JP4404329B2 - 炎検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有炎燃焼時のCO2共鳴により発生する赤外線放射を検出して、炎の有無を判定する炎検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有炎燃焼により発生する赤外線放射を検出して、炎の有無を検出する炎検出装置にあっては、炎と炎以外の赤外線放射体との識別を行うため、有炎燃焼時に発生するCO2の共鳴放射による波長帯域を含む複数の波長帯域における放射線強度を検出して、それら複数の波長帯域における検出値の相対比により炎の有無を検出する2波長式、3波長式等の炎検出装置や炎検出方法がよく知られている。
【0003】
ここで、従来技術における2波長式、及び、3波長式の炎検出装置について、簡単に説明する。
図15は、燃焼炎と、その他の代表的な放射体の放射線スペクトルを示す概念図であり、横軸は放射線の波長、縦軸は放射線の相対強度を示す。
図15に示すように、燃焼炎(スペクトル特性1a、1b)においては、CO2の共鳴放射により4.4〜4.5μm付近の波長帯域に放射線相対強度のピークがあり、また、このピーク波長の近傍に存在する特徴的な波長としては、例えば、短波長側の3.8μm付近に、放射線相対強度が低い波長帯域が存在する。
【0004】
なお、CO2の共鳴放射により、4.3μm帯に赤外線の放射強度のピークがあることが知られている。しかしながら、実際に測定した場合にあっては、4.4〜4.5μm付近に放射強度のピークが現れることが経験的に示されている。したがって、以下では、特に断らない限り、CO2共鳴放射帯とは、4.4〜4.5μm帯を指すものとする。
【0005】
したがって、上述した2波長式の炎検出装置にあっては、4.4〜4.5μm付近の波長帯域と、3.8μm付近の波長帯域における各々の放射エネルギーを狭帯域の光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光素子により該放射エネルギーを検出して対応する電気信号に変換し、それぞれの検出出力の相対比をとり、所定のしきい値と比較することにより炎と判定する。これにより、炎以外の赤外線放射体、例えば、太陽光(6000°C)等の高温放射体(スペクトル特性2)や、300°C程度の比較的低温の放射体(スペクトル特性3)、人体などの低温放射体(スペクトル特性4)等との識別が可能となる。
【0006】
また、上述した2波長に加え、CO2の共鳴放射帯である4.4〜4.5μm帯の長波長側の、例えば、5.1μm付近の波長帯域における放射エネルギーを、上記2波長式と同様の手法で検出し、これらの3波長帯域における検出出力の相対比によって炎の有無を判定する3波長式の炎検出装置も知られており、このような炎検出方法により、炎と炎以外の赤外線放射体との識別性能をさらに向上させることができる。
このような複数波長方式の炎検出装置は、例えば、特公昭55−33119号公報、特公昭59−34252号公報等に記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術においては、以下に示すような問題を有していた。
(1)有炎燃焼時に発生するCO2の共鳴放射による波長帯域(4.4〜4.5μm付近の波長帯域)を含む、複数の波長帯域における放射線の強度を検出するにあたって、一般に、光学式のバンドパスフィルタが使用されているが、これらの光学式バンドパスフィルタは、いずれも狭帯域バンドパスフィルタで構成されていたため、その製品価格が極めて高価であり、その結果、炎検出装置のコストアップを招くという問題を有していた。
【0008】
また、炎検出の精度を向上させるために、上述した3波長式の炎検出装置のように、検出波長帯域数を更に増やした場合には、狭帯域バンドパスフィルタをさらに追加して使用しなければならず、炎検出装置の大幅なコストアップを招いていた。さらに、この場合、各々異なる通過波長帯域を有する狭帯域バンドパスフィルタを受光素子の前面に配置したセンサモジュールを、個別に備える必要があるため、炎検出装置の装置規模が大型化するという問題を有していた。
【0009】
(2)また、4.4〜4.5μm付近の波長帯域と、それよりも比較的短波長側、例えば、3.8μm付近の波長帯域における、それぞれの放射線相対強度の、例えば、相対比により炎を判定する2波長式の炎検出装置にあっては、炎以外の比較的低温側の赤外線放射体(例えば、図15において、スペクトル特性3を示す比較的低温の放射体)等に対して、条件によっては、炎と誤識別する可能性があり、その識別性能が必ずしも十分ではなかった。
【0010】
このような問題は、4.4〜4.5μm付近の波長帯域と3.8μm付近の波長帯域における放射線相対強度の相対比が、炎の燃焼状態により大きく変動することに起因する。すなわち、図15に示すように、比較的青い炎(完全燃焼に近い炎)が示すスペクトル特性1aと、比較的赤い炎(不完全燃焼の度合いが大きい)が示すスペクトル特性1bにおいて、4.4〜4.5μm付近を含む長波長側では、炎の燃焼状態に関係なく放射線の相対強度は、ほぼ安定して略同等の傾向を示すのに対して、4.4〜4.5μm帯の短波長側、例えば、3.8μm付近の帯域では、炎の燃焼状態に応じて放射線の相対強度は、大きく変動する傾向を示す。
【0011】
具体的には、3.8μm付近の波長帯域では、比較的赤い炎のスペクトル特性1bは、比較的青い炎のスペクトル特性1aに比較して、放射線の相対強度が極めて大きく、4.4〜4.5μm付近の波長帯域と3.8μm付近の波長帯域における放射線相対強度の相対比は、比較的赤い炎のスペクトル特性1bの場合、きわめて小さい値(すなわち、3.8μm付近の放射線相対強度を基準として、4.4〜4.5μm付近の放射線相対強度の相対比が、例えば、2程度)になり、比較的青い炎のスペクトル特性1aの場合(すなわち、3.8μm付近の放射線相対強度を基準として、4.4〜4.5μm付近の放射線相対強度の相対比が、例えば、10程度)に比較して、概ね5分の1以下となる。
【0012】
そして、火災時等に発生する一般的な炎は比較的赤い炎であることから、炎以外の赤外線放射体の識別を行うために設定される、4.4〜4.5μm付近の波長帯域と3.8μm付近の波長帯域における放射線相対強度の相対比に対するしきい値と、比較的赤い炎のスペクトル特性1bにおける相対比との間の差異が微小(しきい値との大小関係が微妙)となり、比較的低温の赤外線放射体との識別が困難になるという問題を有していた。
【0013】
(3)炎検出装置は、一般に広い区域、例えば、トンネル内やビルの吹き抜け部など高天井を有する建物内などで発生する火災を監視するために適用されることが多いため、一台の炎検出装置における検出感度は、例えば、前方最遠で20m以上離れた区域を監視できるように高い検出感度に設定されている。そして、このような高い検出感度に設定されていることにより、火災監視区域内の、炎検出装置に比較的近距離の範囲を人体等の低温放射体が通過したような場合であっても、4.4〜4.5μm付近の波長帯域に無視できない程の出力が現れることが、出願人の各種実験の結果、明らかとなっている。
【0014】
また同様に、火災監視区域内の、炎検出装置に比較的近距離の範囲を車両が通過した場合にも、4.4〜4.5μm付近の帯域に無視できない程の出力が現れることが、出願人の各種実験の結果、明らかになっている。この車両通過時の4.4〜4.5μm付近の波長帯域と3.8μm付近の波長帯域における放射線相対強度の相対比は、比較的低温側、例えば、図15のスペクトル特性“3”の場合に近いものであることが実験によって明らかになっている。
【0015】
このような人体や車両の通過時に、3.8μm付近の波長帯域で検出される放射線相対強度は、4.4〜4.5μm付近の波長帯域の放射線相対強度よりも、比較的小さくなることから、4.4〜4.5μm付近の波長帯域と3.8μm付近の波長帯域における放射線相対強度の相対比に基づいて、炎を識別する手法では、上記(2)の問題点において説明したように、比較的低温側の放射に対してしきい値の設定が微妙であるため、炎との識別が困難となり、誤検出を起こす可能性があった。
【0016】
このような問題を解決するためには、4.4〜4.5μm帯の長波長側の、例えば、5.1μm付近の波長帯域を加え、3つの波長帯域の放射エネルギーを検出し、これらの検出出力の相対比によって炎の有無を判定する3波長式を採用する方法があるが、この場合、上記(1)の問題点が顕在化するという問題を有していた。
【0017】
(4)また、一般に、トンネル用の炎検出装置等にあっては、検出性能の確認等を行うために、受光素子の直近に配置した試験ランプを点滅させ、擬似火炎光として受光素子に照射し、検出性能試験を行う方式が採用されている。ここで、直近の試験ランプ(ハロゲン球など)からの赤外線放射は、例えば、図16に示すような放射スペクトル特性を有している。すなわち、試験ランプからの赤外線放射は、4.4〜4.5μm帯と3.8μm帯の放射線相対強度の相対比の点で、図15に示したような有炎燃焼のスペクトル特性1a、1bとは全く異質のスペクトル特性を有しているため、4.4〜4.5μm付近の波長帯域と3・8μm付近の波長帯域における放射線相対強度の相対比に基づいて、炎を判定(識別)する2波長式の炎検出装置にあっては、厳密な検出性能試験を行うことが困難であるという問題を有していた。
【0018】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑み、簡易かつ安価な構成を用いつつ、炎と炎以外の放射線源との高い識別性能を実現することができる炎検出装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明に係る炎検出装置は、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、概ね4.5μmを中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させる狭帯域バンドパスフィルタと、前記狭帯域バンドパスフィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する、焦電体を備える第1の受光素子と、前記狭帯域バンドパスフィルタの透過波長帯域の長波長側に隣接した、概ね5.0μmを超える所定の波長帯域の光を透過させるカットオンフィルタと、前記カットオンフィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する、焦電体を備える第2の受光素子と、前記狭帯域バンドパスフィルタおよび前記カットオンフィルタ前面の観測対象となる監視エリア側に設けられた、概ね7.0μm以下の光を透過させ、それより長波長の光を遮断するロングウェーブカット特性を有するショートウェーブパスフィルタ部材と、前記第1の受光素子及び第2の受光素子の出力に基づいて所定規模以上の炎の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴としている。
【0020】
請求項2記載の発明に係る炎検出装置は、請求項1記載の炎検出装置において、前記狭帯域バンドパスフィルタは、前記第1の受光素子を収納した第1のセンサモジュールの、前記第1の受光素子の前面に配置され、前記カットオンフィルタは、前記第2の受光素子を収納した第2のセンサモジュールの、前記第2の受光素子の前面に配置され、前記ショートウェーブパスフィルタ部材は、前記第1のセンサモジュールおよび前記第2のセンサモジュールを収納する本体カバーの、前記第1の受光素子および前記第2の受光素子のうち少なくとも前記第2の受光素子の前面に設けられた窓用開口部に配置される、前記第1のセンサモジュールおよび前記第2のセンサモジュールの保護用透光性窓であることを特徴としている。
【0022】
請求項3記載の発明に係る炎検出装置は、請求項2記載の炎検出装置において、前記ショートウェーブパスフィルタ部材は、サファイアガラスであることを特徴としている。
なお、本発明に係る炎検出装置は、以下の構成を有するものであってもよい。
すなわち、前記第2の受光素子により設定される第2の検知エリアは、前記第1の受光素子により設定される第1の検知エリアの比較的近距離エリアに設定することができる。
【0023】
また、本発明に係る炎検出装置は、前記狭帯域バンドパスフィルタと、前記カットオンフィルタと、前記第1の受光素子と、前記第2の受光素子と、前記ショートウェーブパスフィルタ部材とから構成される炎検出部を一対備え、該一対の炎検知部により、該一対の炎検知部の設置位置を基準とする相異なる2方向に対し、所定の検知エリアを設定して、特定の火災監視区域内で発生する炎を検出することができる。
また、前記一対の炎検知部は、トンネル内の所定の設置位置を基準として、前記トンネルの長手方向の左右2方向に対し、各々独立した3次元の検知エリアを設定して、前記トンネル内で発生する炎を検出することができる。
【0024】
また、前記炎検出装置は、前記第1の受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出する第1の周波数抽出手段と、前記第2の受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出する第2の周波数抽出手段とを備え、前記第1及び第2の周波数抽出手段は、前記信号成分の通過特性が相互に異なるように設定することができる。
【0025】
また、前記第1及び第2の周波数抽出手段は、選択抽出した周波数のうち、少なくとも、実質的な炎特有のちらつき周波数帯域以外の周波数において、前記第2の周波数抽出手段により抽出された信号成分の強度が、前記第1の周波数通過手段により抽出された信号成分の強度よりも大きくなるように、信号通過特性を設定することができる。
【0026】
また、前記炎判定手段は、少なくとも、実質的な炎特有のちらつき周波数帯域以外の周波数において、前記第1及び第2の周波数抽出手段により抽出された各信号成分の強度に基づいて、炎特有のちらつき周波数を含む炎以外の放射線源を判別することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る炎検出装置の第1の実施形態を示す概略構成図であり、図2は、本実施形態に係る炎検出装置に適用されるセンサモジュールと、該センサモジュールを収納した本体カバーの構成例を示す概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る炎検知器は、大別して、所定の波長帯域を有する赤外線エネルギー(光エネルギー)を電気信号に変換して出力する第1の受光素子10aを備えたセンサモジュール100aと、第1の受光素子10aとは異なる所定の波長帯域を有する赤外線エネルギーを電気信号に変換して出力する受光素子10bを備えたセンサモジュール100bと、センサモジュール100a、100bの検知面側に配置されたセンサモジュール保護用の透光性窓108と、センサモジュール100a、100bから出力される各検出信号から、所定の周波数帯域の信号成分のみを通過させる前置フィルタ20a、20bと、前置フィルタ20a、20bを通過した信号成分を初段増幅するプリアンプ30a、30bと、プリアンプ30a、30bからの出力を、後述する炎判定処理に適した信号レベルに増幅するメインアンプ40a、40bと、メインアンプ40a、40bから出力される増幅出力(アナログ信号)をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す)50a、50bと、A/D変換された増幅出力に基づいて、炎の判定処理を実行する炎判定処理部(炎判定手段)60と、を有して構成されている。
【0029】
以下、各構成について具体的に説明する。
(イ)センサモジュール100a、100b
センサモジュール100aは、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される概ね4.5μmの波長帯域を中心波長とする狭帯域の放射線のみを高い透過率で透過する光学式の狭帯域バンドパスフィルタであって、例えば、中心波長±200〜400nmの極めて狭い波長帯域の放射線を選択透過する光学波長フィルタ105aと、該光学波長フィルタ105aを透過した光を受光して電気信号に変換して出力する焦電型の第1の受光素子10aを備えている。
【0030】
具体的には、図2に示すように、センサモジュール100aは、第1の受光素子10aが形成された基板101aと、該基板101aを基部103a上に支持するための基板搭載部102aと、基板搭載部102a側の背面側から端子104aが延在して設けられた基部103aと、受光素子10aの前方に狭帯域バンドパスフィルタである光学波長フィルタ105aを備えたカバー部材106aとからなるパッケージ化された構成を有している。
【0031】
また、センサモジュール100bは、概ね5.0μmを超える所定の波長帯域の放射線を良好に透過するカットオンフィルタで構成されるロングパスフィルタである光学波長フィルタ105bと、該光学波長フィルタ105bを透過した光を受光して電気信号に変換して出力する焦電型の第2の受光素子10bを備えている。
【0032】
具体的には、図2に示すように、センサモジュール100bは、第2の受光素子10bが形成された基板101bと、該基板101bを基部103b上に支持するための基板搭載部102bと、基板搭載部102b側の背面側から端子104bが延在して設けられた基部103bと、受光素子10bの前方にロングパスフィルタである光学波長フィルタ105bを備えたカバー部材106bとからなるパッケージ化された構成を有している。
【0033】
そして、これらのセンサモジュール100a、100bは、本体カバー107内に設けられた共通の取り付け部材110上に、互いに近接して所定の配列で配置されている。
なお、上述した光学波長フィルタ105a、105bは、例えば、シリコン、ゲルマニウム、サファイア等の基板上に、テルル化鉛PbTeと硫化亜鉛ZnSを蒸着積層することにより、上記所定の波長帯域の光を透過する特性を持たせることができる。
【0034】
(ロ)透光性窓108
透光性窓108は、センサモジュール100a、100bが収納された本体カバー107の一面側(図2では上面側;監視エリア側に相当する)であって、センサモジュール100a、100bの前面側に設けられた所定の開口部に配置され、例えば、サファイアガラス等の赤外線透光性の部材により形成されている。したがって、上記受光素子10a、10bは、各々の受光限界視野が透光性窓108aの縁辺部で規制されることにより、略同一の拡がり角度を有する検知エリアが設定される。
ここで、透光性窓108を構成するサファイアガラスは、概ね7.0μm付近以下の波長帯域の放射線を良好に透過するショートウェーブパス特性(換言すれば、概ね7.0μm付近より長波長の放射線を遮断するロングウェーブカット特性)を有するフィルタ部材として機能する。
【0035】
(ハ)前置フィルタ20a、20b
前置フィルタ20a、20bは、上記受光素子10a、10bの各々から出力される検出信号から、炎判定処理に用いられる特定の周波数帯域の信号成分のみを通過させて、後段の増幅手段(プリアンプ30a、30b、メインアンプ40a、40b)に伝達する機能を有している。
【0036】
(ニ)プリアンプ30a、30b/メインアンプ40a、40b
プリアンプ30a、30bは、各前置フィルタ20a、20bを介して入力される信号成分を所定の増幅率で初段増幅し、メインアンプ40a、40bは、プリアンプ30a、30bからの各出力を、後述する炎判定処理に適した信号レベルに増幅する。
【0037】
(ホ)A/D変換器50a、50b
A/D変換部50a、50bは、メインアンプ40a、40bから出力されたアナログ信号を後段の炎判定処理部60における炎判定処理に適したデジタル信号に変換する。なお、A/D変換部50a、50bは、後段の炎判定処理部60がデジタル信号処理を行う場合にのみ必要であり、アナログ信号レベルを直接基準値と比較するような処理回路の場合には省略することができる。
【0038】
(ヘ)炎判定処理部60
炎判定処理部60は、マイクロプロセッサユニット(MPU)等により構成され、第1の受光素子10aの受光出力(増幅出力)と第2の受光素子10bの受光出力(増幅出力)の相対比を算出することにより、炎と炎以外の赤外線源(放射線源)との識別判定処理を行う。なお、炎判定処理部60の具体的な処理動作については、後述する。
【0039】
上述したような構成を有する炎検出装置において、火炎FRから放射され、本体カバー107の透光性窓108及びセンサモジュール100aの光学波長フィルタ105aを透過した赤外線エネルギーは、第1の受光素子10aで電気信号に変換され出力される。第1の受光素子10aからの受光出力は、前置フィルタ20aにより炎判定処理に用いられる特定の周波数帯域の信号成分のみが通過し、プリアンプ30a、メインアンプ40aにより所定の信号増幅処理が施され、A/D変換器50aによりデジタル信号に変換されて炎判定処理部60に入力される。
【0040】
一方、火炎FRから放射され、本体カバー107の透光性窓108及びセンサモジュール100bの光学波長フィルタ105bを透過した赤外線エネルギーは、第2の受光素子10bで電気信号に変換され出力される。第2の受光素子10bからの受光出力は、前置フィルタ20bにより炎判定処理に用いられる特定の周波数帯域の信号成分のみが通過し、プリアンプ30b、メインアンプ40bにより所定の信号増幅処理が施され、A/D変換器50bによりデジタル信号に変換されて炎判定処理部60に入力される。
【0041】
ここで、本実施形態に適用される各フィルタによる各波長におけるフィルタ特性と透過率について、具体的に説明する。
図3は、本実施形態に適用される光学波長フィルタ及び透光性窓の各波長における透過率を示す図である。ここでは、図2に示したセンサモジュール及び本体カバーの構成を適宜参照しながら説明する。
【0042】
上述したように、透光性窓材108であるサファイアガラスにより、概ね7.0μm付近以下の放射線が良好に透過するショートウェーブパス特性(又は、ロングウェーブカット特性)を有する透過率特性108Sが得られるとともに、光学波長フィルタ105aを構成する、概ね4.5μm付近を中心波長とする狭帯域バンドパスフィルタにより、図3に示すように、当該中心波長近傍の波長帯域の放射光を高い透過率で透過する透過率特性105Saが得られ、これらの組合せにより、結果、Taに示すような概ね4.5μm付近を中心波長とする中心波長透過率が高い狭帯域バンドパスフィルタが構成される。
【0043】
一方、透光性窓材108であるサファイアガラスにより、概ね7.0μm付近以下の放射線が良好に透過するショートウェーブパス特性を有する透過率特性108Sが得られるとともに、光学波長フィルタ105bを構成するロングパスフィルタにより、概ね5.0μm付近を超える所定の波長帯域の放射光を良好に透過するカットオンフィルタ特性を有する透過率特性105Sbが得られ、これらの組合せにより、結果、Tbに示すような概ね5.0μm〜7.0μmの中心波長透過率が比較的低い広帯域バンドパスフィルタが構成される。
【0044】
ここで、透光性窓材108及び光学波長フィルタ105aの透過率特性の合成(便宜的に、「第1のフィルタ特性」と記す)、並びに、透光性窓材108及び光学波長フィルタ105bの透過率特性の合成(便宜的に、「第2のフィルタ特性」と記す)の中心波長の透過率は、図3に示すように、第1のフィルタ特性の中心波長透過率が、第2のフィルタ特性の中心波長透過率に対して、およそ数倍程度大きい。しかし、第1のフィルタ特性は狭帯域バンドパスフィルタであるので、その透過帯域は、広帯域バンドフィルタである第2のフィルタ特性に比べ、数分の1程度である。しかし、第1のフィルタ特性は、中心波長透過率が高いため、透過率の帯域積分値Taは、第2のフィルタ特性の透過率の帯域積分値Tbに対し、同程度、あるいは、大き過ぎない程度に設定される。
【0045】
このようなフィルタ特性を有する炎検出装置において、透光性窓材108を構成するショートウェーブパス特性を有するサファイアガラスは、赤外線透過材質として、一般的に使用されているものであり、また、5.0μm付近を超える所定の波長帯域の放射光を良好に透過するカットオンフィルタにより構成されるロングパスフィルタを備えたセンサモジュール100bは、広い波長帯域に対して均一な感度特性を有している焦電型の受光素子を備えた汎用の人体検出用センサ等をそのまま利用することができるので、いずれも安価に入手することが可能であり、したがって、概ね5.0μm〜7.0μmの広帯域バンドパスフィルタを極めて簡易かつ安価に構成することができる。
【0046】
なお、概ね5.0μm付近を超える所定の波長帯域の放射光を良好に透過するカットオンフィルタにより構成されるロングパスフィルタを備えたセンサモジュール100bに対し、概ね4.5μmを中心波長とする狭帯域の放射線を選択透過する狭帯域バンドパスフィルタを備えたセンサモジュール100aは、現状で実質十数倍程度の価格差があり、極めて高価であるが、本実施形態においては、本体カバー内に収納される一組のセンサモジュールのうち、一方のみに狭帯域バンドパスフィルタを備えたセンサモジュール100aを採用しているので、従来技術における2波長式や3波長式の炎検出装置のように、検出する波長分の(高価な)狭帯域バンドパスフィルタを備えたセンサモジュールを設ける必要がなく、極めて安価に炎検出装置を構成することができる。
【0047】
次いで、上述したセンサモジュール、及び、センサモジュールを収納した本体カバーにより設定される検知エリアの拡がりについて、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る炎検出装置により設定される検知エリアの拡がりを説明する概略図である。
【0048】
本実施形態に係る炎検出装置においては、図4に示すように、センサモジュール100bにより設定される検知エリアARb(すなわち、第2の受光素子10bにより設定され、想定される炎以外の、特に、低温側の赤外線放射により、4.5μm帯の出力に影響を与える範囲での炎識別性能を向上するために、第2の波長帯域で該放射を捕らえようとする所定のエリア)が、センサモジュール100a(すなわち、第1の受光素子10a)により設定される検知エリアARa(所定規模以上の炎から、4.5μm帯(第1の波長帯域)の出力が良好に得られ、正しく炎を判定できる遠方限界までのエリア)の比較的近距離側のエリアに設定されている。
【0049】
このような検知エリアの設定において、センサモジュール100b(第2の受光素子10b)におけるフィルタ特性(上述した第2のフィルタ特性に相当する)である、概ね5.0〜7.0μm付近の波長帯域は、基本的に、炎からの赤外線を検出する目的に用いるものではなく、想定される炎以外の、特に、低温側の赤外線放射に相当する変化が4.5μm帯の出力に影響を与え、炎として誤検出してしまう可能性の高い、炎検出装置の比較的近いエリアから、該赤外線放射の変化により第2の波長帯域による出力を得て炎と炎以外の識別性能を向上するように設定することが重要である。要するに、これを概ね4.5μm付近の波長帯域を検知するための検知エリアARaと同様に設定するため、大きな検出感度に設定しても、受光素子10bからの検出信号にはノイズ成分が増えるだけであることに基づいている。
【0050】
したがって、概ね5.0〜7.0μm付近の波長帯域を、概ね4.5μm付近の波長帯域における炎の検出処理に影響を与える、比較的低温の放射線源、例えば、人体や車両等と炎との識別のためだけに利用することにより、少なくとも炎検出装置に比較的近い位置の前方を通過する人体や車両等と、炎との識別が可能な程度の出力が得られるように、センサモジュール100b(第2の受光素子10b)の検知エリアを設定すればよいことになる。ここで、第2の受光素子10bにより設定される検知エリアを比較的近距離側のエリアに設定する手法としては、例えば、プリアンプ30b、メインアンプ40bの増幅率を低くしたり、炎判定処理部60での炎判定レベルを高くしたりする手法等を適用することができる。
【0051】
次に、本実施形態に係る炎検出装置に適用される炎判定処理部における制御処理について、図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る炎検出装置に適用される炎判定処理部の処理動作の手順を示すフローチャートであり、図6は、本実施形態に適用される炎判定処理における判定結果を示す相関表である。
【0052】
以下、各処理手順を図5を適宜参照しながら説明する。なお、必要に応じて図2に示したセンサモジュール及び本体カバーの構成を参照する。
(処理手順S1)
まず、第1の受光素子10a及び第2の受光素子10bの各受光出力(増幅出力)を、所定サンプリング周期でA/D変換器50a、50bを介して所定時間取り込み、該受光出力毎に強度の時間積分処理を行う。
【0053】
(処理手順S2/S3)
次いで、上記処理手順S1において、積分処理した第1の受光素子10aの受光出力(以下、受光出力積分値という)、すなわち、透光性窓材108及び光学波長フィルタ105aの透過率特性の合成(第1のフィルタ特性)を透過した放射線の受光出力積分値が、予め設定された基準レベルを超えたか否かを判定し、当該基準レベル以下の場合には、炎に相当する受光出力が検出されなかったものとして、処理手順S1に戻り、所定のサンプリング周期で受光出力の取り込みを繰り返す。
一方、上記受光出力積分値が、基準レベルを超えた場合には、処理手順S1で別に積分処理した受光素子10bの受光出力(受光出力積分値)との相対比(すなわち、受光素子10aの受光出力積分値/受光素子10bの受光出力積分値)を算出する。
【0054】
(処理手順S4/S5)
次いで、算出された受光出力積分値の相対比が、予め設定されたしきい値レベルを超えるか否かを判定し、当該しきい値レベル以下の場合には、例えば、人体や車両等の炎以外の比較的低温の放射線源による受光出力があったものとして、処理手順S1に戻り、所定のサンプリング周期で受光出力の取り込みを繰り返す。
【0055】
一方、上記受光出力積分値の相対比が、しきい値レベルを超えた場合には、炎と判定して、炎判定出力を行う。
ここで、上記しきい値レベルとしては、燃焼炎の受光出力積分値の相対比(受光素子10aの受光出力積分値/受光素子10bの受光出力積分値)が、燃焼状態に関係なく、ほぼ5以上であること、及び、炎以外からの受光出力積分値の相対比が2以下であることに基づいて、例えば、3程度に設定すれば良いことになる。
【0056】
したがって、上述した一連の炎判定処理により、図6に示すような放射線源の種類と判定結果との相関関係が得られ、炎と炎以外の放射線源との識別を確実に行うことができる。
具体的には、検出対象となる放射線源が、炎の場合には、概ね4.5μm帯の波長帯域に、放射線の相対強度の強い(高い)受光出力が検出されるとともに、4.5μm帯の長波長側である5.0〜7.0μm帯の波長帯域に、放射線の相対強度の極弱(微小な)受光出力が検出される。この場合、放射線相対強度の相対比は、例えば、5.0程度以上となって、炎判定の基準(しきい値レベル)である相対比“3”よりも大きくなるので、検出対象が炎であると判定される。
【0057】
また、検出対象となる放射線源が、太陽光(6000°C)等の高温放射体の場合や、車両等の比較的低温の放射体の場合には、概ね4.5μm帯の波長帯域に、放射線の相対強度の強い(高い)受光出力が検出されるとともに、4.5μm帯の長波長側である5.0〜7.0μm帯の波長帯域にも、放射線の相対強度の強い(高い)受光出力が検出される。この場合、放射線相対強度の相対比は、例えば、1.0〜1.2程度となって、炎判定の基準(しきい値レベル)である相対比“3”よりも小さくなるので、検出対象が炎以外の放射線源であると判定される。
【0058】
さらに、検出対象となる放射線源が、人体などの低温放射体の場合には、概ね4.5μm帯の波長帯域に、放射線の相対強度の弱い(低い)受光出力が検出されるとともに、4.5μm帯の長波長側である5.0〜7.0μm帯の波長帯域に、放射線の相対強度の強い(高い)受光出力が検出される。この場合、放射線相対強度の相対比は、例えば、0.5程度となって、炎判定の基準(しきい値レベル)である相対比“3”よりも小さくなるので、検出対象が炎以外の放射線源であると判定される。
【0059】
なお、上記処理手順S4において、受光出力積分値の相対比がしきい値レベルを超えた場合には、さらに精度の高い炎判定を行うようにしても良い。例えば、受光素子10aの受光出力(増幅出力)の所定時間のサンプリングデータに基づいて、高速フーリエ変換法(FFT:Fast Fourier Transformation)等の周波数解析を行い、炎特有のちらつき周波数(又は、ゆらぎ周波数)が存在するかを解析する処理を適用することができる。
【0060】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る炎検出装置の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態においては、上述した第1の実施形態に示した炎検出装置の構成をトンネル用の炎検出装置(火災検知器)に適用した場合について説明する。
図7は、本発明に係る炎検出装置の第2の実施形態を示す概略構成図であり、図8は、本実施形態に係る炎検出装置のトンネル内での設置形態と検知エリアの拡がりを示す概略図である。
【0061】
図7(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る炎検出装置200は、筐体201の上部に設けられたセンサ収納部202に、炎検出装置200のトンネル内壁面への設置状態において、少なくともトンネルの長手方向(図8(b)の左右方向)に所定の曲率半径を有して曲面状に形成された傾斜曲面203a、203bと、傾斜曲面203a、203bの各々の周縁部(外周)に連続して設けられ、所定の傾斜角度を有して形成された急傾斜面204a、204bと、傾斜曲面203a、203bの各々に設けられた個別の透光性窓205a、205bと、各透光性窓205a、205bの内部に収納され、上記実施形態と同等の構成を有する一対のセンサモジュール206a、206b、207a、207bと、各透光性窓205a、205bの近傍の、センサモジュール206a、206b、207a、207bを見渡せる位置に、個別の試験ランプ208a、208bを収納し、かつ、炎検出装置200の設置状態において、その下面側に試験光源用透光窓209a、209bを備えた試験用光源収納部210と、を有して構成されている。
【0062】
ここで、センサモジュール206a、207aは、上述した第1の実施形態におけるセンサモジュール100aに相当し、センサモジュール206b、207bは、同様に、センサモジュール100bに相当する。また、傾斜曲面203a、203bの各々に設けられた個別の透光性窓205a、205bは、上述した第1の実施形態における透光性窓108に相当し、サファイアガラスにより構成されている。
【0063】
そして、このような構成を有する炎検出装置のトンネル内壁面への設置状態は、例えば、図8(a)に示すように、トンネル90内部下方の一方の壁面(概ね、路面から2.5m程度の高さ)91aに、トンネル90の長手方向に沿って、路面90a及び他方側の壁面91bまでを監視するように設置されている。
また、その検知エリアは、センサモジュール206a、206b、及び、207a、207bが、図7(b)に示すように、トンネルの長手方向の一方側及び他方側の傾斜曲面203a、203bに設けられた透光性窓205a、205bに対して、各々所定の位置関係で、かつ、所定の傾斜角度で設置されていることにより、図8(b)に示すように、各々所定の広がりを有する検知エリアAa、Ab、及び、Ba、Bbが設定される。
【0064】
ここで、上述したように、センサモジュール206a、207a(収納される受光素子)は、高い検出感度により、遠方監視特性に優れた広い検知エリアAa、Baを設定している。また、センサモジュール206b、207b(収納される受光素子)は、センサモジュール206a、207aよりも低い感度により、上記検知エリアAa、Baのうち、比較的近距離側、すなわち、炎検出装置200の近傍の前方領域を含む検知エリアAb、Bbを設定している。ここで、図8(b)においては、検知エリアAa、Ba、及び、Ab、Bbを平面的に示しているが、実際には、紙面に対して表裏方向にも検知エリアを有しており、3次元的な広がりを有する検知エリアが設定されている。
【0065】
したがって、本実施形態に係る炎検出装置によれば、トンネル内において、人体や車両等の放射線源と炎との誤識別を抑制して、良好な炎検出を行うことができる炎検出装置を、従来技術に比較して装置規模を大型化することなく、極めて安価に実現することができる。
また、試験用光源収納部210に収納された試験ランプ208a、208bを、疑似炎状態になるように点滅させ、その試験光CKを試験光源用透光窓209a、209bを介して、透光性窓205a、205b内のセンサモジュール206a、206b、及び、207a、207bに投光することにより、図10に示したようなスペクトル特性を有する赤外線放射であっても、概ね4.5μm帯と概ね5.0〜7.0μm帯の波長帯域における受光出力積分値の相対比が、図6に示した炎相当(5.0程度以上)の値を示すことになるので、擬似火炎による検出性能試験を厳密に行うことができる。
【0066】
なお、図8(a)、(b)においては、トンネル90内に設置された単一の炎検出装置200のみを示したが、トンネル90の長手方向に沿って、少なくとも隣接して配置される炎検出装置の位置を含み、各々の検知エリアAa、Baが相互補完的に重なるように、例えば、25m間隔で炎検出装置が連続的に配置されている。また、図8(a)において、93は、トンネル90内部の視界を確保するナトリウム灯等の照明灯、94は、トンネル90内で発生した火災を検知する火災検知器、95は、火災を検知した際に水を噴霧して火災の拡大を防ぐ水噴霧ヘッド、96は、放水ノズルやホース等を収納した消火栓設備、97は、トンネル90内の換気を行うジェットファン、98は、非常用通路や出口を避難者に認識させ、誘導する誘導表示灯である。
また、上述した実施形態にあっては、第1及び第2のセンサモジュールに対して、共通の透光性窓を配設するようにしているが、各センサモジュールに対して、個別の透光性窓を配設するようにしてもよい。
【0067】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る炎検出装置の第3の実施形態について説明する。
まず、第3の実施形態に係る炎検出装置において、炎と識別する対象となる放射線源について説明する。
上述したように、第1及び第2の実施形態に示した炎検出装置においては、CO2共鳴放射帯(第1の波長帯域:概ね4.5μmを中心波長とする狭帯域)、及び、その長波長側の所定帯域(第2の波長帯域:例えば、概ね5.0〜7.0μmの広帯域)を観測することにより、人体や車両等の比較的低温の放射線源と炎とを良好に識別することができるとともに、第2の波長帯域を選択抽出する広帯域バンドパスフィルタを簡易かつ安価な構成で実現することができることを説明した。
【0068】
ところで、上述した炎検出装置が設置される環境(トンネル内等)においては、上述したような人体や車両等のように、4.5μmを中心波長とする第1の波長帯域及び5.0〜7.0μmの第2の波長帯域において、炎と明らかに異なるスペクトル特性(分光パターン)、又は、放射線相対強度の相対比(波長バランス)を有する放射線源の他に、炎と同等又は類似する分光パターン及び波長バランスを有する炎以外の放射線源が存在する。その代表例としては、白熱ランプ類を備えた照明設備や表示設備等があり、このような放射線源の場合、上述したような炎検出の手法によっては、炎との的確な識別が困難となる場合が生じる。
【0069】
以下、図面を参照して具体的に説明する。
図9は、炎と回転灯との放射線スペクトルの関係を示す特性図である。ここで、回転灯は、白熱ランプ類を備えた設備の代表例であって、緊急車両や道路工事用の警告・案内表示等に多用されており、炎検出処理の観点から最も識別精度を必要とされる放射線源の一つである。なお、本実施形態に係る炎検出装置において識別対象となる放射線源は、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0070】
なお、図9の縦軸は、炎、回転灯各別個の相対強度であり、それぞれの場合のピーク(所定波長帯での)を“1”としている。実際の受光レベルは、検知センサと炎又は回転灯の距離、その他によって変化する。すなわち、観測体(この場合、炎や回転灯)の存在する場所によって、相対強度の小さい波長成分の信号レベルも大きくなる、ここでは、比較的検知センサの近くに存在する、又は、放射レベルの大きな回転灯について問題にしている。
【0071】
図9に示すように、回転灯からの赤外線放射によるスペクトル特性5は、4.5μm及び5.0μm以上の波長帯域において、有炎燃焼のスペクトル特性1(図15に示したスペクトル特性1a、1bと同等)と同等又は同様の変化傾向を有していることが、出願人の各種実験の結果、明らかとなっている。そのため、4.5μm及び5.0〜7.0μmの波長帯域における放射線相対強度の相対比(5.0〜7.0μm帯の放射線相対強度に対する4.5μm帯の放射線相対強度)にのみ基づいて、炎と炎以外の放射線源とを識別する上記実施形態に係る手法によっては、炎と回転灯(炎以外の放射線源)とを的確に識別することが困難な場合が生じ、炎検出装置の信頼性が低下する可能性がある(以下、便宜的に「問題点(5)」と記す)。
【0072】
なお、このような炎と回転灯等の白熱ランプ類とを識別する手法としては、上述したような放射線相対強度の相対比(波長バランス)による識別方法とは別個に、いわゆる、周波数解析法を適用したものが知られている。例えば、特開2000−57456号公報等には、検知センサからの受光信号をMPUにサンプリングデータとして所定時間取り込み、当該データの周波数分布パターンを高速フーリエ変換法(FFT)等の演算方法を適用して周波数解析し、火災を判定する方法が記載されている。
【0073】
ここで、上記公報等に記載されている周波数解析の手法について、図面を参照して簡単に説明する。
図10は、炎及び回転灯からの赤外線エネルギーに対する時系列観測波形(赤外線エネルギーの時間変動)を示す図であり、図11は、図10に示した時系列観測波形に基づいて周波数解析を行った場合の周波数分布パターン(スペクトルパターン)を示す図である。
【0074】
一般に、燃え上がった炎は、周りの酸素を取り込んで大きく成長した後、周囲の酸素が少なくなると一瞬小さくなり、再びその外側からの酸素供給を受けて大きく成長するという変動を周期的に繰り返していることが知られている。したがって、炎の赤外線エネルギーを時系列的に観測すると、図10(a)に示すように、低い周波数を含む周波数帯でちらつき(又は、ゆらぎ)を生じるという性質を有している。これに対して、回転灯は、白熱ランプの発光ガイド部材を定速度で回転させることにより、発光方向を周期的に変化させる機構を有しているため、その赤外線エネルギーを時系列的に観測すると、図10(b)に示すように、明確な周期的変動を伴っており、その周波数は回転灯の回転数に依存するという性質を有している。
【0075】
そして、図10に示した時系列観測波形における赤外線エネルギーの周期的な変動に着目して、炎の赤外線エネルギーを周波数軸で観測すると、図11(a)に示すように、概ね8Hzよりも低周波側に高い出力レベルを示す周波数特性が得られることから、実質的な炎のちらつき周波数が8Hzまでの周波数帯域に存在するのに対して、例えば、道路トンネル内で使用される2Hz程度の低周波で回転する回転灯の赤外線エネルギーの場合にあっては、基本周波数の整数倍の周波数に高調波成分が存在するため、図11(b)に示すように、周波数軸の略全域において(すなわち、8Hzを越える周波数帯域にまで)高い出力レベルを示す周波数特性が得られる。
【0076】
このように、炎と炎以外の放射線源においては、各々特有の周波数特性が得られることから、ちらつき周波数が概ね8Hzよりも低周波側、及び、高周波側の各々の周波数帯域における信号レベルを所定の周波数間隔(たとえば、0.5Hzピッチ)で高速フーリエ変換法(FFT)により抽出し、各抽出信号レベルが個別に設定されたしきい値以上であるか否か、あるいは、抽出信号レベル相互の相対比が所定値以上であるか否かを判別することにより、炎のちらつき周波数を含む炎以外の放射線源(回転灯等)からの赤外線エネルギーを検出して、火災と誤って判定することを防止することができる。
【0077】
したがって、本発明に係る第1及び第2の実施形態に加え、上述した公報等に記載された周波数解析による炎判定方法を適用することにより、炎と人体、車両、回転灯等の炎以外の放射線源との識別を行うことが考えられるが、上述した周波数解析の手法においては、火災判定の基準となる信号のサンプリング数が多いうえ、サンプリング動作に要する時間も長く、かつ、該サンプリングデータ(抽出信号)を演算処理する際のMPUの負担が極めて大きくなるため、火災判定(サンプリング及び炎判定)に要する処理時間が増大して、良好な火災検知機能が阻害されるという問題を有している(以下、便宜的に「問題点(6)」と記す)。
【0078】
ここで、炎検出装置(火災検知器)は、システム端末として防災受信盤から引き出された伝送路に多数接続されており、同時に、防災機器としての性質上、動作電源のバックアップが義務付けられているので、装置の大型化と高コスト化を避ける目的で、炎検出装置単体の消費電力を最大限低く抑える必要がある。そのため、炎検出装置に搭載されるMPUとしては、例えば1MHz程度の比較的低速の基本クロックで動作する低消費電力型のものを使用せざるを得ず、上記処理時間を容易に短縮することができないという制約がある。
【0079】
そこで、本実施形態に係る炎検出装置は、上述した実施形態において、第1及び第2の波長帯域における放射線源からの赤外線エネルギーを検知する各検知センサ(センサモジュール)からの受光出力(検出信号)を炎判定処理部に伝達する各信号処理経路に設定される信号通過特性(周波数通過特性)を所定の関係に調整制御することにより、第1及び第2の波長帯域における実質的な炎特有のちらつき周波数帯域以外の周波数における信号レベル(信号成分の強度)の差分を、実質的な炎特有のちらつき周波数帯域の場合に比較して相対的に増大させる構成を有している。
【0080】
以下、本実施形態に係る炎検出装置について、図面を参照して具体的に説明する。
図12は、本発明に係る炎検出装置の第3の実施形態を示す概略構成図である。ここで、上述した第1及び第2の実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
【0081】
図12に示すように、本実施形態に係る炎検出装置は、大別して、第1の波長帯域の赤外線エネルギーを検出する第1の受光素子10aを備えたセンサモジュール100aと、第1の波長帯域よりも長波長側の第2の波長帯域の赤外線エネルギーを検出する受光素子10bを備えたセンサモジュール100bと、センサモジュール100a、100bの検知面側に共通に配置された透光性窓108と、センサモジュール100a、100bから出力される各受光出力から、所定の周波数帯域の信号成分のみを通過させる前置フィルタ(周波数フィルタ)20a、20cと、各前置フィルタ20a、20cを通過した信号成分を炎判定処理に適した所定の信号レベルに増幅するアンプ部30A、30Bと、アンプ部30A、30Bからの信号に基づいて、炎と炎以外の放射線源を識別し、火災を判定する処理を実行する炎判定処理部60Aと、を有して構成されている。
【0082】
ここで、センサモジュール100a、100bに備えられた光学波長フィルタ105a、105b、及び、透光性窓108は、上述した実施形態と同様に、各センサモジュール100a、100bに収納された受光素子10a、10bにより受光する赤外線エネルギーの波長が、各々概ね4.5μmを中心波長とする狭帯域からなる第1の波長帯域、及び、概ね5.0〜7.0μmの広帯域からなる第2の波長帯域となるように、フィルタ特性が設定されている。
【0083】
前置フィルタ20a及びアンプ部30Aからなる周波数抽出処理部(信号処理経路)PROAは、本発明における第1の周波数抽出手段を構成し、上記受光素子10aから出力される第1の波長帯域(4.5μmを中心波長とする狭帯域)の受光出力のうち、所定の周波数帯域、例えば、概ね1〜8Hz帯域のちらつき周波数成分を効率よく通過させる第1の周波数通過特性で通過させ、増幅部30Aにより炎判定処理に適した所定の信号レベルに増幅する。
【0084】
また、前置フィルタ20c及びアンプ部30Bからなる周波数抽出処理部(信号処理経路)PROBは、本発明における第2の周波数抽出手段を構成し、上記受光素子10bから出力される第2の波長帯域(5.0〜7.0μmの広帯域)の検出信号のうち、所定の周波数帯域、例えば、概ね1〜16Hz帯域のちらつき周波数成分のみを、上記第1の周波数通過特性と異なる第2の周波数通過特性で通過させ、増幅部30Bにより炎判定処理に適した所定の信号レベルに増幅する。
【0085】
ここで、周波数抽出処理部PROA、PROBに設けられる前置フィルタ20a及び20cは、例えば、容量素子C及び抵抗素子RからなるCRフィルタ回路により構成することができるので、次段のアンプ部30A及び30Bとともに、一体的な回路構成とすることができる。また、本実施形態においては、前置フィルタ20a、20cにより抽出された信号成分を増幅する手段として、各々単一のアンプ部30A、30Bを示したが、具体的には、図1に示した構成と同様に、プリアンプとメインアンプにより構成されるものであってもよい。
【0086】
炎判定処理部60Aは、アンプ部30A、30Bからの信号に基づいて、炎と炎以外の放射線源(人体や車両等)との識別判定処理を行う。また、アンプ部30A、30Bからの信号を比較することで、波長及び周波数の両面から“識別処理”を行うのと同等の効果を得ることになる。
【0087】
次いで、本実施形態に適用される前置フィルタ(又は、周波数抽出処理部)における周波数通過特性と、上記炎判定処理部における炎判定の処理動作について、具体的に説明する。
図13は、本実施形態に適用される周波数フィルタの周波数通過特性を示す特性図であり、図14は、本実施形態に係る周波数フィルタを適用した場合の炎及び回転灯からの赤外線エネルギーに対する時系列観測波形(赤外線エネルギーの時間変動)を示す図である。まず、本実施形態における作用効果を明確にするため、第1の周波数通過特性と第2の周波数通過特性を同等に設定した場合(図13(a))における時系列観測波形(図14(a))とを適宜対比させながら説明する。
【0088】
本実施形態に係る周波数フィルタ(前置フィルタ20c)は、図13(b)に示すように、第2の波長帯域(5.0〜7.0μmの広帯域)の受光出力の信号周波数に対して、8Hzよりも低周波側の周波数帯域においては、周波数抽出処理部PROA、PROB双方の周波数通過特性SPA、SPBが同等になるように設定されているとともに、8Hzよりも高周波側の周波数帯域においては、周波数抽出処理部PROA側の周波数通過特性SPAに比較して、周波数抽出処理部PROB側の周波数通過特性SPBが高くなるように設定されている。
【0089】
すなわち、図11(a)に示したように、実質的な炎特有のちらつき周波数は、概ね8Hzよりも低周波側の周波数帯域に高い信号レベルが出現し、8Hzよりも高周波側の周波数帯域においては、ほとんど出現しない(又は、信号レベルが極めて低い)のに対して、図11(b)に示したように、回転灯のちらつき周波数は、概ね全周波数帯域において高い信号レベルが出現する、という信号レベルの分布特性に基づいて、8Hzよりも高周波側の周波数帯域(すなわち、実質的な炎特有のちらつき周波数帯域以外の周波数)における周波数通過特性を、低周波側の周波数帯域(すなわち、実質的な炎特有のちらつき周波数帯域)における周波数通過特性よりも高く設定することにより、炎と回転灯の場合で炎判定処理部60Aに出力される第1及び第2の波長帯域の受光出力の信号バランス(相対比)を、周波数通過特性を同等に設定した場合に比べて、大きく異ならせることができる。
【0090】
そのため、図13(a)に示した周波数通過特性SPAを有する周波数フィルタ(前置フィルタ20a)を適用した場合の第1の波長帯域の受光出力に対する時系列観測波形は、回転灯が炎特有の周波数を含んでいるため、図14(a)に示すように、炎(WSA;図中、破線で表記)及び回転灯(LTA;図中、実線で表記)それぞれの場合において、両者を明確に識別できるほどの違いが現れない。なお、本実施形態では、説明を簡単にするために、第1の波長帯域の受光出力に対する時系列観測波形は、略同等の信号レベルの振幅X1、X2を有しているものとする。
【0091】
一方、上述したような周波数通過特性SPBを有する周波数フィルタ(前置フィルタ20c)を適用した場合の第2の波長帯域の受光出力に対する時系列観測波形は、回転灯が実質的な炎特有のちらつき周波数帯域以外の周波数においても高い信号レベルを有しているため、図14(b)に示すように、回転灯の時系列観測波形(LTB;図中、実線で表記)は、炎の時系列観測波形(WSB;図中、破線で表記)に比較して、高周波側の通過効率が高い分だけ、信号レベルの振幅が大きく現れる波形特性(炎の信号レベルの振幅Y1≪回転灯の信号レベルの振幅Y2)を示す。
【0092】
したがって、炎判定処理部60Aにおける第1及び第2の波長帯域の受光出力の比較処理において、炎の場合にあっては、第2の波長帯域の周波数成分のうち、8Hzより高周波側に信号レベルがほとんど出現しないため、その振幅は前置フィルタ20aの周波数通過特性SPAによっては顕著に拡大されることはなく(振幅は微小となり)、第1の波長帯域における受光出力に対する第2の波長帯域における受光出力の相対比は小さくなる。
【0093】
これに対して、回転灯の場合にあっては、第2の波長帯域の略全周波数帯域に高い信号レベルが出現するため、その振幅は前置フィルタ20cの周波数通過特性SPBによって顕著に拡大されることになり(振幅は過大となり)、第1の波長帯域における受光出力に対する第2の波長帯域における受光出力の相対比が大きくなる。
【0094】
このように、本実施形態に係る炎検出装置によれば、回転灯からの第1及び第2の波長帯域における受光出力(周波数成分)の信号バランス(相対比)が、炎の場合に比較して顕著に異なることに基づいて、しきい値比較等の簡易な判断手法を適用して、炎と回転灯(炎のちらつき周波数を含む炎以外の放射線源)との識別を的確に行うことができる。
【0095】
なお、従来の2波長式又は3波長式の炎検出装置においては、上記周波数抽出処理部に設けられる各波長帯に対応する周波数フィルタ(前置フィルタ)の周波数通過特性を異ならせることについては、何ら考慮されておらず、図13(a)に示すように、ちらつき周波数の略全周波数帯域において、各周波数フィルタの周波数通過特性が略同等になるように設定されている。そのため、炎と回転灯からの第1及び第2の波長帯域における受光出力(周波数成分)の信号バランス(相対比)に顕著な差異が見られず、各波長帯域における信号バランス(すなわち、受光出力の比較処理)のみによっては、炎と回転灯とを的確に識別することができない。
【0096】
これにより、上述した問題点(5)、(6)に示したような多量のデータをサンプリングして、複雑な演算処理を行う周波数解析を適用することなく、炎と回転灯等の放射線源との識別を行うことができるので、MPUを使用した場合における電気的及び時間的な負荷を大幅に軽減することができる。また、上述した第1及び第2の実施形態と同様に、第1及び第2の波長帯域の赤外線エネルギーを用いて炎と回転灯との識別を行うことができるので、上記実施形態との組み合わせにより、共通の装置構成を利用して、常に第1及び第2の波長帯域における赤外線エネルギーの信号レベルのバランスのみに基づいて、炎と炎以外の放射線源(人体、車両、回転灯等)とを的確に識別することができ、誤報の発生を防止して炎検出装置の信頼性を大幅に向上することができる。
【0097】
なお、本実施形態においては、周波数フィルタの周波数通過特性を制御することにより、炎判定処理部において炎判定に処理に用いられる第1及び第2の波長帯域の受光出力の信号レベルの差分を拡大する手法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、上記各波長帯域の受光出力の信号バランスの差異を顕著化するものであればよい。したがって、各周波数抽出処理部に設けられた周波数フィルタの通過特性に加え、アンプ部の信号増幅率を調整する手法、又は、アンプからの信号をA/D変換し、A/D変換された検知信号のデジタル値に、上記信号バランスの差異を顕著化するような所定の重み付けを行う手法等を良好に適用することができ、炎検出装置の回路構成における設計自由度を向上することができる。
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、概ね4.5μmを中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させる狭帯域バンドパスフィルタと、狭帯域バンドパスフィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する、焦電体を備える第1の受光素子と、狭帯域バンドパスフィルタの透過波長帯域の長波長側に隣接した、概ね5.0μmを超える所定の波長帯域の光を透過させるカットオンフィルタと、カットオンフィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する、焦電体を備える第2の受光素子と、狭帯域バンドパスフィルタおよびカットオンフィルタ前面の観測対象となる監視エリア側に設けられた、概ね7.0μm以下の光を透過させ、それより長波長の光を遮断するロングウェーブカット特性を有するショートウェーブパスフィルタ部材と、第1の受光素子及び第2の受光素子の出力に基づいて所定規模以上の炎の有無を判定する判定手段と、を備えているので、第1の受光素子により炎特有の波長帯域の受光出力を良好に検出することができるとともに、第2の受光素子により人体や車両等の低温放射線源に基づく波長帯域の受光出力を良好に検出することができ、これらの受光出力に基づいて、炎と他の赤外線放射線源との識別を良好に行うことができる。
【0099】
ここで、上記第1及び第2の受光素子を、焦電体で構成しているので、汎用の、広い波長帯域に対して均一な感度特性を有している受光素子を用いて、上記狭帯域バンドパスフィルタ、カットオンフィルタ及びショートウェーブパスフィルタ部材の組合せにより、所望のフィルタ特性を設定することができ、良好な炎検出性能を有する炎検出装置を安価に実現することができる。
また、上記狭帯域バンドパスフィルタは、第1の受光素子を収納した第1のセンサモジュールの、第1の受光素子の前面に配置され、カットオンフィルタは、第2の受光素子を収納した第2のセンサモジュールの、第2の受光素子の前面に配置され、ショートウェーブパスフィルタ部材は、第1および第2のセンサモジュールを収納する本体カバーの、第1および第2の受光素子のうち少なくとも第2の受光素子の前面に設けられた窓用開口部に配置される、第1および第2のセンサモジュールの保護用透光性窓であるので、いずれも比較的安価に入手することができる汎用のフィルタ部材により、所望のフィルタ特性を実現することができ、良好な炎判定性能を有する炎検出装置を、簡易な構成で安価に実現することができる。
【0100】
さらに、上記ショートウェーブパスフィルタ部材は、例えば、サファイアガラスにより構成することができるので、人体や車両等の、特に低温放射線源に基づく波長帯域の受光出力を良好に検出することができ、炎と他の赤外線放射線源との識別を簡易、安価、かつ、良好に行うことができる。
【0101】
なお、本発明に係る炎検出装置おいては、上記第2の受光素子により設定される第2の検知エリアは、第1の受光素子により設定される第1の検知エリアの比較的近距離エリアに設定することができる。これにより、炎検出装置の比較的近距離の位置を通過する人体や車両等の低温放射線源からの受光出力と、比較的遠方領域で発生する炎からの受光出力を、明確に区別して検出することができ、低温放射線源と炎との識別を良好に行うことができ、かつ、ノイズ要因を抑制することができる。
【0102】
また、本発明に係る炎検出装置おいては、上記狭帯域バンドパスフィルタ、カットオンフィルタ及びショートウェーブパスフィルタ部材と、第1及び第2の受光素子から構成される炎検出部を一対備え、該一対の炎検知部により、該一対の炎検知部の設置位置を基準とする相異なる2方向、例えば、トンネルの長手方向の左右2方向に対し、所定の検知エリアを設定して、炎を検出することができる。これにより、トンネル内等の特定の火災監視区域内で発生する炎と、炎検出装置の比較的近距離の位置を通過する人体や車両等の放射線源とを識別して、良好な炎検出を行うことができるとともに、従来技術に比較して装置規模を大型化することなく、簡易かつ安価に炎検出装置を構成することができる。
【0103】
また、上記炎検出装置は、第1の受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出する第1の周波数抽出手段と、第2の受光素子の出力から所定の周波数の信号成分を選択抽出する第2の周波数抽出手段とを備え、各々の周波数抽出手段における信号成分の通過特性、すなわち、周波数通過特性が相互に異なるように設定することができる。これにより、各波長帯域における受光出力の信号バランスの差分を顕著化して、その信号バランスを比較することにより炎と炎以外の放射線源とを判別することができる。
【0104】
また、上記第1及び第2の周波数抽出手段は、選択抽出した周波数のうち、少なくとも、実質的な炎特有のちらつき周波数帯域以外の周波数において、第2の周波数抽出手段により抽出された信号成分の強度が、第1の周波数通過手段により抽出された信号成分の強度よりも大きくなるように、信号通過特性を設定することができる。これにより、判定手段により、例えば、炎特有のちらつき周波数を含む炎以外の放射線源(回転灯等)からの受光出力の信号バランス(各信号成分の強度の差)が、炎の場合に比較して顕著になることに基づいて、炎と上記炎以外の放射線源との識別を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る炎検出装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】 第1の実施形態に係る炎検出装置に適用されるセンサモジュールと、該センサモジュールを収納した本体カバーの構成例を示す概略構成図である。
【図3】 第1の本実施形態に適用される光学波長フィルタ及び透光性窓の各波長における透過率を示す図である。
【図4】 第1の実施形態に係る炎検出装置により設定される検知エリアの拡がりを説明する概略図である。
【図5】 第1の実施形態に係る炎検出装置に適用される炎判定処理部の処理動作の手順を示すフローチャートである。
【図6】 第1の実施形態に適用される炎判定処理における判定結果を示す相関表である。
【図7】 本発明に係る炎検出装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図8】 第2の実施形態に係る炎検出装置のトンネル内での設置形態と検知エリアの拡がりを示す概略図である。
【図9】 炎と回転灯との放射線スペクトルの関係を示す特性図である。
【図10】 炎及び回転灯からの赤外線エネルギーに対する時系列観測波形(赤外線エネルギーの時間変動)を示す図である。
【図11】 図10に示した時系列観測波形に基づいて周波数解析を行った場合の周波数分布パターンを示す図である。
【図12】 本発明に係る炎検出装置の第3の実施形態を示す概略構成図である。
【図13】 本実施形態に適用される周波数フィルタの周波数通過特性を示す特性図である。
【図14】 本実施形態に係る周波数フィルタを適用した場合の炎及び回転灯からの赤外線エネルギーに対する時系列観測波形(赤外線エネルギーの時間変動)を示す図である。
【図15】 燃焼炎と、その他の代表的な放射体の放射線スペクトルを示す概念図である。
【図16】 検出性能試験時に試験ランプから投光される試験光の放射スペクトル特性図である。
Claims (3)
- 有炎燃焼時に発生するCO2共鳴により放射される、概ね4.5μmを中心波長とする狭帯域波長の光のみを選択透過させる狭帯域バンドパスフィルタと、
前記狭帯域バンドパスフィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する、焦電体を備える第1の受光素子と、
前記狭帯域バンドパスフィルタの透過波長帯域の長波長側に隣接した、概ね5.0μmを超える所定の波長帯域の光を透過させるカットオンフィルタと、
前記カットオンフィルタを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する、焦電体を備える第2の受光素子と、
前記狭帯域バンドパスフィルタおよび前記カットオンフィルタ前面の観測対象となる監視エリア側に設けられた、概ね7.0μm以下の光を透過させ、それより長波長の光を遮断するロングウェーブカット特性を有するショートウェーブパスフィルタ部材と、
前記第1の受光素子及び第2の受光素子の出力に基づいて所定規模以上の炎の有無を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする炎検出装置。 - 前記狭帯域バンドパスフィルタは、前記第1の受光素子を収納した第1のセンサモジュールの、前記第1の受光素子の前面に配置され、
前記カットオンフィルタは、前記第2の受光素子を収納した第2のセンサモジュールの、前記第2の受光素子の前面に配置され、
前記ショートウェーブパスフィルタ部材は、前記第1のセンサモジュールおよび前記第2のセンサモジュールを収納する本体カバーの、前記第1の受光素子および前記第2の受光素子のうち少なくとも前記第2の受光素子の前面に設けられた窓用開口部に配置される、前記第1のセンサモジュールおよび前記第2のセンサモジュールの保護用透光性窓であることを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。 - 前記ショートウェーブパスフィルタ部材は、サファイアガラスであることを特徴とする請求項2記載の炎検出装置。
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