JP4397237B2 - 多孔性無機板用シーラー - Google Patents

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Description

本発明は、多孔性無機板用シーラーに関する。さらに詳しくは、本発明は、水酸化ナトリウムなどのアルカリまたは酸を添加しなくても、水に溶解させて水溶液を調製することが可能である;その水溶液が優れた粘度安定性を有する;その水溶液から得られる皮膜が耐水性に優れる;止水性能に著しく優れる、などの特徴を備えた特定のシリル基を含有するビニルアルコール系重合体を用いた多孔性無機板用シーラーに関する。
珪酸カルシウム板、石膏ボード、ALC板やロックウールボード等はいずれも多孔質であるため、表層強度が小さく、かつ水分を吸収しやすいため、このまま表面を化粧仕上げすると、表層の粉が仕上げ剤と混って美しく仕上らなかったり、無機板からアクがにじみ出たり、うまく仕上った様に見えてもすぐ剥離したり、吸水や吸湿した場合に凍結融解の繰返しにより仕上げ剤が剥離する等、美装性やその耐久性の点で問題がある。これらのトラブルを防ぐ目的で仕上げ処理する前に塗布されるのがシーラーである。このシーラー処理は工場の無機板製造ラインで処理される場合と、建築現場の仕上げ処理時に行われる場合がある。シーラー処理された無機板はその状態で商品として数ケ月放置されたり、施工に供されて化粧仕上げされるまでにやはり数か月、雨水、外気等に曝露されることがある。
その様な訳で、要求性能として無機板表層補強効果、止水性能、および仕上げ処理剤との密着性の3つが大きく要求される。従来ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、塩化ビニル樹脂系などの溶剤系シーラーが主として用いられており、代表的なものとしては、一液性湿気硬化型ウレタン樹脂系シーラーが知られている。このものは表層補強効果と止水性能は良好であるが、シーラー処理したまま長期間放置すると塗膜の硬化が進みすぎて当初は良好であった仕上げ剤との密着性が低下してくるという問題と、溶剤系であるため安全衛生上の問題があり、また稀釈剤として使う溶剤が高価でかつ混合溶剤であるため回収しても高くつくという問題がある。
一方、水系シーラーとしては代表的なものとしては、アクリルエマルジョンを主成分とするものが知られている。これは溶剤を全く使用しないという利点はあるものの、無機板の表層補強効果が極めて小さいため、仕上げ処理をした場合、当分の期間は問題ないが、数か月の経過で無機板表層で剥離を生ずることがあり、安心して使用出来ないという問題がある。止水性能に関しても、本来疎水性樹脂であるにもかかわらず、充分満足ゆくものが得られにくい。その原因は併用される増粘剤が塗膜の耐水性を低下させることや、塗工時の欠陥が溶剤系シーラーより発生しやすいためである。すなわち多孔性無機板の表層には比較的大きな孔が散在しており、シーラー液を塗布するとその部分に集中的に浸透するため均一な塗工液膜になり難く、そのため乾燥するまでの間に穴があくためと考えられる。
このような水系シーラーの欠点を改良する方法としてポリビニルアルコール(以下ポリビニルアルコールをPVAと略記する)と水性エマルジョンとを併用する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながらこの方法においても上述の無機板の表層補強効果および止水性能が十分には改善されていないというのが実状である。さらに分子内にシリル基を有する変性PVAよりなる水系シーラー(特許文献2)あるいは分子内にシリル基を有する変性PVAを乳化剤として含有する合成樹脂エマルジョンよりなる水系シーラー(特許文献3)も知られている。これらの方法は従来の水系シーラーに比べ、無機板の表層補強効果あるいは無機板との接着性の点では著しく改良されておりその点では優れた方法であるが、止水性能が場合により不充分であり、また表面化粧仕上げ剤がアクリル系塗料である場合には仕上げ処理剤との密着性が低くなる場合があるという問題点を有している。
このような問題点を解決するため、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)で、分子内にシリル基を有する変性PVAおよびα−オレフィン系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、アクリル系エマルジョン等からなる組成物が提案され、上記の問題点に一定の解決策を与えた。
しかしながら、上記の提案で用いるシリル基含有PVAは、(a)シリル基含有PVAの水溶液を調製する際に、水酸化ナトリウムなどのアルカリまたは酸を添加しなければ、シリル基含有PVAを水に溶解させることができない場合がある、(b)シリル基含有PVAの水溶液の粘度安定性が十分ではない、(c)シリル基含有PVAの水溶液から得られる皮膜の耐水性が十分ではない、などの問題点があり、多孔性無機板シーラーとして用いた場合、止水性能が必ずしも十分ではないなどの問題を依然として有している。
特開昭53−97018号公報 特開昭58−167485号公報 特開昭58−171457号公報 特開昭63−139084号公報 特開昭63−139083号公報 特開平1−14182号公報 特開昭63−139082号公報
本発明は、水酸化ナトリウムなどのアルカリまたは酸を添加しなくても、水に溶解させて水溶液を調製することが可能である;その水溶液が優れた粘度安定性を有する;その水溶液から得られる皮膜が耐水性に優れる;止水性能に著しく優れる、などの特徴を備えた特定のシリル基を含有するビニルアルコール系重合体を用いた多孔性無機板用シーラーを提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、ある特定の要件を満足するシリル基を含有するビニルアルコール系重合体を用いた多孔性無機板用シーラーが、水酸化ナトリウムなどのアルカリまたは酸を添加しなくても、水に溶解させて水溶液を調製することが可能である;その水溶液が優れた粘度安定性を有する;その水溶液から得られる皮膜が耐水性に優れる;止水性能に著しく優れる、などの特徴を備えていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)及び式(II)を満足し、けん化度が95モル%以上であり、その4%水溶液のpHが4〜8であり、かつビニルアルコール系重合体の中で、その重合度が重量平均重合度の3倍を超える重合体の重量分率が25重量%以下であるとともに、その重合度が重量平均重合度の1/2倍よりも小さい重合体の重量分率が12重量%以下であることを特徴とするビニルアルコール系重合体(A)および水性エマルジョン(B)を配合してなる多孔性無機板用シーラーである。
20<Pw×S<460 ・・・(I)
Pw:ビニルアルコール系重合体の重量平均重合度
S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
0.1/100≦(a−b)/(b)≦50/100 ・・・(II)
a:ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
b:水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄したビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
ここで、aおよびbは、それぞれ測定試料を灰化した後、ICP発光分析法により測定される。
Figure 0004397237
(Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数である。)
前記シリル基を有する単量体が下記の一般式(2)
Figure 0004397237
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数であり、nは0〜4の整数である。)
または下記の一般式(3)
Figure 0004397237
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であるか、または酸素原子もしくは窒素原子を含む2価の炭化水素基であり、mは0〜2の整数である。)
で示される単量体であること好適である。
水性エマルジョン(B)が、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンおよびα−オレフィン系樹脂エマルジョンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好適な実施態様であり、さらに耐水化剤(C)を配合してなることも好適な実施態様である。
本発明のシリル基含有ビニルアルコール系重合体からなる多孔性無機板用シーラーは、水酸化ナトリウムなどのアルカリまたは酸を添加しなくても、水に溶解させて水溶液を調製することが可能であり、調製された水溶液の粘度安定性、その水溶液から得られる皮膜の耐水性に優れ、止水性能も同時に満足するものであり、広く多孔性無機板用シーラーとして用いられる。
本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)は、上記したように、下記の一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)を満足し、かつビニルアルコール系重合体の中で、その重合度が重量平均重合度の3倍を超える重合体の重量分率が25重量%以下であることが必要である。
20<Pw×S<460 ・・・(I)
Pw:ビニルアルコール系重合体の重量平均重合度
S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
Figure 0004397237
(Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数である。)
本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール系重合体の重量平均重合度(Pw)とシリル基を有する単量体単位の含有量(S)の積(Pw×S)が20<Pw×S<460の関係を満足する必要がある。Pw×Sは、好ましくは50<Pw×S<420、さらに好ましくは100<Pw×S<390の関係を満足するのがよい。Pw×Sが20以下の場合には、シリル基含有PVAの水溶液から形成させた皮膜の耐水性が十分でなく、Pw×Sが460以上の場合には、アルカリなどを添加しなければシリル基含有PVAを水に溶解させることができない、すなわち多孔性無機板用シーラーとして用い得ない場合がある。
ビニルアルコール系重合体の中で、その重合度が重量平均重合度Pwの3倍を超える重合体の重量分率が25重量%を超える場合には、ビニルアルコール系重合体水溶液からなる多孔性無機板用シーラーの粘度安定性が低下し、さらにビニルアルコール系重合体水溶液を調製する際に、均一な溶液が得られない場合がある。
ビニルアルコール系重合体の中で、その重合度が重量平均重合度Pwの3倍を超える重合体の重量分率が25重量%を超える場合に、ビニルアルコール系重合体の水溶液の粘度安定性が低下する理由は、以下のように考えられる。
シリル基を有する重合体に含まれる全ての単量体単位の中で、シリル基を有する単量体単位は一様に存在しているため、重合体の重合度が大きいほど、重合体1分子に含まれるシリル基を有する単量体単位の数が多くなる。そして、重合体1分子に含まれるシリル基を有する単量体単位の数が多いほど、その重合体はシリル基の影響を受けやすくなる。すなわち、重合度が大きい重合体の方が、重合度が小さい重合体よりもシリル基の影響を受けやすい。従って、高重合度成分を多く含むビニルアルコール系重合体は、シリル基の影響を受けやすい重合体を多く含んでいることになり、そのため、その水溶液の粘度安定性が低下すると考えられる。
これに対して、重合体の重合度が小さいほど、重合体1分子に含まれるシリル基を有する単量体単位の数が少なくなる。そして、重合体1分子に含まれるシリル基を有する単量体単位の数が少ないほど、その重合体はシリル基の影響を受けにくくなる。すなわち、重合度が小さい重合体の方が、重合度が大きい重合体よりもシリル基の効果が現れにくい。従って、低重合度成分を多く含むビニルアルコール系重合体は、シリル基の効果が小さい重合体を多く含んでいることになる。
本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)は、その重合度が重量平均重合度Pwの1/2倍よりも小さい重合体の重量分率が12重量%以下であることが好ましい。ビニルアルコール系重合体の中で、その重合度が重量平均重合度の1/2倍よりも小さい重合体の重量分率が12重量%を超える場合には、シリル基の効果が小さい低重合度成分が多く含まれているため、多孔性無機板用シーラーとして用いた場合、止水性能が劣る場合がある。
ビニルアルコール系重合体の重量平均重合度(Pw)および重合度分布は、例えば、GPC−LALLS測定によって求めることができる。すなわち、シリル基含有PVAをけん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、GPC−LALLS測定によって求められた重量平均分子量をビニルアルコール単量体単位の式量44で割ることにより、重量平均重合度が求められる。また、GPC−LALLS測定から得られる積分重合度分布より、重合度が特定の範囲内にある重合体の重量分率を求めることができる。
本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)において、シリル基を有する単量体単位の含有量S(モル%)は、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRから求められる。ここでけん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRを測定するに際しては、該ビニルエステル系重合体をヘキサン−アセトンにより再沈精製して重合体中から未反応のシリル基を有する単量体を完全に取り除き、次いで90℃減圧乾燥を2日間行った後、CDCl溶媒に溶解して分析に供する。
本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)は下記式(II)を満足することが好ましい。
0.1/100≦(a−b)/(b)≦50/100 ・・・(II)
a:ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
b:水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄したビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
ここで、aおよびbは、それぞれ測定試料を灰化した後、ICP発光分析法により測定される。
(a−b)/(b)の好ましい範囲は0.1/100〜50/100であり、さらに好ましい範囲は0.3/100〜25/100であり、特に好ましい範囲は0.4/100〜20/100である。(a−b)/(b)が50/100を超えると、シリル基含有PVAの水溶液の粘度安定性が低下したり、シリル基含有PVAと無機物を含有する水溶液を調製する際に均一な溶液を得ることができなくなったりすることがあり、好ましくない。また、(a−b)/(b)が0.1/100に満たない場合には、シリル基含有PVAと無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、その皮膜の耐水性およびシリル基含有PVAの無機物とのバインダー力が低下することがあり、さらに(a−b)/(b)が0.1/100に満たないビニルアルコール系重合体は、その製造の際の洗浄にコストがかかるため現実的ではない。
ここで、上記ケイ素原子の含有量(b)を求めるにあたり、ビニルアルコール系重合体の標準的な洗浄方法は、まず、水酸化ナトリウムを含有するメタノールによる洗浄操作(ビニルアルコール系重合体1重量部に対して、ビニルアルコール系重合体のビニルアルコール単量体単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを含有するメタノール溶液を10重量部添加し、得られた混合物を1時間煮沸した後、重合体をろ別する操作)を5回繰り返し、次いで、メタノールによるソックスレー抽出を1週間行う方法である。上記洗浄方法において、水酸化ナトリウムを含有するメタノールによる洗浄操作およびメタノールによるソックスレー抽出は、ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量がほぼ変化しなくなるまで行われるものであり、この条件が満たされる範囲において、水酸化ナトリウムを含有するメタノールによる洗浄操作回数およびメタノールによるソックスレー抽出期間は適宜増減してもよい。
上記ビニルアルコール系重合体のケイ素原子の含有量(a)は、ビニルアルコール系重合体中に含まれる全てのケイ素原子の含有量を示すと考えられる。また、水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄したビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(b)は、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接組み込まれたシリル基含有単量体に由来するケイ素原子の含有量を示すと考えられる。
ケイ素原子の含有量(b)を求めるに当たり、ビニルアルコール系重合体は水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄され、その際にシロキサン結合(−Si−O−Si−)が切断される。このとき、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接組み込まれておらず、シロキサン結合を介してビニルアルコール系重合体の主鎖と結合していたシリル基含有単量体は、ビニルアルコール系重合体から切り離され、重合体中から取り除かれる。そのため、ケイ素原子の含有量(b)は、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接組み込まれていないシリル基含有単量体が取り除かれた状態でのケイ素原子の含有量を示していると考えられる。したがって、上記の関係式0.1/100≦(a−b)/(b)≦50/100における(a−b)は、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接導入されていないシリル基を有する単量体単位に由来するシリル基の含有量を示していると考えられる。
ビニルアルコール系重合体における(a−b)/(b)の値が大きい場合には、ビニルアルコール系重合体に余剰のシリル基を有する単量体単位が多く含まれていることを意味しており、ビニルアルコール系重合体における(a−b)/(b)の値が小さい場合には、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接導入されていない、余剰のシリル基を有する単量体単位の量が少ないことを意味している。
(a−b)/(b)の値が大き過ぎると、余剰のシリル基を含有する単量体単位と、主鎖に組み込まれたシリル基含有単量体単位との間でシロキサン結合(−Si−O−Si−)が多数形成されるために、ビニルアルコール系重合体の分子の運動性が制限されて、ビニルアルコール系重合体の水溶液の粘度安定性が低下する場合があると考えられる。一方、(a−b)/(b)の値が小さ過ぎると、余剰のシリル基を含有する単量体単位と、主鎖に組み込まれたシリル基含有単量体単位との間で形成されるシロキサン結合(−Si−O−Si−)の割合が少ないために、ビニルアルコール系重合体に含まれるシリル基の量が低下して、多孔性無機板シーラーとして用いた場合、止水性能に劣る懸念が生じる。
さらに、本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)は、その4%水溶液のpHが4〜8であることが好ましい。その4%水溶液のpHのさらに好ましい範囲は4.5〜7であり、特に好ましい範囲は5〜6.5である。4%水溶液のpHが4に満たない場合には、ビニルアルコール系重合体からなる多孔性無機板シーラーの粘度安定性が低下することがあり、4%水溶液のpHが8を超える場合には、多孔性無機板シーラーとして用いた場合、止水性能に劣る懸念が生じるため好ましくない。
本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)に含まれるシリル基を表す一般式(1)において、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数である。
ここで、Rで表される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基などが挙げられる。Rで表されるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、オクチロキシ基、ラウリロキシ基、オレイロキシ基などが挙げられ、また、アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシル基またはアシロキシル基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、その置換基の例として、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基を挙げることができる。
本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルエステル単量体と一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体とを共重合させ、得られるビニルエステル系重合体をけん化することにより製造することができる。
また、本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルエステル単量体と一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体とを2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で共重合させ、得られるビニルエステル系重合体をけん化することによっても製造することができる。この方法により、チオール化合物に由来する官能基が末端に導入されたビニルアルコール系重合体(A)が得られる。
このようなビニルアルコール系重合体(A)の製造に用いられるビニルエステル単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル単量体とのラジカル共重合に用いられる一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体として、下記の一般式(2)または下記の一般式(3)で示される化合物を挙げることができる。
Figure 0004397237
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数であり、nは0〜4の整数である。)
Figure 0004397237
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であるかまたは酸素原子もしくは窒素原子を含む2価の炭化水素基であり、mは0〜2の整数である。)
上記一般式(2)および一般式(3)において、Rで表される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基などが挙げられる。Rで表されるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、オクチロキシ基、ラウリロキシ基、オレイロキシ基などが挙げられ、また、アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシル基またはアシロキシル基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、その置換基の例として、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基を挙げることができる。また、Rで表される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基などが挙げられる。Rで表される炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などが挙げられ、また、酸素原子または窒素原子を含む2価の炭化水素基としては、−CHCHNHCHCHCH−、−CHCHNHCHCH−、−CHCHNHCH−、−CHCHN(CH)CHCH−、−CHCHN(CH)CH−、−CHCHOCHCHCH−、−CHCHOCHCH−、−CHCHOCH−などが挙げられる。
上記式(2)で示される単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジブトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシヘキシロキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシランなどが挙げられる。
上記式(2)においてnが1以上のシリル基を有する単量体とビニルエステル単量体を共重合させる場合には、得られるビニルエステル系重合体の重合度が低下する傾向がある。その点、ビニルトリメトキシシランは、ビニルエステル単量体と共重合させた場合に、得られるビニルエステル系重合体の重合度の低下を抑えることができるうえ、工業的な製造が容易で安価に入手できることから好ましく用いることができる。
また、上記式(3)で示される単量体としては、例えば、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−イソプロピルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−(メタ)アクリルアミド−プロピル)−オキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリアセトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−ブチルトリアセトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリプロピオニルオキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリアセトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルイソブチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルハイドロジェンジメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、2−(N−エチル−(メタ)アクリルアミド)−エチルトリアセトキシシランなどが挙げられる。
これらの単量体の中でも、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシランおよび3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシランは、工業的な製造が比較的容易で安価に入手できることから好ましく用いることができ、また2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシランおよび2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシランはアミド結合が酸またはアルカリに対して著しく安定であることから、好ましく用いることができる。
シリル基を有する単量体とビニルエステル単量体とを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その方法の中でも、無溶媒で行う塊状重合法、またはアルコールなどの溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。塊状重合法や溶液重合法で重合するにあたって、その重合度が重量平均重合度Pwの3倍を超える重合体の重量分率が25重量%以下であり、好ましくは、その重合度が重量平均重合度Pwの1/2倍より小さい重合体の重量分率が12重量%以下である本発明のビニルアルコール系重合体を得る重合方法については、重合条件等により一概に限定はできないが、高重合度成分および低重合度成分の比率を抑える観点から、連続重合方式が最も好ましい。連続重合方式としては、例えば1〜2槽連続重合方式が好ましく、1槽連続重合方式がさらに好ましい。また、回分方式の場合、ビニルエステル単量体の重合率などにより、高重合度成分および低重合度成分の比率が変化し、重合率の上昇に伴い、高重合度成分および低重合度成分の比率は増加するため、比較的低重合率で重合する方が好ましい。回分方式での好適な重合率は、重合条件などにより異なるため一概に規定はできないが、ビニルエステル単量体の重合率として、10〜80%が好ましく、15〜50%がさらに好ましい。溶液重合法を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、50℃〜180℃の範囲が適当である。
シリル基を有する単量体とビニルエステル単量体とをラジカル共重合させる際には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、必要に応じて、共重合可能な単量体を共重合させることができる。このような単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその誘導体;アクリル酸またはその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸またはその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等のカチオン基を有する単量体などが挙げられる。これらのシリル基を有する単量体およびビニルエステル単量体と共重合可能な単量体の使用量は、その使用される目的および用途等によっても異なるが、通常、共重合に用いられる全ての単量体を基準にした割合で20モル%以下、好ましくは10モル%以下である。
シリル基を有する単量体とビニルエステル単量体とを共重合させることによって得られたビニルエステル系重合体は、次いで、公知の方法にしたがって溶媒中でけん化され、ビニルアルコール系重合体(A)へと導かれる。
ビニルエステル系重合体のけん化反応の触媒としては通常、アルカリ性物質が用いられ、その例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、およびナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。アルカリ性物質の使用量は、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル単量体単位を基準にしたモル比で0.004〜0.5の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.05の範囲内であることが特に好ましい。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括して添加しても良いし、あるいはけん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加しても良い。
けん化反応に用いることができる溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく用いられ、その使用にあたり、メタノールの含水率が好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.003〜0.9重量%、特に好ましくは0.005〜0.8重量%に調整されているのがよい。
けん化反応は、好ましくは5〜80℃、より好ましくは20〜70℃の温度で行われる。けん化反応に必要とされる時間は、好ましくは5分間〜10時間、より好ましくは10分間〜5時間である。けん化反応は、バッチ法および連続法のいずれの方式にても実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和しても良く、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、および酢酸メチルなどのエステル化合物などを挙げることができる。
本発明のビニルアルコール系重合体(A)のけん化度について特に制限はないが、けん化度は好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。そして、ビニルアルコール系重合体からなる多孔性無機板シーラーの耐水性を良好なものにするという観点から、ビニルアルコール系重合体(A)の最適のけん化度は95モル%以上である。
けん化反応により得られたビニルアルコール系重合体(A)は、必要に応じて、洗浄することができ、この操作は、前述したビニルアルコール系重合体(A)における(a−b)/(b)の値を調整する手段として有用である。使用可能な洗浄液としては、メタノールなどの低級アルコール、酢酸メチルなどの低級脂肪酸エステル、およびそれらの混合物などを挙げることができ、これらの洗浄液には、少量の水、またはアルカリもしくは酸が添加されていても良い。
ビニルアルコール系重合体(A)を洗浄するのに採用される方法は、ビニルエステル単量体とシリル基を有する単量体とを共重合させる際の重合率、共重合によって得られるビニルエステル系重合体の重合度、ビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体のけん化度等により異なり、これを一律に規定するのは困難である。その方法の一つとして、例えば、ビニルエステル単量体とシリル基を有する単量体との共重合体(ビニルエステル系重合体)をアルコール溶液中でけん化することによって得られる、乾燥する前のアルコールなどが含浸された湿潤状態のビニルアルコール系重合体の重量に対して1〜20倍量のメタノールなどの低級アルコール、酢酸メチルなどの低級脂肪酸エステル、またはそれらの混合物を洗浄液として用い、20℃〜洗浄液の沸点の温度条件にて30分〜10時間程度洗浄するという方法を挙げることができる。
本発明に用いるビニルアルコール系重合体(A)は粉末の状態で保存および輸送することが可能であり、また、使用に際しては、粉末の状態のままで、あるいは液体に分散させた状態で使用することができる。ビニルアルコール系重合体(A)を水に溶解させて、水溶液として使用することもでき、この場合には、ビニルアルコール系重合体(A)を水に分散させた後、攪拌しながら加温することにより均一な水溶液とすることができる。なお、この場合には、水に対して水酸化ナトリウムなどのアルカリを特に添加しなくとも均一な水溶液を得ることができる。
本発明に用いられる水性エマルジョン(B)としては特に制限されないが、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン、α−オレフィン系樹脂エマルジョンなどが好ましく用いられる。酢酸ビニル系樹脂エマルジョンとしては、ホモ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル(炭素数1〜10)などとの共重合体樹脂エマルジョンが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンとしては、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル単量体(アルキル基の炭素数1〜10)を主体とするオールアクリル樹脂エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステルとスチレンや酢酸ビニルとの共重合体樹脂エマルジョンなどが挙げられる。この場合、エマルジョン皮膜のガラス転移温度が5〜50℃のものを用いた場合、止水性能が向上し、好ましい。α−オレフィン系樹脂エマルジョンとしては、イソプレン、イソブテン、ブタジエン、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどからなる群より選ばれる1種または2種以上の単量体単位からなる重合体を分散質とするエマルジョンが挙げられる。
ビニルアルコール系重合体(A)に対する水性エマルジョン(B)の配合重量比率は特に制限されないが、(A)/(B)=1/99〜90/10、好ましくは3/97〜70/30、より好ましくは5/95〜50/50の範囲であり、配合重量比率がこの範囲にあるとき、止水性能等のシーラー物性が向上する。ここで、上記配合重量比率における水性エマルジョン(B)の重量は固形分基準の重量である。
本発明において、(A)、(B)に加えて、耐水化剤(C)を併用することは、好ましい態様のひとつである。耐水化剤(C)としては特に制限されず、コロイダルシリカ、水ガラス、ホウ砂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ポリアミドメチロール樹脂、ポリエチレンイミンなどが挙げられるが、なかでもコロイダルシリカが好ましく用いられる。配合重量比率も特に制限されないが、(A)/(C)=90/10〜5/95、好ましくは80/20〜10/90、より好ましくは70/30〜20/80の範囲であり、配合重量比率がこの範囲にあるとき、耐水性等のシーラー物性が向上する。ここで、耐水化剤(C)がコロイダルシリカや水ガラスのように分散液や溶液であるような場合には、上記配合重量比率における耐水化剤(C)の重量は固形分基準の重量である。
多孔性無機板シーラーの塗液濃度は特に制限されないが、10〜60重量%、好ましくは20〜40重量%(固形分濃度)で塗布される。
本発明の多孔性無機板シーラーが塗布される多孔性無機板としては、セメント系、ケイ酸カルシウム系、石膏系、砂、粘土鉱物系などの無機質材料を主成分とするものであり、具体的には、軽量コンクリート、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート(ALC)、モルタル、石綿セメント板、ケイ酸カルシウム板、パルプセメント板、木毛セメント板、石膏ボード、ハードボード、などが挙げられ、有機成分も含まれるが、いずれも通常Si、Ca、Mg、Al等の化合物からなる無機成分が主体となるものである。無機板への塗布方法はハケ塗り、吹付け塗り、ローラー塗り、フローコーター、ディッピングなど一般の塗布方法がいずれも可能である。塗布量は特に制限されないが、乾燥固形分として0.5〜100g/mが好ましく、乾燥は室温風乾でも加熱乾燥でも可能である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。
I.シリル基含有ビニルアルコール系重合体
下記の方法によりPVAを製造し、そのけん化度、シリル基を有する単量体単位の含有量、重量平均重合度、およびケイ素原子の含有量を求めた。
[PVAのけん化度]
PVAのけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
[PVAに含まれるシリル基を有する単量体単位の含有量]
けん化する前のビニルエステル系重合体をヘキサン−アセトンにより再沈精製して、重合体中から未反応のシリル基を有する単量体を完全に取り除き、次いで90℃減圧乾燥を2日間行った後、CDCl溶媒に溶解したものを測定試料とし、500MHzのプロトンNMR測定装置(JEOL GX−500)によりPVAに含まれるシリル基を有する単量体単位の含有量を求めた。
[PVAの重量平均重合度]
PVAをけん化度99.5モル%以上までけん化したものを試料として用い、LALLS(低角度レーザー光散乱光度計)法により重量平均分子量を求めた。カラムとしてTSK−gel−GMPWxL(東ソー製)3本を接続したGPC224型ゲル浸透クロマトグラフ(Waters)を用いて、23℃にて測定を行った。なお、測定にあたり、溶媒として0.08Mのトリス緩衝液(pH7.9)を用い、検出器にはR−401型示差屈折率計、8X(Waters)を用いた。試料の絶対分子量を求めるため、KMX−6型低角度レーザー光散乱光度計(Chromatix)を接続して測定を行い、測定の結果得られた重量平均分子量をビニルアルコール単量体単位の式量44で割った値を重量平均重合度とした。また、重合度が重量平均重合度の3倍を超える重合体の重量分率、および重合度が重量平均重合度の1/2倍よりも小さい重合体の重量分率は、上記の測定により得られた積分重合度分布から求めた。
[PVAに含まれるケイ素原子の含有量]
PVAに含まれるケイ素原子の含有量は、前述した方法にしたがって、ジャーレルアッシュ社製ICP発光分析装置IRIS APを用いて求めた。
PVA1
攪拌機、温度センサー、薬液添加ライン、重合液取り出しラインおよび還流冷却管を備え付けた重合槽に酢酸ビニル2500部、メタノール1656部、ビニルトリメトキシシラン(VMS)を2重量%含有するメタノール溶液752部を仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、内温を60℃まで上げた。この系に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメトキシバレロニトリル)(AMV)を0.1部含有するメタノール20部を添加し、重合反応を開始した。重合開始時点より、VMSを2重量%含有するメタノール溶液100部を添加しながら重合を実施した。また同時に、AMVを0.13重量%含有するメタノール溶液を23部/時間の割合で系内に添加し、系内の固形分濃度が25%になるまで4時間重合反応を行った。系内における固形分の濃度が25%に到達した時点から、酢酸ビニル625部/時間、メタノール414部/時間、VMSを2%含有するメタノール溶液188部/時間、およびAMVを0.13%含有するメタノール溶液を23部/時間の割合でそれぞれ系内に添加する一方で、重合槽内の液面が一定になるように系内から重合液を連続的に取り出しながら重合反応を行い、溶液の添加開始から4時間を経過した時点で重合液を回収した。回収した液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、ビニルエステル系重合体を40%含むメタノール溶液を得た。なお、重合液の回収を始めた時点の系内の固形分濃度は25%であった。
このビニルエステル系重合体を40%含有するメタノール溶液に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02、ビニルエステル系重合体の固形分濃度が35重量%となるように、メタノール、および水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。
けん化反応の進行に伴ってゲル化物が生成した直後にこれを反応系から取り出して粉砕し、次いで、この粉砕物に対して、けん化反応の開始から1時間が経過した時点で酢酸メチルを添加することで中和し、メタノールで膨潤したPVAを得た。このメタノールで膨潤したPVAに対して重量基準で6倍量(浴比6倍)のメタノールを加え、還流下に1時間洗浄し、次いで65℃で16時間乾燥してPVAを得た。
得られたPVAにおけるビニルトリメチルシラン単位の含有量は0.50モル%、けん化度は98.5モル%、重量平均重合度は580であった。また、上記したPVAに含まれるケイ素原子含有量の分析方法に従って求められた(a−b)/(b)の値は10.9/100であり、4%PVA水溶液のpHは6.0であった。
PVA2
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の仕込み量、重合開始剤の使用量、重合反応の条件等を表1に示すように変化させた以外はPVA1と同様の方法によりPVA2を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA3
攪拌機、温度センサー、薬液添加ライン、重合液取り出しラインおよび還流冷却管を備え付けた重合槽1、ならびに同様の装備をした重合槽2に、それぞれ酢酸ビニル2000部、メタノール2352部、ビニルトリメトキシシラン(VMS)を2重量%含有するメタノール溶液600部を仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、内温を60℃まで上げた。重合槽1および重合槽2に、それぞれ2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメトキシバレロニトリル)(AMV)0.05部を含有するメタノール溶液20部を添加し、重合反応を開始した。それぞれの重合槽に、重合開始時点よりVMS2重量%を含有するメタノール溶液80部を150部/時間の割合で添加しながら重合を実施した。また同時に、AMV0.13重量%を含有するメタノール溶液を4部/時間の割合で重合槽1および重合槽2に添加し、系内における固形分の濃度が10%になるまで4時間重合反応を行った。その後、重合槽1に酢酸ビニル500部/時間、メタノール588部/時間、VMSを2%含有するメタノール溶液150部/時間、およびAMVを0.13%含有するメタノール溶液を4部/時間の割合でそれぞれ系内に添加する一方で、重合槽内の液面が一定になるように重合槽1から重合液を連続的に取り出してこれを重合槽2へフィードし、重合槽2についても重合槽内の液面が一定になるように重合液を連続的に取り出しながら重合反応を行った。なお、重合槽1から取り出した重合液を重合槽2へフィードする際に、AMVを0.13%含有するメタノールを8部/時間の割合で添加した。
フィード開始から4時間が経過して重合槽1での固形分の濃度が10%、重合槽2での固形分の濃度が24%となった時点で重合槽2より重合液を回収し、回収した液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、ビニルエステル系重合体を40%含むメタノール溶液を得た。
このビニルエステル系重合体を40%含有するメタノール溶液に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02、ビニルエステル系重合体の固形分濃度が35重量%となるように、メタノール、および水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。
けん化反応の進行に伴ってゲル化物が生成した直後にこれを反応系から取り出して粉砕し、次いで、この粉砕物に対して、けん化反応の開始から1時間が経過した時点で酢酸メチルを添加することで中和し、メタノールで膨潤したPVAを得た。このメタノールで膨潤したPVAに対して重量基準で6倍量(浴比6倍)のメタノールを加え、還流下に1時間洗浄し、次いで65℃で16時間乾燥してPVAを得た。
得られたPVAにおけるビニルトリメチルシランの含有量は0.50モル%、けん化度は98.2モル%、重量平均重合度は590であった。また、上記したPVAに含まれるケイ素原子含有量の分析方法に従って求められた(a−b)/(b)の値は9.6/100であり、4%PVA水溶液のpHは6.0であった。
PVA4
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の仕込み量、重合開始剤の使用量、重合反応の条件、けん化反応の条件等を表2に示すように変化させた以外はPVA3と同様の方法によりPVA4を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA5
攪拌機、温度センサー、滴下漏斗および還流冷却管を備え付けた6Lセパラブルフラスコに酢酸ビニル1050部、メタノール2056部、ビニルトリメトキシシランを2重量%含有するメタノール溶液394部を仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、内温を60℃まで上げた。この系に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.3部を含有するメタノール20部を添加し、重合反応を開始させた。重合開始時点よりビニルトリメトキシシランを2重量%含有するメタノール溶液30部を系内に添加しながら4時間重合反応を行い、その時点で重合反応を停止した。重合反応を停止した時点における系内の固形分濃度は15.2%であった。次いで、系内にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、ビニルエステル系重合体を40%含むメタノール溶液を得た。
このビニルエステル系重合体を40%含有するメタノール溶液に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02、ビニルエステル系重合体の固形分濃度が35重量%となるように、メタノール、および水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。
けん化反応の進行に伴ってゲル化物が生成した直後にこれを反応系から取り出して粉砕し、次いで、この粉砕物に対して、けん化反応の開始から1時間が経過した時点で酢酸メチルを添加することで中和し、メタノールで膨潤したPVAを得た。このメタノールで膨潤したPVAに対して重量基準で6倍量(浴比6倍)のメタノールを加え、還流下に1時間洗浄し、次いで65℃で16時間乾燥してPVAを得た。
得られたPVAにおけるビニルトリメチルシランの含有量は0.50モル%、けん化度は98.5モル%、重量平均重合度は560であった。また、上記したPVAに含まれるケイ素原子含有量の分析方法に従って求められた(a−b)/(b)の値は10.9/100であり、4%PVA水溶液のpHは6.0であった。
PVA6〜9
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の種類および仕込み量、重合開始剤の使用量、重合反応の条件、けん化反応の条件等を表3に示すように変化させた以外はPVA5と同様の方法により各種のPVA(PVA6〜9)を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA10
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA1と同様にしてPVA10を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA11
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA2と同様にしてPVA11を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA12
メタノールによる洗浄の操作を省略した以外はPVA2と同様の方法によりPVA12を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA13
けん化反応で得られたPVAを酢酸メチルで中和する前に、メタノールを用いたソックスレー抽出による洗浄の操作を加えた以外は、PVA2と同様にしてPVA13を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA14
酢酸メチルの代わりに、けん化反応に用いた水酸化ナトリウムの5倍のモル数の酢酸を用いて中和を行い、さらにメタノールによる洗浄(浴比6倍)を室温で1時間行った以外はPVA2と同様の方法によりPVA14を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA15
酢酸メチルによる中和を行わず、さらにメタノールによる洗浄(浴比6倍)を室温で1時間行った以外はPVA2と同様の方法によりPVA15を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA16および17
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の仕込み量、重合開始剤の使用量、重合反応の条件等を表1に示すように変化させた以外はPVA1と同様の方法によりPVA16および17を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA18および19
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の仕込み量、重合開始剤の使用量、重合反応の条件、けん化反応の条件等を表2に示すように変化させた以外はPVA3と同様の方法によりPVA18および19を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA20および21
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の種類および仕込み量、重合開始剤の使用量、重合反応の条件、けん化反応の条件等を表3に示すように変化させた以外はPVA5と同様の方法によりPVA20および21を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA22
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA16と同様にしてPVA22を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA23
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA17と同様にしてPVA23を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
実施例1〜7、比較例9〜16
PVA1〜PVA15を用い、下記の評価方法により多孔性無機板用シーラーの粘度安定性、耐水性、止水性能を評価した。その結果を表5に示す。
比較例1〜8
PVA16〜PVA23を用い、下記の評価方法により多孔性無機板用シーラーの粘度安定性、耐水性、止水性能を評価した。その結果を併せて表5に示す。
[多孔性無機板用シーラーの粘度安定性]
PVAの15%水溶液を調製し、その100部に対し、塩化ビニル系樹脂エマルジョン(日本ゼオン(株)製Geon576、固形分55%)を120部配合し、補正水を加えて固形分濃度25%の組成物を得た。この組成物100部に耐水化剤としてコロイダルシリカ(触媒化成工業(株)製CataloidSI−500、固形分20%)30部を加え、多孔性無機板用シーラーを得た。該シーラーを10℃恒温槽中に放置し、該シーラーの温度が10℃になった直後の粘度と7日後の粘度を測定した。該処理剤の温度が10℃になった直後の粘度で7日後の粘度を除した値(7日後/直後)を求め、以下の基準にしたがって判定した。
A:2.5倍未満。
B:2.5倍以上3.5倍未満。
C:3.5倍以上。
[皮膜の耐水性]
上記により調製した多孔性無機板用シーラーを20℃で流延し、厚み40μmの皮膜を得た。得られた皮膜を120℃で10分間熱処理した後、縦10cm、横10cmの大きさに切り出し、試験片を作製した。この試験片を20℃の蒸留水に30分間浸漬した後、取り出し(回収し)、表面に付着した水分をガーゼで拭き取り、水膨潤時の重量を測定した。水膨潤時の重量を測定した試験片を105℃で16時間乾燥した後、乾燥時の重量を測定した。ここで水膨潤時の重量を乾燥時の重量で除した値を求めてこれを膨潤度(倍)とし、以下の基準にしたがって判定した。
A:4.0倍未満。
B:4.0倍以上5.0倍未満。
C:5.0倍以上であるか、または浸漬した試験片を回収することができない。
[透水性試験(止水性)]
多孔性無機板として石膏ボードに、本発明シーラーを固形分で20g/m塗布し、80 ℃、20分間乾燥後、20℃、65%RH条件下に7日間放置した。この試験体の表面に、三角ロートの開口端をエポキシ系接着剤で漏水しない様に固定し、その先にビュレットを継ぎ、初期水頭25cmになるよう水を入れ、8時間後の水量減少量を読み取った。値の小さい程、止水性能が良好なことを示す。
実施例
実施例1において、塩化ビニル系樹脂エマルジョンに代えて、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(日本アクリル化学(株)製、プライマルC−72、固形分45%、ガラス転移温度32℃)を用いた他は、実施例1と同様にしてシーラーを調製し、評価した。結果を併せて表5に示す。
実施例
実施例1において、塩化ビニル系樹脂エマルジョンに代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン((株)クラレ製、パンフレックスOM−5010NT、固形分55%)を用いた他は、実施例1と同様にしてシーラーを調製し、評価した。結果を併せて表5に示す。
Figure 0004397237
Figure 0004397237
Figure 0004397237
Figure 0004397237
Figure 0004397237
表5の結果から、本発明に相当する多孔性無機板用シーラーは、その粘度安定性、皮膜の耐水性、止水性能がバランスよく優れていることが分かる(実施例1〜
一方、Pw(ビニルアルコール系重合体の重量平均重合度)×S(シリル基を有する単量体単位の含有量)が20以下のビニルアルコール系重合体を用いた多孔性無機板用シーラーは、止水性能が十分ではなく(比較例6)、Pw×Sが460以上のビニルアルコール系重合体は、水に完全に溶解しないことから、評価することができなかった(比較例5)。また、ビニルアルコール系重合体の中で、重合度が重量平均重合度Pwの3倍を超える重合体の重量分率が25重量%を超えるビニルアルコール系重合体を用いた多孔性無機板用シーラーは、その粘度安定性および止水性能が十分ではないことが分かる(比較例3および4)。
シリル基含有単量体を全く含まないビニルアルコール系重合体を用いた多孔性無機板用シーラーは、止水性能が十分ではないことが分かる(比較例1および2)。また、シリル基含有単量体を全く含まず、けん化度の低いビニルアルコール系重合体を用いた多孔性無機板用シーラーは、皮膜の耐水性、および止水性能が十分ではないことが分かる(比較例7および8)。

Claims (4)

  1. 下記の一般式(1)
    Figure 0004397237
    (Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数である。)
    で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)及び式(II)を満足し、けん化度が95モル%以上であり、その4%水溶液のpHが4〜8であり、かつビニルアルコール系重合体の中で、その重合度が重量平均重合度の3倍を超える重合体の重量分率が25重量%以下であるとともに、その重合度が重量平均重合度の1/2倍よりも小さい重合体の重量分率が12重量%以下であることを特徴とするビニルアルコール系重合体(A)および水性エマルジョン(B)を配合してなる多孔性無機板用シーラー。
    20<Pw×S<460 ・・・(I)
    Pw:ビニルアルコール系重合体の重量平均重合度
    S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
    0.1/100≦(a−b)/(b)≦50/100 ・・・(II)
    a:ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
    b:水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄したビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
    ここで、aおよびbは、それぞれ測定試料を灰化した後、ICP発光分析法により測定される。
  2. 前記シリル基を有する単量体が下記の一般式(2)
    Figure 0004397237
    (式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数であり、nは0〜4の整数である。)
    または下記の一般式(3)
    Figure 0004397237
    (式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であるか、または酸素原子もしくは窒素原子を含む2価の炭化水素基であり、mは0〜2の整数である。)
    で示される単量体である請求項記載の多孔性無機板用シーラー。
  3. 水性エマルジョン(B)が、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンおよびα−オレフィン系樹脂エマルジョンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の多孔性無機板用シーラー。
  4. さらに耐水化剤(C)を配合してなる請求項1〜3のいずれか記載の多孔性無機板用シーラー。
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