JP4397391B2 - ガスバリア性プラスチックおよびプラスチックフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
ガスバリア性の優れたフィルムとしては、
イ.プラスチックフィルムとアルミニウムなどの金属箔を積層したもの(特許文献1、2参照)、
ロ.塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体などガスバリア性の高い高分子樹脂組成物を表面に塗布したもの(特許文献3参照)、
ハ.プラスチックフィルム上にアルミニウム、酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどのセラミックを蒸着したもの(特許文献4〜6参照)、
ニ.エチレンビニルアルコール共重合体などガスバリア性を有するフィルムとポリエチレンやポリプロピレンなどのフィルムとを積層したもの(特許文献7、8参照)、あるいは、
ホ.これらを組み合わせたもの(特許文献9、10参照)
等が提案されている。
ロ.のプラスチックフィルムにガスバリア性を有する樹脂を塗布するものでは、水蒸気や酸素等の気体の透過率の温度依存性が著しく、さらに、塩化ビニリデン樹脂を塗布したものでは塩素を有するため、使用後焼却することにより有毒ガスが発生するという環境上好ましくない問題が生じる。
ハ.のプラスチックフィルムにアルミニウム、アルミナや二酸化珪素等を蒸着したものでは、膜厚を厚くしてガスバリア性を高めようとすると屈曲性や透明性が低下し、加工時や使用時にクラックが入りバリア性が損なわれるという問題点がある。他方、膜厚が薄いと、ガスバリア性が不足する。
ニ.のエチレンビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールからなるフィルムは、酸素透過性が低い特徴を有するものの、水蒸気に接するとそのガスバリア性が低下するという問題があったため、通常は水蒸気透過性が低いポリエチレンやポリプロピレンなどのフィルムと積層することによってこの問題を解決していたが、そのバリア特性は十分とは言えなかった。
しかし、特許文献11のものは、そのバリア特性は十分であるものの、異種のフィルムを積層するという工程が必要だった。
以上はフィルムにガスバリヤ性を付与する方法であるが、フィルムよりも厚いプラスチック基板上にフィルム同様の処理を施すことによりバリア性を改善することは当然行われている。しかし、厚さのある板状のもののバリア特性は厚さに比例してその値は小さくなるため、実用上ガスバリヤー性は大きな問題となっていないが、時にはバリヤー特性が特に要求される場合がある。このような用途の要求には、本発明方法が利用できる。
フィルムを使用するアモルファスシリコン系ソーラーセルは、フィルム基板上に、アモルファスシリコンを積層した構造になっている。そのセル構造は半導体pn接合が基本であるが、光を電気に変える変換効率を向上させるため不純物を含まないi層をpn層間に挿入したpin構造のものが主流となっている。その厚さは、pin構造単独(シングル接合セル)の場合、200〜400nm前後である。膜質は光発電素子のため、その膜厚は均一・均質で、ピンホールのないものが要求されている。
アモルファスシリコンソーラーセルは、「光を電気に変換する効率」が時間とともに数%低下するが、それ以上の劣化はなく、光によって結晶化することも無い(非特許文献12、13)。われわれはこのアモルファスシリコン膜に着目し本発明を達成した。
本発明は、さらにアモルファスシリコン薄膜層を設けた後、ガスバリア性(水蒸気透過率及び酸素透過率)を更に改良するため大気中で加熱処理することをも特徴としたものである。
本発明に用いるプラスチック基材またはプラスチックフィルムは、その軟化温度が70℃以上のものであって、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の熱可塑性樹脂を原料として得られる板またはフィルム、ナイロン、ポリエステル(PET、PEN、PBT)、ポリイミド、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチック系樹脂を原料として得られる板またはフィルムが使用できる。また、上記した有機高分子は、他の有機重合体を少量共重合したもの、またはブレンドしたものでもよい。フィルムは、通常、包装材料として用いられているもので、単層あるいは同種または異種からなる積層体のものが利用できる。
軟化温度が70℃以上とした理由は、アモルファスシリコン薄膜層を設けた後、ガスバリア性を更に改良するため大気中で加熱処理するためである。軟化温度が70℃以下のものでは、加熱時にプラスチック基材またはプラスチックフィルムが軟化し、ガスバリア性の改良効果が得られない。なお、改良効果が不要な場合には、軟化温度にこだわらない。
本発明の対象がフィルムの場合、その厚さは10〜300μmであることが必要である。10μm以下では、薄すぎて強度が得られず、300μmを超えるものではフィルムとしての定義からすると厚すぎる。フィルムに限定すれば、好ましい厚さは20〜200μmの範囲である。なお、対象が板状のものを得ようとする場合にも、当然本発明方法が適用できるので、このときの厚さの上限は300μmに限定されるものでない。
太陽光発電用アモルファスシリコンセル構造は、前述した通り、その基本はpinである。従って、本発明のアモルファスシリコン薄膜は、シリコンのほかに他の不純物として、燐、ゲルマニウム、ホウ素、炭素、窒素等の金属を含んだ膜も含まれる。また、成膜条件を高水素濃度に変更して得られる微結晶アモルファスシリコンであってもよい。
アモルファスシリコン薄膜層の厚さは、ガスバリア性及び可撓性の点から10〜200nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは20〜100nmである。10nmより薄い膜厚層であると、ガスバリア性が劣り、200nmを超える厚さであるとプラスチックフィルムの透明性が悪くなってしまい、包装材として用いたとき内容物の視認性が悪くなり、また、加工の際、薄膜層にクラックが入りガスバリア性が低下することがある。
この熱処理温度が70℃未満では、ガスバリア性は熱処理をしない場合と同等であり、140℃を超える温度であると、プラスチック基材またはプラスチックフィルムが軟化、収縮等により性能が低下するおそれがあって好ましくない。
なお、熱処理前後での、アモルファスシリコン薄膜組成の変化(Si+O2=SiO2)は極めて僅か認められるが、バリア特性が劣化することはなく、逆に向上することを確認できたことは大きな発見である。
上記のようにして得られたアモルファスシリコン薄膜が形成されたプラスチック基材またはプラスチックフィルムは、ガスバリア性に優れており、電子部品等の気密性を要求される包装材料、また、外気と遮断するガスバリア材料として食品、医薬品、工業資材の包装材料その他として使用することができる。
なお、以下の例において水蒸気透過率、酸素透過率及び外観の測定および評価は、次の方法によって行った。
<水蒸気透過率(g/m2・24Hr)>:温度40℃相対湿度90%の条件下MOCON社製PERMATRAN-W3/33MGの測定装置によりJIS K 7129 B法に準拠し測定した。3を超えないことを評価基準とした。
<酸素透過率(cc/m2・24Hr・atm)>:温度25℃相対湿度90%条件下MOCON社製OX-OXTRAN 2/21MHの測定装置によりJIS K 7126 B法に準じて測定した。3を超えないことを評価基準とした。
<外観>: 肉眼によりフィルム表面を評価した。透明度が劣るものを×とした。
片面がコロナ処理された厚さ100μmのポリエステルフィルム(東洋紡製エステルフィルム E―5100)をプラズマCVD装置のチャンバー内に電極と基材フィルム間の距離が20mmになるように設置し、チャンバー内を80Paの減圧に保ち、周波数27.1MHzのRF電源から140Wの電力を投入することにより原料ガスをプラズマ化し、室温下でプラズマCVD法を用いてアモルファスシリコン薄膜層を形成した。なお、ポリエステルフィルムのコロナ処理面の濡れ指数は54mN/mであった。
なお、原料ガスとしてシランガス及び水素ガスを用い、これらをそれぞれ300sccm及び600sccmで流した。ここで、sccmは、真空装置へのガス導入流量単位で、standard cc/minである。
また、その表面外観の写真を図1に示した。
表1の結果をグラフ化したものを図2(水蒸気透過率)および図3(酸素透過率)に示した。
比較例としてアモルファスシリコン薄膜層を形成していないポリエステルフィルム(比較例1)及び実施例1〜3と同様の方法でアモルファスシリコン薄膜を形成したポリエステルフィルムを得た(比較例2、3)。なお、アモルファスシリコン薄膜の膜厚は表1に示したとおりである。これらのものについても、水蒸気透過率、酸素透過率及び外観を評価してその結果を表1に併記した。
このものを、熱処理すると更にバリア性は改善する(実施例4〜7)。
また、膜厚が200nm(比較例3)と厚すぎるとガスバリア性は更に優れた値となるものの、透明性が落ち黄褐色の度合いが大きくなって透明性が大きく低下する。透明性が不必要な分野には膜厚が200nm以上でも可能であるが、透明性を求められる分野には200nm以下が望ましい。
Claims (3)
- プラスチック基材の少なくとも一方の面に、厚さが10nm〜200nmのアモルファスシリコン薄膜層を設けた後、大気中、70〜140℃で熱処理を施すことを特徴とするガスバリア性プラスチックの製造方法。
- プラスチック基材の少なくとも一方の面にアモルファスシリコン薄膜層を設けた後、大気中、70〜140℃で熱処理を施し、アモルファスシリコン薄膜層の酸素透過率および水蒸気透過率が夫々、3cc/m 2 ・24Hr・atm以下、3g/m 2 ・24Hr以下とすることを特徴とするガスバリア性プラスチックの製造方法。
- フィルム状であって、その軟化温度が70℃以上、厚さが10〜300μmであるプラスチック基材の少なくとも一方の面に、厚さが10nm〜200nmのアモルファスシリコン薄膜層を設けた後、大気中、70〜140℃で熱処理を施し、アモルファスシリコン薄膜層の酸素透過率および水蒸気透過率が夫々、3cc/m2・24Hr・atm以下、3g/m2・24Hr以下とすることを特徴とするガスバリア性プラスチックフィルムの製造方法。
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