JP2004509628A - 組換えポリヌクレオチドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
組換えポリヌクレオチドをインビトロ製造するための新規な方法が開示されている。方法は、主としてニックトランスレーションに関与する酵素であるヌクレアーゼ(好ましくはDNアーゼI)とポリメラーゼ(好ましくはDNAポリメラーゼI)とによるヘテロ二本鎖DNA配列の処理を含む。このプロセスを使用して得られた結果は、特異的DNA修復系を使用する従来のin vivo組換え試験によって得られた結果よりも優れている。
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は組換えポリヌクレオチドの新規なインビトロ製造方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
組換えプロセスには改良された機能または望ましい機能をもつ新規な配列を産み出す能力があり、その重要性は測り知れない。自然の組換えプロセスは無差別のプロセスである。しかしながら、同じ目標に到達し得る手順をより計画的にかつ巧妙に設計することによって状況を変えることができるようになった。現在では、自然の組換えイベントを模倣する手順が開発され、これらの手順は、幾つかのニーズに応じた特定のタンパク質または配列を特異的に作製し選択するために使用されている。これらのプロセスを惹起するために当業者が使用できる多くの方法が存在している。
【0003】
難点は、これらの方法の多くでは、対象となる特定タンパク質の配列と構造/機能との関係について詳細な理解が必要であり、従って、これらの方法が時間消費的及び情報集約的なことである。例えば、Shao and Arnold,1996 Curr.Opin.Struct.Biol.6:513−518参照。このような時間的及びエネルギー的な代価を回避できる別の方法を利用することは可能であるが、このような方法にもそれなりの費用がかかる。例えば、所望の有益な突然変異をもつ配列を追跡するために多数の選択及び突然変異のサイクルが必要であったり(例えば、Kuchner and Arnold,1977 Trends in Biotech,15:530参照)、対象となる組換え配列を作製するためにPCRサイクルの反復が必要であったりする(例えば、米国特許第5,605,793号)。
【0004】
ヘテロ二本鎖分子は、典型的な完全相補性(ホモ二本鎖化)二重鎖核酸分子の代替基質として当業界で使用されており、より指向性の組換え作用を行うことができるので、当業界で使用できる極めて情報集約的及び/または労働集約的な方法を回避できることが知見された。例えば、Luら,1983 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:4639−4643参照。これらのプロセスのヘテロ二本鎖分子は多数の方法によって創製できる。最も多い場合としては、二本鎖分子が出発(親)ホモ二本鎖核酸分子基質を加熱及びアニーリングすることによって創製される。
【0005】
これらのヘテロ二本鎖中間体分子の修復は、特に新規な組換え配列を作製するために設計された方法で使用されてきた。例えば、国際特許WO99/29902;Volkovら,1999 Nucleic Acids Res.2l7(18):e18i−vi参照。WO99/29902に開示された手順は詳細には、配列組成の異なる二重鎖核酸分子(本文中では変異ホモ二本鎖親配列または変異ホモ二本鎖分子と呼ぶ)からヘテロ二本鎖分子をインビトロで製造する処理を含む。次に、このヘテロ二本鎖分子を細菌細胞(大腸菌)修復系に導入し、この修復系においてミスマッチ領域の修復を行って、二重鎖核酸出発材料とは異なる非反復二重鎖核酸分子(またはホモ二本鎖)を得る。
【0006】
大腸菌細胞中でヘテロ二本鎖分子のin vivo修復がmut HLS系を介して行われることは当業界で公知である。例えば、Luら,前出;WO99/29902;Volkovら,1999 Nucleic Acids Res.2l7(18):i−vi参照。Mut HLSによるインビトロの修復は当業界で開示されている。例えば、Fangら,1997 J.Biol.Chem.272(36):22714−22720参照。
【0007】
ミスマッチのヘテロ二本鎖分子の修復を介して新規なポリヌクレオチドを作製し得る代替系、特に、細菌性Mut HLS系よりも恒常的にかつ効率的にヘテロ二本鎖を修復する系を同定することができれば有利であろう。修復機構を単離し、もっと綿密に分析し、最適化できるようにこの修復をインビトロで行い得る方法はいっそう有利であろう。
【0008】
(発明の概要)
本発明は組換えポリヌクレオチドをインビトロで製造する新規な方法に関する。本発明方法では、好ましくはヌクレアーゼの存在下の本質的にポリメラーゼから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物にヘテロ二本鎖分子を接触させる。このプロセスを使用して得られた結果は、特異的DNA修復系を利用する従来のin vivo組換え作用によって得られた結果よりも優れている。
【0009】
(図面の簡単な説明)
図1は、野生型LacZα(配列5)とLacZαの2つの構築突然変異体(それぞれM1及びM2;配列1及び2)との核酸配列を位置合せして示す。双方の突然変異体M1及びM2らは4個の終結コドンを含み、2個はインフレームであり、2個は読み枠から外れている。M1突然変異体は、LacZα遺伝子の塩基50を出発点(ATG開始コドン)とする27塩基の突然変異領域を含み、この領域に3塩基の欠失及び16個のミスマッチ塩基が存在する。M2突然変異体は、該遺伝子の塩基156を出発点とする22塩基の突然変異領域を含み、9個のミスマッチ塩基及び3塩基の挿入が存在する。M1変異体の最後のインフレーム終結コドンとM2変異体の最初のインフレーム終結コドンとの間の間隔は81塩基である。
【0010】
図2は、ニックトランスレーション反応後のDNA(クローニング前に制限酵素で切断しない場合及び切断した場合)及び制限酵素で消化した後の対照を表すゲルを示す。レーンは左から順に以下のサンプルを表す:5μLの1KB Ladder;2μLの消化ssDNAヘテロ二本鎖対照;2μLの消化dsDNAヘテロ二本鎖対照;ニックトランスレーション後の2μLの消化ssDNAヘテロ二本鎖;リガーゼでニックトランスレーション後の2μLの消化dsDNAヘテロ二本鎖;ニックトランスレーション後の2μLの消化dsDNAヘテロ二本鎖;3.5μLのLacZαインサートDNA;ニックトランスレーション後の3.μLのssDNAヘテロ二本鎖;リガーゼでニックトランスレーション後の3.5μLのdsDNAヘテロ二本鎖;ニックトランスレーション後の3.5μLのdsDNAヘテロ二本鎖。
【0011】
図3は、野生型LacZα(配列5)とLacZαの追加の2つの構築突然変異体(それぞれM3及びM4;配列3及び4)との核酸配列を位置合せして示す。双方の突然変異体M3及びM4は4個の終結コドンを含み、2個はインフレームであり、2個は読み枠から外れている。双方の突然変異体は野生型LacZα遺伝子に比べて塩基の挿入または欠失を含んでいない。M3は野生型に比べて14塩基の突然変異領域を含み、12個のミスマッチ塩基が存在しており、M4は16塩基の突然変異領域及び8個のミスマッチ塩基を有している。また、M3の最後の終結コドンの終点とM4の最初の終結コドンの起点との間の間隔は81塩基である。
【0012】
図4は、突然変異体M1及びM2によるヘテロ二本鎖分子の形成を示す概略図である。
【0013】
図5は、図4のヘテロ二本鎖分子をニックするプロトコルを示す。
【0014】
図6は、図5のニックした分子に対するDNA PolIの作用を示す概略図である。
【0015】
図7は、後述するブルー/ホワイトスクリーニングアッセイを使用した予測結果を示す。
【0016】
図8A及び8Bは、開示した方法を使用して行う反応の全体図を示す。
【0017】
(詳細な説明)
本文中及び特許請求の範囲では以下の用語を以下の定義で使用している。
【0018】
“組換えポリヌクレオド”、“組換え配列”などは、組換え作用によって得られた配列を意味する。該配列は、出発親配列(変異相同親配列、以下に定義)とは異なる配列組成をもつ。
【0019】
“組換え”は、親配列または親配列に由来の配列からキメラ配列を作製するプロセスを意味する。
【0020】
特定ポリヌクレオドに関する“新規な”、“キメラ”という用語は、特定反応に使用した変異相同親配列(以下に定義)とは異なる配列組成をもつ配列を意味する。
【0021】
“変異相同親配列”は、配列組成は親配列と異なっているが、親配列の相補DNA鎖とハイブリダイゼーションできる十分な相同度を有している配列を意味する。相同性のレベルに基づいてハイブリダイゼーション条件が変更されることは平均的な当業者に周知である。例えば、Stemmerら,1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747−10751参照。該文献においては、平均で4.1塩基の長さしかない配列一致領域をもつヒト及びネズミのIL−1β遺伝子からキメラを作製するためには極めて低い実効アニーリング温度に適応するように条件が変更されている。
【0022】
“ヘテロ二本鎖形成を促進する条件”は、親相同配列の相補鎖間でヘテロ二本鎖を形成させ得る任意の条件を意味する。
【0023】
“混合物”は、本発明において使用される試薬(例えば、酵素、バッファ、など)または材料の任意の組合せを意味する。
【0024】
“二本鎖修復系”は、ヘテロ二本鎖分子の2個の変異鎖の間のミスマッチを除去することによってヘテロ二本鎖の組換えを行わせる1つまたは複数の酵素を意味しており、組換えポリヌクレオドを形成させるために使用される。
【0025】
“ヌクレアーゼ”は、核酸配列内部のペプチド結合を加水分解し得る任意のタンパク質を意味する。
【0026】
“ポリメラーゼ”は、核酸分子鎖の3′末端へのヌクレオチドの付加を触媒し得る任意のタンパク質を意味する。
【0027】
“Pol I”はDNAポリメラーゼIを表す。
【0028】
“ヘテロ二本鎖”は、複合鎖が100%相補性でない二重鎖核酸分子を意味する。好ましくは、複合鎖が実質的に相補性である(50%、より好ましくは70%、いっそう好ましくは80%、最も好ましくは90%を上回る相補性をもつ)。この分子に対してポリメラーゼを好ましくはヌクレアーゼと共に作用させる。これはStemmerで使用された方法(米国特許第5,605,793号)との重要な違いである。Stemmerの方法で基幹となる中間体は、上述のようなヘテロ二本鎖分子でなく、親配列の多数のフラグメントから得られた特定の鎖を含む分子である。
【0029】
“融解温度”または“Tm”は、規定のイオン強度、pH及び核酸濃度下に平衡状態で1組の相補的プローブの約50%±2%がターゲット配列にハイブリダイズする温度を表す。
【0030】
本発明によれば出願人らは、ポリメラーゼと好ましくはヌクレアーゼとを使用するプロセスを使用して組換えポリヌクレオドをインビトロで製造し得る新規な方法を発見した。これらの酵素が変異ヘテロ二本鎖の鎖間のミスマッチを除去し、このプロセスで新規な配列、即ち、特定反応に使用される変異相同親配列とは異なる配列組成をもつ新規な配列が発生することが知見された。
【0031】
好ましくはヌクレアーゼと併用されるポリメラーゼはヘテロ二本鎖修復系の主要なエフェクターである。しかしながらまた、実際の組換え効果(即ち、ヘテロ二本鎖中のミスマッチヌクレオチドの除去を経由した組換えポリヌクレオドの発生)がポリメラーゼの活性(ニックされたヘテロ二本鎖分子の場合)またはポリメラーゼとヌクレアーゼとの活性の直接結果として得られる限り、修復系はヘテロ二本鎖修復プロセスに関与することが判明した他のいかなる酵素を含んでもよい。
【0032】
ニックトランスレーション酵素(特に、DNアーゼIのようなエンドヌクレアーゼ及びPol Iのようなポリメラーゼ)またはポリメラーゼ単独(ヘテロ二本鎖分子がニック済みの場合)を特異的に使用しこれらの酵素に依存してヘテロ二本鎖DNAから組換えポリヌクレオド配列を産生させる手段は新規である。ヘテロ二本鎖から組換え配列を作製するために当業界で使用されている主な方法は、大腸菌の酵素mutH、mutL及びmutSを使用する系であった。例えば国際特許WO99/29902参照。
【0033】
従って本発明は、変異相同親配列を準備する段階と、ヘテロ二本鎖形成を促進する条件下で該配列をインキュベートする段階と、本質的にヌクレアーゼ(好ましくはエンドヌクレアーゼ)とポリメラーゼとから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物に該ヘテロ二本鎖を接触させる段階と、産生された組換えポリヌクレオドを同定する段階とを含む組換えポリヌクレオドの製造方法に関する。代替的または付加的に本発明は、変異相同親配列を準備する段階と、ヘテロ二本鎖形成を促進する条件下で該配列をインキュベートして、ニックされたヘテロ二本鎖を形成させる段階と、本質的にポリメラーゼから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物に該ヘテロ二本鎖を接触させる段階と、産生された組換えポリヌクレオドを同定する段階とを含む組換えポリヌクレオドの製造方法に関する。付加的な方法は、本質的にポリメラーゼ(ミスマッチ分子がニックされている場合)から成る混合物またはポリメラーゼとヌクレアーゼとから成る混合物にミスマッチ分子を接触させる段階を含むミスマッチ核酸分子のインビトロ修復手段を提供する。
【0034】
本発明の本質は、変異相同親配列に由来するヘテロ二本鎖DNA間のミスマッチを除去するためにニックトランスレーション反応をインビトロで使用することである。ニックトランスレーションは当業界では主として、RNAプライマーを除去する手段、あるいは、高い比活性をもつ均一放射性のDNAを製造する手段として知られており、従ってゲノムDNAブロット及びRNAブロットを得るための配列特異的プローブの調製に使用することが知られている。ミスマッチのヘテロ二本鎖分子から組換え配列を作製するためにニックトランスレーションメカニズムを使用するという考え方は新規である。出願人らはこの極めて特異的な反応を、潜在的にいっそう望ましい非反復配列を作製するという極めて有用な目的、即ち、改良された特性をもつタンパク質をコードするに違いない配列を作製するという目的で初めて採用したものである。
【0035】
特異的反応を促進するためにヌクレアーゼ及びポリメラーゼ以外の要素(例えば、バッファ材料、dNTP、H2O、など)をヘテロ二本鎖修復系に添加できること、それ故に特許請求の範囲で混合物という用語を使用したことは本発明の開示によって理解されよう。しかしながらこの用語は、修復メカニズムがポリメラーゼの作用(ニックされたヘテロ二本鎖の場合)またはポリメラーゼとヌクレアーゼとの作用の直接結果として生じることを否定するものではない。従って、混合物は、上述のヘテロ二本鎖修復系(主として、ポリメラーゼまたはポリメラーゼ/ヌクレアーゼの組合せ)を特定的に含んでいなければならないが、修復プロセスに刺激を与える別の試薬を所望に応じて添加できる。
【0036】
開示された方法を使用して、LacZαの2つの非機能性突然変異体に遺伝子材料を取り込ませる試験を行った。簡単に説明すると、X−Galの存在下でブルー/ホワイトスクリーニングを行った。野生型LacZαを生じるLacZα遺伝子の2つの突然変異体間の組換えを、インジゴブルー産物の遊離によって同定した。インジゴブルー産物の遊離は、野生型LacZαによってコードされているβ−ガラクトシダーゼによるX−Galの開裂に依存した。非機能性突然変異体コロニーはX−Galの存在下で発現されると白色を呈する。これに反して、成功した実験(双方の突然変異をヘテロ二本鎖DNAから除去することに成功)では、得られたコロニーがX−Galの存在下で青色の野生型表現型に復帰している。本文中で試験した野生型への復帰は特異的組換えイベントを容易に検出し報告するための1つの方法である。例えば、Stemmer(米国特許第5,605,793号参照)。
【0037】
本発明の方法を使用して以下のような結果が得られた。ニックトランスレーション反応の結果として524個のコロニー中に5個の青色コロニーが生じた。これは0.95%の復帰頻度である。他方、ヘテロ二本鎖対照は1,032個のコロニー中に7個の青色コロニーを生じた。これは0.54%の復帰頻度である(ニックトランスレーションしたDNAのほぼ1/2の効率)。同様の実験を行うと、ニックトランスレーション処理したヘテロ二本鎖分子の復帰頻度は0.8%(16/1,911)であり、ヘテロ二本鎖対照群の復帰頻度は0.2%(2/1,011)であった(ニックトランスレーションした形態のほぼ1/4の効率)。実施例に使用したヘテロ二本鎖対照はニックトランスレーション処理することなく制限酵素で消化しただけでベクターに結合し、大腸菌細胞の形質転換に使用した。即ち、ヘテロ二本鎖修復系(主として、ポリメラーゼまたはポリメラーゼ/ヌクレアーゼ併用)に接触させない以外はニックトランスレーションしたヘテロ二本鎖分子と全く同じプロトコルで処理した。即ち、ミスマッチのヘテロ二本鎖対照に細胞性(大腸菌)修復プロセスだけが作用し、従って、Arnoldら,国際特許WO99/29902、に示されているように図式化できる。
【0038】
本発明の組換えポリヌクレオチドは、変異相同親配列に由来するヘテロ二本鎖分子から作製される。本発明に有用な変異相同親配列は、配列組成が異なっているが(少なくとも1個のヌクレオチドが異なっている)、相補配列とハイブリダイゼーションし得る十分な相同度を保持している任意の配列でよい。変異相同親配列は、突然変異形態でもよくまたは同じ配列の異なる対立遺伝子でもよい。配列は、同じタンパク質をコードできるが、異なる生物体内に存在してもよく、あるいは、ハイブリダイゼーションし得る十分な相同度をもつ2個またはそれ以上の異なる遺伝子を有していてもよい。変異相同親配列は更に、ベクターDNAに存在し得る。ベクターの例は、プラスミド、コスミド、BAC(細菌性人工染色体)及びYAC(酵母人工染色体)である。好ましくは変異相同親配列が50−150,000塩基対、より好ましくは50−10,000塩基対、最も好ましくは300−2000塩基対である。また、配列が互いに異なる長さを有していてもよい。好ましくは配列の長さの違いが50−5,000塩基対である。最も好ましくは配列の長さの違いが0−2,000塩基対である。この場合、真の目標は、ヘテロ二本鎖からユニークDNAを発生させるべく、ポリメラーゼが好ましくはヌクレアーゼと協奏的に作用できるように、ヘテロ二本鎖形態において十分なハイブリダイゼーションを生じさせることである。
【0039】
当業者には理解されるように、ハイブリダイゼーション条件は一般に配列依存性であり、所望の反応に応じて変更される。好ましくは、ハイブリダイゼーション条件が配列に基づいて決定され、対象配列の融解温度(Tm)よりもほぼ25℃低い温度、所定のイオン強度及びpHが使用される。これらの条件はいずれも当業者が容易に決定できる。また、変異配列間のヘテロ二本鎖形成に適応するようにアニーリング温度を変更できることも当業者に理解されよう。例えば、Stemmerら,前出、参照。該文献の記載では、平均で4.1塩基の長さしかない配列一致領域を有しているヒト及びネズミのIL−1β遺伝子からキメラを作製するために極めて低い実効アニーリング温度に適応するように諸条件が変更されていた。
【0040】
変異相同配列は二重鎖形態で存在してもよく一本鎖形態で存在してもよい。更に、これらは、DNA(例えばPCR産物、ゲノムまたはcDNA)でもよくまたはRNAでもよくまたはそれらの類似体でもよい。RNAを使用する場合、別のDNAまたはcDNA産物とアニーリングさせるヘテロ二本鎖を形成する前にRNAをcDNAに転写する。
【0041】
最も好ましくは、反応に取り込まれる配列が高度の相同性を有している。好ましくは配列が少なくとも50%相同、より好ましくは少なくとも70%相同、最も好ましくは少なくとも90%相同である。特に好ましい具体例は、少なくとも99%の配列一致を有している変異相同配列を含む。組換えイベントによって非反復配列を発生させ得るためには、少なくとも2つの塩基対位置に違いを有する少なくとも2つの配列が存在するのが好ましい。
【0042】
変異相同親配列がLacZα遺伝子、特にLacZαの突然変異体M1、M2、M3及びM4(それぞれ配列1−4)に由来する系によって本発明を説明した。この系は当業界(米国特許第5,605,793号参照)で特定の遺伝子シャフリング法の実行可能性を証明する有効で信頼できる手段として使用されている。しかしながら、この系を本明細書に定義した多くの“変異相同配列”のいずれかに使用することに影響を及ぼすものではないことは当業者には理解されよう。異なる配列組成を有しているが異なる親配列の相補的DNA鎖間のハイブリダイゼーションを可能にする十分な相同度を有している任意の数の配列をこの系と共に使用できることは容易に理解されよう。
【0043】
本発明によれば変異相同親配列は幾つかの方法で作製することができ、または、自然変異体でもよい。変異体を産生させる幾つかの好ましい方法は、誤りがちのPCR(error−prone PCR)、カセット突然変異誘発、UV突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、化学的突然変異誘発及びin vivo突然変異誘発などである。これらはすべて当業界で公知である。しかしながら、本文中に定義された変異相同配列を産生し得るいかなる手段も本発明での使用に適していることが当業者には理解されよう。
【0044】
配列を選択し入手した後、該配列を、変異親配列からヘテロ二本鎖分子を形成し得る条件下に維持する。相同親配列からヘテロ二本鎖DNAを作製するために当業界には多くの手段が存在する。このような手段はすべて本発明に使用し得る。特定の配列セットのヘテロ二本鎖形成に適した条件の決定は平均的な当業者の技量の範囲内である。
【0045】
好ましい実施態様では、変異相同配列の加熱及びアニーリングによってヘテロ二本鎖DNAを作製する。より好ましくは、所望の突然変異を含む2つの相同PCR産物(増幅目的でPCRした)を適当なバッファ中で加熱しアニーリングして会合させる。この場合には、出発基質である変異相同親配列を増幅する目的でPCRを使用している。これは実際の組換えプロセスの必須段階ではない。本発明方法ではプライマーの使用が必須ではなく、また、Stemmerの方法(米国特許第5,605,793号)のように3回以上のPCR処理に依存することもない。
【0046】
ヘテロ二本鎖DNAを産生させる別の手段では、M13由来ベクターとヘルパーファージとの使用によって一本鎖プラスミドDNAを増幅させる。この実施態様では、このようにして増幅させた2つの相同遺伝子を含有する2つの相補的な一本鎖プラスミドを接合させてヘテロ二本鎖DNAを創製し、完全プラスミドを使用してニックトランスレーション反応を惹起する。
【0047】
ヘテロ二本鎖DNAを産生させる別の好ましい方法では、相同遺伝子の各々を別々の一本鎖PCR反応で処理する。この方法ではバックグラウンドの低いホモ二本鎖が産生する。一方の反応は親配列PCR産物を鋳型として使用し順方向プライマーだけを用いて行い、他方の反応は逆方向プライマーと“変異相同親配列”(定義参照)PCR鋳型とを用いて行う。次に、2つの相同親配列を含む順方向及び逆方向のPCR産物を接合してヘテロ二本鎖DNAを創製する。次にこのヘテロ二本鎖DNAをニックトランスレーション反応で処理する。得られた産物を次に切断し、適当なプラスミド発現ベクターにクローニングする。
【0048】
代替的な好ましい実施態様では、一方の突然変異プラスミドを遺伝子の上流の非反復制限酵素(例えばEcoRI)で消化し、他方の突然変異プラスミドを遺伝子の下流の異なる非反復制限酵素(例えばEcoR01091)で消化する。得られた直鎖状フラグメントを集めて、94℃に加熱してDNA鎖を変性させ、冷却して室温に戻す。これらの条件下でヘテロ二本鎖DNAは環化し、ホモ二本鎖DNAは直鎖状に維持されている。その後、ヘテロ二本鎖DNAはホモ二本鎖DNAから容易に識別できるので、アガロースゲル電気泳動にかけ次いでアガロースゲルから環状ヘテロ二本鎖バンドを切り出すことによって物理的に分離できる。この精製したヘテロ二本鎖プラスミドDNAをニックトランスレーションプロトコルで処理し、精製した後で直接に適当な発現宿主の形質転換に使用する。
【0049】
それぞれ配列3及び配列4をもつ突然変異体M3及びM4にこの実施態様を使用すると以下の結果が得られた:XL−1青色細胞中ではニックトランスレーション反応の結果、212個の全コロニー中に27個の青色コロニーが存在し、形質転換効率は12.74%であった;ヘテロ二本鎖対照では364個の全コロニー中に18個の青色コロニーが存在し、形質転換効率は4.95%であった;XL mutS細胞中ではニックトランスレーション反応の結果、385個の全コロニー中に55個の青色コロニーが存在し、形質転換効率は14.29%であった;ヘテロ二本鎖対照では510個の全コロニー中に38個の青色コロニーが存在し、形質転換効率は7.45%であった。
【0050】
以下に記載の段階は、好ましくはゲル電気泳動によって精製したDNAフラグメントを用いて行うのが好ましいが、プラスミドまたはファージベクターのDNA配列に反応を行わせてもよい。
【0051】
変異相同親配列によるヘテロ二本鎖の形成後、該ヘテロ二本鎖を、本質的にヌクレアーゼとポリメラーゼとから構成されるかまたはニックしたヘテロ二本鎖が存在する場合にはポリメラーゼから構成されるヘテロ修復系を含む混合物に接触させる。ヌクレアーゼとポリメラーゼ、特にDNアーゼIとPol Iとによって惹起される反応はニックトランスレーション反応に酷似しており、従って本明細書ではニックトランスレーション反応と呼ぶ。
【0052】
この反応を支援するために複数の酵素、ポリメラーゼとヌクレアーゼ、あるいは、得られたヘテロ二本鎖分子がニックされているときは1つの酵素(ポリメラーゼ)がこのプロセスに必須であること、詳細にはこれらの酵素が変異ヘテロ二本鎖分子の鎖間ミスマッチを除去し非反復二重鎖ホモ二本鎖分子を形成するために必要な転写を行うということに注目されたい。従って、これらの分子の組合せ(ポリメラーゼとヌクレアーゼ)あるいはポリメラーゼ(ヘテロ二本鎖がニックされているとき)をヘテロ二本鎖修復系と呼ぶ。
【0053】
“ヘテロ二本鎖修復系”という用語は、特定的にはヘテロ二本鎖分子に対するヌクレアーゼ及びポリメラーゼのそれぞれの作用、あるいは、ニックされたヘテロ二本鎖分子に対するポリメラーゼの作用を承認するために新しく造られた用語であるが、この用語はまた詳細には、ミスマッチの修復を促進するためにこれらの酵素に添加されるが2つの酵素(即ち、ポリメラーゼとヌクレアーゼ)の本来の目的に影響を与えない他のすべての添加物を含意する。言い換えると、本文中に使用された“ヘテロ二本鎖修復系”という用語は、上述のヘテロ二本鎖修復活性を主としてポリメラーゼ及びポリメラーゼ/ヌクレアーゼの組合せが担当すると考えられるタンパク質または酵素の任意の組合せを含意する。従ってこの定義は、別の酵素またはタンパク質は観察された活性に貢献する本質的な要因とは考えられないという状態を説明するだけである。
【0054】
有用なポリメラーゼは当業界で公知である。好ましくはポリメラーゼは以下から選択される:大腸菌DNAポリメラーゼ、クレノウフラグメント;逆転写酵素;T4 DNAポリメラーゼ;天然型T7 DNAポリメラーゼ;化学的に修飾されたT7 DNAポリメラーゼ;遺伝的に修飾されたT7 DNAポリメラーゼ(Δ28);Pfu DNAポリメラーゼ;KlenTaq(Ab PeptidesTM)DNAポリメラーゼ;及びTaq DNAポリメラーゼ。DNAポリメラーゼの突然変異体、例えばDNAポリメラーゼIの突然変異体も本発明に有用である。従って、Pol A5も本発明に有用である。
【0055】
最も好ましくは酵素がDNA Pol Iである。ポリメラーゼに関しては反応時間が重要である。ポリメラーゼによる一方の鎖の読み通し(リードスルー)が別のポリメラーゼ分子による他方の鎖の読み通しを消去しないように、遺伝子に沿ったヌクレオチド置換は最小に維持されなければならない。当業者には理解されるであろうが、反応時間を最適結果に適応させることができ、反応時間はニックトランスレーション反応中の酵素及び試薬の濃度に関連する。ニックトランスレーション反応は5分−2時間の範囲の処理時間にするのが最も好ましい。
【0056】
分子がまだニックされていない場合には、DNアーゼI、または、二重鎖DNA分子を加水分解し得る他の任意のヌクレアーゼ(エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ、例えば制限酵素)が、ニックトランスレーションプロセスのもう1つの重要部分である。好ましくは使用される酵素がDNアーゼI、より好ましくはMg2+の存在下のDNアーゼIであり、これらは二本鎖DNAを無作為にニックする。DNアーゼI(または使用される特定ヌクレアーゼ)の量は、特定用途に最適化され得る。例えば、短いDNAフラグメント(<500塩基対)のニックトランスレーションには、全分子が少なくとも1回でニックされることを確保するためにより高い濃度のDNアーゼIが必要である。好ましくは、50%グリセロール中の1×NTバッファの量20−300μLあたり約1−3μLのDNアーゼIを含む予製液を調製する。1−10μLの範囲の種々の量のこの予製液を、例えば約125μLのニックトランスレーション反応に使用できる。より好ましくは、DNアーゼIが、50%グリセロール中の1×NTバッファ169μLで希釈した3μLのDNアーゼI(Stratagene 100,000U/mL)から成るDNアーゼI予製液の形態で使用される。しかしながらこれらの全ては行われる個々の反応に依存性であることが当業者に理解されよう。最終目的は、ヘテロ二本鎖DNAを十分にニックしてポリメラーゼを侵入させDNAミスマッチを修正することである。しかしながら、DNAの破壊が生じないように配慮しなければならない。最適化パラメーターを理解し管理することは当業界で容易であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編,1997)に詳細に記載されている。
【0057】
(ヌクレアーゼとヘテロ二本鎖DNAとを使用する代りに)ニックされたヘテロ二本鎖DNAとポリメラーゼとを用いても上述の結果と同様の最終結果が得られるという観察は重要である。この場合、ヘテロ二本鎖DNA中に存在するニックがヌクレアーゼの非存在に適応する。
【0058】
更に、本発明の上記の好ましい実施態様では、ヘテロ二本鎖分子に存在するニックをシールするためにDNAリガーゼを使用する。このためには標準結合条件下でDNAリガーゼによって処理する。特に好ましい実施態様では、使用されるDNAリガーゼがT4 DNAリガーゼである。リガーゼはニックトランスレーション反応前、反応中または反応後に添加できる。
【0059】
反応条件(例えば、反応容量、4つのdNTPの濃度及びDNAの量)を変更できることが平均的な当業者には理解されよう。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,前出、参照。例えば、ニックトランスレーション反応を20ngのDNAという少量で実行できること、5μLという少ない容量まで小規模化できることも平均的な当業者の知る処である;同書、参照。更に、大腸菌DNAポリメラーゼIに対してはdNTPが2μMという低濃度で十分であるが、基質をもっと高い濃度で供給するとポリメラーゼの効率が上がる;同書。
【0060】
平均的な当業者には理解されるように、反応の温度は使用される個々の反応基質、酵素及び条件に応じて調整される。
【0061】
ニックトランスレーション反応が完了すると、反応産物を精製し、ユニーク制限酵素によって消化し、適切なプラスミドベクターに挿入する。インサートを含むプラスミドベクターを次に適当な宿主に挿入して発現させる。次に宿主細胞をスクリーニングして、所望の突然変異を含むクローンを同定する。
【0062】
組換えポリヌクレオチドを発現させるために多様な発現ベクターのいずれかを使用し得ることは平均的な当業者の知る処である。特に好ましい発現ベクターはpUC18及びその誘導体、pUC19及びその誘導体、pBR322及びその誘導体、pBluescriptシリーズ、pGEMシリーズ(PromegaTM)、pETシリーズ(PromegaTM)及びpESP−1(StratageneTM)である。一般に、個々のベクターの選択は、使用される細胞の種類、所望の発現レベル、などに依存するであろう。
【0063】
宿主細胞は原核細胞または真核細胞でよく、その非限定例としては、大腸菌のような細菌、酵母のような菌類細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サル及び齧歯類起原の細胞系を非限定例とする哺乳類細胞、ショウジョウバエ及び蚕由来の細胞系を非限定例とする昆虫細胞がある。特に有益な細胞及び細胞系は大腸菌K12、大腸菌B、桿菌(Bacillus)及びストレプトマイセス(Streptomyces)に由来する。
【0064】
スクリーニング及び選択のプロセスに好ましくは当業界で公知の種々のマーカー、例えばルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ及び緑色蛍光タンパク質を介在させるが、組換えポリヌクレオチドの新規な活性、機能または品質を検出するいかなる方法も適当である。スクリーニング及び選択は、組換えポリヌクレオチド中で特定的に探求される対象に応じて設計される。例えば、特定の機能または機能レベルを有している酵素は、組換えタンパク質の実際の機能(またはその指示物質)を測定または同定することによって試験できる。当業者は一連の特徴の探求を特定のスクリーニングに適応させることができる。例えば、特異的タンパク質に結合し得るヌクレオチド配列は標識タンパク質によって探求でき、発現産物の特異的特徴または品質は探求する品質の特徴に応じて試験できる。使用された親配列に比べて強化された特徴をもつ組換え配列を作製するために本発明を使用することが本文中に記載された最も有意義な用途である。
【0065】
また別の実施態様では、PCR突然変異誘発、及び、特定のターゲット配列に比べて変異を有している配列が増加するように設計された別のプロセス(例えば、誤りがちのPCR突然変異誘発)によって指向性進化を増進するために本発明方法を使用できる。例えば、1つの指向性進化サイクル中に発見された種々の有益な点突然変異を含む突然変異体を取り込ませて、ライブラリーの1つまたは複数の構成員が単一遺伝子上に突然変異の集合を含む配列ライブラリーを作製する。これらの突然変異体は所望の有益な活性に基づいてスクリーニングすることによって同定される。これによって、第一には配列情報と部位特異的PCRとを使用して1つの遺伝子に複数の突然変異を集めるために必要な時間及び労力、第二には追加のPCR突然変異誘発とスクリーニングとのサイクルを実行することによって多重突然変異を集めるために必要な時間及び労力がいずれも節減される。
【0066】
この増進はまた、新規なポリヌクレオチド配列のランダム作製方法にも応用できる。
【0067】
本発明をより十分に説明するために非限定例を以下に示す。
【0068】
実施例1
ヘテロ二本鎖DNA反応の基質となるPCR産物の調製
LacZα遺伝子の突然変異体M1及びM2の双方を増幅させるために2つのPCR反応を行った。反応は、601.6μLのH2O;80μLの2mMのdNTP;50mMのトリス−HCl,pH9.1、16mMの硫酸アンモニウム、3.5mMのMgCl2及び150μg/mLのBSAから成る80μLの10×PC2バッファ(Ab PEPTIDESTM);16μLのpUC18 F1(40μM);(5′−TGAGCGTCGTTTTTGTGAT;配列6);16μLのpUC18 R1(40μM);(5′−TAGGGGTTCCGCGCACATTT;配列7);15:1のKlentaq(Ab PEPTIDESTM):PFUポリメラーゼ(STRATAGENETM)から成る2.4μLのPOL MIX;及び4μLの鋳型DNA(PROMEGATM、pUC18プラスミドM1またはM2(M1:配列1;M2:配列2)のミニプレップ、〜200ng/μL)の存在下で行った。合計量800μLを0.6mL容の8個のPCR管に分け入れ、サーマルサイクラーに載せて以下のプログラムで処理した:94℃で2分間;[94℃で1分;52℃で1分;72℃で1分、10秒]を25サイクル、72℃で7分間;6℃で精製されるまで。
【0069】
PROMEGATM PCR PrepsキットをWizard Minicolumnsと共に使用してPCR産物を精製した。ミニカラムあたり200μLのPCR反応物を精製し、精製産物を50μLのH2Oで溶出させた。M1及びM2のpUC18 F1R1 PCR産物として合計量200μLが得られた。
【0070】
DNAの濃度を測定するためにPCR産物のA260をSpectra Max Plus分光光度計(MOLECULAR DEVICESTM)を使用して測定した。以下の結果が得られた:M1 pUC18 F1R1=175ng/μL;及びM2 pUC18 F1R1=208.75ng/μL。
【0071】
実施例2
ヘテロ二本鎖DNA形成
170μLのM1 pUC18F1R1;143μLのM2 pUC18F1R1;及び16.47μLの20×トリスKClヘテロ二本鎖バッファ(0.3Mのトリス,pH7.83、1.2MのKCl)を混合し、これを3×0.6mL容のPCR管に分け入れた。次に管をサーマルサイクラーに据え、以下のヘテロ二本鎖形成プログラムで処理した:
94℃で4分間;90℃に温度を下げて10分間維持;85℃に温度を下げて10分間維持;80℃に温度を下げて10分間維持;60℃までは同様にして5℃ずつ温度を下げながら各温度で10分間ずつ維持し、次いで40℃に温度を下げて10分間維持し;次いで4℃にして反応が精製されるまで維持する。
【0072】
温度低下はすべて0.1℃/秒の勾配で行うことに注目されたい。3つのPromega WizardカラムをPCR Prepsキットと共に使用してヘテロ二本鎖DNAを精製し、DNAをH2Oに溶出させ、ヘテロ二本鎖DNAと合わせた量を150μLとした。
【0073】
実施例3
ニックトランスレーション反応
氷上で以下の試薬を混合した:40μLのpUC18F1R1精製ヘテロ二本鎖DNA;40μLのH2O;12.5μLの10×NTバッファ(0.5MのトリスHCl pH7.5;0.1MのMgCl2;10mMのジチオトレイトール(DTT);0.5mg/mLのBSA);5μLのDNA Pol I(New England Biolabs);22.5μLの2mMのdNTP;及び5μLの1×DNアーゼ予製液(50%グリセロール中の1×NTバッファ169μLで3μLのDNアーゼI(Stratagene,100,000U/mL)を希釈)。
【0074】
ニックトランスレーション反応を14℃で15分間行った。2μLの0.5MのEDTA pH8.0を加えて反応を停止させた。Promega PCR Prepsキットを使用してニックトランスレーション反応物を精製し、60μLのH2OでDNAを溶出させた。
【0075】
実施例4
ニックトランスレーションDNA及びヘテロ二本鎖対照の制限消化物
以下の試薬を合わせた:52μLのニックトランスレーションDNA;7μLのNEB 4バッファ(NEB;New England BiolabsTM);0.7μLの10×BSA(NEB);1μLのEcoRI(NEB);4μLのEco01091(NEB);4μLのSapI(NEB);及び2μLのH2O。
【0076】
以下の試薬を合わせることによってヘテロ二本鎖対照を調製した:25μLのpUC18F1R1ヘテロ二本鎖DNA(ニックトランスレーション反応に使用したものと同じ予製液);7μLのNEB 4(NEB);0.7μLの10×BSA(NEB);1μLのEcoRI(NEB);4μLのEco01091(NEB);4μLのSapI(NEB);及び28μLのH2O。
【0077】
以後の反応ではニックトランスレーションDNA及びヘテロ二本鎖対照の双方を別々に処理した。
【0078】
制限反応は37℃で5時間行った。
【0079】
ニックトランスレーション及び対照のLacZαインサートバンドを0.8%アガロースゲルからカミソリの刃を使用して単離した。ゲル切片をPromega PCR Prepsキットで精製し、インサートを50μLのH2Oで溶出させた。
【0080】
実施例5
結合反応
以下の試薬を合わせた:LacZαインサートがEcoRI及びEco01091で除去された0.5μLのpUC18ベクターDNA;5μLのF1R1対照インサートDNAまたは3μLのニックトランスレーションインサートDNA;1μLの10×結合用バッファ(Boerhinger Manneheim);0.75μLのT4 DNAリガーゼ(Boerhinger Manneheim);及び、対照には2.75μLのH2O、ニックトランスレーション対照には4.75μLのH2O。
【0081】
結合反応は16℃で一夜行った。
【0082】
実施例6
形質転換反応
XL−1 Blueコンピテント細胞(Stratagene)を解凍し、各50μLのアリコートを0.6mL容の管に導入した。5μLの結合反応物を各管に添加し、0.75μLのpUC18(Stratagene)プラスミドを対照として加えた。DNAを大腸菌と共に氷上で30分間インキュベートした。次に細胞/DNA混合物をPCRブロックに載せ、42℃で1分30秒間維持した。熱ショックを与えた細胞/DNA混合物を直ちに氷に載せて2分間維持した。次に45μLのS.O.C.(Gibco BRL)/管を加えて、管の内容物を15mLの管(Falcons)に移し、37℃で1時間振盪した。各250μLの2つの形質転換アリコートと30μLの野生型pUC18対照のアリコートとをLB Agar Ampicillin及びX−Galに37℃で一夜維持することによって平板培養した。
【0083】
実施例7
結果
プレートの半面でコロニー数をカウントし2倍すると1プレートあたりのコロニーの概数が得られた。各プレートの青色コロニーの総数をカウントした。pUC18対照プレートでは、全コロニーをカウントした。以下の結果が得られた:ニックトランスレーション反応物は524個の全コロニー中に5個の青色コロニーを含み、0.95%の復帰頻度を示した;ヘテロ二本鎖対照は1,032個の全コロニー中に7個の青色コロニーを含み、0.54%の復帰頻度を示した;pUC18対照は47個の全コロニー中に45個の青色コロニーを含み、95.74%の復帰頻度を示した。
【0084】
実施例8
野生型LacZαゲノムに比べて塩基の挿入または欠失を全く含まない2つのpUC18突然変異体に対するニックトランスレーション
野生型ゲノムに比べて塩基の挿入または欠失を全く含まないLacZα M3及びM4(M3:配列3;M4:配列4)の2つのpUC18突然変異体を構築した。Arnoldらの国際特許WO99/29902に記載の方法に従ってヘテロ二本鎖DNAを作製した(Westmorelandら,1997 Genetics 145:29−38参照)。双方の文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0085】
簡単に説明すると、一方の突然変異プラスミドは遺伝子の上流の非反復酵素(EcoRI)で消化し、他方の突然変異体は遺伝子の下流の異なる非反復制限酵素(Eco01091)で消化した。直鎖状フラグメントを会合させ、94℃に加熱してDNA鎖を変性し、室温に戻した。ヘテロ二本鎖DNA(1つの鎖がEcoRIでニックされ、第二鎖がEco01091でニックされた)は環化し、ホモ二本鎖DNA(双方の鎖がEcoRIまたはEco01091でニックされた)は直鎖状に維持された。このようにしてホモ二本鎖DNAから容易に識別できるヘテロ二本鎖は、ゲル電気泳動で処理しアガロースゲルからヘテロ二本鎖バンドを切り出すことによって直鎖状ホモ二本鎖から物理的に分離できる。次に、PromegaTM PCR Prepsキットを使用してヘテロ二本鎖DNAを精製できる。
【0086】
上記の実験はヘテロ二本鎖プラスミドDNAを作製するために行った。このヘテロ二本鎖プラスミドDNAの幾つかを前出の実施例3に記載したようにニックトランスレーション酵素に接触させた。一部分のヘテロ二本鎖プラスミドはヘテロ二本鎖の陰性対照として使用できるようにニックトランスレーション酵素に接触させなかった。2つのプラスミド調製物を別々に使用して、XL−1 Blue及びXL mutS(mutS遺伝子がノックアウトされた菌株)の双方を形質転換させた。mutS細胞はXL−1青色細胞よりも僅かにすぐれた結果を示し、これは、mutHLS系が組換えに関与しないことを示唆する。これらの実験で寒天プレートの規定面積内の青色コロニー及び白色コロニーの総数をカウントした。
【0087】
以下の結果が得られた:XL−1青色細胞では、ニックトランスレーションの結果として1,031個の全コロニー中に125個の青色コロニーが存在し、12.12%の復帰頻度を示す;他方、ヘテロ二本鎖対照の結果として、1,315個の全コロニー中に82個の青色コロニーが存在し、6.4%の復帰頻度を示す;XL mutS細胞では、ニックトランスレーションの結果として385個の全コロニー中に55個の青色コロニーが存在し、14.29%の復帰頻度を示す;他方、ヘテロ二本鎖対照の結果として、510個の全コロニー中に38個の青色コロニーが存在し、7.45%の復帰頻度を示す。
【0088】
実施例9
M3及びM4突然変異体に対するニックトランスレーション(及びPol I単独処理)
野生型ゲノムに比べて塩基の挿入または欠失を全く含まないLacZα M3及びM4(M3:配列3;M4:配列4)の2つのpUC18突然変異体を構築した。Arnoldらの国際特許WO99/29902に記載の方法に従ってヘテロ二本鎖DNAを作製した。該文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0089】
簡単に説明すると、一方の突然変異プラスミドは遺伝子の上流の非反復酵素で消化し、他方の突然変異体は遺伝子の下流の異なる非反復制限酵素で消化した。直鎖状フラグメントを会合させ、94℃に加熱してDNA鎖を変性し、冷却して室温に戻した。ヘテロ二本鎖DNAは環化し、ホモ二本鎖DNAは直鎖状に維持された。このようにしてホモ二本鎖DNAから容易に識別できるヘテロ二本鎖は、ゲル電気泳動で処理しアガロースゲルからヘテロ二本鎖バンドを切り出すことによって直鎖状ホモ二本鎖から物理的に分離できる。次に、PromegaTM PCR Prepsキットを使用してヘテロ二本鎖DNAを精製できる。
【0090】
ヘテロ二本鎖陰性対照、Pol I単独で処理したヘテロ二本鎖、及び、ニックトランスレーション酵素(Pol IとDNアーゼI)で処理したヘテロ二本鎖プラスミドの双方に上記の実験を行った。次にプラスミド調製物を使用してXL−1青色細胞を形質転換させた。この実験では、Pol I単独で処理したヘテロ二本鎖DNAがヘテロ二本鎖対照に比べて改善された組換え頻度を示すことが理解されよう。最良の結果を与えるのはやはりニックトランスレーション処理したヘテロ二本鎖分子である。これらの実験で寒天プレートの規定面積内の青色コロニー及び白色コロニーの総数をカウントした。
【0091】
以下の結果が得られた:ニックトランスレーション反応の結果としては390個の全コロニー中に46個の青色コロニーが存在し、11.79%の復帰頻度を示す;ヘテロ二本鎖をPol I単独で処理した結果としては829個の全コロニー中に78個の青色コロニーが存在し、9.41%の復帰頻度を示す;また、ヘテロ二本鎖対照の結果としては、626個の全コロニー中に46個の青色コロニーが存在し、7.35%の復帰頻度を表す。
【図面の簡単な説明】
【図1】
野生型LacZα(配列5)とLacZαの2つの構築突然変異体(それぞれM1及びM2;配列1及び2)との核酸配列を位置合せして示す。
【図2】
ニックトランスレーション反応後のDNA(クローニング前に制限酵素で切断しない場合及び切断した場合)及び制限酵素で消化した後の対照を表すゲルを示す。
【図3】
野生型LacZα(配列5)とLacZαの追加の2つの構築突然変異体(それぞれM3及びM4;配列3及び4)との核酸配列を位置合せして示す。
【図4】
突然変異体M1及びM2によるヘテロ二本鎖分子の形成を示す概略図である。
【図5】
図4のヘテロ二本鎖分子をニックするプロトコルを示す。
【図6】
図5のニックした分子に対するDNA PolIの作用を示す概略図である。
【図7】
後述するブルー/ホワイトスクリーニングアッセイを使用した予測結果を示す。
【図8A】
開示した方法を使用して行う反応の全体図を示す。
【図8B】
開示した方法を使用して行う反応の全体図を示す。
(発明の分野)
本発明は組換えポリヌクレオチドの新規なインビトロ製造方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
組換えプロセスには改良された機能または望ましい機能をもつ新規な配列を産み出す能力があり、その重要性は測り知れない。自然の組換えプロセスは無差別のプロセスである。しかしながら、同じ目標に到達し得る手順をより計画的にかつ巧妙に設計することによって状況を変えることができるようになった。現在では、自然の組換えイベントを模倣する手順が開発され、これらの手順は、幾つかのニーズに応じた特定のタンパク質または配列を特異的に作製し選択するために使用されている。これらのプロセスを惹起するために当業者が使用できる多くの方法が存在している。
【0003】
難点は、これらの方法の多くでは、対象となる特定タンパク質の配列と構造/機能との関係について詳細な理解が必要であり、従って、これらの方法が時間消費的及び情報集約的なことである。例えば、Shao and Arnold,1996 Curr.Opin.Struct.Biol.6:513−518参照。このような時間的及びエネルギー的な代価を回避できる別の方法を利用することは可能であるが、このような方法にもそれなりの費用がかかる。例えば、所望の有益な突然変異をもつ配列を追跡するために多数の選択及び突然変異のサイクルが必要であったり(例えば、Kuchner and Arnold,1977 Trends in Biotech,15:530参照)、対象となる組換え配列を作製するためにPCRサイクルの反復が必要であったりする(例えば、米国特許第5,605,793号)。
【0004】
ヘテロ二本鎖分子は、典型的な完全相補性(ホモ二本鎖化)二重鎖核酸分子の代替基質として当業界で使用されており、より指向性の組換え作用を行うことができるので、当業界で使用できる極めて情報集約的及び/または労働集約的な方法を回避できることが知見された。例えば、Luら,1983 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:4639−4643参照。これらのプロセスのヘテロ二本鎖分子は多数の方法によって創製できる。最も多い場合としては、二本鎖分子が出発(親)ホモ二本鎖核酸分子基質を加熱及びアニーリングすることによって創製される。
【0005】
これらのヘテロ二本鎖中間体分子の修復は、特に新規な組換え配列を作製するために設計された方法で使用されてきた。例えば、国際特許WO99/29902;Volkovら,1999 Nucleic Acids Res.2l7(18):e18i−vi参照。WO99/29902に開示された手順は詳細には、配列組成の異なる二重鎖核酸分子(本文中では変異ホモ二本鎖親配列または変異ホモ二本鎖分子と呼ぶ)からヘテロ二本鎖分子をインビトロで製造する処理を含む。次に、このヘテロ二本鎖分子を細菌細胞(大腸菌)修復系に導入し、この修復系においてミスマッチ領域の修復を行って、二重鎖核酸出発材料とは異なる非反復二重鎖核酸分子(またはホモ二本鎖)を得る。
【0006】
大腸菌細胞中でヘテロ二本鎖分子のin vivo修復がmut HLS系を介して行われることは当業界で公知である。例えば、Luら,前出;WO99/29902;Volkovら,1999 Nucleic Acids Res.2l7(18):i−vi参照。Mut HLSによるインビトロの修復は当業界で開示されている。例えば、Fangら,1997 J.Biol.Chem.272(36):22714−22720参照。
【0007】
ミスマッチのヘテロ二本鎖分子の修復を介して新規なポリヌクレオチドを作製し得る代替系、特に、細菌性Mut HLS系よりも恒常的にかつ効率的にヘテロ二本鎖を修復する系を同定することができれば有利であろう。修復機構を単離し、もっと綿密に分析し、最適化できるようにこの修復をインビトロで行い得る方法はいっそう有利であろう。
【0008】
(発明の概要)
本発明は組換えポリヌクレオチドをインビトロで製造する新規な方法に関する。本発明方法では、好ましくはヌクレアーゼの存在下の本質的にポリメラーゼから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物にヘテロ二本鎖分子を接触させる。このプロセスを使用して得られた結果は、特異的DNA修復系を利用する従来のin vivo組換え作用によって得られた結果よりも優れている。
【0009】
(図面の簡単な説明)
図1は、野生型LacZα(配列5)とLacZαの2つの構築突然変異体(それぞれM1及びM2;配列1及び2)との核酸配列を位置合せして示す。双方の突然変異体M1及びM2らは4個の終結コドンを含み、2個はインフレームであり、2個は読み枠から外れている。M1突然変異体は、LacZα遺伝子の塩基50を出発点(ATG開始コドン)とする27塩基の突然変異領域を含み、この領域に3塩基の欠失及び16個のミスマッチ塩基が存在する。M2突然変異体は、該遺伝子の塩基156を出発点とする22塩基の突然変異領域を含み、9個のミスマッチ塩基及び3塩基の挿入が存在する。M1変異体の最後のインフレーム終結コドンとM2変異体の最初のインフレーム終結コドンとの間の間隔は81塩基である。
【0010】
図2は、ニックトランスレーション反応後のDNA(クローニング前に制限酵素で切断しない場合及び切断した場合)及び制限酵素で消化した後の対照を表すゲルを示す。レーンは左から順に以下のサンプルを表す:5μLの1KB Ladder;2μLの消化ssDNAヘテロ二本鎖対照;2μLの消化dsDNAヘテロ二本鎖対照;ニックトランスレーション後の2μLの消化ssDNAヘテロ二本鎖;リガーゼでニックトランスレーション後の2μLの消化dsDNAヘテロ二本鎖;ニックトランスレーション後の2μLの消化dsDNAヘテロ二本鎖;3.5μLのLacZαインサートDNA;ニックトランスレーション後の3.μLのssDNAヘテロ二本鎖;リガーゼでニックトランスレーション後の3.5μLのdsDNAヘテロ二本鎖;ニックトランスレーション後の3.5μLのdsDNAヘテロ二本鎖。
【0011】
図3は、野生型LacZα(配列5)とLacZαの追加の2つの構築突然変異体(それぞれM3及びM4;配列3及び4)との核酸配列を位置合せして示す。双方の突然変異体M3及びM4は4個の終結コドンを含み、2個はインフレームであり、2個は読み枠から外れている。双方の突然変異体は野生型LacZα遺伝子に比べて塩基の挿入または欠失を含んでいない。M3は野生型に比べて14塩基の突然変異領域を含み、12個のミスマッチ塩基が存在しており、M4は16塩基の突然変異領域及び8個のミスマッチ塩基を有している。また、M3の最後の終結コドンの終点とM4の最初の終結コドンの起点との間の間隔は81塩基である。
【0012】
図4は、突然変異体M1及びM2によるヘテロ二本鎖分子の形成を示す概略図である。
【0013】
図5は、図4のヘテロ二本鎖分子をニックするプロトコルを示す。
【0014】
図6は、図5のニックした分子に対するDNA PolIの作用を示す概略図である。
【0015】
図7は、後述するブルー/ホワイトスクリーニングアッセイを使用した予測結果を示す。
【0016】
図8A及び8Bは、開示した方法を使用して行う反応の全体図を示す。
【0017】
(詳細な説明)
本文中及び特許請求の範囲では以下の用語を以下の定義で使用している。
【0018】
“組換えポリヌクレオド”、“組換え配列”などは、組換え作用によって得られた配列を意味する。該配列は、出発親配列(変異相同親配列、以下に定義)とは異なる配列組成をもつ。
【0019】
“組換え”は、親配列または親配列に由来の配列からキメラ配列を作製するプロセスを意味する。
【0020】
特定ポリヌクレオドに関する“新規な”、“キメラ”という用語は、特定反応に使用した変異相同親配列(以下に定義)とは異なる配列組成をもつ配列を意味する。
【0021】
“変異相同親配列”は、配列組成は親配列と異なっているが、親配列の相補DNA鎖とハイブリダイゼーションできる十分な相同度を有している配列を意味する。相同性のレベルに基づいてハイブリダイゼーション条件が変更されることは平均的な当業者に周知である。例えば、Stemmerら,1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747−10751参照。該文献においては、平均で4.1塩基の長さしかない配列一致領域をもつヒト及びネズミのIL−1β遺伝子からキメラを作製するためには極めて低い実効アニーリング温度に適応するように条件が変更されている。
【0022】
“ヘテロ二本鎖形成を促進する条件”は、親相同配列の相補鎖間でヘテロ二本鎖を形成させ得る任意の条件を意味する。
【0023】
“混合物”は、本発明において使用される試薬(例えば、酵素、バッファ、など)または材料の任意の組合せを意味する。
【0024】
“二本鎖修復系”は、ヘテロ二本鎖分子の2個の変異鎖の間のミスマッチを除去することによってヘテロ二本鎖の組換えを行わせる1つまたは複数の酵素を意味しており、組換えポリヌクレオドを形成させるために使用される。
【0025】
“ヌクレアーゼ”は、核酸配列内部のペプチド結合を加水分解し得る任意のタンパク質を意味する。
【0026】
“ポリメラーゼ”は、核酸分子鎖の3′末端へのヌクレオチドの付加を触媒し得る任意のタンパク質を意味する。
【0027】
“Pol I”はDNAポリメラーゼIを表す。
【0028】
“ヘテロ二本鎖”は、複合鎖が100%相補性でない二重鎖核酸分子を意味する。好ましくは、複合鎖が実質的に相補性である(50%、より好ましくは70%、いっそう好ましくは80%、最も好ましくは90%を上回る相補性をもつ)。この分子に対してポリメラーゼを好ましくはヌクレアーゼと共に作用させる。これはStemmerで使用された方法(米国特許第5,605,793号)との重要な違いである。Stemmerの方法で基幹となる中間体は、上述のようなヘテロ二本鎖分子でなく、親配列の多数のフラグメントから得られた特定の鎖を含む分子である。
【0029】
“融解温度”または“Tm”は、規定のイオン強度、pH及び核酸濃度下に平衡状態で1組の相補的プローブの約50%±2%がターゲット配列にハイブリダイズする温度を表す。
【0030】
本発明によれば出願人らは、ポリメラーゼと好ましくはヌクレアーゼとを使用するプロセスを使用して組換えポリヌクレオドをインビトロで製造し得る新規な方法を発見した。これらの酵素が変異ヘテロ二本鎖の鎖間のミスマッチを除去し、このプロセスで新規な配列、即ち、特定反応に使用される変異相同親配列とは異なる配列組成をもつ新規な配列が発生することが知見された。
【0031】
好ましくはヌクレアーゼと併用されるポリメラーゼはヘテロ二本鎖修復系の主要なエフェクターである。しかしながらまた、実際の組換え効果(即ち、ヘテロ二本鎖中のミスマッチヌクレオチドの除去を経由した組換えポリヌクレオドの発生)がポリメラーゼの活性(ニックされたヘテロ二本鎖分子の場合)またはポリメラーゼとヌクレアーゼとの活性の直接結果として得られる限り、修復系はヘテロ二本鎖修復プロセスに関与することが判明した他のいかなる酵素を含んでもよい。
【0032】
ニックトランスレーション酵素(特に、DNアーゼIのようなエンドヌクレアーゼ及びPol Iのようなポリメラーゼ)またはポリメラーゼ単独(ヘテロ二本鎖分子がニック済みの場合)を特異的に使用しこれらの酵素に依存してヘテロ二本鎖DNAから組換えポリヌクレオド配列を産生させる手段は新規である。ヘテロ二本鎖から組換え配列を作製するために当業界で使用されている主な方法は、大腸菌の酵素mutH、mutL及びmutSを使用する系であった。例えば国際特許WO99/29902参照。
【0033】
従って本発明は、変異相同親配列を準備する段階と、ヘテロ二本鎖形成を促進する条件下で該配列をインキュベートする段階と、本質的にヌクレアーゼ(好ましくはエンドヌクレアーゼ)とポリメラーゼとから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物に該ヘテロ二本鎖を接触させる段階と、産生された組換えポリヌクレオドを同定する段階とを含む組換えポリヌクレオドの製造方法に関する。代替的または付加的に本発明は、変異相同親配列を準備する段階と、ヘテロ二本鎖形成を促進する条件下で該配列をインキュベートして、ニックされたヘテロ二本鎖を形成させる段階と、本質的にポリメラーゼから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物に該ヘテロ二本鎖を接触させる段階と、産生された組換えポリヌクレオドを同定する段階とを含む組換えポリヌクレオドの製造方法に関する。付加的な方法は、本質的にポリメラーゼ(ミスマッチ分子がニックされている場合)から成る混合物またはポリメラーゼとヌクレアーゼとから成る混合物にミスマッチ分子を接触させる段階を含むミスマッチ核酸分子のインビトロ修復手段を提供する。
【0034】
本発明の本質は、変異相同親配列に由来するヘテロ二本鎖DNA間のミスマッチを除去するためにニックトランスレーション反応をインビトロで使用することである。ニックトランスレーションは当業界では主として、RNAプライマーを除去する手段、あるいは、高い比活性をもつ均一放射性のDNAを製造する手段として知られており、従ってゲノムDNAブロット及びRNAブロットを得るための配列特異的プローブの調製に使用することが知られている。ミスマッチのヘテロ二本鎖分子から組換え配列を作製するためにニックトランスレーションメカニズムを使用するという考え方は新規である。出願人らはこの極めて特異的な反応を、潜在的にいっそう望ましい非反復配列を作製するという極めて有用な目的、即ち、改良された特性をもつタンパク質をコードするに違いない配列を作製するという目的で初めて採用したものである。
【0035】
特異的反応を促進するためにヌクレアーゼ及びポリメラーゼ以外の要素(例えば、バッファ材料、dNTP、H2O、など)をヘテロ二本鎖修復系に添加できること、それ故に特許請求の範囲で混合物という用語を使用したことは本発明の開示によって理解されよう。しかしながらこの用語は、修復メカニズムがポリメラーゼの作用(ニックされたヘテロ二本鎖の場合)またはポリメラーゼとヌクレアーゼとの作用の直接結果として生じることを否定するものではない。従って、混合物は、上述のヘテロ二本鎖修復系(主として、ポリメラーゼまたはポリメラーゼ/ヌクレアーゼの組合せ)を特定的に含んでいなければならないが、修復プロセスに刺激を与える別の試薬を所望に応じて添加できる。
【0036】
開示された方法を使用して、LacZαの2つの非機能性突然変異体に遺伝子材料を取り込ませる試験を行った。簡単に説明すると、X−Galの存在下でブルー/ホワイトスクリーニングを行った。野生型LacZαを生じるLacZα遺伝子の2つの突然変異体間の組換えを、インジゴブルー産物の遊離によって同定した。インジゴブルー産物の遊離は、野生型LacZαによってコードされているβ−ガラクトシダーゼによるX−Galの開裂に依存した。非機能性突然変異体コロニーはX−Galの存在下で発現されると白色を呈する。これに反して、成功した実験(双方の突然変異をヘテロ二本鎖DNAから除去することに成功)では、得られたコロニーがX−Galの存在下で青色の野生型表現型に復帰している。本文中で試験した野生型への復帰は特異的組換えイベントを容易に検出し報告するための1つの方法である。例えば、Stemmer(米国特許第5,605,793号参照)。
【0037】
本発明の方法を使用して以下のような結果が得られた。ニックトランスレーション反応の結果として524個のコロニー中に5個の青色コロニーが生じた。これは0.95%の復帰頻度である。他方、ヘテロ二本鎖対照は1,032個のコロニー中に7個の青色コロニーを生じた。これは0.54%の復帰頻度である(ニックトランスレーションしたDNAのほぼ1/2の効率)。同様の実験を行うと、ニックトランスレーション処理したヘテロ二本鎖分子の復帰頻度は0.8%(16/1,911)であり、ヘテロ二本鎖対照群の復帰頻度は0.2%(2/1,011)であった(ニックトランスレーションした形態のほぼ1/4の効率)。実施例に使用したヘテロ二本鎖対照はニックトランスレーション処理することなく制限酵素で消化しただけでベクターに結合し、大腸菌細胞の形質転換に使用した。即ち、ヘテロ二本鎖修復系(主として、ポリメラーゼまたはポリメラーゼ/ヌクレアーゼ併用)に接触させない以外はニックトランスレーションしたヘテロ二本鎖分子と全く同じプロトコルで処理した。即ち、ミスマッチのヘテロ二本鎖対照に細胞性(大腸菌)修復プロセスだけが作用し、従って、Arnoldら,国際特許WO99/29902、に示されているように図式化できる。
【0038】
本発明の組換えポリヌクレオチドは、変異相同親配列に由来するヘテロ二本鎖分子から作製される。本発明に有用な変異相同親配列は、配列組成が異なっているが(少なくとも1個のヌクレオチドが異なっている)、相補配列とハイブリダイゼーションし得る十分な相同度を保持している任意の配列でよい。変異相同親配列は、突然変異形態でもよくまたは同じ配列の異なる対立遺伝子でもよい。配列は、同じタンパク質をコードできるが、異なる生物体内に存在してもよく、あるいは、ハイブリダイゼーションし得る十分な相同度をもつ2個またはそれ以上の異なる遺伝子を有していてもよい。変異相同親配列は更に、ベクターDNAに存在し得る。ベクターの例は、プラスミド、コスミド、BAC(細菌性人工染色体)及びYAC(酵母人工染色体)である。好ましくは変異相同親配列が50−150,000塩基対、より好ましくは50−10,000塩基対、最も好ましくは300−2000塩基対である。また、配列が互いに異なる長さを有していてもよい。好ましくは配列の長さの違いが50−5,000塩基対である。最も好ましくは配列の長さの違いが0−2,000塩基対である。この場合、真の目標は、ヘテロ二本鎖からユニークDNAを発生させるべく、ポリメラーゼが好ましくはヌクレアーゼと協奏的に作用できるように、ヘテロ二本鎖形態において十分なハイブリダイゼーションを生じさせることである。
【0039】
当業者には理解されるように、ハイブリダイゼーション条件は一般に配列依存性であり、所望の反応に応じて変更される。好ましくは、ハイブリダイゼーション条件が配列に基づいて決定され、対象配列の融解温度(Tm)よりもほぼ25℃低い温度、所定のイオン強度及びpHが使用される。これらの条件はいずれも当業者が容易に決定できる。また、変異配列間のヘテロ二本鎖形成に適応するようにアニーリング温度を変更できることも当業者に理解されよう。例えば、Stemmerら,前出、参照。該文献の記載では、平均で4.1塩基の長さしかない配列一致領域を有しているヒト及びネズミのIL−1β遺伝子からキメラを作製するために極めて低い実効アニーリング温度に適応するように諸条件が変更されていた。
【0040】
変異相同配列は二重鎖形態で存在してもよく一本鎖形態で存在してもよい。更に、これらは、DNA(例えばPCR産物、ゲノムまたはcDNA)でもよくまたはRNAでもよくまたはそれらの類似体でもよい。RNAを使用する場合、別のDNAまたはcDNA産物とアニーリングさせるヘテロ二本鎖を形成する前にRNAをcDNAに転写する。
【0041】
最も好ましくは、反応に取り込まれる配列が高度の相同性を有している。好ましくは配列が少なくとも50%相同、より好ましくは少なくとも70%相同、最も好ましくは少なくとも90%相同である。特に好ましい具体例は、少なくとも99%の配列一致を有している変異相同配列を含む。組換えイベントによって非反復配列を発生させ得るためには、少なくとも2つの塩基対位置に違いを有する少なくとも2つの配列が存在するのが好ましい。
【0042】
変異相同親配列がLacZα遺伝子、特にLacZαの突然変異体M1、M2、M3及びM4(それぞれ配列1−4)に由来する系によって本発明を説明した。この系は当業界(米国特許第5,605,793号参照)で特定の遺伝子シャフリング法の実行可能性を証明する有効で信頼できる手段として使用されている。しかしながら、この系を本明細書に定義した多くの“変異相同配列”のいずれかに使用することに影響を及ぼすものではないことは当業者には理解されよう。異なる配列組成を有しているが異なる親配列の相補的DNA鎖間のハイブリダイゼーションを可能にする十分な相同度を有している任意の数の配列をこの系と共に使用できることは容易に理解されよう。
【0043】
本発明によれば変異相同親配列は幾つかの方法で作製することができ、または、自然変異体でもよい。変異体を産生させる幾つかの好ましい方法は、誤りがちのPCR(error−prone PCR)、カセット突然変異誘発、UV突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、化学的突然変異誘発及びin vivo突然変異誘発などである。これらはすべて当業界で公知である。しかしながら、本文中に定義された変異相同配列を産生し得るいかなる手段も本発明での使用に適していることが当業者には理解されよう。
【0044】
配列を選択し入手した後、該配列を、変異親配列からヘテロ二本鎖分子を形成し得る条件下に維持する。相同親配列からヘテロ二本鎖DNAを作製するために当業界には多くの手段が存在する。このような手段はすべて本発明に使用し得る。特定の配列セットのヘテロ二本鎖形成に適した条件の決定は平均的な当業者の技量の範囲内である。
【0045】
好ましい実施態様では、変異相同配列の加熱及びアニーリングによってヘテロ二本鎖DNAを作製する。より好ましくは、所望の突然変異を含む2つの相同PCR産物(増幅目的でPCRした)を適当なバッファ中で加熱しアニーリングして会合させる。この場合には、出発基質である変異相同親配列を増幅する目的でPCRを使用している。これは実際の組換えプロセスの必須段階ではない。本発明方法ではプライマーの使用が必須ではなく、また、Stemmerの方法(米国特許第5,605,793号)のように3回以上のPCR処理に依存することもない。
【0046】
ヘテロ二本鎖DNAを産生させる別の手段では、M13由来ベクターとヘルパーファージとの使用によって一本鎖プラスミドDNAを増幅させる。この実施態様では、このようにして増幅させた2つの相同遺伝子を含有する2つの相補的な一本鎖プラスミドを接合させてヘテロ二本鎖DNAを創製し、完全プラスミドを使用してニックトランスレーション反応を惹起する。
【0047】
ヘテロ二本鎖DNAを産生させる別の好ましい方法では、相同遺伝子の各々を別々の一本鎖PCR反応で処理する。この方法ではバックグラウンドの低いホモ二本鎖が産生する。一方の反応は親配列PCR産物を鋳型として使用し順方向プライマーだけを用いて行い、他方の反応は逆方向プライマーと“変異相同親配列”(定義参照)PCR鋳型とを用いて行う。次に、2つの相同親配列を含む順方向及び逆方向のPCR産物を接合してヘテロ二本鎖DNAを創製する。次にこのヘテロ二本鎖DNAをニックトランスレーション反応で処理する。得られた産物を次に切断し、適当なプラスミド発現ベクターにクローニングする。
【0048】
代替的な好ましい実施態様では、一方の突然変異プラスミドを遺伝子の上流の非反復制限酵素(例えばEcoRI)で消化し、他方の突然変異プラスミドを遺伝子の下流の異なる非反復制限酵素(例えばEcoR01091)で消化する。得られた直鎖状フラグメントを集めて、94℃に加熱してDNA鎖を変性させ、冷却して室温に戻す。これらの条件下でヘテロ二本鎖DNAは環化し、ホモ二本鎖DNAは直鎖状に維持されている。その後、ヘテロ二本鎖DNAはホモ二本鎖DNAから容易に識別できるので、アガロースゲル電気泳動にかけ次いでアガロースゲルから環状ヘテロ二本鎖バンドを切り出すことによって物理的に分離できる。この精製したヘテロ二本鎖プラスミドDNAをニックトランスレーションプロトコルで処理し、精製した後で直接に適当な発現宿主の形質転換に使用する。
【0049】
それぞれ配列3及び配列4をもつ突然変異体M3及びM4にこの実施態様を使用すると以下の結果が得られた:XL−1青色細胞中ではニックトランスレーション反応の結果、212個の全コロニー中に27個の青色コロニーが存在し、形質転換効率は12.74%であった;ヘテロ二本鎖対照では364個の全コロニー中に18個の青色コロニーが存在し、形質転換効率は4.95%であった;XL mutS細胞中ではニックトランスレーション反応の結果、385個の全コロニー中に55個の青色コロニーが存在し、形質転換効率は14.29%であった;ヘテロ二本鎖対照では510個の全コロニー中に38個の青色コロニーが存在し、形質転換効率は7.45%であった。
【0050】
以下に記載の段階は、好ましくはゲル電気泳動によって精製したDNAフラグメントを用いて行うのが好ましいが、プラスミドまたはファージベクターのDNA配列に反応を行わせてもよい。
【0051】
変異相同親配列によるヘテロ二本鎖の形成後、該ヘテロ二本鎖を、本質的にヌクレアーゼとポリメラーゼとから構成されるかまたはニックしたヘテロ二本鎖が存在する場合にはポリメラーゼから構成されるヘテロ修復系を含む混合物に接触させる。ヌクレアーゼとポリメラーゼ、特にDNアーゼIとPol Iとによって惹起される反応はニックトランスレーション反応に酷似しており、従って本明細書ではニックトランスレーション反応と呼ぶ。
【0052】
この反応を支援するために複数の酵素、ポリメラーゼとヌクレアーゼ、あるいは、得られたヘテロ二本鎖分子がニックされているときは1つの酵素(ポリメラーゼ)がこのプロセスに必須であること、詳細にはこれらの酵素が変異ヘテロ二本鎖分子の鎖間ミスマッチを除去し非反復二重鎖ホモ二本鎖分子を形成するために必要な転写を行うということに注目されたい。従って、これらの分子の組合せ(ポリメラーゼとヌクレアーゼ)あるいはポリメラーゼ(ヘテロ二本鎖がニックされているとき)をヘテロ二本鎖修復系と呼ぶ。
【0053】
“ヘテロ二本鎖修復系”という用語は、特定的にはヘテロ二本鎖分子に対するヌクレアーゼ及びポリメラーゼのそれぞれの作用、あるいは、ニックされたヘテロ二本鎖分子に対するポリメラーゼの作用を承認するために新しく造られた用語であるが、この用語はまた詳細には、ミスマッチの修復を促進するためにこれらの酵素に添加されるが2つの酵素(即ち、ポリメラーゼとヌクレアーゼ)の本来の目的に影響を与えない他のすべての添加物を含意する。言い換えると、本文中に使用された“ヘテロ二本鎖修復系”という用語は、上述のヘテロ二本鎖修復活性を主としてポリメラーゼ及びポリメラーゼ/ヌクレアーゼの組合せが担当すると考えられるタンパク質または酵素の任意の組合せを含意する。従ってこの定義は、別の酵素またはタンパク質は観察された活性に貢献する本質的な要因とは考えられないという状態を説明するだけである。
【0054】
有用なポリメラーゼは当業界で公知である。好ましくはポリメラーゼは以下から選択される:大腸菌DNAポリメラーゼ、クレノウフラグメント;逆転写酵素;T4 DNAポリメラーゼ;天然型T7 DNAポリメラーゼ;化学的に修飾されたT7 DNAポリメラーゼ;遺伝的に修飾されたT7 DNAポリメラーゼ(Δ28);Pfu DNAポリメラーゼ;KlenTaq(Ab PeptidesTM)DNAポリメラーゼ;及びTaq DNAポリメラーゼ。DNAポリメラーゼの突然変異体、例えばDNAポリメラーゼIの突然変異体も本発明に有用である。従って、Pol A5も本発明に有用である。
【0055】
最も好ましくは酵素がDNA Pol Iである。ポリメラーゼに関しては反応時間が重要である。ポリメラーゼによる一方の鎖の読み通し(リードスルー)が別のポリメラーゼ分子による他方の鎖の読み通しを消去しないように、遺伝子に沿ったヌクレオチド置換は最小に維持されなければならない。当業者には理解されるであろうが、反応時間を最適結果に適応させることができ、反応時間はニックトランスレーション反応中の酵素及び試薬の濃度に関連する。ニックトランスレーション反応は5分−2時間の範囲の処理時間にするのが最も好ましい。
【0056】
分子がまだニックされていない場合には、DNアーゼI、または、二重鎖DNA分子を加水分解し得る他の任意のヌクレアーゼ(エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ、例えば制限酵素)が、ニックトランスレーションプロセスのもう1つの重要部分である。好ましくは使用される酵素がDNアーゼI、より好ましくはMg2+の存在下のDNアーゼIであり、これらは二本鎖DNAを無作為にニックする。DNアーゼI(または使用される特定ヌクレアーゼ)の量は、特定用途に最適化され得る。例えば、短いDNAフラグメント(<500塩基対)のニックトランスレーションには、全分子が少なくとも1回でニックされることを確保するためにより高い濃度のDNアーゼIが必要である。好ましくは、50%グリセロール中の1×NTバッファの量20−300μLあたり約1−3μLのDNアーゼIを含む予製液を調製する。1−10μLの範囲の種々の量のこの予製液を、例えば約125μLのニックトランスレーション反応に使用できる。より好ましくは、DNアーゼIが、50%グリセロール中の1×NTバッファ169μLで希釈した3μLのDNアーゼI(Stratagene 100,000U/mL)から成るDNアーゼI予製液の形態で使用される。しかしながらこれらの全ては行われる個々の反応に依存性であることが当業者に理解されよう。最終目的は、ヘテロ二本鎖DNAを十分にニックしてポリメラーゼを侵入させDNAミスマッチを修正することである。しかしながら、DNAの破壊が生じないように配慮しなければならない。最適化パラメーターを理解し管理することは当業界で容易であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編,1997)に詳細に記載されている。
【0057】
(ヌクレアーゼとヘテロ二本鎖DNAとを使用する代りに)ニックされたヘテロ二本鎖DNAとポリメラーゼとを用いても上述の結果と同様の最終結果が得られるという観察は重要である。この場合、ヘテロ二本鎖DNA中に存在するニックがヌクレアーゼの非存在に適応する。
【0058】
更に、本発明の上記の好ましい実施態様では、ヘテロ二本鎖分子に存在するニックをシールするためにDNAリガーゼを使用する。このためには標準結合条件下でDNAリガーゼによって処理する。特に好ましい実施態様では、使用されるDNAリガーゼがT4 DNAリガーゼである。リガーゼはニックトランスレーション反応前、反応中または反応後に添加できる。
【0059】
反応条件(例えば、反応容量、4つのdNTPの濃度及びDNAの量)を変更できることが平均的な当業者には理解されよう。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,前出、参照。例えば、ニックトランスレーション反応を20ngのDNAという少量で実行できること、5μLという少ない容量まで小規模化できることも平均的な当業者の知る処である;同書、参照。更に、大腸菌DNAポリメラーゼIに対してはdNTPが2μMという低濃度で十分であるが、基質をもっと高い濃度で供給するとポリメラーゼの効率が上がる;同書。
【0060】
平均的な当業者には理解されるように、反応の温度は使用される個々の反応基質、酵素及び条件に応じて調整される。
【0061】
ニックトランスレーション反応が完了すると、反応産物を精製し、ユニーク制限酵素によって消化し、適切なプラスミドベクターに挿入する。インサートを含むプラスミドベクターを次に適当な宿主に挿入して発現させる。次に宿主細胞をスクリーニングして、所望の突然変異を含むクローンを同定する。
【0062】
組換えポリヌクレオチドを発現させるために多様な発現ベクターのいずれかを使用し得ることは平均的な当業者の知る処である。特に好ましい発現ベクターはpUC18及びその誘導体、pUC19及びその誘導体、pBR322及びその誘導体、pBluescriptシリーズ、pGEMシリーズ(PromegaTM)、pETシリーズ(PromegaTM)及びpESP−1(StratageneTM)である。一般に、個々のベクターの選択は、使用される細胞の種類、所望の発現レベル、などに依存するであろう。
【0063】
宿主細胞は原核細胞または真核細胞でよく、その非限定例としては、大腸菌のような細菌、酵母のような菌類細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サル及び齧歯類起原の細胞系を非限定例とする哺乳類細胞、ショウジョウバエ及び蚕由来の細胞系を非限定例とする昆虫細胞がある。特に有益な細胞及び細胞系は大腸菌K12、大腸菌B、桿菌(Bacillus)及びストレプトマイセス(Streptomyces)に由来する。
【0064】
スクリーニング及び選択のプロセスに好ましくは当業界で公知の種々のマーカー、例えばルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ及び緑色蛍光タンパク質を介在させるが、組換えポリヌクレオチドの新規な活性、機能または品質を検出するいかなる方法も適当である。スクリーニング及び選択は、組換えポリヌクレオチド中で特定的に探求される対象に応じて設計される。例えば、特定の機能または機能レベルを有している酵素は、組換えタンパク質の実際の機能(またはその指示物質)を測定または同定することによって試験できる。当業者は一連の特徴の探求を特定のスクリーニングに適応させることができる。例えば、特異的タンパク質に結合し得るヌクレオチド配列は標識タンパク質によって探求でき、発現産物の特異的特徴または品質は探求する品質の特徴に応じて試験できる。使用された親配列に比べて強化された特徴をもつ組換え配列を作製するために本発明を使用することが本文中に記載された最も有意義な用途である。
【0065】
また別の実施態様では、PCR突然変異誘発、及び、特定のターゲット配列に比べて変異を有している配列が増加するように設計された別のプロセス(例えば、誤りがちのPCR突然変異誘発)によって指向性進化を増進するために本発明方法を使用できる。例えば、1つの指向性進化サイクル中に発見された種々の有益な点突然変異を含む突然変異体を取り込ませて、ライブラリーの1つまたは複数の構成員が単一遺伝子上に突然変異の集合を含む配列ライブラリーを作製する。これらの突然変異体は所望の有益な活性に基づいてスクリーニングすることによって同定される。これによって、第一には配列情報と部位特異的PCRとを使用して1つの遺伝子に複数の突然変異を集めるために必要な時間及び労力、第二には追加のPCR突然変異誘発とスクリーニングとのサイクルを実行することによって多重突然変異を集めるために必要な時間及び労力がいずれも節減される。
【0066】
この増進はまた、新規なポリヌクレオチド配列のランダム作製方法にも応用できる。
【0067】
本発明をより十分に説明するために非限定例を以下に示す。
【0068】
実施例1
ヘテロ二本鎖DNA反応の基質となるPCR産物の調製
LacZα遺伝子の突然変異体M1及びM2の双方を増幅させるために2つのPCR反応を行った。反応は、601.6μLのH2O;80μLの2mMのdNTP;50mMのトリス−HCl,pH9.1、16mMの硫酸アンモニウム、3.5mMのMgCl2及び150μg/mLのBSAから成る80μLの10×PC2バッファ(Ab PEPTIDESTM);16μLのpUC18 F1(40μM);(5′−TGAGCGTCGTTTTTGTGAT;配列6);16μLのpUC18 R1(40μM);(5′−TAGGGGTTCCGCGCACATTT;配列7);15:1のKlentaq(Ab PEPTIDESTM):PFUポリメラーゼ(STRATAGENETM)から成る2.4μLのPOL MIX;及び4μLの鋳型DNA(PROMEGATM、pUC18プラスミドM1またはM2(M1:配列1;M2:配列2)のミニプレップ、〜200ng/μL)の存在下で行った。合計量800μLを0.6mL容の8個のPCR管に分け入れ、サーマルサイクラーに載せて以下のプログラムで処理した:94℃で2分間;[94℃で1分;52℃で1分;72℃で1分、10秒]を25サイクル、72℃で7分間;6℃で精製されるまで。
【0069】
PROMEGATM PCR PrepsキットをWizard Minicolumnsと共に使用してPCR産物を精製した。ミニカラムあたり200μLのPCR反応物を精製し、精製産物を50μLのH2Oで溶出させた。M1及びM2のpUC18 F1R1 PCR産物として合計量200μLが得られた。
【0070】
DNAの濃度を測定するためにPCR産物のA260をSpectra Max Plus分光光度計(MOLECULAR DEVICESTM)を使用して測定した。以下の結果が得られた:M1 pUC18 F1R1=175ng/μL;及びM2 pUC18 F1R1=208.75ng/μL。
【0071】
実施例2
ヘテロ二本鎖DNA形成
170μLのM1 pUC18F1R1;143μLのM2 pUC18F1R1;及び16.47μLの20×トリスKClヘテロ二本鎖バッファ(0.3Mのトリス,pH7.83、1.2MのKCl)を混合し、これを3×0.6mL容のPCR管に分け入れた。次に管をサーマルサイクラーに据え、以下のヘテロ二本鎖形成プログラムで処理した:
94℃で4分間;90℃に温度を下げて10分間維持;85℃に温度を下げて10分間維持;80℃に温度を下げて10分間維持;60℃までは同様にして5℃ずつ温度を下げながら各温度で10分間ずつ維持し、次いで40℃に温度を下げて10分間維持し;次いで4℃にして反応が精製されるまで維持する。
【0072】
温度低下はすべて0.1℃/秒の勾配で行うことに注目されたい。3つのPromega WizardカラムをPCR Prepsキットと共に使用してヘテロ二本鎖DNAを精製し、DNAをH2Oに溶出させ、ヘテロ二本鎖DNAと合わせた量を150μLとした。
【0073】
実施例3
ニックトランスレーション反応
氷上で以下の試薬を混合した:40μLのpUC18F1R1精製ヘテロ二本鎖DNA;40μLのH2O;12.5μLの10×NTバッファ(0.5MのトリスHCl pH7.5;0.1MのMgCl2;10mMのジチオトレイトール(DTT);0.5mg/mLのBSA);5μLのDNA Pol I(New England Biolabs);22.5μLの2mMのdNTP;及び5μLの1×DNアーゼ予製液(50%グリセロール中の1×NTバッファ169μLで3μLのDNアーゼI(Stratagene,100,000U/mL)を希釈)。
【0074】
ニックトランスレーション反応を14℃で15分間行った。2μLの0.5MのEDTA pH8.0を加えて反応を停止させた。Promega PCR Prepsキットを使用してニックトランスレーション反応物を精製し、60μLのH2OでDNAを溶出させた。
【0075】
実施例4
ニックトランスレーションDNA及びヘテロ二本鎖対照の制限消化物
以下の試薬を合わせた:52μLのニックトランスレーションDNA;7μLのNEB 4バッファ(NEB;New England BiolabsTM);0.7μLの10×BSA(NEB);1μLのEcoRI(NEB);4μLのEco01091(NEB);4μLのSapI(NEB);及び2μLのH2O。
【0076】
以下の試薬を合わせることによってヘテロ二本鎖対照を調製した:25μLのpUC18F1R1ヘテロ二本鎖DNA(ニックトランスレーション反応に使用したものと同じ予製液);7μLのNEB 4(NEB);0.7μLの10×BSA(NEB);1μLのEcoRI(NEB);4μLのEco01091(NEB);4μLのSapI(NEB);及び28μLのH2O。
【0077】
以後の反応ではニックトランスレーションDNA及びヘテロ二本鎖対照の双方を別々に処理した。
【0078】
制限反応は37℃で5時間行った。
【0079】
ニックトランスレーション及び対照のLacZαインサートバンドを0.8%アガロースゲルからカミソリの刃を使用して単離した。ゲル切片をPromega PCR Prepsキットで精製し、インサートを50μLのH2Oで溶出させた。
【0080】
実施例5
結合反応
以下の試薬を合わせた:LacZαインサートがEcoRI及びEco01091で除去された0.5μLのpUC18ベクターDNA;5μLのF1R1対照インサートDNAまたは3μLのニックトランスレーションインサートDNA;1μLの10×結合用バッファ(Boerhinger Manneheim);0.75μLのT4 DNAリガーゼ(Boerhinger Manneheim);及び、対照には2.75μLのH2O、ニックトランスレーション対照には4.75μLのH2O。
【0081】
結合反応は16℃で一夜行った。
【0082】
実施例6
形質転換反応
XL−1 Blueコンピテント細胞(Stratagene)を解凍し、各50μLのアリコートを0.6mL容の管に導入した。5μLの結合反応物を各管に添加し、0.75μLのpUC18(Stratagene)プラスミドを対照として加えた。DNAを大腸菌と共に氷上で30分間インキュベートした。次に細胞/DNA混合物をPCRブロックに載せ、42℃で1分30秒間維持した。熱ショックを与えた細胞/DNA混合物を直ちに氷に載せて2分間維持した。次に45μLのS.O.C.(Gibco BRL)/管を加えて、管の内容物を15mLの管(Falcons)に移し、37℃で1時間振盪した。各250μLの2つの形質転換アリコートと30μLの野生型pUC18対照のアリコートとをLB Agar Ampicillin及びX−Galに37℃で一夜維持することによって平板培養した。
【0083】
実施例7
結果
プレートの半面でコロニー数をカウントし2倍すると1プレートあたりのコロニーの概数が得られた。各プレートの青色コロニーの総数をカウントした。pUC18対照プレートでは、全コロニーをカウントした。以下の結果が得られた:ニックトランスレーション反応物は524個の全コロニー中に5個の青色コロニーを含み、0.95%の復帰頻度を示した;ヘテロ二本鎖対照は1,032個の全コロニー中に7個の青色コロニーを含み、0.54%の復帰頻度を示した;pUC18対照は47個の全コロニー中に45個の青色コロニーを含み、95.74%の復帰頻度を示した。
【0084】
実施例8
野生型LacZαゲノムに比べて塩基の挿入または欠失を全く含まない2つのpUC18突然変異体に対するニックトランスレーション
野生型ゲノムに比べて塩基の挿入または欠失を全く含まないLacZα M3及びM4(M3:配列3;M4:配列4)の2つのpUC18突然変異体を構築した。Arnoldらの国際特許WO99/29902に記載の方法に従ってヘテロ二本鎖DNAを作製した(Westmorelandら,1997 Genetics 145:29−38参照)。双方の文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0085】
簡単に説明すると、一方の突然変異プラスミドは遺伝子の上流の非反復酵素(EcoRI)で消化し、他方の突然変異体は遺伝子の下流の異なる非反復制限酵素(Eco01091)で消化した。直鎖状フラグメントを会合させ、94℃に加熱してDNA鎖を変性し、室温に戻した。ヘテロ二本鎖DNA(1つの鎖がEcoRIでニックされ、第二鎖がEco01091でニックされた)は環化し、ホモ二本鎖DNA(双方の鎖がEcoRIまたはEco01091でニックされた)は直鎖状に維持された。このようにしてホモ二本鎖DNAから容易に識別できるヘテロ二本鎖は、ゲル電気泳動で処理しアガロースゲルからヘテロ二本鎖バンドを切り出すことによって直鎖状ホモ二本鎖から物理的に分離できる。次に、PromegaTM PCR Prepsキットを使用してヘテロ二本鎖DNAを精製できる。
【0086】
上記の実験はヘテロ二本鎖プラスミドDNAを作製するために行った。このヘテロ二本鎖プラスミドDNAの幾つかを前出の実施例3に記載したようにニックトランスレーション酵素に接触させた。一部分のヘテロ二本鎖プラスミドはヘテロ二本鎖の陰性対照として使用できるようにニックトランスレーション酵素に接触させなかった。2つのプラスミド調製物を別々に使用して、XL−1 Blue及びXL mutS(mutS遺伝子がノックアウトされた菌株)の双方を形質転換させた。mutS細胞はXL−1青色細胞よりも僅かにすぐれた結果を示し、これは、mutHLS系が組換えに関与しないことを示唆する。これらの実験で寒天プレートの規定面積内の青色コロニー及び白色コロニーの総数をカウントした。
【0087】
以下の結果が得られた:XL−1青色細胞では、ニックトランスレーションの結果として1,031個の全コロニー中に125個の青色コロニーが存在し、12.12%の復帰頻度を示す;他方、ヘテロ二本鎖対照の結果として、1,315個の全コロニー中に82個の青色コロニーが存在し、6.4%の復帰頻度を示す;XL mutS細胞では、ニックトランスレーションの結果として385個の全コロニー中に55個の青色コロニーが存在し、14.29%の復帰頻度を示す;他方、ヘテロ二本鎖対照の結果として、510個の全コロニー中に38個の青色コロニーが存在し、7.45%の復帰頻度を示す。
【0088】
実施例9
M3及びM4突然変異体に対するニックトランスレーション(及びPol I単独処理)
野生型ゲノムに比べて塩基の挿入または欠失を全く含まないLacZα M3及びM4(M3:配列3;M4:配列4)の2つのpUC18突然変異体を構築した。Arnoldらの国際特許WO99/29902に記載の方法に従ってヘテロ二本鎖DNAを作製した。該文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0089】
簡単に説明すると、一方の突然変異プラスミドは遺伝子の上流の非反復酵素で消化し、他方の突然変異体は遺伝子の下流の異なる非反復制限酵素で消化した。直鎖状フラグメントを会合させ、94℃に加熱してDNA鎖を変性し、冷却して室温に戻した。ヘテロ二本鎖DNAは環化し、ホモ二本鎖DNAは直鎖状に維持された。このようにしてホモ二本鎖DNAから容易に識別できるヘテロ二本鎖は、ゲル電気泳動で処理しアガロースゲルからヘテロ二本鎖バンドを切り出すことによって直鎖状ホモ二本鎖から物理的に分離できる。次に、PromegaTM PCR Prepsキットを使用してヘテロ二本鎖DNAを精製できる。
【0090】
ヘテロ二本鎖陰性対照、Pol I単独で処理したヘテロ二本鎖、及び、ニックトランスレーション酵素(Pol IとDNアーゼI)で処理したヘテロ二本鎖プラスミドの双方に上記の実験を行った。次にプラスミド調製物を使用してXL−1青色細胞を形質転換させた。この実験では、Pol I単独で処理したヘテロ二本鎖DNAがヘテロ二本鎖対照に比べて改善された組換え頻度を示すことが理解されよう。最良の結果を与えるのはやはりニックトランスレーション処理したヘテロ二本鎖分子である。これらの実験で寒天プレートの規定面積内の青色コロニー及び白色コロニーの総数をカウントした。
【0091】
以下の結果が得られた:ニックトランスレーション反応の結果としては390個の全コロニー中に46個の青色コロニーが存在し、11.79%の復帰頻度を示す;ヘテロ二本鎖をPol I単独で処理した結果としては829個の全コロニー中に78個の青色コロニーが存在し、9.41%の復帰頻度を示す;また、ヘテロ二本鎖対照の結果としては、626個の全コロニー中に46個の青色コロニーが存在し、7.35%の復帰頻度を表す。
【図面の簡単な説明】
【図1】
野生型LacZα(配列5)とLacZαの2つの構築突然変異体(それぞれM1及びM2;配列1及び2)との核酸配列を位置合せして示す。
【図2】
ニックトランスレーション反応後のDNA(クローニング前に制限酵素で切断しない場合及び切断した場合)及び制限酵素で消化した後の対照を表すゲルを示す。
【図3】
野生型LacZα(配列5)とLacZαの追加の2つの構築突然変異体(それぞれM3及びM4;配列3及び4)との核酸配列を位置合せして示す。
【図4】
突然変異体M1及びM2によるヘテロ二本鎖分子の形成を示す概略図である。
【図5】
図4のヘテロ二本鎖分子をニックするプロトコルを示す。
【図6】
図5のニックした分子に対するDNA PolIの作用を示す概略図である。
【図7】
後述するブルー/ホワイトスクリーニングアッセイを使用した予測結果を示す。
【図8A】
開示した方法を使用して行う反応の全体図を示す。
【図8B】
開示した方法を使用して行う反応の全体図を示す。
Claims (48)
- (a)変異相同親配列を準備する段階と、
(b)ヘテロ二本鎖形成を促進する条件下で前記配列をインキュベートする段階と、
(c)本質的にヌクレアーゼとポリメラーゼとから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物に前記ヘテロ二本鎖を接触させる段階と、
から成る組換えポリヌクレオチドの製造方法。 - 更に、
(d)産生された組換えポリヌクレオチドを同定する段階、
を含む請求項1に記載の方法。 - ヌクレアーゼとポリメラーゼとから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物にヘテロ二本鎖を接触させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- ヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- エンドヌクレアーゼがDNアーゼIであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- ヌクレアーゼが制限酵素であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- ヌクレアーゼがエキソヌクレアーゼであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- ポリメラーゼがDNAポリメラーゼIであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- ヌクレアーゼがDNアーゼIであり、ポリメラーゼがDNAポリメラーゼIであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- ヌクレアーゼが制限酵素であり、ポリメラーゼがDNAポリメラーゼIであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 相同配列が2つ以上の異なる遺伝子に由来することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 相同配列が同じ遺伝子に由来することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 相同配列の少なくとも一方がLacZαの突然変異体であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
- 相同配列がプラスミドに存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 方法が更に、段階(b)の前にプラスミドを直鎖化する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
- 混合物が更にDNAリガーゼを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- リガーゼがT4 DNAリガーゼであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
- 相同親配列がDNAであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- ヘテロ二本鎖形成が、相同親配列を加熱しアニーリングすることによって成し遂げられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- ヘテロ二本鎖形成が、後でアニーリングされる相同親配列の相補鎖の一本鎖PCRによって成し遂げられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 一本鎖PCRが2つ以上のプライマーを用いて行われることを特徴とする請求項20に記載の方法。
- PCRが、親配列の一方の鎖の順方向プライマーと他方の親配列の相補配列に対する逆方向プライマーとを用いて行われることを特徴とする請求項21に記載の方法。
- ヘテロ二本鎖形成が相同親配列を増幅する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- ヘテロ二本鎖形成が一本鎖プラスミドDNA相同親配列を増幅する段階を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
- 増幅がM13由来のベクター及びヘルパーファージによって行われることを特徴とする請求項23に記載の方法。
- 段階(d)が、
(a)段階(c)のポリヌクレオチド産物を精製し、
(b)前記ポリヌクレオチド産物をベクターに挿入するために消化し、
(c)消化したポリヌクレオチド産物をベクターに結合し、
(d)前記ベクターを適当な宿主体内で発現させ、
(e)親配列に比べて新しい特性または機能を表すポリヌクレオチドクローンを同定する処理から成り、前記新しいポリヌクレオチドクローンが組換えポリヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 方法が更に、新しいポリヌクレオチドクローンから組換えポリヌクレオチドを単離する段階を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
- (a)変異相同親配列を準備する段階と、
(b)ニックされたヘテロ二本鎖が得られるようにヘテロ二本鎖形成を促進する条件下で前記配列をインキュベートする段階と、
(c)本質的にポリメラーゼから成るヘテロ二本鎖修復系を含む混合物に前記ヘテロ二本鎖を接触させる段階と、
から成る組換えポリヌクレオチドの製造方法。 - 更に、
(d)産生された組換えポリヌクレオチドを同定する段階、
を含む請求項28に記載の方法。 - 混合物がポリメラーゼから成ることを特徴とする請求項28に記載の方法。
- ポリメラーゼがDNAポリメラーゼIであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
- 相同親配列がDNAであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
- 段階(d)が、
(a)段階(c)のポリヌクレオチド産物を精製すること、
(b)前記ポリヌクレオチド産物をベクターに挿入するために消化すること、
(c)消化したポリヌクレオチド産物をベクターに結合させること、
(d)前記ベクターを適当な宿主体内で発現させること、
(e)親配列に比べて新しい特性または機能を表すポリヌクレオチドクローンを同定することを含み、前記新しいポリヌクレオチドクローンが組換えポリヌクレオチドを含む、請求項28に記載の方法。 - 更に、新しいポリヌクレオチドクローンから組換えポリヌクレオチドを単離する段階を含む請求項33に記載の方法。
- 本質的にポリメラーゼとヌクレアーゼとから成る混合物にミスマッチ分子を接触させる段階から成るミスマッチ核酸分子のインビトロ修復方法。
- 混合物がポリメラーゼとヌクレアーゼとから成ることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- ヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- ヌクレアーゼがDNアーゼIであることを特徴とする請求項37に記載の方法。
- ヌクレアーゼが制限酵素であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
- ヌクレアーゼがエキソヌクレアーゼであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- ポリメラーゼがDNAポリメラーゼIであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- ヌクレアーゼがDNアーゼIであり、ポリメラーゼがDNAポリメラーゼIであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- ヌクレアーゼが制限酵素であり、ポリメラーゼがDNAポリメラーゼIであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- 相同親配列がDNAであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
- ミスマッチ分子がニックされているときには、ミスマッチのヘテロ二本鎖を本質的にポリメラーゼから成る混合物に接触させる段階から成るミスマッチ核酸分子のインビトロ修復方法。
- 混合物がポリメラーゼから成ることを特徴とする請求項45に記載の方法。
- ポリメラーゼがDNAポリメラーゼIであることを特徴とする請求項45に記載の方法。
- 相同親配列がDNAであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
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