JP5834000B2 - スケール付着防止剤及びポリマーの製造方法 - Google Patents

スケール付着防止剤及びポリマーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スケール付着防止剤及びポリマーの製造方法に関する。
塩化ビニル等を水性媒体中で重合する場合、重合反応器の内壁や攪拌翼等にスケールが付着し、この付着したスケール等の異物の剥離混入が、生産性の低下及び得られるポリマー生成物の品質の低下を招く。そのため、重合反応終了後に毎回重合反応器の内壁等を清掃することが必要となり、これが重合装置の稼働率の低下や製品コスト上昇の原因となっている。
これに対し、これまで重合反応器の内壁に塗布する種々のスケール付着防止剤が提案されている。国際公開2005/087815号には、シリル基含有ビニルアルコール系重合体(以下、「ビニルアルコール系重合体」を「PVA」と略記することがある)及びフェノール性水酸基含有化合物を含有するスケール付着防止剤が記載されているが、pHが9以上の強アルカリ性であるため取扱上の不都合があり、粘度安定性も不十分である。また、得られる皮膜の耐水性も不十分であり、その結果、皮膜の剥離が起きるため、スケール付着の抑制効果が低下し、また、ポリマー生成物中への異物の混入を低減できないという不都合がある。
国際公開2005/087815号
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、耐水性の高い皮膜を得ることができ、重合反応器内壁への高いスケール付着抑制性により、ポリマー生成物中への異物の混入を低減でき、取扱性及び粘度安定性も促進できるスケール付着防止剤の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
下記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、下記式(I)を満たすビニルアルコール系重合体を含有し、pHが4以上8以下の水溶液からなるスケール付着防止剤である。
Figure 0005834000
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Rは、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。R〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。mは、0〜2の整数である。nは、3以上の整数である。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。)
20≦P×S≦6,000 ・・・(I)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
当該スケール付着防止剤に含有されるPVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、シリル基が炭素数3以上のアルキレン基を介して主鎖と連結した構造を有している。このため、当該スケール付着防止剤は、含有するPVAがシリル基の変性量を高めても上記pHの領域において水溶性が高いため、取扱性もよく、粘度安定性の低下が抑えられる。また、当該スケール付着防止剤によれば、耐水性の高い皮膜を得ることができ、重合反応器内壁へのスケール付着抑制性を高め、この点からもポリマー生成物中への異物の混入を低減できる。
上記PVAは、下記式(II)及び(III)をさらに満たすことが好ましい。
200≦P≦4,000 ・・・(II)
0.1≦S≦10 ・・・(III)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
このように上記PVAの粘度平均重合度(P)及び上記単量体単位の含有率(S)を上記範囲とすることで、水溶性及び粘度安定性がより高まり、得られる皮膜の耐水性、スケール付着抑制性をより高めることができ、ポリマー生成物中への異物の混入を効果的に低減できる。
上記式(1)におけるnは6〜20の整数であることが好ましい。nの値を上記範囲とすることで、当該スケール付着防止剤の諸性能をより高めることができる。
上記単量体単位は下記式(2)で表されることが好ましい。
Figure 0005834000
(式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、式(1)と同様である。Xは、直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。Rは、水素原子又はメチル基である。)
上記単量体単位が上記式(2)で表される構造を有することで、当該スケール付着防止剤の上述の作用を効果的に奏する。
上記式(2)におけるXは下記式(3)で表されることが好ましい。
−CO−NR−* ・・・(3)
(式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)
このように上記単量体単位がシリル基と離れた位置にアミド構造を有することで、シリル基に由来する性能を維持しつつ、水溶性及び粘度安定性等を効果的に高めることができる。
上記式(3)におけるRは水素原子であり、上記式(2)におけるnは3〜12の整数であることが好ましい。上記単量体単位をこのような構造とすることで、上記PVAの水溶性や粘度安定性がより高まり、当該スケール付着防止剤の諸性能もより高めることができ、また、上記PVAの製造を容易に行うことができる。
本発明のポリマーの製造方法は、当該スケール付着防止剤が内壁に塗布された重合反応器を用いて重合反応を行うものである。当該スケール付着防止剤が塗布された重合反応器内壁が優れたスケール付着抑制性を発揮することで、ポリマー生成物中への異物の混入を効果的に低減できる。
上記重合反応は懸濁重合又は乳化重合であることが好ましい。かかる懸濁重合又は乳化重合の際に上述のスケールが発生し易いが、当該ポリマーの製造方法によれば、かかる懸濁重合又は乳化重合の際のスケールの発生を効果的に抑制することができる。
当該ポリマーの製造方法は、ポリ塩化ビニルの製造に好適に用いられる。かかるポリ塩化ビニルの製造の際に上述のスケールが発生し易いが、当該ポリマーの製造方法によれば、かかるポリ塩化ビニルの製造の際のスケールの発生を効果的に抑制することができる。
以上説明したように、本発明のスケール付着防止剤は、十分な取扱性及び粘度安定性を有し、耐水性の高い皮膜を得ることができ、重合反応器内壁への高いスケール付着抑制性により、ポリマー生成物中への異物の混入を低減できる。
以下、本発明のスケール付着防止剤の実施の形態について詳説する。
<スケール付着防止剤>
本発明のスケール付着防止剤は、以下に詳説するPVAを含有する。
<PVA>
上記PVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を含む。すなわち、上記PVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位とビニルアルコール単位(−CH−CHOH−)とを含む共重合体であり、さらに他の単量体単位を有してもよい。
上記式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
は、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基(NH)である。上記アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。上記アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。上記アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。Rで表されるこれらの基の中でも、アルコキシル基又はOMで表される基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシル基、及びMが水素原子若しくはアルカリ金属であるOMで表される基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基及びMがナトリウム若しくはカリウムであるOMで表される基がさらに好ましい。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、上述した炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。R及びRとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。酸素原子を含有する置換基としては、アルコキシル基、アシロキシル基等が挙げられる。また、窒素原子を含有する置換基としては、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。
なお、R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。
mは、0〜2の整数であるが、0が好ましい。mが0である、すなわち、上記単量体単位が、3つのR基を有することで、変性による効果をより高めることができる。
nは、3以上の整数である。nの上限としては、特に制限されないが、20が好ましく、15がより好ましく、12がさらに好ましい。nの下限としては、4が好ましく、6がより好ましく、8がさらに好ましい。上記PVAは、上記式(1)中のnが3以上、すなわちシリル基が炭素数3以上のアルキレン基を介して主鎖と連結した構造を有していることで、シリル基の変性量を高めても、水溶性及び粘度安定性の低下が抑えられる。このような効果が発現する理由は十分解明されてはいないが、例えば、疎水性を示す炭素数3以上のアルキレン基が、水溶液中において、Si−Rの加水分解速度を低下させ、反応を阻害させるためであると推測される。
上記単量体単位の具体的構造は、上記式(1)で表される基を有する限り特に限定されないが、上記式(2)で表されることが好ましい。
式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、式(1)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
Xは直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。上記単量体単位が上記式(2)で表される構造を有することで、当該スケール付着防止剤の諸性能をより高めることができる。
上記2価の炭化水素基としては、炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。上記炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基等が挙げられる。上記酸素原子を含む2価の有機基としては、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、及びこれらの基と2価の炭化水素基とが連結した基等が挙げられる。上記窒素原子を含む2価の有機基としては、イミノ基、アミド基、及びこれらの基と2価の炭化水素基とが連結した基等が挙げられる。
上記式(2)におけるXとしては、酸素原子又は窒素原子を含む2価の有機基が好ましく、アミド基を含む基がより好ましく、上記式(3)で表される基であることがさらに好ましい。このように上記単量体単位がシリル基と離れた位置に極性構造、好ましくはアミド構造を有することで、シリル基に由来する性能を維持しつつ、水溶性や粘度安定性等をより高めることができる。なお、上記式(3)におけるRとしては、上記機能をより高めたり、当該PVAの製造を容易に行うことができる点から、水素原子が好ましい。
は、水素原子又はメチル基である。
上記単量体単位としては、下記式(4)で表されるものがさらに好ましい。
Figure 0005834000
式(4)中、R、R、R、X及びmの定義は、上記式(2)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
上記式(4)中、R’及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、上述した炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。R’及びR’としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。R’及びR’で表されるアルキル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。酸素原子を含有する置換基としては、アルコキシル基、アシロキシル基等が挙げられる。また、窒素原子を含有する置換基としては、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。なお、R’及びR’がそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R’及びR’は、独立して上記定義を満たす。
上記式(4)中、n’は、1以上の整数である。n’の上限としては、特に制限されないが、18が好ましく、13がより好ましく、10がさらに好ましい。n’の下限としては、2が好ましく、4がより好ましく、6がさらに好ましい。
上記単量体単位が、上記式(4)で表される場合、当該スケール付着防止剤の諸機能をより効果的に発現させることができる。この理由も定かではないが、水溶液中においてSi−Rの加水分解速度を低下させ、反応を阻害させるという上述した機能がより効果的に発揮されるためと推測される。
上記PVAは、下記式(I)を満たす。
20≦P×S≦6,000 ・・・(I)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
上記粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、上記PVAをけん化度が99.5モル%未満の場合は、けん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求めることができる。
P=([η]×1000/8.29)(1/0.62)
上記単量体単位の含有率(S:モル%)は、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRから求められる。ここで、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRを測定するに際しては、このビニルエステル系重合体をヘキサン−アセトンにより再沈精製して重合体中から未反応のシリル基を有する単量体を十分に取り除き、次いで90℃減圧乾燥を2日間行った後、CDCl溶媒に溶解して分析に供する。
粘度平均重合度(P)と上記単量体単位の含有率(S)との積(P×S)は、分子100個あたりの上記単量体単位の数(平均値)に相当する。この積(P×S)が上記下限未満の場合は、当該スケール付着防止剤から得られる皮膜の耐水性、重合反応器内部のスケール付着抑制性等のシリル基に由来する諸特性を十分に発揮することができない。逆に、この積(P×S)が上記上限を超えると水溶性や粘度安定性が低下する。積(P×S)は、下記式(I’)を満たすことが好ましく、下記式(I’’)を満たすことがより好ましい。
300≦P×S≦3,000 ・・・(I')
400≦P×S≦2,000 ・・・(I’’)
上記PVAは、下記式(II)及び(III)をさらに満たすことが好ましい。
200≦P≦4,000 ・・・(II)
0.1≦S≦10 ・・・(III)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
このように粘度平均重合度(P)及び上記単量体単位の含有率(S)を上記範囲とすることで、水溶性、粘度安定性、得られる皮膜の耐水性及び重合反応器内壁へのスケール付着抑制性をより高めることができる。
さらには、上記粘度平均重合度(P)において、下記式(II’)を満たすことがより好ましく、下記式(II’’)を満たすことがさらに好ましい。
500≦P≦3,000 ・・・(II’)
1,000≦P≦2,400 ・・・(II’’)
粘度平均重合度(P)が上記下限未満の場合は、得られる皮膜の耐水性、重合反応器内壁へのスケール付着抑制性等が低下する場合がある。逆に、粘度平均重合度(P)が上記上限を超える場合は、水溶性、粘度安定性等が低下する場合がある。
また、上記単量体単位の含有率においては、下記式(III’)を満たすことがより好ましく、下記式(III’’)を満たすことがさらに好ましい。
0.25≦S≦6 ・・・(III’)
0.5≦S≦5 ・・・(III’')
上記単量体単位の含有率(S)が上記下限未満の場合は、得られる皮膜の耐水性、重合反応器内壁へのスケール付着抑制性等が低下する場合がある。逆に、上記単量体単位の含有率(S)が上記上限を超える場合は、水溶性や粘度安定性等が低下する場合がある。
上記PVAのけん化度としては、特に制限はないが、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、97モル%以上が特に好ましい。上記PVAのけん化度が上記下限未満の場合は、得られる皮膜の耐水性、重合反応器内壁へのスケール付着抑制性等が低下する場合がある。なお、上記PVAのけん化度の上限としては、特に制限はないが、生産性等を考慮すると、例えば99.9モル%である。ここでPVAのけん化度は、JIS−K6726に記載の方法に準じて測定した値をいう。
<PVAの製造方法>
上記PVAの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ビニルエステル系単量体と、上記式(1)で表される基を有する単量体とを共重合させ、得られる共重合体(ビニルエステル系重合体)をけん化することにより得ることができる。
上記ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ビニルが好ましい。
また、上記式(1)で表される基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、得られるPVAの粘度平均重合度(P)を調節すること等を目的として、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で重合を行っても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエタンチオール、n−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類;テトラクロロメタン、ブロモトリクロロメタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
上記式(1)で表される基を有する単量体としては、例えば下記式(5)で表される化合物が挙げられる。下記式(5)で表される化合物を使用することにより、最終的に、上記式(2)で表される基を有する単量体単位を含むPVAが容易に得られる。
Figure 0005834000
式(5)中、R〜R、X、m及びnの定義は、式(2)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
上記式(5)で表される化合物としては、例えば3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミドブチルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリルアミドヘキシルトリメトキシシラン、8−(メタ)アクリルアミドオクチルトリメトキシシラン、12−(メタ)アクリルアミドドデシルトリメトキシシラン、18−(メタ)アクリルアミドオクタデシルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−4−メチルブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン、5−(メタ)アクリルアミド−5−メチルヘキシルトリメトキシシラン、4−ペンテニルトリメトキシシラン、5−へキセニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記ビニルエステル系単量体と上記式(1)で表される基を有する単量体とを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。特に、重合温度が30℃より低い場合には、乳化重合法が好ましく、重合温度が30℃以上の場合には、無溶媒で行う塊状重合法又はアルコール等の溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。
乳化重合法の場合、溶媒としては水が挙げられ、メタノール、エタノール等の低級アルコールを併用してもよい。また、乳化剤としては、公知の乳化剤を使用することができる。共重合の際の開始剤としては、鉄イオン−酸化剤−還元剤を併用したレドックス系開始剤が重合をコントロールする上で好適に用いられる。塊状重合法や溶液重合法の場合、共重合反応を行うにあたって、反応の方式は回分式及び連続式のいずれの方式にても実施可能である。溶液重合法を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが挙げられる。この場合の共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、5℃〜50℃の範囲が適当である。
この共重合反応の際には、本発明の趣旨が損なわれない範囲であれば、必要に応じて、共重合可能な単量体を共重合させることができる。このような単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸又はその誘導体;アクリル酸又はその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸又はその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等のカチオン基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体の使用量は、その使用される目的や用途等によっても異なるが、通常、共重合に用いられる全ての単量体を基準にした割合で20モル%以下であり、10モル%以下であることが好ましい。
上記共重合により得られたビニルエステル系重合体は、次いで、公知の方法に従って溶媒中でけん化され、PVAへと導かれる。
けん化反応の触媒としては、通常、アルカリ性物質が用いられ、その例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、及びナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。上記アルカリ性物質の使用量は、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル系単量体単位を基準にしたモル比で、0.004〜0.5の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.05の範囲内であることがより好ましい。また、この触媒は、けん化反応の初期に一括して添加してもよいし、けん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加してもよい。
けん化反応に用いることができる溶媒としては、例えばメタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましい。また、メタノールの使用にあたり、メタノール中の含水率が好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.003〜0.9質量%、特に好ましくは0.005〜0.8質量%に調整されているのがよい。
けん化反応は、好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜70℃の温度で行われる。けん化反応に必要とされる時間としては、好ましくは5分間〜10時間、より好ましくは10分間〜5時間である。けん化反応は、バッチ法及び連続法のいずれの方式にても実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和してもよく、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、及び酢酸メチル等のエステル化合物等が挙げられる。
けん化反応により得られたPVAは、必要に応じて、洗浄することができる。この洗浄の際に用いられる洗浄液としては、メタノール等の低級アルコール、酢酸メチル等の低級脂肪酸エステル、及びそれらの混合物等が挙げられる。これらの洗浄液には、少量の水やアルカリ又は酸等が添加されていてもよい。
当該スケール付着防止剤は、上述した特定のPVAを水に溶解させたpHが4以上8以下の水溶液からなる。水溶液の濃度は特に限定されないが、重合反応器内壁へ塗布する際の作業性の観点から、0.1〜10質量%であることが好ましい。特に、当該水溶液を塗布した後の乾燥時間を短縮し、重合反応器の内部に均一な皮膜を形成させる観点からは、水溶液の濃度の下限は0.5質量%であることがより好ましく、1質量%であることがさらに好ましく、2質量%であることが特に好ましく、3質量%であることが最も好ましい。このとき、本発明の効果を損なわない限り、少量の有機溶媒を含んでいてもよいが、作業環境等を考慮すると実質的に有機溶媒を含まない方が好ましい。
当該スケール付着防止剤のpHは4以上8以下である。当該スケール付着防止剤を調製する際に、少量の酢酸等を配合してもよい。水溶性、粘度安定性、得られる皮膜の耐水性、重合反応器内壁へのスケール付着抑制性、ポリマー生成物中への異物混入抑制性を向上させる観点からは、上記水溶液のpHは5.5以上8.0以下であることが好ましく、6.0以上7.0以下であることがより好ましい。
<ポリマーの製造方法>
当該ポリマーの製造方法は、当該スケール付着防止剤が内壁に塗布された重合反応器を用いて重合反応を行うものである。当該スケール付着防止剤の重合反応器内壁への塗布方法は特に限定されず、ハケ塗り、浸漬塗り、スプレー塗布等の公知の方法が用いられる。重合反応器のサイズが大きい場合は、作業性の観点からスプレー塗布が好ましく用いられる。
当該スケール付着防止剤の重合反応器内壁への塗布量としては、特に制限はされないが、ビニルアルコール系重合体の質量に換算して、0.001〜5g/mであることが好ましい。また、本発明のスケール付着防止剤が内壁に塗布された重合反応器は、重合に供する前に、乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥方法は特に限定されず、例えば熱風を循環させる方法、ジャケット等により重合反応器を加熱する方法等が挙げられる。均一な皮膜を得る観点からは、ジャケット等により重合反応器を加熱する方法が好ましい。また、乾燥温度も特に限定されないが、優れた強度を有する皮膜を得る観点から、乾燥温度の下限は40℃であることが好ましく、50℃であることがより好ましい。また、スケール付着防止剤の着色を抑制し、重合反応器で重合されるポリマーの色相への悪影響を低減する観点から、乾燥温度の上限は100℃であることが好ましく、90℃であることがより好ましい。
また、乾燥時間も特に限定されず、重合反応器の大きさ、スケール付着防止剤の塗布量、スケール付着防止剤の濃度及び乾燥温度等に応じて任意に選択できるが、好ましくは1分〜1時間であり、より好ましくは1分〜30分である。乾燥時間を短くすることにより、作業効率を高められる他、スケール付着防止剤の着色を抑制し、重合反応器で重合されるポリマーの色相への悪影響を低減することができる。
当該スケール付着防止剤が内壁に塗布された重合反応器を用いて行われるポリマーの製造方法としては、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合、気相重合等が挙げられる。ポリマーの製造に用いられるモノマーとしては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、並びにこれらのエステル及び塩;マレイン酸、フマル酸、並びにこれらのエステル及び無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられ、特に、塩化ビニル単独、又は塩化ビニル及び塩化ビニルと共重合可能なモノマーとを水性媒体中で懸濁重合又は乳化重合する製造方法に好ましく用いられる。
塩化ビニルと共重合されるコモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル、その他塩化ビニルと共重合可能な単量体が挙げられる。
塩化ビニルの共重合に使用する重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクチルパーオキシジカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイドなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。また、過酸化物と還元剤を組み合わせて用いるレドックス系も使用することができる。
懸濁重合においては、重合系に対してその他の各種添加剤を必要に応じて加えることができる。添加剤としては、例えばアルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤、フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキシド化合物などの重合禁止剤等が挙げられる。また、pH調整剤、架橋剤等を加えてもよく、上記の添加剤を複数併用してもよい。
懸濁重合においては分散安定剤を使用することができる。上記分散安定剤としてはビニル系化合物を水性媒体中で懸濁重合する際に通常使用されるメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ゼラチン等の水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー等の油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウム等の水溶性乳化剤等が挙げられる。
懸濁重合においては、水性媒体の温度には特に制限はなく、20℃程度の冷水はもとより、90℃以上の温水も好適に用いられる。この水性媒体は、純粋な水の他、各種の添加成分を含有する水溶液又は他の有機溶媒を含む水性媒体からなることができる。水性媒体を重合反応系に仕込む際に、その供給量は重合反応系を充分に加熱できる量であればよい。また、除熱効率を高めるためにリフラックスコンデンサー付重合反応器も好適に用いられる。
乳化重合において使用される溶媒、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤としては従来公知のものを使用することができ、重合温度、重合時間等の重合条件も公知の条件が適宜採用される。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
なお、実施例及び比較例で用いたシリル基を有する単量体(モノマーA)は、以下のとおりである。
MAmPTMS :3−メタクリルアミドプロピルトリメトキシシラン
MAmPTES :3−メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン
MAmBTMS :4−メタクリルアミドブチルトリメトキシシラン
MAmOTMS :8−メタクリルアミドオクチルトリメトキシシラン
MAmDDTMS:12−メタクリルアミドドデシルトリメトキシシラン
MAmODTMS:18−メタクリルアミドオクタデシルトリメトキシシラン
AMBTMS :3−アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン
4−PTMS :4−ペンテニルトリメトキシシラン
VMS :ビニルトリメトキシシラン
MAmMTMS :メタクリルアミドメチルトリメトキシシラン
AMPTMS :2−アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン
[シリル基含有PVAの合成]
下記の方法によりPVAを製造し、そのけん化度、上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S)(一部の例では、シリル基を有する単量体単位の含有率)、粘度平均重合度(P)を求めた。
[PVAの分析方法]
PVAの分析は、特に断らない限りJIS−K6726に記載の方法に従って行った。
[合成例1]PVA1の製造
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び開始剤の添加口を備えた6Lセパラブルフラスコに、酢酸ビニル1,500g、メタノール500g、上記式(1)で表される基を有する単量体(モノマーA)としてのMAmPTMS1.87gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてMAmPTMSをメタノールに溶解して濃度8%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.8gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとモノマーA(MAmPTMS)の比率)が一定となるようにしながら、60℃で2.7時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー溶液(逐次添加液)の総量は99gであった。また、重合停止時の固形分濃度は29.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、上記式(1)で表される基を有するポリ酢酸ビニル(PVAc)を40%含有するメタノール溶液を得た。さらに、これにPVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.04、PVAcの固形分濃度が30質量%となるように、メタノール及び水酸化ナトリウムを10質量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。アルカリ溶液を添加後、約5分でゲル状物が生成した。このゲル状物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノールを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置し、上記式(1)で表される基を有するPVA1を得た。PVA1の粘度平均重合度(P)は1,700、けん化度は98.6モル%であった。
得られたPVA1の上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(シリル基を有する単量体単位の含有率)は、このPVAの前駆体であるPVAcのプロトンNMRから求めた。具体的には、得られたPVAcの再沈精製をn−ヘキサン/アセトンで3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のPVAcを作製した。このPVAcをCDClに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温で測定した。酢酸ビニル単位の主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とモノマーA単位のメトキシ基のメチルに由来するピークβ(3.4〜3.8ppm)とから、下記式を用いて式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S)を算出した。PVA1において、含有率(S)は0.5モル%であった。得られたPVAについて分析した結果を表1に示す。
式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S:モル%)
={(βのピーク面積/9)/(αのピーク面積+(βのピーク面積/9))}×100
[合成例2〜23及び比較合成例1〜13]PVA2〜PVA36の製造
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、モノマーAの種類や添加量等の重合条件、けん化時におけるPVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様にしてPVA2〜PVA36を得た。得られた各PVAについて分析した結果を表1に示す。なお、表1中、比較合成例1〜13の含有率(S)は、式(1)で表される基を有する単量体単位以外の、シリル基を有する単量体単位の含有率も含む。
Figure 0005834000
<スケール付着防止剤の製造と評価>
[実施例1]
撹拌機、還流冷却管を備え付けた1Lセパラブルフラスコに、水95部を加えた。撹拌下、上記調製したPVA1を5部加えた後、内温を90℃まで上げた。2時間後内温を30℃まで下げ、5質量%のスケール付着防止剤を調製した。当該スケール付着防止剤のpHは6.0であった。
[実施例2〜24及び比較例1〜16]
実施例1において用いたPVA1に代えて、表2に示したPVAを用いたこととpHを表2に示した値に変更した以外は、実施例1と同様にして以下の評価を実施した。その結果を表2に併せて示す。
<評価>
下記の評価方法により、粘度安定性、皮膜の耐水性、並びに重合反応器内壁へのスケール付着抑制性及びポリ塩化ビニル生成物中への異物混入抑制性を評価した。なお、表2中、※1は、PVAが水溶液に対して完全に溶解しないため、評価できなかったことを示す。また表2中、※2は、スケール付着防止剤調製時に酢酸を少量添加することによりpHを調整したことを示し、※3は、スケール付着防止剤調製時に水酸化ナトリウムを少量添加することによりpHを調整したことを示し、※4は、スケール付着防止剤調製時に塩酸を少量添加することによりpHを調整したことを示す。
[スケール付着防止剤の粘度安定性]
水92部及びPVA1を8部とした以外は実施例と同様にして8質量%のスケール付着防止剤を調製して評価に用いた。このスケール付着防止剤を20℃恒温槽中に放置し、このスケール付着防止剤の温度が20℃になった直後の粘度と7日後の粘度を測定した。スケール付着防止剤の温度が20℃になった直後の粘度で7日後の粘度を除した値(7日後の粘度/直後の粘度)を求め、これを粘度比(倍)とし、以下の基準にしたがって判定した。
A:2.5倍未満
B:2.5倍以上3.0倍未満
C:3.0倍以上5.0倍未満
D:5.0倍以上であるが、スケール付着防止剤はゲル化していない
E:スケール付着防止剤は流動性を失いゲル化している
[皮膜の耐水性]
上記実施例で調製した5質量%のスケール付着防止剤を20℃で流延し、厚み40μmの皮膜を得た。得られた皮膜を60℃で10分間熱処理した後、縦10cm、横10cmの大きさに切り出し、試験片を作製した。この試験片を20℃の蒸留水に24時間浸漬した後、取り出し(回収し)、表面に付着した水分をガーゼで拭き取り、水膨潤時の質量を測定した。水膨潤時の質量を測定した試験片を105℃で16時間乾燥した後、乾燥時の質量を測定した。ここで水膨潤時の質量を乾燥時の質量で除した値を求めてこれを膨潤度(倍)とし、以下の基準にしたがって判定した。
S:2.5倍未満
A:2.5倍以上5.0倍未満
B:5.0倍以上8.0倍未満
C:8.0倍以上10.0倍未満
D:10.0倍以上
E:浸漬した試験片を回収することができない
(重合反応器内壁への塗布)
グラスライニング製100Lオートクレーブ内壁面に、上記実施例1で調製した5質量%のスケール付着防止剤をスプレーで塗布し、ジャケット温度60℃にて、5分間乾燥後、十分水洗した。塗布量が固形分で、0.1g/mになるように塗布した。
(塩化ビニルの懸濁重合)
上記実施例で調製した5質量%のスケール付着防止剤を塗布した上記グラスライニング製オートクレーブに、脱イオン水に0.075質量%の分散安定剤を溶解させた水溶液40部及びジイソプロピルパーオキシジカーボネートの70質量%トルエン溶液0.04部を仕込んだ。上記分散安定剤は重合度2,000、けん化度80モル%の未変性PVAであった。オートクレーブ内を0.0067MPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニル単量体30部を仕込み、撹拌下、57℃に昇温して重合を行った。重合開始時、オートクレーブ内の圧力は0.83MPaであったが、重合開始7時間後に0.44MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体をパージし、内容物を取り出し、内壁を軽く水洗した。
[スケール付着抑制性]
上記重合反応後、重合体スラリーを重合反応器外に取り出した後に、重合反応器内壁におけるスケール付着の状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
A:スケールの付着が全くない
B:スケールの付着がほとんどない
C:重合反応器内壁にスケールが確認できる
D:重合反応器内壁にスケールが多く確認できる
E:重合反応器内壁にスケールが極めて多い
[ポリ塩化ビニル生成物中への異物混入抑制性]
重合体スラリーを65℃で乾燥後、得られたポリ塩化ビニル100gをケント紙上に広げ、異物混入数を目視で計測した。
A:0個
B:1〜2個
C:3〜4個
D:5個以上
Figure 0005834000
表2に示されるように、実施例1〜24で調製したスケール付着防止剤(PVA1〜23)は、十分な取扱性及び粘度安定性を有し、耐水性の高い皮膜を得ることができ、重合反応器内壁への高いスケール付着抑制性により、ポリマー生成物中への異物の混入を低減できることが分かる。ここで、粘度安定性はD以上であれば実用上十分な粘度安定性を有しているとし、他の3項目が全てC以上であることがより優れている評価とする。さらに、PVAの粘度平均重合度(P)、けん化度、単量体単位の構造、含有率(S)、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)及び水溶液のpHを特定した、実施例1、10、11、17〜20、22のスケール付着防止剤は、粘度安定性、得られた皮膜の耐水性、重合反応器内壁へのスケール付着抑制性に特に優れ、ポリマー生成物中への異物の混入を効果的に抑制できる(粘度安定性がB以上の評価であり、他の3項目中、2項目以上がAであり、その他がBである)。なお、実施例3、6、8、9、13、14、16、24のスケール付着防止剤は、得られた皮膜の耐水性、重合反応器内壁へのスケール付着抑制性、異物混入抑制性が若干低下することが分かる(粘度安定性以外の3項目中、一項目以上がCである。)これは粘度平均重合度(P)やけん化度、pHの低下、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)が小さく、または大きくなること等に起因していると考えられる。
一方、PVAが規定の要件を満たさない場合(比較例1〜16)、実用上十分な取扱性及び粘度安定性を有さなかったり、得られた皮膜の耐水性、重合反応器内壁へのスケール付着抑制性等が低下することが分かる。
本発明のスケール付着防止剤は、十分な取扱性及び粘度安定性を有し、耐水性の高い皮膜を得ることができ、重合反応器内壁への高いスケール付着抑制性により、ポリマー生成物中への異物の混入を低減できる。

Claims (9)

  1. 下記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、下記式(I)を満たすビニルアルコール系重合体を含有し、pHが4以上8以下の水溶液からなるスケール付着防止剤。
    Figure 0005834000
    (式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Rは、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。R〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。mは、0〜2の整数である。nは、3以上の整数である。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。)
    20≦P×S≦6,000 ・・・(I)
    P:粘度平均重合度
    S:上記単量体単位の含有率(モル%)
  2. 上記ビニルアルコール系重合体が、下記式(II)及び(III)をさらに満たす請求項1に記載のスケール付着防止剤。
    200≦P≦4,000 ・・・(II)
    0.1≦S≦10 ・・・(III)
    P:粘度平均重合度
    S:上記単量体単位の含有率(モル%)
  3. 上記式(1)におけるnが6〜20の整数である請求項1又は請求項2に記載のスケール付着防止剤。
  4. 上記単量体単位が下記式(2)で表される請求項1、請求項2又は請求項3に記載のスケール付着防止剤。
    Figure 0005834000
    (式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、式(1)と同様である。Xは、直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。Rは、水素原子又はメチル基である。)
  5. 上記式(2)におけるXが下記式(3)で表される請求項4に記載のスケール付着防止剤。
    −CO−NR−* ・・・(3)
    (式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)
  6. 上記式(3)におけるRが水素原子であり、上記式(2)におけるnが3〜12の整数である請求項5に記載のスケール付着防止剤。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のスケール付着防止剤が内壁に塗布された重合反応器を用いて重合反応を行うポリマーの製造方法。
  8. 上記重合反応が懸濁重合又は乳化重合である請求項7に記載のポリマーの製造方法。
  9. ポリ塩化ビニルの製造に用いる請求項7又は請求項8に記載のポリマーの製造方法。
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