JP4389435B2 - 溶融めっき金属帯の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融めっき金属帯を製造する製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯などの金属帯を連続してめっきする方法として、金属帯を亜鉛、アルミニューム等の溶融金属中に浸漬してその金属帯の表面にめっきを施す溶融めっき法が知られている。
【0003】
連続的に溶融めっき金属帯を製造する従来の装置の構成を図10に示す。図10において、1は金属帯、2は焼鈍炉、3はスナウト、4は溶融金属浴槽、5は溶融金属浴、6は方向転換ロールであるシンクロール、7はサポートロール、8はワイパであるガスワイピングノズルである。
【0004】
この装置を用いて、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する場合を例に挙げて説明する。この場合、溶融金属は亜鉛である。冷間圧延鋼帯などの鋼帯1は、無酸化性あるいは還元性の雰囲気に保たれた焼鈍炉2で表面の清浄化、酸化膜除去が行われ、また焼鈍処理をされた後、スナウト3を経て、溶融金属浴槽4内の溶融金属浴5に連続的に引き込まれ、シンクロール6に巻掛けられて通板方向を転換し、サポートロール7を通過後、溶融金属浴5から引き上げられ、溶融金属浴5上に設置したガスワイピングノズル8から高圧ガスが吹き付けられることにより、鋼帯1表面に余剰に付着した溶融亜鉛が払拭されて所定のめっき付着量に調整されて溶融亜鉛めっき鋼帯が製造される。
【0005】
このようにして製造された溶融亜鉛めっき鋼帯において、例えば、200℃程度に加熱すると時効硬化する鋼帯(以下、BH鋼帯と記載することもある)等は、降伏点伸びを有するため、その製造工程の途中である焼鈍炉、めっき槽及びめっき槽下流側設備を通板される際に「腰折れ」と呼ばれる歪み模様が発生する場合がある。この欠陥はスキンパスにより目立たなくすることが可能であるが、顧客でのプレス時等に再び顕在化することがあるため、用途によっては製品の歩留りが大きく低下する。
【0006】
従来の腰折れ防止技術として、板厚、温度、ロール径等から定まる計算式で通板速度を規定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、特定温度域で圧延を行い、結晶粒径の分布状態を制御する方法がある(例えば、特許文献2参照)。鋼帯の材質を腰折れが発生しない材質に変える方法(例えば、特許文献3参照)、鋼帯に予歪みを付与し、腰折れを目立ち難くする方法(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
しかしいずれの方法でも問題があった。例えば通板速度を規定する方法では、腰折れ防止に必要な速度が大きく設備によっては実現不可能であるし、粒径制御は温度制御が困難であり安定した効果が得られない。
【0008】
また材質変更は一定の効果が得られるが、同時に材質に影響があるほか、コスト的にも不利である。さらに予歪による方法は、一定の効果は認められるが、予歪自体による腰折れが懸念されるため、大きな予歪は与えられず、効果が限定的になる場合が多い。
【0009】
このように従来技術では腰折れを根本的に防止できる技術がなかったため、外観に厳しい顧客に対しては厳格な品質管理を行って対処せざるを得ず、歩留まり低下の問題があった。
【0010】
以下に、先行技術文献情報について記載する。なお、特許文献4〜7については、説明の都合上、[発明の実施の形態]の項目において説明する。
【0011】
【特許文献1】
特開昭55−136510号(第1頁)
【0012】
【特許文献2】
特開昭58−217637号公報(第1頁)
【0013】
【特許文献3】
特開平6−299292号公報(第1頁)
【0014】
【特許文献4】
特公平7−94704号公報(第1−3頁、第1図)
【0015】
【特許文献5】
特開平10−130801号公報(第1−4頁、図1)
【0016】
【特許文献6】
特開2000−204460号公報(第2頁、図1)
【0017】
【非特許文献1】
荒谷 昌利、外4名、“3ピース缶用鋼板のフルーテリング性に及ぼす製缶条件の影響”、鉄と鋼、日本鉄鋼協会、1997年、83巻、第4号、p.19−24
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、BH鋼帯等、降伏点伸びを有する溶融めっき金属帯を製造する際に、製造工程内で発生する腰折れを防止できる溶融めっき金属帯の製造方法および製造装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解消する本発明の手段は以下の通りである。
【0020】
(1)金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換ロールで上方に方向転換させ、さらに浴中サポートロールに接触させた後、前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、
前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程とを有し、
前記予歪付与工程は、焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で、金属帯温度が550℃以上650℃以下の温度域で金属帯に曲げ塑性歪を付与することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【0021】
(2)金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、
前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程とを有し、
前記予歪付与工程は、焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で、金属帯温度が550℃以上650℃以下の温度域で金属帯に曲げ塑性歪を付与することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【0023】
(3)前記曲げ塑性歪はロールを用いて付与するとともに、その時の金属帯の表面塑性歪量は0.1%超1.5%以下とすることを特徴とする(1)または(2)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0024】
(4)前記曲げ塑性歪の付与に用いるロールは、ロール径がφ800mm以下で本数は5本以下であることを特徴とする(3)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0025】
(5)前記曲げ塑性歪の付与に用いるロール本数が2本以上あるときに、前記曲げ塑性歪みは、鋼帯通板方向最終ロールで付与される表面塑性歪量が前記ロールの上流側ロールで付与される表面塑性歪量より小さくなるように付与されることを特徴とする(3)または(4)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0026】
(6)前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれ、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0027】
(7)前記入側ロールのパスラインからの押し込み量と前記中間ロールのパスラインからの押し込み量は略同一であることを特徴とする(6)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0028】
(8)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(6)または(7)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0029】
(9)前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0030】
(10)前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0031】
(11)前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記金属板をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする(10)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0032】
(12)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(10)または(11)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0033】
(13)金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で金属帯温度が550℃以上650℃以下となる焼鈍炉部分、または、金属帯温度が550℃以上650℃以下となるスナウト部分に前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置と金属帯の反り矯正を行う浴中サポートロールとを有し、前記方向転換装置で方向転換させた後、前記浴中サポートロールで前記金属帯の反り矯正を行い、前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパとを備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。
【0034】
(14)金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で金属帯温度が550℃以上650℃以下となる焼鈍炉部分、または、金属帯温度が550℃以上650℃以下となるスナウト部分に前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置を有し、該方向転換装置で方向転換させて前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパとを備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。
【0035】
(15)前記方向転換装置は方向転換ロールであり、前記方向転換ロールは外径がφ850mm以上であることを特徴とする(13)または(14)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0036】
(16)前記方向転換ロールは、前記方向転換ロール最上部と溶融金属浴面との間隔が50mm以上400mm以下となるように配置されることを特徴とする(15)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0038】
(17)前記予歪付与手段は、金属帯を曲げ変形させるロールであることを特徴とする(13)〜(16)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0039】
(18)前記予歪付与手段は、ロール径がφ800mm以下のロールが5本以下配置されることを特徴とする(13)〜(17)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0040】
(19)前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールとは反対側にパスラインからずらした位置に配置され、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側にパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする(13)〜(18)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0041】
(20)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(19)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0042】
(21)前記最終ロールのロール径は、前記最終ロールの金属帯通板方向上流側に配置される前記φ800mm以下のロールのロール径より大きいことを特徴とする(19)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0043】
(22)前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(13)〜(18)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0044】
(23)前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側にパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする(22)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0045】
(24)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールに接触する面側に配置されていることを特徴とする(22)または(23)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0047】
本発明者らは、降伏点伸びを有する溶融亜鉛めっき鋼帯において発生する腰折れの原因及びその防止策について調査検討した。鋼帯は、連続溶融めっき金属帯製造装置内を通板される際、種々の温度域でロールにより曲げ加工を受け、強い応力が加わる。その応力の大きさが降伏応力を超えた時に、曲げ部が局所的に降伏し、腰折れとなる。
【0048】
そこで、曲げ加工による材料試験、および実機における試験を行った。その結果、ある温度T1を境にして、それ以上の温度域では腰折れは発生しないことが判明した(以下、前記ある温度T1をしきい温度T1という。)。つまり、腰折れは、鋼帯温度がしきい温度T1より低い温度域で発生し、鋼帯温度がしきい温度T1以上になると腰折れが発生しないことを突き止めた。常温で降伏点伸びがある鋼帯であっても、鋼帯温度がある一定温度以上になると降伏点伸びがなくなる。前記しきい温度T1は鋼帯の降伏点帯がなくなる温度であることがわかった。しきい温度T1以上で、鋼帯に腰折れが発生しないのは、この温度域では、鋼帯に降伏点伸びがないため、降伏点を超えた応力でも局所的な歪集中が発生しないためと考えられる。
【0049】
一般に、常温では、鋼帯に予め歪を加えておけば、次加工で腰折れが発生しにくくなることが知られているが、本発明者らは、鋼帯にしきい温度T1以上で予歪を付与した場合でも、この予歪付与効果が発現されること、すなわち、鋼帯温度がしきい温度T1以上にあるときに鋼帯に予歪を付与すると、その後、鋼帯がしきい温度T1より低い温度でロールで曲げ加工されても腰折れが発生しないことを新規に見出した。また、その温度が高すぎると予歪付与効果は減少し、650℃超になると前記効果がほとんど認められなくなることが明らかになった。しきい温度T1は鋼種等によって異なり、該しきい温度T1は鋼帯温度を変えて引張試験を行い、降伏点伸びがなくなる鋼帯温度から決定される。
【0050】
腰折れはめっき浴から引き上げられた以後の曲げロールによってのみ発生することが判明した。めっき浴温は通常450〜480℃である。したがって、連続溶融めっき金属帯製造装置では、鋼帯温度がしきい温度T1になる位置は焼鈍炉〜めっき浴の間に存在すると考えられ、また450℃以上で鋼帯に予歪を付与することで腰折れの発生を防止できる。
【0051】
また、導入する歪量は、表面塑性歪で0.1%超必要であるが、1.5%超になるとその効果は頭打ちとなることが明らかになった。また前記塑性歪量は1回で付与する必要は無く、表面塑性歪が0.1%超〜1.5%の範囲になるように、前記温度域で、複数回に分けて付与しても良いことが判明した。ここで、歪量=弾性歪+塑性歪であり、弾性歪は、σ/E(σ;材料の降伏応力、E;ヤング率)で表される。圧縮歪、引張歪のいずれであってもその和として算出される。引張り、圧縮に関わらずその和であるのは、この腰折れ防止メカニズムが圧縮、引張りには無関係の転移に起因しているためと推定される。
【0052】
腰折れ欠陥を発生させる応力は、ロールによる曲げ応力であるため、表面近傍が最も大きい。このことから、腰折れ欠陥を防止するには、最も強い応力が加わると考えられる表面近傍への対策が有効である。係る観点からは、曲げロールにより予歪を付与する方法が考えられる。試験の結果、曲げロールにより予歪を付与する場合、ロール本数は1本でも効果が認められ、ロール本数が6本以上では塑性歪量を上昇させてもほとんど効果の上昇が認められないことが判明した。
【0053】
なお、特許文献4〜6には、焼鈍炉で鋼帯にロール曲げ加工することが記載されている。
【0054】
特許文献4は、外径50mm以上500mm以下のロールで曲げ加工してから鋼帯を焼鈍することで結晶粒径を整え、亜鉛めっき浴中での固液反応及びそれに続くFe−Zn合金化反応を均一に進ませ、合金化処理で発生する表面凹凸欠陥を防止する。本件発明と課題、構成が異なる。
【0055】
特許文献5は、曲げ半径300mm以下で曲げ、曲げ戻し加工を施し、鋼帯表面に残留歪を付与することで鋼板とめっき界面での拡散反応を均一化する。これによって、Si、P、Mn等が添加されている鋼帯において添加元素の不均一分布に起因する初期合金化むらを防止し、また熱延鋼帯において表面粗度が大きいことに起因する初期合金化むらを防止し、もってめっきの光沢むら、光沢度低下及び合金化反応むらを防止する。本件発明と課題が異なる。
【0056】
特許文献6は、帯板を非酸化雰囲気の通板室から溶融金属のめっき浴中に通板してめっきする装置の前記通板室内に、パスライン内の2点を支点として帯板を通板位置の向こう側に押し込み可能な押し込みロールを設けて、帯板の反りを矯正する。
【0057】
前記特許文献4〜6では、腰折れを防止することは考慮されていない。
【0058】
特許文献6では、金属帯の反りを矯正する。これは、ガスワイピングノズル8部で金属帯に反り(C反り)があると、金属帯幅方向の付着量分布の偏差が大きくなるためである。金属帯幅方向反りは主にシンクロール6において金属帯1が曲げと曲げ戻しを受けることによって発生すると考えられる。図1は、金属帯1幅方向反り発生機構を説明する図である。シンクロール6に巻きついて接触している位置Aでは、平面ひずみ変形となり、金属帯1に発生する応力は、金属帯通板方向および金属帯幅方向ともに、シンクロール6と接触している側に圧縮応力、その反対側に引張応力となり、金属帯幅方向反りの基本となる応力分布になる。シンクロール6に近く、比較的曲率半径の大きな位置Bにおいても、ほぼ平面歪状態が保たれ、位置Aにおいて塑性変形をしているために、位置Aとは逆の応力分布、すなわちシンクロール6と接触している側に引張応力、その反対側に圧縮応力となる。曲率半径がほぼ0の位置Cにおいては、面内変形に対する拘束はなく、基本的には位置Aで受けた変形が存在しやすい形状、すなわち金属帯幅方向に上に凸の状態となると考えられる。
【0059】
このようにして金属帯1に反りが発生した場合、ガスワイピングノズル8部において、金属帯1とガスワイピングノズル8と間隔が幅方向で一定でなくなる結果、金属帯1幅方向に付着量のばらつきが生ずることになる。
【0060】
また、金属帯1に反りが発生している場合は、金属帯1とガスワイピングノズル8との接触を避けるために、金属帯1とガスワイピングノズル8の間隔を狭めることが制限される。この結果、所望の溶融金属払拭能力を確保するためにはガスワイピングノズル8のガス圧力を高めなければならず、これが時としてガスワイピング時に激しく飛び散った溶融金属が金属帯1に付着することにより発生するスプラッシュと呼ばれる欠陥の原因となることが知られている。
【0061】
そこで、浴中のサポートロール7を用いてシンクロール6で発生した反りを矯正する。通常、図2に示すように、ポートロール7は、金属帯1を挟む両側に1本ずつ設置し、各サポートロール7a、7bの高さ方向位置をずらして配置する。そして上方に配置したサポートロール7aをパスラインに接するように配置し、金属帯寸法に応じて下方に設置したサポートロール7bを金属帯寸法に応じて金属帯1側に押し込み、金属帯1に適量の変形を付与することによって、金属帯1のC反りを矯正する。
【0062】
しかし、例えば、厚物材や広幅材等で反りを防止するためにサポートロールの押し込み量を大きくすることで、金属帯にチャターマーク状の付着量むらやロール表面にドロス付着が付着したときの擦り傷が発生しやすくなり、またロール摩耗が大きくなりロールの取り換え頻度が多くなるなどの問題がある。したがって、サポートロールだけで多種サイズの金属帯の反りを矯正することは必ずしも有効な対策にならない場合がある。
【0063】
本発明者等は、前記予歪付与装置のロール配置あるいは付与する予歪を適切な条件にすることで、金属帯の反り矯正効果があることを見出した。
【0064】
なお、サポートロール7を用いて鋼帯1の形状矯正を行う従来技術において、鋼帯1に腰折れが発生しなかったのは、サポートロール7で鋼帯1を押し込むことで、鋼帯表面に塑性歪が付与されていたためと考えられる。
【0065】
本発明は、前記知見に基づくものである。
【0066】
以下、本発明の実施の形態についてさらに説明する。尚、以下に説明する各実施の形態では金属帯の1具体例として鋼帯を念頭においている。また溶融めっき鋼帯は亜鉛めっき鋼帯であり、溶融金属は亜鉛である。
【0067】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。図3において、焼鈍炉2は、直火加熱炉2a、均熱炉2b、冷却炉であるジェット冷却炉2c及び調整冷却炉2dを備える。本装置においては、図10に示した従来の装置において、焼鈍炉2に予歪付与装置21が設置されている点が特徴である。
【0068】
前記した理由から、予歪付与装置は、450℃以上650℃以下の焼鈍炉2部分または450℃以上650℃以下のスナウト3部分に設ける必要がある。焼鈍炉2の調整冷却炉2dでは金属帯温度を450℃以上〜650℃、特に500〜550℃程度に調整しやすいので、予歪付与装置は焼鈍炉2の調整冷却炉2d部分に設けることが好ましい。
【0069】
温度が450℃以上より低い金属帯に予歪を付与すると、予歪付与時に金属帯に腰折れが発生し、腰折れを防止する効果が奏されないおそれがある。また温度が650℃超の金属帯に予歪を付与すると、予歪付与効果が認められなくなり、金属帯が金属浴から引き上げられた後で腰折れが発生する。
【0070】
腰折れの発生を防止するには、予歪を付与する金属帯温度は500以上550℃以下がより好ましい。これは次の理由による。すなわち、しきい温度T1は材料(例えば鋼種等)によって異なる。通常、予歪付与温度が550℃を超えると付与した塑性歪が抜け出しやすくなり、予歪付与効果が小さくなる。またしきい温度T1は通常550℃以下である。また、めっき浴温は通常450〜480℃であるので、予歪付与温度を500℃より低い温度で行うと溶融金属浴に浸漬される鋼帯温度が低くなって熱的に不利である。また実用面で腰折れの発生が特に問題になっている焼き付け硬化型では、しきい温度T1が450℃程度であるため、操業条件の変動等を考慮して500℃以上で予歪を付与することがより有利である。
【0071】
しきい温度T1は材料(例えば鋼種等)によって異なる。しきい温度T1は、通常550℃以下で、前記溶融亜鉛浴温よりも低い温度のものもあるが、実用面で腰折れの発生が特に問題になっている焼き付け硬化型鋼帯では450℃程度である。また、通常、鋼帯は、450〜480℃程度に保持された溶融亜鉛浴に引き込まれて溶融亜鉛めっきされる。
【0072】
腰折れを防止するだけでよければ、溶融金属浴から引き上げられたに予歪付与装置を設けることや、溶融金属浴槽内に予歪付与装置を設けることも可能であるが、溶融金属浴から引き上げられたあとで予歪を付与するとめっき層の剥離や押し疵発生等の問題があり、また溶融金属浴槽4内で予歪を付与すると、溶融金属浴槽内に前記装置を設けると、サポートロールを用いた場合と同様の問題がある。したがって、予歪付与装置は、溶融金属浴より上流側に設けられる。
【0073】
予歪付与装置は、最大金属帯温度到達地点より下流側に設ける。本発明は、これに限定されるものではないが、一例を挙げると、めっき原板である鋼帯は、焼鈍炉の均熱炉2bで最大到達温度650〜900℃程度に加熱されて焼鈍され、冷却炉(ジェット冷却炉2c及び調整冷却炉2d)で冷却された後、450〜480℃程度に保持された溶融金属浴に引き込まれる。予歪付与装置を最大金属帯温度到達地点より上流側に設けると、その後前記温度に加熱されることで、予歪付与効果が消失し、腰折れの発生を防止することができなくなる。
【0074】
予歪付与装置では、塑性歪を表面塑性歪で0.1%超〜1.5%付与する。表面塑性歪が0.1%以下では、予歪付与効果が不十分になり、腰折れが発生する。1.5%超では、前記効果が飽和し、逆に設備費が高くなる、金属帯の材質を劣化させる場合がある等の問題がある。表面塑性歪は0.3%以上付与されることがより好ましい。前記塑性歪量(0.1%超〜1.5%)は1回で付与してもよく、複数回に分けて付与しても良い。
【0075】
付与される表面塑性歪が0.1%超1.5%以下であれば、予歪付与手段は限定されない。表面塑性歪が複数回に分けて付与される場合、本発明で規定する表面塑性歪は各々の歪付与で金属帯表面に付与される塑性歪量の和である。すなわち、i回目で付与される表面塑性歪量をεiとしたときに、本発明で規定する表面塑性歪εは、ε=Σεiで定義される。圧縮歪、引張歪のいずれでであってもその和として算出される。引張り、圧縮に関わらずその和であるのは、この腰折れ防止メカニズムが圧縮、引張りには無関係の転移に起因しているためと推定される。
【0076】
表面に塑性歪を効率よく付与する観点からはロールで曲げ加工するのが有利である。ロールで曲げ加工する場合、少なくとも一本のロールで付与される金属帯の曲率半径が400mm以下となるようにロール径を選択し、該ロールの押し込み量を調整して金属帯を曲げ加工することが好ましい。金属帯を曲率半径400mm以下で曲げるには、ロール径がφ800mm以下のロールを用いる必要があり、ロール本数は1本以上であればよい。例えばφ800mmのロール(大径ロール)で金属帯が該ロールに十分巻きつくように押込み量を調整する方法やロール径がφ400mmのロールで押込み量を調整する方法を例示できる。但し、ロールの押し込み量は金属帯材質、厚さ等で異なる。付与する表面塑性歪量を大きくするには、ロールの押し込み量を大きくすることや小径ロールを使用することがよい。曲げロールのロール径は、φ400mm以下の小径ロールが好ましい。なお、縦パスの焼鈍炉ではハースロール径は通常φ800mm以上、特殊の専用炉にあってもφ500mm超、一般にはφ600mm超であり、またシンクロール径は通常φ750mm程度である。
【0077】
同じ表面塑性歪量を付与するのであれば、ロール本数は、1本の方が、歪付与効果が高い。ロール本数を6本以上にして分割して歪を付与しても予歪付与効果は向上せず、逆に設備費、設備保守等の点で不利になる。したがって、ロール本数は1〜5本が好ましい。ロール本数が1本の場合、導入できる表面塑性歪量をあまり大きくできないので、実設備ではロール本数は2〜3本とすることがより好ましい。2本以上のロールを使用する場合、ロール径は異なっていてもよい。
【0078】
前記した理由から、予歪付与装置は、450℃〜650℃となる焼鈍炉2部分または450℃〜650℃となるスナウト3部分に設ける必要がある。焼鈍炉2の調整冷却炉2dでは金属帯温度を450℃〜650℃、特に500〜550℃程度に調整しやすいので、予歪付与装置は焼鈍炉2の調整冷却炉2d部分に設けることが好ましい。
【0079】
図3の装置では、予歪付与装置21は、焼鈍炉2の調整冷却炉2dの最終パスに設置されている。図4は、図3の装置に設置されている予歪付与装置21の構成例を示す概略図で、3本のロール(曲げロール)が配置されている例である。すなわち、予歪付与装置21は、金属帯1通板方向(上下方向)位置をずらし、金属帯1の両側に千鳥配置された3本のロール22〜24で構成されている。前記ロール22〜24はそれぞれ独立にパスラインと略直角方向に移動自在に構成されている。25、26はハースロールである。
【0080】
図4の装置を用い、ロール22〜24のうちの少なくとも1本以上をパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込むことで金属帯の表面に塑性歪を付与する。一例を挙げると、図5(a)に示すように、ロール22及び24を略パスライン位置に配置し、ロール23をパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込むことで、金属帯1を曲げ加工してその表面に塑性歪を導入する。あるいは、図5(b)に示すように、ロール24を略パスライン位置に配置し、ロール22と23をそれぞれパスラインと直角方向に互いに異なる方向、すなわちロール23はロール22側に押し込み、ロール22はロール23とは反対方向に、各々パスラインを超えて押し込むことで、金属帯1を曲げ加工してその表面に塑性歪を導入する。図5(a)及び(b)では、ロール22は、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置されている。なお、本明細書において、「ロールがパスライン位置にある」とは、ロールがパスラインに接する位置にあることを意味している。また、「ロールをパスラインからずらした位置に配置」とは、ロールがパスラインに接する位置からずれていることを意味している。
【0081】
図5(c)、(d)に示すように、金属帯1に対する各々のロール配置は、前記(a)、(b)と逆の配置であってもよい。
【0082】
導入される表面塑性歪量は、金属板の曲げ曲率で決定され、曲げ曲率は、隣り合うロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径とその押込み量(パスラインを超える押し込み量)を制御することで制御できる。なお、鋼種等の金属帯材質、板厚、温度等の操業変数、隣り合うロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径、ロールの押し込み量等と、表面塑性歪量の関係を予め求めて、対応表を作成しておき、この対応表に基き、操業変数値に応じて、前記各場合におけるロールの押し込み量を設定する。
【0083】
図4に示した装置は、3本の曲げロールが配置されている例であるが、ロール本数は3本に限定されず、1〜5本の範囲内とすることが好ましい。ロールが1本の場合、曲げ歪付与効果を高める観点から、該ロールはハースロール26に近接配置することが好ましい。
【0084】
本発明者等は、図4に示した予歪付与装置21を用いて、金属帯1に予歪を付与したときに、前記各ロール22〜24の配置条件およびその押し込み条件を変化させると、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反り量が変化することを見出した。例えば、図5(a)や(c)のようにしてロール23を押し込むと、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りが大きくなる。また、図5(b)や(d)のようにしてロール22及び23を押し込むと、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りが小さくなる。
【0085】
ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを小さくするには、予歪付与装置の金属帯通板方向出側に配置された最終ロールで付与される歪み量を小さくすることが有効でる。係る観点から、3本のロールを使用する場合、図5(b)及び(d)に示されるように、金属帯通板方向最終ロールであるロール24は略パスライン位置(パスラインに接する位置またはその近傍位置)、中間ロール(ロール24の上流側ロール)であるロール23は、パスラインを超えて前記ロール24側に押し込まれた位置、入側ロール(ロール23の上流側ロール)であるロール22は、パスラインを超えて前記ロール23側に押し込まれた位置に配置することが好ましい。
【0086】
前記において、ロール22のパスラインからの押し込み量(d1)、ロール23のパスラインからの押し込み量(d2)を略同一にすると、サポートロール7だけを使用する場合よりもガスワイピングノズル8部における金属帯1の反りを平坦化する作用がより優れるので好ましい。この場合、中間ロールであるロール23は、図5(b)のように、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置される方が、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反りを平坦にする作用がより優れるので、さらに好ましい。
【0087】
最終ロールで付与される歪量としては、例えば、金属帯に付与される塑性歪(各ロールで付与される塑性歪の和)が0.5%程度であるある場合、最終ロールで付与される塑性歪を0.1%程度とする例を例示できる。前記ロール配置の一例を挙げると、ロール22〜24の径をφ250mm、ロール同士の間隔を300mmとし、ロール24をパスライン位置に配置し、ロール22と23をパスラインから50mm押し込む例を例示できる。但し、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0088】
前記によってガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反り量を低減できる理由は明らかでないが、前記のようにして予歪を付与することで、予歪付与装置出側での金属帯1のC反りが少なくなることに加えて、金属帯1表面に塑性歪みが付与されたことで、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反り変形を抑制する作用があるためではないかと考えられる。また、中間ロール23が金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置された場合、予歪付与装置出側で金属帯1に付与されたC反りがシンクロール6に起因してガスワイピングノズル8部で発生する金属帯1のC反りを打ち消すように作用するためと考えられる。
【0089】
ロール22〜24を前記のように配置し、サポートロール7と併用することで、ガスワイピングノズル8部における金属帯の反りをさらに低減できるので、好ましい。図2は、図3の装置に配置されるサポートロールの配置を示す例である。サポートロール7aはパスライン上で金属帯1と接する位置に設けられ、サポートロール7aに対して所定距離だけ下方に配置されたサポートロール7bはこのパスラインに対して所定量Lだけ金属帯1を押し込む位置に配置されることで、金属帯1の反りを矯正する。本発明において、サポートロールの配置は図2に示される例に限定されない。サポートロール7aと7bは金属帯1に対して逆の配置であってもよい。またサポートロールは1本だけであってもよい。
【0090】
また、ロール22〜24が前記のように配置されると、サポートロール7を使用しなくても、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反りをサポートロール7を使用したのと同等の反りに抑えることができる。したがって、サポートロール7を溶融金属浴槽4内に設置しないことも可能である。
【0091】
最終ロールで付与される歪量を小さくするには、前記ロール押し込みと組み合わせて、あるいは前記ロール押し込み方に代えて、最終ロールのロール径を該ロールの上流側に配置される曲げロールのロール径より大きくするようにしてもよい。例えば図4において、最終ロール24のロール径を入側ロール22、中間ロール23の各ロール径より大きくすることが有効である。
【0092】
図4において、最終ロール24のロール径を大きくした場合、各ロール22〜24のロール配置(押し込み方法)は、図5(a)及び(d)のように、入側ロール22と最終ロール24をパスライン位置に配置し、中間ロール23をパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込む配置であってもよい。この場合も、中間ロール23が図5(a)のように、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置されることが、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを低減する上でより好ましい。このロール配置の一例を挙げると、入側ロール22と中間ロール23のロール径を150mm、最終ロール24のロール径を400mmとし、入側ロール22と最終24をパスライン位置に配置し、中間ロール23のパスラインからの押し込み量を100mmとする例を例示できる。但し、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0093】
また、前記と組み合わせ、あるいは前記に代えて、入側ロール22と中間ロール23の間隔(鋼帯通板方向間隔)よりも、中間ロール23と最終ロール24の間隔を大きくするようにロールを配置してもよい。
【0094】
曲げロールを2本使用するときは、前記最終ロール24に代えて、ハースロール26を使用できるようなロール配置にすることが好ましい。また、曲げロールを4〜5本使用するときは、最終ロールで付与される塑性歪を小さくする観点から、最終ロールはパスライン位置に配置されることが好ましい。
【0095】
但し、最終ロールで付与される歪は、最終ロールとその上流側のロールの相対的な位置関係で決まるものであるから、最終ロールの上流側ロールの押し込み量が大きい場合は、最終ロールのパスラインに対する位置をパスラインからずらす場合もある。したがって、最終ロールの位置はパスライン位置に限定される訳ではない。
【0096】
例えば、図6において、ロール22〜24のパスラインに対する押し込み位置が各々x1〜x3(パスライン位置が「0」、右側への移動量は「+」、左側への移動量は「−」である。)であり、ロール22の押し込み量(|x1|)を小さく、ロール23の押し込み量(|x2|)を大きくした場合、最終ロールで付与される歪は、最終ロール24と中間ロール23の相対的な位置関係(|x2−x3|)で決まるので、ロール24は、パスラインより左側に移動させるように配置する方が好ましい。
【0097】
ガスワイピングノズル部でのC反りを防止するには、金属帯表面に前記で説明したような表面塑性歪みが付与されることが必要である。金属帯1のC反りを少なくするロールの押し込み量は、次のようにして決定される。鋼種等の金属帯材質、板厚、温度等の操業変数、各々のロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径、ロールの押し込み量等と、表面塑性歪量の関係に加えて、さらに前記操業変数とガスワイピングノズル部における反り量の関係を予め求めて、前記操業変数と、所定表面塑性歪量の付与とC反り防止効果を両立できるロールの押し込み量の対応表を作成しておき、この対応表に基き、操業変数値に応じて、ロールの押し込み量を設定することで、腰折れを防止できるだけでなく、ガスワイピングノズル部におけるC反り発生を防止できる。シンクロール径を大径化する場合(後記)、このロールについて前記の対応表を作成する。
【0098】
前記したように、特許文献6には、押し込みロールを設けて帯板の反りを矯正することが記載されている。しかし、特許文献6では、サポートロールを備えるので、本発明の課題であるサポートロールに起因する諸問題点を解決することは考慮されていない。また、特許文献6では、サポートロールと押し込みロールを併用することで帯板の反りを矯正するものであって、サポートロールを使用しないで、押し込みロールだけで帯板の反りを矯正することは示されていない。また、特許文献6では、帯板表面に所要の塑性歪を付与することは示されていないだけでなく、浴中にシンクロールがないため、帯板に安定して十分な張力を付与することが困難であり、したがって帯板表面に所要の表面塑性歪を安定して付与することはできないと考えられる。
【0099】
浴中サポートロール7を設置しない場合、シンクロール6径は、サポートロール7が設置された従来装置(図10)の場合よりも大きくすることができる。図7は、一般的に使用されているロール径であるφ750mmのシンクロール6とシンクロール径をφ950mmに大径化した場合について、ガスワイピングノズル8部で、幅1200mmの鋼帯1に発生するC反り量を調査した結果である。鋼帯1のC反り量の数値は、シンクロール6側に凸形状の場合は+(プラス)、シンクロール6と反対側に凸形状の場合は−(マイナス)とした。
【0100】
シンクロール6径を大きくすることによりシンクロール6に巻き付けられた鋼帯1に発生する曲げ応力を小さくすることができ、その結果、図7に示されるように溶融金属浴5から引き上げられるときの鋼帯1のC反りを小さくできる。これによって、従来反り矯正が困難であった厚物鋼帯についても溶融金属浴5引き上げ部の形状を平坦にできる。係る点からは、シンクロール6の直径は850mm以上とすることが有利である。
【0101】
シンクロール6最上部と溶融亜鉛浴面との間隔は50mm以上400mm以下とすることが好ましい。50mm未満であるとシンクロール6の回転により浴面が攪拌されトップドロスを多量に発生させ、また400mm超になると、深い溶融金属浴槽4が必要となり、設備費等の増加を招くためである。
【0102】
次に、前記装置を用いて、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する方法について説明する。鋼帯1はスナウト3を通って溶融金属浴5内に引き込まれ、方向転換用ロールであるシンクロール6によって通板方向が変換され溶融金属浴5から引き上げられる。次にガスワイピングノズル8でめっき付着量が調整される。さらに必要に応じて、合金化炉14でめっき層の合金化処理され、又は合金化炉14に代えてスパングル調整装置を配置してスパングル調整され、あるいは前記処理が施されることなく、そのまま冷却されて所要の溶融亜鉛めっき鋼帯が製造される。
【0103】
本装置では、予歪付与装置21を備えることで腰折れ欠陥のない溶融亜鉛めっき鋼帯を製造できる。また、サポートロール9を使用することで、ガスワイピングノズル8部における鋼帯C反りをより低減し、鋼帯幅方向に均一な付着量を得ることができる。鋼帯1幅方向の付着量分布を均一にでき、さらにガスワイピングノズル8と鋼帯1の間隔を狭め、ガス圧力を低圧にして付着量調整することで、スプラッシュの発生を防止できる。また、サポートロール7を溶融金属浴槽4から取り去ることで、サポートロールに起因する品質欠陥の発生やロール交換のための設備停止の問題が解消される。
【0104】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。本装置には、図10に示した従来装置に設置されているサポートロールは設置されておらず、焼鈍炉2に、図4に示されるロール押し付けが可能な3本のロールを備える予歪付与装置21が設置されていることが特徴である。
【0105】
本装置では、サポートロールが配置されていないが、予歪付与装置21のロール24をほぼパスラインと接する位置に配置し、ロール22及び23を図5(b)で説明したように押し込むことで、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを低減できる。また金属帯に腰折れが発生することもない。
【0106】
溶融亜鉛めっき鋼帯の素材鋼帯には、熱間圧延後脱スケール処理された熱延鋼帯、前記熱延鋼帯を冷間圧延した冷延鋼帯がある。素材鋼帯が前記の何れであっても本発明の効果が奏される。冷延鋼板を素材とする溶融亜鉛めっき鋼帯では、自動車外板用途等、良好な表面外観が要求される用途に適用されることがある。本発明は、良好な表面外観が要求される溶融亜鉛めっき鋼帯、特にプレス成形後も良好な表面外観が要求される冷間圧延鋼帯を素材とした溶融亜鉛めっき鋼帯の製造に適する。
【0107】
【実施例】
めっき原板として、常法で製造するとめっき後に常温で降伏点伸びを有する、厚さ0.75mm、幅1200mmの素材鋼帯を準備した。めっき原板の化学成分を表1に記載する。
【0108】
【表1】
【0109】
図3に示した溶融金属めっき鋼帯製造装置(以下、CGLともいう)を用いて、準備しためっき鋼帯を、ライン速度120mpm、張力2kg/mm2、焼鈍温度850℃で焼鈍した後、予歪付与装置21で種々の条件で予歪を付与し、次いで溶融亜鉛浴(浴温;460℃)に浸漬させ、めっき浴から引き上げて、ガスワイピングノズル8により鋼帯の片面当りの付着量を45g/m2になるようにガス圧力を調整した後、冷却し、さらに調質圧延機(図示なし)で調質圧延(圧延率:1.2%)を行って、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。比較のために、一部予歪を付与しない溶融亜鉛めっき鋼帯、サポートロール7を使用しない溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。該溶融亜鉛めっき鋼帯(予歪付与なし且つ調質圧延なし)は、常温での引張り材料特性は、上降伏点25kg/mm2、下降伏点22kg/mm2、降伏点伸び4.3%で、引張試験によると降伏点伸びのなくなる温度(しきい温度T1)は440℃であった。
【0110】
予歪付与装置21としては、図4に示したロール本数が3本の装置に代えて、図9に示されるように、ロール本数が6本で金属帯通板方向に千鳥配置された装置(金属帯通板方向に対して上流側から#1〜#6ロールとする)を使用した。ロール径はいずれもφ250mm、隣り合うロール同士の鋼帯通板方向間隔(軸心距離;L1)はいずれも300mm、#6ロールとハースロール26との間隔(軸心距離;L2)は1000mmである(以下、A装置という)。また予歪付与装置下流側のハースロール径はφ1000mm、シンクロール径はφ950mmである。
【0111】
3本のロールを使用する場合は、#1〜#3ロールはパスラインから退避させて開放し、#6ロールをパスライン位置に配置し、#4ロールと#5ロールを図5(b)に示すようにパスラインからずらした位置に押し込み、その押し込み量を調整した。
【0112】
5本のロールを使用する場合は、#1ロールは不使用とし、#2、#4、#6ロールの3本をパスライン位置に配置し、前記各々のロールの中間に千鳥対置された#3、#5の2本のロールをパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込んだ。
【0113】
6本のロールを使用の場合は、#2、#4、6ロールの6本をパスライン位置に配置し、前記各ロールに対して千鳥対置された#1、#3、#5の3本のロールをパスラインと略直角方向に押し込み、その押し込み量を調整した。
【0114】
また、前記A装置において、#1〜3ロールを撤去し、#4〜#6ロールにφ100mmのロールを設置し(以下、B装置という)、#6ロールをパスライン位置に配置し、#4ロールと#5ロールを図5(b)に示すようにパスラインからずらした位置に押し込み、その押し込み量を調整した。前記#4〜#6ロールは、ロール剛性の点から、各々φ400mmのバックアップロールで補強した。
【0115】
1本のロールを使用する場合は、前記A装置において、#1〜#6のロールを撤去し、#3ロールとしてφ1000mmのロール、#6ロールとしてφ100mmのロールをそれぞれ配置し(以下、C装置という)、#6ロールをパスラインを超えて押し込み、押し込み量を調整した。前記#6ロールは、ロール剛性の点からφ400mmのバックアップロールで補強した。
【0116】
前記で得た溶融亜鉛めっき鋼帯の腰折れ程度を、自動車ドアパネルのプレスを模したプレス試験を行った後目視観察し、腰折れ欠陥の程度に応じて0〜5の6段階で評価した。腰折れ程度は0(発生なし)が最良で、数字が大きいほど劣位で5が最劣位である。自動車外板などの用途では評点「1」以下、自動車内板などの用途では「2」以下が望ましい。
【0117】
予歪付与条件及び腰折れ程度の評価結果を表2に記載する。
【0118】
【表2】
【0119】
予歪付与条件が本発明範囲内にある発明例は、腰折れ程度の評点が2以下であり、腰折れ欠陥が防止され、または本発明範囲を外れる比較例に比べて、その程度が軽微である。さらに自動車ドアのプレス試験を実施したところ、評点0及び1については、CGLでの腰折れに起因する欠陥は全くみられず、評点2のものもCGLでの腰折れに起因する欠陥に起因する非常に軽微であった。
【0120】
サポートロール7だけを使用した条件1は、鋼帯幅方向の付着量の偏差は約±10g/m2であった。これに対して、サポートロール7を使用しないで予歪装置21で予歪を付与した条件3では、ガスワイピングノズル8部における鋼帯C反り防止効果はサポートロール7を使用した場合と同等であり、鋼帯幅方向の付着量の偏差は約±10g/m2であった。これに対して、予歪付与装置21とサポートロール7を併用した発明例では、前記に比べてガスワイピングノズル8部における鋼帯C反りが少なく、鋼帯幅方向の付着量の偏差は約±6g/m2であった。
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、降伏点伸びのある金属材料でも腰折れ欠陥の発生を防止できる。
【0122】
また、本発明によれば、予歪付与とサポートロールを併用することで、ガスワイピングノズル部における金属帯の反りを平坦にして、金属帯幅方向に均一な付着量の溶融めっき金属帯を製造することができる。
【0123】
また、本発明によれば、予歪付与することで金属帯の反りを平坦にする作用があるので、サポートロール省略が可能になる。この場合、金属帯幅方向の付着量偏差をサポートロールを使用した場合と同程度に保持しながら、ロール交換時間の短縮化、サポートロール省略による、ロール交換時間の短縮、メンテナンス費用の低減の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属帯幅方向反り発生機構を説明する図。
【図2】サポートロールの配置例を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図4】予歪付与装置の構成を示す図。
【図5】予歪付与装置に使用するロール配置例を説明する図。
【図6】予歪付与装置に使用するロールの別の配置例を説明する図。
【図7】シンクロール径と鋼帯C反り量の関係を示す図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図9】実施例で使用した予歪付与装置のロール配置を説明する図。
【図10】従来技術の溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
1 金属帯(鋼帯)
2 焼鈍炉
2a 予熱炉
2b 均熱炉
2c ジェット冷却炉
2d 調整冷却炉
3 スナウト
4 溶融金属浴槽
5 溶融金属浴
6 方向転換ロール(シンクロール)
7 サポートロール
8 ワイパ(ガスワイピングノズル)
14 合金化炉
16 ドロス
21 予歪付与装置
22〜24 ロール(曲げロール)
25、26 ハースロール
Claims (24)
- 金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換ロールで上方に方向転換させ、さらに浴中サポートロールに接触させた後、前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、
前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程とを有し、
前記予歪付与工程は、焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で、金属帯温度が550℃以上650℃以下の温度域で金属帯に曲げ塑性歪を付与することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。 - 金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、
前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程とを有し、
前記予歪付与工程は、焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で、金属帯温度が550℃以上650℃以下の温度域で金属帯に曲げ塑性歪を付与することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。 - 前記曲げ塑性歪はロールを用いて付与するとともに、その時の金属帯の表面塑性歪量は0.1%超1.5%以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪の付与に用いるロールは、ロール径がφ800mm以下で本数は5本以下であることを特徴とする請求項3に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪の付与に用いるロール本数が2本以上あるときに、前記曲げ塑性歪みは、鋼帯通板方向最終ロールで付与される表面塑性歪量が前記ロールの上流側ロールで付与される表面塑性歪量より小さくなるように付与されることを特徴とする請求項3または4に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれ、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする請求項3〜5のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記入側ロールのパスラインからの押し込み量と前記中間ロールのパスラインからの押し込み量は略同一であることを特徴とする請求項6に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする請求項6または7に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする請求項6〜8のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする請求項3〜5のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記金属板をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする請求項10に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする請求項10または11に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で金属帯温度が550℃以上650℃以下となる焼鈍炉部分、または、金属帯温度が550℃以上650℃以下となるスナウト部分に前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置と金属帯の反り矯正を行う浴中サポートロールとを有し、前記方向転換装置で方向転換させた後、前記浴中サポートロールで前記金属帯の反り矯正を行い、前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパとを備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。 - 金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で金属帯温度が550℃以上650℃以下となる焼鈍炉部分、または、金属帯温度が550℃以上650℃以下となるスナウト部分に前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置を有し、該方向転換装置で方向転換させて前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパとを備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。 - 前記方向転換装置は方向転換ロールであり、前記方向転換ロールは外径がφ850mm以上であることを特徴とする請求項13または14に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記方向転換ロールは、前記方向転換ロール最上部と溶融金属浴面との間隔が50mm以上400mm以下となるように配置されることを特徴とする請求項15に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、金属帯を曲げ変形させるロールであることを特徴とする請求項13〜16のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、ロール径がφ800mm以下のロールが5本以下配置されることを特徴とする請求項13〜17のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールとは反対側にパスラインからずらした位置に配置され、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側にパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする請求項13〜18のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする請求項19に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記最終ロールのロール径は、前記最終ロールの金属帯通板方向上流側に配置される前記φ800mm以下のロールのロール径より大きいことを特徴とする請求項19に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする請求項13〜18のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側にパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする請求項22に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールに接触する面側に配置されていることを特徴とする請求項22または23に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
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