JP4400849B2 - 合成高分子組成物用加工助剤 - Google Patents

合成高分子組成物用加工助剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成高分子組成物の平滑性および光沢などの表面特性、表面塗布性、および添加された着色剤、充填剤の均質性などを改良するための、カルボン酸エステル系合成高分子組成物用加工助剤に関する。これらの特性に加えて、本発明の加工助剤は非相溶性ポリマーの混合物を安定化させる効果を有し、これらの合成高分子組成物の流動特性を改良する。
【0002】
加工助剤(加工補助添加剤)は比較的少量添加されるが、それがないとある種の合成高分子は加工が困難になり、またある種の成形加工が実施できなくなるという重要な添加剤である。加工助剤はほとんどの熱可塑性合成高分子および熱硬化性樹脂(硬化性成形組成物)に用いられ、生産機械の生産能力の向上、最終製品の品質改善、および新しい加工技術の利用において決定的な役割を果たす。加工助剤は合成高分子の流動挙動と流動性の改善に用いられ、充填剤を含むか否かにかかわらず合成高分子混合物および合成高分子溶融物の均質性と安定性の改善、表面特性の改善に寄与するとともに、溶融物または混合物と機械部品との接着性を低下させて、最終的には離型性の改善に寄与する。
【0003】
【従来の技術】
合成高分子とともに用いる加工助剤に求められる要件は一般的はに次の通りである。
【0004】
高分子の基本的な物性を損なわずに、最終製品の用途に関連する特性に望ましい効果を及ぼすものであること。そのような特性としては、表面平滑性、光沢、透明性、印刷性、溶接適性、粘着性、さらに滑り特性およびブロッキング特性がある。
【0005】
合成高分子組成物および合成高分子溶融物と、機械部品または成型部品との間の接着性を高めたり、結果として高分子の分解を増大させることが決してないこと。加工助剤は不接着性であることが望ましい。
【0006】
均質な可塑化された合成高分子溶融物および/または均質な配合合成高分子材料を得るために、粉体供給から溶融までの合成高分子の粘弾性挙動、および配合された合成高分子材料の粘弾性挙動を最適化できること。
【0007】
加工助剤およびそれらの可能な用途についての概要は非特許文献1、非特許文献2などに記載されている。
【0008】
【表1】
Figure 0004400849
【0009】
(注)PVC=ポリ塩化ビニル
PS=ポリスチレン
CA=酢酸セルロース
MF=メラミンホルムアルデヒド樹脂
PO=ポリオレフィン
ABS=アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体
PF=フェノールフォルムアルデヒド樹脂
PA=ポリアミド
UP=不飽和ポリエステル樹脂
PE=ポリエチレン
【0010】
多くの加工助剤が例示されるが、種々の合成高分子組成物でこれらの加工助剤を使用する場合には絶えず問題が生じている。ある種の加工助剤は、室温で最終製品の表面に移動してその外観を損ったり、望ましくない揮発分の放出を起こしたりすることがよく知られている。例えば、ステアリン酸は、望ましくない白色析出物(ブルーム)として可塑化PVCの表面に析出する。
【0011】
耐衝撃性PVCの製造時に滑剤として使われる精製炭化水素も、室温で表面に析出して合成高分子を脂っぽく曇った外観にする。特に熱硬化性合成高分子組成物にステアリン酸亜鉛などの金属塩を用いた場合は、これらの金属塩が原因で最終製品から揮発分が放出される問題が生ずる。これら金属塩は最終製品をペイントする場合に接着性の問題も引き起こす。接着性に問題があるため、最終製品の表面塗布性を改善するためのアルカリ処理(パワー洗浄)などの余分の対策を講ずることが必要になる。これは環境を損う余分な望ましくない操作でもある。加工助剤とある種の成分との間では、例えば両者の相溶性が限界を超えた場合問題が生じる。この問題は、ある種の染料、顔料、安定剤および充填剤を用いた時に「プレートアウト」として生じる。この現象は、特に短鎖脂肪酸エステルを用いたときに発生する。ポリオレフィン熱可塑性樹脂に使用した場合、光安定剤、その他の安定剤、および酸化防止剤と相互作用を引き起こし、機械加工の中断および最終製品の安定性を減じることがある。
【0012】
特許文献1および特許文献2は、炭素原子数1〜4のモノ−または多価アルコールのモノ−、ジ−およびトリヒドロキシカルボン酸エステルのカルボン酸エステル誘導体をベースとした、熱硬化性樹脂の充填剤処理用カップリング剤およびその用途を開示している。これらのカップリング剤は充填剤と樹脂との接着を改善する。加工助剤の使用については記載されていない。
【0013】
特許文献3は、硬化性の相安定化ポリエステル成形用組成物を開示している。多くの硬化性成形用組成物、例えばポリエステル樹脂が持つ問題点は、ポリエステル樹脂の個々の成分が互いに非相溶性であることである。従って加工中に個々の成分は相分離を起こす傾向がある。上記特許によれば、炭素原子数5〜28の脂肪酸を用いると相分離を起こす傾向が低下する。これの欠点は、前記脂肪酸が添加されたMgOと反応して、この添加剤の効果(最終加工粘度の調整)を低減することである。
【0014】
特許文献4は、不飽和ポリエステル樹脂または末端不飽和ビニルエステル樹脂から成る硬化性成形用組成物を開示するとともに、前記2成分とオレフィン不飽和性の共重合性モノマー、増粘剤、充填剤、および少なくとも0.4重量%の粘度降下加工助剤を含む混合物を開示している。この粘度降下加工助剤は少なくとも6個の炭素原子鎖を持つ脂肪族モノカルボン酸から成る。この場合の欠点も、先に記載したようにモノカルボン酸が添加物(MgO)と反応することである。
【0015】
【非特許文献1】
Hans Batzer, Polymere Werkstoffe, Band II - Technologie 1 [Polymeric materials, volume II -Technology 1], Georg Thieme Verlag Stuttgart, 1984, pp. 328 et seq.
【非特許文献2】
Gachter/Muller, Kunststoff-Additive [Plastics additives], 3rd edition, Carl Hanser-Verlag, 1989, pp. 441-502
【特許文献1】
米国特許4,210,571
【特許文献2】
米国特許4,210,572
【特許文献3】
ヨーロッパ特許0222977B1(DE3650587T2、US4,622,354対応)
【特許文献4】
米国特許第4,172,059号
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
様々な種類の加工助剤が市場に存在するにもかかわらず、合成高分子組成物の表面特性に好ましい影響を与え、調製中および加工中の双方において合成高分子組成物の流動特性に好ましい影響を与え、さらに表面塗布性および均質性などのパラメータを改善する物質が存在しないという問題に鑑み、本発明の目的は、前記問題点を示さない加工助剤を見つけ出すことである。他の目的は、移行性と放出性を最小にすることを求める厳しい環境基準に鑑み、上記要件すべてを満たし、最終用途において移行現象も放出現象(曇り、ブルーム)も起こさない加工助剤を見出すことである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
驚くべきことに、前記目的は、部分エステルを用いることにより達成されることが分かった。
【0018】
従って、本発明は、カルボン酸エステルを基礎とする合成高分子組成物用加工助剤であって、前記加工助剤が、(1)少なくとも18個の炭素原子を有し、(2)300〜10000の数平均分子量を有し、かつ、(3)飽和または不飽和の脂肪族多価カルボン酸、飽和または不飽和の脂環式多価カルボン酸、および前記多価カルボン酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも一の多価カルボン酸成分と、飽和または不飽和の脂肪族モノエポキシド、飽和または不飽和の脂環式モノエポキシド、芳香族モノエポキシド、およびエーテル基を含んでいてもよいモノアルコールからなる群より選ばれた少なくとも一の成分との反応によって得られる部分エステルを含んでなり、前記多価カルボン酸成分のカルボキシル基の10〜90%が反応し、前記多価カルボン酸成分が8〜100個の炭素原子を有することを特徴とする加工助剤を提供する。
【0019】
多価カルボン酸のカルボキシル基の20〜70%がエステル化されているのが好ましく、25〜60%がエステル化されているのがさらに好ましい。多価カルボン酸は2〜4個のカルボキシル基を持つことが好ましい。特に好ましい多価カルボン酸は、不飽和脂肪酸の重合によって得られる30〜60個の炭素原子を持つ二量体酸または三量体酸である。部分エステルの酸価は少なくとも10mgKOH/gであることが好ましい。
【0020】
本発明は、さらに、合成高分子組成物の加工における前記加工助剤の用途、およびも前記加工助剤を用いる合成高分子組成物の加工方法をも提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の部分エステルは、DIN7724に示されるような熱可塑性合成高分子組成物にも、熱硬化性合成高分子組成物にも使用できる。
【0022】
前記部分エステルが用いられる好ましい熱可塑性合成高分子は、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレートまたはこれらの混合物である。部分エステルを用いるのがより好ましい熱可塑性合成高分子は、PVCであり、軟質PVCとペーストPVCが特に好ましい。
【0023】
前記部分エステルが用いられる好ましい熱硬化性合成高分子は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂およびこれらの混合物である。これに関連して、好ましい(メタ)アクリレート樹脂は注型法による塊状重合によって製造される高分子組成物である。最初に、モノマーの沸点で重合率が10〜30%になるまで予備重合を行う。得られたシロップ(PMMAはモノマーに可溶)をさらに水槽中の可動セル壁を備えたセル内で重合する(セル−注型法)。前記部分エステルが用いられる他の熱硬化性合成高分子は、ポリウレタン系(PU系)である。種々の構造を有するPUの中で、本発明で用いるのは、架橋ポリエーテルポリウレタンおよび架橋ポリエステルポリウレタンである。
【0024】
部分エステルが特に好ましく使用されるのは、不飽和ポリエステル樹脂系(UP)である。UP系は、通常、ビニルモノマー、特にスチレンに溶解した不飽和ポリエステル溶液である。不飽和ポリエステルは、ビニルモノマーとポリエステルの重合性二重結合の架橋共重合により硬化する。促進化樹脂には低温硬化に必要な促進剤を予め添加しておく。UPにおける特に好ましい部分エステルの用途は、UP成形用組成物、特に、SMC、BMC、DMC、TMC、LDMCである。SMCはシート状繊維強化成形材料(Sheet Moulding Compounds)のことである。BMCは乾燥した、ある程度流動性のあるペッレト(Bulk Moulding Compounds)のことである。DMCはドウ状成形材料(Dough Moulding Compounds)のことである。TMCは増粘成形材料(Thick Moulding Compounds)のことである。LDMCは低密度繊維強化成形材料(Low Density Moulding Compounds)のことである。
【0025】
SMC成形材料の場合、本発明の部分エステルは、LS(低収縮)系またはLP(低変形)系のどちらに使用してもよい。LP系とは収縮を充分に補償することができる配合物である。LS系とはLP樹脂と同程度に収縮補償することはできないが、着色が非常に容易である。
【0026】
上記の合成高分子組成物は、射出成形、圧縮成形、ブロー成形(押出ブロー成形、射出ブロー成形)、押出成形、塗布/展延、注入成形、カレンダー加工(圧延溶融加工)、含浸、引抜成形または発泡成形により加工される。上記の合成高分子組成物加工において、充填剤および強化剤、例えば天然または合成チョーク(CaCO)、アルミナ三水和物(ATH)、カオリン、タルク、長石、金属酸化物、石英粉、岩粉、ケイ灰石、マイカ、ガラス繊維、ガラスビーズ;合成有機物(例えば、合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、アラミド)、炭素繊維(Cファイバー);天然有機物(例えば、木粉、セルロース)を加えてもよい。
【0027】
また、本発明は、0.05〜10重量%の本発明の加工助剤および上記の充填剤および助剤を必要に応じて含む合成高分子組成物を提供する。
【0028】
以下に先ず、本発明の種々の熱可塑性合成高分子組成物を例示し、次いで本発明の種々の熱硬化性合成高分子組成物について述べる。
【0029】
(1)カレンダー加工用組成物(カレンダー加工用合成高分子組成物)
高溶融粘度(約10〜10Pa・s)の明確な可塑化領域を有する熱可塑性樹脂はカレンダー加工することができる。カレンダー加工の例は、Polymere Werkstoffe-Band III, Technologie 2 [Polymeric materials, volume III, Technology 2], by Hans Batzer, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1984 edition, pp. 251 et seq.に記載されている。カレンダー加工により製造される製品の例は、非可塑化PVC、半可塑化PVCおよび可塑化PVCから製造される幅広い用途を持つ床材やフィルムである。
【0030】
溶融物が金属面に接着するのを防ぐために、例えば長鎖脂肪酸(C14〜C18)の脂肪族アルコールエステルなどの内部滑剤を添加することが多い。滑剤は、PVC粒子間の摩擦を減らすことにより溶融流動を改善する。カレンダー組成物のロール離れを良くするために、例えばパラフィンやワックスなどの外部滑剤も添加される。カレンダー装置の下流には印刷機やエンボスカレンダー装置(例えば、可塑化PVCでできた装飾フィルム、椅子張りフィルムあるいは合成皮革フィルムを製造するために)が設置されることが多い。前記後工程(印刷、エンボス工程)のためには、今まで使われていた内部、外部滑剤を本発明の部分エステルに置き換えるのが好ましく、それにより優れた表面塗布性または印刷性を得ることができる。混合または分散工程で単に本発明の加工助剤を添加することにより、内部、外部滑剤を本発明の加工助剤に置き換えることができる。
【0031】
(2)射出成形用組成物
熱可塑性合成高分子からなる成形用組成物はもっぱら射出成形用組成物と呼ばれている。この成形用組成物は高分子基材と、充填剤または強化材などの添加物とから成る。射出成形用組成物は押出成形用組成物に比べて低分子量の高分子を用いることが多いので、良好な溶融粘度と流動性を有する。しかし流動促進剤や滑剤などを添加するときは、これら添加剤の影響を常に考慮しなければならない。例えば、高分子の相対的分子量低下はいずれも機械的特性を損い、また滑剤添加は軟化点を下げる。
【0032】
射出成形用組成物の添加剤およびその加工並びに組成については、Polymere Werkstoffe-Band III, Technologie 2 [Polymeric materials, volume III, Technology 2], by Hans Batzer, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1984 edition, pp. 204-221でさらに詳しく記載されている。射出成形用組成物においても、特に非可塑化PVCの加工において、今まで使われてきた内部、外部滑剤の代わりに、本発明の部分エステルを用いるのが好適であることが証明されており、より優れた表面塗布性または印刷性を得ることができる。
【0033】
このためには、内部、外部滑剤を、混合または分散工程で単に本発明の加工助剤に切り替えるだけである。着色工程での均質化に付加的な効果があるので、射出成形用組成物においても、平滑性および光沢に関して表面特性が改善されることは明らかである。この効果は表面塗布を行わない用途で特に有益である。
【0034】
(3)押出成形用組成物
押出成形用組成物には、射出成形用組成物の場合よりも高分子量、すなわち、溶融粘度が高く、流動性が低いポリマーを使うことが多い。押出成形用組成物のこの高溶融粘度はダイからの吐出とキャリブレータとの間の強度を改善する。分子量が高いほど、すなわち、溶融粘度が高いほど機械特性は優れるが、押出成形による加工は極めて困難になる。詳細は、Polymere Werkstoffe-Band III, Technologie 2 [Polymeric materials, volume III, Technology 2], by Hans Batzer, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1984 edition, pp. 244 et seq.に記載されている。
【0035】
押出成形用組成物においても、特にPVC異形材および屋外使用PVC品を加工する場合、今まで使われてきた内部、外部滑剤を本発明の部分エステルに置き換えるのが好ましいことが証明されており、より優れた表面塗布性または印刷性が得られる。このためには、内部、外部滑剤を、混合または分散工程で単に本発明の加工助剤に切り替えるだけである。ここでも、着色工程での付加的な均質化効果があるので、平滑性および光沢に関して表面特性が改善されることは明らかである。この効果は表面塗付を行わない用途で特に有益である。
【0036】
例として挙げられるのは窓用形材であるが、この組成は次の通りである:
PVC、耐衝撃性改良剤、安定剤、亜リン酸エステル(塩)、エポキシ化大豆油、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸ステアリル、酸化防止剤、酸化チタン、充填剤(CaCO等)。
【0037】
(4)コーティング組成物
DIN 8580によれば、コーティングは無定形物質からなる接着層を加工品または基材に塗布するための製造工程である。使用されているコーティング組成物はそのほとんどは熱可塑性樹脂であり、一部はエラストマーである。熱可塑性樹脂の中ではPVCペーストが最も重要である。PVCペーストは、最もよく使われるプラスチゾルと、ここでは関係のないオルガノゾルとに区別される。コーティング組成物は、粉末状PVCペースト(主として乳化PVC、ときには懸濁PVCからなる)および添加剤(安定剤)、顔料および充填剤を可塑剤に加えて適当な装置で混合または分散して調製される。調製方法の詳細は、Polymere Werkstoffe-Band III, Technologie 2 [Polymeric materials, volume III, Technology 2], by Hans Batzer, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1984 edition,
pp. 254 et seq.に記載されている。
【0038】
コーティング組成物から製造される床材および合成皮革コーティングは、しばしば、エンボスロールによる特定デザインのエンボス加工などの表面処理および/または平版印刷またはグラビア印刷により表面コーティングなどを施される。この後工程のためには、今まで使われてきた内部、外部滑剤を、本発明の部分エステルに置き換えるのが好ましく、より優れた表面塗布性または印刷性が得られる。このためには、内部、外部滑剤を、混合または分散工程中で単に本発明の加工助剤に切り替えるだけでいい。ここでも、顔料を用いた着色工程での付加的な均質化効果があるので、平滑性および光沢に関する表面特性が改善されることは明らかである。この効果は表面塗布を行わない用途で特に有益である。エンボス紙(模造皮革)を転写加工する場合、一般に大変高価なエンボス紙の使用回数が著しく増えるので、本発明の部分エステルの使用が有益である。
【0039】
可塑化PVCのプラスチゾル組成物について、種々の発明組成物および比較組成物を適用例1に列挙した。
【0040】
(5)熱硬化性樹脂(成形材料)
成形材料は一般に、反応性樹脂、硬化剤、任意成分としての促進剤(この混合物はしばしばバインダーマトリックスとも呼ばれる)、充填剤および/または強化剤、滑剤および離型剤、顔料および/または染料、および安定剤、柔軟剤、硬化遅延剤および非反応性樹脂などの他の添加物を含む。主に使われる充填剤は、チョーク(CaCO)、ATH、石英粉、岩粉、ケイ灰石、マイカであり、主に使われる強化剤は、ガラス繊維、合成有機物(例えば、合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、アラミド)、炭素繊維(Cファイバー)、天然有機物(例えば、木粉、セルロース)である。この成形材料加工の詳細は、Polymere Werkstoffe-Band III, Technologic 2 [Polymeric materials, volume III, Technology 2], by Hans Batzer, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1984 edition, pp. 224 et seq.に記載されている。
【0041】
一例として挙げられるのは、UP成形用組成物、特に繊維強化成形用組成物であり、この詳細は、Polymere Werkstoffe-Band III, Technologic 2 [Polymeric materials, volume III, Technology 2], by Hans Batzer, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1984 edition, pp. 235 et seq.に記載されている。シート状の繊維強化成形用組成物(シートモールディングコンパウンドまたはSMCとも呼ばれる)はさらにグループLS(低収縮)およびLP(低変形)に分類される。LP系は充分な収縮補償が可能な配合物である。LS系はLP樹脂と同程度の収縮補償は示さないが、非常に着色し易い。SMC成形用組成物が車体構造部品などの場合のように、工程の下流で表面コーティングされる場合は、LP系が好ましい。この場合においても、今まで使われてきた内部、外部滑剤を本発明の部分エステルに置き換えるのが好ましく、より優れた表面塗布性または印刷性が得られる。このためには、内部、外部滑剤を混合または分散工程で単に本発明の加工助剤に切り替えるだけでいい。LSおよびLP成分に帰せられる収縮効果を損うことなく、成形材料が安定化されることは明らかである。また、顔料を用いた着色工程で付加的な均質化効果があるので、平滑性および光沢に関する表面特性が改善されることは明らかである。この効果は表面塗布を行わない用途で特に有益である。
【0042】
熱硬化性樹脂およびSMC製造に関して、種々の発明組成物および比較組成物を適用例2および適用例3に列挙した。
【0043】
【実施例】
本発明を説明するために、以下の実施例において、種々の本発明の加工助剤および比較加工助剤の調製およびそれらの応用適性について述べる。
【0044】
製造例
第2表に記載した比率で成分1および2を秤量して適当な反応容器に入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら約80℃まで加熱した。成分3を加え、窒素雰囲気下で混合物を、第2表に記載した反応温度まで加熱した。反応で生成する水は水分離器で除去した。反応の進行は酸価の測定によりチェックした。第2表に記載した酸価に到達するまで第2表に記載した反応温度で攪拌を続けた後、混合物を冷却し、取り出した。
【0045】
【表2】
Figure 0004400849
【0046】
【表3】
Figure 0004400849
【0047】
【表4】
Figure 0004400849
【0048】
(注)
プリポール(Pripol)1022:Unichema社製のC36二量体酸
プリポール(Pripol)1009:Unichema社製の水素化C36二量体酸
プリポール(Pripol)1040:Unichema社製のC54三量体酸
MA/脂肪酸付加物(製造例17):1モルの無水マレイン酸と共役不飽和C18脂肪酸混合物の付加反応生成物
MPEG350:平均分子量350g/molのメトキシポリエチレングリコール
MPEG500:平均分子量500g/molのメトキシポリエチレングリコール
MPEG750:平均分子量750g/molのメトキシポリエチレングリコール
ポリグリコールB11/50:平均分子量1020g/molのブタノール由来のEO/POポリエーテル(EO:PO=1:1)
ルテンゾル(Lutensol)ON50:平均分子量400g/molのオキソ−アルコール由来のEOポリエーテル
【0049】
適用例1 可塑化PVCのプラスチゾル組成物
常法に従って、ミキサー中で成分を均一化することにより、第3表に示したプラスチゾル組成物1a〜1dを調製した。
【0050】
【表5】
Figure 0004400849
【0051】
表面コーティング中のぬれ性と接着性は実質的に基板の極性に依存するので、組成物1a〜1dの表面張力を測定した。
【0052】
表面張力を測定するために、200μmのウエット層厚さ、200℃、2分間の条件で、マチスオーブン中でプラスチゾルを完全にゲル化した。この工程で、エステル化されていない二量体酸を用いた比較組成物1bは、他の組成物とは異なり、高カルボキシル基含量に起因する著しい黄変を示した。表面張力はクリュスG2(Kruss G2)表面張力テスターで測定した。ここで用いた標準/テスト液は水、グリセロール、エチレングリコール、1−オクタノールおよびn−ドデカンであった。
【0053】
最も高い表面張力、つまり最良の表面塗布性を有するのは本発明の組成物1cであることが容易に判明した。これに反して、エステル化されていないまたは全てエステル化された二量体酸を用いた比較組成物1bおよび1dは、表面張力の増加を示さないか、または、僅かの増加しか示さなかった。
【0054】
離型性を調べるために、プラスチゾルを勾配炉用スチールシート上にウエット厚さ1000μmに塗布した。その上にシュラー(Shuller)SH60/21ガラス不織布を被せ、ゴムローラで不織布を加圧した。得られたシートを温度勾配が180℃から220℃までの勾配炉で2分間加熱した。加熱後直ちにガラス不織布をシートから引き剥がし、付着したPVCの残存量を測定した。
【0055】
適用例2
(A)熱硬化性/硬化性成形材料−SMCの製造
溶解機を用いて、先ず全ての液体成分を均一に混合し、次いで全ての固体を入れて混合することにより第4表に示すSMC組成物を調製した。
【0056】
(B)エレクトリックグレーRAL7032(Electric Grey-RAL 7032、顔料)含有成形材料の増粘挙動
増粘挙動を調べるために、第4表のように調製した各成形材料を20℃で保存した後、粘度をブルックフィールド粘度計(DVII、0.5rpmのTFスピンドル)で測定した。2a、2cおよび2dの測定結果が通常の技術変動範囲内の同様な増粘挙動を示したのに対し、エステル化されていない二量体酸を用いた組成物2bは増粘レベルの顕著な低下を示した。MgOの添加量を増やした組成物2e〜2hについても同じ傾向の結果が得られた。これは、MgO含量を増やしてもエステル化されていない二量体酸の不備を補うことができないということを意味している(比較組成物2f参照)。
【0057】
【表6】
Figure 0004400849
【0058】
【表7】
Figure 0004400849
【0059】
(C)プレス工程前のプレプレグの取り扱い性評価
組成物2a〜2dを2枚のポリアミド支持フィルム間に塗布し、シュミット−ハインツマン実験用SMCプラントでSMCプレプレグを製作した(ベルト速度:5.5m/分;ドクターギャプ:1.6mm;単位面積当り荷重:4000g/m;使用したガラスグレード:Owens Corning社製OC RO7 4800テックス;ガラス含量:97重量部、組成物全量の25重量%に相当)。
【0060】
増粘完了後の加工のために、プレス工程に入る前に支持フィルムを樹脂マットから完全に剥がすことができるようにしておき、プレプレグ自体はできるだけ乾燥させ粘着性をなくした。使用したもう一つの評価基準は、剥離したフィルムの外観である。剥がしたフィルムはできるだけ透明で樹脂の付着がない方がよい。室温で5日間放置後、増粘したSMCプレプレグから860gの小片を切り取り、支持フィルムを剥がしてその外観を観察した。結果を第5表に示す。
【0061】
第5表
組成物 プレプレグ表面 フィルム外観
2a 乾燥、僅かにべたつく 非常に不透明、かなりの成形材料が付着
2b 非常にべたつく 非常に不透明、かなりの成形材料が付着
2c 乾燥、べたつかない 透明、成形材料の付着がない
2d 非常にべたつく 白濁、著しい成形材料の付着
)比較例
【0062】
本発明の組成物2cの場合は、特に支持フィルムの剥離が容易でべたつきもなく、また、糸を引くこともなかった。
【0063】
(D)成形後の離型作用、色の均質性、および表面特性
支持フィルムを剥がしたSMC小片を金型充填率40%で成形してテストシートを得た。成形温度は150〜155℃、成形時間は180秒、およびラム圧は1200kNであった。成形されたシートの色の均質性と表面特性を目視により評価した。表面特性を評価するために、テストシートを比較シートとともに窓に対して僅かに斜めに保持し、シート面が反射する物体の明瞭さを評価した。
【0064】
Figure 0004400849
【0065】
比較組成物2aおよび2bを用いたテストシートは色の均質性に劣り、著しい大理石模様の原因になることが明瞭に認められるガラス繊維構造を示した。さらに表面はつや消しであった。これに反し、本発明の組成物2cを用いて製作したテストシートは全般にわたって著しく改善された目視結果を示した。すなわち、大理石模様は著しく減少し、より滑らかでより光沢ある表面が得られ、色の均質性も良好であった。
【0066】
(E)表面塗布性テスト
市販のアクリル樹脂/イソシアネートをベースとする二成分系自動車補修塗料を用いて、SMCシートの表面塗布を行った。
表面塗料:硬化剤=2:1(重量比)
表面塗料の配合:
Spies Hecker-Permacron混合用表面塗料、Series 257 AG201 White(=ストック表面塗料)
Spies Hecker-Permacron MS Harter Plus 3040 kurz
ストック表面塗料:硬化剤=2:1(重量比)
【0067】
45から50μmの層厚(乾燥)でSMCシートの表面を塗布し、空気乾燥後80℃で約24時間放置した。接着性を評価するために、得られたシートを用いてクロスカット試験を行った。(評価スケール:Gt0〜Gt5、Gt0=表面塗布接着性良好、Gt5=表面塗布接着性不良)
【0068】
第7表
組成物 クロスカット試験
2a Gt5
2b Gt4
2c Gt1
2d テスト不能
)比較例
【0069】
本発明の組成物2cを用いて製作したテストシートは、比較組成物2aおよび2bに比較してはるかに優れた表面塗布接着性を示した。比較例2dのシート表面塗布性テストは、離型欠陥のために表面特性が悪すぎて実施できなかった。
【0070】
適用例3
エレクトリックグレーRAL7032顔料ペーストの代わりに、FreiLacke, Emil Frei GmbH & Co.製のコバルトブルー顔料ペースト(Lackfabrik, Durelastik Farbpaste, VP BU 1232)を用いた以外は適用例2と同様のテストを行った。ここでもまた、本発明の組成物を用いたときに最高の表面特性と均質性が容易に達成された。

Claims (24)

  1. カルボン酸エステルを基礎とする合成高分子組成物用加工助剤であって、前記加工助剤が、(1)少なくとも18個の炭素原子を有し、(2)300〜10000の数平均分子量を有し、かつ、(3)飽和または不飽和の脂肪族多価カルボン酸、飽和または不飽和の脂環式多価カルボン酸、および前記多価カルボン酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも一の多価カルボン酸成分と、飽和または不飽和の脂肪族モノエポキシド、飽和または不飽和の脂環式モノエポキシド、芳香族モノエポキシド、およびエーテル基を含んでいてもよいモノアルコールからなる群より選ばれた少なくとも一の成分との反応によって得られる部分エステルを含んでなり、前記多価カルボン酸成分が2〜4個のカルボキシル基を含み、かつ、該カルボキシル基の10〜90%が反応し、前記多価カルボン酸成分が不飽和脂肪酸の重合によって得られた30〜60個の炭素原子を持つ二量体酸または三量体酸であることを特徴とする合成高分子組成物用加工助剤。
  2. 前記部分エステルが少なくとも10mgKOH/gの酸価を有することを特徴とする請求項1に記載の合成高分子組成物用加工助剤。
  3. 請求項1〜2のいずれかに記載の加工助剤を用いることを特徴とする合成高分子組成物の加工方法。
  4. 前記合成高分子組成物が熱可塑性合成高分子組成物であることを特徴とする請求項に記載の加工方法。
  5. 前記熱可塑性合成高分子組成物がポリエステルを含むことを特徴とする請求項4に記載の加工方法。
  6. 前記熱可塑性合成高分子組成物が、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、塩化ビニル−酢酸ビニルグラフトポリマー、および塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一の合成高分子を含むことを特徴とする請求項4〜5のいずれかに記載の加工方法。
  7. 前記熱可塑性合成高分子組成物がポリ塩化ビニルを含むことを特徴とする請求項に記載の加工方法。
  8. 前記合成高分子組成物が熱硬化性合成高分子組成物であることを特徴とする請求項に記載の加工方法。
  9. 前記熱硬化性合成高分子組成物が不飽和ポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする請求項に記載の加工方法。
  10. 前記熱硬化性合成高分子組成物がポリウレタン系樹脂を含むことを特徴とする請求項8に記載の加工方法。
  11. 前記熱硬化性合成高分子組成物が硬化性(メタ)アクリレート系樹脂を含むことを特徴とする請求項8に記載の加工方法。
  12. 前記不飽和ポリエステル系樹脂が不飽和ポリエステル系樹脂成形用組成物であることを特徴とする請求項に記載の加工方法。
  13. 前記不飽和ポリエステル系樹脂成形用組成物がシート成形材料(Sheet Molding Compoundであることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
  14. 前記不飽和ポリエステル系樹脂成形用組成物がバルク成形材料(Bulk Molding Compound)であることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
  15. 前記不飽和ポリエステル系樹脂成形用組成物がドウ成形材料(Dough Molding Compound)であることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
  16. 前記不飽和ポリエステル系樹脂成形用組成物が増粘成形材料(Thick Molding Compound)であることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
  17. 射出成形により合成高分子組成物を加工することを特徴とする請求項3〜16のいずれかに記載の加工方法。
  18. 押出し成形により合成高分子組成物を加工することを特徴とする請求項3〜16のいずれかに記載の加工方法。
  19. コーティング成形により合成高分子組成物を加工することを特徴とする請求項3〜16のいずれかに記載の加工方法。
  20. カレンダー成形により合成高分子組成物を加工することを特徴とする請求項3〜16のいずれかに記載の加工方法。
  21. 合成高分子に加工助剤を含んでなる合成高分子組成物であって、前記加工助剤が、(1)少なくとも18個の炭素原子を有し、(2)300〜10000の数平均分子量を有し、かつ、(3)飽和または不飽和の脂肪族多価カルボン酸、飽和または不飽和の脂環式多価カルボン酸、および前記多価カルボン酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも一の多価カルボン酸成分と、飽和または不飽和の脂肪族モノエポキシド、飽和または不飽和の脂環式モノエポキシド、芳香族モノエポキシド、およびエーテル基を含んでいてもよいモノアルコールからなる群より選ばれた少なくとも一の成分との反応によって得られる部分エステルを含んでなり、前記多価カルボン酸成分が2〜4個のカルボキシル基を含み、かつ、該カルボキシル基の10〜90%が反応し、前記多価カルボン酸成分が不飽和脂肪酸の重合によって得られた30〜60個の炭素原子を持つ二量体酸または三量体酸であることを特徴とする合成高分子組成物。
  22. 前記合成高分子が熱可塑性合成高分子であることを特徴とする請求項21に記載の合成高分子組成物。
  23. 前記合成高分子が熱硬化性合成高分子であることを特徴とする請求項21に記載の合成高分子組成物。
  24. 前記加工助剤を0.05〜10重量%含むことを特徴とする請求項21〜23のいずれかに記載の合成高分子組成物。
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