にずれがない場合のディスク半径方向をRadial1、タンジェンシャル方向にずれがある場合のディスク半径方向をRadial2とした場合、仮に、タンジェンシャル方向の位置ずれΔがあると、Spot1で示す本来の3スポット位置に対して、Spot2で示すようなずれた3スポット位置ではトラックに直交しないためトラックピッチが狭まってしまう。従って、タンジェンシャル方向にずれた3スポット位置ではメインスポットSMがトラックのグルーブG中心上にあっても、サブスポットSS1,SS2はランドL中心上になくサブスポットSS1,SS2によるプッシュプルの振幅は小さくなる。その結果、差動プッシュプルの信号も小さくなってしまう。この影響は、光ディスクのラジアル位置(半径位置)が変わると変化し、円弧が小さくなるディスク内周側ほど差動プッシュプル振幅は小さくなっていく。結果として、適正なトラッキング制御を行えないこととなってしまう。
【0013】
そこで、本発明は、差動プッシュプル振幅の変動率を許容範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御を可能とする差動プッシュプル方法及び光ディスク装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明によれば、レーザ光源、ビーム分割用の格子間隔を可変制御可能な回折格子及び対物レンズを搭載した光ピックアップを備え、前記対物レンズを通るレーザビームにより光ディスク上に情報の記録、再生又は消去用のメインスポットを形成すると共に、前記再生又は消去用のメインスポットの他に、トラッキングエラー信号を得るための2つのサブスポットを前記再生又は消去用のメインスポットに対してトラックピッチの1/2ずれた位置に形成し、前記光ディスクから反射される前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットの反射ビームを受光部で受光し各々のプッシュプル信号を検出して、その差動をとる差動プッシュプル法により前記トラッキングエラー信号を検出する光ディスク装置において、前記光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置ずれをΔ、前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットによる3スポットの回転ずれをΔρ、前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットの間隔をa、前記光ディスクのトラックピッチの1/2をb、前記光ディスクの内周位置をRin、前記光ディスクの外周位置をRoutとし、前記光ディスクの半径方向内外周での差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)を
【数2】
Figure 0004409724
としたとき、前記差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)が、50%≧I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)………条件式(1)
を満たすように前記光ディスクの半径方向の位置に応じて前記回折格子の格子間隔を可変制御することで前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットの間隔aを変化させることを特徴とする光ディスク装置が提供される。
【0018】
従って、光ディスク内外周での差動プッシュプル振幅の変動率に関わるパラメータb,Rin,Routとともにタンジェンシャル方向の位置ずれΔ、3スポットの回転ずれΔρ又はスポット間隔aに関して、条件式(1)を満たすように最適条件を指定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能な光ディスク装置を提供できる。
また、スポット間隔は回折格子の格子間隔により決まるので、条件式(1)を満たすように、光ディスクの半径方向の位置に応じて回折格子の格子間隔を可変制御することでスポット間隔aを設定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能となる。
【0019】
ここに、光ディスクの半径方向内外周での差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)の数式は、スポット間隔aとトラックピッチの1/2である値bとの比及び3スポットの回転ずれΔρとを基準として、タンジェンシャル方向に或る位置ずれΔがあった場合の光ディスク内周位置Rinでの差動プッシュプル振幅の変動と光ディスク外周位置Routでの差動プッシュフル振幅の変動との違いを変動率として数式的に示したものである。
【0026】
請求項記載の発明は、請求項記載の光ディスク装置において、前記光ピックアップに対してタンジェンシャル方向の位置調整機構を備え、前記光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置ずれΔが前記条件式(1)を満たすように前記位置調整機構により前記光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置を調整するようにした。
【0027】
従って、条件式(1)を満たすように、位置調整機構により光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置を調整することでその位置ずれΔを設定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能となる。
【0028】
請求項記載の発明は、請求項1または2記載の光ディスク装置において、前記回折格子として、前記前記条件式(1)を満たす前記3スポットの回転ずれΔρを持たせるように格子方向の角度が調整された回折格子を備える。
【0029】
従って、3スポットの回転ずれは回折格子の格子方向の角度により決まるので、3スポットの回転ずれとして条件式(1)を満たす最適な3スポットの回転ずれΔρを持たせるように格子方向の角度が調整された回折格子を用いる条件下に、条件式(1)を満たすように、光ディスク内外周での差動プッシュプル振幅の変動率に関わるパラメータb,Rin,Routとともにタンジェンシャル方向の位置ずれΔ、スポット間隔aを設定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能となる。
【0030】
請求項記載の発明は、請求項1記載の光ディスク装置において、前記回折格子に対してその格子方向の角度調整機構を備え、前記3スポットの回転ずれΔρが前記条件式(1)を満たすように前記角度調整機構により前記回折格子の格子方向の角度を調整するようにした。
【0031】
従って、3スポットの回転ずれは回折格子の格子方向の角度により決まるので、条件式(1)を満たすように、角度調整機構により回折格子の格子方向の角度を調整することで3スポットの回転ずれΔρを設定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能となる。
【0034】
請求項記載の発明は、請求項1記載の光ディスク装置において、前記条件式(1)を満たすように、前記光ディスクの半径方向の位置により変動する差動プッシュプル振幅を一定に制御する信号処理回路を備える。
【0035】
従って、元々光ディスクの半径方向の位置により変動する差動プッシュプル振幅を信号処理回路により一定となるように制御することにより、回路上での処理によって、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能となる。
【0036】
請求項記載の発明は、請求項1ないしのいずれか一項記載の光ディスク装置において、差動プッシュプル振幅のゲインを調整するゲイン調整回路を備える。
【0037】
従って、前述した各請求項記載の発明による場合、差動プッシュプル振幅のゲインの絶対値が低下してしまうことがあるが、ゲイン調整回路によりトラッキング制御に十分な振幅となるように調整することにより、適正に対処することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。図6ないし図8で示した部分と同一部分は同一符号を用いて示し、説明も省略する。特に、光ピックアップ装置としての基本構成は図6に示した場合と同様である。
【0039】
本実施の形態では、トラッキングエラー信号ΔTを検出するための差動プッシュプル方法に関して、光ディスク6の内外周での差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値の範囲内に抑制する条件を明らかにするものである。
【0040】
この点について、図1を参照して説明する。図1において、
光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置ずれ:Δ
メインスポットSM、サブスポットSS1,SS2の回転ずれ:Δρ
スポット間隔:a
トラックピッチの1/2:b
光ディスク6の内周位置:Rin
光ディスク6の外周位置:Rout
差動プッシュプル振幅の変動率の許容値:I
とした場合、
【数3】
Figure 0004409724
で示される光ディスク6の半径方向内外周での差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)が、
50%以下≧I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)………条件式(1)
を満たすように各要素を設定するようにしたものである。
【0041】
ここに、上述の差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)を示す数式は、スポット間隔aとトラックピッチの1/2である値bとの比及び3スポットの回転ずれΔρとを基準として、タンジェンシャル方向に或る位置ずれΔがあった場合の光ディスク6の内周位置Rinでの差動プッシュプル振幅の変動と外周位置Routでの差動プッシュフル振幅の変動との違いを変動率として数式的に示したものである。
【0042】
従って、基本的に、光ディスク6の内外周での差動プッシュプル振幅の変動率に関わるパラメータb,Rin,Routとともにタンジェンシャル方向の位置ずれΔ、3スポットの回転ずれΔρ又はスポット間隔aに関して、条件式(1)を満たすように最適条件を指定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能となる。
【0043】
以下、具体的に条件式(1)を満たすための例を挙げて説明する。その一例として、まず、差動プッシュプル振幅の変動率の許容値IをI=50%に指定し、この条件件下で条件式(1)を満たすようにする。つまり、差動プッシュプル振幅の変動率の許容値Iは当該光ディスク装置における信号を処理するLSIにより決まるが、この許容値IをI=50%に指定した条件下で条件式(1)を満たすように、パラメータb,Rin,Routとともに位置ずれΔ、3スポットの回転ずれΔρ又はスポット間隔aに関する条件を適正に設定すればよい。
【0044】
第二に、条件式(1)を満たすための条件のうち、特に、最適なスポット間隔aを指定することにより差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値Iの範囲内に抑えるようにすればよい。即ち、グルーブG上に位置するメインスポットMSに対してサブスポットSS1,SS2が隣りのランドL上に位置する状態が条件式(1)を満たす上で最適なスポット間隔aであるので、図3に示すように、スポット間隔aが最適な値をとるように指定することは条件式(1)を満たす上で効果的となる。ここに、このようなスポット間隔aは回折格子3の格子間隔により決まるので、最適なスポット間隔aを持たせる格子間隔の回折格子3を用いることにより実現できる。
【0045】
第三に、上述の第二の場合と同様であるが、特に回折格子3として電気的又は磁気的な作用によって格子間隔を可変できる可変制御可能な回折格子を用い、光ディスク6に対するスポットの半径方向の位置に応じて格子間隔を可変制御させることでスポット間隔aを調整するようにすればよい。この場合も、グルーブG上に位置するメインスポットMSに対してサブスポットSS1,SS2が隣りのランドL上に位置する状態が条件式(1)を満たす上で最適なスポット間隔aであるので、半径位置に応じて、スポット間隔aが最適な値をとるように格子間隔を可変制御することは条件式(1)を満たす上でより効果的となる。即ち、スポットの半径位置によらず、常にランドL上にサブスポットSS1,SS2を追従させることができる。
【0046】
第四に、条件式(1)を満たすための条件のうち、特に、光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置ずれΔを指定することにより差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値Iの範囲内に抑えるようにすればよい。即ち、この位置ずれΔが小さいほど条件式(1)を満たす上で効果的となる。ここに、このような光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置ずれΔの指定は、当該光ピックアップを光ディスク装置のドライブに組み込む際に、タンジェンシャル方向に位置調整機構(図示せず)を用いて、この位置ずれΔが小さくなるように組み込むことにより実現できる。
【0047】
第五に、条件式(1)を満たすための条件のうち、特に、3スポットの回転ずれΔρを指定することにより差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値Iの範囲内に抑えるようにすればよい。即ち、グルーブG上に位置するメインスポットMSに対してサブスポットSS1,SS2が隣りのランドL上に位置する状態が条件式(1)を満たす上で最適な3スポットの回転ずれΔρ=0であるので、図4に示すように、3スポットの回転ずれΔρを小さくするほど条件式(1)を満たす上で効果的となる。ここに、このような3スポットの回転ずれΔρは、回折格子3の格子方向の角度により決まるので、最適な3スポットの回転ずれΔρを持たせる格子方向の角度となるように回転調整した回折格子3を用いることにより実現できる。
【0048】
第六に、上述の第五の場合と同様であるが、図2に示すように、特に回折格子3に対して回転制御を行う角度調整機構としての回転調整機構12を付加し、最適な3スポットの回転ずれΔρとなるように回転調整機構12により回折格子3を水平面内で回転させて格子方向の角度を可変制御させるようにしたものである。特に、半径位置に応じて、条件式(1)を満たすように格子方向の角度を可変制御することはより効果的となる。即ち、スポットの半径位置によらず、常にランドL上にサブスポットSS1,SS2を追従させることができる。
【0049】
第七に、条件式(1)を満たす差動プッシュプル振幅の変動率の許容値Iを用いればよい。即ち、許容値I側を緩和させるものである。つまり、条件式(1)を満たす上で、信号を取り込む信号処理用のLSI側で許容可能な範囲でこの変動率の許容値Iを広くとるようにすることで(例えば、I=60%の如く)、より緩和された条件下に、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能となる。この場合には、光ピックアップ側について特に対策を講ずる必要がなく、実現が容易である。
【0050】
第八に、条件式(1)を満たすように、光ディスク6の半径方向の位置により変動する差動プッシュプル振幅を一定に制御する信号処理回路を備えればよい。つまり、元々光ディスク6の半径方向の位置により変動する差動プッシュプル振幅を信号処理回路により回路的に一定となるように制御することにより、回路上での処理によって、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができる。具体的には、例えば図4に示すように、差動プッシュプル信号を処理する回路の前に、信号処理回路としてゲイン調整回路13を設けて、スポットのディスク半径位置に応じてゲインを制御することにより実現できる。
【0051】
なお、条件式(1)を満たすようにする上述のような対策を講じた光ディスク装置においては、差動プッシュプル振幅のゲインの絶対値が低下してしまうことがある。そこで、差動プッシュプル信号を処理する回路の前段にゲイン調整回路を設け、トラッキング制御に十分な振幅となるように調整することが好ましい。これにより、差動プッシュプル振幅のゲインの絶対値が低下するようなことがあっても、適正に対処することができる。
【0052】
【発明の効果】
前記光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置ずれをΔ、前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットによる3スポットの回転ずれをΔρ、前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットの間隔をa、前記光ディスクのトラックピッチの1/2をb、前記光ディスクの内周位置をRin、前記光ディスクの外周位置をRoutとし、前記光ディスクの半径方向内外周での差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)を
【数4】
Figure 0004409724
としたとき、前記差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)が、50%以下≧I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)………条件式(1)
を満たすように前記光ディスクの半径方向の位置に応じて前記回折格子の格子間隔を可変制御することで前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットの間隔aを変化させることにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能な光ディスク装置を提供することができる。
また、スポット間隔は回折格子の格子間隔により決まることから、前述の条件式(1)を満たすように、光ディスクの半径方向の位置に応じて回折格子の格子間隔を可変制御することでスポット間隔aを設定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能な光ディスク装置を提供することができる。
【0057】
請求項記載の発明によれば、請求項記載の光ディスク装置において、前述の条件式(1)を満たすように、位置調整機構により光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置を調整することでその位置ずれΔを設定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能な光ディスク装置を提供することができる。
【0058】
請求項記載の発明によれば、請求項1または2記載の光ディスク装置において、3スポットの回転ずれは回折格子の格子方向の角度により決まることから、3スポットの回転ずれとして前述の条件式(1)を満たす最適な3スポットの回転ずれΔρを持たせるように格子方向の角度が調整された回折格子を用いる条件下に、条件式(1)を満たすように、光ディスク内外周での差動プッシュプル振幅の変動率に関わるパラメータb,Rin,Routとともにタンジェンシャル方向の位置ずれΔ、スポット間隔aを設定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能な光ディスク装置を提供することができる。
【0059】
請求項記載の発明によれば、請求項記載の光ディスク装置において、3スポットの回転ずれは回折格子の格子方向の角度により決まることから、前述の条件式(1)を満たすように、角度調整機構により回折格子の格子方向の角度を調整することで3スポットの回転ずれΔρを設定することにより、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能な光ディスク装置を提供することができる。
【0061】
請求項記載の発明によれば、請求項記載の光ディスク装置において、元々光ディスクの半径方向の位置により変動する差動プッシュプル振幅を信号処理回路により一定となるように制御するようにしたので、回路上での処理によって、差動プッシュプル振幅の変動率をその許容値50%以下の範囲内に抑えることができ、適正なトラッキング制御が可能な光ディスク装置を提供することができる。
【0062】
請求項記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれか一項記載の光ディスク装置において、差動プッシュプル振幅のゲインの絶対値が低下してしまうことがあるが、ゲイン調整回路によりトラッキング制御に十分な振幅となるように調整するようにしたので、トラッキング制御に影響しないように適正に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の振幅変動率に関与する要素を示す説明図である。
【図2】光ディスク装置を示す概略構成図である。
【図3】スポット間隔aの調整に関する説明図である。
【図4】回転ずれΔρの調整に関する説明図である。
【図5】本実施の形態の受光部の構成例を示すブロック図である。
【図6】差動プッシュプル法を用いた従来の光ディスク装置を示す概略構成図である。
【図7】その受光部の構成例を示す正面図である。
【図8】本実施の形態の受光部の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 レーザ光源
3 回折格子
5 対物レンズ
6 光ディスク
8 受光部
12 角度調整機構
13 信号処理回路
SM メインスポット
SS1,SS2 サブスポット

Claims (6)

  1. レーザ光源、ビーム分割用の格子間隔を可変制御可能な回折格子及び対物レンズを搭載した光ピックアップを備え、
    前記対物レンズを通るレーザビームにより光ディスク上に情報の記録、再生又は消去用のメインスポットを形成すると共に、前記再生又は消去用のメインスポットの他に、トラッキングエラー信号を得るための2つのサブスポットを前記再生又は消去用のメインスポットに対してトラックピッチの1/2ずれた位置に形成し、前記光ディスクから反射される前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットの反射ビームを受光部で受光し各々のプッシュプル信号を検出して、その差動をとる差動プッシュプル法により前記トラッキングエラー信号を検出する光ディスク装置において、
    前記光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置ずれをΔ、前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットによる3スポットの回転ずれをΔρ、前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットの間隔をa、前記光ディスクのトラックピッチの1/2をb、前記光ディスクの内周位置をRin、前記光ディスクの外周位置をRoutとし、前記光ディスクの半径方向内外周での差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)を
    Figure 0004409724
    としたとき、前記差動プッシュプル振幅の変動率を表す関数I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)が、50%≧I(Δ,Δρ,a,b,Rin,Rout)………条件式(1)
    を満たすように前記光ディスクの半径方向の位置に応じて前記回折格子の格子間隔を可変制御することで前記再生又は消去用のメインスポット及び2つのサブスポットの間隔aを変化させることを特徴とする光ディスク装置。
  2. 前記光ピックアップに対してタンジェンシャル方向の位置調整機構を備え、前記光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置ずれΔが前記条件式(1)を満たすように前記位置調整機構により前記光ピックアップのタンジェンシャル方向の位置を調整するようにしたことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
  3. 前記回折格子として、前記条件式(1)を満たす前記3スポットの回転ずれΔρを持たせるように格子方向の角度が調整された回折格子を備えることを特徴とする請求項1または2記載の光ディスク装置。
  4. 前記回折格子に対してその格子方向の角度調整機構を備え、前記3スポットの回転ずれΔρが前記条件式(1)を満たすように前記角度調整機構により前記回折格子の格子方向の角度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
  5. 前記条件式(1)を満たすように、前記光ディスクの半径方向の位置により変動する差動プッシュプル振幅を一定に制御する信号処理回路を備えることを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
  6. 差動プッシュプル振幅のゲインを調整するゲイン調整回路を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項記載の光ディスク装置。
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