JP4406733B2 - インバータ電源装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インバータ電源装置に関し、特に、誘導加熱装置の誘導コイル(ワークコイルともいう)に高周波の交番パルス電流を供給するのに好適なインバータ電源装置に関するものである。
従来、交番パルス電流を誘導加熱装置の誘導コイルのようなインダクタンス負荷に流す場合、インダクタンス負荷に蓄積する磁気エネルギーの効果により、電流変化に伴う高電圧を電源から供給する必要がある。
誘導加熱用のインバータ電源装置として、従来の電圧型インバータを使用した場合、交番パルス電流を誘導コイルに流すためには、従来の電圧型インバータは、電流変化に伴う電圧を出力する必要がある。しかし、電圧型インバータの出力電流と出力電圧との間に位相差が生じ、所謂、力率が悪い電源装置となってしまう。
誘導加熱用のインバータ電源装置の力率を改善する方法として、高周波回路でよく使われる共振コンデンサを、誘導コイルに直列、または並列に接続する方法が知られている。この方法で従来の電圧型インバータの電力容量を下げることが出来る。しかし、従来の電圧型インバータに固定した共振コンデンサを用いた場合、誘導コイルのインダクタンスと、共振コンデンサの静電容量とで決まる1つの共振周波数の交番パルス電流を、誘導コイルに供給することだけにおいてのみにしか、力率を改善することができなかった。
回路技術として、回路の磁気エネルギーを蓄積して負荷に回生する磁気エネルギー回生スイッチ(Magnetic Energy Recovery Switch、以降、単に“MERS”という。)と呼ばれるものが本発明者により提案され、既に特許として成立している(特許文献1参照)。MERSは、逆阻止能力を持たない、すなわち逆導通型の半導体スイッチング素子を用いる。逆導通型の半導体スイッチング素子として、例えば自己消弧形素子とダイオードとの逆並列回路から成る回路や、製造時に寄生ダイオードを内蔵したパワーMOSFETなどがある(以降、これらの逆導通型の半導体スイッチング素子を、単に“逆導通型半導体スイッチ”という)。
MERSは、逆導通型半導体スイッチを4個用いて構成されるブリッジ回路と、ブリッジ回路の直流端子間に接続されたコンデンサとから成る。順逆両方向の電流を、逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を導通状態(以下、逆導通型半導体スイッチを“オン”という)/阻止状態(以下、逆導通型半導体スイッチを“オフ”という)の制御のみでオン/オフ可能なものである。
より詳しくは、ブリッジ回路の対角線上の位置にある2個の逆導通型半導体スイッチをペアとし、MERSを通過する電流の方向に対応して、一方のペアの2個の逆導通型半導体スイッチをオンにすると同時に、他方のペアの2個の逆導通型半導体スイッチをオフにするスイッチング制御を行うと、コンデンサが電流を遮断した際の電流の持つ磁気エネルギーを吸収し、オン状態の逆導通型半導体スイッチを通じて放電することで電流を回生するスイッチ回路である。
MERSを電源装置と誘導性負荷の間に直列に接続し、MERSを用いて誘導性負荷に供給する電流をオン/オフすれば、電流を急変させるのに必要な電圧を、コンデンサに流れ込む電流により自動的に発生させることができる。電源装置からは、電流を急変させるのに必要な電圧を供給する必要がなくなるという利点が生まれる。
MERSを用いた交番パルス電流発生装置は、本発明者より提案され、公開されている(特許文献2参照)。
MERSを用いた交番パルス電流発生装置は、MERSを交流電源と誘導性負荷との間に直列に接続し、交流電源の位相に同期して、逆導通型半導体スイッチをオン/オフする制御を行うと、誘導性負荷の磁気エネルギーはコンデンサに蓄積され、コンデンサが誘導性負荷に放電することで、磁気エネルギーを誘導性負荷に回生することができる。誘導性負荷のインダクタンスによる過渡電圧は、すべてMERS回路内において発生することになる。
交番パルス電流を、電気抵抗成分が少なくインダクタンス成分が主である誘導性負荷に流す場合、従来の電圧型インバータを使用すると、誘導性負荷に蓄積する磁気エネルギーの効果により、電流変化に伴う高電圧を電源から供給する必要があった。MERSを用いた交番パルス電流発生装置では、交流電源の電圧は、誘導性負荷の電気抵抗成分に対応した電圧(低い電圧)のみでよいという利点がある。
特開2000−358359号公報 特開2004−260991号公報
しかしながら、MERSを用いた交番パルス電流発生装置は、誘導性負荷と直列に低電圧ではあるが大電流の交流電源を接続する必要がある。このため、誘導加熱用のインバータ電源装置としては使い勝手がよくないという問題があった。
本発明は、MERSの利点を生かしつつ、大電流の交流電源を不要とし、さらに単純で部品数の少ない構成で、交番パルス電流を発生するインバータ電源装置を提供することを目的とする。
本発明は、誘導性負荷3に高周波の交番パルス電流を供給するためのインバータ電源装置に関し、本発明の上記目的は、直流電源5と、自己消弧形素子とダイオードとの逆並列回路から成る逆導通型半導体スイッチを4個ブリッジ接続して構成されるブリッジ回路1と、ブリッジ回路1の直流端子間に接続され、ブリッジ回路1内の逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を阻止状態にして電流を遮断した時に、回路に流れる電流の磁気エネルギーを回生して蓄積するコンデンサ2と、直流電源5とブリッジ回路1の直流端子との間に直列に挿入され、直流電源5からの直流電力を平滑するための平滑用コイル4と、逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子の導通状態/阻止状態を制御する制御手段6と、を備えるとともに、
制御手段6は、誘導性負荷3に供給しようとする交番パルス電流の周期で、逆導通型半導体スイッチのうち、ブリッジ回路1の対角線上に位置するペアの2個の逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を同時に導通状態/阻止状態にし、かつ2組のペア間で逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を同時に導通状態にすることのないように制御するとともに、発生する交番パルス電流の周波数が、誘導性負荷3のインダクタンスとコンデンサ2の静電容量とで決まる共振周波数よりも低くなるように運転制御することにより、交番パルス電流の周波数によらず共振条件を維持でき、回路に流れる電流の磁気エネルギーを回生して再利用するとともに、平滑用コイル4を介して直流電源5からコンデンサ2を充電することで誘導性負荷3に持続して交番パルス電流を供給することを特徴とするインバータ電源装置によって達成される。
また、本発明の上記目的は、直流電源5に替えて、商用交流電源より整流用ブリッジダイオード7を介して整流した直流電力を、平滑用コイル4に供給することを特徴とするインバータ電源装置によっても達成される。
さらに、本発明の上記目的は、ブリッジ回路1とコンデンサ2とで構成される磁気エネルギー回生スイッチを、逆導通型半導体スイッチを2個直列接続した逆導通型半導体スイッチレグと、コンデンサ2を2個直列接続し、各コンデンサに逆並列にダイオード9を接続してクランプしたコンデンサレグとを、並列に接続したハーフブリッジ構成の磁気エネルギー回生スイッチで置き換えたことを特徴とするインバータ電源装置によっても達成される。
本発明のインバータ電源装置は、磁気エネルギー回生スイッチのみで交番パルス電流を発生でき、かつ、交番パルス電流の周波数は、MERS回路内の逆導通型半導体スイッチをオン/オフする制御により可変できるという優れた効果がある。
以下、本発明に係る最良の形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴や組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、本発明に係るインバータ電源装置の構成を示す回路ブロック図である。インバータ電源装置は、直流電源5と、自己消弧形素子とダイオードとの逆並列回路から成る逆導通型半導体スイッチ(SW1〜SW4)を4個ブリッジ接続して構成されるブリッジ回路1と、ブリッジ回路1の直流端子間に接続され、ブリッジ回路1内の逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を阻止状態にして電流を遮断した時に、回路に流れる電流の磁気エネルギーを回生して蓄積するコンデンサ2と、直流電源5とブリッジ回路1の直流端子との間に直列に挿入され、直流電源5からの直流電力を平滑するための平滑用コイル4と、逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子の導通状態/阻止状態を制御する制御手段6と、被加熱物を誘導加熱するための誘導コイルを含む誘導性負荷3を備えている。コンデンサ2は、誘導性負荷3の磁気エネルギーを吸収するだけの極めて小さな静電容量でよいことが特長である。
ここで、インバータ電源装置の動作を、図3を用いて説明する。なお、図3は、インバータ電源装置の動作を説明するためのものであり、直流電源5と平滑用コイル4図示されていない。
1)コンデンサ2に電圧が充電された状態から始める。ブリッジ回路1の逆導通型半導体スイッチSW1とSW3のペアに制御信号を送って、2個の逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を同時に導通状態にすると、電流は、図3(1)の矢印の方向で示すように流れる。コンデンサ2の電荷が誘導性負荷3に放電する。
このとき、逆導通型半導体スイッチSW1とSW3のペアに替えて、SW2とSW4のペアの2個の逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を同時に導通状態にさせた場合、誘導性負荷3に流れる電流の方向は、図3(1)の矢印の方向とは逆になる。どちらか一方のペア(SW1とSW3のペアか、SW2とSW4のペア)の2個の逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を同時に導通状態にするかで、電流の流れる方向を選択することができる。
コンデンサ2の電流は、逆導通型半導体スイッチSW1かSW3のどちらか一方の逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を阻止状態にすることで停止させることができる。しかしながら、誘導性負荷3を通過する電流は、自己消弧素子を阻止状態に制御している逆導通型半導体スイッチのダイオードを介して流れ続ける。例えば、逆導通型半導体スイッチSW1を構成する自己消弧形素子を阻止状態にした場合、逆導通型半導体スイッチSW4のダイオードを介して電流が流れる(図3(1)に図示されていないことに注意されたい。)。
2)コンデンサ2が放電し、コンデンサ2の電圧がゼロになると、図3(2)に示すように、逆導通型半導体スイッチSW1とSW3を構成する両方の自己消弧形素子が導通状態であることに加えて、自動的に逆導通型半導体スイッチSW2とSW4の両方のダイオードも導通状態になる。電流は全ての逆導通型スイッチを還流して流れ続ける。これを並列導通状態という。誘導性負荷3に流れる電流は、誘導性負荷3の等価抵抗Rにより減衰する。
3)次に、並列導通状態から、逆導通型半導体スイッチSW1とSW3を構成する両方の自己消弧形素子を阻止状態にして、全ての逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子を阻止状態にすると、図3(3)に示すように、誘導性負荷3を流れる電流は、自然に逆導通型半導体スイッチSW2とSW4の両方のダイオードを介してコンデンサ2に充電される。電流が停止するまでコンデンサ2の電圧は上昇する。電流が停止した時点で、誘導性負荷3の磁気エネルギーはコンデンサ2に移動したことになる。ここで1)、図3(1)の状態に戻る。このときコンデンサ2の電圧極性は、誘導性負荷3に流れる電流の方向に拠らず常に同じである。
コンデンサ2の静電容量は、誘導性負荷3の磁気エネルギーを吸収するだけの容量のため、小さくて済む。また、コンデンサ2の静電容量Cと誘導性負荷3のインダクタンスLとの共振周波数は、発生する交番パルス電流の周波数より高くなっているため、逆導通型半導体スイッチの自己消弧形素子は、阻止状態にするときゼロ電圧で、導通状態にするときゼロ電流でスイッチングすることになっている。すなわち、MERSを用いて、誘導性負荷3の磁気エネルギーを回生し、誘導性負荷3に交番パルス電流を発生する構成になっている。
次に、定電流電源10からコンデンサ2へのエネルギーが注入される動作を、図4を用いて説明を述べる。なお、図4の説明は、コンデンサ2へのエネルギーが注入される動作を説明するためのものであり、制御手段6図4に図示されていないことに注意されたい。
交番パルス電流は、誘導性負荷3の等価抵抗R、または、電磁誘導された2次抵抗にエネルギーが消費されて減衰する。エネルギーの注入は、定電流電源10より行われる。定電流電源10は、コンデンサ2に接続される。コンデンサ2の両端には、
1)誘導性負荷3に流れる電流の向きが切り替わるまでの間、すなわち、誘導性負荷3のインダクタンスLとコンデンサ2の静電容量Cの共振周期の半サイクルの間と、
2)逆導通型半導体スイッチをオフにした後(全ての逆導通型半導体スイッチを構成する自己消弧形素子がオフになった後)から、誘導性負荷3に流れる電流が停止するまでの間、コンデンサ電圧が現れる。ここに定電流電源10から、(電流)×(コンデンサ電圧)分の電力が、エネルギーとして注入される。
定電流電源10は、直流電源5(電圧源)に、大きなインダクタンスを持つ平滑用コイル4を直列に接続したものにより実現できる。この場合、直流電源5から供給される電源電流は、平滑用コイル4によりリップルの少ない直流になる。リップルは、誘導性負荷3の交番パルス電流より小さくなる。そのため、定電流電源10を、高電圧、小電流で構成できるのが本発明の特徴である。
次に、インバータ電源装置の動作を、シミュレーションによって説明する。
図5は、シミュレーション回路を示している。図6は、図5のシミュレーション回路において、回路定数を以下の通りとしたときの、計算機シミュレーション結果を示している。
1.コンデンサ2: 静電容量C 0.47μF、
2.誘導性負荷3誘導コイル: インダクタンスL 1mH、等価抵抗R 5Ω、
3.平滑用コイル(電流源インダクタ)4: インダクタンスL 40mH、
4.直流電源5:AC電源8: 単相交流100Vrmsを、ブリッジダイオード7で全波整流したもの。
より詳しくは、図6(A)、(B)は、誘導性負荷3に流れる電流Iout、定電流入力Iin、コンデンサ2の電圧Vcを示している。図6(A)は、逆導通型半導体スイッチの自己消弧形素子を導通状態/阻止状態をする制御信号のスイッチング周波数を、2KHz(パルスレート=2KHz)とした場合の図であり、図6(B)は、4KHz(パルスレート=4KHz)とした場合の図である。
回路動作の説明と、入力電力と出力の概算を、数式を使って詳しく説明する。
1)直流電源5を、平滑用コイル4を介して接続するので、リップルの少ない電流が流れる。
2)コンデンサ2に電圧が生じている期間、定電流入力Iinが流入して、直流電源5から電力が注入される。コンデンサ2の電圧が生じている期間は、誘導性負荷3のインダクタンスLと、コンデンサ2の静電容量CとのLC共振周期の半サイクルの期間である。交番パルス電流の1サイクルでは、この期間が2回あるので、その時間Tは、次式(1)のようになる。
T=2π√(LC) ...(1)
3)コンデンサ2の電圧の大きさは、平均値でピークの電圧Vcの2/π倍である。この間の電力Pinは,コンデンサ2の電圧が大きいほど大きい。また、電源電圧が一定であれば、コンデンサ2の電圧が大きいほど電流が下がる。
4)全ての逆導通型半導体スイッチの自己消弧形素子を阻止状態にすると、コンデンサ2は、磁気エネルギーを蓄積する。コンデンサ2が電圧を保持している期間、直流電源5から電力が流入する。
5)コンデンサ2が短絡しているとコンデンサ2の電圧は無い。コンデンサ2に蓄積されるエネルギー(電力)を、コンデンサ2に電圧がある/電圧が無しの時間比、コンデンサ2の電圧の平均値を波形率Dと定義すると、次式(2)になる。
Pin=D*Vc*Iin ...(2)
6)本シミュレーションのケースでは、Dを0.65と仮定する。Dはコンデンサ2の電圧波形によっている。コンデンサ2の電力Pinは、誘導性負荷3に流れる最大電流Imax、誘導性負荷3のインダクタンスLとコンデンサ2の静電容量Cで構成されるLC回路のサージインピーダンスをZとすると、次式(3)のようになる。
Pin=0.65*Imax*Z*Iin ...(3)
7)また、共振角周波数をωとすると、誘導性負荷3の等価抵抗Rとω*Lの比が、導性負荷3のインダクタンスLとコンデンサ2の静電容量Cで構成されるLC共振回路の共振先鋭度Qであるから、共振先鋭度Qは、次式(4)のようになる。
Q=ωL/R ...(4)
8)誘導性負荷3に流れる最大電流Imaxは、LC回路のサージインピーダンスZは、Z=√(L/C)と定義されることから、次式(5)のようになる。
Imax=Vc/Z ...(5)
9)誘導性負荷3に流れる最大電流Imaxの電流が、誘導性負荷3の等価抵抗Rで消費される電力をWrとする。電流が逆導通型半導体スイッチのダイオードでクランプされて直流になり等価抵抗Rで減衰する場合も含めて、概略で次式(6)のように近似できるとする。
Wr≒Imax*Imax*R/2 ...(6)
10)上述の式(6)で表される誘導性負荷3の等価抵抗Rで消費される電力Wrと、コンデンサ2に蓄積されるエネルギー(電力)Pinがバランスするところまで、コンデンサ2の電圧・電流振動は成長することから、次式(7)のようになる。
Pin=0.65*Imax*Z*Iin=Imax*Imax*R/2 ...(7)
11)上述の式(7)より、誘導性負荷3に流れる最大電流Imaxと、定電流入力Iinの電流比は、次式(8)のようになる。
Imax/Iin=2*0.65*Z/R=1.3*Z/R ...(8)
よって、上述の式(8)は、次式(9)で表される近似式になる。
Imax/Iin≒Z/R ...(9)
上述の式(9)は、LC共振回路の共振先鋭度Qとほぼ同じ値となる。すなわち、定電流入力IinのQ倍の電流が、誘導性負荷3に流れると考えられる。
上述の式(5)、(9)に、図6の回路定数を当てはめる。L=1mH、C=0.47μF、R=5Ωであるから、LC回路のサージインピーダンスZ=√(L/C)=46.12と算出される。ここで、定電流入力Iin=0.5Aとすると、誘導性負荷3に流れる最大電流Imaxと定電流入力Iinの比Imax/Iin≒Z/R=9.2と算出される。上述の式(9)より、最大電流Imax=9.2*Iin=4.6A、上述の式(5)より、コンデンサ2の最大電圧Vc=Imax*Z=212Vと算出される。これらの計算値と、図6で示されるシミュレーション結果が概算で一致していることが確認できる。
上述の概算で重要な点は、入力電力Pinが、誘導性負荷3の等価抵抗Rと誘導性負荷3に流れる最大電流Imaxの2乗に比例し、また直流電源5の電圧に比例することである。電源電圧に比例した電流が流れるということは、電圧位相と同相の電流となっていることを意味する。例えば、交流電源を整流用ブリッジダイオードで全波整流したものを直流電源に用いれば、インバータ電源装置は、力率1の交流入力になることを意味している。
続いて、本発明の実施例1に係るインバータ電源装置について説明する。
図7(A)は、モデル実験の回路図を示している。図7(B)と(C)は、モデル実験結果を示している。
より詳しくは、図7(A)は、図5の回路において、回路定数を以下の通りとしたときの、回路図を示している。
1.コンデンサ2: 静電容量C: 0.47μF、
2.誘導性負荷3: インダクタンスL0.94mH、等価抵抗R 0.36Ω、
3.平滑用コイル(電流源インダクタ)4: インダクタンスL 40mH、
4.直流電源5: AC電源8:単相交流25Vrmsを、ブリッジダイオード7で全波整流したもの。
図7(B)は、定電流入力Iin、誘導性負荷3に流れる電流Iout、コンデンサ2の電圧Vc、直流電源5の電圧Vinを示している。図7(C)の上図は、定電流入力Iin、誘導性負荷3に流れる電流Ioutの時間軸を拡大したもの、図7(C)の下図は、コンデンサ2の電圧Vc、定電流電源10の電圧Vdcの時間軸を拡大したものを示している。
図7(B)より、モデル実験の回路に、AC電源8から整流用ブリッジダイオード7によって全波整流し、さらに平滑用コイル(電流源インダクタ)4を介して電流を供給すれば、AC電源8で見た交流電流は電圧と同相になり、AC電源8からは高調波も少なく、かつ交流入力力率が良くなっていることが分かる。なお、図7(B)での交流電流と電圧の位相の比較は、整流用ダイオードブリッジ7で全波整流をした後で比較していることに注意されたい。
続いて、本発明の実施例2に係るインバータ電源装置について説明する。
図8は、ブリッジ回路1を、より簡易なものに置き換えた例を示すものである。
より詳しくは、図8は、インバータ電源装置の構成を示すブロック図(図1)において、ブリッジ回路1の逆導通型半導体スイッチSW1とSW4を、それぞれダイオード9で置き換え、コンデンサ2の個数を2個としてハーフブリッジ化した例を示すものである。ハーフブリッジ化によりコンデンサ2の個数が2倍になるが、逆導通型半導体スイッチの個数が2個と半分で済む。ダイオード9には短時間のみ電流が流れ、導通損失が少ないのが特徴である。
本発明に係るインバータ電源装置の構成を示す回路ブロック図である。 従来の磁気エネルギー回生スイッチを用いたパルス電流発生装置である。 本発明に係るインバータ電源装置のパルス電流発生の動作説明図である。 定電流電源からの電力の注入(コンデンサの充電)を説明する図である。 インバータ電源装置の動作を説明する図である。 図5のシミュレーション条件と結果を示す図である。 本発明の実施例1に係るインバータ電源装置のモデル実験の回路図と実験結果である。 本発明の実施例2に係るインバータ電源装置で、ハーフブリッジ構成の磁気エネルギー回生スイッチを用いたインバータ電源装置を示す図である。
1 ブリッジ回路
2 コンデンサ
3 誘導性負荷
4 平滑用コイル
5 直流電源
6 (ゲート)制御手段
7 整流用ブリッジダイオード
8 AC電源
9 ダイオード
10 定電流電源

Claims (5)

  1. 誘導性負荷(3)に高周波の交番パルス電流を供給するためのインバータ電源装置であって、該インバータ電源装置は、
    直流電源(5)と、
    自己消弧形素子とダイオードとの逆並列回路から成る逆導通型半導体スイッチを4個ブリッジ接続して構成されるブリッジ回路(1)と、
    前記ブリッジ回路(1)の直流端子間に接続され、前記ブリッジ回路(1)内の前記逆導通型半導体スイッチを構成する前記自己消弧形素子を阻止状態にして電流を遮断した時に、回路に流れる電流の磁気エネルギーを回生して蓄積するコンデンサ(2)と、
    前記直流電源(5)と前記ブリッジ回路(1)の前記直流端子との間に直列に挿入され、前記直流電源(5)からの直流電力を平滑するための平滑用コイル(4)と、
    前記逆導通型半導体スイッチを構成する前記自己消弧形素子の導通状態/阻止状態を制御する制御手段(6)と、
    を備えるとともに、
    前記制御手段(6)は、前記誘導性負荷(3)に供給しようとする前記交番パルス電流の周期で、前記逆導通型半導体スイッチのうち、前記ブリッジ回路(1)の対角線上に位置するペアの2個の前記逆導通型半導体スイッチを構成する前記自己消弧形素子を同時に導通状態/阻止状態にし、かつ2組のペア間で前記逆導通型半導体スイッチを構成する前記自己消弧形素子を同時に導通状態にすることのないように制御するとともに、
    発生する前記交番パルス電流の周波数が、前記誘導性負荷(3)のインダクタンスと前記コンデンサ(2)の静電容量とで決まる共振周波数よりも低くなるように運転制御することにより、
    前記交番パルス電流の周波数によらず共振条件を維持でき、前記回路に流れる電流の磁気エネルギーを回生して再利用するとともに、前記平滑用コイル(4)を介して前記直流電源(5)から前記コンデンサ(2)を充電することで前記誘導性負荷(3)に持続して前記交番パルス電流を供給することを特徴とするインバータ電源装置。
  2. 前記直流電源(5)に替えて、商用交流電源(8)より整流用ブリッジダイオード(7)を介して整流した前記直流電力を、前記平滑用コイル(4)に供給することを特徴とする請求項1に記載のインバータ電源装置。
  3. 前記ブリッジ回路(1)と前記コンデンサ(2)とで構成される磁気エネルギー回生スイッチを、前記逆導通型半導体スイッチを2個直列接続した逆導通型半導体スイッチレグと、前記コンデンサ(2)を2個の直列接続とし、各前記コンデンサ(2)に逆並列にダイオード(9)を接続してクランプしたコンデンサレグとを、並列に接続したハーフブリッジ構成の磁気エネルギー回生スイッチで置き換えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のインバータ電源装置。
  4. 前記誘導性負荷(3)が、被加熱物を誘導加熱するための誘導コイルであって、誘導加熱用の電源として用いられる、請求項1乃至3のいずれかに記載のインバータ電源装置。
  5. 被加熱物を誘導加熱するための前記誘導コイルと、請求項4に記載のインバータ電源装置とを備え、前記インバータ電源装置から前記誘導コイルに高周波の交番パルス電流を供給して誘導加熱を行うことを特徴とする誘導加熱装置。
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