JP2001115213A - プレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
プレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法Info
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Abstract
成形性の変動が少ない冷延鋼板を工業的に製造する。 【解決手段】 特定の成分組成を有する鋼からなるスラ
ブを熱間圧延するに際し、連続熱間仕上げ圧延機による
粗圧延バーの仕上げ圧延では、仕上げ圧延機最終スタン
ドにおける材料温度が、粗圧延バーの先端部から後端部
に至るまでAr3以上となるように圧延を行い、ランナ
ウトでの冷却を仕上げ圧延終了後、0.1秒超1.0秒
未満のうちに開始するとともに、該ランナウトでの冷却
では、熱延仕上げ温度から700℃までの平均冷却速度
を120℃/sec以上とするとともに、700℃から
巻取温度までの平均冷却速度を50℃/sec以下と
し、熱延鋼帯の巻き取りでは巻取温度を700℃未満と
する。
Description
の用途に好適なプレス成形性に優れた深絞り用冷延鋼板
の製造方法に関するものである。
て広く使用されている。自動車用途ではプレス成形され
る部材が多いため、その部材の形状に応じて様々な加工
性が要求される。特に、自動車用としては外板などの用
途に好適な深絞り性に優れたプレス加工用冷延鋼板が求
められる。しかしながら、近年の自動車メーカーからの
合理化の要求は厳しく、特に素材の低廉化及び製品製造
時における歩留まりの向上の要求が強くなっている。こ
のため材料面では製造方法の合理化及び材質の向上と均
質化が重要な課題となっている。
質の向上という観点から、連続鋳造−直送圧延プロセス
においてC:0.015mass%以下の極低炭鋼スラブを
熱間圧延するに当たり、スラブの板幅中央における表面
温度が900℃未満、600℃以上の温度範囲で熱間圧
延を開始するとともに、熱間圧延工程途中で30分以内
の保持処理を施すことにより、表面性状及び深絞り性を
向上させようとする技術が特公昭60−45692号に
開示されている。また、材質の向上という観点から、熱
間圧延の最終圧下率を30%以上とするとともに、熱間
圧延終了直後から急速冷却を開始し、熱延板の結晶粒径
の微細化を通じてr値の向上を図ろうとする技術が特開
平5−112831号に開示されている。
従来技術では冷延鋼板の表面性状及び深絞り性について
は、比較的良好なレベルまで改善できるものの、コイル
内の機械的性質の均一性には問題があった。すなわち、
上記特公昭60−45692号の技術では熱間圧延での
加熱温度をフェライト域といった低温域としているた
め、圧延中の材料幅方向での温度分布(エッジ及びその
近傍での温度の低下が著しい)により熱間圧延後の集合
組織が材料幅方向で異なり、その結果、冷延・焼鈍後の
コイル幅方向での機械的性質にバラツキを生じてしまう
問題がある。
質にバラツキが生じると、材料の面内での加工性が均一
でなくなり、特に自動車の外板などの用途で優れた深絞
り性が求められる場合、プレス成形後の品質に変動(割
れ、しわなど)が生じてしまう。この結果、自動車メー
カーでは、コイル内での板採りを歩留まりが低い条件
(板取方向を45度等の不合理な方向とする、或いはコ
イルエッジ近傍より製品採取をしない)で行なわざるを
得なくなる。
も、材質のバラツキを必ずしも満足できるレベルまで小
さくすることができない。すなわち、この技術が特徴と
する冷却速度(実施例では、冷却開始から1秒間の平均
冷却速度は90〜105℃/sec、冷却開始から3秒
間の平均冷却速度は65〜80℃/sec)の範囲で
は、実機の熱延条件では特に圧延トップ部分の速度が遅
いため冷却開始までの時間が長くなり、この結果、オー
ステナイトの結晶粒成長による粗粒化が進行し、この部
位では必ずしも熱延板を細粒化できないことが判明し
た。
の冷却は、設備構造上の制約から実機設備で実現するこ
とは困難である。すなわち、計測機器類を設置する必要
上、冷却装置を仕上げ圧延機最終スタンド出側直近に設
置できないという事情があり、このため熱間圧延終了後
の冷却開始時間を0.1秒以下にすることは事実上困難
である。さらにこの技術では、仕上げ圧延機最終スタン
ドでの圧下率を30%以上の大圧下としているため、板
の通板性が不安定になって板形状不良が生じ易く、この
ような熱延コイルの板形状不良のためにユーザー側では
プレス成形を高歩留まりで実施しにくいという問題もあ
る。このように特開平5−112831号の技術を実用
化するには解決すべき多くの課題がある。
来技術の課題を解決し、自動車の外板などの用途に好適
な、プレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性
の変動が少ない冷延鋼板を工業的に安定して製造するこ
とができる深絞り用冷延鋼板の製造方法を提供すること
にある。また、本発明の他の目的は、上記の性能に加え
て板形状にも優れた冷延鋼板を工業的に安定して製造す
ることができる深絞り用冷延鋼板の製造方法を提供する
ことにある。
課題を解決すべく鋭意研究を重ね、その結果、素材とな
る鋼成分を最適化した上で、熱間圧延条件及びその後の
冷却・巻取条件を最適化すること、具体的には、粗圧延
により得られた粗圧延バーを連続熱間仕上げ圧延機によ
って仕上げ圧延する際の材料長手方向での仕上温度、仕
上げ圧延後のランナウトでの冷却開始時間及び冷却速
度、冷却後の巻取温度、さらに好ましくは仕上げ圧延機
最終スタンドでの圧下率などの条件を特定の限定された
範囲とすることにより、自動車の外板などの用途に好適
なプレス成形性及び板形状が優れ且つコイル内でのプレ
ス成形性の変動も少ない深絞り用冷延鋼板が得られるこ
とを見い出した。
延鋼板を得るためには、上記の製造条件に加えて、仕上
げ圧延前や仕上げ圧延中での粗圧延バーの加熱、とりわ
け粗圧延バーの幅方向エッジ部の加熱が有効であるこ
と、さらには仕上げ圧延工程での加速圧延も有効である
ことが判明した。本発明はこのような知見に基づいてな
されたものであり、以下のような特徴を有する深絞り用
冷延鋼板の製造方法である。
5mass%以下、Mn:2.5mass%以下、P:0.10
mass%以下、S:0.05mass%以下、O:0.003
mass%以下、N:0.003mass%以下、Ti、Nb、
V、Zrのうちの1種又は2種以上を合計で0.01〜
0.40mass%含有する鋼からなる、連続鋳造まま又は
冷却後所定温度に加熱したスラブを、粗圧延機で粗圧延
して粗圧延バーとし、引き続き該粗圧延バーを連続熱間
仕上げ圧延機で仕上げ圧延して熱延鋼帯とし、引き続き
ランナウトにて冷却した後巻き取りを行い、次いで、こ
の熱延鋼帯に対して少なくとも酸洗、冷間圧延、最終焼
鈍をこの順序で行う深絞り用冷延鋼板の製造方法であっ
て、前記連続熱間仕上げ圧延機による粗圧延バーの仕上
げ圧延では、仕上げ圧延機最終スタンドにおける材料温
度が、粗圧延バーの先端部から後端部に至るまでAr3
以上となるように圧延を行い、前記ランナウトでの冷却
を仕上げ圧延終了後、0.1秒超1.0秒未満のうちに
開始するとともに、該ランナウトでの冷却では、熱延仕
上げ温度から700℃までの平均冷却速度を120℃/
sec以上とするとともに、700℃から巻取温度まで
の平均冷却速度を50℃/sec以下とし、前記熱延鋼
帯の巻き取りでは巻取温度を700℃未満とすることを
特徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス
成形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。
延されるスラブが、さらにB:0.0001〜0.00
5mass%を含有することを特徴とするプレス成形性に優
れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない深絞り
用冷延鋼板の製造方法。 [3] 上記[1]又は[2]の製造方法において、仕上げ圧延機
最終スタンドにおける圧下率を5%超30%未満とする
ことを特徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内での
プレス成形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方
法。 [4] 上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法において、仕上
げ圧延機最終スタンドにおける材料温度が、粗圧延バー
の先端部から後端部に至るまでAr3〜Ar3+50℃
の範囲となるように圧延を行うことを特徴とするプレス
成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少
ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。
おいて、仕上げ圧延機最終スタンドにおける材料温度
が、粗圧延バーの先端部から後端部に至るまでAr3〜
Ar3+40℃の範囲となるように圧延を行うことを特
徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成
形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。 [6] 上記[1]〜[5]のいずれかの製造方法において、粗圧
延バーを仕上げ圧延するに当り、連続熱間仕上げ圧延機
の入側及び/又は仕上げ圧延機スタンド間に設置された
加熱装置により粗圧延バーを加熱することを特徴とする
プレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変
動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。
置により粗圧延バーの幅方向エッジ部を加熱することを
特徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス
成形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。 [8] 上記[6]又は[7]の製造方法において、加熱装置が誘
導加熱装置であることを特徴とするプレス成形性に優れ
且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない深絞り用
冷延鋼板の製造方法。 [9] 上記[1]〜[8]のいずれかの製造方法において、粗圧
延バーの圧延速度を、粗圧延バーの先端部が連続熱間仕
上げ圧延機に入ってから加速し、その後一定速度に維持
するか若しくはさらに加速することを特徴とするプレス
成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少
ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。
説明する。まず、熱間圧延に供される鋼スラブの成分組
成とその限定理由について説明する。熱間圧延されるス
ラブは、C:0.02mass%以下、Si:0.5mass%
以下、Mn:2.5mass%以下、P:0.10mass%以
下、S:0.05mass%以下、O:0.003mass%以
下、N:0.003mass%以下、Ti、Nb、V、Zr
のうちの1種又は2種以上を合計で0.01〜0.40
mass%含有し、さらに必要に応じてB:0.0001〜
0.005mass%を含有する鋼からなる。
であるため、その含有量は少ない方が好ましい。C量が
0.02mass%を超えると本発明が狙いとする深絞り性
は得られないため、その含有量は0.02mass%以下と
する。また、深絞り性をより向上させるためにはC量は
0.0020mass%以下とすることが好ましく、また、
加工性をさらに高いレベルとするためにはC量は0.0
014mass%以下とすることが好ましい。
が、深絞り性に悪影響を及ぼす元素であるため少ないほ
うが好ましい。Si量が0.5mass%を超えるとめっき
性及び深絞り性が劣化するため、その含有量は0.5ma
ss%以下(但し、無添加の場合を含む)とする。また、
めっき性をより向上させるためにはSi量は0.1mass
%以下とすることが好ましく、また、加工性をさらに高
いレベルとするためにはSi量は0.03mass%以下と
することが好ましい。
強化する作用があるが、一方において加工性に悪影響を
及ぼす元素でもある。Mn量が2.5mass%を超えると
強度が上昇し、深絞り性の劣化が著しくなることから、
その含有量は2.5mass%以下(但し、無添加の場合を
含む)とする。また、深絞り性をより向上させるために
はMn量は2.0mass%以下とすることが好ましく、ま
た、加工性をさらに高いレベルとするためにはMn量は
0.5mass%以下とすることが好ましい。
その含有量が0.10mass%を超えると粒界偏析による
粒界脆化が生じやすくなり、延性も劣化する。このため
P量は0.10mass%以下(但し、無添加の場合を含
む)とする。また、延性をより向上させるためにはP量
は0.05mass%以下とすることが好ましく、また、延
性をさらに高いレベルとするためにはP量は0.02ma
ss%以下とすることが好ましい。さらに、延性を最も優
れたレベルにするためにはP量は0.007mass%以下
とすることが好ましい。
出量が多くなり、深絞り性および延性が劣化する。この
ためS量は0.05mass%以下(但し、無添加の場合を
含む)とする。また、加工性をより向上させるためには
S量は0.02mass%以下とすることが好ましく、ま
た、加工性をさらに高いレベルとするためにはS量は
0.010mass%以下とすることが好ましい。Nはその
含有量が少ないほど後述する炭窒化物形成元素の添加量
が少なくなるため経済的である。N量が0.003mass
%を超えると、炭窒化物形成元素を添加してNを固定し
ても鋼板の加工性の低下が避けられない。このためN量
は0.003mass%以下(但し、無添加の場合を含む)
とする。また、加工性をより向上させるためにはN量は
0.0019mass%以下とすることが好ましい。
ては好ましい。O量が0.003mass%を超えると鋼板
の加工性の低下が避けられない。このためO量は0.0
03mass%以下(但し、無添加の場合を含む)とする。
スラブは上記の成分に加えて、Ti、Nb、V、Zrの
うちの1種又は2種以上を合計で0.01〜0.40ma
ss%含有する。これらの成分は炭窒化物や硫化物を形成
することにより鋼中のC、N、Sを減少させ、加工性を
より優れたものとすることができるので、単独でまたは
2種以上を複合して添加する。しかし、これらの合計含
有量が0.01mass%未満では所望の効果が得られず、
一方、0.40mass%を超えると強度が上昇し過ぎて加
工性が劣化するため、その添加量は0.01〜0.40
mass%とする。
的として、Bを0.0001〜0.005mass%の範囲
で添加してもよい。Bを添加する場合、その添加量が
0.0001mass%未満では耐縦割れ性向上の効果が得
られず、一方、0.0050mass%を超えて添加しても
効果が飽和するため、却って経済性を損なう。このため
Bを添加する場合の添加量は0.0001〜0.005
mass%とする。また、鋼スラブ中には残部成分としてF
e及び不可避不純物元素ほかに、本発明の効果を損なわ
ない限度で他の成分元素が適量含まれることは妨げな
い。
ついて説明する。本発明では、上述した成分組成を有す
る鋼からなる連続鋳造ままのスラブ又は冷却後所定温度
に加熱したスラブを、粗圧延機で粗圧延して粗圧延バー
とし、引き続き該粗圧延バーを連続熱間仕上げ圧延機で
仕上げ圧延して熱延鋼帯とし、引き続きランナウトにて
冷却した後巻き取りを行い、次いで、この熱延鋼帯に対
して少なくとも酸洗、冷間圧延、最終焼鈍をこの順序で
行うが、上記熱間圧延及びその後の冷却・巻取を以下の
ような条件で行う。
ブとは、文字通りの連続鋳造したままのスラブのほか、
鋳造後、熱間圧延前に保熱や加熱装置による軽度の加熱
を行ったスラブを含む。また、冷却後所定温度に加熱し
たスラブとは、鋳造して室温まで冷却された後、熱延加
熱炉などで所定温度まで再加熱したスラブのほか、鋳造
して室温を超える温度域まで冷却された後、熱延加熱炉
などで所定温度まで加熱したスラブを含む。
によって仕上げ圧延するに際して、前記仕上げ圧延機最
終スタンドにおける材料温度(仕上げ温度)が、粗圧延
バーの先端部から後端部に至るまでAr3以上となるよ
うに圧延を行う。これによりコイル内のr値及び延性
(破断伸び)のレベル(コイル幅方向及び長手方向での
変動も含めたこれらの特性レベル)を本発明が意図する
ものとすることができる。また、粗圧延バーの先端部か
ら後端部に至るまでAr3〜Ar3+50℃の範囲、特
に好ましくはAr3〜Ar3+40℃の範囲になるよう
にして圧延を行うことにより、より優れた深絞り性を有
し且つコイル内(コイル幅方向及び長手方向)での機械
的性質の変動がより少ない鋼板を得ることができる。
記仕上げ圧延機最終スタンドにおける材料温度(仕上げ
温度)の制御に加え、仕上げ圧延機最終スタンドより前
の1または2以上のスタンド、好ましくは各スタンドに
おける材料温度が、粗圧延バーの先端部から後端部に至
るまでAr3〜Ar3+30℃の範囲となるように圧延
することが好ましい。これによってさらに優れた深絞り
性を有し、且つコイル内(コイル長手方向及び幅方向)
での機械的性質の変動がより少ない鋼板を製造すること
ができる。
圧下率は、熱延板の組織を細粒化して本発明が意図する
効果を得るために5%以上することが好ましく、一方、
熱延コイルの形状を良好に保つために上記圧下率は30
%未満とすることが好ましい。仕上げ圧延機最終スタン
ドにおける圧下率が30%以上であると、板の通板性が
不安定になり、板形状不良を生じやすい。
秒未満のうちにランナウトでの冷却を開始する。このよ
うに仕上げ圧延終了後、1.0秒未満のうちにランナウ
トでの冷却を開始することにより、仕上げ圧延後の変態
前のオーステナイト結晶粒の粒成長を抑制することがで
き、本発明が意図する優れたプレス成形性を得ることが
できる。また、より優れたr値を得るためには、仕上げ
圧延終了後からのランナウトでの冷却開始時間を0.8
秒以下とすることが好ましい。本発明の効果をより有効
に得るためには、仕上げ圧延終了後からランナウトでの
冷却を開始するまでの時間は短ければ短いほど好ましい
が、ランナウトでの冷却開始時間を0.1秒以下とする
ことは、実機における設備上の制約(計測機器類を設置
する必要から、冷却装置を仕上げ圧延機最終スタンド出
側直近に設置できないという制約)のために実現が困難
である。また、破断伸びのばらつきをより小さく抑える
ためには、仕上げ圧延終了後からのランナウトでの冷却
開始時間を0.5秒超とすることが好ましい。
温度から700℃までの平均冷却速度を120℃/se
c以上とする。このような平均冷却速度で冷却すること
により、仕上げ圧延終了後からのランナウトでの冷却開
始時間が0.1秒超1.0秒未満であっても、オーステ
ナイト−フェライト変態時のフェライトの核生成頻度が
増加してフェライト粒が微細粒となり、本発明が意図す
る優れたプレス成形性を得ることができる。平均冷却速
度が120℃/sec未満では、上記したフェライトの
核生成頻度が低く、本発明が意図するプレス成形性を得
ることができない。
を有する連続鋳造スラブを熱間圧延した際の熱延仕上げ
温度から700℃までの平均冷却速度と最終焼鈍後の冷
延鋼板のr値(mean−r値)との関係を調べた結果を示
している。これによれば、熱延条件中、仕上げ圧延が終
了してからランナウトでの冷却が開始されるまでの時間
が本発明範囲外である1.3秒の場合(それ以外の熱延
条件は本発明範囲内)には、熱延仕上げ温度から700
℃までの平均冷却速度が120℃/sec以上であって
も低いr値しか得られていない。これに対して、熱延条
件中、仕上げ圧延が終了してからランナウトでの冷却が
開始されるまでの時間、700℃から巻取温度までの平
均冷却速度、及び巻取温度が本発明範囲内である場合に
は、熱延仕上げ温度から700℃までの平均冷却速度が
120℃/sec以上において高いr値が得られてい
る。
00℃から巻取温度までの平均冷却速度を50℃/se
c以下とする。これにより鋼中に形成される炭化物等の
析出物を粗大化することができ、再結晶焼鈍時の結晶粒
成長性を向上させることができる。700℃から巻取温
度までの平均冷却速度が50℃/secを超えると、上
記した析出物が粗大化せず、再結晶焼鈍時の結晶粒成長
性が向上しない。
延鋼帯は700℃未満の巻取温度で巻き取られる。この
ように巻取温度を700℃未満とすることにより、フェ
ライトの粒成長による粗粒化を抑制することができる。
巻取温度が700℃以上では、フェライトの粒成長によ
る粗粒化により本発明が意図するプレス成形性が得られ
ない。
なくとも酸洗、冷間圧延、最終焼鈍がこの順序で施さ
れ、これによりプレス成形性に優れ且つコイル内でのプ
レス成形性の変動が少ない冷延鋼板を得ることができ
る。前記冷間圧延は、鋼板を所定の板厚にするととも
に、圧延集合組織を発達させて最終焼鈍(再結晶焼鈍)
工程において加工性向上のために好ましい集合組織を発
達させるために行われる。このために冷間圧延では50
%以上、好ましくは76%以上の圧下率で最終板厚まで
圧延することが好ましい。
0〜900℃の焼鈍温度(到達板温)で行うことが好ま
しく、これによりフェライトを再結晶させる。焼鈍温度
が550℃未満では、長時間の箱焼鈍でも再結晶が十分
に生じない。一方、焼鈍温度が900℃を超えると連続
焼鈍でもオーステナイト化が進行し、加工性が劣化す
る。 再結晶焼鈍を行なう方法としては、連続焼鈍、箱
焼鈍又は溶融亜鉛めっき処理に先行する連続熱処理のい
ずれでもよい。また、この焼鈍後に調質圧延を施しても
よい。
いて説明する。本発明では、粗圧延して得られた粗圧延
バーを仕上げ圧延するに当り、仕上げ圧延前及び/又は
仕上げ圧延中に粗圧延バー全体及び/又は粗圧延バーの
幅方向エッジ部を加熱することにより、優れたプレス成
形性のコイル内での均一性をより高めることができる。
このため連続熱間仕上げ圧延機の入側及び/又はスタン
ド間に加熱装置を設け、この加熱装置により粗圧延バー
全体及び/又は粗圧延バーの幅方向エッジ部を加熱する
ことが好ましい。
ター)により粗圧延バーの幅方向エッジ部加熱すること
が特に好ましい。このような粗圧延バーエッジ部の加熱
により粗圧延バー幅方向での温度のバラツキが小さくな
り、熱延鋼帯内の結晶粒径のバラツキをより小さくする
ことができ、このためコイル内でのプレス成形性の均一
性をより高めることができる。また、粗圧延バーの全体
及び/又は幅方向エッジ部を加熱するための装置として
は、加熱温度の制御性などの観点から誘導加熱装置が特
に好ましい。
ボックスなどを用いた連続熱延プロセスにおいても有効
に適用できる。この場合の粗圧延バーの加熱は、コイル
ボックスへの装入前又は後、粗圧延機のスタンド間、粗
圧延機の出側のいずれか又は2箇所以上で行ってもよ
い。また、コイルボックスを出た後の溶接機の前又は後
で粗圧延バーの加熱を行ってもよい。
延鋼板をより適切且つ合理的に得るためには、前記仕上
げ圧延における粗圧延バーの圧延速度を、粗圧延バーの
先端部が仕上げ圧延機に入ってから加速し、その後一定
速度に維持するか若しくはさらに加速することが好まし
い。このような条件で仕上げ圧延を行うことにより粗圧
延バーの温度低下を抑えることができ、これにより材料
温度の低下によるコイル内でのプレス成形性の変動を抑
えることができる。また、粗圧延バーの加熱のために仕
上げ圧延機入側やスタンド間に設けられた加熱装置(誘
導加熱装置など)の消費エネルギーを節減することもで
きる。
ーなどの矯正装置によって形状矯正することが好まし
い。この形状矯正工程は、上記のように粗圧延バー全体
及び/又は幅方向エッジ部を仕上げ圧延前に加熱する場
合には、この加熱工程の前又は後のいずれで実施しても
よい。
工程前に行った場合、粗圧延バーは矯正によって形状が
良好となった状態で加熱されるため加熱の均一性が良好
となり、このため粗圧延バー内の組織の均一性が高くな
り、さらには、仕上げ圧延機に装入される粗圧延バーの
形状が良好であるため、仕上げ圧延による塑性変形時の
均一性が高くなり、これらの結果、得られる鋼板の組織
も均一になる。また、形状矯正工程を粗圧延バーの上記
加熱工程後に行った場合でも、仕上げ圧延機に装入され
る粗圧延バーの形状が良好となるため、仕上げ圧延によ
る塑性変形時の均一性が高くなり、この結果、得られる
鋼板の組織が均一になる。
炉、電気炉などで溶製される。スラブの製造は、造塊−
分塊圧延法、連続鋳造法、薄スラブ鋳造法、ストリップ
鋳造法のいずれでもよい。また、このようなスラブを熱
間圧延工程に導入する方法としては、(1) 連続鋳造して
得られたスラブ又は造塊−分塊圧延により得られたスラ
ブを、室温またはそれ以上の任意の温度域まで冷却した
後、熱延加熱炉に装入して加熱し、これを熱間圧延する
方法(所謂、熱片装入圧延法を含む)、(2) 連続鋳造さ
れたスラブをそのまま熱間圧延する方法(但し、鋳造
後、熱間圧延前に保熱や軽度の加熱を行う場合を含
む)、のいずれでもよい。なお、上記(1)の方法の場
合、熱延加熱炉へのスラブの装入温度はAr3点以下で
あることが組織を制御する上から好ましい。
冷延鋼板は、必要に応じて適宜な表面処理(例えば、溶
融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、電気めっき、有
機被覆などの表面処理)などを施した後、プレス加工に
供され、例えば、自動車、家電製品、鋼構造物などの素
材として使用されるが、特にこれらの用途において要求
される高加工性と強度を有するものである。
(No.1〜No.4)を溶製してスラブとし、これを
表2に示す条件で熱間圧延した後、冷却して巻取った。
この熱延鋼板を酸洗後、圧下率75%にて冷間圧延した
後、850℃×40秒で最終焼鈍を行った。このように
して得られた冷延鋼板について、機械的性質(r値、伸
び)を調べた結果を表2に併せて示す。表2によれば、
本発明例である材料No.1〜No.5は、r値、破断
伸びのレベルが共に高く、プレス成形性が優れ且つその
均一性にも優れていることが判る。また、材料No.5
は特に破断伸びのばらつきが小さく、伸びの点で特に優
れている。
熱延仕上げ温度から700℃までの平均冷却速度が本発
明が規定する下限値を下回るもの、材料No.8は70
0℃から巻取温度までの平均冷却速度が本発明が規定す
る上限値を上回るもの、材料No.9はランナウトでの
冷却開始時間が本発明が規定する上限値を上回るもので
あり、いずれの材料もr値が本発明例に比較して低いレ
ベルにある。
鋼(No.1〜No.4)を溶製してスラブとし、これ
を表3に示す条件で熱間圧延した後、冷却して巻取っ
た。この熱延鋼板を酸洗後、圧下率75%にて冷間圧延
した後、850℃×40秒で最終焼鈍を行った。このよ
うにして得られた冷延鋼板について、機械的性質(r
値、伸び)及び板形状の良否を調べた結果を表3に併せ
て示す。
1〜No.6は、r値、破断伸びのレベルが共に高く、
プレス成形性が優れ且つその均一性にも優れており、ま
た板形状も良好であることが判る。また特に、同じ成分
の鋼で比較した場合、粗圧延バーの先端部から後端部に
至る圧延仕上げ温度のバラツキが小さい材料No.1、
No.2は、熱延仕上げ温度のバラツキが比較的大きい
材料No.6に較べてr値のレベルが高く、より優れた
性能が得られていることが判る。また、材料No.5は
特に破断伸びのばらつきが小さく、伸びの点で特に優れ
ている。
熱延仕上げ温度から700℃までの平均冷却速度が本発
明が規定する下限値を下回るもの(材料No.7は、仕
上げ圧延機最終スタンドでの圧下率が本発明が規定する
好ましい上限値を上回る)、材料No.9は700℃か
ら巻取温度までの平均冷却速度が本発明が規定する上限
値を上回るもの、材料No.10はランナウトでの冷却
開始時間が本発明が規定する上限値を上回るものであ
り、いずれの材料もr値が本発明例に比較して低いレベ
ルにある。また、材料No.7は耳波が大きく、板形状
も劣っている。
車の外板などの用途に好適なプレス成形性に優れ且つコ
イル内でのプレス成形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼
板を工業的に安定して製造することができる。また、本
発明により製造された鋼板は自動車用に限らず、産業機
器用、家電用(テレビ用のフレーム材、各種容器材な
ど)、ほうろう用などの深絞り性が要求される用途に供
することができる。また、本願の請求項2〜9に係る各
発明によれば、より優れた性能を有する深絞り用冷延鋼
板を得ることができ、特に請求項3に係る発明によれば
板形状も良好な冷延鋼板を得ることができる。
度とr値との関係を示すグラフ
Claims (9)
- 【請求項1】 C:0.02mass%以下、Si:0.5
mass%以下、Mn:2.5mass%以下、P:0.10ma
ss%以下、S:0.05mass%以下、O:0.003ma
ss%以下、N:0.003mass%以下、Ti、Nb、
V、Zrのうちの1種又は2種以上を合計で0.01〜
0.40mass%含有する鋼からなる、連続鋳造まま又は
冷却後所定温度に加熱したスラブを、粗圧延機で粗圧延
して粗圧延バーとし、引き続き該粗圧延バーを連続熱間
仕上げ圧延機で仕上げ圧延して熱延鋼帯とし、引き続き
ランナウトにて冷却した後巻き取りを行い、次いで、こ
の熱延鋼帯に対して少なくとも酸洗、冷間圧延、最終焼
鈍をこの順序で行う深絞り用冷延鋼板の製造方法であっ
て、 前記連続熱間仕上げ圧延機による粗圧延バーの仕上げ圧
延では、仕上げ圧延機最終スタンドにおける材料温度
が、粗圧延バーの先端部から後端部に至るまでAr3以
上となるように圧延を行い、前記ランナウトでの冷却を
仕上げ圧延終了後、0.1秒超1.0秒未満のうちに開
始するとともに、該ランナウトでの冷却では、熱延仕上
げ温度から700℃までの平均冷却速度を120℃/s
ec以上とするとともに、700℃から巻取温度までの
平均冷却速度を50℃/sec以下とし、前記熱延鋼帯
の巻き取りでは巻取温度を700℃未満とすることを特
徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成
形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 熱間圧延されるスラブが、さらにB:
0.0001〜0.005mass%を含有することを特徴
とする請求項1に記載のプレス成形性に優れ且つコイル
内でのプレス成形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の
製造方法。 - 【請求項3】 仕上げ圧延機最終スタンドにおける圧下
率を5%超30%未満とすることを特徴とする請求項1
又は2に記載のプレス成形性に優れ且つコイル内でのプ
レス成形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方
法。 - 【請求項4】 仕上げ圧延機最終スタンドにおける材料
温度が、粗圧延バーの先端部から後端部に至るまでAr
3〜Ar3+50℃の範囲となるように圧延を行うこと
を特徴とする請求項1、2又は3に記載のプレス成形性
に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない深
絞り用冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 仕上げ圧延機最終スタンドにおける材料
温度が、粗圧延バーの先端部から後端部に至るまでAr
3〜Ar3+40℃の範囲となるように圧延を行うこと
を特徴とする請求項1、2又は3に記載のプレス成形性
に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない深
絞り用冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項6】 粗圧延バーを仕上げ圧延するに当り、連
続熱間仕上げ圧延機の入側及び/又は仕上げ圧延機スタ
ンド間に設置された加熱装置により粗圧延バーを加熱す
ることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載
のプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の
変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項7】 加熱装置により粗圧延バーの幅方向エッ
ジ部を加熱することを特徴とする請求項6に記載のプレ
ス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が
少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項8】 加熱装置が誘導加熱装置であることを特
徴とする請求項6又は7に記載のプレス成形性に優れ且
つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない深絞り用冷
延鋼板の製造方法。 - 【請求項9】 粗圧延バーの圧延速度を、粗圧延バーの
先端部が連続熱間仕上げ圧延機に入ってから加速し、そ
の後一定速度に維持するか若しくはさらに加速すること
を特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8
に記載のプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成
形性の変動が少ない深絞り用冷延鋼板の製造方法。
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- 2000-06-22 JP JP2000187310A patent/JP3997692B2/ja not_active Expired - Fee Related
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