JP4408894B2 - トンネル用防音壁 - Google Patents

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Description

本発明は、トンネル工事における発破音等の騒音を低減するためのトンネル用防音壁に関するものである。
トンネル工事において掘削に発破を使用する場合、近隣集落への振動及び騒音防止対策が大きな課題になっている。かかるトンネル工事での騒音対策としては、通常、坑口から切羽までの間に防音壁を設置するのが一般的であり、その一例として、切羽側に面した壁板と坑口側に面した壁板との間に空隙を設け、この空隙内に砂を充填するようにしたトンネル用防音壁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
実用新案登録第2561582号公報
上記従来のトンネル用防音壁では、トンネル延長方向に並ぶ壁板間に砂を充填する作業をトンネル内部で行う必要がある。しかし、かかるトンネル内部での作業では使用可能な建設機械の大きさに制約があり、大型クレーン車などの大きな建設機械を使用することができない。よって、上記従来のトンネル用防音壁は、当該防音壁を施工するのに非常に時間がかかるという欠点を有している。また、前後一対の壁板間に砂を充填してなる防音壁の場合、低周波音域で減衰されるのが一回だけであるから、砂層の厚さによっては充分な防音効果が得られない場合がある。
さらに、上記従来のトンネル用防音壁は固定式であるため、このトンネル用防音壁より奥で覆工コンクリートを打設するためには、当該トンネル用防音壁を一旦解体して撤去してからスライドセントル等の移動型枠装置を入れ、その後に再び前記トンネル用防音壁を組み立てる必要がある。このため、作業が煩雑であるばかりか、作業効率が極めて悪いという欠点を有している。
また、通常はトンネルの坑口側及び反対坑口側の面壁を1台のスライドセントルで施工するため、スライドセントルの覆工コンクリート打設作業が終了して反対坑口側の面壁施工が終了しないと坑口側の面壁施工を着手することができない。そして、トンネル延長が長い場合、トンネルの曲線半径が小さい場合等のように、スライドセントルを坑口まで戻すことが困難な場合には、坑口側の面壁施工はバラセントルにより行われるが、この方法はコストが高いという欠点を有している。
以上の事情に鑑み、本発明は、施工が簡単で作業効率が良く且つ十分な防音効果を奏するとともに坑口に面壁を構築する際に内型枠を支持することができるトンネル用防音壁を提供することを目的とする。
本発明のトンネル用防音壁は、堀削中のトンネルの切羽側に面して設置される切羽側壁部とこの切羽側壁部に空間を介して対向する坑口側壁部とを有する壁体と、この壁体の下部に配設され且つレール上を転動可能な車輪とを備えているトンネル用防音壁であって、前記両側壁部が低周波音域での遮音効果が高い重量物を含んでおり、坑口に構築する面壁の内周面を成型するための内型枠を支持する支持部が前記両側壁部の間に設けられていることを特徴としている。
上記トンネル用防音壁は、車輪を備えた移動式の防音壁であるので、トンネル内ではなく坑口前で組み立てることができる。これにより、トンネル内では使用できなかった大きな建設機械(例えば大型クレーン車等)を使用して施工することができる。また、移動式であるのでスライドセントルをトンネルの奥に入れる際にも移動させておけばよいので防音壁を解体する必要がなく、作業効率が良い。そして、切羽側壁部と坑口側壁部とは、いずれも低周波音域での遮音効果が高い重量物を含むとともに、互いに離れて設置されるので、低周波音域の減衰が少なくとも2回行われ、この点で防音効果が向上する。さらに、面壁の内周面を成型するための内型枠を支持する支持部が両側壁部の間に設けられているので、防音壁が不要になったときに坑内から坑口付近に移動させて、支持部に内型枠を取り付け、内型枠に壁面の型枠を設置すれば面壁を施工することができる。これにより、スライドセントルの覆工コンクリート打設作業終了を待たなくても坑口に面壁を構築することができる。
上記トンネル用防音壁において、両側壁部を送気用ダクト及び排気用ダクトが貫通していることが好ましい。
この場合、排気用ダクトから切羽とトンネル用防音壁との間の空間にある発破ガス、コンクリート粉塵等を含む濃度の濃い汚染空気を排気し、送気用ダクトから当該空間に新鮮な空気を送ることができるので、換気効率を向上することができる。
上記トンネル用防音壁において、両側壁部の間に、消音部材である拡散片が設置されていることが好ましい。
この場合、拡散片により、一方向(切羽側)から発生した騒音を様々な方向に反射させることにより騒音を分散させることができる。これにより、両側壁部の間の空間内で騒音が分散されることで吸音効果が高まり、騒音が増幅するのを防ぐことができる。
本発明のトンネル用防音壁によれば、施工が簡単で作業効率が良く且つ十分な防音効果を奏するとともに坑門工の型枠をして使用することができる。
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
なお、以下の各図面において、肉厚の薄い部分の断面については、適宜単純な線で示すこととする。
図1は、本発明の一実施の形態であるトンネル用防音壁1を切羽側から見た正面図であり、図2はその側面図である。
図1に示すように、トンネル用防音壁1は、略半円形の形状を有する壁体2と、この壁体2の下部に配設された車輪3とを備えている。
壁体2は、図2に示すように、切羽側に面して設置される切羽側壁部4と、この切羽側壁部4に空間kを介して対向する坑口側壁部5とを有している。切羽側壁部4及び坑口側壁部5の壁体形状は、トンネルの内壁面W1の断面形状とほぼ一致しており、図1に示すように、その壁面積はトンネルの内壁面W1よりも若干小さくされている。そして、切羽側壁部4及び坑口側壁部5の外周縁には、トンネルの内壁面W1全域を被覆させ、密封性を高めるため、それぞれシール部6が設けられている。
車輪3は、壁体2の下部に設置され、且つトンネル内に敷設されたレールr上を転動可能である。この車輪3により、トンネル用防音壁1は、坑内を移動することが可能となる。
また、トンネル用防音壁1には観音開きタイプの防音扉20や人道扉21が設けられており、トンネル内への機材や人員等の出入りが可能とされている。なお、後述する重量パネル15と同様に、防音扉20や人道扉21の内部を土、砂又は液体等の比重の大きい不定形物で充填してもよい。また、防音扉20の上側には、ダクト(風管)7が両側壁部4,5を貫通している。
トンネル用防音壁1は、主として鉄骨よりなる骨組みに複数の板状部材を取り付けることにより構成されており、前記各壁部4,5は、それぞれ骨組みに複数の小壁部材(後述する重量パネル15)を取り付けることにより構成されている。骨組みは、その下部に車輪3が設置される台車8と、この台車8上に設置された門型の架台9とを有している。この架台9は、鉛直方向に延びる二対の脚体91と、この二対の脚体91の上部間に構設された架体92とで構成されている。骨組みはさらに、前記脚体91以外の鉛直方向に延びる縦梁部材10と、水平方向に延び前記脚体91及び縦梁部材10同士を連結する横梁部材11と、トンネル用防音壁1を地面上に安定して立設させるための脚部12と、筋交い13と、前記切羽側壁部4及び坑口側壁部5の外周縁部において略半円形状に延びる外枠部材14とを有している。
図3は、図1のY−Y線における断面図である。
切羽側壁部4及び坑口側壁部5はそれぞれ、その壁幅方向に所定間隔おきに配設された脚体91と、縦梁部材10と、前記外枠部材14と、低周波音域での遮音効果が高い複数枚の重量パネル15とを備えている。図3に示すように、脚体91、縦梁部材10及び外枠部材14はH鋼(H型鋼)よりなるとともに当該H鋼の両溝m1,m2,m3,m4,m5及びm6がトンネル用防音壁1の壁幅方向両側に位置するように配向している。そして、隣接する脚体91と縦梁部材10との互いに対向する溝m2,m3に、及び隣接する縦梁部材10及び外枠部材14の互いに対向する溝m4,m5に、重量パネル15の両縁部を嵌合することによって当該重量パネル15が脚体91と縦梁部材10との間及び縦梁部材10と外枠部材14との間に架け渡されている。そして、複数の重量パネル15が上下方向に積み重ねられている。
重量パネル15は、扁平な直方体状等の適当な形状に形成された中空ボックス15aと、この中空ボックス15aの内部に充填された砂15bとを有している。中空ボックス15aの壁厚方向両面は略波形の凹凸を有する金属薄板により構成されている。なお中空ボックス15a内への充填物は砂15bに限られず、土、水などでもよい。この重量パネル15を用いた結果、切羽側壁部4及び坑口側壁部5は、低周波音域での遮音効果が高い重量物より構成されたものとなっている。
なお、「低周波音域での遮音効果が高い重量物」としては、土、砂、砂利、石、コンクリート、ポーラスコンクリート、水等の液体、等を例示することができる。この中でも特に砂や土は、不定形であり重量パネル15の製造コスト低減に寄与し、且つ低周波音域での遮音効果が高いので好ましい。
トンネル用防音壁1には、トンネル断面全域を被覆させ、密閉性を向上させるため、切羽側壁部4及び坑口側壁部5の外周縁にシール部6が設けられている。このシール部6は、図2に示すように、切羽側壁部4及び坑口側壁部5のそれぞれの周縁部において、切羽側と坑口側に取り付けられる木製の矢板61と、その矢板61間の空隙に充填された砂62とから構成される。砂62は直接充填してもよいが、土嚢袋等に充填したものを用いてもよい。また、切羽側と坑口側に取り付けられるのは木製の矢板61に限られず、スライド式リング、ゴム板等であってもよい。
トンネル用防音壁1の移動は、シール部6を取り付けていない状態でなされる。
そして、前記両側壁部4,5の間に、坑口に構築する面壁Mの内周面W2を成型するための内型枠ukを支持する支持部16が設けられている。図4は、支持部16を説明する正面説明図であり、図5は、支持部16を説明する側面説明図である。
支持部16は、前記両側壁部4,5の間に設けられている。すなわち架台9の上部及び縦梁部材10の両側面に、重量パネル15よりも空間k側に位置するように設置されている。支持部16はここでは油圧ジャッキ17を備えており、その先端に内型枠ukを取り付けることができる。
内型枠ukは、例えば、トンネルの二次覆工面(面壁の内周面)W2と一致するW2の所定長さ分を5つに分割した曲面を持つスチール製の5つの型枠プレート18a〜18eと、各型枠プレート18a〜18eを折り曲げ自在に結合するヒンジ19によって構成されている。そして、油圧ジャッキ17により支持部16がトンネル断面の側方に一定位置まで移動すると、型枠プレート18a〜18eが展開セットされて内型枠ukの外周面(型枠面)uk1が二次覆工面(面壁の内周面)W2と一致する(図4参照)。そして図5のように内型枠ukの周囲に壁面の型枠mkを設置して面壁Mを施工する。その後、展開状態から油圧ジャッキ17により各型枠プレート18a〜18eがトンネル断面の中心方向に一定位置まで移動されると、内型枠ukが折り縮んで型枠面uk1が面壁の内周面W2から離れる。
トンネル用防音壁1は、坑口に面壁Mを構築する際に支持部16に内型枠ukに取り付ければよい。また、内型枠ukを取り付けた状態で移動及び坑内に固定することも可能であり、この場合には内型枠ukは折り縮められている。そして、発破による掘削作業が終了した後、トンネル用防音壁1を坑口付近に移動させ、内型枠ukを展開させて面壁Mの施工を行う。内型枠ukは、上記のようなスチール製の5つの型枠プレート18a〜18eに限定されず、木製のものを使用することもできる。また、支持部16は油圧ジャッキ17を必ずしも備える必要はなく、支持部16により支持される内型枠ukが面壁の内周面W2を成型できればかまわない。
以上のように構成されたトンネル用防音壁1は、車輪3を備えた移動式の防音壁であるので、トンネル内ではなく坑口前で組み立てることができる。よって、トンネル内では使用できなかった大きな建設機械(例えば大型クレーン車等)を使用して坑口前で施工することができる。また、移動式であるのでスライドセントルをトンネルの奥に入れる際にも移動させておけばよいので防音壁を解体する必要がなく、作業効率が良い。そして、切羽側壁部4と坑口側壁部5とは、いずれも低周波音域での遮音効果が高い重量物よりなるとともに、互いに離れて設置されるので、低周波音域の減衰が2回行われ、この点で防音効果が向上する。つまり、図2の断面図から分かるように、トンネル内で発生した発破音等の音は、先ず切羽側壁部4を通過し、次に切羽側壁部4と坑口側壁部5との間の空間kを通過し、そして坑口側壁部5を通過することになる。したがって、切羽側壁部4により1回目の低周波音域の減衰が行われ、坑口側壁部5により2回目の低周波音域の減衰が行われることとなるから、低周波音域の減衰が2回行われる。このように、単一のトンネル用防音壁1でありながら低周波音域の減衰を複数回行うことができるため、低周波音域における防音効果に優れ、特に2〜63Hzの低周波音域の減衰能に優れたトンネル用防音壁1とすることができる。さらに、面壁Mの内周面W2を成型するための内型枠ukを支持する支持部16が両側壁部4,5の間に設けられているので、防音壁が不要になったときに坑内から坑口付近に移動させて、支持部16に内型枠ukを取り付け、内型枠ukに壁面の型枠mkを設置すれば面壁Mを施工することができる。これにより、スライドセントルの覆工コンクリート打設作業終了を待たなくても坑口に面壁Mを構築することができる。
上記実施の形態において、防音扉20の上側に1つのダクト7が設けられているが、図6に示すように送気用ダクト71と排気用ダクト72とを設けることも可能である。この第2の実施形態において、図7に示すように集塵機sjで排気用ダクト72から切羽khとトンネル用防音壁1との間の空間Kにある発破ガス、コンクリート粉塵等を含む濃度の濃い汚染空気を排気し、送気用ダクト71から当該空間Kに新鮮な空気を送ることができる(図7の矢印参照)。これにより、換気効率を向上することができる。
トンネル用防音壁1を通過する騒音を低減させるために、図8に示すように切羽側壁部4と坑口側壁部5との間の空間kに消音部材として拡散片22を配置させてもよい。トンネル発破は約0.25秒ごとに行われる段発発破であり、1段目に発生した騒音を速やかに消音させないと、次に発生した2段目の騒音と共鳴してより大きな騒音となるので、拡散片22を設置して速やかに消音させるのである。この第3の実施形態において、拡散片22として、例えば図9に示す湾曲した形状のアルミ板を使用することができる。この拡散片22は、一方向(切羽側)から発生した騒音を様々な方向に反射させることにより騒音を分散させることができる(図8の矢印参照)。これにより、空間k内で騒音が分散されることで吸音効果が高まり、段発による騒音の増幅を防ぐことができる。
トンネル用防音壁1を通過する騒音が低減するのであれば、消音部材は必ずしも切羽側壁部4と坑口側壁部5との間の空間k内に設けなくてもよい。例えば、切羽khとトンネル用防音壁1との間の空間Kに送風機(コントラファン)を設置することが可能である。このコントラファンで発破時に切羽方向へ風を送って空気振動を発生させることにより、発破による空気振動と当該コントラファンの空気振動とが衝突して消音効果が得られる。
また、切羽khとトンネル用防音壁1との間の空間Kに防音カーテンを設けることも可能である。カーテンを設けることにより、発破による空気振動がカーテンに伝わって振動し、空気振動が物体振動に変換されることで騒音を低減することができる。カーテンの材質として、ガラスウール、合板、ゴム等が挙げられる。
なお、上述した実施の形態では、切羽側壁部4及び坑口側壁部5を、内部に砂が充填された重量パネル15で構成しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、前記切羽側壁部4及び坑口側壁部5を、充填層(この充填層には、低周波音域での遮音効果が高い重量物が充填される)と吸音材層との2層構造とすることもできる。そして、吸音材層は高周波音域での吸音効果が高く、一方、重量パネル15は低周波音域での遮音効果が高く、また同程度の厚さであれば吸音材層よりも全体としての遮音効果が高いという特質を考慮して、設置条件や要求される遮音の程度等に応じて、適宜パネル構造を選定することができる。
また、上述した実施の形態における重量パネル15は、1層構造であるが、厚さを大きくして遮音効果をあげたい場合等に、その内部にパネル表面に平行な隔壁を設けて多層構造とすることもできる。この場合、前記隔壁と重量パネル15の壁面との間には補強用のリブが適宜配設される。なお、同一構造の重量パネル15を2層以上重ねて配置することで、遮音効果を高めることもできる。
本発明の一実施の形態に係るトンネル用防音壁の正面図である。 図1のトンネル用防音壁の側面図である。 図1のY−Y線における断面図である。 トンネル用防音壁の支持部を説明する正面説明図である。 トンネル用防音壁の支持部を説明する側面説明図である。 本発明の第2の実施形態に係るトンネル用防音壁の正面図である。 図6のトンネル用防音壁の平面図である。 本発明の第3の実施形態に係るトンネル用防音壁を説明する側面説明図である。 消音部材である拡散片の形状を説明する図であり、(a)は正面説明図であり、(b)は平面説明図である。
符号の説明
1 トンネル用防音壁
2 壁体
3 車輪
4 切羽側壁部
5 坑口側壁部
6 シール部
7 ダクト
9 架台
15 重量パネル
15b 砂(低周波領域での遮音効果が高い重量物)
16 支持部
22 拡散片(消音部材)
W1 トンネル内壁面
W2 二次覆工面(面壁の内周面)
uk 内型枠

Claims (3)

  1. 堀削中のトンネルの切羽側に面して設置される切羽側壁部とこの切羽側壁部に空間を介して対向する坑口側壁部とを有する壁体と、この壁体の下部に配設され且つレール上を転動可能な車輪とを備えているトンネル用防音壁であって、
    前記両側壁部が低周波音域での遮音効果が高い重量物を含んでおり、坑口に構築する面壁の内周面を成型するための内型枠を支持する支持部が前記両側壁部の間に設けられていることを特徴とするトンネル用防音壁。
  2. 前記両側壁部を送気用ダクト及び排気用ダクトが貫通している請求項1に記載のトンネル用防音壁。
  3. 前記両側壁部の間に、消音部材である拡散片が設置されている請求項1又は2に記載のトンネル用防音壁。
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