JP4406197B2 - ポリオレフィン樹脂用着色剤およびその利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックを成形加工して得られる成形品の形状を制御する方法に関し、詳しくは、特定のハロゲン化金属フタロシアニンからなる低収縮性顔料組成物、およびそれを主な着色成分とする着色剤を用いて着色されたプラスチック成形品の反りや変形を小さくする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
プラスチック着色剤として使用されているハロゲン化金属フタロシアニンは、耐光性、耐熱性、耐移行性、鮮明な色相、高い着色力等の特性を有する。一般にハロゲン化金属フタロシアニンは黄味の色相が好まれ、ハロゲン置換基数が理論値の16に近いもの程黄味となる。しかしながら、ハロゲン置換基数の多いハロゲン化金属フタロシアニンは、ポリオレフィンやポリエステルなどの部分的に結晶性を有する樹脂の着色に用いた場合、造核作用が大きく、部分的に結晶性を有する樹脂の結晶化温度の上昇や球晶が小さくなる等の結晶性に影響を及ぼし、着色された樹脂の収縮性や収縮のバランス(成形収縮比、収縮差率)が変化する現象を引き起こす。その結果プラスチック成形品においては反り、変形あるいは寸法変化になって現れ、成形加工上の問題となっていた。反りや変形は、コンテナ、プラスチックパレット、キャップやボトルなどの成形品にとっては致命的な問題であった。
【0004】
成形品の反りや変形を改善する方法としては、反り、変形、寸法変化を加味した金型を用いる方法がある。しかし、樹脂の種類、着色剤、添加剤、成形条件などにより成形品の収縮率が大きく異なる為、反りや変形を加味した金型の設計は難しく、何度も修正を行わなければならない。また、成形メーカーでは、成形温度、射出圧、射出時間、射出速度、冷却時間等の加工条件を変えることにより、反りや変形の改善を行っている。しかし、この場合も樹脂の種類、着色剤、添加剤及び成形品の大きさや形状により収縮率が異なる為、反りや変形を予測した加工条件の設定は困難で、加工条件を試行錯誤で何度も修正する必要があった。また、成形サイクルを長くし、生産性を悪くする場合が多かった。
【0005】
反りや変形を改善する他の方法としては、結晶化剤(結晶核剤、造核剤あるいは結晶化促進剤)の添加が行われている。結晶化剤の添加は、結晶核となる成分を多く配合することにより、微細な結晶を均一にかつ急速に生成させて、顔料による収縮への影響を低減することに因る。あるいは、顔料による収縮方向とは異なる方向に収縮させる結晶化剤を加えることによって見かけ上の収縮差をなくすことによる。結晶化剤を用いることにより、成形サイクルを短くできること、また剛性や透明性が上がることなどが知られている。結晶化剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム、アジピン酸ナトリウムなどのカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートなどの酸性燐酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトールのアセタールタイプが用いられている。しかし有機顔料によって引き起こされる成形歪みに対しては、効果が不十分であった。
【0006】
従って、最良の方法は着色剤として用いられる顔料を改質して結晶核として働かないようにすることである。顔料の結晶形、粒子径、形状を変えること、顔料骨格に各種の置換基を導入した顔料誘導体(有機色素誘導体)を添加することによる顔料表面の改質、顔料に樹脂やシランカップリング剤等の表面処理を施すことによる顔料表面の改質などが行われている。
【0007】
顔料の結晶形、粒子径、形状を変える方法としては、特開昭57−155242号公報、特開昭56−99245号公報等にイソインドリノンの顔料表面改質が例示されている。特許文献1にはアルミニウムフタロシアニンが例示されている。しかし、顔料の改質法は必ずしも十分な効果が得られておらず、色相、分散性、着色力、耐熱性、耐光性等の顔料元来の物性に影響を及ぼしてしまう。
【0008】
反りや変形の改善を目的とした、顔料構造に置換基を導入したいわゆる顔料誘導体による表面改質の方法としては、特公昭53−7185号公報、特公昭56−10348号公報、特公昭61−36017号公報、特開昭51−18551号公報、特開昭58−23840号公報、特開昭62−45896号公報等に見られるごとく多数提案されているが、反りや変形は幾分改善されるものの十分ではなく、また、色移行性に問題があり、実用には至っていない。また、添加剤の色による色相の変化や、着色力の低下、分散性の低下があり、添加剤が高価である点等の欠点がある。
【0009】
顔料誘導体以外の顔料の表面改質方法としては、有機シランや有機チタンによる表面処理、熱可塑性樹脂による顔料の表面コーティングが行われている。特開平05−194873号公報には、有機顔料残基を有するスルホン酸と水溶性高分子アンモニウム塩からなるポリマーを共存させ、顔料表面をポリマーで改質することが記載されている。しかし、いずれも効果は不十分であった。有機顔料を用いて樹脂、特に部分的に結晶性を有する樹脂を着色したときの成形品における成形歪みは上記いずれの方法でも改善されず大きな問題であった。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−279338号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ハロゲン化金属フタロシアニンを使用したポリオレフィンの着色成形において、反りや変形を小さくし寸法精度に優れたプラスチック用着色剤ならびにその着色成型物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべくハロゲン化金属フタロシアニンのハロゲン置換基数と、ポリオレフィン着色成型物の反りや変形を詳細に調査検討を重ね、反りや変形にはハロゲン置換基数の分布が影響することを見いだした。その結果、特定のハロゲン置換基数を有するハロゲン化金属フタロシアニンからなる着色剤を用いて着色することにより、優れた耐光性、耐熱性、耐移行性等を失わず樹脂成形品の反りや変形を小さくできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、金属フタロシアニン骨格に複数個のハロゲンが置換したハロゲン化金属フタロシアニンからなり、ハロゲン置換基数の平均が1.0〜14.5個で分布幅が5個以上であり、ハロゲン置換基数1個から14個である化合物が50%以上存在するハロゲン化金属フタロシアニンからなるポリオレフィン樹脂用着色剤ならびにその使用に関する。
更に本発明は、上記着色剤、および部分的に結晶性を有する樹脂からなる着色樹脂組成物に関する。
更に本発明は、着色剤が着色樹脂組成物を全量を基準として、0.001〜80重量%である着色樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明の好ましい態様としては以下の如くである。
本発明に用いるハロゲン化金属フタロシアニンは、金属フタロシアニン骨格に複数個のハロゲンが置換したハロゲン化金属フタロシアニンからなり、ハロゲン置換基数の平均が1.0〜14.5個で分布幅が5個以上であり、ハロゲン置換基数1個から14個である化合物が50%以上存在するハロゲン化金属フタロシアニンである。
ここで、ハロゲン置換基数はマススペクトルによるピークが確認されたもので、含有量は強度比から求め、モル%で示す。
【0013】
ハロゲン化金属フタロシアニンのハロゲン置換基数は第1図、第2図に示すマススペクトルに見られるごとく分布を持つ。
【0014】
本発明のハロゲン化金属フタロシアニンを用いて樹脂を着色する方法により、着色された成形品の反り、変形に優れるという機構については、必ずしも明らかになっていない。しかし、本発明のハロゲン化金属フタロシアニンは第1図に例示される様にハロゲン置換基数の分布幅が5以上と広く、着色樹脂組成物とした場合、部分的に結晶性有する樹脂の結晶化に対する核剤としての効果が防止されているためと考えられる。
ハロゲン置換基数が極端に低いもの、あるいは高いものは第2図に例示される様に置換基数分布幅が5より少なくなるため、好ましくない。
【0015】
本発明のハロゲン化金属フタロシアニンの金属としては、銅、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウムが例示され、結晶構造的に安定で耐性が高く、色相が鮮明となる銅が特に好ましい。
【0016】
本発明のハロゲン置換基数の分布幅の広いハロゲン化金属フタロシアニンの製法は、粗製ハロゲン化金属フタロシアニンの製法に係わり、ハロゲン置換基数分布が5以上となるものであれば特に制限はないが、クロルスルホン酸、あるいは、四塩化チタンの溶融塩を用いてハロゲンを導入する方法ではハロゲン化反応が均一化され、置換基数分布が狭くなる傾向がある。また、あらかじめハロゲン置換基を導入したハロゲン化フタル酸を用い粗製ハロゲン化金属フタロシアニンを合成する製法はさらに置換基数分布が狭くなる傾向があり、高ハロゲン化金属フタロシアニンが得にくいのに対し、粗製金属フタロシアニンを塩化アルミ、あるいは塩化アルミと食塩の溶融塩とした状態でハロゲンを導入する、いわゆる塩化アルミ法による製法は置換基数が広くなるため好ましい。
ハロゲン置換基数は導入するハロゲン量を制御することにより行う。導入するハロゲン量は、製法、装置、反応条件等で異なるが、ハロゲン量が少ない場合はハロゲン置換基数が少なく、ハロゲン量が多い場合はハロゲン置換基数が多くなる。導入するハロゲン量が過小、または、過大の場合は、ハロゲン置換基数の分布幅が狭くなるため、ハロゲン置換基数の平均が1.0〜14.5個となる量が好ましい。
【0017】
粗製ハロゲン化金属フタロシアニンは、このまま用いると着色樹脂組成物としては発色が不十分のため、硫酸を使用したアシッドペースティング法により顔料化を行う。アシッドペースティング法での顔料化が粗製ハロゲン化金属フタロシアニン粒子を溶解後析出させるため、粒子形状が不均一で、かつ結晶性が弱まるため好ましい。
【0018】
本発明はハロゲン化金属フタロシアニンを用いて樹脂を着色することを特徴とするが、着色剤においては、他の成分として、本発明の効果を阻害しないか、あるいは衛生上問題ない範囲で、他の有機顔料、無機顔料、ワックス、又その誘導体、重金属不活性剤、アルカリ金属、アルカリ土類金属または亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などからなる帯電防止剤、ハロゲン系、リン系または金属酸化物等の難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤、加工助剤、充填剤、公知のポリマー用の各種添加剤などを包含させることができる。
【0019】
本発明に用いられる着色剤の好ましい一つの形態は、ドライカラーと呼ばれる顔料を高濃度に含有する粉末状の着色剤である。ドライカラーの場合、一般的にハロゲン化金属フタロシアニン100重量部に対して、脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸及びそれらの金属塩を分散剤として1〜1000重量部含有する。脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸及びそれらの金属塩の例としては、脂肪族カルボン酸としては、カプリル酸、オレイン酸、ステアリン酸等が挙げられ、芳香族カルボン酸としてはフタル酸、安息香酸等が挙げられ、又金属としては、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。ドライカラーは粉末状で作業性は悪いものの、顔料の濃度が高く、少量で着色に寄与する為価格的に最も経済的であり、ポリオレフィンの着色に多く用いられる。成形に供する場合は、成形用熱可塑性樹脂100重量部に対して、ドライカラー0.001〜10重量部が用いられる。熱可塑性樹脂のペレットとドライカラーを混合機等で予め均一に混合した後に成形加工に供される。
【0020】
本発明において、着色される樹脂、特に部分的に結晶性有する樹脂は、加熱により軟化し、冷却により再度、硬化するものであり、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレンおよび/またはジビニルベンゼンのホモポリマー、あるいはブロックもしくはランダムコポリマーまたはターポリマー、特にHDPE、LDPE、ポリプロピレンおよびポリスチレンのようなα−オレフィン類、またポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66のようなポリアミド類、および熱可塑性アイオノマー類等も挙げられる。本発明の方法は、これらの結晶性を有する樹脂、特に熱可塑性の結晶性を有する樹脂に対して高い効果を有し、特に、α−オレフィン、エチレン、プロピレンおよびブチレンのホモポリマー、コポリマー等のいわゆるポリオレフィン樹脂に対しは、特に顕著な効果を有する。
【0021】
部分的に結晶性有する樹脂としては、MFR(メルトフローレート、すなわち溶解粘度)が0.01〜30のものが好ましく、MFRが0.01未満では着色樹脂組成物の溶融粘度が高過ぎるために成形加工性が悪かったり、成形品にウエルエドマークやフローマークが発生する。一方、MFRが30を越えると、成形品の機械物性の低下が懸念される。特に、高密度ポリエチレンを用いる場合には、MFRが0.05〜10、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを用いる場合には、MFRが0.05〜20であることが好ましい。
【0022】
本発明は、ハロゲン化金属フタロシアニンを含有する着色剤を用いて部分的に結晶性有する樹脂を着色することを特徴とするが、成形に供される前に、あらかじめ部分的に結晶性有する樹脂を着色したペレット状の着色樹脂組成物を製造し、その着色されたペレット状の着色樹脂組成物を用いて成形加工に供しても良い。
【0023】
着色樹脂組成物とは、ハロゲン化金属フタロシアニンからなる着色剤と部分的に結晶性を有する樹脂から構成される。そのまま成形に供されるペレット状のもの(着色ペレット)であっても良いし、あるいは顔料を高濃度に含有するいわゆるマスターバッチと称されるペレット状の着色剤であっても良い。そして、顔料を高濃度に含有するマスターバッチの場合には、係わるマスターバッチを樹脂で希釈して成形に供し、成形品を得ればよい。
【0024】
マスターバッチと着色ペレットを比較すると、加工工程等は大差なく、マスターバッチの方が顔料を高濃度に含有する分、着色ペレットよりややコスト高ではあるが、マスターバッチの場合には安価な樹脂で0.5〜200倍に希釈して成形品を得るので、最終成形品として比較すると着色ペレットで成形品を得る場合より、マスターバッチを用いて樹脂で希釈して成形品を得る方が、安価になり好ましい。
【0025】
着色樹脂組成物のうち、そのまま成形に供されるいわゆる着色ペレットの場合には、樹脂100重量部、本発明の着色剤0.001〜10重量部を含有することが好ましい。着色剤が0.001重量部未満だと極めて淡色の着色しか得られない。また、10重量部よりも多く顔料を含有すると成形品としての機械物性等を損なう場合がある。
【0026】
着色樹脂組成物のうち、顔料を高濃度に含有するマスターバッチの場合は、樹脂100重量部、本発明の着色剤0.1〜200重量部を含有することが好ましい。着色剤が0.1重量部未満だとマスターバッチとしての意味合いがなく、200重量部よりも多く着色剤を含有するとマスターバッチの造粒が困難になる。そして、顔料を高濃度に含有するマスターバッチの場合には、係るマスターバッチを部分的に結晶性有する樹脂で希釈して成形に供し、成形品を得ればよい。希釈に用いられる部分的に結晶性有する樹脂としては、顔料を高濃度に含有するペレット状の着色樹脂組成物を得る際に用いられた部分的に結晶性有する樹脂と同様のものが例示できる。なお、最終成形品は、前記した希釈を必要とせずそのまま成形に供されるペレットの場合と同様に、部分的に結晶性有する樹脂100重量部、着色剤0.001〜10重量部を含有することが好ましい。
【0027】
着色樹脂組成物においては、本発明の効果を阻害しないか、あるいは衛生上問題ない範囲で他の有機顔料、無機顔料、他の樹脂及至ワックス、又その誘導体や、重金属不活性剤、アルカリ金属、アルカリ土類金属または亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などからなる帯電防止剤、ハロゲン系、リン系または金属酸化物等の難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤、加工助剤、充填剤、公知のポリマー用の各種添加剤などを包含させることができる。
【0028】
着色樹脂組成物を得る際には、着色剤と部分的に結晶性有する樹脂を混練する前に、着色剤をポリエチレンワックス等の分散剤で処理を行い前加工することが好ましい。前加工する方法としては、単に着色剤と分散剤をミキサーに配合し混合したものと、着色剤と分散剤を配合し溶融混練後に粉砕したものがあるが、着色剤の均一分散性の点で、後者の溶融混練を行ったタイプの加工処理方法が好ましい。
【0029】
本発明において、樹脂を成形加工して成形品を得る際の成形方法は特に限定されるものではない。射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、Tダイ押出し成形、エンゲル成形、真空成形等、成形方法にかかわらず、着色された成形品の反りや変形を抑制する効果が得られる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部および%は、特に指定がない場合はそれぞれ重量部およびモル%を表す。なお、実施例、比較例で得られたハロゲン化金属フタロシアニンのハロゲン置換基数はマススペクトル(日本電子データム製JMS−DX303HF)により測定した。
【0031】
反りや変形の評価は、射出成形機にて収縮性評価用の金型(射出方向とその垂直方向に100mmの標線が設けられた縦150mm、横120mm、厚さ2mmのプレートを作成する金型)を用いて成形温度は220℃、金型温度40℃で連続で20枚射出成形し、評価にはその内、14枚目から19枚目の6枚を用いた。成形されたプレートを恒温室で3日保存した後、精密ノギスにて標線間距離を計測し、その値から射出方向とその垂直方向の収縮率を求めた。その後、射出方向とその垂直方向の収縮率の比で計算される収縮差率と、目視で反りや変形の程度を評価した。なお収縮差率の計算式は以下の通りである。成形プレート一般的に樹脂のみ(以下ナチュラル樹脂と呼ぶ)で成形したプレートの収縮差率との差が10%以内に収まれば低収縮着色剤と呼ばれる。
収縮差率=(垂直方向の収縮率−射出方向の収縮率)/(垂直方向の収縮率)
目視評価の基準は、ナチュラル樹脂のプレートと比較して、反りや変形が同程度であれば顔料の影響が見られないとして○、反りや変形が激しいものは×、ナチュラルのプレートよりは反りや変形が見られるがその差が小さいものを△とした。
【0032】
製造例1
塩化アルミニウム200部、食塩40部を加熱して溶融塩とし粗製銅タロシアニン40部を添加した後170℃に加熱し、塩素を毎時6部の割合で10時間導入した。塩素導入後、反応混合物を多量の水に注入し、濾過水洗、乾燥、粉砕を行い、54部の塩素化銅フタロシアニンを得た。得られた塩素化銅フタロシアニンの塩素置換基数の平均は13.3個、塩素置換基数分布幅8であった。また塩素置換基数1個から14個である化合物は79%であった。
塩素化銅フタロシアニン50部を98重量%硫酸300部に添加し、40〜45℃で4時間撹拌した後混合物を2000部の水に添加した。80℃で2時間撹拌後、濾過、水洗、乾燥、粉砕を行い塩素化銅フタロシアニン顔料46部を得た。
【0033】
製造例2
製造例1の塩素の代わりに臭素を毎時2部の割合で29時間導入した後、さらに塩素を毎時6部の割合で6時間導入した以外は製造例1と同じ操作を行い、74部の臭素化塩素化銅フタロシアニン顔料を得た。臭素化塩素化銅フタロシアニンのハロゲン(塩素と臭素の合計)置換基数の平均は13.1個、ハロゲン置換基数分布幅7であった。またハロゲン置換基数1個から14個である化合物は86%であった。
【0034】
製造例3〜12
各種ハロゲン化銅フタロシアニン顔料を製法例 1あるいは、製法例2に準じて製造した。得られたハロゲン化銅フタロシアニンのハロゲン置換基数の平均、ハロゲン置換基数分布幅、ハロゲン置換基数1個から14個である化合物の比率は表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1
製造例1のハロゲン化銅フタロシアニン顔料100部にステアリン酸亜鉛100部をよく混合しドライカラーを得た。得られたドライカラーのうち2部に高密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン社製Hizex 2100J)1000部を加え、タンブラーにて10分間よく混合した後、射出成形機(東芝機械製IS100FIV)にてプレート状に成形し評価した。ナチュラル樹脂のプレート同様の収縮差率や、反りを示した。
【0037】
実施例2〜7
製造例1のハロゲン化銅フタロシアニン顔料を表2のように変更し、ほかは実施例1と同様に試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0038】
比較例1〜5
製造例1のハロゲン化銅フタロシアニン顔料を表2のように変更し、ほかは実施例1と同様に試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例8
製造例1のハロゲン化銅フタロシアニン顔料100部にポリエチレンワックス(三井住友ポリオレフィン社製HiWax NL−500)100部をよく混合したのち、3本ロールにてよく混練しパウダー状の着色剤を得た。得られた着色剤のうち1部に高密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン社製Hizex2208J)100部を加え、スーパーミキサーにて5分間よく混合した後、単軸押出機にて着色ペレットを得た。得られた着色ペレットを射出成形機にてプレート状に成形し、成形品を得た。得られたプレートはナチュラル樹脂同様の収縮差率や、反りを示した。
【0041】
実施例9
実施例1において高密度ポリエチレンの代わりにポリプロピレン樹脂(三井住友ポリオレフィン社製グランドポリプロJ−104)を用いた以外は同様にし、成形品を得た。得られたプレートはナチュラル樹脂同様の収縮差率や、反りを示した。
【0042】
実施例10〜15
実施例9のハロゲン化銅フタロシアニン顔料を表3のように変更し、ほかは実施例9と同様に試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0043】
比較例6〜7
実施例9のハロゲン化銅フタロシアニン顔料を表3のように変更し、ほかは実施例9と同様に試験を行った。試験結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
実施例16
実施例8において高密度ポリエチレンの代わりにポリプロピレン樹脂(三井住友ポリオレフィン社製グランドポリプロJ−104)を用いた以外は同様にし、成形品を得た。得られたプレートはナチュラル樹脂同様の収縮差率や、反りを示した。
【0046】
【発明の効果】
本発明のハロゲン化金属フタロシアニンは成形品の反りや変形による不良品が減少し、生産性の向上を図ることが出来た。そのため、コンテナ、プラスチックパレット、キャップやボトルなどの広範囲な分野で収縮性能が厳しく要求される用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1で得られたハロゲン化金属フタロシアニンのマススペクトル図
【図2】製造例8で得られたハロゲン化金属フタロシアニンのマススペクトル図
Claims (3)
- 金属フタロシアニン骨格に複数個のハロゲンが置換したハロゲン化金属フタロシアニンからなり、ハロゲン置換基数の平均が1.0〜14.5個で分布幅が5個以上であり、ハロゲン置換基数1個から14個である化合物が50%以上存在するハロゲン化金属フタロシアニンを、硫酸を使用したアシッドペースティング法により顔料化してなることを特徴とするポリオレフィン樹脂用着色剤。
- 請求項1記載の着色剤、およびポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする着色樹脂組成物。
- 着色剤が着色樹脂組成物の全量を基準として、0.001〜80重量%である請求項2記載の組成物。
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