以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の定着装置の一例を示す。また、図2(a),(b)および図3(a),(b)は、この定着装置に設けられるコイル体(誘導加熱機構)と異常温度検知機構の一例を示す。さらに、図4は、この定着装置に適用可能な誘導加熱制御回路の構成を示す。
図1に示されるように、定着装置は、被転写材すなわち用紙PのトナーTが付着している面に接触可能で、トナーTおよび用紙Pを加熱する加熱部材(加熱ローラ)2と、加熱ローラ2に所定の圧力を与える加圧部材(加圧ローラ)3とを有する。
加熱ローラ2は、所定の圧力で変形しない金属性(高剛性)のシャフトである芯金2aと、この芯金2aのまわりに順に配置される発泡ゴム層(スポンジ)2bと、金属導電層2cと、ソリッドゴム層2dおよび離型層2eを有する。なお、発泡ゴム層(スポンジ)2bは5mm、金属導電層2cは40μm、ソリッドゴム層2dは200μmおよび離型層2eは30μmの厚さにそれぞれ形成され、加熱ローラ2は直径40mm程度であることが好ましい。また、金属導電層2cは、導電性材料(たとえばニッケル,ステンレス鋼,アルミニウム,銅,ステンレス鋼とアルミニウムの複合材等)等により形成される。
加圧ローラ3は、所定の圧力で変形しない金属性(高剛性)のシャフトである芯金3aと、この芯金3aのまわりに設けられるシリコンゴム3b、フッ素ゴム3c等を含み、直径40mmであることが好ましい。
加圧ローラ3は、加圧機構4からの圧力を受けることで、加熱ローラ2に所定の圧力を提供する。この圧力により加圧ローラ3との間に一定のニップ幅を維持しながら接触している加熱ローラ2は、駆動モータ(図示せず)により矢印方向(CW)に回転される。加熱ローラ2の回転に伴い、加圧ローラ3が矢印方向(CCW)に回転される。
加熱ローラ2の外側には、加熱ローラ2の金属導電層2cに所定の磁界を提供するコイル体(誘導加熱機構)5,6が、加熱ローラ2の外側に、外周面と所定の間隔を有して配置されている。
このコイル体5,6に所定の電流あるいは電圧が供給されると、所定の磁界を発生させる。このコイル体5,6からの磁界により、加熱ローラ2の金属導電層2cに渦電流が発生し、ジュール熱が発生する。この加熱ローラ2からの熱により溶融されたトナーTは、トナーTが付着している用紙Pが加熱ローラ2と加圧ローラ3の接触部(ニップ部)を通過し、加圧ローラ3により所定の圧力が加えられることで用紙Pに定着される。
加熱ローラ2の周囲には、加熱ローラ2と加圧ローラ3の接触位置(ニップ部)から回転方向の順に、用紙Pを加熱ローラ3から剥離するための剥離用ブレード7と、加熱ローラ2の周面上にオフセット防止用の離型剤(例えばシリコーン油等)を塗布する離型剤塗布装置8が配置される。また、加熱ローラ2の長手方向の所定の位置に、加熱ローラ2の周面付近の温度を検知するためのサーミスタ9a,9bが配置される。本実施の例では2つのサーミスタ9a,9bを用いたが、3つ以上でもよい。
コイル体5,6の付近には、加熱ローラ2の温度が異常温度に達するとコイル5,6に供給される電流あるいは電圧を遮断する異常温度検知機構(サーモスタット)10が配置されている。
次に、図2(a),(b)を用いて、図1に示す定着装置に適用可能なコイル体(誘導加熱機構)5,6および異常温度検知機構の一例について説明する。
図2(a)は、図1の矢印P方向から見た図であり、図2(b)は、図1の矢印Q方向から見た図である。
図2(a),(b)に示されるように、コイル体5は、加熱ローラ2の中央領域(用紙Pの通過する頻度の高い領域)と向かい合う位置に配置され、コイル体6は、コイル体5と加熱ローラ2の軸方向に一列に並んだ状態で、加熱ローラ2の両方の端領域と向かい合う位置に配置される。このコイル体6は、加熱ローラ2の一方の端に配置されるコイル体61と、加熱ローラ2の他の一方の端に配置されるコイル体62を含み、コイル体61,62は直列に接続され、電気的にひとつのコイルである。よって、以下、コイル体61,62の両方を説明するときは、コイル体6として説明し、同じ構成要件については、同じアルファベット等を付して説明する。
コイル体5は、電線が架空の軸に巻かれ所定の形状(例えばドーナツ状)に形成される励磁コイル5aと、この励磁コイル5aの電線の上に配置される磁性体コア5bを有する。架空の軸を含む励磁コイル5aの中心部分には、電線の存在しない空間部(以下窓部と記す)5cが形成され、磁性体コア5bも配置されない。すなわち、励磁コイル5aは、図2(a)に示されるように、磁性体コア5bが配置され平行に伸びる電線からなる平行電線部分と、一方の平行電線部分と架空の軸等(窓部5c)をはさんで向かい側に配置される他の平行電線部分とをつなぐ折り返し電線部分とを含む。
同様にして、コイル体61,62(コイル体6)は、それぞれ電線が架空の軸に巻かれ所定の形状(例えばドーナツ状)に形成される励磁コイル61a,62a(励磁コイル6a)と、この励磁コイル61a,62aの電線の上に配置される磁性体コア61b,62bをそれぞれ有する。架空の軸を含む励磁コイル61a,62aの中心部分には、電線の存在しない空間部(窓部)61c,62cが形成される。すなわち、励磁コイル61a,62aは、図2(a)に示されるように、磁性体コア61b,62bが配置され平行に伸びる電線からなる平行電線部分と、一方の平行電線部分と架空の軸等(窓部61c,62c)をはさんで向かい側に配置される他の平行電線部分とをつなぐ折り返し電線部分とを含む。なお、磁性体コア61b,62bは、磁性体コア5bと同様に窓部61c,62cを除いて、平行電線部分に配置できる。
なお、励磁コイル5a,6aの電線としては、表面が絶縁処理された複数の電線を束ねたリッツ線を用いる。このリッツ線により形成される励磁コイル5a,6aは、交流電流が供給された場合であっても有効に磁界を発生できる。本実施の形態においては、表面を耐熱性のポリアミドイミドを用いて絶縁処理された直径0.5mmの銅線材を16本束ねたリッツ線を用いる。
また、励磁コイル5a,61a,62aの電線の巻き数は、磁性体コア5b,61b,62bを備えることにより少なくできる。コイル体5,6は、上に説明したような形状に形成されることで集中的に磁束を発生でき、局部的に加熱ローラ2の所定の領域を加熱できる。
この励磁コイル5a,6aは、架空の軸がそれぞれ加熱ローラ2の外周面と垂直に交わるように配置されると、加熱ローラ2の外周面には励磁コイル5a,6aの電線が一定の間隔を有して配置される領域(以下コイル領域と記す)2−5a,2−61a,2−62aと、電線が配置されない窓部5c,61c,62cが位置され、周りに電線が配置される領域(以下窓部領域と記す)2−5c,2−61c,2−62cが形成される。よって、図2(a)のような方向から加熱ローラ2を見た場合、窓部領域2−5c,2−61c,2−62cには電線が配置されないため、加熱ローラ2の表面が見える。
この窓部領域2−5cには、加熱ローラ2の温度を検知し、検知された温度が異常温度に達している場合、励磁コイル5a,61a,62aに供給される電力を遮断する異常温度検知機構(サーモスタット)10が所定の間隔を有して配置される。なお、この異常温度とは、定着に要求される温度の範囲(通常温度)より高い温度であって、定着装置に搭載される他の部材が誤動作する、あるいは加熱ローラ2と加圧ローラ3が停止し、励磁コイルに電流が供給され続けた場合の上限温度として定義される。
従って、サーモスタット10は、周りを囲んでいる励磁コイル5aから提供される磁界により加熱ローラ2の窓部領域2−5cから発生する熱を検知できる。また、窓部領域2−5cは、励磁コイル5aから提供される磁界により熱を発生するコイル領域2−5aからの熱が伝達される。このため、たとえ加熱ローラ2が停止し、コイル領域2−5aが局部的に発熱し、異常温度に達した場合であっても、最も温度の高くなるコイル領域2−5aと近い値の温度を検知できる。
サーモスタット10は、この異常温度を検知すると、励磁コイル5a,6aに供給されている電力を遮断する。
また、サーモスタット10は、図3(a)に示されるように、周りを囲んでいる励磁コイル5aからの磁界が提供されることを防ぐ磁場遮蔽材10Aを有していてもよい。この磁場遮蔽材10Aにより、たとえば、サーモスタット10が、励磁コイル5aからの磁界の影響を受けて、誘導加熱(誘導電流)により温度が上昇し、真の値が検知できなくなる等の誤動作を防止できる。なお、磁場遮蔽材10Aは、図3(b)に示すように、サーモスタット10と加熱ローラ2の外周面とが向かい合っている部分を除き、サーモスタット10の励磁コイルと向かい合う面等を覆う形状を有することが好ましい。
このように、異常温度検知機構(サーモスタット10)をコイルの窓部に配置することで、異常温度検知機構のスペースを励磁コイルのスペースと兼ねられ、加熱ローラ2の外側周辺におけるスペースを有効に利用できる。
なお、図2(a)に示した例では、サーモスタット10は、励磁コイル5aの窓部5cに配置されているが、本願発明はこれに限られず、励磁コイル61a,62aの窓部61c,62cのいずれか一方に配置されてもよい。また、2つのサーモスタットは、窓部5cと61cあるいは窓部5cとに設けられてもよい。
次に、図4をいて、図1に示される定着装置に適用可能な誘導加熱制御回路の構成、およびこの定着装置を動作させる方法について説明する。この誘導加熱制御回路は、コイル電流制御回路200と、整流回路25と、商用交流電源26と、入力電力モニタ27と、CPU28と、サーミスタ31,32を有する。なお、商用交流電源26は、本発明の定着装置を動作させる電力を提供する電源であって、この定着装置を備える複写機等に供給される電力の一部である。
コイル電流制御回路200は、上に説明した励磁コイル5a,61a,62aを含む。
第1の共振回路は、並列に接続される励磁コイル5aと共振用のコンデンサ21とを含む。さらに、第1のインバータ回路は、直列に接続される第1の共振回路とスイッチング素子23を含む。
また、第2の共振回路は、並列に接続される励磁コイル6aと共振用のコンデンサ22と含み、この励磁コイル6aは、励磁コイル61a,62aが直列に接続された電気的に1つコイルである。さらに、第2のインバータ回路は、直列に接続される第2の共振回路とスイッチング素子24とを含む。なお、スイッチング素子23,24としては、高耐圧・大電流で利用可能なIGBTやMOS−FET等が用いられる。
この第1,2のインバータ回路には、整流回路25によって平滑化された商用交流電源26からの直流電流が供給される。なお、整流回路25と商用交流電源26との間には、サーモスタット10と、商用交流電源26から提供される電流および電圧の積である入力電力PIがモニタされる入力電力モニタ27が接続されている。
入力電力モニタ27は、商用交流電源26と接続されるトランス(変圧器)27aと、トランス27aから送伝される入力電力PIを検出する入力電力検出回路27bを含む。入力電力検出回路27bはCPU28と接続され、トランス27aにより検出された入力電力PIの情報がフィードバックされる。
CPU28は、駆動回路29,30と接続され、駆動回路29は、スイッチング素子23の制御端子と接続され、駆動回路30は、スイッチング素子24の制御端子と接続される。この駆動回路29,30がCPU28により動作されると、励磁コイル5a,6aには高周波電流が流れ、所定の磁界を発生させる。この所定の磁界が加熱ローラ2に提供されることにより、加熱ローラ2に渦電流が発生し、励磁コイル5aにより加熱ローラ2の所定領域2A(中央領域)と、励磁コイル6aにより加熱ローラ2の所定領域2B(端領域)から、それぞれ熱が発生する。加熱ローラ2の所定領域2A,2B付近には、加熱ローラ2の表面温度を検知するためのサーミスタ31,32が配置される。
サーミスタ31,32は、検知した加熱ローラ2の表面温度を、温度検出信号(電圧値)としてCPU28に出力する。この温度検出信号に応じてCPU28は、動作させる駆動回路29,30を選択的に切り替えることができる。たとえば、サーミスタ31の温度がサーミスタ32の温度に比べて所定温度低くなった場合、加熱ローラ中央部2Aを加熱させるため、励磁コイル5aが接続されている駆動回路29を駆動させる。また、サーミスタ32の温度がサーミスタ31の温度に比べて所定温度低くなった場合、加熱ローラ端部2Bを加熱させるため、励磁コイル6aが接続されている駆動回路30を駆動させる。よって、加熱ローラ2の中央領域2Aと端領域2Bとが交互に加熱される。
なお、サーミスタ31,32は、窓部5c,61c,62cに配置されてもよい。また、図4に示した加熱ローラ2を発熱させるための誘導加熱制御回路は、上に説明する構成に限られず、スイッチング素子23,24に供給される駆動電圧の周波数をそれぞれ独立に変化させるハーフブリッジダイプの回路やあるいは準E級回路等、また、駆動回路としてPWM(pulse width 変調)を用いるものであってもよい。
次に、図4に示した誘導加熱制御回路を参照して定着装置を動作させる方法の一例を説明する。
CPU28は、所定の割合(時間の比率)で交互に励磁コイル5a,6aに電流あるいは電圧(以下この電流と電圧の積であるコイル出力電力と記す)を供給するように、駆動回路29,30に指示する。例えば、駆動回路29により励磁コイル5aに電力が供給される時間を2、駆動回路30により励磁コイル6aに電力が供給される時間を1とし、用紙Pがより多く通過する加熱ローラ2の中央部が加熱される時間比率を大きくする。駆動回路29,30は、CPU28により指示される所定のタイミングおよび周波数で、スイッチング素子23,24の制御端子に、ON/OFF信号としての駆動電圧を交互に供給する。
たとえば、駆動電圧が供給された一方のスイッチング素子23がONすると、駆動電圧が供給されない他の一方のスイッチング素子24はOFFする。
スイッチング素子23がONされると、整流回路25から励磁コイル5aに、駆動電圧の周波数に応じた所定の電力(本実施の例では周波数20〜50kHzの範囲の高周波数電流を含む)が供給される。励磁コイル5aは、供給された電力に応じた磁界を発生させる。この磁界が提供されることにより、励磁コイル5a付近の加熱ローラ2の所定領域2Aには渦電流が流れ、加熱ローラ2はジュール熱により発熱する。なお、駆動回路30によりスイッチング素子24がONされたときも、同様にして、加熱ローラ2の所定領域2Bが発熱する。
ところが、定着装置に加熱ローラ2が停止する等の異常が生じると、励磁コイル5aの電線と向かい合う加熱ローラ2の外周面のコイル領域2−5aが、局所的に異常温度に上昇する虞がある。
サーモスタット10は、上に説明したように、周りを囲んでいる励磁コイル5aから提供される磁界により発熱する加熱ローラ2の外周面の温度を検知できる。
よって、サーモスタット10は、励磁コイル5aにより発熱される加熱ローラ2の外周面のうち最も温度の高いコイル領域2−5aと近い条件の領域の温度を検知できる。すなわち、サーモスタット10は、コイル領域2−5aの温度を検知する応答速度と同じ程度に、早い応答速度で加熱ローラ2の温度を熱伝導により検知できる。
加熱ローラ2が異常温度まで発熱すると、サーモスタット10は、加熱ローラの異常温度を検知し、商用交流電源26から整流回路25に供給される電力を遮断する。
なお、定着装置の動作方法はこれに限られず、例えば、加熱ローラ2と加圧ローラ3の間を通過する用紙Pのサイズに応じて、加熱ローラ2の中央領域に配置される励磁コイル5aと、加熱ローラ2の端領域に配置される6aとに電力を供給するタイミングを選択的に切り替えることにより、加熱ローラ2の表面を均一に発熱できる。
具体的には、A4サイズ,A3サイズ等の長い方の辺が加熱ローラ2の長手方向と平行に通過されている場合や、加熱ローラ2の長手方向の通紙領域と同じ長さの一辺を有するフルサイズ紙が通過されている場合は、加熱ローラ2の中央に位置する励磁コイル5aと端に位置する励磁コイル6aに、ともに概ね等しい割合で電力が供給される。
一方、はがき等の小サイズ紙が通過されている場合や、A4サイズの短い方の辺が加熱ローラ2の長手方向と平行に通過されている場合は、中央に位置するコイル5aに電力が供給される割合を、端に位置するコイル6aに電力が供給される割合よりも増やす。
また、例えば動作モードに応じて各コイル5a,6aに供給されるコイル出力電力(両コイル5a,6aに供給される電流と電圧の積)の最大値を変化させる場合は、スイッチング素子23,24に供給される駆動電圧の周波数を20〜50kHzの範囲で制御することにより、コイル出力電力は700W〜1500Wの範囲で変化できる。
また、図4に示す誘導加熱制御回路にさらに回転検知機構を設けることにより、加熱ローラが異常温度まで発熱することを防止し、定着装置の安全性をより高めることができる。
図5に示されるように、加熱ローラ2の所定の位置には、加熱ローラ2の回転を検知できる回転検知機構33が配置される。
回転検知機構33は、例えば、加熱ローラ2の金芯2a(シャフト)等に固定されたパルス板(FGプレート)33aが加熱ローラ2に回転に伴い回転されることを、定着装置1の所定の位置に固定されるフォトセンサ33bにより検出することにより、加熱ローラ2の回転を検知できる。なお、回転検知機構33はこれに限られず、加熱ローラ2の外周面の所定の位置にあるマーキングを、光検知手段等を用いて加熱ローラ2の回転を検知するものであってもよい。
この回転検知機構33は、出力端子が駆動回路29と接続されるAND回路34の入力端子と、出力端子が駆動回路30と接続されるAND回路35の入力端子と接続されている。AND回路34,35は、さらに入力端子側がCPU28と接続される。
よって、AND回路34は、回転検知機構33から出力される回転検知信号と、CPU28から出力される駆動回路29を駆動する指示信号(以下励磁制御信号と記す)とが入力されると、駆動回路29を駆動させる信号(以下駆動信号と記す)を出力する。この駆動信号が入力された駆動回路29は、スイッチング素子23をONさせ、励磁コイル5aには所定の電力が供給される。
同様に、AND回路35は、回転検知機構33から出力される回転検知信号と、CPU28から出力される駆動回路30を駆動する励磁制御信号が入力されると、駆動回路30を駆動させる駆動信号を出力する。この駆動信号が入力された駆動回路30は、スイッチング素子24をONさせ、励磁コイル61a,62aには所定の電力が供給される。
すなわち、励磁コイル5a,61a,62aには、加熱ローラ2が回転していると電力が供給され、加熱ローラ2が停止していると電力が供給されない。
よって、たとえCPU28あるいはサーミスタ9a,9bにトラブルが生じたとしても、回転ローラ2は、回転を伴わなければ励磁コイル5a,6aにより加熱されない。従って、加熱ローラ2の外周面が局所的に異常温度まで発熱することを防止でき、定着装置1の安全性が従来に比べ大きく高まる。
また、さらに安全性を高めるために、加圧ローラ3の外周面に近接する所定の位置に、加圧ローラ3の温度を検知する温度検知機構(サーミスタ)36を設けてもよい。回転検知信号と励磁制御信号が、AND回路34あるいはAND回路35のいずれか一方に入力されているとき、加圧ローラ3の温度は、回転する加熱ローラ2からの熱伝導により、所定の範囲で上昇する。すなわち、このサーミスタ36からの加圧ローラ3の温度の情報に基づき、サーミスタ36から出力される加圧ローラ3の温度が所定の範囲に上昇している場合は、加熱ローラ2は回転しており、加圧ローラ3の温度が上昇しない場合は、加熱ローラ2は回転していないと判断できる。
これに起因して、CPU28に、加圧ローラ3の温度が所定の範囲に上昇している場合に限り、AND回路34あるいはAND回路35のいずれか一方に励磁制御信号が出力されるように設定する。これにより、たとえば加熱ローラ2が回転していないにもかかわらず、回転検知信号がAND回路31あるいはAND回路32に入力されてしまう等の誤動作が生じた場合であっても、励磁制御信号が出力されないため、励磁コイル5a,61a,62aには電力が供給されない。
よって、たとえ回転検知機構33あるいはサーミスタ9a,9bにトラブルが生じたとしても、加熱ローラ2は、回転していなければ励磁コイル5a,6aにより加熱されない。従って、加熱ローラ2の外周面が、局所的に異常温度まで発熱することを防止できる。
さらに、回転検知機構33は、加熱ローラ2の回転速度を検知するものであってもよい。この検知結果がフィードバックされることで、CPU28は加熱ローラ2の回転速度を一定に維持できる。よって、加熱ローラ2と加圧ローラ3の間を通過する用紙に、適切な画像が形成される。
次に、図6を用いて、図2(a),(b)を用いて説明したコイル体5,6とサーモスタット10の異なる例を説明する。なお、図6は、図1の矢印P方向から見た図である。また、図2(a),(b)と同じ構成についての詳細な説明は省略する。
図6に示されるように、加熱ローラ2の外側には、加熱ローラ2の中央領域(用紙Pの通過する頻度の高い領域)を加熱するコイル体105と、加熱ローラ2の両方の端領域を加熱するコイル体106(161,162)とが、加熱ローラ2の軸方向に一列で配置される。
コイル体105は、電線が架空の軸に巻かれ所定の形状に形成される励磁コイル105aと、この励磁コイル105aの上に配置され窓部105cを覆う磁性体コア105bを有する。
同様にして、コイル体161,162(コイル体106)は、それぞれ電線が架空の軸に巻かれ形成される励磁コイル161a,162a(励磁コイル106a)と、この励磁コイル161a,162aの上に配置され、窓部161c,162cをそれぞれ覆う磁性体コア161b,162bをそれぞれ有する。
この励磁コイル105a,106aの架空の軸がそれぞれ加熱ローラ2の外周面と垂直に交わるように配置されると、励磁コイル5a,61aの間の継ぎ目領域W11の所定領域に、加熱ローラ2の表面が見える領域が形成される。この継ぎ目領域W11の所定位置には、加熱ローラ2の温度を検知し検知された温度が異常温度に達している場合、励磁コイル105a,161a,162aに供給される電力を遮断する異常温度検知機構(サーモスタット)110が配置される。
同様にして、励磁コイル5a,62aの間の継ぎ目領域W12のうち、加熱ローラ2の表面が見える領域が形成され、この継ぎ目領域W12の所定位置に、サーモスタット111が配置できる。なお、サーモスタット110,111は、励磁コイルに近接して配置されることが好ましい。
従って、サーモスタット110,111は、より速い応答速度で加熱ローラ2の温度を熱伝導により検知できる。これは、例えば励磁コイル105aの電線と加熱ローラ2との間等の磁界が持続的に提供される領域の付近にサーモスタット110,111が配置されることにより、応答速度も適度に確保されるためである。よって、たとえ加熱ローラ2が停止し局部的に発熱した場合であっても、加熱ローラ2の外周面のうち最も温度の高くなる領域の温度上昇の異常を検知できる。
また、2つのサーモスタット110,111を備えることにより、どちらか一方が故障等により機能しない場合であっても、他の一方が異常温度を検知できる。また、いずれか一方のみであっても、加熱ローラ2の外周面のうち最も温度の高くなる領域の温度上昇の異常を検知できることは言うまでもない。
また、サーモスタット110に、励磁コイル5a,61aからの磁界が提供されることを防ぐ磁場遮蔽材110Aを、サーモスタット111に、励磁コイル5a,62aからの磁界が提供されることを防ぐ磁場遮蔽材111Aを設けてもよい。
次に、図7を用いて図2(a),(b)を用いて説明したコイル体5,6とサーモスタット10のさらに異なる例を説明する。なお、図7は、図1の矢印P方向から見た図である。また、図2(a),(b)と同じ構成についての詳細な説明は省略する。
図7に示されるように、加熱ローラ2の外側には、加熱ローラ2の中央領域(用紙Pの通過する頻度の高い領域)を加熱するコイル体205と、加熱ローラ2の両方の端領域を加熱するコイル体206(261,262)とが、加熱ローラ2の軸方向に一列で配置される。
コイル体205は、電線が架空の軸に巻かれて所定の形状(例えば台形状)に形成される励磁コイル205aと、この励磁コイル205aの上に配置される磁性体コア205bを有する。励磁コイル205aは、例えば図7に示されるように、磁性体コア205bが配置され、加熱ローラ2の軸方向に平行に伸びる電線からなる平行電線部分と、一方の平行電線部分と架空の軸をはさんで向かい側に配置される他の平行電線部分とをつなぐ折り返し電線部分とを含む。この折り返し電線部分は、平行電線部分と所定の角度で交わる(すなわち台形の平行でない辺の)第1,2の直線部とを含む。
コイル体261は、一方の端に隣り合う励磁コイル205aの一方の折り返し電線部分、すなわち第1の直線部、に応じて形成される第3の直線部を有する励磁コイル261aと、この励磁コイル261aの上に配置される磁性体コア261bを含む。同様に、コイル体262は、一方の端に隣り合う励磁コイル205aの他の一方の折り返し電線部分、すなわち第2の直線部、に応じて形成される第4の直線部を有する励磁コイル262aと、この励磁コイル262aの上に配置される磁性体コア262bを含む。なお、励磁コイル205aは、図7に示されるような台形状のもの限られず、たとえば第1,2の直線部が平行である平行四辺形状に形成されてもよい。
励磁コイル261aは、励磁コイル205aとの間に距離L1を確保して配置される。この励磁コイル205a,261aの間には、加熱ローラ2の温度を検知し、検知された温度が異常温度に達している場合、励磁コイル205a,261a,262aに供給される電力を遮断するサーモスタット210が配置される。 同様にして、励磁コイル262aは、励磁コイル205aとの間に距離L2を確保して配置される。この励磁コイル205a,262aの間には、サーモスタット211が配置される。なお、サーモスタット210、211は、励磁コイルに近接して配置されることが好ましい。
従って、サーモスタット210,211は、例えば励磁コイル205aの電線と加熱ローラ2との間等の磁界が持続的に提供される領域の付近に配置されるため、より速い応答速度で加熱ローラ2の温度を熱伝導により検知できる。よって、たとえ加熱ローラ2が停止し局部的に発熱した場合であっても、最も温度の高くなる領域の温度上昇の異常を検知できる。
また、たとえば、内側に励磁コイルを配置できない図1に示すような加熱ローラ2を備える定着装置においても、異常温度検知機構の配置されるスペース(加熱ローラ2の外側に配置される励磁コイルの占有領域)は、一列に配置される励磁コイルが使用する加熱ローラ2の軸方向に分割された所定の領域に抑えることができる。
また、軸方向と直交する方向で分割された領域のうち、励磁コイルの継ぎ目部分W21には、励磁コイルに所定の電力が供給された場合、励磁コイル205a,261aから磁界が提供される領域を含む。同様にして、励磁コイルの継ぎ目部分W22には、励磁コイルに所定の電力が供給された場合、励磁コイル205a,262aから磁界が提供される領域を含む。
よって、コイルの継ぎ目部分W21,W22では、隣り合う励磁コイルからそれぞれ磁界が提供される領域が重なり合っている(オーバーラップしている)ため、温度低下を防ぐことができ、加熱ローラ2の長手方向の温度分布を均一にできる。
なお、サーモスタット210,211には、それぞれ磁場遮蔽材210A,211Aを設けてもよい。また、異常温度検知機構としてサーモスタット210を利用しサーモスタット211は取り除かれる場合、励磁コイル205a,262aは、近接して配置されることが好ましい。
さらに、図8(a),(b),(c)を用いて、図2(a),(b)を用いて説明したコイル体5,6とサーモスタット10の異なる例を説明する。なお、図8(a)は、加熱ローラ2と異常温度検知機構との関係を示す概略図であって、図8(b)は、図8(a)の矢印P方向から見た図であり、図8(c)は、図8(a)の矢印Q方向から見た図である。また、図2(a),(b)と同じ構成についての詳細な説明は省略する。
図8(b)に示されるように、加熱ローラ2の外側には、加熱ローラ2の中央領域(用紙Pの通過する頻度の高い領域)を加熱するコイル体305と、加熱ローラ2の両方の端領域を加熱するコイル体306(361,362)が配置される。
また、この加熱ローラ2の一方の端領域を加熱するコイル体361は、加熱ローラ2の長手方向で用紙Pが通過する領域R1の一部と、加熱ローラ2の長手方向で用紙Pが通過されない領域(非通紙領域)R2の一部と、向かい合って配置され、他の一方の端領域を加熱するコイル体362は、加熱ローラ2の長手方向で用紙Pが通過する領域R1の一部と、加熱ローラ2の長手方向で用紙Pが通過されない領域(非通紙領域)R3の一部と、向かい合って配置される。
コイル体305は、電線が架空の軸に巻かれ所定の形状(例えばドーナツ状)に形成される励磁コイル305aと、この励磁コイル305aの上に配置される磁性体コア305bを有する。また、コイル体361,362(コイル体306)は、それぞれ電線が架空の軸に巻かれ所定の形状(例えばドーナツ状)に形成される励磁コイル361a,362a(励磁コイル306a)と、この励磁コイル361a,362aの上に配置される磁性体コア361b,362bをそれぞれ有する。
励磁コイル362aと非通紙領域R3の間には、異常温度検知機構(ヒートパイプタイプ)310の一部が近接あるいは接して配置される。
異常温度検知機構310は、加熱ローラ2の外周面と励磁コイル362aの電線との間に加熱ローラ2の外周面に近接あるいは接して配置される第1の導電性部材311と、この第1の導電性部材71からの熱を加熱ローラ2から離れた位置に伝えるヒートパイプ312と、このヒートパイプ312からの熱が伝達される第2の導電性部材313と、この第2の導電性部材313の温度を検知し、検知された温度が異常温度に達している場合、励磁コイル305a,361a,362aに供給される電力を遮断する異常温度検知部314を有する。
第1の導電性部材311は、熱伝導率の高い材料(例えば銅,アルミニウム,銀等を含む材料)により構成される。また、第1の導電性部材311は、加熱ローラ2を発熱させるための誘導加熱により発熱しにくい材料、すなわち誘導加熱に用いる励磁コイルから発生される磁束の浸透深さの深い材料、を含んでもよい。従って、励磁されたコイルからの多くの磁束は第1の導電性部材311を通過するため、第1の導電性部材311は発熱しない。
第2の導電性部材313は、熱伝導性が非常に高く、励磁コイル362aからの磁界により発熱しない材料(例えば銅,アルミニウム,銀等を含む材料)により構成される。
なお、第1の導電性部材311と、ヒートパイプ312と、第2の導電性部材313は、一体的に形成できる。
励磁コイル305a,361a,362aに所定の電力が供給され加熱ローラ2が発熱すると、第1の導電性部材311は、加熱ローラ2からの放射熱により、加熱ローラ2の表面と概ね等しい温度に加熱される。異常温度検知部314が配置可能な所定の位置に配置される第2の導電性部材313は、ヒートパイプ312を用いた熱伝達により、第1の導電性部材311の温度を保持する。よって、第2の導電性部材313からの放射熱が提供される異常温度検知部314は、加熱ローラ2から離れたところであっても第1の導電性部材311の温度、すなわち加熱ローラ2の外周面と概ね等しい温度、を検知できる。
従って、異常温度検知部314は、加熱ローラ2の近傍に配置される必要がなく、異常温度検知部314、励磁コイル305a,361a,362aは、それぞれ配置される場所が制限されない。
ここで、加熱ローラ2が異常温度まで発熱した場合、加熱ローラ2と励磁コイル362aの間に配置される第1の導電性部材311は、より早い応答速度で加熱ローラ2の温度を検知できる。この温度は、ヒートパイプ312および第2の導電性部材313を伝わって、異常温度検知部314により検知される。異常温度を検知した異常温度検知部314は、励磁コイル305a,361a,362aに供給されている電力を遮断する。
よって、たとえ加熱ローラ2が停止した場合であっても、異常温度検知部314は、早い応答速度で加熱ローラ2に近接している第1の導電性部材311の温度と概ね等しい温度を検知できるので、加熱ローラ2が局所的に発熱することを防止できる。
なお、第1の導電性部材311を加熱ローラ2と接触させると、第1の導電性部材311は、より早い応答時間で加熱ローラ2の表面温度を検知できる。
また、第1の導電性部材311の配置位置は、これに限られず、たとえば用紙Pが通過する領域R1であってもよい。この場合、第1の導電性部材311は、加熱ローラ2の外周面と接触しないことが好ましい。
また、熱の伝達の遅れによる異常温度検知部314の応答時間のずれが生じる場合は、加熱ローラ2が異常温度に達したとき励磁コイル305a,361a,362aに供給される電力を遮断できるような、加熱ローラ2の異常温度より低い温度を、異常温度検知部314で異常温度としての遮断される温度レベルに設定すればよい。
次に、本発明の定着装置に適用できる異常温度検知方法の異なる例について説明する。
図9は、本発明の定着装置に適用可能な誘導加熱制御回路の異なる例を示す。
図9に示されるように、誘導加熱制御回路には、上に説明した例と同様、加熱ローラ2の外側には、加熱ローラ2の中央領域と向かい合い配置されるコイル体405と、加熱ローラ2の両方の端領域と向かい合う位置に配置されるコイル体406(461,462)が接続される。コイル体405,461,462は、それぞれ励磁コイル405a,461a,462aを有する。
この励磁コイル405a,461a,462aを含むコイル電流制御回路300は、図4に示す誘導加熱制御回路と同様に、コンデンサ21とスイッチング素子23を含み、励磁コイル405aに電力を供給する第3のインバータ回路と、コンデンサ22とスイッチング素子24を含み、励磁コイル461a,462aに電力を供給する第4のインバータ回路を含む。第3,4のインバータ回路は、それぞれ駆動回路29,30と接続されている。
さらに、コイル電流制御回路300は、整流回路25を介して商用交流電源26と接続され、入力電力モニタ27あるいはサーミスタ31,32からの入力に基づき駆動回路を駆動できるCPU28と接続されている。
なお、この誘導加熱制御回路の構成は、図4の回路から異常温度検知機構10を取り除いたものであり、詳細な説明は省略する。
この第3,4のインバータ回路は、それぞれの励磁コイルとコンデンサによる共振を利用し、効率よく励磁コイルに高周波電流を供給する自励式発振回路である。
以下、この自励式発振回路の動作を説明する。
図11(a),(b),(c),(d)は、第3のインバータ回路の等価回路ECを示し、この等価回路ECに流れる電流を説明する図である。また、図10(a),(b)は、この第3のインバータ回路の等価回路ECに流れる電流と時間との関係を示す参考図である。
図10(a),(b)に示されるように、第3のインバータ回路の等価回路ECには、CPU28によりON/OFFされるスイッチング素子23のON時間(O−P時間)の長さに応じた所定の周波数を有する電流が流れる。なお、この周波数は1周期が時間O−Rである。
図11(a)に示すように、時間O−Pにおいて、ON状態のスイッチング素子23と励磁コイル405aには、電源PWからの電流が矢印Aのように流れる。スイッチング素子23がOFFすると、スイッチング素子23に流れていた電流は、図11(b)に示されるとおり、矢印Bのように共振コンデンサ21に流れ、共振コンデンサ21は時間P−Qで充電される。
充電された共振コンデンサ21は、図11(c)に示されるように、放電を開始する。放電状態の共振コンデンサ21には、矢印Cのような逆向きの電流が流れ、時間Q−R経過すると、電圧はゼロになる。しかし、この逆向きの電流は急に止まれず、スイッチング素子23のダイオード23aに流れ込み、時間R−Sの間、図11Dの矢印Dに示すように流れる。
そして、再びスイッチング素子23がONすると、励磁コイル405aには所定の電流が流れる。この周期O−Sが繰り返されることにより、加熱ローラ2は、所定の磁界が提供され、発熱する。なお、時間Pにおいて、励磁コイル405aを流れる電流の値X1はピーク電流値である。このピーク電流値X1は、前に説明した入力電力モニタ27によりモニタされる入力電力PIが、CPU28にフィードバックされることで、算出できる。また、この入力電力PIは、励磁コイル405aから提供される磁界により発熱する加熱ローラ2の熱出力(W)に基づき決定される。
この加熱ローラ2の熱出力とは、励磁コイル405aに流れる所定の値の電流に応じて発生する磁界により、渦電流が流れる加熱ローラ2が発熱する際の熱エネルギーであって、たとえば、入力電力モニタ27によりモニタされる入力電力PIから誘導加熱により浪費される所定エネルギーを差し引いたエネルギーで定義される。
よって、入力電力PIをモニタすることにより、励磁コイル405aのピーク電流値X1を算出し、加熱ローラ2が発熱する際のエネルギーに基づく加熱ローラ2の温度を検出できる。
また、励磁コイル405aと加熱ローラ2は、所定の磁気特性(磁気的な結合)を有し、この磁気特性により、励磁コイル405aに供給される電流のピーク電流値X1と周波数および電圧は決まっている。なお、この磁気特性は、加熱ローラ2の透磁率および抵抗率、励磁コイル405aのターン数(巻き数)、磁性体コア405bの配置位置等により初期的に決まっている。
しかし、加熱ローラ2が異常温度まで上昇されると、加熱ローラ2からの放射熱により、励磁コイル405aが所定の温度まで加熱され、加熱された励磁コイル405aの磁気特性は、加熱される以前と異なる磁気特性に変化する。すなわち、この磁気特性は、温度依存性を有する。
図10(b)は、加熱ローラ2が異常温度まで発熱することにより、磁気特性が変化した励磁コイル405aに流れる電流と時間との関係を示す。なお、10(a),(b)は、設定される加熱ローラ2の熱出力が900Wであるとき、励磁コイル405aに流れる電流と時間との関係を示す。
図10(b)に示されるように、加熱ローラ2が異常温度に上昇したことにより磁気特性の変化した励磁コイル405aには、ピーク電流値X1よりも大きいピーク電流値X2の電流が流れる。また、この電流の周波数も、周期O−Sよりも長い1周期O´−S´と変化する。すなわち、周波数は減少する。
よって、CPU28は、励磁コイル405aに供給される所定の電流の周波数の値応じて設定される設定値に基づき、入力電力モニタ27からフィードバックされる入力電力PIすなわちピーク電流値、が所定の範囲に保持されていない場合は、加熱ローラ2が異常温度に上昇していると判断できる。なお、この設定値(閾値)は、励磁コイル405aと加熱ローラ2の磁気特性に応じた所定の範囲を有する周波数とピーク電流値であって、CPU28の記憶部に記憶されている。例えば、加熱ローラ2の熱出力700Wの場合、励磁コイル405aに流れる電流のピーク電流値は55Aで、周波数は26kHz、熱出力900Wの場合ピーク電流値は60Aで周波数は23kHz、熱出力1200Wの場合ピーク電流値は65Aで周波数は21kHz等である。
例えば、設定される加熱ローラ2の熱出力が900Wで、加熱ローラ2の温度が約150度であるとき、図10(a)に示されるように、励磁コイル405aは、流れる電流のピーク電流値X1は50Aである。しかし、加熱ローラ2が異常温度(例えば300度)まで上昇し、磁気特性が変化すると、励磁コイル405aに60Aのピーク電流値X2の電流が流れる。このピーク電流値の変化を入力電力モニタ27からフィードバックされる入力電力PIより算出し、図10(b)に示される周波数が減少したこと、すなわち加熱ローラ2に供給される熱出力が増加していることをCUP28が発見できる。
加熱ローラ2に供給される熱出力の増加を発見すると、CPU28は、励磁コイル405aに供給される電力を停止する。
また、図10(a),(b)に示されるように、励磁コイル405aに供給される電流の周波数は、スイッチング素子23のON時間を検知することにより算出できる。また、この周波数は、スイッチング素子23のON時間と、共振コンデンサ21の共振時間をあわせた値で定義される。
CPU28は、このスイッチング素子23のON時間を検出するためのタイマー28bと接続されている。また、CPU28と接続されている記憶部28aには、励磁コイル405aと磁性体コア405bが有する磁気特性に応じたスイッチング素子23のON時間および共振コンデンサ21の共振時間の設定される閾値が記憶されている。
よって、CPU28は、検出されるスイッチング素子23のON時間と予め設定される閾値を比較し、ON時間が閾値より長い場合、周波数が減少した判断できる。この周波数が、例えば上に説明したような設定値以下になると、CPU28は、励磁コイル405aに供給される加熱ローラ2が異常温度まで上昇されるための電力を遮断する。
よって、たとえ加熱ローラ2が停止した場合であっても、加熱ローラ2が異常温度まで上昇するための電力が励磁コイル405aに供給されないため、加熱ローラ2が局部的に発熱することを防止できる。
また、異常温度検知機構を使用することなく加熱ローラ2の異常検出でき、定着装置1の安全性が従来に比べ大きく高めることができる。
なお、励磁コイル406aに対しても、同様の異常温度検知方法が適用できることは言うまでもない。
また、本実施の例は、励磁コイル405a,406aを保持する磁性体コア405b,406bが、加熱ローラ2の放射熱で加熱されることにより、磁気特性が変化することを利用した異常温度検知方法を適用できる。
磁性体コア405b,406bは、加熱ローラ2が異常温度まで発熱した場合、所定のキュリー点を通過すると磁気飽和するため磁気特性が変化するコア材料を用いて構成される。
このキュリー点は、加熱ローラ2が設定される通常の温度の範囲で発熱しているときは通過されないように、この通常の温度の範囲を超えたときの磁性体コア405b,406bの温度を評価し、この通常であるときの磁性体コア405b,406bの温度の範囲を少し超える温度であることが好ましい。
加熱ローラ2の温度が設定される通常の温度範囲を超えると、キュリー点を通過し磁気飽和された磁性体コア405b,406bは、励磁コイル405a,406aとの磁気特性が変化する。これにより、励磁コイル405a,406aに流れる電流の値(ピーク電流値)が変化する。この電流値の変化は、上に説明したように入力電力モニタ27からフィードバックされる入力電力PIを上に説明したような設定値と参照することによりCPU28で検知される。
この電流値の変化による励磁コイル405aと磁性体コア405bの磁気特性の変化を発見すると、CPU28は、励磁コイル405aに供給される電力を停止する。
よって、たとえ加熱ローラ2が停止した場合であっても、加熱ローラ2が異常温度まで上昇するための電力が励磁コイル405aに供給されないため、加熱ローラ2が局部的に発熱することを防止できる。
また、異常温度検知機構を使用することなく加熱ローラ2の異常検出でき、定着装置1の安全性が従来に比べ大きく高めることができる。
なお、以上説明したような定着装置、定着装置に設けられる励磁コイル、定着装置の制御方法は任意に組み合わせ可能である。
以上説明したとおり、本願発明の定着装置は、加熱ローラのコイルの継ぎ目部分における温度低下を防ぐことにより、加熱ローラの長手方向における温度分布を均一にでき、良好な画像を得られる。
2…加熱ローラ、3…加圧ローラ、5,6…誘導加熱機構、9a,9b…サーミスタ、10…サーモスタット、28…主制御機構(CPU)、33…回転検出機構、34,35…加熱誘導制御機構、310,314…異常温度検知機構、311…温度検知部、312,313…ヒートパイプ部。