JP4393722B2 - 導電性複合繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、除電性能に優れた複合繊維に関する。詳しくは、含有する導電性カーボンブラックが少量であるにもかかわらず、OA機器用のブラシ等として長期間に亘り優れた除電性能およびクリーニング性能を維持しながら繰り返し使用できるため、高品質の印刷画像を長期に亘り形成することのできる導電性繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
OA機器の代表例としては、複写機、プリンター、ファクシミリ等が挙げられ、近年、高性能化、高速化、小型化、複合化等の技術革新が著しい。これらのOA機器では、転写工程の後に感光体上に残ったトナーを除去する工程が有り、クリーニングが不充分であると、感光体上に残留したトナーが感光特性を妨害し、結果として記録品質が低下する。感光体上に残留したトナーのクリーニング方法としては、接触型のブラシを用いる方法、ゴム製ブレードを用いる方法、捲取り式のウエブを使用する方法、弾性体ローラーを用いる方法等が知られている。それらの方法のうち、接触型のブラシを用いる方法の中に除電性能に優れた導電性繊維による立毛布帛を用いて製造したブラシを使用するものが有る。
【0003】
従来から除電性能に優れた導電性繊維については種々の提案がなされており、たとえば導電性を有さない繊維の表面に金属メッキを施して導電性を付与したものや導電性カーボンブラックを樹脂やゴム類に分散させ、これを繊維表面にコートすることによって導電性被覆層を形成せしめたもの等がある。しかし、これらは製造工程が複雑で技術的に困難な方法によって得られるものであったり、導電性繊維を実用に供するための準備段階での外的作用によって導電性が容易に低下し実用の域を脱してしまうという問題があった。
【0004】
他の導電性繊維として、スチール繊維のような金属繊維が除電性能に優れたものとして知られているが、金属繊維はコストが高く、しかも一般の有機素材を摩耗させるといったトラブルの原因となつていた。
【0005】
さらにまた別のタイプの導電性繊維として、導電性カーボンブラックを均一に分散させたポリマーを繊維化する方法が提案されているが、導電性カーボンブラツクを多量に含有するために繊維の製造が難しく、収率も悪く、コスト高であり、かつ繊維物性が著しく低下し、特殊な工程を用いる以外に製品化が困難というのが現状である。
【0006】
これらの問題を少しでも解消しようという目的で、たとえば米国特許第3,803,453号明細書には、芯鞘型複合繊維の芯成分ポリマーに導電性カーボンブラツクを含有させ、それを通常の繊維形成性ポリマーからなる鞘で包み込もうという方法が提案されている。また、特公昭53−44579号公報等で提案されている如く、導電性カーボンブラックを含む芯成分のかなりの部分が鞘成分をつきぬけて繊維の表面に露出している導電性繊維もある。
【0007】
前者の場合、繊維物性を保つため芯成分を50%以下にする必要があり、非導電性の鞘成分で導電性成分を厚く包囲するため、芯成分中のカーボンブラック含有量を多くしないと充分な性能が発揮されない。特公昭53−44579号公報は、その課題を解消しようとするものであるが、カーボンブラックを包囲する鞘成分が表面に露出している割合が大きいため、芯成分と鞘成分との剥離その他のトラブルを生じやすく、また、均一分散型に比べ単繊維内でも導電性能のバラツキが大きくなりやすい。さらに特開昭52−152513号公報においては、上記単一の芯鞘型導電性繊維の除電性能向上と成分層間の剥離防止を中心とした耐久性向上を目的とし、導電性カーボンブラックを含む導電性ポリマー層とそれと同じポリマーで導電性カーボンを含まない非導電性ポリマー層とを多層状に張合わせた繊維が提案されているが、この場合も非導電性ポリマー層が繊維表面に露出しすぎているため制電性能の安定性は十分ではない。
【0008】
一方、特開昭53−147865号公報や特開昭54−34470号公報等においては、有機導電性物質を含有する線状重合体を繊維形成性ポリマー内に筋状に分散せしめた導電性繊維が提案されており、これらにおいては導電性成分が繊維表面ではなく繊維内部に入っているために剥離、表面摩耗等の耐久性が向上するというものである。
【0009】
しかしながら、この場合、有機導電性物質を含有する線状重合体は、それと全く相溶性のない繊維形成性ポリマー内において、長さ方向へ非連続状態で分散混合しており、繊維強度には全く寄与しないため繊維強度の低下は避けることができない。また、導電性ポリマーの分散状態によって導電性能が変化するため、製造条件、製品品質の管理が非常に難しくならざるを得ない。さらに、一般的に非相溶重合体を混合分散させた場合、分散成分は非分散ポリマーに完全に包み込まれるものではなく一部表面に露出するため、その部分から導電性重合体の一部が脱落する可能性もある。
【0010】
このほか、導電性ポリマー層が繊維表面の一部に露出するタイプの複合繊維は、例えば、特開昭54-134117号公報、特開昭61-132624号公報、特開平9-279416号公報などにおいても、繊維や繊維製品の製造工程において金属との摩耗が少なく、複合成分間の剥離や導電性成分が抜け落ちることのない導電性複合繊維が提案されている。
【0011】
しかしながら、従来提案されてきた導電性ポリマー層と非導電性ポリマー層との組み合わせでは、製造工程では問題なくても、ブラシ等の繊維製品にしたときの導電性能のバラツキが大きく、また、導電性の繊維製品として長期間の実使用において評価したとき、やはり剥離による導電性の低下が生じるという問題があった。
【0012】
また、導電性能の湿度依存性(環境)が少なく、放電開始電圧が低く高印加電圧下においても優れた除電性能を有し、実際に使用を続けた場合の除電性能の低下がほとんどなく、性能(画像の鮮明さ)が長期にわたり維持される優れた導電性複合繊維は従来存在していないというのが現状である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、実際にブラシ等の繊維製品として使用した場合においても、導電性能のバラツキが少なく、初期の良好な性能を保持することの可能な導電性複合繊維を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、導電性カーボンブラックを15〜50重量%含有する熱可塑性ポリアミドからなる導電性ポリマー層(A)の鞘ポリマー層と融点170℃以上の熱可塑性ポリアミドからなる芯ポリマー層(B)とからなる芯鞘型の導電性複合繊維であって、該導電性ポリマー層(A)に固有電気抵抗値が10 -3 〜10 2 Ω・cmの抵抗値を有するカーボンブラックと10 0 〜10 6 Ω・cmの抵抗値を有するカーボンブラックが含有され、前記2種類のカーボンブラックの吸油量比が1.2〜4.5であって、芯ポリマー層(B)は繊維全体重量の50重量%以上97重量%以下を占めており、かつ100V印加時の電気抵抗値R(Ω/cm・f)が下記式を満足することを特徴とする芯鞘型の導電性複合繊維である。
logR=7.0〜10.9 (1)
また、本発明において、好ましくは芯ポリマー(B)が熱可塑性ポリアミドからなる上記の導電性複合繊維であり、さらに好ましくは、芯ポリマー層(B)がジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸であるジカルボン酸成分とジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンであるジアミン成分とから重合されてなる熱可塑性ポリアミドからなる上記の導電性複合繊維である。
【0015】
本発明の導電性複合繊維は、複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器に組み込まれる帯電ブラシ及び/又は除電ブラシ及び/又はクリーニングブラシ等に利用することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明において、導電性ポリマー層(A)に含まれる導電性カーボンブラックは、該(A)成分中に15〜50重量%、好ましくは20〜40重量%含有されることが重要である。導電性カーボンブラックの含量が15重量%より少ない場合には目的とする導電性が得られず、充分な除電性能は発揮されない。一方、50重量%を越える場合は、導電性のより一層の向上は認められず、ポリマーの流動性が著しく低下して紡糸性が極端に悪化するので好ましくない。
【0017】
導電性カーボンブラックは完全に粒子状分散をしている場合、導電性が不良であって、ストラクチヤーと呼ばれる連鎖構造をとるときに導電性が向上して導電性カーボンブラックと言われるものになる。したがって、導電性カーボンブラックによってポリマーを導電化するに当っては、このストラクチヤーを破壊しないで導電性カーボンブラックを分散させることが肝要となる。
導電性カーボンブラック含有する複合体の電気伝導メカニズムは、カーボンブラック連鎖の接触によるものとトンネル効果によるものと考えられるが、前者の方が主と考えられる。したがって、カーボンブラックの連鎖は長いほうが、また高密度でポリマー中に存在するほうが接触確率が大となり高導電性となる。本発明者らの検討結果では、導電性カーボンブラック含量が15重量%未満ではほとんど効果がなく、20重量%になると急激に導電性が向上し、30重量%を越えるとほぼ飽和する。
【0018】
導電性ポリマー層(A)が非導電性であるポリマー層(B)で完全に包囲されているかその一部しか露出していない場合は、繊維周長方向で電気抵抗値に斑を生じやすく、均一分散型に比べ導電性能のバラツキが大きくなるため、導電性ポリマー層(A)で繊維表面を完全に包囲する芯鞘型の複合繊維とすることが必要になる。
【0019】
さらに、導電性ポリマー層(A)と芯ポリマー層(B)との複合比率について、芯ポリマー層(B)が97重量%を超えて多くなり、すなわち導電性ポリマー層(A)が3重量%未満になると繊維軸方向に均一に連続されず、安定した複合構造として紡糸することが困難となる。
一方、導電性ポリマー層(A)が50重量%を越えると、芯ポリマー層(B)が充分に繊維形成性を持っていたとしても、複合繊維の紡糸性及び延伸後の繊維物性が極端に低下し実用性は全く失われてしまう。
【0020】
これは導電性カーボンブラックを含有することによって導電性ポリマー層(A)の曳糸性が著しく低下し、曳糸性の低い成分が複合繊維の半分以上を占めることになるため導電性ポリマー層(A)のかかる欠点が繊維にそのまま現れてしまうためと考えられる。
かかる理由から、導電性ポリマー層(A)と芯ポリマー層(B)の複合重量比率はA:B=3:97〜50:50、好ましくは7:93〜35:65の範囲である。
【0021】
次に、本発明の導電性ポリマー層(A)を構成するポリマーについて説明する。
本発明においては、導電性ポリマー層(A)に用いる樹脂として熱可塑性ポリアミドを使用することが重要である。熱可塑性ポリアミドとしては、具体的にはナイロン12、ナイロン11、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンエラストマー等を挙げることができる。
【0022】
従来、OA機器の帯電ブラシとして長期間使用される過程で、過酷な曲げ、引張り、屈曲、摩耗等の繰返しが行われ、導電性ポリマー層の性能低下が進み、除電性能が低下せざるを得なかった。通常、導電性ポリマー層を構成する部分は一度クラック等の歪により連続性が失われると修復は困難であり、短期間で交換せざるを得ないのが現状である。
本発明者らは、各種ポリマーに導電性カーボンブラックを分散せしめて検討したところ、ポリアミドが適当な極性基を持つために導電性カーボンブラックと相溶性、接着性が良好で、高濃度に導電性カーボンブラックを配合しても流動性があまり低下せず、高い導電性と良好な流動性を兼ね備えたものとなること、さらに、導電性カーボンブラックとポリアミドは強固な接着をするためか機械的物性もきわめて良好であることを見出したのである。
【0023】
これに対して、ポリエステル系ポリマーに導電性カーボンブラックを混練配合した場合は、理由は明確でないが、低配合比でもポリマーの粘度が急上昇して流動性を失い、所望の導電性を持ちかつ繊維化できるような導電性ポリマーになりにくく、ポリアミド系ポリマーには全く対抗できないのである。
【0024】
また、ポリオレフイン系ポリマーは、ポリエステル系ポリマーに比べると導電性カーボンブラックの混練配合によって流動性をある程度有し、かつ導電性も良好な導電性ポリマーを得ることは容易である。しかし、ポリオレフイン系ポリマーは導電性カーボンブラックとの接着性が弱く、得られたポリマーの機械的物性はポリアミド系ポリマーの場合に比べるとかなりもろく、複合繊維化に当っては充分に注意をしないと導電性ポリマー層の切断といった問題が起こりやすい。
以上のことから、導電性カーボンブラックを含有せしめる導電性ポリマー層(A)を構成するポリマーとしては熱可塑性ポリアミドが最も好適である。
【0025】
一方、芯ポリマー層(B)は繊維化の際の良好な工程性を維持することと、消費性能及び長期耐久性能を維持するために重要な役割を担っている。この芯ポリマー層(B)を構成するポリマー成分としては、融点170℃以上の繊維形成性熱可塑性ポリマーであれば特に限定されるものではなく、具体的にはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等を挙げることができ、好ましくは熱可塑性ポリアミドであり、さらに好ましくは、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなり、ジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸であること、およびジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンである熱可塑性ポリアミドを使用することが重要である。かかるポリアミドは、耐熱性、特に湿熱での耐熱性、曳糸性に優れ、芯鞘の耐剥離性が向上し、得られる繊維の強度にも優れているのが大きな特徴である。
【0026】
芳香族ジカルボン酸としては、耐熱性の点からテレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカンルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を1種類、または2種類以上併用して使用することもできる。かかる芳香族ジカルボン酸の含有量はジカルボン酸成分の60モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましい。
【0027】
上記芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としてはマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を挙げることができ、これらの酸は1種類のみならず2種類以上を用いることができる。
さらにトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を繊維化が容易な範囲内で含有させることもできる。
本発明においては、繊維物性、耐熱性等の点でジカルボン酸成分が100%芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
【0028】
また、ジアミン成分の60モル%以上は炭素数が6〜12の脂肪族アルキレンジアミンで構成されることが好ましく、かかる脂肪族アルキレンジアミンとしては、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミンを挙げることができる。なかでも繊維物性、耐熱性の点で1,9−ノナンジアミン単独または1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとの併用が好ましい。
この脂肪族アルキレンジアミンの含有量はジアミン成分の60モル%以上であることが好ましく、より好ましくは75モル%以上、とくに90モル%以上であることが好ましい。
【0029】
上述の脂肪族アルキレンジアミン以外のジアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルジアミン、トリシクロデカンジメチルジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン、あるいはこれらの混合物を挙げることができ、これらは1種類のみならず2種類以上を用いることができる。
【0030】
脂肪族アルキレンジアミンとして1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとを併用する場合は、ジアミン成分の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなり、そのモル比は前者:後者=30:70〜99:1、特に、前者:後者=40:60〜95:5であることが好ましい。
【0031】
また、本発明に用いられるポリアミドはその分子鎖における[CONH/CH2]の比が1/2〜1/8、特に1/3〜1/5であることが好ましい。
【0032】
上述のポリアミドの極限粘度(濃硫酸中30℃で測定した値)は0.6〜2.0dl/gであることが好ましく、特に0.6〜1.8dl/g、0.7〜1.6dl/gが好ましい。該極限粘度の範囲内のポリアミドは、繊維化する際の溶融粘度特性が良好であり、更に繊維物性、耐熱性が優れたものとなる。
【0033】
さらに上述のポリアミドはその分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましく、末端の40%以上、さらには末端の70%以上が封止されていることが好ましい。
【0034】
上述のポリアミドの製造方法は特に制限されず、結晶性ポリアミドを製造する方法として公知の任意の方法を用いることができる。たとえば、酸クロライドとジアミンとを原料とする溶液重合法あるいは界面重合法、ジカルボン酸またはジカルボン酸のアルキルエステルとジアミンとを原料とする溶融重合法、固相重合法等の方法により製造できる。
【0035】
上述のポリアミドは本発明の重要なポイントの一つである導電性ポリマー層(A)との接着性も良好であり、界面剥離も生じ難く耐熱性、繊維物性の点から好適である。
【0036】
次に、本発明の導電性複合繊維の電気抵抗値R(Ω/cm・f)は、用途によって適宜設定可能であるが、複写機やプリンターなどのOA機器に組み込まれる帯電ブラシ等を目標とする場合、100V印加時の電気抵抗値R(Ω/cm・f)が下記式を満足することが好ましい。
logR=7.0〜10.9
より好ましい電気抵抗値R(Ω/cm・f)としては、
logR=7.5〜10.5
である。
【0037】
かかる電気抵抗特性を実現するために、本発明においては、吸油量を異にする2種の導電性カーボンブラックを使用することが好ましく、例えば、130〜350cc/100gの吸油量を有する導電性カーボンブラックと15〜130cc/100gの吸油量を有する導電性カーボンブラックとを併用することが好ましい。そして、前者をαタイプ、後者をβタイプと称するとαタイプとβタイプの吸油量比はα/β=1.2〜25であることが好ましい。なお、本発明において、吸油量は以下の方法によって求められる。
<吸油量>
アマニ油を用い、各々のカーボン量100gにおける飽和量(cc)を測定した(cc/100g)。
【0038】
かかる導電性カーボンブラックの組合せとして、本発明においては、固有電気抵抗値で示せば10-3〜102Ω・cmの抵抗値を有するカーボンブラックと、100〜106Ω・cmの抵抗値を有するカーボンブラックとを併用することが好ましい。
さらに、両者の導電性カーボンブラックの混合比率としては、αタイプ:βタイプ=10:1〜1:10であることが良好な導電性性能を得る点から好ましい。
【0039】
本発明の導電性複合繊維の製造方法は特に限定されず、例えば、芯鞘型複合繊維を製造するために使用される溶融紡糸装置を用い、複合紡糸を行い、その後延伸する方式で製造してもよいし、高速紡糸を行い延伸工程を省略する方式で製造してもよい。ただし、導電性ポリマー層(A)が均一に繊維表面を包囲するようにするためには、紡糸装置内での分配板における導電性ポリマー用の導入孔と保護ポリマー用の導入孔の位置関係を調節したり、両ポリマーの複合比率を調整することが好ましい。
また、本発明においては、導電性複合繊維の延伸性をより向上させるために、芯ポリマー層(B)に平均粒子径が0.5μm以下である無機微粒子を5重量%以下の割合で含有させておくことが好ましい。
【0040】
このような方法で製造される本発明の導電性複合繊維の単繊維繊度は、特に限定されず、用途に応じて1dtex〜34dtex程度のものとすることができる。
【0041】
また、本発明の複合繊維の断面形態は、前述のような条件を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、図1〜図4に見られるような断面形態を例示することができる。
【0042】
このような本発明の導電性複合繊維は、繊維物性、実使用における耐久性に優れた除電性能を有するものであり、複写機やプリンターなどのOA機器に組み込まれる帯電ブラシ、除電ブラシ、クリーニングブラシとして好適に使用することができる。
【0043】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を詳述するが、これによって本発明は何ら限定されるものではない。なお、導電性繊維の電気抵抗値の測定、帯電電荷量の測定、帯電ブラシにしたときの画像評価および圧縮率の測定等は以下に示す方法で行なった。
【0044】
<電気抵抗値R>
電圧電流計法により、平行クリップ電極にセットされた導電性繊維(単繊維)試料に、直流電圧25〜500Vを印可し、その電圧とその時の試料に流れる電流値からオームの法則により求めた。また、本発明で規定される電気抵抗値は100V印可時で求めたものである。
【0045】
<帯電電荷量>
JIS L−1094に準じて簡易型ファラデーゲージを用いて、20℃、40%RHの雰囲気中でアクリル繊維布を摩擦布として用い帯電電荷量を測定した。
【0046】
<画像評価方法>
ブラシ帯電法において、ブラシ回転方向を感光体と反方向とし、直流のバイアス電圧をかけて帯電画像出しテストを行ない、初期及び1万枚コピー後の画像評価を以下に示す基準で行なった。
(1)初期性能評価
○:鮮明均一な画像が得られる。
△:やや異常放電跡が認められる。
×:画像が不鮮明であり、スジ斑が目立つ。
(2)繰り返し(1万枚)画像評価
○:初期と同様な鮮明均一な画像が得られる。
△:やや異常放電跡が認められる。
×:画像が不鮮明であり、スジ斑が目立つ。
【0047】
参考例1(熱可塑性ポリアミドの製造)
表1に示す量のテレフタル酸、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、安息香酸、次亜リン酸ナトリウム−水和物(原料に対して0.1重量%)および蒸留水2.2リットルを、内容積20リットルのオートクレーブに添加し、窒素置換を行った。ついで100℃で30分間攪拌し、2時間かけて内温を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg/cm2(2.16×106Pa)まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cm2(2.16×106Pa)に保持しながら反応を続けた。次に、30分かけて圧力を10kg/cm2(9.81×105Pa)まで下げ、さらに1時間反応を続けてプレポリマーを得た。このプレポリマーを100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。
粉砕物を230℃、0.1mmHg(13.3Pa)下にて10時間固相重合することによりポリアミドを得た。得られたポリアミドの極限粘度及びCONH/CH2を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
参考例2
導電性能が異なる2種の導電性カーボンブラック(αタイプ吸油量;180cc/100g、βタイプ吸油量;80cc/100g、混合比α/β=2/1)を35重量%含有したナイロン6を導電性ポリマー成分(A)を用い、ポリマー層(B)としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、成分(A)を鞘成分とし、成分(B)を芯成分として、A:Bの複合比率20/80重量%、図1に示すような芯鞘型断面で複合紡糸し、その後、延伸を実施し、25デニール/4f(27.8dtex/4f)の導電性複合繊維を得た。繊維化工程性は良好で問題なかった。得られた導電性複合繊維において導電性ポリマー層(A)は繊維軸方向に均一に連続されていた。さらに、100V印加時の電気抵抗値は4×109Ω/cm・f(すなわち、logR=9.6)で非常に安定しており、低印加電圧下においても優れた導電性能を有するものであった。得られた繊維について、パイル編5.0万本/(2.54cm)2密度の導電性ブラシを作成し、その電気抵抗値を測定した結果、バラツキの少ない非常に優れたものであった。複写機での画像評価結果も異常放電のない非常に優れたものであつた。コピー10000回繰返し画像評価も良好であり、耐久性も非常に優れたものであった。導電性複合繊維の複合組成、繊維形態、電気抵抗値、画像評価結果等を表2、表3に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
参考例3、実施例3
芯ポリマーを表2に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化を実施した。いずれもブラシ抵抗値のバラツキが少なく画像特性に優れるものであった(表2、表3参照)。
【0053】
実施例4、5
複合比率を表2に示すように変更すること以外は実施例3と同様に繊維化を実施した。いずれもブラシ抵抗値のバラツキが少なく画像特性に優れるものであった(表2、表3参照)。
【0054】
実施例6〜8
繊維断面形状を表2に示すように変更すること以外は実施例3と同様に繊維化を実施した。いずれもブラシ抵抗値のバラツキが少なく画像特性に優れるものであった(表2、表3参照)。
【0055】
実施例9〜13
導電性ポリマー層のマトリックスポリマーの種類、カーボンブラックの種類、その混合割合及び添加量を表2に示すように変更すること以外は実施例3と同様に繊維化を行なった。いずれもブラシ抵抗値のバラツキが少なく画像特性に優れるものであった(表2、表3参照)。
【0056】
比較例1〜4
導電性複合繊維として表2に示すような繊維を製造すること以外は実施例1と同様に繊維化を実施したが、繊維化工程性又は画像特性が不良であった(表2、表3参照)。
【0057】
比較例5、6
導電性複合繊維として表2に示すような繊維を製造し、実施例1と同様に画像評価を行なったがいずれも不良であった(表2、表3参照)。
【0058】
【発明の効果】
本発明においては、導電性カーボンブラックを特定量含有したポリアミドと熱可塑性ポリアミドとを所定の条件を満足する方法で多葉断面に複合紡糸することにより、OA機器のブラシとして長期間実使用した後でも優れた除電性能およびクリーニング性能を有している導電性繊維を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の導電性複合繊維の複合形態を示す断面図。
【図2】 本発明の導電性複合繊維の複合形態を示す他の断面図。
【図3】 本発明の導電性複合繊維の複合形態を示す他の断面図。
【図4】 本発明の導電性複合繊維の複合形態を示す他の断面図。
【図5】 比較例の導電性複合繊維の複合形態を示す断面図。
【符号の説明】
A:導電性ポリマー層
B:芯ポリマー層
Claims (3)
- 導電性カーボンブラックを15〜50重量%含有する熱可塑性ポリアミドからなる導電性ポリマー層(A)の鞘ポリマー層と融点170℃以上の熱可塑性ポリアミドからなる芯ポリマー層(B)とからなる芯鞘型の導電性複合繊維であって、該導電性ポリマー層(A)に固有電気抵抗値が10 -3 〜10 2 Ω・cmの抵抗値を有するカーボンブラックと10 0 〜10 6 Ω・cmの抵抗値を有するカーボンブラックが含有され、前記2種類のカーボンブラックの吸油量比が1.2〜4.5であって、芯ポリマー層(B)は繊維全体重量の50重量%以上97重量%以下を占めており、さらに、芯ポリマー層(B)を構成する熱可塑性ポリアミドが、ジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸であるジカルボン酸成分とジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンであるジアミン成分とから重合されてなる熱可塑性ポリアミドであることを特徴とし、かつ100V印加時の電気抵抗値R(Ω/cm・f)が下記式を満足することを特徴とする芯鞘型の導電性複合繊維。
logR=7.0〜10.9 (1) - 芯ポリマー層(B)に平均粒径0.5μm以下の無機微粒子が5重量%以下添加されている請求項1に記載の導電性複合繊維。
- 請求項1乃至2のいずれか1項に記載の導電性複合繊維を用いてなるOA機器用のブラシ。
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