JP4407328B2 - 透明ガラス体の製造方法 - Google Patents
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Description
図7は表面にSi−OH基(Siと結合したOH基)を有するSiO2からなる多孔質プリフォームを脱水するためにCl2ガスに接触させた場合における、SiO2表面のOH基とCl2ガスとの反応による表面での化学変化を模式的に示したものであるが、多孔質プリフォームを例えばCl2ガスで脱水すると、SiO2表面のOH基がClで置換され、これを焼結化しても後工程でこのClがCl2ガスとして離れて再発泡するという弊害がある。
(1)SiO2粉末を原料とする透明ガラス体の製造方法において、比表面積が130m2/g以上であり、その表面に単位平方ナノメータ当たり1(個/nm2)以上の濃度のSi−OH基が形成されているSiO2粉末を使用して、前記SiO 2 粉末をバーナへ搬送し、該バーナからターゲット上に噴出させることにより該ターゲット上にSiO 2 微粒子を堆積させて多孔質プリフォームを製造した後に、該多孔質プリフォームにハロゲンを添加し、さらにこれを焼結することを特徴とする透明ガラス体の製造方法。
(3)前記ハロゲンの供給源がハロゲン化珪素であることを特徴とする前記(1)または(2)のいずれかに記載の透明ガラス体の製造方法。
(4)前記ハロゲンが弗素(F)であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明ガラス体の製造方法。
(6)前記焼結する温度が900〜1300℃であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の透明ガラス体の製造方法。
また、比表面積の大きいSiO2粒子からなる粉末を用いるため、該粒子表面のSi−OH基と結合するハロゲン元素の数が増大する。そのため、VAD法やOVD法等の方法により気相合成によって製造する場合に比べて透明ガラス体にドープされるハロゲンの濃度が高められ、純石英ガラスに対する比屈折率差のより大きいガラス体とすることができる。
更にまた、本発明により得られた多孔質プリフォームを焼結して透明ガラス体とする際に焼結温度を従来よりも下げることが出来るので、添加されたハロゲンの蒸発防止と製造コストの低減が可能となる。
本発明の透明ガラス体の製造方法は、出発原料として特定の比表面積を有し、かつ、その表面にSi−OH基を有するSiO2粒子の粉末を用いて最初に多孔質プリフォームを製造する工程(多孔質プリフォーム製造工程)と、得られた多孔質プリフォームにハロゲン元素を添加してドープする工程(ハロゲン元素添加工程)と、ハロゲンがドープされた多孔質プリフォームを加熱、焼結して透明ガラス体とする工程(焼結工程)を経て製造するか、もしくは特定の比表面積を有し、かつ、その表面にSiと結合したOH基(Si−OH基)を有するSiO2粒子に予めハロゲン元素を添加した後、このSiO2粒子の粉末を出発原料として多孔質プリフォームを製造する工程(多孔質プリフォーム製造工程、すなわち多孔質プリフォームの製造とハロゲン元素のドープとを同時に行う)と、得られた多孔質プリフォームを加熱、焼結して透明ガラス体とする工程(焼結工程)を経て製造するものである。
SiF4+SiOH→Si−O−SiF3+HF ・・・[式1]
SiF4+2SiOH→Si−O−SiF2−O−Si+2HF ・・・[式2]
なお、上記範囲の比表面積を有し、その表面にSi−OH基を有するSiO2粉末としては、例えば、AEROSILの商標名で市販されているSiO2微粒子等、市販のSiO2粉末の中から所望の比表面積と粒子表面に結合たSi−OH基の濃度とを有するものが適宜選択して使用される。
図1において、例えばガラスロッド等からなる出発材1が回転手段2と結合されていて、出発材1を囲んで反応容器4が配置される。バーナ6は出発材1の長手方向の回転軸とほぼ並行に往復移動することができるように、移動手段30と結合されて配置される。これとは別に、出発原料のSiO2粉末20は原料粉末供給管14を通じて必要に応じてその途中に設けられたバルブ15の開閉によって原料粉末供給用タンク11に供給し、貯蔵しておく。
これらのガスの組合わせ例として、例えば、図3(a)に例示したバーナを用い、中心ポート7にはキャリアガスAとしてHeとH2の混合ガスを導入し、バーナ6の第2ポート31にはArガス、第三ポート32にはO2ガス、第4ポート33にはArガス、第5ポート34にH2ガスをそれぞれ供給するなど、中心ポート7に供給する原料粉末と共にキャリアガスAおよびBが任意に組み合わせてバーナ6に供給される。
なお、このハロゲン元素添加工程は、多孔質プリフォーム製造工程において出発原料として予めハロゲン元素が添加されたSiO2粉末を用いて多孔質プリフォームを製造した場合には省略されるが、その場合でも得られる多孔質プリフォーム中にドープされているハロゲン元素の濃度調整のためにこのハロゲン元素添加工程を設けてもよい。
〔実施例1〕
原料粉末20として、表面に結合しているSi−OH基の濃度が2〜3.3個/nm2であり、BET法により測定した時の比表面積が380m2/gであり、平均一次粒子径が7nmであるSiO2微粒子粉末{商品名:AEROSIL(商標)380(日本アエロジル社製)を用い、製造装置としてVAD装置に粉末供給手段を後付けした図2に示す装置を用いる。出発材1として純シリカロッドを、また、バーナ6としては図3(a)に示した多重管バーナをそれぞれ用いて、順次以下の各工程を経て透明ガラス体を製造する。
原料供給タンク11に上記原料粉末20を入れ、キャリアガスAとしてArガスをおよそ5L/分の供給速度でキャリアガス供給管13から通気し、原料供給タンク11下部の通気口36から流動化ガスとして空気を送り、メッシュ12を通して内部に流入させるとともに、振動装置37を作動させ、かつ駆動手段38により攪拌翼40を回転させて原料粉末20を流動化させながらエジェクタ21で原料粉末20を吸出して原料粉末20をArガスと共におよそ8g/分の供給速度で原料粉末供給ライン16に送る。なお、本例では、原料粉末20として用いたのはSiO2微粒子粉末だけなので、もう一方の原料供給タンク11aは使用せず、この未使用の原料供給タンク11aに連通する原料粉末供給ライン16aはバルブ15aを閉じて閉鎖しておく。
この時、バーナ6の第2ポート31、第3ポート32、第4ポート33及び第5ポート34には配管19を通してそれぞれシール用のArガス、H2ガス、ArガスおよびO2ガスを供給する。バーナ6の中心ポート7への供給速度は、SiO2粉末を10〜11g/分、SiO2粉末を搬送するキャリアガスとしてのArガスの供給速度を上述のように5L/分とし、キャリアガスB(O2ガス)は2L/分となるように調整される。また、バーナ6の第2ポート31〜第5ポート34に供給される各ガスの供給速度は、それぞれ第2ポート32に流すシール用のArガスをほぼ3L/分、第3ポート32に流すH2ガスをほぼ20L/分、第4ポート33に流すArガスをほぼ3L/分、第5ポート34に流すO2ガスをほぼ15L/分とする。
次に、バーナ6への原料粉末20および各キャリアガスの供給を停止して、上記多孔質プリフォーム製造工程で得られた多孔質プリフォーム10を反応容器4とは別の図示していない反応容器(石英製炉心管)内に移し、配管19からはHeガスを15SLMで供給して、その反応容器内にHeガスを通気しながら図4に示す昇温曲線(昇温時間と温度との関係)に従って炉心管内を電気炉で加熱、昇温する。
反応容器内の炉心管の温度が1050℃(t1=1050℃)に達したところでHeガスの供給を停止し、次に配管19からSiF4ガスを1000cc/分の流量で供給しながら反応容器内の炉心管の温度を1050℃に(1〜3時間)保持することにより、多孔質プリフォーム10にFが添加される。
原料粉末として、表面に結合しているSi−OH基の濃度が2.8〜4個/nm2であり、BET法により測定した時の比表面積が200m2/gであり、平均一次粒子径が12nmであるSiO2微粒子粉末{商品名:AEROSIL(商標)200(日本アエロジル社製)を用いる。製造装置として、VAD装置に粉末供給手段を後付けした図1に示す装置を用い、出発材1およびバーナ6は実施例1と同様のものを用いて、順次、以下の工程を経て透明ガラス体を製造する。
原料供給タンク11に上記原料粉末20を入れ、Arガス(キャリアガスA)をおよそ5L/分の流量でキャリアガス供給管13から通気して、原料供給タンク11下部の配管37から流動化のためのガスとして空気を通気し、メッシュ12を通して原料供給タンク11内部に流入させるとともに、振動装置37を作動させて、原料粉末20を流動化させ、エジェクタ21により、原料粉末吸出管22より吸出した上記原料粉末20をキャリアガスAにより原料粉末供給ライン16中を搬送し、混合用ガス供給ライン17から供給されるO2ガス(キャリアガスB)と混合されて、配管18を経由してバーナ6の中心ポート7に供給し、中心ポート7から火炎9中に噴出される。バーナ6は、回転手段2によって軸を中心に回転している出発材1の軸方向とほぼ平行に移動手段30により往復移動させておき、火炎9中に噴出された原料粉末20を出発材1の周囲に付着、堆積させて、徐々に出発材1の軸方向に堆積させることによって多孔質プリフォーム10を製造する。なお、この時、多重管バーナの第2ポート31〜第5ポート34にはそれぞれ実施例1の場合と同様のガスを供給する。
次に、バーナ6への原料粉末および各キャリアガスの供給を止め、上記多孔質プリフォーム製造工程で得られた多孔質プリフォーム10を反応容器4とは別の反応容器(石英製炉心管)内に移し、以下、実施例1のハロゲン化工程及び焼結工程と同様にして、F元素がドープされた実施例2の透明ガラス体を得る。
(多孔質プリフォーム製造工程)
原料粉末として、実施例1と同一のSiO2微粒子粉末{商品名:AEROSIL(商標)380(日本アエロジル社製)を用い、この原料粉末(SiO2微粒子粉末)と水とを1:2の重量比で混合し、これを鋳型に詰めて万力で押し固めることによりSiO2微粒子粉末からなる多孔質プリフォームの成形体を製造する。
実施例1の多孔質プリフォームの製造工程で得る多孔質プリフォーム10に代えて、上記のようにしてSiO2微粒子粉末を加圧成形して得られる多孔質プリフォームを実施例1のハロゲン化工程及び焼結工程において使用した反応容器(石英製炉心管)内に移し、以下、実施例1のハロゲン化工程及び焼結工程と同様にして上記のSiO2微粒子粉末を加圧成形して得られる多孔質プリフォームにFをドープし、これを焼結して実施例3の透明ガラス体を製造する。
(多孔質プリフォーム製造工程)
原料粉末として、実施例1と同一のSiO2微粒子粉末{商品名:AEROSIL(商標)380(日本アエロジル社製)を用いる。この原料粉末(SiO2微粒子粉末)と水とを1:5の重量比で混合してSiO2微粒子粉末の水スラリーを調製し、これをメスシリンダーに投入し、スラリー中の水が蒸発して形が崩れない程度に固まったSiO2微粒子粉末をメスシリンダーから取出して1週間放置して自然乾燥させてから、この成形体を90℃で5時間加熱した後、更に200℃で5時間加熱することによってSiO2微粒子粉末からなる多孔質プリフォームの成形体を製造する。
実施例3の多孔質プリフォーム製造工程で得る多孔質プリフォームに代えて、上記のようにしてSiO2微粒子粉末を成形して得られる多孔質プリフォームの成形体を使用する以外は実施例3のハロゲン添加工程と同様にして、この多孔質プリフォームにFをドープし、これを焼結して実施例4の透明ガラス体を製造する。
出発原料として実施例2で用いた出発原料と同一の微粒子粉末{商品名:AEROSIL(商標)200(日本アエロジル社製)を用い、ハロゲン元素添加工程において反応容器内(炉心管内)に供給するガスとしてSiF4ガスに代えてSiCl4ガスを用いる以外は実施例1と同様にして実施例5の透明ガラス体を製造する。
原料粉末として、表面に結合しているSi−OH基の濃度が2.8〜4個/nm2であり、BET法により測定した時の比表面積が130m2/gであり、平均一次粒子径が16nmであるSiO2微粒子粉末{商品名:AEROSIL(商標)130(日本アエロジル社製)を用い、ハロゲン元素添加工程において配管19から反応容器内に供給するガスとしてSiF4ガスに代えてSiCl4ガスを用いる以外は実施例2と同様にして実施例6の透明ガラス体を製造する。
(多孔質プリフォーム製造工程)
原料粉末として、加熱により気相化したSiCl4をArガスと共にバーナに供給して、火炎加水分解により製造した、表面に結合しているSi−OH基の濃度が2〜4個/nm2であり、BET法により測定した時の比表面積が25m2/gであり、平均一次粒子径が200nmであるSiO2微粒子粉末を原料粉末として用いる。
製造装置として、原料粉末供給装置が付設されていない従来の気相合成によるVAD製造装置を用い、酸水素バーナ中に原料ガスの代わりに原料として上記のSiO2微粒子粉末を供給して出発材に向け該バーナの火炎を噴出させて出発材上にSiO2からなる多孔質プレフームを製造する。
上記のようにして多孔質プリフォームを得た後、バーナへの原料粉末及びキャリアガスの供給を停止して、上記多孔質プリフォーム製造工程で得られた多孔質プリフォームを該多孔質プリフォームの製造の際に用いた反応容器とは別の反応容器(石英製炉心管)内に移し、SiF4ガスを炉心管内に通気して実施例1と同様にして得られた多孔質プリフォームにF元素がドープされた比較例1の透明ガラス体を得る。
得られた多孔質プリフォームのハロゲン元素添加工程において反応容器内に通気するハロゲン含有ガスとして、SiF4ガスに代えてSiCl4ガスを用いる以外は比較例1と同様にして比較例2の透明ガラス体を製造する。
原料粉末として、表面に結合しているSi−OH基の濃度が2〜4個/nm2であり、BET法により測定した時の比表面積が50m2/gであり、平均一次粒子径が40nmである、SiO2微粒子粉末{商品名:OX(商標)50(日本アエロジル社製)を用いる以外は実施例1と同様にして比較例3の透明ガラス体を製造する。
表1に示す各実施例及び比較例の製造方法は、VAD法用の装置に粉体供給装置を設けて(図2に例示の装置)気相原料の供給部に粉体原料を供給して多孔質プリフォームを製造する製造法を採用するものを「VAD+粉」と略記し、OVD法用の装置に粉体供給装置を設けて(図1に例示の装置)気相原料の供給部に粉体原料を供給して多孔質プリフォームを製造する製造法を採用するものを「OVD+粉」、原料粉末を鋳型中で加圧成形して多孔質プリフォームを製造する製造法を採用するものを「圧粉」、原料粉末を水などの溶媒中に分散させたスラリーから成形して多孔質プリフォームを製造する製造法を採用するものを「スラリー」とそれぞれ略記し、気相原料からVAD法による従来の製法で多孔質プリフォームを製造したもの「通常VAD」と略記した。
3 昇降手段、 4 反応容器
5 排気孔、 6 バーナ
7 中心ポート、 8 外側ポート
9 火炎、 10 多孔質プリフォーム
11、11a 原料粉末供給用タンク、 12、12a メッシュ
13、13a キャリアガス、 14、14a 原料粉末供給管
15、15a バルブ、 16 原料粉末供給ライン
17 混合用ガス供給、 18、19 配管
20、20a 原料粉末、 21 エジェクタ
22 原料粉末吸出管、 30 移動手段
31 第2ポート、 32 第3ポート
33 第4ポート、 34 第5ポート
35 隔壁 36、36a 通気口
37、37a 振動装置 38、38a 回転手段
39、39a 回転軸 40、40a 攪拌翼
Claims (6)
- SiO2粉末を原料とする透明ガラス体の製造方法において、
比表面積が130m2/g以上であり、その表面に単位平方ナノメータ当たり1(個/nm2)以上の濃度のSi−OH基が形成されているSiO2粉末を使用して、
前記SiO 2 粉末をバーナへ搬送し、該バーナからターゲット上に噴出させることにより該ターゲット上にSiO 2 微粒子を堆積させて多孔質プリフォームを製造した後に、
該多孔質プリフォームにハロゲンを添加し、
さらにこれを焼結する
ことを特徴とする透明ガラス体の製造方法。 - SiO2粉末を原料とする透明ガラス体の製造方法において、
比表面積が130m2/g以上であり、その表面に単位平方ナノメータ当たり1(個/nm2)以上の濃度のSi−OH基が形成されているSiO2粉末に予めハロゲンを含有させておき、該ハロゲンを含有させたSiO2粉末を使用して、
前記SiO 2 粉末をバーナへ搬送し、該バーナからターゲット上に噴出させることにより該ターゲット上にSiO 2 微粒子を堆積させて多孔質プリフォームを製造した後、
該多孔質プリフォームを焼結する
ことを特徴とする透明ガラス体の製造方法。 - 前記ハロゲンの供給源がハロゲン化珪素であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の透明ガラス体の製造方法。
- 前記ハロゲンが弗素(F)であることを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の透明ガラス体の製造方法。
- 前記SiO2粉末の比表面積が400m2/g以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明ガラス体の製造方法。
- 前記焼結する温度が900〜1300℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明ガラス体の製造方法。
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