発明の分野
本発明は一般に、分子生物学そしてより特定的にはミスマッチエンドヌクレアーゼ酵素及び関連する核酸分子の集団を生成する方法又は単一ヌクレオチド多形現象の検出におけるそれらの使用に関する。
背景情報
DNAシャッフリングは、加速された形で進化させるべく2つ以上のDNA配列間の組換え体を得るための強力な手段である。DNAシャッフリングプロセスのための親DNAつまり入力DNAは、標準的に、野生型に比べていくつかの改善された特性をもつ一定の与えられた遺伝子の突然変異体又は変異体である。DNAシャッフリング産物は、新しい配列組合せの結果としてもたらされる加法的又は相乗的効果についてその後分析することのできる親核酸からの遺伝子配列の基本的にランダムである再集合のプールを表わしている。
再帰的な配列再集合(Recursive sequence reassortment)というのは、適切な特性をもつ変異体のみが、次世代の産生に対し自らの遺伝子物質を寄与することを許されている進化プロセスと類似である。DNA−シャッフリングを媒介にした配列再集合とそれに続く性能の増分的改善についての試験を通して、最適化された変異体が生成される。再集合と試験の付加的なサイクルは、プロセスの以前のラウンドにおいて識別された遺伝的改善の新しい組合せを含有する遺伝子の生成を導く。有益な遺伝的変化を再集合し組合せることで、考えられる配列組合せ全てを個別に生成しスクリーニングする必要なく、最適化された配列を発生させることができる。
シャッフリングは、すでに改善された配列に対するその後の改善が大方偶然の発見の結果としてもたらされるランダム突然変異誘発とは、はっきりと異なっている。例えば、所望の1組の増強された特性をもつタンパク質を得るためには、さまざまな有益な突然変異の組合せを含む突然変異体を同定することが必要となるかもしれない。これらの有益な遺伝的変化を組合せるためのプロセスが全く利用可能でない場合、さらなるランダム突然変異誘発が必要とされることになる。しかしながら、ランダム突然変異誘発は、数多くの突然変異体を生成しスクリーニングする反復的サイクルを必要とし、結果として、単調できわめて労働集約型のプロセスをもたらす。その上、配列が望ましくない効果をもつ突然変異を受ける率は、配列の情報量と共に増大する。従って、情報量、ライブラリサイズ及び突然変異誘発率が増大するにつれて、有益な突然変異に対する有害な突然変異の比は増大することになり、さらなる改善の選択を増々隠ぺいする。最後に、一部のコンピュータシミュレーションから、点突然変異誘発単独では、連続した劇的な配列進化に必要とされる大規模ブロック変化を可能にするには漸進的すぎることが多い可能性があるということが示唆されている。
変異性(error-prone)PCRでは、1つの配列上でランダムに低レベルの点突然変異を導入するために、低忠実度重合条件が使用される。しかしながら、この方法に対する1つの制約条件は、公表された変異性PCRプロトコルがポリメラーゼの伸長性が低いという欠点を有し、このため、平均的なサイズの遺伝子においてランダム突然変異誘発を生成する上でこのアプローチは効果のないものになっている、ということにある。
オリゴヌクレオチド特異的ランダム突然変異誘発においては、短かい配列が合成的に突然変異誘発されるオリゴヌクレオチドで置換される。遠位突然変異の組合せを生成するためには、異なるオリゴヌクレオチドにより異なる部位に同時に対処しなければならない。この要領で得られるライブラリサイズは全部位を飽和するのに必要とされるライブラリサイズに比べて制限されたものであることから、最適化のために多数の選択ラウンドを要求することが必要となる。合成オリゴヌクレオチドでの突然変異誘発には、各々の選択ラウンドの後の個々のクローンの配列決定とそれに続く、それらの系統群分類、単一系統群の任意選択及びコンセンサスモチーフへの縮小が必要である。かかるモチーフは、再合成され単一の遺伝子内に再挿入され、その後付加的に選択される。この段階は、統計上の障害を作り出し、労働集約型で、数多くの合成ラウンドにとっては実用的でない。
これらの理由から、例えば配列微調整用といったような比較的少ない配列改変サイクルを必要とする突然変異誘発プロトコルのためには、変異性PCR及びオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を使用できるが、特に大型遺伝子配列上の数多くの突然変異及び選択サイクルを必要とする手順についてのその有用性には限界がある。
上述の通り、ランダムに突然変異を受けた遺伝子から改良型遺伝子産物を産生するための従来の方法の実用性には限界がある。ランダムに再集合された遺伝子配列を産生するための1つの認知された方法は、長いヌクレオチド鎖をさらに短かい断片に分割するために酵素を使用する。分割作用物質はこのとき、遺伝物質から分離され、遺伝物質は、それがポリヌクレオチドの鎖として再構築できるような形で増幅され、ここでこれらの再構築は、ランダムであるか又は特定の順序に従ったものである。該方法には、ランダムフラグメントへと破断された遺伝子変異体を組立てるために数ラウンドの増幅が必要である((Stemmer, 1994a; Stemmer, 1994b)米国特許第5,605,793号、米国特許第5,811,238号、米国特許第5,830,721号、米国特許第5,928,905号、米国特許第6,096,548号、米国特許第6,117,679号、米国特許第6,165,793号、米国特許第6,153,410号)。この方法の変形形態では、再構築に先立ちフラグメントを生成するために、プライマ及び制限されたポリメラーゼ拡張が用いられる(米国特許第第5,965,408号、米国特許第6,159,687号)。
しかしながら、両方の方法共限界がある。これらの方法は、技術的に複雑であるという点に欠点がある。このことは、充分に経験あるスタッフを有する施設に対するこれらの方法の応用可能性を制限する。さらに、意図されない突然変異誘発やサイズが増大する大型標的分子の再構築の難易度の増加を含めたフラグメントからの分子の再構築から生じる複雑さが存在し、このことは長いポリヌクレオチドストランドを再構築するためのこれらの方法の有用性を制限する。
フラグメント化及び再構築ベースの遺伝子シャッフリングのこれらの方法がもつもう1つの限界には、親テンプレートポリヌクレオチドの非相同が増大する場合に遭遇する。これらのプロセスのアニーリング段階においては、小さなポリヌクレオチドフラグメントは、適切にアニールするのに塩基対合相互作用の結果得られる安定化力に依存している。小さなアニーリング領域は、その短かい長さに起因して安定化力に制限があることから、相補性の高い配列のアニーリングが、より発散的配列に比べて有利とされる。このようなケースでは、これらの方法は、特定の親テンプレートからの相補的1本鎖のアニーリングに起因して親テンプレートポリヌクレオチドを再生する強い傾向を有する。従って、親テンプレートは、基本的に、自ら再構築して、組換え型分子の検出難易度を増大させるライブラリ内の未変化のポリヌクレオチドのバックグラウンドを作り出す。この問題は、親テンプレートがさらに非相同になるにつれて、つまり親テンプレート間の配列同一性百分率が減少するにつれて、増々重大になる。この成果は、Patten et al., 1997; Crameri et al., 1998; Harayama, 1998; Kumamaru et al., 1998; Chang et al., 1999; Hansson et al., 1999)、によって報告された系統群シャッフリング方法を用いてxyIE及びnahHの間で組換え体を生成することを試みたKikuchi et al., (Gene 243 : 133-137, 2000)によって実証された。Kikuchi et al.,は、基本的にいかなる組換え体(<1%)も生成されないことを発見した。彼らは又、1本鎖DNAのフラグメント化及び再構築によってキメラ遺伝子の形成を改善するための方法をも開示した。
組換え体の低効率回収という特徴は、より低い配列同一性百分率をもつ親テンプレートすなわち、さらに多様である親テンプレートから新規ポリヌクレオチドを生成するためのこれらの方法の有用性を制限している。
従って、これらのニーズに対処する遺伝子配列生成方法に対するニーズが存在している。ヘテロ2本鎖分子を形成し次に、ミスマッチ部位における配列情報が1本のストランドからもう1本のストランドへと移送されるような形でミスマッチに対処することによって、in vitroで関連するポリヌクレオチドの中から突然変異を再集合するための方法が開発されてきた。ミスマッチは、a)ミスマッチ部位で配列ストランドを認識しニックする酵素、b)dNTPの存在下でのプルーフリーディング活性をもつポリメラーゼ及びc)リガーゼを含有する反応の中でヘテロ2本鎖分子をインキュベートすることによって対処される。これらのそれぞれの活性は、一定の与えられたミスマッチ部位でヘテロ2本鎖がニックされ、不対合塩基がストランドのうちの1本から切除され次にテンプレートとして反対側のストランドを用いて置換され、ニックが密封されるような形で、一斉に作用する。出力ポリヌクレオチドは、クローニングの前に増幅されるか、又は、直接クローニングされて物性の改善についてテストされる可能性がある。ミスマッチ解消再集合及び試験の付加的サイクルにより、さらなる改善が導かれるかもしれない。
この方法では、核酸配列の相対するストランドに沿った1つの塩基又は、一列の塩基配列の間のミスマッチの部位における認識及びニッキング能力をもつミスマッチエンドヌクレアーゼが利用されている。
ミスマッチを認識することになる酵素に対処するために、我々は、CELI酵素及びRES Iと呼ばれる新規の酵素について遺伝子をクローニングした。これらの酵素は両方共ミスマッチエンドヌクレアーゼであり、共に、染色体、プラスミド、遺伝子、遺伝子の一部分又は核酸の任意の人工配列といったような核酸配列に沿った塩基対ミスマッチを認識するのに特に適している。
発明の要約
本発明は、1つのヌクレオチド配列内の塩基ミスマッチを検出し塩基ミスマッチの部位で配列をニックする能力をもつ酵素CEL I及びRES Iを提供する。これらの酵素は、それらが発生する未変性植物から得られる。本明細書では、宿主主体内にクローニングすることにより宿主主体内の組換え型酵素としてそれらを作る方法が提供されている。
CEL I及びRES Iは、新しい遺伝子を開発するための遺伝子シャッフリング技術、及びガン罹病性の証拠を検出するための単一ヌクレオチド多形(SNP)検出において有用である。
同様に提供されているのは、遺伝子コピー数を増幅するか又はプラスミド又はウイルスベクター内で酵素をコードさせることになる宿主主体まで移送するため、プラスミド又はウイルスベクター内にCEL I及びRES I遺伝子をクローニングする方法である。
同様に提供されているのは、CEL I及びRES IKZを植物宿主にする方法である。
CEL I及びRES I核酸配列は、ブタペスト条約に基づいてATCCに寄託された。
同様に提供されているのは、ヘテロ2本鎖分子を形成し次に、ミスマッチ部位における配列情報が1本のストランドからもう1本のストランドへと移送されるような形でミスマッチに対処することによって、in vitroで関連するポリヌクレオチドの中から突然変異を再集合するための、CEL I及びRES Iを用いる方法についての完全な記述である。ミスマッチは、ミスマッチを認識し、ミスマッチ部位で配列ストランドの1本をニックする酵素、dNTPの存在下でのプルーフリーディング活性をもつポリメラーゼ及びリガーゼを含有する反応の中でヘテロ2本鎖分子をインキュベートすることによって対処される。これらのそれぞれの活性は、一定の与えられたミスマッチ部位でヘテロ2本鎖がニックされ、不対合塩基がストランドのうちの1本から切除され次にテンプレートとして反対側のストランドを用いて置換され、ニックが密封されるような形で、一斉に作用する。出力ポリヌクレオチドは、クローニングの前に増幅されるか、又は、直接クローニングされて物性の改善についてテストされる可能性がある。ミスマッチ解消再集合及び試験の付加的サイクルにより、さらなる改善が導かれるかもしれない。
該方法は、少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を有するヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列内の相補的塩基対数を増大させる方法としても記述されており、該方法には、CEL I又はRES I酵素によって提供される有効量のミスマッチ特異的ストランド分割活性、プルーフリーディング活性及びリガーゼ活性をもつヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列を混合する段階、及び多数の非相補的ヌクレオチド塩基対が相補的塩基対へと転換されるのに充分な時間経過させる段階が含まれここでストランド間の相同性は、少なくとも1つの相補的塩基対によって増大する。
該方法は同様に、少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を有するヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列から配列変異体の集団を作るin vitro方法としても記述されており、該方法には、CEL I又はRES I酵素によって提供される有効量のミスマッチ特異的ストランド分割活性、プルーフリーディング活性及びリガーゼ活性をもつヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列のコピーを混合する段階、及び多数の非相補的ヌクレオチド塩基対が相補的塩基対へと転換されるのに充分な時間経過させる段階が含まれここで多様なポリヌクレオチド配列集団が結果としてもたらされる。
該方法は同様に、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチド配列を得るin vitro方法としても記述され、該方法には、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列を調製する段階;CEL I又はRES I酵素によって提供される有効量のミスマッチ特異的ストランド分割活性、プルーフリーディング活性及びリガーゼ活性とヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列のコピーを混合する段階;ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列のストランド間の相補性百分率が増大できるのに充分な時間経過させる段階(ここで集団内の配列多様性は増大する);及び所望の機能的特性について、変異体集団をスクリーニング又は選択する段階、が含まれる。
該方法は同様に、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチドを得るin vitro方法としても記述されており、これには、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;CEL I又はRES I酵素によって提供される有効量のミスマッチ特異的ストランド分割活性、プルーフリーディング活性及びリガーゼ活性とヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列のコピーを混合する段階;ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列内のミスマッチヌクレオチド塩基対の一部分又は全てが相補的塩基に転換されるのに充分な時間経過させる段階(なおここで多様なポリヌクレオチド配列集団が結果としてもたらされる);所望の機能的特性を有する変異体集団についてスクリーニング又は選択する段階;1本鎖ポリヌクレオチド配列の集団を得るために前記変異体集団を変性する段階;多様なヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列を形成するべく前記1本鎖ポリヌクレオチド配列集団をアニールする段階;有効量のミスマッチ特異的ストランド分割活性、プルーフリーディング活性及びリガーゼ活性とヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列を混合する段階;ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列内のミスマッチヌクレオチド塩基対の一部分又は全てが相補的塩基に転換されるのに充分な時間経過させる段階(なおここで多様なポリヌクレオチド配列集団が結果としてもたらされる);及び所望の機能的特性を有する変異体集団についてスクリーニング又は選択する段階が含まれる。DNAは、DNAの転写によりスクリーニングに先立ってRNAに変換され得る。プルーフリーディングの後にストランドを密封するべくリガーゼ活性を添加することができる。
この方法の利点の1つは、配列が環状又は線状のいずれかであるという点にある。これにより、ほぼ無制限の配列長のシャッフリングが可能となる。変異体ポリヌクレオチド配列は、異なる量の相補性をもつ。我々は、47%という低い配列相同性で2つのポリヌクレオチドの間のポリヌクレオチドヘテロ2本鎖の相補性が増大することを報告している。
このプロセスは、数多くの部位で同時に、そして一定の与えられたヘテロ2本鎖DNA分子のいずれかのストランド上で発生し得る。結果は、出発配列の集団よりも多様である配列変異体の集団を提供するための入力ストランド間の配列差のランダム化である。
もう1つの実施形態においては、所望の機能的特性をもつタンパク質をコードする再集合されたDNA分子を同定する方法には、少なくとも1つの1本鎖ウラシル含有DNA分子を提供する段階であってこの1本鎖ウラシル含有DNA分子又はその相補的ストランドが1つのタンパク質をコードする段階;1本鎖ウラシル含有DNA分子に対しハイブリダイズする能力をもつ単数又は複数の同一でない1本鎖DNA分子を提供する段階(なお、前記DNA分子は該タンパク質の少なくとも1つの付加的な変異体をコードする);1本鎖ウラシル含有DNA分子と段階(b)の少なくとも1つの1本鎖DNA分子を接触させ、かくしてアニールされたDNA分子を産生する段階;ミスマッチエンドヌクレアーゼプルーフリーディングポリメラーゼ及びリガーゼと共にアニール済みDNA分子をインキュベートし、かくしてウラシル含有DNA分子にアニール済みの配列再集合されたDNAストランドを産生する段階;ウラシル含有DNA分子が増幅されない条件下で再集合されたDNAストランドを増幅し、かくして再集合されたDNA分子の集団を産生する段階;及び所望の機能的特性をもつポリペプチドをコードするものを同定するべく、再集合されたDNA分子の集団をスクリーニング又は選択し、かくして、所望の機能的特製をもつポリペプチドをコードする単数又は複数のDNA分子を同定する段階が含まれる。このプロセスも同様に、テンプレートとしてRNA分子を用いて行なうことができる。
1実施形態においては、CEL Iは、配列番号01、配列番号02又は配列番号03又は配列番号04の核酸配列を含む核酸分子である。
もう1つの実施形態においては、配列番号01又は配列番号02又は配列番号03又は配列番号04によって表わされるようなCEL Iの核酸配列を含む組換え型ウイルスが提示されている。
もう1つの実施形態においては、配列番号01又は配列番号02又は配列番号03又は配列番号04によって表わされるようなCEL Iの核酸配列を含む組換え型プラスミドが提示されている。
もう1つの実施形態においては、配列番号01又は配列番号02又は配列番号03又は配列番号04によって表わされるようなCEL Iの核酸配列をコードする組換え型ウイルスを含む植物又は植物細胞が提示されている。
もう1つの実施形態においては、配列番号01又は配列番号02又は配列番号03又は配列番号04によって表わされるようなCEL Iの核酸配列をコードする組換え型プラスミドを含む植物又は植物細胞が提示されている。
もう1つの実施形態においては、組換え型ウイルスは、植物ウイルス、動物ウイルス、真菌ウイルス又は細菌ウイルスである。
もう1つの実施形態においては、組換え型ウイルスを用いてCEL Iエンドヌクレアーゼを発現する方法が提示されている。
もう1つの実施形態では、ヘテロ2本鎖が少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を有する、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドから配列変異体を作るin vitro方法の中でCEL Iを使用する方法において、
a. 少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;
b. 有効量のCEL I、T4DNAポリメラーゼ及びT4DNAリガーゼと前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合わせる段階、及び
相補性百分率を増大させるのに充分な時間経過させる段階(ここで単数又は複数の変異体が作られる)、
を含んで成る方法。
1実施形態においては、RES Iは、配列番号16の核酸配列を含む核酸分子である。配列番号34のRES Iアミノ酸配列が提示されている。
もう1つの実施形態では、配列番号16により表わされているようなRES Iの核酸配列を含む組換え型ウイルス。
もう1つの実施形態では、配列番号16により表わされているようなRES Iの核酸配列を含む組換え型ウイルス。
もう1つの実施形態では、配列番号16により表わされているようなRES Iの核酸配列をコードする組換え型ウイルスを含む植物又は植物細胞。
もう1つの実施形態では、配列番号16により表わされているようなRES Iの核酸配列をコードする組換え型プラスミドを含む植物又は植物細胞。
もう1つの実施形態においては、組換え型ウイルスは、植物ウイルス、動物ウイルス、真菌ウイルス又は細菌ウイルスである。
もう1つの実施形態においては、組換え型ウイルスを用いてRES Iエンドヌクレアーゼを発現する方法が提示されている。
もう1つの実施形態では、ヘテロ2本鎖が少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を有する、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドから配列変異体を作るin vitro方法の中でRES Iを使用する方法において、
a. 少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;
b. 有効量のRES I、T4DNAポリメラーゼ及びT4DNAリガーゼと前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合わせる段階、及び
相補性百分率を増大させるのに充分な時間経過させる段階(ここで単数又は複数の変異体が作られる)、
を含んで成る方法。
定義
本明細書で各用語に対し与えられた範囲を含めて、明細書及びクレームを明確かつ一貫性をもって理解できるようにするために以下の定義が提供される。
本明細書に使用されているように、「増幅」という語は、ポリヌクレオチドのコピー数が増大されるプロセスを意味する。
本明細書で使用されている「アニーリング」という語は、少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションによる少なくとも部分的に2本鎖である核酸の形成を意味する。部分的に2本鎖である核酸は、比較的小さい核酸ストランドのさらに長い核酸ストランドへのハイブリダイゼーションに起因する可能性があり、ここで小さい方の核酸はより大きい核酸の一部分と100%同一である。部分的に2本鎖である核酸は同様に、100%の同一性を共有しないものの特定のハイブリダイゼーション条件一式の下でハイブリダイズするのに充分な相同性をもつ2つの核酸ストランドのハイブリダイゼーションに起因する可能性もある。
本明細書で使用されているように、「クランプ」という語は、PCRプライマへのクランプ配列の取込みなどによりポリヌクレオチドの一端部に付加されたユニークなヌクレオチド配列を意味する。クランプ配列は、異なる親(すなわちヘテロ2本鎖分子)からのストランドのハイブリダイゼーションから生じるポリヌクレオチドのみの増幅を可能にし、かくして以前に記述されたような(Skarfstad, J. Bact, 第182巻, No11, P3008〜3016)全長ハイブリッド産物の産生を確保するように意図されている。
本明細書で使用されている「分割する」という語は、酵素でポリヌクレオチドを消化すること、又そうでなければポリヌクレオチド内部のホスホジエステル結合を破断することを意味する。本明細書で使用されている「ストランド分割活性」又は「分割」という語は、ニック形成の場合のように、ポリヌクレオチドストランドのバックボーン内でのホスホジエステル結合の破断を意味する。ストランド分割活性は酵素作用物質によって提供され得る。かかる作用物質には、CEL I、RES I及びそれらの変異体が含まれる。
本明細書で使用されているように、「相補的塩基対」という語は、1本のストランド内のアデニンがもう1本のストランド内の相対するチミン(又はウラシル)であり、1本のストランド内のシトシンがもう1本のストランド内の相対するグアニンであるような2重らせん内のDNA(又はRNA)塩基の対応を意味する。
本明細書で用いられている「〜に相補的な」という語は、ここでは、相補的配列が基準ポリヌクレオチド配列の全て又は一部分の逆補体と同一であること又は1本のストランド内の各ヌクレオチドが相対するストランド内の1つのヌクレオチド又はその類似体と1つの塩基対を形成できることを意味するものとして使用されている。例示を目的として、ヌクレオチド配列「TATAC」は、基準配列「GTATA」と相補的である。
本明細書で使用されているように、「変性する」又は「変性された」という語は、核酸に関して用いられる場合、2本鎖核酸の1本鎖核酸への転換を意味する。2本鎖核酸の変性方法は、当業者にとって周知であり、例えば塩基対合を不安定にする作用物質の添加、温度上昇、塩の低減又はそれらの組合せを含む。これらの因子は、ストランドの相補性に従って、つまりストランドが100%の相補性をもつか又は単数又は複数の非相補的ヌクレオチドを有するかに応じて適用される。
本明細書で使用される「所望の機能的特性」という語は、ポリペプチドのコード化、リンクされたポリヌクレオチドの転写の促進、タンパク質の結合、ウイルスベクターの機能の改善などを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)選択又はスクリーニング可能な表現型特性を意味している。このような所望の機能的特性をもつポリヌクレオチドは、適切な植物、動物、真菌、酵母又は細菌発現ベクターからの発現、遺伝子導入植物、動物又は微生物を形成するための組込み、リボザイムの機能などを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)数多くの方法で使用可能である。
本明細書で用いられる「DNAシャッフリング」という語は、ここでは、実質的に相同であるものの同一でない配列の間の配列情報の再集合を表わすために使用されている。
本明細書で用いられる「有効量」という語は、作用物質がその所望の活性を提供するのに必要である作用物質の量を意味する。本発明については、この決定は当業者の知識範囲内に充分入るものである。
本明細書で使用されている「宿主」という語は、ベクター又は植物ウイルス核酸を複製する能力をもちかつウイルスベクター又は植物ウイルス核酸を含むウイルスによる感染を受ける可能性のある細胞、組織又は生体を意味する。この語は、該当する場合、原核及び真核細胞、器官、組織又は生体を含むように意図されている。
本明細書で使用されているように、「感染」という語は、ウイルス核酸が複製され、ウイルスタンパク質が合成され、新しいウイルス粒子が組立てられる、1つの宿主に対しその核酸を移送するか又は宿主内にウイルス核酸を導入するウイルスの能力を意味する。この情況では、「伝染性」及び「感染性」という語は、本明細書で互換的に用いられている。
本明細書で使用される「変性」という語は、1)ORSV及びブロムモザイクウイルスといったような植物ウイルスプロモータ、2)ヒトシンドビスウイルスプロモータといったようなその他の生体からのウイルスプロモータ及び3)合成プロモータを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)サブゲノムmRNAの産生を促進するあらゆるRNA配列を意味する。
本明細書で使用されている「表現型形質」という語は、1つの遺伝子の発現の結果得られる観察可能な特性を意味する。
本明細書で用いられる「植物細胞」という語は、プロトプラスト及び細胞壁から成る構造的及び生理的植物単位を意味する。
本明細書で用いられる「植物器官」という語は、根、茎、葉又は胚といった植物のはっきりとした、目に見えて分化した部分を意味する。
本明細書で用いられる「植物組織」という語は、in planta又は培養中の植物のあらゆる組織を意味する。この語は、構造的及び機能的単位へと組織された植物細胞の任意のグループ、又は植物全体、植物細胞、植物器官、プロトプラスト、細胞培養を内含するように意図されている。
本明細書で使用する通りの「産生細胞」という語は、ベクター又はウイルスベクターを複製する能力を有するものの必ずしもそのウイルスに対する宿主ではない細胞、組織又は生体を意味する。この語は、細菌、酵母、真菌及び植物組織といったような原核及び真核細胞、器官、組織又は生体を内含するものとして意図されている。
本明細書で用いられる「プロモータ」という語は、コーディング配列の転写の開始に関与するコーディング配列に隣接する5′−フランキング、非コーディング配列を意味する。
本明細書で用いられる「プロトプラスト」という語は、細胞培養又は全植物への再生の潜在能をもつ、細胞壁の無い単離された植物細胞を意味する。
本明細書で用いられる「組換え型植物ウイルス核酸」という語は、変性核酸配列を含有するように修飾された植物ウイルス核酸を意味する。
本明細書で用いられる「組換え型植物ウイルス」という語は、組換え型植物ウイルス核酸を含有する植物ウイルスを意味する。
本明細書で用いられる「サブゲノムプロモータ」という語は、ウイルス核酸のサブゲノムmRNAのプロモータを意味する。
本明細書で用いられる「実質的配列相同性」という語は、互いに実質的に機能的に等価であるヌクレオチド配列を意味する。実質的配列相同性をもつこのような配列の間のヌクレオチドの差異は、かかる配列によりコードされるRNA又は遺伝子産物の機能に影響を及ぼすという点ではあまり重要でない。
本明細書で用いられる「転写」という語は、DNA配列の相補的コピーとしてのRNAポリメラーゼによるRNA分子の産生を意味する。
本明細書で用いられる「ベクター」という語は、細胞間にDNAセグメントを移送する自己複製DNA分子を意味する。
本明細書で用いられる「ウイルス」という語は、タンパク質内で包膜された核酸から成る感染性作用物質を意味する。ウイルスは、以上で記述されているように、1−、2−、3−又はマルチパータイトウイルスであり得る。
本明細書で用いられる「ミスマッチ解消による遺伝的再集合(GRAMMR)」という語は、2つの同一でないポリヌクレオチドからヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを作り;1本のストランド内で塩基対ミスマッチ部位又はその近くでニックを導入し;ニックが発生したミスマッチ部位からミスマッチ塩基(単複)を除去し;第1のストランド内の塩基(単複)を相補的塩基で除去した塩基(単複)を置換するべくテンプレートとして相対するストランドを使用することによって、非同一性ポリヌクレオチド配列間で配列変動を再分配するin vitro方法により、関連するポリヌクレオチドの間の配列変動を再集合するための方法を意味する。この方法により、ミスマッチ部位において1つのストランドからもう1つのストランドまで情報が移送される。
このプロセスでは部分的に相補的な分子内の多重部位に独立した形で同時に対処することができる。その結果、ポリヌクレオチド配列内の相補的塩基対百分率は増加する。
ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列の2本のストランド間の単数又は複数の塩基対ミスマッチは、該ミスマッチのうちの単数又は複数のものを解消させるべく、有効量のCEL I又はRES I酵素により提供されるミスマッチ特異的ストランド分割活性、プルーフリーディング活性及びリガーゼ活性とヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列を混合するin vitro方法によって解消される。この方法により、ミスマッチの部位において、1本のストランドからもう1本のストランドまで情報が移送される。
ミスマッチは、互いに相対して発生する2つの非相補的塩基の結果であり得る。ミスマッチ部位は、隣接するミスマッチによって不安定にされるヌクレオチド塩基対を含めた任意の数の不対合ヌクレオチドのクラスタで構成され得る。ミスマッチは同様に、相対するストランド上に数値的相対物をもたない1本のストランド上で単数又は複数の塩基が発生した結果でもありうる。例えばミスマッチの部位において、1本のストランド上に1つの不対合塩基が存在しもう1本のストランド上には不対合塩基が全く存在しない可能性がある。この結果、その部位で1つのストランド内に単一の不対合ヌクレオチドが収納されている配列長非相同性部位がもたらされることになる。このミスマッチ部位で最初にニックされるストランドに応じて、本発明のプロセスは、より短かいストランドとの関係における単一の塩基の挿入か、又は当初追加の不対合ヌクレオチドを有していたストランドとの関係における単一の塩基対の欠失のいずれかの結果をもたらすことになる。1本のストランドからもう1本のストランドへの配列長情報の移送というこの原理は、2本のストランド上の不対合塩基数が互いに等しくないあらゆるミスマッチ部位に適用可能である。
通常、反応の中には、ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドの数多くのコピーが存在する。この状況において、ミスマッチ部位における配列情報は、ポリヌクレオチドの1つのコピー上の上部ストランドから及びもう1つのコピー内の下部ストランドからテンプレートされ得る。充分な数のコピーが利用可能であると仮定すると、単一のミスマッチが存在する場合には2つの出力変異体が可能である。2つのミスマッチ部位が存在する場合には、2変異体×2が結果としてもたらされる可能性がある。n個のミスマッチ部位が存在する場合には、1回のミスマッチ解消につき少なくとも2乗〜n乗つまり2nの直伝的再集合が可能である。考えられる結果は、少なくとも2n個の変異体ポリヌクレオチドである。ここで少なくともと言っているのは、正確なメカニズムが完全に理解されていないからである。長さ2塩基以上のミスマッチ部位については、個々の事象が1個、2個又はそれ以上のミスマッチ対をテンプレートし得ると推測することができる。その場合には、変異体の推定数が増大する結果となるだろう。
本明細書で用いられる「GENEWARE」又は「GENEWARE(登録商標)」という語は、少なくとも部分的にトバモウイルスから誘導され付加的な(通常は非相同な)サブゲノムプロモータを含有するべく修飾されたウイルスベクターを意味する。天然に見られるトバモウイルスは、標準的に運動タンパク質及び外皮タンパク質のためのサブゲノムプロモータを含有する。GENEWARE(登録商標)は、Large Scale Biology社の登録商標である。
本明細書で用いられる「粒度」という語は、一定の与えられた子孫ポリヌクレオチド内で隣接配列として発生する一定の与えられた親ポリヌクレオチド配列からの核酸の配列情報量を意味する。
本明細書で用いられる「テンプレート配列」という語は、GRAMMRの遺伝情報の移送を結果としてもたらすように第2のポリヌクレオチド配列に対し部分的相補性をもつ第1の1本鎖ポリヌクレオチド配列を意味する。
テンプレートストランドから移送される配列情報単位が大きくなればなるほど、粒度は高くなる。テンプレートストランドから移送される配列情報のブロックが小さくなればなるほど、粒度は低く又は細かくなる。より低い粒度は、DNAシャッフリング又は再集合方法が、遺伝情報のさらに小さな離散的ブロックをテンプレートストランドから第2のストランドまで移送できる、ということを表わす。比較的低い粒度をもつDNAシャッフリング又は再集合方法の利点は、それが、より小さい核酸配列をその他のものから解消し配列情報を移送できるという点にある。主として高い粒度を戻すDNAシャッフリング又は再集合方法は、その他のものからより小さい核酸配列を容易に解消することができない。
本明細書で用いられる「ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド」という語は、標準的には同一でない別々のストランドである複数の一本鎖をアニールすることにより形成される2本鎖ポリヌクレオチドを意味する。ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドは1本鎖ループ又はバブルとして存在する非対合領域を有する可能性がある。ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド領域は同様に、部分的自己相補性によってストランドのアニーリング部分が同一でないステムループ構造の形成が可能となっている1つの1本鎖ポリヌクレオチドによって形成される可能性もある。
本明細書で用いられる「ヘテロ2本鎖DNA」という語は、標準的には同一でない別々のストランドである複数の一本鎖をアニールすることにより形成される2本鎖DNAを意味する。ヘテロ2本鎖DNAは1本鎖ループ又はバブルとして存在する非対合領域を有する可能性がある。ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド領域は同様に、部分的自己相補性によってストランドのアニーリング部分が同一でないステムループ構造の形成が可能となっている1つの1本鎖ポリヌクレオチドによって形成される可能性もある。
本明細書で用いられる「相同性」という語は、1本鎖核酸配列が、少なくとも部分的に相補性である1本鎖核酸配列にハイブリダイズできることを意味する。ハイブリダイゼーションの度合は、以下で論述するような温度及び塩濃度といったようなハイブリダイゼーション条件及び配列間の同一性の量を含めた数多くの因子によって左右され得る。
核酸は、それらが自然に又は人工的に共通の祖先配列から誘導された場合に、「相同性」をもつ。天然の進化の間、これは、2つ以上の子孫配列が経時的にすなわち突然変異及び自然淘汰に起因して親配列から分岐する場合に起こる。人工的条件下では、分岐は例えば2つの基本的要領のうちの1方で発生する。第1に、子孫核酸を産生するべく例えば標準的クローニングの間に発生するように一定の与えられた配列をもう1つの配列と人工的に組換えることができ、又一定の与えられた配列を化学的に修飾することもでき、そうでなければ、結果として得られる分子を修飾するべく操作することもできる。代替的には、選択された親核酸配列から配列が変動した核酸を合成することにより、核酸を新たに合成することが可能である。2つの核酸の祖先についての明確な知識が全く存在しない場合、相同性は標準的に2つの配列間の配列比較により推測される。2つの核酸配列が核酸の各々の有意な部分全体にわたる配列類似性を示す場合、2つの核酸が祖先を共有することが推測される。相同性を確立する配列類似性の精確なレベルは、当該技術分野においてさまざまな因子に応じて変動する。
本開示の目的では、2つの核酸は、2つの核酸分子間でGRAMMRが媒介する情報移送が発生できるようにするのに充分な配列同一性を共有する場合に、相同であるとみなされる。
本明細書で用いられる「同一の」又は「同一性」という語は、2つの核酸配列が同じ配列又は相補的配列を有することを意味している。かくして「同一性部域」というのは、1つのポリヌクレオチドの領域又は部域又はポリヌクレオチド全体がもう1つのポリヌクレオチドの部域と同一又は相補的であることを意味している。
本明細書で用いられる「相補性百分率の増大」という語は、ヘテロ2本鎖分子内の相補的塩基対の百分率がより大きくなることを意味する。
本明細書で用いられる「リガーゼ」という語は、核酸内の隣接するヌクレオチド間のホスホジエステル結合を確立する酵素を意味する。
本明細書で使用される「ミスマッチ」という語は、(「A」と「T」(又は「U」)又は「G」と「C」以外である)正常な塩基対合相互作用を形成することのできない塩基対を意味する。
本明細書で用いられる「ミスマッチ解消」という語は、ミスマッチ塩基対の相補的塩基対への転換を意味する。
本明細書で用いられる「突然変異」という語は、野生型又は基準核酸配列の配列変化又は1つのポリペプチドの配列変化を意味する。かかる突然変異は、塩基転位又は塩基転換といった点突然変異でありうる。突然変異は欠失、挿入又は重複でありうる。
本明細書で用いられる「核酸」又は「核酸分子」という語は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)といったようなポリヌクレオチドを意味し、1本鎖及び2本鎖核酸ならびにオリゴヌクレオチドを包含する。本発明で有用な核酸には、ゲノミックDNA、cDNA、mRNA、プラスミド、コスミド、PCR産物、及び合成オリゴヌクレオチドが含まれ、センスストランド、アンチセンスストランド又はその両方を表わすことができる。核酸は一般に、4つの天然に発生するヌクレオチドアデニン、グアニン、シトシン、及びチミジン/ウリジンを取込んでいる。本発明の核酸は、同様に、所望のポリヌクレオチド産物を生成するのに充分な効率でポリメラーゼによりポリヌクレオチド内に取込まれ得るかぎりにおいてその誘導体を含めた、天然に発生する又は非天然その他のヌクレオチドを取込むこともできる。
本明細書で用いられる「親核酸」というのは、部分的に相補性をもつ核酸の出発集団内のもとの1本鎖核酸と100%同一である配列を有する2本鎖核酸を意味する。親核酸には、例えば図2の例示において、本発明の方法での出発集団として部分的に相補的な核酸の組合せ1+/4-又は2-/3+が使用された場合に、核酸X及びYが含まれることになる。
本明細書で用いられる「部分的に相補的な」という語は、もう1つの核酸に対し実質的に相補的な配列を有するものの少なくとも2つ以上のヌクレオチドだけその他の核酸と異なっている核酸を意味する。
本明細書で用いられる「部分的に相補的な核酸集団」という語は、その集団内のその他のいずれの配列グループについても正確な相補的配列をもたない特定のグループに属する核酸を全く含まず、実質的に相補的な配列を有する核酸の個々のグループを含む核酸の1集団を意味する。
本明細書で用いられているように、部分的に相補的な核酸集団の任意の成員は、その集団のもう1つの核酸又はそれに対する補体と、2つ以上のヌクレオチドだけ異なっている。このようにして、部分的に相補的な核酸は、正確に相補的である配列すなわち100%の相補性をもつ相補性配列を含む集団を特定的に除外する。従って、かかる部分的相補的な核酸集団の各々の成員は、その集団のその他の成員と、両ストランドを含めた2つ以上のヌクレオチドだけ異なっている。1つのストランドは、上部ストランドと呼称され、その補体は下部ストランドと呼称される。
本明細書で用いられる「上部」ストランドという語は、5′から3′の方向で読取られたポリヌクレオチドを意味する。配列は下部又は上部ストランドと呼ばれるものの、溶解状態では1つのストランドを上部又は下部ストランドとして固定する配向が全く存在しないことから、かかる呼称は相補的ストランドを区別するために意図されている。
例えば、1本鎖の部分的に相補的な核酸集団を生成するために4つのストランドのいずれでも使用する潜在性を伴って、2つの核酸成員を含む集団を、2つの2本鎖核酸から誘導することが可能である。本発明の部分的相補的な核酸集団を得るために使用可能な2つの核酸のストランドの潜在的組合せの一例が、図2に示されている。部分的相補的な核酸集団の潜在的成員である2つの核酸配列は、「X」(AGATCAATTG)及び「Y」(AGACCGATTG)(図2A)と呼称される。核酸配列は2つの位置(「☆」で表わされた位置4及び6)で異なっている。核酸X及びYの「上部」ストランドは、それぞれ「1+」及び「3+」と呼称され、核酸X及びYの「下部」ストランドはそれぞれ「2−」及び「4−」と呼称される。
図2Bは、4つの核酸ストランドの考えられる組合せを示す。6つの考えられるストランド組合せのうち1+/2-、1+/4-、2-/3+又は3+/4-の組合せのみが、部分的に相補的な核酸集団の所要の上部及び下部ストランドを含んでいる。これらの上部/下部配列組合せのうち1+/4-又は2-/3+のみが、少なくとも1つのヌクレオチドだけ異なる相補的配列を有することから、2つの異なる分子の部分的相補的な核酸集団の一例を含んでいる。残りの組合せ1+/2-及び2+/4-は、正確に相補的な配列を含有し、従って、本発明の部分的相補的な核酸集団を含まない。
2つの異なる分子の集団の上述の例においては、部分的相補的な核酸分子集団は、単数又は複数のヌクレオチドだけ異なるものの同じ方向である1+/3+又は2-/4-といったストランドの組合せを除外していた。しかしながら、同じストランドをもつ核酸のこのような組合せは、その集団が少なくとも1つの下部ストランド及び少なくとも1つの上部ストランドを含むかぎり、より大きな集団内に包含され得るということがわかる。例えば、ストランド5+及び6−を伴う第3の核酸「Z」が内含される場合、組合せ1+/3+/6−又は2−/4−5+は部分的相補的な核酸集団を含むことになる。同様にして、集団が少なくとも1つの上部ストランド及び少なくとも1つの下部ストランドを含むかぎり、そして集団が正確な補体である成員を全く含まないかぎり、本発明の部分的相補的な核酸集団を生成するために任意の数の核酸及びその対応する上部及び下部ストランドを組合せることができる。
本発明の核酸の集団は、約3個以上、約4個以上、約5個以上、約6個以上、約7個以上、約8個以上、約9個以上、約10個以上、約12個以上、約15個以上、約20個以上、約25個以上、約30個以上、約40個以上、約50個以上、約75個以上、約100個以上、約150個以上、約200個以上、約250個以上、約300個以上、約350個以上、約400個以上、約450個以上、約500個以上又さらには約1000個以上の異なる核酸分子であり得る。1つの集団は又、約2000個以上、約5000個以上、約1×104個以上、約1×105個以上、約1×106個以上、約1×107個以上さらには約1×108個以上の異なる核酸をも含むことができる。当業者であれば、本明細書で開示されているように、所望の再集合実験の成果及び利用可能なスクリーニング方法の性質に応じて本発明の方法の中に内含すべき望ましい集団を容易に決定することができる。
本明細書で使用されているように、「ポリメラーゼ」という語は、ヌクレオチドの重合体すなわちポリヌクレオチドのテンプレート誘導的な形での形成の触媒として作用する酵素を意味している。本発明において有用なポリメラーゼは、動物、植物、細菌及びウイルスポリメラーゼを含めたあらゆる生体又は供給源から誘導可能である。ポリメラーゼはDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又はRNAをDNAへと転写する能力をもつ逆転写酵素であり得る。
本明細書で用いられる「プルーフリーディング」という語は、ミスマッチヌクレオチドといったようなヌクレオチドが3′−から−5′という形で除去されかつ標準的には塩基対合ヌクレオチドにより置換され得る場合の酵素の特性を描写するものである。挿入又は欠失によりひき起こされるループを扱かう場合、プルーフリーディングにはミスマッチヌクレオチド(単複)の除去のみ又は塩基対合ヌクレオチド(単複)の付加のみが関与しうる。
本明細書で用いられる「組換え型」ポリヌクレオチドという語は、少なくとも2つの異なるポリヌクレオチドからの配列情報を含むポリヌクレオチドを意味する。
本明細書で用いられる「関連するポリヌクレオチド」という語は、ポリヌクレオチドの一領域又は部域が同一であること、及びポリヌクレオチドの一領域又は部域が同一でないことを意味する。
本明細書で用いられるDNA「再集合」という語は、ここでは同一でない配列間の配列変動再分配を表わすために用いられている。
本明細書で用いられる「レプリコン」という語は、一定長のポリヌクレオチド及び複製の開始のためのその部位を含めた遺伝的複製単位を意味する。
本明細書で用いられる「配列多様性」という語は、非同一ポリヌクレオチドの豊富さを意味する。「集団内での配列多様性を増大させる」という語は、1つの集団内での非同一ポリヌクレオチドの相対的豊富さを増大させることを意味する。
本明細書で用いられる「配列変異体」という語は、基準分子に比べて単数又は複数の配列差を伴う分子(DNA、RNAポリヌクレオチドなど)を意味する。例えば、GRAMMRプロセス中にヘテロ2本鎖分子全体を通して発生する別々の独立したミスマッチ解消事象の和は、その分子全体を通した配列情報の再集合を結果としてもたらす。配列情報は、「配列変異体」の複合ライブラリを生成するためにさまざまな組合せの形に再集合することになる。
本明細書で用いられる「ミスマッチ特異的ストランド分割」という語は、ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド配列上のらせん外塩基(単複)又は1つのミスマッチ塩基対又はミスマッチ塩基対グループの部位を認識しそのミスマッチの部位において1つのストランドを分割する作用物質によるストランド分割活性を意味する。
ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチド「充分な時間」という語は、1つの反応又はプロセスか所望の産物を提供するのに必要な時限を意味する。本発明については、充分な時間の決定は、当業者の知識範囲内に充分入るものである。「充分な時間」は、反応の機能性又は所望の産物の質に影響を及ぼすことなく熟練者の希望に応じて広く変動しうる。
本明細書で用いられる「野生型」という語は、核酸フラグメントがいかなる突然変異も含まないことを意味している。「野生型」タンパク質は、そのタンパク質が天然に見られる活性レベルで活性であり、標準的には天然に発見されるアミノ酸配列であることを意味する。1つの態様では、「野生型」又は「親配列」という語は、本発明の操作の前の出発又は基準配列を表わすことができる。
本明細書で使用されるポリペプチド表記においては、標準的な用法及び慣習に従って、左側方向は、アミノ末端方向であり、右側方向はカルボキシ末端方向である。同様にして、相反する規定のないかぎり、1本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は、5′末端であり、2本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5′方向と呼ばれる。初期RNA写しの5′から3′への付加の方向は、転写方向と呼ばれる。
発明の詳細な説明
本発明は、CEL Iエードヌクレアーゼの発現のためのベクター又はプラスミドとして有用である配列番号01、配列番号02、配列番号03又は配列番号04を内含する核酸配列を提供している。配列番号03及び配列番号04の核酸分子は、それぞれ配列番号01及び配列番号02内に含まれたCEL I読取り枠である。配列番号01、配列番号02、配列番号03及び配列番号04の核酸分子の調製及び使用は、本明細書の例2内でさらに教示されている。本発明は同様に、RES Iエンドヌクレアーゼの発現のためのベクター又はプラスミドとして有用である図3の核酸配列(配列番号16)を含む核酸分子をも提供する。
植物由来のミスマッチエンドヌクレアーゼは、ハイブリダイズされた核酸ストランド間のミスマッチを検出し、かかるハイブリダイズされたストランド間のポリヌクレオチドループ及び挿入を検出し、かかるハイブリダイズされたストランド間の多形現象を検出し、ポリヌクレオチドストランド内の配列の差異を検出し、フランキングDNA配列に実質的に不利な効果無く標的ポリヌクレオチド配列内のかかる突然変異を検出する能力をもつ(Yeung, Anthony, T.及びPatrick J. Hagan国際特許出願第WO97/46701号)。これらのエンドヌクレアーゼは、多様な植物内で発見され、恐らくは、植物界全体にわたり発見される。これらは、アルファファの芽、アスパラガス、緑豆苗条、セロリの茎、茶の葉、アイスバーグレタス、パセリ、セロリーキャベツ、ブロッコリの葉っぱ、キャベツ、カリフラワの葉っぱ及びトマトの中に発見されてきた(Oleykowski, C.A. et al., Nucleic Acids Research, 1998, 第26巻No. 4597-4702)。
植物由来のエンドヌクレアーゼは、現在、ハイブリダイズされた配列から複数組のヌクレオチド配列変異体を進化させるプロセスにおいて使用することができる。このプロセスにおいては、ミスマッチエンドヌクレアーゼは、ミスマッチ塩基を検出し、ハイブリダイズされたストランドのうちの少なくとも1つをニックする。このとき、ポリメラーゼ酵素が、単数又は複数のミスマッチ塩基を、反対側のストランド上の塩基対を相補する単数又は複数の塩基と置換する。このとき、ニックはリガーゼ酵素により密閉される。ハイブリッド上に2つ以上のミスマッチ部位が存在する場合には、置換が行なわれるミスマッチの位置と数及び塩基置換が行なわれるストランドに応じて変異体配列の一集団が結果としてもたらされることになる。配列変異体の進化においては、配列の全てのコピー上の全てのミスマッチが解消されることが必ずしも望ましいわけではない。一組の配列変異体から、好ましい活性をもつ単数又は複数の変異体を選択することができる。RES I及びCEL Iは、このプロセスにおいて有用なミスマッチエンドヌクレアーゼを例証するものである。GRAMMR反応では、その他の植物由来のミスマッチエンドヌクレアーゼも同様に有用である。
本発明は同様に、配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04又は図3(配列番号16)から成るグループの中から選択された核酸配列から成る組換え型植物ウイルス核酸を用いてCEL I又はRES Iエンドヌクレアーゼを発現するためのプロセスをも提供する。
本発明は同様に、植物細胞が宿主細胞又は産生細胞である、植物細胞内のCEL I又はRES Iエンドヌクレアーゼを転写又は発現する能力をもつサブゲノミックプロモータから成る組換え型植物ウイルス核酸をも提供している。
もう1つの実施形態においては、未変性外皮タンパク質コーディング配列が、ウイルス核酸、変性植物ウイルス外皮タンパク質コーディング配列及び変性プロモータから欠失されている、好ましくは、植物宿主内での発現、組換え型植物ウイルス核酸のパッケージング及び組換え型植物ウイルス核酸による宿主の全身的感染の確保の能力をもつ変性外皮タンパク質コーディング配列のサブゲノミックプロモータが挿入されている、植物ウイルス核酸が提供される。代替的には、外皮タンパク質遺伝子は、融合タンパク質が産生されるような形で、内部への変性核酸配列を挿入することによって不活性化され得る。組換え型植物ウイルス核酸は、単数又は複数の付加的な変性サブゲノミックプロモータを含有し得る。各々の変性サブゲノミックプロモータは、植物宿主内で隣接する遺伝子又は核酸配列を転写又は発現する能力をもち、かつ互いの及び未変性サブゲノミックプロモータとの組換えの能力をもたない。変性(外来性)核酸配列を、未変性植物ウイルスサブゲノミックプロモータに隣接して、又は複数の核酸配列が内含されている場合には該未変性及び変性植物ウイルスサブゲノミックプロモータに隣接して挿入することが可能である。変性核酸配列は、所望の産物を産生するべく、サブゲノミックプロモータの制御下で宿主植物内で転写又は発現される。
もう1つの実施形態においては、未変性外皮タンパク質コーディング配列の変性外皮タンパク質コーディング配列に代って変性外皮タンパク質サブゲノミックプロモータの1つに隣接して配置されるという点を除いて、第1の実施形態の場合と同じ組換え型植物ウイルス核酸が提供されている。
さらにもう1つの実施形態においては、未変性外皮タンパク質遺伝子がそのサブゲノミックプロモータに隣接し、単数又は複数の変性サブゲノミックプロモータがウイルス核酸内に挿入されている組換え型植物ウイルス核酸が提供されている。挿入された変性サブゲノミックプロモータは、植物宿主内で隣接する遺伝子を転写又は発現する能力を有し、かつ互いに及び未変性サブゲノミックプロモータと組換えする能力をもたない。所望の産物を産生するべくサブゲノミックプロモータの制御下で宿主植物内で転写又は発現されるように、変性サブゲノミック植物ウイルスプロモータに隣接して、変性核酸配列を挿入することができる。
もう1つの実施形態においては、未変性外皮タンパク質コーディング配列が変性外皮タンパク質コーディング配列により置換されているという点を除いて第3の実施形態の場合と同じ組換え型植物ウイルス核酸が提供される。
ウイルスベクターは、組換え型植物ウイルスを産生するべく組換え型植物ウイルス核酸によりコードされた外皮タンパク質によって包膜される。該組換え型植物ウイルス核酸又は組換え型植物ウイルスは、適切な宿主植物を感染させるために用いられる。該組換え型植物ウイルス核酸は、宿主内での複製、宿主内での全身的蔓延及び所望の産物を産生するための宿主内の外来性遺伝子(単複)の転写又は発現の能力をもつ。
本発明のもう1つの実施形態は、変性(外来性)核酸配列の維持及び転写又は発現について安定しておりかつ宿主植物内でかかる外来性配列を全身的に転写又は発現する能力をもつ組換え型植物ウイルス核酸及び組換え型ウイルスに向けられている。より特定的には、本発明に従った組換え型植物ウイルス核酸は、未変性植物ウイルスサブゲノミックプロモータ、少なくとも1つの変性植物ウイルスサブゲノミックプロモータ、植物ウイルス外皮タンパク質コーディング配列そして任意には、少なくとも1つの変性核酸配列を含んで成る。
本発明は、組換え型植物ウイルス核酸を含有する組換え型植物ウイルスによるか又は植物宿主の感染を受けた組織内で転写又は発現される単数又は複数の変性核酸配列を含有する組換え型植物ウイルス核酸による植物宿主の感染を提供する。コーディング配列の産物は、植物から回収されてもよいし、或いは又、植物内で表現型形質をひき起こすこともできる。
本発明の特長のいずれかを達成する上での第1段階は、植物ウイルス核酸の生理学的機能を破壊することなく植物ウイルス核酸内に単数又は複数の変性サブゲノミックプロモータが挿入されるように既知の従来の技術により植物ウイルスヌクレオチド配列のヌクレオチド配列を修飾することにある。サブゲノミックプロモータは、組換え型植物ウイルス核酸又は組換え型植物ウイルスの感染を受けた植物宿主内の隣接する核酸配列を転写又は発現する能力をもつ。未変性外皮タンパク質コーディング配列は2つの実施形態において欠失され得、第2の実施形態では変性サブゲノミックプロモータの制御下に置かれて良く、又、さらなる実施形態においては保持され得る。変性外皮タンパク質遺伝子は、欠失されるか又はその他の形で不活性化された場合、変性サブゲノミックプロモータの1つの制御下に挿入されるか又は、任意には未変性外皮タンパク質サブゲノミックプロモータの制御下で挿入される。変性外皮タンパク質は、組換え型植物ウイルス核酸を包膜して組換え型植物ウイルスを産生する能力をもつ。かくして組換え型植物ウイルス核酸は、未変性又は変性サブゲノミックプロモータのうちの1つの制御下で未変性又は変性外皮タンパク質コーディング配列でありうる外皮タンパク質コーディング配列を含有する。外皮タンパク質は、植物宿主の全身的感染に関与する。
この必要条件を満たし従って適切であるウイルスの一部分としては、タバコモザイクウイルス(TMV)、カウピーモザイクウイルス(CMV)、アルファルファモザイクウイルス(AMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルススイカ菌株(CGMMV−W)及びオートムギモザイクウイルス(OMV)といったタバコモザイクウイルス群由来のウイルス、及びブロムモザイクウイルス(BMV)、ソラマメ斑紋ウイルス及びカウピークロロチックウイルスといったようなブロムモザイクウイルス群由来のウイルスが含まれる。付加的な適切なウイルスとしては、イネ壊死ウイルス(RNV)及びトマトゴールドモザイクウイルス(TGMV)、キャッサバラテントウイルス(CLV)及びトウモロコシ条斑ウイルス(MSV)といったようなジェミニウイルスが含まれる。
本発明のもう1つの実施形態は、植物宿主内で転写される能力をもつ単数又は複数の変性核酸配列をさらに含む組換え型植物ウイルス核酸である。変性核酸配列は、使用される特定の実施形態に応じて、変性ウイルスサブゲノミックプロモータのうちの1つ及び/又は未変性外皮タンパク質遺伝子プロモータに隣接して置かれる。変性核酸を従来の技術によって挿入することもできるし、又、融合タンパク質が産生されるように変性核酸配列を未変性外皮タンパク質コーディング配列内に又はそれに隣接して挿入することもできる。転写されている変性核酸配列は、アンチセンスメカニズムにより表現型形質の発現を調節する能力をもつRNAとして転写され得る。代替的には、組換え型植物ウイルス核酸内の変性核酸配列を植物宿主内で転写又は翻訳させて表現型形質を産生することが可能である。変性核酸配列(単複)は、複数の表現型形質の発現についてもコードすることができる。変性核酸配列を含有する組換え型植物ウイルス核酸は、いかなるウイルスサブゲノミックプロモータが利用されようとも変性核酸配列(単複)かそのプロモータに対し適正な配向にあるように、従来の技術を用いて構築される。
本発明はさらに、宿主細胞か又は産生細胞である、配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04又は図3(配列番号16)から成るグループの中から選択された核酸配列で構成されているベクター又はプラスミドを含む植物細胞を提供している。
CEL I及びRES I酵素を作る方法は、植物ウイルスベクターに制限されるわけではない。これらの遺伝子又はその変異体は、今日の技術において既知の複数の方法のうちのいずれによってでも、又いずれの既知の宿主生体内にでも導入され得る。さまざまな宿主細胞を形質転換するための方法が、Klein et al.「粒子ボンバードメントによる微生物、植物及び動物の形質転換」Bio/Technol. New York, N.Y., Nature Publishing Company, 1992年3月、v.10 (3) pp.286〜291内で開示されている。多種多様な高等植物種を形質転換するための技術は、周知であり、技術、科学、及び特許文献内で記述されている。例えば、Weising et al., Ann. Rev. Genet. 22: 421-477 (1988)を参照のこと。
例えば、電気穿孔法、PEG媒介トランスフェクション、粒子ボンバードメント、シリコンファイバ送達又は植物細胞プロトプラスト又は胚体カルスのマイクロインジェクションといったような技術を用いて植物細胞のゲノミックDNA内に直接DNA構成体を導入することができる。例えば、Tomes et al., マイクロプロジェクタイルボンバードメントを介した無傷の植物細胞内への直接的DNA移入、p197−213、植物細胞、組織及び器官培養、基礎方法、O. L. Gamborg及びG. C. Phillips編、Springer-Verlag Berlin Heidelberg New York, 1995中を参照のこと。ポリエチレングリコール沈殿法を用いたDNA構成体の導入は、Paszkowski et al., Embo J. 3: 2717-2722 (1984)内に記述されている。電気穿孔技術は、Fromm et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 82: 5824 (1985)の中で記述されている。弾丸形質転換技術は、Klein et al., Nature 327: 70-73 (1987)の中で記述されている。
代替的には、DNA構成体を適切なT−DNAフランキング領域と組合せ、従来のAgrobacterium tumefaciens宿主ベクターの中に導入することができる。Agrobacterium tumefaciensの病原力機能は、細胞が細菌の感染を受けている場合に植物細胞DNA内への構成体及び隣接マーカーの挿入を導くことになる。Agrobacterium tumefaciens媒介形質転換技術は、科学文献の中で充分に記述されている。例えば、Horsch et al., Science 233: 496-498 (1984)、及びFraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 80: 4803 (1983)を参照のこと。例えば、トウモロコシのAgrobacterium形質転換は、米国特許第5,981,840号に記述されている。
単子葉植物のAgrobacterium形質転換は、米国特許第5,591,616号の中で記述されている。大豆のAgrobacterium形質転換は、米国特許第5,563,055号の中で記述されている。
その他の形質転換方法としては、(1)Agrobacterium rhizogenes媒介形質転換(例えば、Lichtenstein及びFuller、遺伝子工学、第6巻、PWJ Rigby, Ed., London, Academic Press, 1987中;及びLichtenstein, C. P., 及びDraper, J., DNAクローニング第II巻、D. M. Glover, Ed., Oxford, IRI Press, 1985中を参照)PCT/US87/02512出願(1988年4月7日公示のWO88/02405)は、A. tumefaciensベクターpARC8又はpARC16と共にA. rhizogenes菌株A4及びそのRiプラスミドを使用することを記述している、(2)リポゾーム媒介DNA摂取(例えば、Freeman et al., Plant Cell Physiol. 25: 1353, 1984参照)(3)渦流方法(例えば、Kindle, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 87: 1228, (1990)参照)が含まれる。
DNAは同様に、Zhou et al.,、酵素学方法101: 433 (1983)中;D. Hess, Intern Rev. Cytol., 107: 367 (1987); Luo et al., Plane Mol. Biol. Reporter, 6: 165 (1988)に記述されているように、花粉中への直接的DNA移入によっても、植物内に導入可能である。ポリペプチドコーディング核酸の発現は、Pena et al., Nature, 325: 274 (1987)により記述されているように植物の生殖器官内へのDNAの注入によって得ることができる。DNAは同様に、未成熟の胚芽の細胞内に直接注入することもでき、Neuhaus et al., Theor. Appl. Genet., 75: 30 (1987); 及びBenbrook et al., Bio Expo 1986議事録中、Butterworth, Stoneham, Mass., pp.27-54 (1986)により記述されているように乾燥胚芽の再水和。
以上の形質転換技術のいずれかにより誘導される形質転換済みの植物細胞は、形質転換された遺伝子型を有する全植物を再生するように培養可能である。かかる再生技術は、往々にして組織培養成長培地中での或る種の植物ホルモンの操作に依存し、標準的には本発明のポリヌクレオチドと共に導入された殺菌剤及び/又は除草剤マーカーに依存する。トウモロコシの形質転換及び再生については、Gordon-Kamm et al.,「植物細胞」, 2: 603-618 (1990)を参照のこと。
CEL I及びRES I及びそれらの変異体は同様に、その他の宿主又は宿主/ベクター系によっても作ることができる。ポリヌクレオチド配列を、遺伝子配列の挿入又は取込みにより操作された当該技術分野で既知の組換え型プラスミド、ウイルス又はその他のビヒクルの中に挿入することが可能である。このような発現ベクターは、宿主の挿入済み遺伝子配列の効率の良い転写を容易にするプロモータ配列を含んでいる。発現ベクターは標準的には、複製起点つまりプロモータを含む。本発明で使用するのに適したベクターには、細菌内での発現のためのT7ベースの発現ベクター(Rosenberg, et al., Gene 56: 125, 1987)、哺乳動物細胞内での発現のためのpMSXND発現ベクター(Lee 及び Nathans, J. Biol. Chem., 263: 3521, 1988)及び昆虫細胞内での発現のためのバキュロウイルス由来のベクターが含まれるが、これらに制限されるわけではない。DNAセグメントは、例えばプロモータ(例えばT7、メタロチオネインI又はポリヘドリンプロモータ)といった調節要素に操作可能な形でリンクされたベクターの中に存在し得る。
ポリヌクレオチド配列は、原核生物又は真核生物のいずれの中でも発現可能である。宿主には、細菌、酵母、昆虫及び哺乳動物生体が含まれ得る。原核生物内で真核又はウイルス配列を有するDNA配列を発現する方法は、当該技術分野において周知である。宿主内で発現又は複製する能力をもつ生物学的に機能的なウイルス及びプラスミドDNAベクターが、当該技術分野において既知である。かかるベクターは、本発明のDNA配列を取込むために用いられる。
当業者にとって周知である方法を、CEL I又はRES Iコーディング配列及び適切な転写/翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。これらの方法には、組換え型DNA技術、合成技術及びin vivo組換え型/遺伝子技術が含まれる(例えば、Maniatis et al., 1989分子クローニング;実験室マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.を参照のこと)。
CEL I又はRES Iコーディング配列を発現するために、さまざまな宿主発現ベクター系を利用することができる。これらには、CEL I又はRES Iコーディング配列を含有する組換え型バクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌といったような微生物;CEL I又はRES Iコーディング配列を含有する組換え型酵母発現ベクターで形質転換された酵母;CEL I又はRES Iコーディング配列を含有する組換え型ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)での感染を受けた昆虫細胞系;又はCEL I又はRES Iコーディング配列を含有する組換え型ウイルス発現ベクター(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)での感染を受けた動物細胞系、又は安定した発現のために工学処置された形質転換済み動物細胞系が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
利用される宿主/ベクター系に応じて、構成性及び誘発性プロモータ、転写エンハンサ要素、転写ターミネータなどを含めた数多くの適切な転写及び翻訳要素のうちの任意のものを発現ベクター内で使用することができる(例えば、Bitter et al., 1987、酵素学方法153: 516-544を参照のこと)。例えば、細菌系の中でクローニングする場合、バクテリオファージ、lambda、plac、ptrp、ptacのpL(ptrp-lacハイブリッドプロモータ)といったような誘発可能なプロモータを使用することができる。哺乳動物細胞系内でクローニングする場合には、哺乳動物細胞のゲノムから誘導されたプロモータ(例えばメタロチオネインプロモータ)又は哺乳動物ウイルスから誘導されたプロモータ(例えばレトロウイルス長末端反復;アデノウイルス後期プロモータ;ワクチニアウイルス7.5Kプロモータ)を使用することができる。組換え型DNA又は合成技術により産生されたプロモータは同様に、挿入済みのRES I又はCELTコーディング配列の転写を提供するために使用することもできる。
細菌系においては、発現されたタンパク質について意図された用途に応じて、数多くの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、RES I又はCEL Iを大量に産生させるべきである場合、容易に精製される高レベルの融合タンパク質の発現を導くベクターが望ましいかもしれない。回収の一助となるべく分割部位を含むように工学処理されているベクターが好ましい。かかるベクターとしては、ハイブリッド−lacZタンパク質が産生されるようにlacZコーディング領域と同一枠内でベクター内にCEL I又はRES Iコーディング配列を連結させることができるE. coli発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBOJ. 2: 1791, 1983);pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic acids Res. 13: 3101-3109; Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 264: 5503-5509)などが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
酵母においては、構成性又は誘発性プロモータを含む数多くのベクターを使用することができる。再考のためには、分子生物学における現行プロトコル、第2巻1988, Ed. Ausubel et al., Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience, Ch. 13; Grant et al., 1987,「酵母のための発現及び分泌ベクター」酵素学方法Eds. Wu & Grossman, 31987, Acad. Press, N.Y., Vol. 153, pp. 516-544中; Glover, 1986, DNA Cloning, Vol. II, IRL Press, Wash., D.C., Ch. 3; 及びBitter, 1987, 酵母内の非相同遺伝子発現、酵素学方法、Eds. Berger & Kimmel, Acad. Press, N.Y., Vol. 152, pp. 673-684; 及び酵母サッカロマイセスの分子生物学, 1982, Eds. Strathem et al., Cold Spring Harbor Press, 第I及びII巻を参照。ADH又はLEU2といった構成性酵母プロモータ又は、GALといったような誘発性プロモータを使用することができる(酵母におけるクローニング、Ch. 3, R. Rothstein, DNAクローニング第II巻、実践アプローチ、D M Glover編, 1986, IRL Press, Wash., D.C.)。代替的には、酵母染色体内への外来性DNA配列の組込みを促進するベクターを使用することもできる。
真核生物系そして好ましくは哺乳動物発現系は、発現された哺乳動物タンパク質の適正な翻訳後修飾の発生を可能にする。一次写しの適切な処置、グリコシル化、リン酸化そして有利には遺伝子産物の分泌のための細胞メカニズムを有する真核細胞を、RES I又はCEL Iの発現のための宿主細胞として使用することができる。哺乳動物系統が好ましいかもしれない。このような細胞系統には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293及びWI38が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
組換え型ウイルス又はウイルス要素を利用して発現を導く哺乳動物細胞系を、工学処理することが可能である。例えば、アデノウイルス発現ベクターを使用する場合、CEL I又はRES Iコーディング配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモータ及びトリパータイトリーダー配列に連結することができる。このキメラ遺伝子は次に、in vitro又はin vivo組換えによりアデノウイルスゲノム内に挿入可能である。ウイルスゲノムの可欠領域(例えば領域E1又はE3)内挿入は結果として、感染を受けた宿主内でタンパク質を発現する能力をもつ生存可能な組換え型ウイルスをもたらす。礼えばLogan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3655-3659を参照のこと。代替的には、ワクチニアウイルス7.5Kプロモータを使用することができる(例えば、Mackett et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 7415-7419; Mackett et al., 1984, J. Virol. 49: 857-864; Panicali et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 4927-4931を参照のこと。染色体外要素として複製する能力をもつウシ乳頭腫ウイルスに基づくベクター(Sarver, et al., 1981, Mol. Cell. Biol. 1: 486)。このDNAがマウス細胞内に侵入したすぐ後に、プラスミドは、細胞1個あたり約100〜200コピーまで複製する。挿入済みcDNAの転写は、宿主の染色体の中へのプラスミドの組込みを必要とせず、かくして高レベルの発現を生み出す。これらのベクターは、例えばneo遺伝子といったように、選択可能なマーカーをプラスミド内に内含させることによって、安定した発現のために使用することができる。代替的には、宿主細胞内のCEL I又はRES I遺伝子の発現を導入し導く能力をもつベクターとしての使用のために、レトロウイルスゲノムを修飾することができる(Cone & Mulligan, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6349-6353)。高レベルの発現は同様に、メタロチオニンIIAプロモータ及び熱ショックプロモータを含むもののこれらに制限されるわけではない誘発性プロモータを用いて達成することもできる。
適切な発現制御要素(例えばプロモータ、エンハンサ、配列、転写、ターミネータ、ポリアデニル化部位など)及び選択可能マーカーによって制御されるCEL I又はRES IcDNAで、宿主細胞を形質転換することができる。組換え型プラスミド内の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをその染色体内に安定した形で組込ませ、成長させて病巣を形成させることを可能にし、この病巣自体はクローニングされ、細胞系統へと拡張され得る。例えば、外来性DNAの導入に続いて、工学処理された細胞は、富化された培地内で1〜2日間成長でき、次に選択培地へと切換えられる。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler, et al., 1977, Cell 11: 223)、ハイポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48: 2026)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, et al., 1980, Cell 22: 817)遺伝子を、それぞれtk-、hgprt-又はaprt-細胞内で利用することができる。同様に、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler, et al., 1980, Natl. Acad. Sci. USA 77: 3567; O’Hare, et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 1527);マイコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 2072;アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo(Colberre-Garapin, et al., 1981, J. Mol. Biol. 150: 1);及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre, et al., 1984, Gene 30: 147)遺伝子についての選択のベースとして、代謝拮抗物質耐性を使用することが可能である。最近では、付加的な選択可能遺伝子、すなわち細胞がトリプトファンの代りにインドールを用いることを可能にするtrpB;ヒスチジンの代りにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(Hartman & Mulligan, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 8047);及びオルミチンデカルボキシラーゼ阻害物質、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue L., 1987, 分子生物学における現行情報通信中、Cold Spring Harbor Laboratory ed.)が記述されてきている。
組換え型DNAを用いた宿主細胞の形質転換は、当業者が充分に知る通りの従来の技術によって、実施可能である。宿主がE. coliといったような原核生物である場合、DNA摂取能力をもつコンピテント細胞を、対数増殖期の後で収獲した細胞から調製し、その後当該技術分野において周知の手順を用いてCaCl.sub.2方法で処理することができる。代替的には、MgCl.sub.2又はRbClを使用することもできる。形質転換は同様に、望ましい場合、宿主細胞のプロトプラストを形成した後に実施することもできる。
動物及び下等真核動物(例えば酵母)宿主細胞は、応答能があるか又はさまざまな手段により形質転換のために応答能を付与される。動物細胞内にDNAを導入する周知の方法は複数存在する。これらには、リン酸カルシウム共沈物、マイクロインジェクション、電気穿孔法、パーティクルガン法、リポゾーム内に包まれたプラスミドの挿入が含まれ、そうでなければウイルスベクターを使用することができる。真核細胞は同様に、本発明のCEL I又はRES IをコードするDNA配列、及び単純ヘルペスチミジンキナーゼといった選択可能な表現型をコードする第2の外来性DNA分子を用いて同時形質転換させることもできる。もう1つの方法は、シミアンウイルス40(SV40)、シンドビスウイルス又はウシ乳頭腫ウイルスといった真核生物ウイルスベクタを用いて、真核細胞を過渡的に感染又は形質転換させタンパク質を発現することにある。(例えば、真核生物ウイルスベクター、Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzmnan ed., 1982を参照のこと)。トランスフェクションを受けた細胞は、当該技術分野において周知の手段により培養される。Kuchler, R. J., 細胞培養及びウイルス学における生化学方法、Dowden, Hutchinson及びRoss, Inc. (1977)。
本発明は、ヘテロ2本鎖が少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を有する、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドから配列変異体を作るin vitro方法において、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;CEL I又はRES I酵素によって提供されるストランド分割活性、プルーフリーディング活性及びリガーゼ活性をもつ有効量の単数又は複数の作用物質と前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合せる段階;及び相補性百分率を増大させるのに充分な時間経過させ、ここで少なくとも単数又は複数の変異体が作られる段階を含んで成る方法を提供する。
本発明のもう1つの態様は、ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドが環状、線状又はレプリコンであるものである。
本発明のもう1つの態様は、所望の変異体が異なる量の相補性を有するものである。
本発明のもう1つの態様は、ストランド分割活性、プルーフリーディング活性及びリガーゼ活性が逐次的に又は同時に付加されるものである。
本発明のもう1つの態様は、T4DNAリガーゼ、E. coli DNAリガーゼ、又はTag DNAリガーゼといったような作用物質によって提供されるリガーゼ活性の付加を提供する。
本発明のもう1つの態様においては、ストランド分割活性は、CEL I、RES I、T4エンドヌクレアーゼVII又はT7エンドヌクレアーゼIといったような酵素によって提供される。
本発明のもう1つの態様においては、ポリメラーゼ活性がPolベータによって提供される。
本発明のもう1つの態様においては、プルーフリーディング活性が、T4DNAポリメラーゼ又はT7DNAポリメラーゼによって提供される。
本発明のもう1つの態様においては、有効量のストランド分割活性及びプルーフリーディング活性及びリガーゼ活性が、CEL I又はRES I酵素、T4DNAポリメラーゼ及びE. coli DNAリガーゼによって提供される。
本発明のもう1つの態様においては、有効量のストランド分割活性及びプルーフリーディング活性及びリガーゼ活性が、CEL I又はRES I酵素、T4DNAポリメラーゼ及びT4DNAリガーゼによって提供される。
本発明のもう1つの実施形態は、配列の集団内の多様性を増大させるin vitro方法において、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;プルーフリーディング活性、リガーゼ活性及びCEL I又はRES I酵素によって提供されるストランド分割活性をもつ有効量の単数又は複数の作用物質とヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合せる段階;及び相補性百分率を増大させるのに充分な時間経過させ、ここで集団中の多様性が増大させられる段階、を含んで成る方法を提供する。
本発明のもう1つの実施形態は、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチドを得る方法において、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;プルーフリーディング活性、リガーゼ活性及びCEL I又はRES I酵素によって提供されるストランド分割活性をもつ有効量の単数又は複数の作用物質と前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合せる段階;ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドのストランド間の相補性百分率を増大させるのに充分な時間を与え、ここで集団中の多様性が増大させられる段階、及び所望の機能的特性について変異体集団をスクリーニング又は選択する段階、を含んで成る方法を提供する。
本発明のもう1つの実施形態は、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチドを得る方法において、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;プルーフリーディング活性、リガーゼ活性及びCEL I又はRES I酵素によって提供されるストランド分割活性をもつ有効量の単数又は複数の作用物質と前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合せる段階;ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドのストランド間の相補性百分率を増大させるのに充分な時間経過させ、ここで集団中の多様性が増大させられる段階;DNAをRNAに転換させる段階、及び所望の機能的特性についてリボ核酸変異体集団をスクリーニング又は選択する段階、を含んで成る方法を提供する。
さらに本発明のもう1つの実施形態は、所望の機能的特性を有するポリヌクレオチドを得る方法において、少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;プルーフリーディング活性、リガーゼ活性及びCEL I又はRES I酵素によって提供される<ストランド分割活性(原文抜け)>をもつ有効量の単数又は複数の作用物質と前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合せる段階;前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドのストランド間の相補性百分率を増大させるのに充分な時間経過させ、前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドをRNAに、前記RNAをポリペプチドに転換させる段階、及び前記所望の機能的特性についてポリペプチド変異体集団をスクリーニング又は選択する段階、を含んで成る方法を提供する。
本発明のさらにもう1つの実施形態は、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチドを得る方法において、ヘテロ2本鎖が任意には約95%、90%、85%、80%、75%、62%、58%又は47%同一でそのサイズが約100、1000、10,000又は100,000塩基対以上である少なくとも1つのヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを調製する段階;プルーフリーディング活性、リガーゼ活性及びCEL I又はRES I酵素によって提供されるストランド分割活性をもつ有効量の単数又は複数の作用物質と前記ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合せる段階;ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドのストランド間の相補性百分率を増大させるのに充分な時間経過させ、所望の機能的特性を有する変異体集団をスクリーニング又は選択する段階;1本鎖ポリヌクレオチドを得るべく前記変異体集団を変性させる段階;少なくとも1つの第2のヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを形成するべく前記1本鎖ポリヌクレオチドをアニールする段階;プルーフリーディング活性、リガーゼ活性及びCEL I又はRES I酵素によって提供されるストランド分割活性をもつ有効量の単数又は複数の作用物質とヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドを組合せる段階;ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドのストランド間、及び相補性百分率を増大させるのに充分な時間経過させる段階、を含んで成る方法を提供する。
本発明は、標準的に増幅済み及び/又はクローニング済みポリヌクレオチドの形で改良型ポリヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド配列集団を生成する方法において、該改良型ポリヌクレオチド配列(単複)が選択又はスクリーニングの対象となりうる少なくとも1つの所望の表現型特徴(例えばポリペプチドをコードする、リンクされたポリヌクレオチドの転写を促進する、タンパク質を結合する、ウイルスベクターの機能を改善するなど)を有する方法に関する。かかる所望のポリヌクレオチドは、適切な植物、動物、真菌、酵母又は細菌発現ベクターからの発現、遺伝子導入植物、動物又は微生物を形成するための組込み、リボザイムの発現などといった数多くの方法で使用することが可能である。
GRAMMRは、in vitro反応におけるヘテロ2本鎖DNAストランド上のミスマッチ塩基対の解消を提供する。この反応は、ミスマッチ又はその近くでの1つのストランド又はもう1つのストランドの分割とそれに続く分割済みストランドからのミスマッチ塩基の切除及びもう1方のストランドの配列に対しテンプレートされたヌクレオチドを結果として得られた空隙の中に満たすための重合から始まる。結果として得られるニックは、バックボーンを再結合させるべく連結により密封され得る。ヘテロ2本鎖分子全体を通して発生する別々の独立したミスマッチ解消事象の合計の結果、その分子全体にわたる配列情報の再集合がもたらされることになる。配列情報は、配列変異体の複合ライブラリを生成するべくさまざまな組合せの形で再集合することになる。
GRAMMRの1実施形態においては、突然変異誘発PCR、化学的突然変異誘発などといった当該技術分野において既知のあらゆる方法によって突然変異体ライブラリが生成され、その後所望の特性をもつ突然変異体についてスクリーニング又は選択が行なわれる。突然変異体DNAは、混合され、1本鎖へと変性され、アニールさせられる。ハイブリダイズする部分的に相補的なストランドは、ミスマッチの部位において塩基対合していないヌクレオチドを有することになる。CEL I(Oleykowski et al., 1998; Yang et al., 2000)又はRES Iといった類似のミスマッチ特異的活性での処理は、ミスマッチ又はその近くでの1方又は他方のポリヌクレオチドストランドのニッキングをひき起こすことになる。さらに、CEL I又はRES I又は、挿入/欠失又はその近くでニックし得る。プルーフリーディング活性(例えばT4DNAPol)を含有するポリメラーゼの存在は、ミスマッチの切除を可能にし、その後のポリメラーゼ活性は、その他のストランドをテンプレートとして用いて空隙を満たすことになる。5′〜3′エキソヌクレアーゼ活性及びストランド変位活性が欠如したポリメラーゼが空隙を満たし、それがもとのCEL I分割部位にあるDNAの5′末端に達した時点で重合を止め、かくして短かい配列区画のみを再合成することになる。このときDNAリガーゼ(例えばT4DNAリガーゼ又はE. coli DNAリガーゼ)は、リン酸塩バックボーンを回復させることによりニックを密封することができる。このプロセスは、数多くの部位でそして一定の与えられたヘテロ2本鎖DNA分子のいずれかのストランド上で同時に起こり得る。その結果は、出発配列の集団よりもさらに多様な配列変異体集団を提供するための入力ストランド間の配列差異のランダム化である。これらの出力ポリヌクレオチドは、適切なベクター内に直接クローニングされ得るか又は、クローニングの前にPCRにより増幅され得る。代替的には、反応は、GRAMMR反応の後適切な宿主内に直接導入され得る2本鎖環状プラスミド分子又はその他の適切なレプリコンという状況の範囲内でヘテロ2本鎖領域上で実施可能である。もう1つの変形形態においては、出力ポリヌクレオチドをRNAポリヌクレオチドへと転写し、例えばウイルスベクター転写プラスミドの場合のように植物上へ植物ウイルスベクターを接種することによって直接使用することができる。結果として得られたクローンは、所望の特性における改善についての選択又はスクリーンに付される。このとき、付加的な改善を得ようとして選択されたクローンで単数又は複数回全プロセスを反復することができる。
出力ポリヌクレオチドが直接クローニングされる場合、クローニング宿主内の複製時点で同じ細胞内の2つの異なるプラスミドを導き得る不完全に解消した分子の存続の可能性が存在する。これらのプラスミドは潜在的に混合プラスミドコロニーを発生させる。このような可能性を回避したい場合、出力ポリヌクレオチド分子を宿主内で成長させて複製/解消を可能にし、ポリヌクレオチドを単複し新しい宿主細胞へと再度形質転換させることができる。
もう1つの実施形態では、1分子につき2つ以上の親から入力された配列が望まれる場合、上述の手順は、出力ポリヌクレオチドのあらゆるクローニングの前に循環的に実施される。GRAMMR反応の後、2本鎖ポリヌクレオチドは変性され、アニールさせられ、ミスマッチ解消プロセスが反復される。所望の回数のこのようなサイクルの後、出力ポリヌクレオチドを直接クローニングし、適切なベクター内に導入することができ、そうでなければクローニングの前にこれらをPCRで増幅させることができる。結果として得られたクローンは、所望の特性の改善についての選択又はスクリーンに付される。
もう1つの実施形態では、所望の突然変異から有害な突然変異のバックグラウンドを除去する一助となるべく「分子戻し交配」が実施される。該方法を実施するため、所望の突然変異体DNAのプールを野生型DNAにハイブリダイズすることができる。クローンを改善について選択し、さらなる有意な変化が全くなくなるまで再び野生型に戻し交配させることができる。
プロセスの効率は、ヘテロ2本鎖分子について出発集団を富化させ、かくして未改変親型出力分子の数を削減するさまざまな方法によって改善される。ミスマッチハイブリッドは、アプタマー、染料又はミスマッチDNAに結合するその他の作用物質を用いて親和性精製され得る。好ましい実施形態は、MutSタンパク質親和性マトリックス(Wagner et al., Nucleic Acids Res. 23 (19): 3944-3948 (1995); Su et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 83: 5057-5061 (1986))又はミスマッチ結合性ただし非分割性のファージT4エンドヌクレアーゼVII突然変異体(Golz及びKemper, Nucleic Acids Research, 1999; 27: e7)の使用である。
1つの実施形態においては、手順は、入力ポリヌクレオチドが各々の配列変異体の1本鎖から成るように修正される。例えば、部分的相補的な1本鎖分子を生成するべく非対称PCRにより異なる親配列から、ストランドの性質が相対する複数の1本鎖DNAが産生される。ヘテロ2本鎖を作るためのストランド相互のアニーリングは、例2で記述されている通りに実施される。代替的には、Lambdaエキソヌクレアーゼで各々の親2本鎖DNAの1つのストランドを優先的に消化し、その後続いて残りのストランドを互いに対してアニールすることにより、1本鎖DNAを生成することができる。この実施形態においては、アニーリングストランドには、再アニールすべき100%相補性ストランドが全く存在しない。従って、より高い再集合配列変異効率を導く出力ポリヌクレオチドの中の未修飾ポリヌクレオチドすなわち「親ポリヌクレオチド」のより低いバックグラウンドが存在する。この効率の増大は、所望のポリヌクレオチドについてテストするために、選択よりもむしろスクリーンが利用される状況において特に貴重なものとなる。
ヘテロ2本鎖形成のためのもう1つの方法は、2本鎖親DNAを混合し、ストランドを解離するべく変性させ、1本鎖DNAが互いにアニールしてヘテロ2本鎖及び親ホモ2本鎖集団を生成するようにすることにある。次に、MutS又は非分割性T4エンドヌクレアーゼVII突然変異体を用いた上述の方法のようなヘテロ2本鎖捕捉方法により、ヘテロ2本鎖を選択的に富化することができる。代替的には、ヘテロ2本鎖内では分割されず親ホモ2本鎖分子内で分割される制限酵素によって、集団内の親ホモ2本鎖分子を分割することが可能である。次に未分割のヘテロ2本鎖DNAを、例9に記述されているように全長プラスミドヘテロ2本鎖分子上に全長プラスミドを生成する目的で実施された通りにアガロースゲル内でのサイズ分画によって単離することができる。次に、DNAリガーゼとのインキュベーションにより、これらの全長ヘテロ2本鎖プラスミド分子内でのニックシーリングがもたらされた。
もう1つの実施形態においては、「クランプ」配列を添加することによって、親又は入力2本鎖ポリヌクレオチドが修飾される。1つの入力ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドプールは、5′プライマ内に1つのユニーク配列の付加を伴ってPCRによって増幅される。もう一方の入力ポリヌクレオチド又はプールは、3′プライマ内に1つのユニーク配列の付加を伴ってPCRにより増幅される。クランプ配列は、GRAMMR反応の産物のクローニング段階において、第1のポリヌクレオチド(又はプール)からの5′クランプ及び第2のポリヌクレオチド(又はプール)からの3′末端を伴う産物のみがクローニングのための適切な末端を有することになるような形で、問題の遺伝子の5′末端のための1つのユニーク制限酵素部位及び3′末端のためのもう1つを含有するように設計され得る。代替的には、GRAMMR反応の産物は、類似の結果を達成するべく5′及び3′クランプのユニーク配列を用いてPCR増幅され得る。従って、再集合配列変異の効率をより高くする出力ポリヌクレオチドクローンの中の未修飾ポリヌクレオチドすなわち「親ポリヌクレオチド」のより低いバックグラウンドが存在する。この効率の増大は、所望のポリヌクレオチドについてテストするために選択が利用される状況において、特に貴重なものとなる。任意には、いずれかの親が上部ストランドとして役立つことができかくして両方の相互ヘテロ2本鎖がミスマッチ解消反応に参加できるようにするようにクランププライマ配列と相補的なオリゴヌクレオチドプライマをGRAMMR反応に対し付加することができる。
ヘテロ2本鎖の1つの末端から延びる1本鎖クランプ配列がヘテロ2本鎖のもう1方の末端から延びる1本鎖クランプ配列と相補的である上述の通りの末端クランプ配列を親2本鎖DNAが有している、環式ヘテロ2本鎖化ポリヌクレオチドを生成するためのもう1つの方法が実施される。これらの相補的1本鎖クランプはアニールさせられ、かくしてヘテロ2本鎖化されたDNA分子を環状化させる。同一配列の再アニーリングの結果得られる親ホモ2本鎖は、1つのクランプ配列しかもたず、従って、環状化が起こり得るその末端において相補的1本鎖配列を全く有していない。さらに、DNAポリメラーゼ及びDNAリガーゼは、それぞれ環状分子内のあらゆる空隙を満たすため及びバックボーン内のニックをシールするために用いられ、共有結合により閉鎖された環状ヘテロ2本鎖分子の集団を形成する結果となることができる。共有結合で閉鎖された環状ヘテロ2本鎖分子は、さらなる変性条件に付された場合にその構成要素ストランドへと解離しないことから、より多くの線状2本鎖親2重鎖を閉鎖環状ヘテロ2本鎖に転換するために、変性、環状化及び連結のプロセスを反復することができる。
もう1つの実施形態においては、1本鎖環状ファージミドDNAの1領域を、関連するものの同一でない線状DNAにハイブリダイズでき、これを次にT7DNAポリメラーゼ又はT4DNAポリメラーゼといったポリメラーゼに加えてT4遺伝子32タンパク質を用いて拡張させることができ、その後結果として得られたニックにおいて連結させて、DNA間の差異部位にヘテロ2本鎖化された領域を伴う環状2本鎖分子を得ることができる。次に、この分子上でGRAMMRを実施して配列再集合された分子ライブラリを得ることができる。
代替的には、プラスミドバックボーンとの関係において相対するストランド極性の2つの1本鎖環状ファージミドDNA及び再集合の標的である親遺伝子配列が互いに対しアニールされる。ファージf1起点配列が存在する広範なミスマッチ領域が発生することになる。しかしながら、GRAMMR処理の時点で、この広範なミスマッチ領域は、機能的f1起点を回復するいずれかの親タイプ配列へと戻ることができる。これらの2本鎖分子は同様に、問題の親遺伝子をコードするストランド間の差異部位においてミスマッチ領域を含むことになる。このとき、この分子上でGRAMMRを実施して、配列再集合された分子のライブラリを得ることができる。
以上の段落で論述された通り、出発DNA又は入力DNAは、任意の数の形態をもつものであり得る。例えば入力DNAは、例2で教示されているように、全長、1本鎖及び相対する方向のものであり得る。代替的には、入力DNAは同様に、全長ストランドのフラグメントでもありうる。入力DNAは、いずれか1方又は両方共、2本鎖であり得、そうでなければ、メチル化、ホスホロチオレートリンケージ、ペプチド、核酸、DNA内へのウラシル取込み、1方又は両方のストランド内でのRNA置換などによって修飾可能である。2重鎖のいずれかのストランドは、両ストランドに沿って連続しているか、不連続ではあるものの隣接しているか、重複を伴って不連続であるか、又は空隙を伴って不連続であり得る。
DNAフラグメント化及び再構築ベースのDNAシャッフリングスキームに対してGRAMMRを適用することも可能である。例えば、遺伝子再構築中の変性、アニーリング及び延長サイクルを通して遺伝子フラグメントが取られる方法においては、中間段階としてGRAMMRを利用することができる。
このような1つの実施形態においては、1つの遺伝子又は突然変異体遺伝子プールからのDNAは、酵素、機械的又は化学的手段によってフラグメント化され、任意には、1つのサイズ範囲の前記フラグメントは、アガロースゲル上の分離といったような手段により単離される。野生型又は所望の変異体又はそのプールといったような出発ポリヌクレオチドは、フラグメントに付加され、混合物は変性され次にアニールされる。アニールされたポリヌクレオチドはポリメラーゼで処理されて、テンプレートとして無傷ストランドを用いて1本鎖空隙を満たす。結果としての部分的に相補的な2本鎖は、ミスマッチ部位において非塩基対合ヌクレオチドを有することになる。CEL I(Oleykowski et al., 1998; Yang et al., 2000)又はRES Iといった類似の活性をもつ作用物質での処理は、ミスマッチ又はその近くでの1方の又はもう一方のポリヌクレオチドストランドのニッキングをひき起こすことになる。T4DNAポリメラーゼといったようなプルーフリーディング活性を含有するポリメラーゼの付加により、ミスマッチの切除が可能となり、その後のポリメラーゼ活性は、もう1方のストランドをテンプレートとして用いて空隙を満たすことになる。このとき、T4DNAリガーゼといったようなDNAリガーゼが、リン酸塩バックボーンを回復することによってニックをシールすることができる。その結果、潜在的に改善された特性をもつ出力ストランドを提供する目的での入力ストランドの間での配列変異のランダム化がもたらされる。これらの出力ポリヌクレオチドは、適切なベクター内に直接クローニングされ得、そうでなければ、これらをクローニングの前にPCRで増幅することができる。結果として得られたクローンは、所望の特性の改善のため、選択又はスクリーンに付される。
このような1実施形態においては、突然変異体遺伝子のプールからのDNAは、酵素的、機械的又は化学的手段によってフラグメント化されるか又は、親テンプレートにアニールされたランダムオリゴヌクレオチドの制限された延長によってフラグメントが生成され(米国特許第5,965,408号)、任意にはアガロースゲル上の分離といったような手段により1サイズ範囲の前記フラグメントが単離される。混合物は変性され、次にアニールされる。アニールされたポリヌクレオチドは任意には、1本鎖空隙を満たすべくポリメラーゼで処理される。結果としての部分的に相補的な2本鎖フラグメントは、ミスマッチ部位において非塩基対合ヌクレオチドを有することになる。CEL I(Oleykowski et al., 1998; Yang et al., 2000)又はRES Iといった類似の活性をもつ作用物質での処理は、各ミスマッチの一方の又はもう一方のポリヌクレオチドストランド3′のニッキングをひき起こすことになる。T4DNAポリメラーゼといったようなプルーフリーディング活性を含有するポリメラーゼの活性により、ミスマッチの切除が可能となり、その後のポリメラーゼ活性は、もう一方のストランドをテンプレートとして用いて空隙を満たすことになる。任意には、このとき、T4DNAリガーゼといったようなDNAリガーゼが、リン酸塩バックボーンを回復することによってニックをシールすることができる。その結果、潜在的に改善された特性をもつ出力ストランドを提供する目的での入力ストランドの間での配列変異のランダム化がもたらされる。その後の変性、アニーリング及びGRAMMRラウンドが、遺伝子の再構築を可能にする。再構築された遺伝子の所望の部分を増幅するためにPCRを使用することができる。これらのPCR出力ポリヌクレオチドは、適切なベクター内に直接クローニングされ得る。結果として得られたクローンは、所望の特性について、選択又はスクリーンに付される。
本発明のもう1つの実施形態は、もう1つの遺伝子又は複数の遺伝子のフラグメントがアニールする連続足場ストランドで出発する段階を提供する。フラップ及びギヤップは、Coco et al., Nature Biotech 19 (01) 354; 米国特許第6,319,713号に記述されているようにトリミングされ満たされ、GRAMMRが実施される。このプロセスにおいては、GRAMMRは、テンプレートストランドとフラップ及びギヤップのトリミング及び連結の結果としてのストランドの間の配列情報の移送を可能にすることによって、さらなる配列再集合をもたらすことになる。この方法は、1つの連続したストランド内に特異的配列パッチを取込みそれに続いて、足場とミスマッチする残基のGRAMMRを行なうという利点を提供する。同じ配列又は遺伝子に対し同時に数多くのフラグメントをアニールすることにより、数多くの個々の部位を同時に対処でき、かくして、多数の配列又は遺伝子を直ちに再集合することが可能となる。当該実施形態においては、足場は必ずしも分解されず、むしろ、2重鎖を直接クローニングするか又はクローニングの前にPCRで増幅することができる。徹底的なミスマッチ解消の結果、完全に2重化されたDNAが得られる。部分的ミスマッチ解消は、基本的に1つの2重鎖につき2つの異なる再集合された産物を結果としてもたらす。
当該開示から認識できるように、GRAMMRを同様に、そのプロセス内の1段階として関連DNAのアニーリングを内含するさまざまな方法に対し適用することもできる。例えば、数多くの部位特異的突然変異誘発プロトコルが、ファージミド又は変性プラスミドのいずれかの1本鎖形態をした環状DNAに対する突然変異体コーディングDNA分子のアニーリングを要求する。これらのDNAは、次に1つのポリメラーゼで延長され、その後ひき続いてニックをシールするためにリガーゼで処理され、親配列を除去するべくさらに操作され、所望の単数又は複数の突然変異が親遺伝子バックグラウンド内に取込まれた状態で残される。これらのプロトコルは一般に、特定のDNA配列内へ特異的突然変異を取込むのに使用されるものの、2つのストランドの間の配列変異を再集合するべくこのようなプロセスの中で生成されたヘテロ2本鎖化分子にGRAMMR反応を適用することができ、かくして、再集合された遺伝子変異を伴うさまざまな後代セットが結果としてもたらされるようにすることが実行可能である。
もう1つの実施形態は、問題のDNAの特定の領域のみに対する再集合の配列ラウンドを提供する。例えば、DNAフラグメントが環状1本鎖ファージミドDNAにアニールされ、GRAMMRが実施される。フラグメントは、それらが出力材料内に物理的に取込まれるのを防ぐように処理できる。例えば、これらを延長不可にするジ−デオキシ残基で3′末端において終結させることが可能である。多数の再集合ラウンドを実施することができるものの、もとの入力1本鎖DNAクローンからの修飾された分子のみが回収されることになる。その結果、この再集合において使用されるDNAフラグメントは最終産物に対し配列情報のみを寄与し、最終的な回収可能な産物内に物理的に組込まれることはない。
選択されたライブラリ成員間の組換えを得るべく、タンパク質、ペプチド又はアプタマー表示方法のためにGRAMMRを使用することができる。GRAMMRには入力DNAのフラグメント化が必要とされないことから、配列のきわめて小さいストレッチ間での配列情報を再集合することが可能であり得る。例えば、標的結合といった特定の特性について選択されたRNAアプタマー又は小さいペプチドをコードするDNAを再集合することができる。選択されたDNA分子の間でアニーリングが発生するためには、特定のデフォルトセットに対するコドンウォッブル塩基同一性の偏向を通してか又は類似の結合活性に起因する類似性を担持するランダム化された配列セグメントの領域内で例えばコーディング配列の5′及び3′領域において分子間で一部の配列相同性レベルが共有されるべきである。
GRAMMRが行なわれる反応温度の操作が有用であり得る。例えば、温度が比較的低くなるとヘテロ2本鎖の安定化を助けることとなり、GRAMMRをよりミスマッチレベルの高い基質上に実施することが可能となる。同様にして、塩、PEG、ホルムアミド、などといったストランド間の塩基対合に影響を及ぼす添加剤を使用して、GRAMMR反応内のヘテロ2本鎖の安定性を改変し、かくして反応の成果に影響を与えることができる。
もう1つの実施形態は、GRAMMRによるゾーン突然変異誘発、すなわち、多重塩基対合の潜在能力をもつヌクレオチド類似体を用いたミスマッチ残基及びそのすぐ近くにおけるランダム又は半ランダム突然変異を提供する。このことは、問題の特定の点における基本的にランダムな突然変異誘発の集中を提供し、本発明に対しもう1つの利点を追加する。類似するものの互いにわずかに異なる機能をもつ遺伝子群、例えば数多くの酵素が、その独自の特定の活性について操作可能になる領域内で互いに中庸な配列差異を示すことになる。これらの活性には、基質の選好性、総合パートナー、調節部位などが含まれ得る。これらの機能を支配する遺伝子配列は、関連する遺伝子の集団内部で非相同的であるべきである。かかる機能の特異性はこれらのアミノ酸及びそれらの隣接アミノ酸と結びつけられることがわかっているため、GRAMMR突然変異誘発は、遺伝子間の配列情報を再集合することに加えて、これらの領域にランダム突然変異誘発を導きそれらの機能を展開させ、しかもその間ランダム化に対する寛容度が潜在的に低いその他の配列、例えば構造的枠組、不変残基及びその他のこのような重要な部位を混乱させないことが可能である。
全く異なる機能をもつ異なる酵素は、活性部位及び調節部位といったような操作可能領域内でちょうど異ならないものとなる。これらは、遺伝的浮動を通して発生するその他の相互の差異を有する確率が高い。従って、かかる変化の場所におけるさらなるランダム化は、突然変異誘発実験の成果にとって有害又は最小限の重要性しかもたない。又は中性的であるとみなすことができる。かかる重要度の低い部位から離れるように及び1つの酵素の活性部位といったようなランダム突然変異誘発のためのより優れた結果を提示できる部位に向かってランダム突然変異誘発を導くためには、これらの領域内のヌクレオチド相補性の全体的レベルを増減させるべく遺伝子のコドン使用頻度の偏向を操作することができる。相補性がさらに大きい領域が、相補性が比較的低い領域に比べてGRAMMRに対する感受性が低い場合には、一定の与えられた部位におけるGRAMMER誘導されたゾーンランダム突然変異誘発の度合を変調させることができる。
任意のDNAシャッフリング実験において、シャッフリングされた後代の集団内で得られるシャッフリングされていないDNA又は親DNAの集団を最小限におさえることが望ましい。これを達成するために、数多くのアプローチを使用することができる。シャッフリングされるべき遺伝子が別々のただしその他の点では同一であるプラスミドの上に存在するプラスミドオンプラスミドのDNAシャッフリングフォーマットにおいては、各々のプラスミドは、存在する1つの又はもう1つの異なるユニーク制限部位において線状化される。制限エンドヌクレアーゼの除去の後、線状化されたDNAは混合され、融解して離され、ニックされ閉鎖された環状ヘテロ2本鎖分子であるか又は2本鎖及び線状ホモ2本鎖であるヘテロ2本鎖DNAの集団が形成するようにアニールさせられる。GRAMMR反応のための所望の基質を表わしているのは、環状2本鎖ヘテロ2本鎖DNA分子の集団である。ゲル分画によりこの所望の集団を富化すること又はこの集団の物理的分離を必要としないもののむしろシャッフリングを受けていない親分子の回収を促進するような1つの又は数多くの方法を使用することが可能である。このような方法のいくつかを以下で列挙する。
まず第1に、線状親ホモ2本鎖及び環状2本鎖ヘテロ2本鎖の混合集団のGRAMMR反応の後、E. coliの形質転換が一般に実施される。環状DNAはE. coliを形質転換させる上でその線状化された対応物よりもはるかに効率が良いことから、この段階で、形質転換−コンピテント分子へのその環状化を防止することにより親ホモ2本鎖を強力に弁別することができる。E. coli DNAリガーゼをGRAMMR反応のリガーゼ成分として使用することは、制限エンドヌクレアーゼ分割から結果としてもたらされる短かい粘着末端を接合するよりもさらに効率良くニックをシールすることから、親ホモ2本鎖の再環状化を防止するのに役立つことになる。さらに、この酵素は、きわめて低い効率で平滑末端を連結する。この戦略を使用する結果、GRAMMR反応を伴うE. coliの形質転換の結果としての後代は、シャッフリングされない親遺伝子が涸渇し、ヘテロ2本鎖基質としてGRAMMR反応に入る分子が富化される。
GRAMMR出力分子の集団から親遺伝子汚染を除外するためのもう1つの方法は、選択可能マーカー内部にプラスミド線状化部位を位置づけすることである。部位は、ヘテロ2本鎖の付着末端の間でアニーリングが起こることができるようにするため互いに充分に離隔しているべきであり、充てん又はトリミングされ得るオーバーハングを有するか又は分割時点で配列の欠失をひき起こすかのいずれかであるべきである。上述のように、シャッフリングされるべき遺伝子を含有するプラスミドは部位のうちのいずれかにおいて線状化される。制限エンドヌクレアーゼの除去後、線状化されたDNAは混合され、融合され、アニールさせられる。結果として得られた標本は、ヘテロ2本鎖及び線状ホモ2本鎖の混合で構成されている。この標本はこのとき、dNTPの存在下でT4DNAポリメラーゼといったようなプルーフリーディングポリメラーゼで処理され得る。環状ホモ2本鎖は影響を受けていない状態にあるべきであり、一方線状親ホモ2本鎖はその末端において平滑化されていることになり、GRAMMR反応内の任意の点でその分子が再環状化状態選択可能マーカーの配列に対し有効に塩基を付加又は欠失させる。これらの配列の付加又は欠失が選択可能マーカーの機能の分断を結果としてもたらす場合には、結果としての分子は適切な選択の下で回収されなくなる。
シャッフル済みライブラリの未シャッフル親汚染を防止するために使用できるもう1つの方法は、融合及びアニーリングに先立ち線状化されたDNAを脱リンすることである。線状ホモ2本鎖分子は、環状ヘテロ2本鎖が各ストランド内に単一のニックを単に含有しているもののなお環状ひいてはE. coli内への効率の良い形質転換に対する応答能をもつ状態にとどまることになるのに対して、環状分子内に連結することができない状態にされることになる。
シャッフル済みライブラリの未シャッフル親汚染を防止するために使用できるもう1つの方法は、ヘテロ2本鎖化された分子内のミスマッチによりその認識部位が重複される酵素で消化を行なうことである。これらの部位における親ホモ2本鎖の消化は、親汚染を低減させるべく上述の処理のいずれかを受けることができるように、結果としての分子を線状にすることになる。結果としての分子は同様に、さらに小さくすることもでき、かくして無傷の環状ヘテロ2本鎖分子からの分離が容易になる。
シャッフリング実験から未シャッフル親分子を除外することに加えて2つ以上の親遺伝子の集団のいずれか2つ以上の遺伝子の間のシャッフリングを防止することが望まれる場合、上述の同じ原則が適用され得る。
本発明においては、ランダム再集合は、in vitro DNAミスマッチ解消反応において起こる。この方法では、以前の突然変異再集合(「シャッフリング」)方法の基礎として役立つ「遺伝子再構築」のいずれの段階も必要とされない。その代り、これは、in vitroでのハイブリダイゼーション及びミスマッチ解消によりDNAの単数又は複数のストランドからの配列変異をもう1つのDNAストランド内に伝達するために、再構成された又は人工的なDNAミスマッチ解消システムの能力に基づいている。
一般に、組換え型DNA技術の標準技法が、本明細書に各々参考として全体が内含されている、例えば(Ausubel, 1987, Ausubel, 1999; Sambrook et al., 1989)といったさまざまな刊行物の中で記述されている。メーカーの勧告に従って、ポリヌクレオチド修飾用酵素が使用された。望ましい場合、予め定められたDNA配列を増幅するためのPCRアンプリマーを熟練者の裁量にて選択することができる。
GRAMMR反応に関与する本発明中で教示された活性の各々を、類似の活性をもつ機能的に等価の作用物質と互換することができるということ、及びかかる変更が本発明の範囲内に入ることがわかる。例えば、例6に表わされているように、Tag DNAリガーゼはT4DNAリガーゼに置換できる。E. coli DNAリガーゼといったその他のリガーゼも、置換され得る。同様にして、例12に示されているように、T7DNAポリメラーゼをT4DNAポリメラーゼに置換させることができる。適切なプルーフリーディング活性をもつその他の酵素が、GRAMMR反応に必要とされるプルーフリーディング活性のためにこれらの酵素のいずれかの代りに機能することができる。類似の要領で、GRAMMRのために働くことが実証されたものと機能的に等価の活性を伴うあらゆるポリメラーゼ置換のために使用することができる。
ストランド分割を、数多くの方法でもたらすことができる。CEL Iに加えて、さまざまな植物種からの抽出物の中に発見される潜在的に類似の活性及び数多くの機能的等価物(Oleykowski, Nucleic Acids Res 1998; 26: 4597-602)を使用することができる。T4エンドヌクレアーゼVII、T7エンドヌクレアーゼI及びSPヌクレアーゼといったようなその他のミスマッチ特異的エンドヌクレアーゼ(Oleykowski, Bio-Chemistry 1999; 38: 2200-5)を使用することができる。もう1つの特に有用なミスマッチ特異的エンドヌクレアーゼは、RES Iである。
CEL I及びRES Iは、所望の特性をもつ酵素変異体を得るために修飾され得る。植物を調査することにより、その他の供給源からの相同な核酸配列を発見することができる。代替的には、CEL I又はRES Iは突然変異を受けることができ、ヘテロ2本鎖分子を形成するべく100%未満の同一性をもつ相対するストランドを合わせることができる。本明細書で開示された当該方法又はもう1つの方法を用いて、新しいCEL I及びRES I酵素変異体を進化させることが可能である。
CEL Iはミスマッチエンドヌクレアーゼである。
CEIはセロリから単離されたミスマッチエンドヌクレアーゼである。ターゲティングされたポリヌクレオチド配列内の突然変異、特にガンに付随する突然変異の検出のための診断方法におけるCEL Iの使用が、米国特許第5,869,245号で開示されている。CEL Iを単離し調製する方法も同様にこの特許内で開示されている。しかしながら、この特許内には、DNA配列の再集合におけるCEL Iの使用に関しての開示は全く存在しない。
CEL Iをコードする核酸分子が、PCT出願公報第WO01/62974A1内で開示されている。米国特許第5,869,245号と同様、ガンに付随するターゲティングされたポリヌクレオチド配列内の突然変異の検出のための診断方法におけるCEL Iの使用が開示されている。ここでも同様に、DNA配列再集合におけるCEL Iの使用に関する開示は全く存在しない。
RES Iはミスマッチエンドヌクレアーゼである。
ターゲティングされたポリヌクレオチド配列内の突然変異特にガンに付随する突然変異の検出のための診断方法において、RES Iエンドヌクレアーゼの使用が考慮されている。これらのタイプの診断方法のうちの一部分の例が、米国特許第5,869,245号及びDel Tito et alの中で開示されている。RES Iの使用は、同様に、大型ゲノム領域内で突然変異を検出するための方法Sokurenko et al.,の中で、及びMcCallum et al.に開示されているようにTILLINGといったような突然変異スクリーニング方法のために、考慮されている。
in vitroでの8個の考えられる塩基ミスマッチのいずれか又は8、4又は1個のヌクレオチドのDNA−ループとのファージT4のエンドヌクレアーゼVIIの反応性は、「ファージT4のエンドヌクレアーゼVIIがin vitroでのミスマッチの矯正を開始させる」Solaro, et al., J. Mol Biol 230 (93) 868の中で開示されている。この刊行物は、誤対合の6つのヌクレオチド3′の内部でニック及びカウンタニックを作り上げることによりエンドヌクレアーゼVIIが2本鎖破断を導入するメカニズムについて報告している。該刊行物は、第1のニックとカウンタニックの発生の間の時間的遅延が、gp43の3′〜5′エンドヌクレアーゼ活性に誤対合を除去させかつそのポリメラーゼ活性がカウンタニックの発生前にギヤップを満たすことができるようにするのに充分なものであったということを開示している。ヌクレオチドは、いずれかのストランド上でのミスマッチの3′に位置特定され第1の安定した塩基対におけるミスマッチの5′で停止する第1のニックから消去される。ポリメラーゼ活性は、5′から3′方向で、DNAリガーゼによりシールされている初期ニックに向かって進む。その結果、3から4個のヌクレオチドの非常に短かい修飾トラックが、先のミスマッチの部位を横断して延びる。該刊行物は、ファージT4内でエンドヌクレアーゼVIIが有し得るさまざまな活性に関する論述で終結している。しかしながら、該刊行物は、ファージT4の外でのエンドヌクレアーゼVIIについての実践的有用性を全く開示せず、DNA再集合におけるその適用可能性に関しての開示は全く存在しない。
Escherichia coliにおけるin vivoでのキメラDNA配列のライブラリの作成方法が、Nucleic Acids Research, 1999, Vol 27, No. 18, e18, Volkov, A. A., Shao, Z., 及びArnold, F.H. Abostado, J.P., et al., (1984). Proc Natl Acad Sci USA 81 (18): 5792-5796. Cami, B.P., et al., (1984). Proc Natl Acad Sci USA 81 (2): 503-507. Chang, S.D., et al., (1984). Gene 29 (3): 255-261の中で開示されている。該方法は、各々の親の要素から成る新しい再組合せされた配列のライブラリがヘテロ2本鎖内の非同一性の領域の修復によって作り出される、E. coliを形質転換するためのin vitroで形成されたヘテロ2本鎖を使用している。これらの刊行物は、既存のDNA組換え方法に対する便利な追加としてのこの方法の使用を開示しているが、開示された方法は、E. coliのin vivo環境内に制限されている。E. coli. Volkov, A.A., et al., 酵素学方法328: 456-463 (2000) Academic Press, Inc., San Diegoは、E. coli内のミスマッチ修復のために利用可能なメカニズムが複数存在すると述べており、又MutS/2/H酵素系を利用する「長パッチ」修復メカニズムが恐らくはヘテロ2本鎖修復の原因であったと推測している。
本発明を例示するために、以下の制限的な意味のない例が提供されている。
例1
CEL Iエンドヌクレアーゼのクローニング、発現及び精製
この例は、本明細書とp1177MP4−CEL IAvr(配列番号1)及びp1177MP4−CEL I6HIS(配列番号2)として識別されている植物からのCEL Iエンドヌクレアーゼを発現させるために用いられた核酸分子の調製について教示している。特に、この例では、本明細書に参考として内含された米国特許第5,316,931、5,589,367号、5,866,785号及び5,889,190号に教示された開示が言及されている。
セロリRNA抽出:
現地の市場でセロリを購入した。少量のセロリ組織(0.5〜0.75グラム)を刻み、液体窒素内で冷凍し、破砕ガラスの存在下で乳鉢内で乳棒によりすりつぶした。400マイクロリットルのTrizolを添加しさらにすりつぶした後、700マイクロリットルの抽出物を除去し、5分間氷上に保った。その後200マイクロリットルのクロロホルムを添加し、標本を遠心分離に付し、室温で3分間放置し、10分間15,000gで再度遠心分離に付した。水性層を新しい試験管に取り出し、等体積のイソプロパノールを添加した。試験管を倒置して混合させ、10分間室温で放置しその後4℃で10分間15000gでの遠心分離に付した。ペレットを2回、70%のエタノール400マイクロリットルの中で洗浄し、空気乾燥させ、40マイクロリットルの精製水の中で再懸濁させた。1マイクロリットルのRNasinを添加し、1%のアガロースゲル上で3.5マイクロリットルを走らせて、RNA調製物の品質をチェックした(ゲル写真)。残りは、さらなる使用まで−70℃で貯蔵した。
CEL I遺伝子クローニング及びウイルスベクターによる発見
セロリからの合計RNAを逆転写とその後のPCRに付して、CEL I遺伝子配列をコードするcDNAを増幅した。別々の反応において、合計セロリRNA調製物を11マイクロリットル、CEL I−Avr−R、CEL I−6H−Rのいずれか1マイクロリットル(50ピコモル)又はオリゴdTプライマ2マイクロリットルと混合した。CEL I遺伝子の3′末端に対し6−Hisタグ及びリンカーペプチドをコードする配列を付加するのにCEL I−6H−Rを使用する一方で、cDNAをプライミングし遺伝子増幅するためにCEL I−Avr−Rを使用した。1分間70℃まで標本を加熱し、氷上で急速冷蔵した後、各反応に対して4マイクロリットルの0.1MDTT、1マイクロリットルのSuperscript II(Gibco/BRL)を添加した。1時間42℃で反応をインキュベートした。
Tag−Pfu混合物又はPfu単独で、W.M. Barnes (Proc Natl Acad Sci. USA, 1994 Mar 15: 91(6): 2216-20)の方法を用いて、CEL IcDNA配列のPCR増幅を実施した。プライマCEL I−Pac−F(順方向プライマとして)をCEL I−Avr−R(逆方向プライマとして)と対合させて用いたPCRのためのテンプレートとして、CEL I−Avr−RでプライミングされたRT反応を用いた。その他のPCRでは、上述のプライマ対の両方のためのテンプレートとして、オリゴdTでプライミングさせたRT反応を用いた。全てのPCR反応は、50℃でのアニーリングと72℃での2分間の延長の30サイクルを用いて100マイクロリットルの中で実施した。アガロースゲル電気泳動により、結果として得られた反応のアリコートを分析した。Pfuが唯一のポリメラーゼとして使用された反応は、いかなる産物も示さなかった。Tag/Pfu混合物で実施された全ての反応は、予想されたサイズの産物を生み出した。しかしながらCEL I特異的プライマ対でプライミングされたcDNAから増幅したものは、オリゴ−dTでプライミングされたcDNAから増幅した反応に比べて、より多くの産物を提供した。最も多くの産物を提供したPCR反応からのDNAは、Zymoclean DNAスピンカラムキットを用いて精製され、PacI及びAvrIIで消化され、ゲル単離され、トバモウイルスベースのGENE−WARE(登録商標)ベクターであるPacI及びAvrII消化したプラスミドpRT130へと連結した。各連続2マイクロリットルをDH5αコンピテントE. coliへと形質転換させ、LB−amp寒天平板上で一晩培養した。コロニーを取り上げ、液体培地内で一晩成長させ、Qiagenプラスミド調製物キットを用いてプラスミドDNAを単離した。各構成体からの12クローンをPacI及びAvrIIでの消化によりスクリーニングし、各セットの12のうち11が適正サイズのインサートについて陽性であった。各構成体についてのクローンのうち10個をin vitroで転写させ、RNAをN. benthamiana植物に接種した。さらに、10クローンの両セット内のCEL I遺伝子インサートを配列分析に付した。未変性形態のCEL Iをコードするインサートを含有する複数のクローンが、WO01/62974A1内の公表されたCEL I配列と同一の配列を有していた。6−ヒスチジン配列に融合されたCEL Iをコードするインサートを含む1つのクローンが、公表されたCEL I配列と同一であった。各々(それぞれpRT130−CEL IAvr−B3及びpRT130−CEL I6His−A9)の1つのクローンをさらなる作業のために選択した。これらのクローン内のCEL Iコーディング配列をその後もう1つのGENEWARE(登録商標)ベクターまで移送した。これらのクローンp1177MP4−CEL IAvr−B3及びp1177MP4−CEL I6His−A9の配列は、それぞれ配列番号1及び配列番号2として提供される。
クローニングされたCEL I活性の検定:
CEL I配列を含有するGENEWARE(登録商標)構成体が活性のCEL I酵素を産生できるか否かを決定するため、pRT130−CEL IAvr及びpRT130−CEL I6His及びGFP−GENEWARE対照−被感染植物の標本を収獲し、pH8.0のトリス−HCl中で小型乳鉢内で乳棒により均質化させた。抽出物を清澄化し、スーパーコイルDNAニッキング活性について検定した。10マイクロリットルの合計体積で1×NEBリガーゼ緩衝液中に1マイクログラムのpUC19誘導体のスーパコイルプラスミド調製物を含有する反応の中で、各々のスーパーコイルDNAニッキング検定を実施した。反応に対し添加された植物抽出物の量は、0.1マイクロリットル、0.01マイクロリットル又は0.001マイクロリットルであり、42℃で30時間インキュベートされ、臭化エチジウムの存在下で、1%のTBE−アガロースゲル上で走行させた。GFP−GENEWARE対照被感染植物抽出物内ではニッキング活性はほとんど又は全く検出されなかったが、CEL I−GENEWARE構成体に感染した植物からの抽出物は、プラスミドDNA基質に対するかなりの量の活性を示した。
pRT130−CEL IAvr−B3及びpRT130−CEL I6His−A9での接種を受けた植物の抽出物に対して、付加的な活性検定を実施した。これらの検定においては、感染を受けた葉から細胞内流体を洗浄し、残りの洗浄済み葉組織から得た材料とは別々に検定した。インキュベーションが1時間37℃であったという点を除いて、上述の通りに検定を実施した。標本を臭化エチジウムの存在下で1%のTBEアガロースゲル上に走行させ、写真を撮った。
被感染N. benthamiana植物からの6Hisタグ付けされたCEL Iの精製:
播種から20〜21日目にpRT130−CEL I6His−A9からのRNA写しを、N-benthamiana植物に接種した。接種後10日目に96本の被感染植物から組織を収獲し、細胞内流体洗浄に付した。手短に言うと、感染を受けた葉及び茎材料を30秒間、冷蔵した浸透緩衝液(7mMのβ−MEの存在下のpH4の50mMのリン酸塩)で2回真空浸透させた。浸透させた組織をぬぐい取って、余剰の緩衝液を吸着させ、バスケット回転子(Beckman)を用いて20分間2500×gで遠心分離により分泌済みタンパク質を回収した。PMSFを、最終濃度1mMとなるまで組換え型CEL Iを含む抽出された細胞内流体(IF)に添加し、攪拌しながら15分間25℃でインキュベートした。イミダゾール(pH6.0)とNaClをそれぞれ最終濃度5mM及び0.5Mまで抽出物に添加した後、IFをpH5.2に調整し、1.2μのSartorius GF膜(Whatman)を通してろ過してRubisco及び緑色顔料の大部分を除去した。清澄化直後に、濃縮NaOH溶液を用いてpHを7.0に調整し、20分間氷上でインキュベートして非タンパク質様材料を沈殿させた。0.8μ又は0.65/0.45μのSartorius GF(Whatman)を用いてIFをさらに清澄させた。300cm/時の線速度で、5mMのイミダゾールを含有する結合用緩衝液(50mMのリン酸塩、0.5MのNaCl;pH7.0)で平衡化されたNi2+ Fast Flow Sepharose (Amersham, Pharmacia Biotech, NJ)を用いて、金属キレート化アフィニティクロマトグラフィにより、清澄済みIFから組換え型CEL Iを精製した。未結合タンパク質を20mMのイミダゾール/結合用緩衝液で洗浄し、結合用緩衝液中で20〜400Mのイミダゾールの線形勾配でNi2+セファロースからCEL Iを溶出した。なおもイミダゾールを含有する画分を上述の通りにスーパーコイルDNAニッキング活性について検定したが、無視できる程度の活性しかないことがわかった。その後、同じ画分を、10kDの分子量のカットオフ透析チュービング(Pierce)を用いて、ZnCl2の存在下でpH8.0の0.1Mのトリス−HClに対して透析し、再び検定した。この透析の後、スーパーコイルDNAニッキング活性を回復した。
XcellIIMini−Cell器具(Invitrogen, Carlesbad, CA)を用いて、Laemmliの緩衝液系の中で、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を使用して、IF及び精製済みCEL Iタンパク質を分析した。タンパク質バンドを、クーマシーブリリアントブルー及び銀染色により可視化した。SDS−PAGEゲルを走査し、Bio−Radゲル撮像装置を用いて分析した。
精製済みCEL Iの質量分析
マトリクス援用レーザー/脱着イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF)により、精製済みCEL Iの平均分子質量を決定した。50%のアセトニトリル/水でCEL Iのアリコートを1:10に希釈し、PEバイオシステムDEPro質量分析計を用いてシナピン酸マトリクス(1:1v/v)と混合した。陽−線状イオンモードで25kVの加速電圧を用いて、質量分析を実施した。
精製済みCEL Iから単離したペプチドの質量分析
14%ゲル上のSDS−PAGE上でCEL Iを分離し、クーマシーブリリアントブルーで染色した。単一の均質なバンドが目に見えた。このバンドを切除し、完全に脱染色した。37℃で30分間50%のアセトニトリル中の10mMのDDTの存在下で、タンパク質を還元し、還元したスルフヒドロ基を、光の無い状態で24℃で30分間、50%のアセトニトリル中の28mMのヨードアセタミドの存在下で遮断した。ゲルピースを50%のアセトニトリルで洗浄し、部分的脱水後、切除したCEL Iバンドを高純度トリプシン(Promega)溶液中で浸解させた。タンパク質分解消化を、16時間37℃で続行させた。結果として得られたペプチドを50%のアセトニトリルでゲルピースから溶出し0.1%のトリ−フルオロ酢酸(TFA)をSpeed Vac内で濃縮した。ペプチドをMALDI−TOFによって分析した。α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸のマトリクス中で、混合したトリプシン消化物を結晶化させ、20kVの加速電圧とリフレクタ陽イオンモードで動作させた遅延抽出を備えたPerSeptive Biosystem DE−STR MALDI−TOF質量分析計を用いることによって、分析した。予想理論質量をMS−消化物(Protein Prospector)又はGPMAWプログラム(Lighthouse Data, Odense, Denmark)により計算した。縦列型質量分析(ナノエレクトロスプレーイオン化(ESI))のために、ペプチド標本を5%のアセトニトリル/0.1%蟻酸で希釈し、LCMS/MSに付し、4重極直交飛行時間型質量分光計器(micromass, inc., マンチェスター、UK)上で分析した。データをMslynxで処理し、データベースをSonarで探査した。
ウイルス発現した組換え型CEL IをIFに対し分泌した。清澄化したIF抽出済み材料を用いて、His−tag CEL I活性を精製した。1段階Ni2+親和性クロマトグラフィ分離を用いて、CEL Iを精製した。クーマシー染色したSDS−PAGE及び質量分析法によって決定されるように、高度に精製された均質な単一のタンパク質バンドを精製した。成熟タンパク質のサイズ及びグリコシル化パーセントは、セロリから単離したCEL Iタンパク質について報告されたもの(Yang et al., 2000)と一致している。精製済みCEL Iは、MALDI−TOF質量分析により決定されるように、40kDの平均分子質量を有し、23.5質量%のグリコシル化を表わす。CEL Iは、アミノ酸位置58、116、134及び208において、4つの潜在的グリコシル化部位を有する。MALDI−TOFにより回収されたペプチド107−125(K)DMCVAGAIQNFTSQLGHFR(H)(配列番号35)の質量に対応する2152,6086(2152,0068理論上)Daのモノアイソトピック質量は、アスパラギン116がグリコシル化されないことを表わしている。これらのゲル分析及び質量分析データは、合わさって、CEL Iタンパク質の有意な画分が回収可能であること、及びタンパク質がN. benthamiana植物内で正しく処理されたことを表わしている。
その後の実験のために、p1177MP4−CEL I6His−A9を用いて6−Hisでタグ付けされたCEL I酵素を産生した。このクローンを転写し、N. benthamiana植物上に接種し、これを感染から8日後に収獲した。植物材料を、2体積の抽出緩衝液(500mMのNaCl、100mMのNaPi、25mMのトリスpH8.0、7mMのベータ−メルカプトエタノール、2mMのPMSMと組合せ、真空浸透させた。緩衝液浸透の後、組織を搾汁装置内で浸漬させ、結果として得た緑色の汁を4%w/vのポリエチレングリコールに対し調整し、1時間4℃に放置した。緑色汁を20分間低速(3500×g)での遠心分離により清澄させるか、又はパーライト(2%w/v)と組合せ1.2μmのフィルタを通してろ過した。金属アフィニティクロマトグラフィにより清澄済みの緑色汁からタグ付けされたCEL Iを選択的に精製することができる。緑色汁をニッケル−NTA樹脂と組合わせCEL Iのパッチ結合を実施するか;又はカラムフォーマットで精製を実施し、ここで緑色汁がニッケル−NTA樹脂の床を通して流れることができるようにした。結合のため、清澄済み緑色汁を10%w/vのグリセロール及び10mMイミダゾールに対し調整した。結合の後、樹脂を洗浄緩衝液(330mMのNaCl、100mMのNaPi、pH8.0、10mMのイミダゾール)で徹底的に洗浄し、結合したCEL I酵素を、400mMのイミダゾールを含有する1×リン酸緩衝液(PBS)の2樹脂床体積内でニッケル−NTA樹脂から溶出させた。CEL I調製物をその後、1×PBSに対し透析して、イミダゾールを除去し、活性について検定し、使用までグリセロールを伴って又は伴わずに−20℃で貯蔵した。
例2
CEL IによるミスマッチDNA基質の分割
この例は、CEL I酵素の調製及びミスマッチDNA基質の分割におけるその使用について教示している。
CEL I酵素は、均質化、硫酸アンモニウムそして本明細書に参考として内含されているYang et al. (Biochemistry, 39: 3533-3541 (2000))によって記述されたコンカナバリンA−セファロースプロトコルを用いて、セロリの茎から調製された。1.5kgの冷蔵セロリの茎の標本を搾汁装置を用いて均質化した。1リットルの汁を収集し、100mMのトリス−HCl、pH7.7に至るまで100マイクロモルのフッ化フェニルメチルスルフォニル(PMSF)で調整し、2層のミラクロスを通してろ過した。氷上で攪拌しながら、25%飽和に至るまで固体(NH4)2SO4をゆっくりと添加した。30分後、4℃で1.5時間27000gで懸濁液を遠心分離に付した。上清を収集し、氷上で攪拌しながら固体(NH4)2SO4で80%飽和まで調整しその後2時間27,000gでの遠心分離に付した。緩衝液B(0.1Mのトリス−HCl、pH7.7、0.5MのKCl、100マイクロモルのPMSF)中にペレットを再懸濁させ、同じ緩衝液に対し透析させた。
コンカナバリンA(ConA)セファロースアフィニティクロマトグラフィを、まず第1に透析済み標本を穏やかに攪拌しながら一晩2mlのConA樹脂と共にインキュベートさせることによって実施した。ConA樹脂を次に直径0.5cmのカラム内に詰め込み、複数カラム体積の緩衝液Bで洗浄した。緩衝液B中の0.3Mのアルファーメチル−マンノシドを用いて、溶出を実施した。1mlのアリコート中に、画分を収集した。本明細書に参考として内含されているOleykowski et al. (Nucleic Acid Research 26: 4597-4602 (1998))によって記述されている通り、45℃で30分間緩衝液D120mMのトリス−HCL、pH7.4、25mMのKCL、10mMのMgCl2)中でミスマッチプローブと共に各画分0.1マイクロリットルをインキュベートすることによって、放射線標識付けしたミスマッチ基質上でミスマッチ分割活性について画分を検定した。反応産物を、7%の尿素を含有する10%のTBE−PAGEゲル上の分離とそれに続くオートラジオグラフィにより視覚化した。ミスマッチ分割活性をもつCEL I画分のアリコートを−20℃で凍結した状態で貯蔵した。その後、一連のCEL I画分#5の5倍希釈液を、放射線標識付けされたミスマッチ基質のミスマッチ分割について分析した。反応は、緩衝液D、New England BioLabs(NEB)のT4DNAリガーゼ緩衝液(50mMのトリス−HCL、pH7.5、10mMのMgCl2、10mMのジチオトレイトール(DTT)、1mMのATP、25マイクログラム/mlのBSA)又はGibco/BRLT4DNAリガーゼ緩衝液(50mMのトリス−HCL、pH7.6、10mMのMgCl2、1mMのDTT、1mMのATP、5%(w/v)のポリエチレングリコール−8000)のいずれかの中で実施した。上述のとおりに、反応産物を視覚化した。緩衝液D中及びNEBのT4DNAリガーゼ緩衝液中の分割活性は、おおよそ同等であることがわかったが、一方PEG含有Gibco/BRLリガーゼ緩衝液内での分割は、その他の緩衝液に比べて5〜10倍増強されていた。
CEL I活性の付加的な分析は、基質として2つの異なる線色蛍光タンパク質(GFP)由来の確定したヘテロ2本鎖DNAを用いて実施した。このGFPヘテロ2本鎖基質は、センスストランド上のサイクル3GFP(配列番号30)及びアンチセンスストランド上の野生型GFP(配列番号29)に対応する1本鎖DNAをアニールすることによって調製した。1本鎖DNAを、非対称PCRによって合成し、アガロースゲル電気泳動によって単離させた。1×NEB制限酵素緩衝液2(10mMトリス−HCL、pH7.9、10mMのMgCl2、50mMのNaCl、1mMのジチオトレイトール)の存在下で90℃まで加熱し室温まで冷却することによりアニールした後、アガロースゲル電気泳動とそれに続くヘテロ2本鎖バンドの切除及びQiaquick DNAスピンカラムを用いた抽出により、ヘテロ2本鎖DNAを単離した。長さ1又は2ヌクレオチドの合計28個のミスマッチがヘテロ2本鎖分子の長さ全体にわたって発生する。ミスマッチの分布は、1又は2個のヌクレオチドによって分離された複数のミスマッチの小さなクラスタからいずれかの側で30以上の塩基対によって分離されたミスマッチまでに至る。
一連の1×NEBT4DNAリガーゼ緩衝液中のCEL Iの3倍希釈液を調製し、各々の1マイクロリットルのアリコートを、各々0.5マイクログラムのスーパーコイルプラスミド調製物又は100ナノグラムのサイクル3/野生型GFPヘテロ2本鎖のいずれかを基質として含有する2つの別々の一連の10マイクロリットル反応中でインキュベートした。全ての反応は、1×NEBT4DNAリガーゼ緩衝液内で起こった。反応を30分間45℃でインキュベートし、臭化エチジウムの存在下で1.5%のTBE−アガロースゲル上で走行させた。
増大する量のCEL Iでのスーパーコイルプラスミド調製物の処理の結果、スーパーコイルDNAはまずニックされた環状分子に、次に線状分子に、そして次にランダムサイズのより小さなDNAフラグメントに転換された。CEL I調製物でミスマッチしたGFP基質を処理した結果、全長ヘテロ2本鎖は、ミスマッチクラスタの近辺で相対するDNAストランド上の分割を表わしている確率の高いはしご状のDNAバンドへと消化された。さらなる消化の結果、CEL I調製物によるヘテロ2本鎖DNAの限界消化物を表わし得るより小さなDNAへとミスマッチしたGFP基質が転換された。
例3
GRAMMR反応におけるクローニングされたCEL Iの使用
この例は、結果に顕著な変化無く、DNAミスマッチ解消による遺伝的再集合においてセロリから精製した未変性CEL I酵素の代りにクローニングされた供給源からのCEL Iを使用できるということを教示している。
CEL IのcDNAは、セロリのRNAからクローニングされた。遺伝子を、TMVウイルスベクター内に挿入し発現させた。Nicotiana benthamiana植物を感染させるために、構成体の写しを使用した。感染した組織を収獲し、CEL I酵素を精製した。精製した酵素を用いて得たGRAMMR反応の結果を、セロリから精製したCEL Iを用いたものと比較し、類似していることがわかった。
1×NEBリガーゼ緩衝液、各0.5mMのdNTP、0.2単位のT4DNAリガーゼ(Gibco/BRL)、1単位のT4DNAポリメラーゼ及び1.0マイクロリットルのセロリから精製したCEL I(例2に記述されている画分5)又はクローニングされた供給源から精製した0.3マイクロリットルのCEL Iのいずれかを含む10マイクロリットル中の、例3に記述されている通りの環状2本鎖ヘテロ2本鎖GFPプラスミド基質21ナノグラムを用いて、反応を開始した。30分後に、各反応の1マイクロリットルのアリコートを、コンピテントDH5−アルファE. coliに形質転換し、次にこれをLBamp平板上に固定した。コロニーを取上げ培養した。プラスミドDNAを抽出し、RFLP分析により検査し、その後GFP遺伝子配列の配列分析を行なった。RFLPの結果は、制限部位の再集合すなわちGRAMMRがセロリ由来のCEL IならびにクローニングされたCEL I含有反応の両方において発生したということを示していた。DNA配列分析がこれらの結果を確認した。従って、データは、GRAMMRについてはクローニングされた供給源からのCEL IをセロリからのCEL Iの代りに使用することができるということを示している。さらに、データは、それが、セロリからCEL Iを抽出する上で用いられる精製段階の結果としての偶然一致した結果ではなくむしろ、GRAMMR反応の一部であるCEL I活性であるということを実証している。
例4
RES Iエンドヌクレアーゼのクローニング、発現及び使用
この例は、Selaginella lepidophyllaからのcDNAライブラリの構築、エンドヌクレアーゼをコードするライブラリからの核酸配列の同定、及び本明細書で「RES I」と呼称されている新しいエンドヌクレアーゼの発現について教示する。標準的な方法を用いて調製されたオリゴ−dTでプライミングされたcDNA及びTrizol方法を用いて、テマリカタヒバSelaginella lepidophyllaの組織からRNAを抽出した。結果として得たcDNAをGENEWARE(登録商標)ベースのクローニングベクター内に連結させ、連結産物をコンピテントE. coli 細胞へと形質転換させた。GENEWARE(登録商標)cDNAクローンを含む細菌コロニーを無作為に取り上げ、DNAの調製及びクローニングされたcDNA配列の決定の前に液体培養として成長させた。クローニングされたSelaginella cDNAについての配列ファイルをデータベース内にロードし、その後CEL I遺伝子のDNA配列と類似性をもつ配列についてBLAST分析により探索した。BLAST分析を同様に、その他の種から得たcDNAの配列を含有するその他のDNA配列データベース上でも実施した。
セロリのCEL I配列に対し一定レベルの相同性を示したBLASTヒットを、複数の種からのライブラリ内で同定し、対応するGENEWARE(登録商標)−cDNAクローンを単一のGENEWARE(登録商標)−cDNAクローンセット内に再配置させた。このcDNAクローンセットを次にin vitroで転写させて感染性GENEWARE(登録商標)写しを生成し、これらの写しを次に、GENEWARE(登録商標)cウイルスゲノム内部でコードされたcDNA配列の発現分析のため、Nicotiana benthamiana植物上の葉の上に接種した。接種後7日目に、感染した植物から葉の標本を取り上げ、2体積の水の中で均質化させた。その後、抽出物をスーパーコイルDNAのニッキング及び分割活性について検定した。
スーパーコイルDNAの各々のニッキング検定は、合計体積10マイクロリットルで1×NEBT4DNAリガーゼ緩衝液中のpUC19−誘導体のスーパーコイルプラスミド調製物0.5マイクログラムを含有する反応の中で実施された。反応に添加された植物抽出物の量は、1マイクロリットル、0.33マイクロリットル又は0.011マイクロリットルであり、これを30分間37℃でインキュベートさせ、Gelstar蛍光DNA染色試薬の存在下で1%のTAE−アガロースゲル上で走行させた。感染を受けていない植物抽出物内では、ニッキング活性はほとんど又は全く検出されず、一方Selaginella lepidophyllaからの単一の遺伝子のためのcDNAを含むGENEWARE(登録商標)構成体での感染を受けた植物からの抽出物のみが、プラスミドDNA基質に対するかなりの量の活性を示した。
これらのクローンの完全な遺伝子配列を決定し、読取り枠からあらゆる非コーディング5′及び3′配列を差引いたものを増幅させ、6ヒスチジンテールをコードされたタンパク質のC末端に付加するようにPCRプライマを設計した。その後、活性全長Selaginellaクローンの1つからORFを増幅するためにプライマを使用した。その後、結果として得られたPCR産物を、in plantaでの発現のためGENEWARE(登録商標)ベクターpDN4内に、PacIとAvrII部位の間でクローニングした。RES IORF(配列番号16)を含有しRES Iタンパク質(配列番号34)をコードする結果としてのクローンpLSB2225を配列決定して、遺伝子が適正に挿入されたことを確認し、次にin vitroで転写した後N. benthamiana植物上に感染性写しを接種した。接種後7日目に、上述の通り被感染植物抽出物を作り、クローニングされた酵素の活性を確認するべくスーパーコイルDNAニッキング及び消化活性について検定した。
スーパーコイルDNAの各々のニッキング検定は、合計体積10マイクロリットルで50mMのKClの存在下で1×NEB E. coli DNAリガーゼ緩衝液中のpUC19−誘導体のスーパーコイルプラスミド調製物0.5マイクログラムを含有する反応の中で実施された。反応に添加された植物抽出物の量は、0.2マイクロリットル、0.04マイクロリットル、0.008マイクロリットル又は0.0016マイクロリットルであり、これを30分間37℃でインキュベートさせ、Gelstar蛍光DNA染色試薬の存在下で0.8%のTAE−アガロースゲル上で走行させた。感染を受けていない植物抽出物内では、ニッキング活性はほとんど又は全く検出されず、一方GENEWARE(登録商標)−Selaginella構成体pLSB2225での感染を受けた植物からの抽出物は、プラスミドDNA基質に対するかなりの量の活性を示した。
この検定中で陽性の結果を得た後、GENEWARE(登録商標)産生CEL I酵素の代りにミスマッチ解消反応の一成分として作動するこの酵素の能力をテストするために、GRAMMR反応において、pLSB2225感染植物の抽出物を用いた。
例5
GRAMMR反応におけるRES Iの使用
この例は、結果に顕著な変化無く、DNAミスマッチ解消による遺伝的再集合においてセロリから精製した未変性CEL I酵素の代りにRES Iを使用できるということを教示している。
pBSWTGFP(配列番号31)によりコードされるpBS誘導体(Stratagene, La Jalla, CA)内の野生型Aequorea Victoria GFP遺伝子(Prasher, et al., Gene 111 (92) 229)と突然変異を伴う変異体の間でGRAMMRを実施して、E. coli内の蛍光強度を増大させ発光波長を青色光発光に改変した(Crameri, et al., Nat Biotechnol 14 (96) 315; Heim et al., PNAS91 (94) 12501; Yang, et al., J Biol Chem 273 (98) 8212)。図5に示されているように(配列番号32)プラスミドpBSC3BFPによりコードされたこの変異体遺伝子(配列番号33)は、長波UV光により励起された時点で明るい青色光を発する蛍光タンパク質をコードする。
GFP/c3BFpヘテロ2本鎖上で、環状の2本鎖プラスミドDNAの状況下でGRAMMR反応を実施した。まず最初にそれぞれKpnI及びNgoMIVでの消化によりpBSWTGFP(配列番号31)及びpBSC3BFP(図5、配列番号32)を線状化させ、次にDNAスピンカラムを用いて消化済みDNAを精製することによって、環状の全プラスミドヘテロ2本鎖DNA基質を調製した。次に、2つの線状化されたプラスミドを各々200ナノグラムずつ混合し、20マイクロリットルの体積で1×SSPE(180nMのNaCl、10mMのNaH2PO4、1mMのEDTA、pH7.4)までもっていった。その後、混合物を4分間95℃でインキュベートし、氷水の中に浸し、そこで10分間置いてから37℃でインキュベートした。30分後に、アニールしたDNA標本を氷に戻し、GRAMMR反応内での使用までそれを保持した。
独立した2つの一連のシャッフリング反応を実施して、GRAMMRによる配列シャッフリングを容易にするその能力に関してRES IとCEL Iを比較した。各々のGRAMMR反応は、1単位のT4DNAポリメラーゼ、2単位のE. coli DNAリガーゼ及び各dNTPを5ナノモルずつを、50mMになるまでKClで補足された1×NEB E. coliリガーゼ緩衝液内に含有していた。上述のカクテルのアリコートを含む2つの一連の試験管の各々に対して、1/3、1/9、1/27、1/81又は1/243の希釈度でGENEWARE(登録商標)で発現されたCEL I又はRES I抽出物の1マイクロリットルのアリコートを添加した。エンドヌクレアーゼを含まない対照反応も同様に調製した。各々の反応に対して、アニールされたDNAヘテロ2本鎖基質20ナノグラムを含有する1マイクロリットルのアリコートを添加し、反応を室温で1時間そして氷上で30分間インキュベートしてから、コンピテントE. coli内に形質転換させた。
長波UV照射により、結果として得たコロニーの中で緑色蛍光タンパク質(GFP)及び青色蛍光タンパク質(BFP)を視覚化することができた。親野生型GFPは、薄暗い緑色蛍光を有し、親c3BFPは明るい青色蛍光を与えた。これらの蛍光タンパク質をコードする遺伝子においては、発光色を決定する配列及び蛍光強度を支配する配列は、互いに異なる位置にある。DNAシャッフリングの結果、蛍光強度を支配する配列から発光色を決定する配列の「リンキング解除」がもたらされる。従って、結果としての後代は、発光色及び強度の機能的特性の再集合を示すことが予想されることになる。従って、各反応において起こったDNAシャッフリングの範囲の尺度は、対応する平板上の細菌コロニーからの蛍光の強度及び色を検討することによって評定できた。ゼロ−ヌクレアーゼ対照においては、薄暗い緑色と明るい青色のコロニーのみが観察された。しかしながら、CEL I又はRES Iのいずれかを含む反応からのDNAで形質転換された細胞を伴う平板上では、幾つかの明るい緑色ならびにいくつかの薄暗い青色コロニーが観察され、DNA配列のシャッフリングが起こったことを表わしていた。DNA配列分析は、これがまさに該当していること、そして平均してシャッフリングされたクローンの回収がCEL I及びRES Iの両方について85%を超えたことそして情報転送事象の数及び分布が両方の酵素について類似であることを確認した。しかしながら、この実験におけるRES Iの活性は、さらに高濃度のRES Iの調製物で処理された反応の形質転換効率が低いことによって表わされているように、CEL Iの活性よりも数倍高いように思われた。
例6
ミスマッチ解消カクテルでの全長GFP遺伝子の保存
この例は、全長GFP遺伝子を保存するさまざまなミスマッチ解消カクテルを教示する。
ミスマッチGFP基質を、共に合成ミスマッチ解消系を構成する酵素カクテルの存在下で、さまざまな濃度のCEL Iで処理した。使用された酵素は、CEL I、T4DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ及びT4DNAリガーゼであった。CEL I活性は、ミスマッチ塩基のヘテロ2本鎖3′をニックするはずである。T4DNAポリメラーゼは、ニックされたヘテロ2本鎖からのミスマッチ塩基の切除のための3′−5′プルーフリーディング活性を含んでいる。T4DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼは、ギヤップを満たす能力をもつDNAポリメラーゼを含んでいる。T4DNAリガーゼは、修復された分子内のニックをシールする。Taq DNAポリメラーゼは同様に、5′フラップ−アーゼ活性をも有している。
GFPヘテロ2本鎖基板内のミスマッチを解消するのに役立つことになる反応条件を同定するために、マトリクス実験を実施した。1つの実験においては、8つの異なる濃度での(上述の)CEL I画分No.5の階段希釈を用いて、マトリクスフォーマットで、サイクル3/野生型GFPヘテロ2本鎖をインキュベートした。各反応は、10マイクロリットルの反応体積中、各250マイクロモルのdNTP及び1×NEBT4DNAリガーゼ緩衝液内の0.2マイクロリットルのT4DNAリガーゼ(Gibco BRL)及び100ナノグラムのヘテロ2本鎖基質を含んでいた。全体として、マトリクスは96の個々の反応を含んでいた。1つのフルセットの反応を30分間室温でインキュベートする一方で、もう1つのフルセットを30分間37℃でインキュベートした。
インキュベーション後、各反応からGFP遺伝子を増幅するためにPCRを使用した。その後、各PCRからのアリコートをHindIII及びHpaIで消化し、臭化エチジウムを用いて3%のアガロースゲル上で電気泳動した。サイクル3GFPのみがHindIII部位を有し、野生型のみがHpaI部位をコードする。
DNAミスマッチ解消がHindIII又はHpaIのいずれかのミスマッチ部位で起こった場合には、PCR産物の一定の割合が両方の部位を含むものと予想され、新規のバンドを生成することになる。このバンドは、CEL IもT4DNAポリメラーゼもTaq DNAポリメラーゼももたない負の対照標本を含めた全ての標本内で観察された。結果は、バックグラウンド組換えの基底レベルがGRAMMR反応内以外の実験内の或る時点つまり考えられるものとしてはPCR段階において起こっていた可能性がある、ということを示唆していた。PCRを媒介とする組換えは、増幅中に関連する配列間で或る頻度で発生するものとして知られている(Paabo, et al., J Biol Chem 265 (90) 4718-4721)。
もう1つの実験では、200ナノグラムのサイクル3/野生型GFPヘテロ2本鎖を、T4DNAリガーゼ(0.2単位:Gibco BRL)の存在下又は不在下で2.5単位のTaq DNAポリメラーゼと共にさまざまな濃度のCEL I及びT4DNAポリメラーゼで処理した。各反応は、20マイクロリットルの最終体積で0.05mMの各dNTPと共に1×NEBT4DNAリガーゼ緩衝液を含んでいた。37℃で30分間、反応をインキュベートし、臭化エチジウムの存在下で2%のTBE−アガロースゲル上に10マイクロリットルを走行させた。結果は、DNAリガーゼの存在下で、ただしT4DNAポリメラーゼの不在下で、増大する量のCEL Iがヘテロ2本鎖DNAのより大幅な分解をひき起こしたが、この効果は反応中のT4DNAの量を増大させることによって対抗可能であるということを示した。これらの結果は、完全な反応のさまざまな構成要素が一緒に作用してDNAミスマッチ解消を通して全長遺伝子の無欠性を保存できるということを示していた。
これらの結果に基づいて拡張しこの合成系のためのDNAミスマッチ解消のための付加的な条件を同定するため、もう1つのマトリクス実験を実施した。10マイクロリットルの反応体積で各dNTPを0.5mMずつ含む1×NEBT4DNAリガーゼ緩衝液中の0.2単位のT4DNAリガーゼ及び2.5単位のTaq DNAポリメラーゼの存在下で、さまざまな濃度のCEL I及びT4DNAポリメラーゼで、60ナノグラムのサイクル3/野生型GFPヘテロ2本鎖を処理した。20℃、30℃、37℃又は45℃で1時間、各反応セットをインキュベートした。その後、全ての反応を、臭化エチジウムの存在下で1.5%のTBE−アガロースゲル上に走行させた。結果は、GFPヘテロ2本鎖がCEL I調製物単独により離散的フラグメントへと分割される、ということを示した。DNAミスマッチ解消の成功は、CEL Iの存在下でミスマッチ解消系のその他の成分によりGFP配列の見かけの全長無欠性が維持される度合により、当初評価された。この検定内の全長分子として高い割合のDNAを保存する酵素濃度及び温度の条件を、同定した。すなわち、実験内で一定に保たれたその他の反応成分の存在下での1マイクロリットル(1単位)のT4DNAポリメラーゼを伴う、1マイクロリットルのCEL1画分5調製(例2に記述されたもの)。反応温度が上昇するにつれて、CEL Iの分解活性もそれに従って増大することがわかった。その上、修復反応のその他の成分は20℃30℃及び37℃で全長DNAの無欠性を保つべく作用するものの、45℃では全長DNAを保存する上で著しく効率が低いということが示された。これらの結果から、我々は、これらの実験条件下で、45℃でのインキュベーションがGRAMMRプロセスにとって最適でなかったこと、そして20℃、30℃及び37℃でのインキュベーションが許容可能であること、という結論を下した。
例7
DNAミスマッチ解消(GRAMMR)後のGFPヘテロ2本鎖DNAへの制限部位の回復
この実験は、制限部位の回復を実証することにより、DNAミスマッチ解消(GRAMMR)による遺伝的再集合の実現可能性を教示している。
以上に記した最適な条件(1×の反応は、10マイクロリットルの反応体積で各dNTPを各々0.5mM含む1×NEBT4DNAリガーゼ緩衝液中の0.2単位のT4DNAリガーゼ及び2.5単位のTaq DNAポリメラーゼの存在下で1単位のT4DNAポリメラーゼ、(例2に記されている)1マイクロリットルのCEL I画分5、60ナノグラムのヘテロ2本鎖DNAを含んでいた)を用いて、1時間37℃で実施されたGRAMMR反応の20倍の拡大の全長産物を、ゲル単離させ、GFPヘテロ2本鎖内のミスマッチと重複する認識部位をもつエンドヌクレアーゼにより制限分析に付し、かくして制限酵素分割に対する耐性をDNA内のこれらの部位に付与した。使用した酵素は、BamHI、HindIII、HpaI及びXhoIであった。負の対照は、未処理のGFPヘテロ2本鎖で構成されていた。正の対照は、個別に、サイクル3又は野生型GFP配列で構成されていた。全ての対照は、DNAミスマッチ解消反応の産物と同じ酵素で消化された。全ての標本を、臭化エチジウムの存在下で2%のTBE−アガロースゲル上を走行させた。
ミスマッチ解消カクテルでの処理後、一定の割合のDNAがBamHI及びXhoI制限エンドヌクレアーゼに対する感応性を獲得し、DNAミスマッチ解消が発生したことを示した。負の対照内で低レベルの分割が発生したことから、HpaI−カット標本を解釈することはできなかった。HindIII、BamHI及びXhoI部位は、GRAMMR処理された標本内で異なる分割度を示した。XhoI部位の回復は、それ自体HindIII部位における回復よりもさらに大規模であるBamHI部位のものよりもさらに大規模であった。
分割が発生する程度は、DNA内のミスマッチがその部位で解消された程度を表わす。ミスマッチ解消効率の差は、これらの部位に存在するミスマッチの性質又は密度に関係する可能性がある。例えば、XhoI部位は、3ミスマッチクラスタにわたり、一方、BamHI部位は、2つのミスマッチにわたり、HindIII部位は単一のミスマッチにわたる。
例8
GRAMMR処理されたGFP遺伝子
この例は、GRAMMRがヘテロ2本鎖内の2つの遺伝子配列間の配列変動を再集合できること及び、直接クローニングされたか又はクローニングの前にPCR増幅されたGRAMMR産物の有意な差異は全く存在しないこと、を実証している。
例7のGRAMMR処理されたDNA分子は、その後、pCR−BluntII−TOPO(Invitrogen)内に連結によって直接クローニングされるか、又はPCR増幅されメーカーの指示に従ってpCR−BluntII−TOPO内に連結され、その後E. coli内へと形質転換された。個々のコロニーを採取し液体培地内で成長させた後、DNAを調製し、GFPインサートの配列を決定した。負の対照として、未処理のGFPヘテロ2本鎖基質を直接クローニングさせるか、又はプラスミド内へのクローニングに先立ちPCR増幅させた。
GRAMMRでは、1本のストランドからもう1本のストランドへの情報転送プロセスから、配列情報の再集合が結果としてもたらされる。これらの情報転送部位は、組換えベースのDNAシャッフリング方法において発生する交差事象と類似している。しかしながら、これらの再集合実験の結果を関係づけする目的で、GRAMMR出力配列は、交差に関連して記述される。GRAMMRで処理されたGFP遺伝子から誘導された20の全長GFPクローンの配列を分析した。これらのクローンのうちの4つは、GRAMMR反応(PCR増幅無し)の後にpZeroBlunt(Invitrogen)内に直接クローニングされたDNAから誘導された。その他の16の配列は、PCR増幅の後にクローニングされた。これらの全長GFP配列の分析は、20の配列全てが、遺伝子1つあたり1〜10個の間の交差をもつ配列再集合を受けたということを明らかにした。合計99の交差がこの遺伝子セット内に見い出され、1遺伝子あたり平均約5個の交差を与えた。第1のミスマッチと第2のミスマッチ間の約590個のヌクレオチドという距離で、120の塩基対あたりおおよそ1つの交差という全体的頻度が計算された。この20クローンのセット内で、PCRプライマ配列間にある配列内部で合計7つの点突然変異が発生し、おおよそ0.05%の突然変異頻度を生み出した。
GRAMMR反応を受けなかった35のクローンが配列決定された。これらの対照のうち、14個が直接的クローニングから誘導され、21がテンプレートとしてGFPヘテロ2本鎖を用いたPCR増幅の後に得られた。これらの35のGRAMMR処理されていない対照クローンのうち、8個が組換え体であり、1〜3の交差範囲にわたり、大部分が単一の交差事象であった。PCRプライマ間にある配列内で合計25の点突然変異が発生し、およそ0.1%の突然変異頻度を生み出した。
直接クローニングされたか又はPCR増幅されたGRAMMR処理済み産物の間には、いかなる有意な差異も観察されなかった。しかしながら特にGRAMMR処理されていない対照においては、組換え体の頻度は、直接クローニングされたDNA内よりもPCR増幅されたDNA内でさらに高い。このより高い頻度は、或る一定の組換えレベルが「ジャンピングPCR」によってひき起こされることがわかっているその他のものによって得られた結果と一貫性あるものである(Paabo, et al.,「DNA損傷が、酵素増幅中のテンプレート間のジャンピングを促進する」. J. Biol Chem 265 (90) 4718-4721)。
例9
GFPプラスミドのDNAミスマッチ解消によるプラスミドオンプラスミド遺伝的再集合(POPGRAMMR)のためのヘテロ2本鎖基質の調製
この例は、DNAミスマッチ解消による遺伝的再集合のためのヘテロ2本鎖基質が無傷の環状プラスミドの形をとりうるということを教示している。サイクル3−GFP及び野生型GFPヘテロ2本鎖分子を、プラスミドオンプラスミド(ポリペプチド)フォーマットで調製した。このフォーマットでは、環状2本鎖プラスミドベクターバックボーンという状況の中でGFP配列を再集合した。こうして、GRAMMR反応のアリコートを用いてE. coliの直接的形質転換による再集合された産物の回収が可能となる。その結果、再集合されたクローンを得るために、GRAMMR処理されたDNAのPCR増幅もその他の付加的な操作も不要であった。
野生型GFP(配列番号29)及びサイクル3GFP(配列番号30)を含むPOP−GRAMMR反応のためのミスマッチDNA基質を生成し、それぞれ2つのpBluescriptベースのプラスミドpBSWTGFP(配列番号31)及びpBSC3GFP(配列番号17)を結果としてもたらした。野生型及びサイクル3GFPが互いに異なっている部位において2つのプラスミド間の唯一の配列差が発生するような形で、pBluescriptポリリンカーのKpnI及びEcoRI部位の間にGFPを挿入した。SapIでのプラスミドバックボーンの消化により両方のプラスミドを線状化し、DNAスピン−カラムを用いて浄化し、混合し、1×PCR緩衝液(Barnes, 1994; PNAS, 91, 2216-2220)まで補正し、3分間沸とう水浴の中で加熱し、未変性DNAストランドをアニールすべく室温までゆっくりと冷却した。これらのDNAを変性しアニールすることにより、2重鎖の混合、親2重鎖の再形成及び2つの入力プラスミドの各々からのストランドのアニーリングからのヘテロ2本鎖の形成が導かれた。親2重鎖は、GRAMMRにとって望ましくないものとみなされ、いずれか一方の親2重鎖に切り込むもののヘテロ2本鎖化された分子には切り込まない制限酵素での消化により除去された。PmlIが野生型GFP配列にのみ切り込みXhoIがサイクル3GFPのみを切ることから、この作業のためには、PmlI及びXhoIが選択された。これらの酵素での処理の後、産物をアガロースゲル上で解消させた。全長未切断ヘテロ2本鎖分子をアガロースゲル内のPmlI及びXhoIで切断された親ホモ2本鎖から解消させ、バンドの切除及びDNAスピンカラムでの精製により精製した。
結果として得られたヘテロ2本鎖分子集団をDNAリガーゼで処理して、線状DNAを環状2本鎖DNAヘテロ2本鎖へと転換した。アガロースゲルシフト分析による確認の後、GRAMMR反応のための基質として、環状2本鎖GFPヘテロ2本鎖プラスミドを使用した。結果として得られたクローンの例が、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8として内含されている。
例10
DNAミスマッチ解消による遺伝的再集合のための反応パラメータ例
CEL I及びT4DNAポリメラーゼ濃度の比較
GRAMMR反応には、数多くの酵素活性の相互作用が関与している。CEL I濃度、T4DNAポリメラーゼ濃度、反応温度、T4DNAポリメラーゼのT7DNAポリメラーゼによる置換、Taq DNAポリメラーゼの存在、及びCEL I酵素の供給源といったようなGRAMMR反応に付随する複数のパラメータが検討された。In vitro DNAミスマッチ解消反応の限界を検討するために、3つの異なるCEL I濃度対2つのT4DNAポリメラーゼ濃度のマトリクスが構成された。
例9に記述されたように調製された環状2本鎖のヘテロ2本鎖化されたプラスミド21ナノグラム(21ng)を、1×NEBリガーゼ緩衝液、各0.5mMのdNTP、1.0単位のTaqポリメラーゼ、0.2単位のT4DNAリガーゼ(Gibco/BRL)、1.0又は0.2単位のT4ポリメラーゼ、0.3、0.1又は0.03マイクロリットルのCEL I調製物(例2に記述された画分5)を含む、一連の10マイクロリットル反応内で、基質として使用した。3つのCEL I濃度との2つのT4ポリメラーゼ濃度の全6つの組合せを表わす6つの反応を調製し、5マイクロリットルの等価のセットに分け、20℃又は37℃のいずれかでインキュベートした。その他の反応成分と共に0.2単位のT4ポリメラーゼを含みCEL Iを全く含まない対照反応を調製し、37℃でインキュベートした。30分後、各反応の1マイクロリットルのアリコートをコンピテントDH5−アルファE. coli内に形質転換し、これを次にLBamp平板上に固定した。コロニーを採取し培養した。プラスミドDNAを抽出し、制限フラグメント長多形現象分析(RFLP)とそれに続くGFP遺伝子配列の配列分析によって検査した。RFLP分析は、野生型及びサイクル3GFP遺伝子の間の複数の制限酵素認識部位に基づいていた。RFLP結果は、CEL I/T4DNAポリメラーゼ/温度マトリクス全体を通して、制限部位の再集合すなわちGRAMMRが起こったこと、及びゼロCEL I対照クローン内ではかかる再集合が全く起こらなかったことを示していた。DNA配列分析は、再集合がCEL I含有標本全ての中で発生したことを確認した。配列決定は同様に、恐らくはE. coli内の修復又はランダム突然変異のいずれかの結果として1つの遺伝子配列からもう1つの遺伝子配列への単一塩基変更を有していた16の対照クローンのうちの単一のクローンを除いて、ゼロ−CEL I対照が再集合されていないことを確認した。複数のGRAMMR−出力GFPクローン例の配列が示され、これらは全て、37℃でインキュベートされた1.0単位のT4ポリメラーゼ及び0.3マイクロリットルのCEL I調製物を含む反応に由来していた。親野生型及びサイクル3GFP遺伝子が、参考としてまず示されている。
例11
DNAミスマッチ解消による遺伝的再集合のためにTaqポリメラーゼは必要とされない
この実験は、TaqポリメラーゼがGRAMMRの機能に全くとは言わないまでも劇的には貢献も干渉もしないということを教示している。Taqポリメラーゼは、5′フラップ−アーゼ活性を有するものとして報告されており、GRAMMR反応を受けるヘテロ2本鎖化されたDNA内で望ましくない5′フラップ−アーゼ活性を有するものとして報告されており、GRAMMR反応を受けるヘテロ2本鎖化されたDNA内で望ましくない5′フラップが形成され存続する可能性に対する予防策として以上の例の教示の中に含まれてきた。
GRAMMR反応は、例10にあるように、1×NEBリガーゼ緩衝液、0.5mMの各dNTP、0.2単位のT4DNAリガーゼ、1.0単位のT4ポリメラーゼ、1.0マイクロリットルのCEL I調製物(例2に記述された画分5)及び0.2単位、0.5単位のTaqポリメラーゼを含有するか又はTaqポリメラーゼを全く含まない10マイクロリットルの反応の中で、21ナノグラムの環状2本鎖のヘテロ2本鎖化されたGFPプラスミド基質を用いて構成された。30分後、各反応の1マイクロリットルのアリコートをコンピテントDH5−アルファE. coli内に形質転換し、これを次にLBamp平板上に固定した。コロニーを採取し培養した。プラスミドDNAを抽出し、RFLP分析によって検査した。RFLP結果は、制限部位の再集合、すなわちGRAMMRが、GRAMMR反応内でTaqポリメラーゼの存在下及び不在下の両方で発生したことを示した。DNA配列分析がこれらの結果を確認した。従って、データは、TaqポリメラーゼがGRAMMRにとって不要であったことを示している。
例12
DNAミスマッチ解消による遺伝的再集合のための代替的プルーフリーディングポリメラーゼ
この実験は、DNAミスマッチ解消による遺伝的再集合がT4ポリメラーゼの使用に制限されないことそしてその代わりに代替的ポリメラーゼを使用できることを教示している。
反応は、例10にあるように、1×NEBリガーゼ緩衝液、0.5mMの各dNTP、0.2単位のT4DNAリガーゼ(Gibco/BRL)、10又は2単位のT7ポリメラーゼ、1.0マイクロリットルのCEL I調製物(例2に記述された画分5)及び2.5単位のTaqポリメラーゼを含有する10マイクロリットルの反応の中で、21ナノグラムの環状2本鎖のヘテロ2本鎖化されたGFPプラスミド基質を用いて、開始された。30分後、各反応の1マイクロリットルのアリコートをコンピテントDH5−アルファE. coli内に形質転換し、これを次にLBamp平板上に固定した。コロニーを採取し培養した。プラスミドDNAを抽出し、RFLP分析とそれに続くGFP遺伝子配列の配列分析によって検査した。RFLP結果は、制限部位の再集合、すなわちGRAMMRが、両方のT7ポリメラーゼ含有反応において発生したことを示した。DNA配列分析がこれらの結果を確認した。従って、データは、T7ポリメラーゼが、GRAMMRのためにT4ポリメラーゼに置換できることを示している。さらに、データは、個々の成分及び官能基を、GRAMMR内で広く置換させ、なおも類似の結果を得ることができる、ということを示している。
例13
ウイルスベクター内のトバモウイルス30K遺伝子の分子育種
以上の例では、きわめて相同性の高い(例えばwtGFP及びサイクル3GFPは96%同一である)配列を再集合するために、DNAミスマッチ解消による遺伝的再集合が有用であることが教示されてきた。この例は、トバモウイルス運動タンパク質遺伝子をコードする遺伝子といったようなより一層多様性の高い核酸配列を再集合するためにGRAMMRを使用できるということを教示している。
約75%同一である2つのトバモウイルス運動タンパク質CMP>遺伝子のヘテロ2本鎖が生成された。非対称PCRにより合成されたストランドの性質が相対する部分的に相補的な1本鎖DNA(1本のストランドはタバコモザイクウイルスU1型菌株(TMV−U1)由来の運動タンパク質遺伝子をコードし(配列番号9)、もう一方はトマトモザイクウイルス(ToMV)由来の運動タンパク質をコードする(配列番号10))をアニールすることによって、ヘテロ2本鎖基質を調製した。2つの部分的に相補的な運動タンパク質遺伝子の配列を、その末端でのDNAのアニーリングを促進しPCR増幅及びクローニングを容易にするために、絶対的相補性の33個のヌクレオチドでフランキングした。アニーリング反応は、333mMのNaCl、33mMのMgC12、3.3mMのジチオトレイトール、166mMのトリス−HCl、pH7を含む150マイクロリットルの反応の中で各々の1本鎖DNAを2.5マイクログラムずつ混合し、95℃で1分間インキュベートしその後室温までゆっくりと冷却することによって行なわれた。GRAMMRは、1×NEBリガーゼ緩衝液、0.5mMの各々のdNTP、0.4単位のT4DNAリガーゼ(Gibco/BRL)、2.0単位のT4ポリメラーゼ及びCEL Iを含む20マイクロリットルの反応内でヘテロ2本鎖基質を5マイクロリットルインキュベートすることによって実施された。CEL Iは、クローニングされた調製物に由来するものであり、使用された量は、2マイクロリットルの調製物から変動し、5つの3倍段階希釈が続いた。CEL Iを全く含まない7番目の調製物を調製し、これが対照として用いられた。
室温で一時間置いた後、StrataprepスピンDNA精製カラム(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて反応からDNAを精製し、2つの配列のフランキングプライマ結合部位に対しアニールするように設計されたプライマを用いたPCR反応のためのテンプレートとしてこれを使用した。各反応からのPCR産物をStrataprepカラムを用いて精製し、AvrII及びPacIで消化し、類似の要領で切断されたpGENEWARE(登録商標)−MP−Avr−Pacの運動タンパク質スロット内に連結した。このプラスミドは、その他の運動タンパク質遺伝子によるその置換を可能にするべく運動タンパク質をフランキングするAvrII及びPacI部位で修飾された全長感染性トバモウイルス−GFPクローンを含有していた。DH5−アルファE. coliの形質転換及び平板固定の後、コロニーを採取し、培養を成長させ、DNAを抽出した。運動タンパク質インサートを両方向からDNA配列分析に付し、配列データは、GRAMMRで処理された材料から誘導されたインサートの大部分において、再集合された配列がTMV−U1及びToMV運動タンパク質遺伝子配列の両方で構成されていることを確認した。複数のGRAMMR出力MPクローンのDNA配列は、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15として示されている。
例14
DNAミスマッチ解消によるプラスミドオンプラスミド遺伝的再集合(POPGRAMMR)を用いたウイルスベクター内での多様性の高いトバモウイルス30K遺伝子の分子育種
例4は、GRAMMRを用いたトバモウイルスの複数の多様性菌株(同一性約75%、pGENEWARE−MP−Avr−Pacベクター内にクローニング)からの運動タンパク質(MP)遺伝子のMEAについて教示している。この例は、より一層多様性の高い種を再集合するためのプラスミドオンプラスミドGRAMMR(POPGRAMMR)の使用について教示している。
トバモウイルスTMV−Cg(図6、配列番号18)、TMV−Ob(図7、配列番号19)、TMV−U2(図8、配列番号20)、TMV−U1(配列番号9)及びトマトモザイクウイルス(ToMV)(配列番号10)由来の出発親MP遺伝子を使用した。SmaIでの消化により、pGENEWARE−ToMVMPのプラスミドを線状化した。TMV−Cg、TMV−Ob、TMV−U2又はTMV−U1のいずれかに由来するMP遺伝子を含むpGENEWAREのプラスミドを、StuIで消化した。DNAスピンカラムを用いて、消化したpGENEWARE−MP構成体を精製した。以下のヘテロ2本鎖対が生成された:
pGENEWARE−Cg MPとpGENEWARE−ToMV MP、pGENEWARE−TMV−Ob MPとpGENEWARE−ToMV MP、pGENEWARE−TMV−U2 MPとpGENEWARE−ToMV MP、pGENEWARE−TMV−U1 MPとpGENEWARE−ToMV MP。これらのMP遺伝子配列のヘテロ2本鎖はそれぞれ47%、58%、62%及び75%の同一性を有する。ヘテロ2本鎖DNAは、20マイクロリットルの体積で1×SSPE(180mMのNaCl、10mMのNaH2PO4、1mMのEDTA、pH7.4)内で2つの線状化されたプラスミドの各々を200ナノグラムずつ混合することによって生成された。混合物を4分間95℃でインキュベートし、氷水中に浸漬し、37℃でのインキュベーションに先立って10分間ここにとどめた。30分後、アニールされたDNA標本を次に氷に戻し、ここにGRAMMR反応中での使用まで保持した。
各10マイクロリットルのGRAMMR反応は、50mMになるまでKClで補足された1×NEB E. coli DNAリガーゼ緩衝液内で0.5mMずつの各dNTP、2単位のE. coli DNAリガーゼ及び1単位のT4ポリメラーゼを含んでいた。次にCEL Iの1マイクロリットルのアリコート(1/3、1/9、1/27、1/81、1/243、又は1/729希釈)を添加した。エンドヌクレアーゼを含まない対照反応も調製した。各反応に対して、アニールされたDNAヘテロ2本鎖基質20ナノグラムを含む1マイクロリットルのアリコートを添加し、コンピテントE. coliへの形質転換の前に1時間室温でそして30分間氷上でインキュベートした。
両方の方向からDNA配列分析を実施し、配列データは、GRAMMRで処理した材料が、両方の親運動タンパク質遺伝子配列からの情報を含む再集合された配列であるということを示した。GRAMMR反応に由来する複数の出力pGENEWARE−MPクローン例のDNA配列は、以下のように示されている:TMV−Cg/ToMVクローン、図9、配列番号21、及び図10、配列番号22;TMV−Ob/ToMVクローン、図11、配列番号23及び図12、配列番号24;TMV−U2/ToMVクローン、図13、配列番号25及び図14、配列番号26;及びTMV−U1/ToMVクローン、図5、配列番号27及び図16、配列番号28。
例15
選択可能マーカー内で分割するエンドヌクレアーゼを用いた線状化されたDNA基質上のGRAMMR
この例は、DNA基質分子が、選択可能なマーカー遺伝子内で分割する制限エンドヌクレアーゼで線状化されているGRAMMR反応について教示する。
GRAMMRは、pBSWTGFP(配列番号31)によりコードされたpBS誘導体(Stratagene, La Jolla, CA)内の野生型Aequorea Victoria GFP遺伝子と、E. coli内の蛍光強度を増大し、青色光発光へと発光波長を改変するべく突然変異を伴う変異体との間で実施される(Crameri, et al., Nat Biotechnol 14 (96) 315; Heim et al., PNAS91 (94) 12501; Yang, et al., J Biol Chem 273 (98) 8212)。プラスミドpBSC3BFP(配列番号32)によってコードされるこの変異体遺伝子は、長波UV光によって励起された場合に明るい青色光を発出する蛍光タンパク質をコードする。
GRAMMR反応は、環状2本鎖プラスミドDNAの状況において、GFP/C3BFPヘテロ2本鎖上で実施される。環状全プラスミドヘテロ2本鎖DNA基質は、それぞれAhdI及びBcgIでの消化によりまず第1にpBSWTGFP(配列31)及びpBSC3FP(配列番号32)を線状化し、次にDNAスピンカラムを用いて消化済みDNAを精製することによって調製される。次に、2つの線状化されたプラスミドの各々を200ナノグラムずつ混合し、20マイクロリットルの体積で1×SSPE(180nMのNaCl、10mMのNaH2PO4、1mMのEDTA、pH7.4)までもっていく。その後、混合物を4分間95℃でインキュベートし、氷水中に浸漬し、37℃でのインキュベーションに先立って10分間ここにとどめる。30分後、アニールされたDNA標本を次に氷に戻し、ここにGRAMMR反応中での使用まで保持する。
2つの独立した一連の再集合反応を実施して、GRAMMRによる配列再集合を容易にするそれらの能力についてRES IとCEL Iを比較する。まず各々の反応を、50mMになるまでKClで補足された1×NEB E. coliリガーゼ緩衝液中の各dNTP5ナノモルずつの存在下でT4ポリメラーゼ1単位を用いて室温で10分間処理する。その後、2単位のE. coli DNAリガーゼを添加する。次に、2つの別々の酵素希釈系列を実施する。上述のカクテルのアリコートの入った2組の一連の試験管の各々に対して、1/3、1/9、1/27、1/81又は1/243といった希釈度でGENEWARE(登録商標)で発現されたCEL I又はRES I抽出物を添加する。エンドヌクレアーゼを含まない対照反応も調製する。各反応に対して、アニールされたDNAヘテロ2本鎖基質20ナノグラムを含む1マイクロリットルのアリコートを添加し、コンピテントE. coliへの形質転換の前に1時間室温でそして30分間氷上でインキュベートする。
緑色蛍光タンパク質(GFP)及び青色蛍光タンパク質(BFP)を、長波UV照射により、結果として得られたコロニー内で視覚化させる。親野生型GFPは、薄暗い緑色蛍光を与え、親c3BFPは明るい青色蛍光を与える。これらの蛍光タンパク質をコードする遺伝子においては、発光色を決定する配列及び蛍光強度を支配する配列が、互いに異なる位置にある。DNA再集合の結果、蛍光強度を支配する配列から発光色を決定する配列の「リンキング解除」がもたらされる。従って、結果としての後代は、発光色及び強度の機能的特性の再集合を示すことが予想されることになる。従って、各反応において起こったDNA再集合の範囲の尺度は、対応する平板上の細菌コロニーからの蛍光の強度及び色を検討することによって評定できる。
例18
RES I及びマルチプレクス解析を用いたDNA突然変異の検出
ミスマッチ検出のためのRES Iの感度を、プールされたDNA標本の中の突然変異を検出するその能力によって例示する。DNAを、遺伝子スクリーニングを受けた個体由来の末梢血リンパ球から得る。乳ガンのみ、卵巣ガンのみ、乳ガン/卵巣ガン症候群グループ又は非乳ガン/卵巣ガン対照標本から、標本を得る。遺伝子のこの領域をPCR増幅するために、BRCAIのエキソン2に特異的な標識づけされていないプライマを利用する。エキソン2の野生型PCR産物をγ−32P−ATPで標識づけする。簡単に言うと、Wizard手順(Promega)により、10ピコモルのPCR産物を精製する。その後、37℃で1時間、30μlの1×キナーゼ緩衝液(70mMのトリス−HCl(ph7.6)、10mMのMgCl2、5mMのジチオトレイトール)中6,000Ci/mmolにて15ピコモルのγ−32P−ATP及びT4キナーゼを用いてエキソン2野生型産物をリン酸化する。1μlの0.5MのEDTAで反応を停止させる。反応体積を1×STE緩衝液(100mMのNaCl、20mMのトリス−HCl、pH7.5、10mMのEDTA)を用いて50μlまでもってゆき、Pharmacia Probe Quantカラムを通して処理する。その後、個々の標識づけされていないPCR増幅した実験標本でのハイブリダイゼーションのために、標識づけされたDNA(100μl中で1pmol/μl)を使用する。個々の標本各々について、100fmolの標識づけされていないPCR増幅済み産物を、RES I反応緩衝液(25mMのKCl、10mMのMgCl2、20mMのトリス−HCl、pH7.5)中の32P−標識づけされた野生型PCR産物と共にインキュベートする。変性及び復元の後、ヘテロ2本鎖化された放射性標識づけ済みのPCR産物を、1×RES反応緩衝液中で37℃で30分間RES Iに露呈し、10μlの停止混合物(75%のホルムアミド、47mMのEDTA、1.5%のSDS、キシレンシアノール及びブロモフェノールブルー)を添加して停止させる。ヘテロ2本鎖を個別に酵素で処理するか又は、1本の標本試験管内にプールして処理する。反応の産物を、7Mの尿素を含む15%のポリアクリルアミドゲル上に装てんする。
プールされたDNA標本中で突然変異を検出するRES Iの能力をさらに例示するため、単一の反応試験管内でRES Iに対し、1、2、3、5、10又は30個のヘテロ2本鎖化された放射性標識付け済みPCR産物(ここでもBRCA1遺伝子のエキソン2から増幅されたもの)を露呈し、産物を、7Mの尿素を含む6%のポリアクリルアミドゲル上で走行させる。上述の通りに標本を増幅し、放射性標識付けする。各プールは、1つの突然変異(AG欠失)を有する1つの標本のみを含んでいる。各プール内のその他の標本は、野生型である。対照標本は、RES Iに露呈させない。突然変異が存在するプールされた標本中では、RES Iは、一貫してPCR産物を分割し、余剰の野生型でTUTを受けていないDNAの存在下での酵素の感度を例示している。対照として、突然変異を全く含まないヘテロ2本鎖化されたPCR産物を分析し、突然変異に対応する切断バンドは全く現われない。
例17
ハイリスク系統群から得た標本中でのRES−1による突然変異及び多形現象の検出
BRCA1遺伝子内のエキソンに特異的なPCRプライマセットを合成する。BRCA1の遺伝子配列は既知である。エキソン境界及び対応する塩基番号は表IIに示されている。当業者であれば、分子生物学における現行プロトコル、Ausubel et al., John Wiley and Sons, Inc編(1995)で記されている方法に従って、所望の配列を増幅するためのプライマを容易に設計することができる。これらのプライマは、各PCR反応において1つのプライマが5′末端で蛍光性標識6−FAMで標識づけされる一方でもう1つのプライマがもう1つの色の標識TETで同様に標識づけされるような形で計画されている。かくして、1つのPCR産物は、いずれかのストランド内のDNAニッキング事象を独立して観察でき、測定値を裏付けできるような形で2色で標識づけされることになる。
ハイリスク系統群内の個体に由来する末梢血標本を収集し、DNAを単離する。Elongare(BRL)を用いてPCR産物を増幅し、Wizard PCR Preps (Promega) を用いて精製する。DNAを94℃まで加熱し、1×RES I緩衝液(20mMのトリス−HCl pH7.4、25mMのKCl、10mMのMgCl2)内でゆっくりと冷却してヘテロ2本鎖を形成させる。ヘテロ2本鎖を、30分間45℃で0.2μlのRES I及び0.5単位のAmpli Taqと共に20μlの1×RES I緩衝液内でインキュベートする。反応を1mMのフェナントロリンで停止し、45℃でさらに10分間インキュベートする。Centriapカラム(Princeton Separations)を通して標本を処理し、乾燥させる。乾燥させたDNAペレットに対して、1マイクロリットルのABIローディングバッファ(25mMのEDTA、pH8.0、50mg/mlのブルーデキストラン)、4μlの脱イオン化ホルムアミド及び0.5μlのTAMRA内部レーン標準を、乾燥したDNAペレットに添加する。90℃で2分間標本を加熱し、次に装てんに先立ち氷上でクエンチングさせる。その後標本を4.25%の変性用34cmのwell-to-readアクリルアミドゲル上に装てんし、GENESCAN672ソフトウェアを用いるABI373シーケンサ上で分析する。この実験標本内の6−FAMで標識づけされたプライマは、BRCA1cDNAのヌクレオチド3177(領域110)にあり、TETで標識づけされたプライマは、エキソン11とエキソン12の間のイントロン内へ73ヌクレオチドのところにある。各スパイクは、突然変異又は多形現象が存在するRES Iによるヘテロ2本鎖の分割によって産生されたDNAバンドの存在を表わしている。1つのスパイクは、ミスマッチ部位の3′側から上部ストランドの5′6−FAM標識までの、RES Iにより産生されたフラグメントのサイズを表わす。もう1つのスパイクは、ミスマッチの3′側から5′のTET標識までの下部ストランド内の対応するフラグメントを表わす。2つのフラグメントの合計は、PCR産物の長さよりも1塩基長いものに等しい。6−FAMパネルは、6−FAM標識から塩基#645におけるスパイクを示し、TETパネルは、TET標識から塩基#483におけるスパイクを示し、両方共BRCA1cDNAのヌクレオチド3819における5塩基欠失の部位に対応する。
もう1つの個体におけるエキソン11の分析は、BRCA1cDNAのヌクレオチド1454における6−FAM−標識づけされたプライマを用いて実施される。TET標識づけされたプライマは、ヌクレオチド2459(領域11C)にある。PCR増幅された産物は、上述のとおりに増幅され調製される。この個体においては、6−FAMパネルは、塩基#700でのスパイクを示し、TETパネルは#305でのスパイクを示し、各スパイクは、BRCA1cDNAのヌクレオチド2154のナンセンス突然変異におけるそれぞれのDNAストランド内のRES I切開の部位に対応している。6−FAMパネルは同様に塩基#747でのスパイクを示し、TETパネルはBRCA1cDNAのヌクレオチド2201における多形現象C>Tの部位に対応する#258でのスパイクを示す。ABI377シーケンサを用いて標本を配列決定することにより、ナンセンス突然変異及び多形現象を確認することができる。
或る個体は、エキソン11のもう1つの領域すなわち図n中の図表上の領域11Aの中に突然変異を有している。BRCA1cDNAのヌクレオチド2248における6−FAMで標識づけされたプライマ及びヌクレオチド3290におけるTETで標識づけされたプライマが、エキソン11のこの領域を増幅するために用いられる。増幅の後、上述のとおりに標本を処理する。
米国標準培養収集機関(ATCC)への寄託
米国標準培養収集機関(ATCC)、10801University Blvd., Manassas, VAに3件の寄託を行なった。1件の寄託は、6HISでタグ付けされたセロリ由来のCEL Iミスマッチエンドヌクレアーゼ遺伝子のcDNA及びタバコモザイクウイルスの誘導体を含むプラスミドDNA構成体について行なった。該構成体は、内部的にp1177MP4−CEL I6HISと呼称され、ATCC番号PTA−3927が割当てられた。セロリ由来のCEL IミスマッチエンドヌクレアーゼのcDNA及びタバコモザイクウイルスの誘導体を含むプラスミドDNA構成体について1件の寄託を行なった。該構成体は、内部的にp1177MP4−CEL IAvrと呼称され、ATCC番号PTA−3926が割当てられた。Selaginella lepidophyllaからの34kDaのタンパク質をコードするcDNAインサート及びタバコモザイクウイルスの誘導体を含むプラスミドDNA構成体について1件の寄託を行なった。cDNAインサートは、RES I−6HISと呼ばれている。RES Iは、ミスマッチエンドヌクレアーゼ遺伝子である。該構成体は、内部的にpLSB−2225と呼称され、ATCC番号PTA−4562が割当てられた。
これらの寄託は、微生物の寄託に関するブダペスト条約の条件及び規定に従って行なわれ、少なくとも30年間そして寄託の標本の供給に対する最近の要請が寄託機関により受理されてから少なくとも5年間の期間について、又は本出願又はこれらの寄託のいずれかを引用する後続の出願に基づいて発行されるべき特許の有効期間のうちのいずれか長い方の期間について行なわれた。各寄託は、それが該期間中に生存不能となった場合、交換されることになる。
クローンの各々についての出願人の呼称は、米国標準培養収集機関での前述の寄託に対し、寄託内で短縮された、すなわちp1177MP4−CEL IAvr−B3はp1177MP4−CEL IAvrと呼ばれ、p1177MP4−CEL I6His−A9はp1177MP4−CEL I6Hisと呼ばれているという点を指摘しておくべきである。クローンp1177MP4−CEL IAvr(配列番号01)は、ヌクレオチド5765から6655まで延びるCEL I読取り枠(配列番号03)を含み、クローンp1177MP4−CEL I6His−A9(配列番号02)は、ヌクレオチド5765−6679から延びるCEL I−6His読取り枠を含んでいた。