JP2004107681A - 溶融めっき金属帯の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】浴中のサポートロールに起因するチャターマーク状の付着量むらや擦り疵の発生を防止し、またガスワイピング部における金属帯の幅方向反りを防止して金属帯幅方向の付着量ばらつきを低減する。また生産効率を低下させずに金属帯へのドロス欠陥の発生を防止する。
【解決手段】金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程とを有する溶融めっき金属帯の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程とを有する溶融めっき金属帯の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融めっき金属帯を製造する製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯などの金属帯を連続してめっきする方法として、金属帯を亜鉛、アルミニューム等の溶融金属中に浸漬してその金属帯の表面にめっきを施す溶融めっき法が知られている。
【0003】
連続的に溶融めっき金属帯を製造する従来の装置の構成を図13に示す。図13において、1は金属帯、2は焼鈍炉、3はスナウト、4は溶融金属浴槽、5は溶融金属浴、6は方向転換ロールであるシンクロール、7はサポートロール、8はワイパであるガスワイピングノズルである。
【0004】
この装置を用いて、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する場合を例に挙げて説明する。この場合、溶融金属は亜鉛である。冷間圧延鋼帯などの鋼帯1は、無酸化性あるいは還元性の雰囲気に保たれた焼鈍炉2で表面の清浄化、酸化膜除去が行われ、また焼鈍処理をされた後、スナウト3を経て、溶融金属浴槽4内の溶融金属浴5に連続的に引き込まれ、シンクロール6に巻掛けられて通板方向を転換し、サポートロール7を通過後、溶融金属浴5から引き上げられ、溶融金属浴5上に設置したガスワイピングノズル8から高圧ガスが吹き付けられることにより、鋼帯1表面に余剰に付着した溶融亜鉛が払拭されて所定のめっき付着量に調整されて溶融亜鉛めっき鋼帯が製造される。
【0005】
サポートロール7は、ガスワイピングノズル8部における鋼帯1の幅方向反り(C反り)を矯正し、鋼帯1幅方向の付着量ばらつきを少なくするために設置されている。サポートロール7は、鋼帯1を挟む両側に1本ずつ設置し、各サポートロール7a、7bの高さ方向位置をずらして配置する。そして上方に配置したサポートロール7aをパスラインに接するように配置し、下方に設置したサポートロール7bを鋼帯1側に押し込み、鋼帯1に適量の変形を付与することによって、鋼帯1のC反りを矯正する。
【0006】
しかし、サポートロール7a、7bによって鋼帯1のC反りを矯正すると以下の問題点がある。すなわち、サポートロール7a、7bは、溶融金属浴槽4側方の溶融金属浴面より高い位置に設置したモータ(図示なし)によってスピンドル(図示なし)を介して駆動されるため、モータ回転は等速であっても、サポートロール7a、7bは等速回転しない。その結果、サポートロール7a、7bの回転速度は、鋼帯速度と一致しないだけでなく、等速回転できないことによって、鋼帯1にチャターマーク状の付着量むらや後記するドロスがロール表面に付着すること等によって擦り疵が発生し、品質上の問題になることがある。
【0007】
サポートロール7a、7bを回転駆動することによって発生する前記問題点を解決するためにサポートロール7a、7bをアイドル化(非駆動化)することも考えられる。この場合、サポートロール7a、7bの回転を確保するために、サポートロール7bの押し込み量を増加する必要がある。しかし、サポートロール7bの押込み量を増加することによって、浴面を出たところ(ガスワイピングノズル8部)における鋼帯1のC反りを適正に矯正することができなくなるため、鋼帯1幅方向の付着量のばらつきが大きくなるという問題がある。
【0008】
また、図13に示した装置を用いて溶融亜鉛めっき鋼帯を製造すると、鋼帯1から溶出した鉄(Fe)とめっき成分との金属間化合物であるドロス(いわゆるボトムドロス)16が発生し、このドロス16は溶融金属浴槽4底部に堆積し、堆積したドロス16が巻き上げられて溶融金属浴5中を浮遊する。このドロス16が鋼帯1に付着すると鋼帯1の表面品質を低下させ、プレス時等に欠陥を発生させるという問題がある。鋼帯通板速度を低下することで鋼帯1へのドロス付着が低減されるが、生産効率が低下するという問題がある。
【0009】
以下に、先行技術文献情報について記載する。なお、特許文献1〜3については、説明の都合上、[発明の実施の形態]の項目において説明する。
【0010】
また、出願時に未公開である先行出願にについて、[課題を解決するための手段]の項目において説明するが、その出願番号をここに記載する。すなわち、特願2001−395253(未公開出願1)及び特願2001−396575(未公開出願2)である。
【0011】
【特許文献1】
特公平7−94704号公報(第1−3頁、第1図)
【0012】
【特許文献2】
特開平10−130801号公報(第1−4頁、図1)
【0013】
【特許文献3】
特開2000−204460号公報(第2頁、図1)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、浴中のサポートロールに起因するチャターマーク状の付着量むらや擦り疵の発生を防止でき、またガスワイピング部における金属帯の幅方向反りを防止して金属帯幅方向の付着量ばらつきを低減できる溶融めっき金属帯の製造方法および製造装置を提供することにある。
【0015】
本発明の第2の目的は、生産効率を低下させずに金属帯へのドロス欠陥の発生を防止できる溶融めっき金属帯の製造方法および製造装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解消する新しい溶融めっき金属帯製造方法を開発するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、その結果、浴中サポートロールを取り外し、浴中サポートロールの金属帯の幅方向の反り(C反り)を矯正する機能を代替する手段として、ワイパーの直前または直後で前記金属帯の磁力により非接触で矯正する形状矯正工程(手段)を設けることで、前記問題点が解消されること、また溶融金属浴内に、引き込まれた金属帯を囲むように形成された囲み部材を設けて、前記溶融金属浴内を溶融金属の流動可能な状態で上部領域と下部領域に分割し、前記金属帯を前記上部領域で方向転換ロールにより方向転換して溶融金属浴外に引き上げることで、ドロス欠陥の発生を防止する効果がより優れることを見出し、先に、未公開出願1及び未公開出願2で溶融めっき金属帯の製造方法及び製造装置の発明を提案した。
【0017】
しかし、前記未公開出願1及び未公開出願2で提案された発明では、サポートロールを取り外したことに起因して、降伏点伸びを有する金属材料では、腰折れと呼ばれる表面欠陥が発生しやすくなることが明らかになった。本発明者らは、腰折れの発生を防止すべく、さらに検討を進めた結果、金属帯を焼鈍した後溶融金属浴中に引き込む前に、該金属帯に塑性歪を付与することによって腰折れの発生を防止できること、さらに前記塑性歪を付与することで、ガスワイピングノズル部における金属帯の幅方向反りが防止され、前記磁力により非接触で矯正する形状矯正を行わなくてもガスワイピングノズル部における反りを従来技術と同等にできることを見出し、本発明に至った。
【0018】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、
前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程と
を有することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【0019】
(2)金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と
を有することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【0020】
(3)前記予歪付与工程は、焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で、金属帯温度が450℃以上650℃以下の温度域で金属帯に曲げ塑性歪を付与することを特徴とする(1)または(2)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0021】
(4)前記曲げ塑性歪はロールを用いて付与するとともに、その時の金属帯の表面塑性歪量は0.1%超1.5%以下とすることを特徴とする(3)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0022】
(5)前記曲げ塑性歪の付与に用いるロールは、径がφ800mm以下で本数は5本以下であることを特徴とする(4)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0023】
(6) 前記曲げ塑性歪の付与に用いるロール本数が2本以上あるときに、前記曲げ塑性歪みは、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールで付与される表面塑性歪量が前記最終ロールの上流側ロールで付与される表面塑性歪量より小さくなるように付与されることを特徴とする(5)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0024】
(7)前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれ、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする(5)または(6)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0025】
(8)前記入側ロールのパスラインからの押し込み量と前記中間ロールのパスラインからの押し込み量は略同一であることを特徴とする(7)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0026】
(9)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(5)〜(8)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0027】
(10)前記最終ロールのロール径は、前記入側ロール及び前記中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(7)〜(9)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0028】
(11)前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(5)または(6)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0029】
(12)前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする(11)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0030】
(13)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(11)または(12)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0031】
(14)前記溶融金属浴は、前記溶融金属浴内に引き込まれた前記金属帯を囲むように形成された囲み部材により、前記溶融金属浴内が溶融金属の流動可能な状態で上部領域と下部領域に分割されていることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0032】
(15)金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
前記金属帯を焼鈍した後溶融金属浴中に引き込む前に、前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置を有し、かつ方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパと、
前記ワイパの直前または直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。
【0033】
(16)金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
前記金属帯を焼鈍した後溶融金属浴中に引き込む前に、前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置を有し、かつ方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパとを備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。
【0034】
(17)前記方向転換装置は方向転換ロールであり、前記方向転換ロールは外径がφ850mm以上であることを特徴とする(15)または(16)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0035】
(18)前記方向転換ロールは、前記方向転換ロール最上部と溶融金属浴面との間隔が50mm以上400mm以下となるように配置されることを特徴とする(15)〜(17)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0036】
(19)前記予歪付与手段は、最大金属帯温度到達地点より下流側で金属帯温度が450℃以上650℃以下となる焼鈍炉部分、または、金属帯温度が450℃以上650℃以下となるスナウト部分に設けられることを特徴とする(15)〜(18)のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0037】
(20)前記予歪付与手段は、金属帯を曲げ変形させるロールであることを特徴とする(15)〜(19)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0038】
(21)前記予歪付与手段は、φ800mm以下のロールが5本以下配置されることを特徴とする(15)〜(20)のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0039】
(22)前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールとは反対側のパスラインからずらした位置に配置され、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側のパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする(15)〜(21)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0040】
(23)前記中間ロールは、前記金属帯の方前記向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(22)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0041】
(24)前記最終ロールのロール径は、前記最終ロールの金属帯通板方向上流側に配置される前記φ800mm以下のロールのロール径より大きいことを特徴とする(22)または(23)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0042】
(25)前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(15)〜(21)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0043】
(26)前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側のパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする(25)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0044】
(27)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールに接触する面側に配置されていることを特徴とする(25)または(26)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0045】
(28)前記溶融金属浴槽には、前記溶融金属浴内に引き込まれた前記金属帯を囲むように形成された囲み部材が配置され、該囲み部材により、前記溶融金属浴内が溶融金属の流動可能な状態で上部領域と下部領域に分割されていることを特徴とする(15)〜(27)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0046】
(29)前記囲み部材は、前記上部領域で発生したドロスを含む溶融金属浴が、前記囲み部材の金属帯の溶融金属浴外への引き上げ側から前記下部領域に流出され、前記下部領域で、溶融金属浴に含まれるドロスが沈降除去されて溶融金属浴が清浄化され、清浄化された溶融金属浴が、前記囲み部材の金属帯の溶融金属浴への引き込み側から前記上部領域に導入されるように構成されることを特徴とする(28)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0047】
(30)前記囲み部材は、溶融金属浴面下に設けられることを特徴とする(28)または(29)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0048】
(31)前記囲み部材は、前記囲み部材と前記金属帯との最近接距離が50mm以上400mm以下となるように配置されることを特徴とする(28)〜(30)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に至った経緯とともに、本発明について詳しく説明する。
【0050】
本発明者らは本発明の課題を解消する新しい溶融めっき金属帯の製造方法を開発するため、先ず浴中のサポートロール7に着目した。サポートロール7の主な機能は金属帯幅方向反り矯正機能である。
【0051】
図1は、金属帯1幅方向反り発生機構を説明する図である。金属帯幅方向反りは主にシンクロール6において金属帯1が曲げと曲げ戻しを受けることによって発生すると考えられる。シンクロール6に巻きついて接触している位置Aでは、平面ひずみ変形となり、金属帯1に発生する応力は、金属帯通板方向および金属帯幅方向ともに、シンクロール6と接触している側に圧縮応力、その反対側に引張応力となり、金属帯幅方向反りの基本となる応力分布になる。シンクロール6に近く、比較的曲率半径の大きな位置Bにおいても、ほぼ平面歪状態が保たれ、位置Aにおいて塑性変形をしているために、位置Aとは逆の応力分布、すなわちシンクロール6と接触している側に引張応力、その反対側に圧縮応力となる。曲率半径がほぼ0の位置Cにおいては、面内変形に対する拘束はなく、基本的には位置Aで受けた変形が存在しやすい形状、すなわち金属帯幅方向に上に凸の状態となると考えられる。
【0052】
このようにして金属帯1に反りが発生した場合、ガスワイピングノズル8部において、金属帯1とガスワイピングノズル8と間隔が幅方向で一定でなくなる結果、金属帯1幅方向に付着量のばらつきが生ずることになる。
【0053】
また、金属帯1に反りが発生している場合は、金属帯1とガスワイピングノズル8との接触を避けるために、金属帯1とガスワイピングノズル8の間隔を狭めることが制限される。この結果、所望の溶融金属払拭能力を確保するためにはガスワイピングノズル8のガス圧力を高めなければならず、これが時としてガスワイピング時に激しく飛び散った溶融金属が金属帯1に付着することにより発生するスプラッシュと呼ばれる欠陥の原因となることが知られている。
【0054】
そこで、浴中のサポートロール7を用いてシンクロール6で発生した反りを矯正する。
【0055】
図2は、図13に示した装置におけるサポートロール7の反り矯正機能を説明する図である。シンクロール6によって金属帯1は鉛直方向に方向転換されて通板される。サポートロール7aはパスライン上で金属帯1と接する位置に設けられ、サポートロール7aに対して所定距離だけ下方に配置されたサポートロール7bはこのパスラインに対して所定量Lだけ金属帯1を押し込む位置に配置される。
【0056】
前述のように金属帯1はシンクロール6による曲げと曲げ戻しに起因する反りが発生しているが、サポートロール7bを用いて押し込み量Lを適切に調整することで、金属帯1に逆方向の曲げを加えて反りを矯正するものである。
【0057】
このように浴中のサポートロール7は主に金属帯1幅方向の反り矯正のために、数十年の長きに渡って使用された設備であって、前記したように金属帯1にチャターマーク状の付着量むらや擦り疵を発生するという問題に加えて、さらにサポートロール7の定期的な手入れや交換のために設備停止が必要となり、操業効率を低下させてしまうという問題がある。
【0058】
これらの問題は浴中にサポートロール7がなければ発生しないものであるため、本発明者らは溶融めっき金属帯製造プロセスからサポートロール7を取り外すことを検討した。
【0059】
先ず、浴中のサポートロール7を取り外すことによる金属帯品質への悪影響がないかどうかを検証した。これは、製造現場においては、サポートロール7には前述の機能の他に、溶融金属浴5中のドロスなどの異物を金属帯1に付着しにくくする異物除去機能があるため、サポートロール7を除去することにより金属帯1の欠陥発生を増加させることになるとの通説があるためである。
【0060】
この検証は溶融金属浴5を模擬する実験装置を製作し、その中の流れの挙動を観察することで行った。実験装置は、溶融金属の代わりに水を用い、その中にシンクロール6とサポートロール7を模したロールを配置し、さらに金属帯1を模したエンドレスベルトを配して構成し、実際の溶融金属浴中のロール周りとレイノズル数やフルード数が同等になるようにロール径やロール回転数を設定して、流体力学的に溶融金属浴中の挙動を模擬できるようにした。流れを観察するためのトレーサとしてアルミ粉を添加して実験を行った。
【0061】
その結果、サポートロール7を模したロールにはベルトに付着した異物(アルミ粉)を剥がすような作用は観察されず、サポートロール7を模したロールは異物を押し付けるだけであった。この結果より、浴中のサポートロール7には通説で言われているような異物除去機能はなく、サポートロール7を除去してもそのことによって欠陥の発生が増加することはないものと判断した。また、実ラインで図13に示した溶融めっき金属帯製造設備を用いてサポートロール7を使用しないで亜鉛めっき鋼帯を製造したところ、これによって亜鉛めっき鋼帯のドロス欠陥が増加しないことが確認された。
【0062】
従って、サポートロール7を外すには金属帯1の幅方向の反り矯正機能が代替できれば良いことになる。
【0063】
溶融めっき金属帯を対象とする場合は、反り矯正を行う手段は非接触式であることが望ましく、制御性の点から電磁石などの磁力を用いて金属帯の形状矯正を行うのが好適である。サポートロール7を取り外し、代わりに電磁石などの磁力を用いて金属帯1の形状矯正(C反り矯正)することによって、サポートロール7使用によって発生する前記問題点を全て解消できることが確認された。
【0064】
しかし、サポートロール7を取り外したことによって、降伏点伸びを有する金属材料では腰折れと呼ばれる表面欠陥が顕著に現れるという問題が新たに生じた。この欠陥は調質圧延により目立たなくすることが可能であるが、需要家でのプレス成形等で再び顕在化することがあるため、用途によっては製品の歩留りが大きく低下する。
【0065】
そこで、降伏点伸びを有する溶融亜鉛めっき鋼帯において発生する腰折れの原因及びその防止策について調査検討した。鋼帯は、連続溶融めっき金属帯製造装置内を通板される際、種々の温度域でロールにより曲げ加工を受け、強い応力が加わる。その応力の大きさが降伏応力を超えた時に、曲げ部が局所的に降伏し、腰折れとなる。
【0066】
本発明者らは、曲げ加工による材料試験、および実機における試験を行った。その結果、ある温度T1を境にして、それ以上の温度域では腰折れは発生しないことが判明した(以下、前記ある温度T1をしきい温度T1という。)。つまり、腰折れは、鋼帯温度がしきい温度T1より低い温度域で発生し、鋼帯温度がしきい温度T1以上になると腰折れが発生しないことを突き止めた。常温で降伏点伸びがある鋼帯であっても、鋼帯温度がある一定温度以上になると降伏点伸びがなくなる。前記しきい温度T1は鋼帯の降伏点帯がなくなる温度であることがわかった。しきい温度T1以上で、鋼帯に腰折れが発生しないのは、この温度域では、鋼帯に降伏点伸びがないため、降伏点を超えた応力でも局所的な歪集中が発生しないためと考えられる。
【0067】
一般に、常温では、鋼帯に予め歪を加えておけば、次加工で腰折れが発生しにくくなることが知られているが、本発明者らは、鋼帯にしきい温度T1以上で予歪を付与した場合でも、この予歪付与効果が発現されること、すなわち、鋼帯温度がしきい温度T1以上にあるときに鋼帯に予歪を付与すると、その後、鋼帯がしきい温度T1より低い温度でロールで曲げ加工されても腰折れが発生しないことを新規に見出した。また、その温度が高すぎると予歪付与効果は減少し、650℃超になると前記効果がほとんど認められなくなることが明らかになった。しきい温度T1は鋼種等によって異なり、該しきい温度T1は鋼帯温度を変えて引張試験を行い、降伏点伸びがなくなる鋼帯温度から決定される。
【0068】
腰折れはめっき浴から引き上げられた以後の曲げロールによってのみ発生することが判明した。めっき浴温は通常450〜480℃である。したがって、連続溶融めっき金属帯製造装置では、鋼帯温度がしきい温度T1になる位置は焼鈍炉〜めっき浴の間に存在すると考えられ、また450℃以上で鋼帯に予歪を付与することで腰折れの発生を防止できる。
【0069】
また、導入する歪量は、表面塑性歪で0.1%超必要であるが、1.5%超になるとその効果は頭打ちとなることが明らかになった。また前記塑性歪量は1回で付与する必要は無く、表面塑性歪が0.1%超〜1.5%の範囲になるように、前記温度域で、複数回に分けて付与しても良いことが判明した。ここで、歪量=弾性歪+塑性歪であり、弾性歪は、σ/E(σ;材料の降伏応力、E;ヤング率)で表される。
【0070】
腰折れ欠陥を発生させる応力は、ロールによる曲げ応力であるため、表面近傍が最も大きい。このことから、腰折れ欠陥を防止するには、最も強い応力が加わると考えられる表面近傍への対策が有効である。係る観点からは、曲げロールにより予歪を付与する方法が考えられる。試験の結果、曲げロールにより予歪を付与する場合、ロール本数は1本でも効果が認められ、ロール本数が6本以上では塑性歪量を上昇させてもほとんど効果の上昇が認められないことが判明した。
【0071】
なお、特許文献1〜3には、焼鈍炉で鋼帯にロール曲げ加工することが記載されている。
【0072】
特許文献1は、外径50mm以上500mm以下のロールで曲げ加工してから鋼帯を焼鈍することで結晶粒径を整え、亜鉛めっき浴中での固液反応及びそれに続くFe−Zn合金化反応を均一に進ませ、合金化処理で発生する表面凹凸欠陥を防止する。本件発明と課題、構成が異なる。
【0073】
特許文献2は、曲げ半径300mm以下で曲げ、曲げ戻し加工を施し、鋼帯表面に残留歪を付与することで鋼板とめっき界面での拡散反応を均一化する。これによって、Si、P、Mn等が添加されている鋼帯において添加元素の不均一分布に起因する初期合金化むらを防止し、また熱延鋼帯において表面粗度が大きいことに起因する初期合金化むらを防止し、もってめっきの光沢むら、光沢度低下及び合金化反応むらを防止する。本件発明と課題が異なる。
【0074】
特許文献3は、帯板を非酸化雰囲気の通板室から溶融金属のめっき浴中に通板してめっきする装置の前記通板室内に、パスライン内の2点を支点として帯板を通板位置の向こう側に押し込み可能な押し込みロールを設けて、帯板の反りを矯正する。
【0075】
前記特許文献1〜3では、腰折れを防止することは考慮されていない。
【0076】
なお、サポートロール7を用いて鋼帯1の形状矯正を行う従来技術において、鋼帯1に腰折れが発生しなかったのは、サポートロール7で鋼帯1を押し込むことで、鋼帯表面に塑性歪が付与されていたためと考えられる。
【0077】
本発明は、前記知見に基づくものである。
【0078】
以下、本発明の実施の形態についてさらに説明する。尚、以下に説明する各実施の形態では金属帯の1具体例として鋼帯を念頭においている。また溶融めっき鋼帯は亜鉛めっき鋼帯であり、溶融金属は亜鉛である。
【0079】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。図3において、焼鈍炉2は、直火加熱炉2a、均熱炉2b、冷却炉であるジェット冷却炉2c及び調整冷却炉2dを備える。本装置においては、図13に示した従来の装置で浴中に使用されていたサポートロール7は存在せず、その代わりにガスワイピングノズル8の直後に電磁石を用いた非接触で金属帯の形状を矯正する形状矯正装置9が設けられている点、及び焼鈍炉2に予歪付与装置21が設置されている点が特徴である。
【0080】
形状矯正装置9について説明する。形状矯正装置9はガスワイピングノズル8の直後に設置されている。ここでガスワイピングノズル8の直後とは、ガスワイピングノズル8に近ければより良い制御が行えることを意味している。実ラインでガスワイピングノズル8の上方に、めっき皮膜の合金化処理を行う合金化炉、スパングルを調整するスパングル調整装置などが設けられ、また前記装置の前に金属帯1の振動を抑制するタッチロールが設けられる場合もある。この場合、形状矯正装置9は、前記装置までの間に設置すれば良い。
【0081】
図4は、図3の装置に設置される電磁石を用いた非接触で金属帯の形状を矯正する形状矯正装置9の構成を示す図である。
【0082】
本形状矯正装置9は、図中上方に移動する金属帯1の表面までの距離を測定する位置センサ10、この位置センサ10からの信号を受けて制御信号を出力する制御器11、制御信号を増幅する増幅器12及び増幅された制御信号によって金属帯に吸引力を及ぼして金属帯の形状を変化させる電磁石13で構成されている。
【0083】
そして、電磁石13は金属帯1の幅方向に複数台数設けられ、さらに金属帯1の表裏に対になって配置されている。電磁石13は金属帯1に対しては一方向の吸引力を及ぼすものであるため、金属帯1の表裏に配置することで金属帯1の吸引方向を選択して金属帯1の反りを矯正できるように構成されている。
【0084】
通常、金属帯1の幅方向の反り形状は図1で示すように、断面がC形になることが多いため、電磁石13は金属帯幅方向3ヶ所(両エッジ、中央)に配置すれば良い。また、各3ヶ所の位置センサ10相互間、電磁石13相互間での干渉はそれほど大きくないことが多いため、相互の干渉を補償せずに、3ヶ所それぞれ独立の制御系で構成しても良い。
【0085】
本装置を用いて、金属帯1の表面までの距離を測定する位置センサ10からの信号に基いて、制御器11で金属帯1の表裏に配置されている電磁石13の吸引力を制御し、金属帯1の反りを矯正する。これによって溶融金属浴5引き上げ部の金属帯1の反りを平坦にできる。
【0086】
本装置では、形状矯正装置9をガスワイピングノズル8の直後に配置する構成に代えて、形状矯正装置9をガスワイピングノズル8の直前に配置する構成にしてもよい。ここで直前とは、ガスワイピングノズル8に近ければより良い制御が行えることを意味しているが、実ラインでは溶融金属浴5からガスワイピングノズル8までの間に設置すれば良い。このような構成にしても前記と同様の効果を奏することができる。
【0087】
次に、予歪付与装置21について説明する。
【0088】
予歪付与装置は、金属帯温度が450℃以上650℃以下となる部分に設ける。温度が450℃より低い金属帯に予歪を付与すると、予歪付与時に金属帯に腰折れが発生し、腰折れを防止する効果が奏されないおそれがある。また温度が650℃超の金属帯に予歪を付与すると、予歪付与効果が認められなくなり、金属帯が金属浴から引き上げられた後で腰折れが発生する。
【0089】
腰折れの発生を防止するには、予歪を付与する金属帯温度は500以上550℃以下がより好ましい。これは次の理由による。すなわち、しきい温度T1は材料(例えば鋼種等)によって異なる。通常、予歪付与温度が550℃を超えると付与した塑性歪が抜け出しやすくなり、予歪付与効果が小さくなる。またしきい温度T1は通常550℃以下である。また、めっき浴温は通常450〜480℃であるので、予歪付与温度を500℃より低い温度で行うと溶融金属浴に浸漬される鋼帯温度が低くなって熱的に不利である。また実用面で腰折れの発生が特に問題になっている焼き付け硬化型では、しきい温度T1が450℃程度であるため、操業条件の変動等を考慮して500℃以上で予歪を付与することがより有利である。
【0090】
腰折れを防止するだけでよければ、溶融金属浴から引き上げられたに予歪付与装置を設けることや、溶融金属浴槽内に予歪付与装置を設けることも可能であるが、溶融金属浴から引き上げられたあとで予歪を付与するとめっき層の剥離や押し疵発生等の問題があり、また溶融金属浴槽4内で予歪を付与すると、溶融金属浴槽内に前記装置を設けると、サポートロールを用いた場合と同様の問題がある。したがって、予歪付与装置は、溶融金属浴より上流側に設けられる。
【0091】
予歪付与装置は、最大金属帯温度到達地点より下流側に設ける。本発明は、これに限定されるものではないが、一例を挙げると、めっき原板である鋼帯は、焼鈍炉の均熱炉2bで最大到達温度650〜900℃程度に加熱されて焼鈍され、冷却炉(ジェット冷却炉2c及び調整冷却炉2d)で冷却された後、450〜480℃程度に保持された溶融金属浴に引き込まれる。予歪付与装置を最大金属帯温度到達地点より上流側に設けると、その後前記温度に加熱されることで、予歪付与効果が消失し、腰折れの発生を防止することができなくなる。
【0092】
予歪付与装置では、塑性歪を表面塑性歪で0.1%超〜1.5%付与する。表面塑性歪が0.1%以下では、予歪付与効果が不十分になり、腰折れが発生する。1.5%超では、前記効果が飽和し、逆に設備費が高くなる、金属帯の材質を劣化させる場合がある等の問題がある。表面塑性歪は0.3%以上付与されることがより好ましい。前記塑性歪量(0.1%超〜1.5%)は1回で付与してもよく、複数回に分けて付与しても良い。
【0093】
付与される表面塑性歪が0.1%超1.5%以下であれば、予歪付与手段は限定されない。表面塑性歪が複数回に分けて付与される場合、本発明で規定する表面塑性歪は各々の歪付与で金属帯表面に付与される塑性歪量の和である。すなわち、i回目で付与される表面塑性歪量をεiとしたときに、本発明で規定する表面塑性歪εは、ε=Σεiで定義される。圧縮歪、引張歪のいずれであってもその和として算出される。引張り、圧縮に関わらずその和であるのは、この腰折れ防止メカニズムが圧縮、引張りには無関係の転移に起因しているためと推定される。
【0094】
表面に塑性歪を効率よく付与する観点からはロールで曲げ加工するのが有利である。ロールで曲げ加工する場合、少なくとも一本のロールで付与される金属帯の曲率半径が400mm以下となるようにロール径を選択し、該ロールの押し込み量を調整して金属帯を曲げ加工することが好ましい。金属帯を曲率半径400mm以下で曲げるには、ロール径がφ800mm以下のロールを用いる必要があり、ロール本数は1本以上であればよい。例えばφ800mmのロール(大径ロール)で金属帯が該ロールに十分巻きつくように押込み量を調整する方法やロール径がφ400mmのロールで押込み量を調整する方法を例示できる。但し、ロールの押し込み量は金属帯材質、厚さ等で異なる。付与する表面塑性歪量を大きくするには、ロールの押し込み量を大きくすることや小径ロールを使用することがよい。曲げロールのロール径は、φ400mm以下の小径ロールが好ましい。なお、縦型焼鈍炉ではハースロール径は通常φ800mm以上、特殊の専用炉にあってもφ500mm超、一般にはφ600mm超であり、またシンクロール径は通常φ750mm程度である。
【0095】
同じ表面塑性歪量を付与するのであれば、ロール本数は、1本の方が、歪付与効果が高い。ロール本数を6本以上にして分割して歪を付与しても予歪付与効果は向上せず、逆に設備費、設備保守等の点で不利になる。したがって、ロール本数は1〜5本が好ましい。ロール本数が1本の場合、導入できる表面塑性歪量をあまり大きくできないので、実設備ではロール本数は2〜3本とすることがより好ましい。2本以上のロールを使用する場合、ロール径は異なっていてもよい。
【0096】
前記した理由から、予歪付与装置は、450℃以上650℃以下の焼鈍炉2部分または450℃以上650℃以下のスナウト3部分に設ける必要がある。焼鈍炉2の調整冷却炉2dでは金属帯温度を450℃以上〜650℃、特に500〜550℃程度に調整しやすいので、予歪付与装置は焼鈍炉2の調整冷却炉2d部分に設けることが好ましい。
【0097】
図3の装置では、予歪付与装置21は、焼鈍炉2の調整冷却炉2dの最終パスに設置されている。図5は、図3の装置に設置されている予歪付与装置21の構成例を示す概略図で、3本のロール(曲げロール)が配置されている例である。すなわち、予歪付与装置21は、金属帯1通板方向(上下方向)位置をずらし、金属帯1の両側に千鳥配置された3本のロール22〜24で構成されている。前記ロール22〜24はそれぞれ独立にパスラインと略直角方向に移動自在に構成されている。25、26はハースロールである。
【0098】
図5の装置を用い、ロール22〜24のうちの少なくとも1本以上をパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込むことで金属帯の表面に塑性歪を付与する。一例を挙げると、図6(a)に示すように、ロール22及び24をパスラインにほぼ接するように配置し、ロール23をパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込むことで、金属帯1を曲げ加工してその表面に塑性歪を導入する。あるいは、図6(b)に示すように、ロール24をパスラインにほぼ接するように配置し、ロール22と23をそれぞれパスラインと直角方向に互いに異なる方向、すなわちロール23はロール22側に押し込み、ロール22はロール23とは反対方向に、各々パスラインを超えて押し込むことで、金属帯1を曲げ加工してその表面に塑性歪を導入する。図6(a)及び(b)では、ロール23は、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置されている。なお、本明細書において、「ロールがパスライン位置にある」とは、ロールがパスラインに接する位置にあることを意味している。また、「ロールをパスラインからずらした位置に配置」とは、ロールがパスラインに接する位置からずれていることを意味している。
【0099】
図6(c)、(d)に示すように、金属帯1に対する各々のロール配置は、前記(a)、(b)と逆の配置であってもよい。
【0100】
導入される表面塑性歪量は、金属帯の曲げ曲率で決定され、曲げ曲率は、隣り合うロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径とその押込み量(パスラインを超える押し込み量)を制御することで制御できる。なお、鋼種等の金属帯材質、板厚、温度等の操業変数、隣り合うロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径、ロールの押し込み量等と、表面塑性歪量の関係を予め求めて、対応表を作成しておき、この対応表に基き、操業変数値に応じて、前記各場合におけるロールの押し込み量を設定する。
【0101】
図5に示した装置は、3本の曲げロールが配置されている例であるが、ロール本数は3本に限定されず、1〜5本の範囲内とすることが好ましい。ロールが1本の場合、曲げ歪付与効果を高める観点から、該ロールはハースロール26に近接配置することが好ましい。
【0102】
本発明者等は、図5に示した予歪付与装置21を用いて、金属帯1に予歪を付与したときに、前記各ロール22〜24の配置条件およびその押し込み条件を変化させると、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反り量が変化することを見出した。例えば、図6(a)や(c)のようにしてロール23を押し込むと、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りが大きくなり、そのため、金属帯1の形状を制御する形状矯正装置9の出力(電磁石13の出力)を増加させることが必要になった。また、図6(b)や(d)のようにしてロール22及び23を押し込むと、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りが小さくなり、前記形状矯正装置9の出力を低減することが可能になった。
【0103】
ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを小さくするには、金属帯通板方向最終ロールで付与される歪み量を小さくすることが有効である。係る観点から、3本のロールを使用する場合、図6(b)及び(d)に示されるように、金属帯通板方向最終ロールであるロール24は略パスライン位置(パスラインに接する位置またはその近傍位置)、中間ロール(ロール24の上流側ロール)であるロール23は、パスラインを超えて前記ロール24側に押し込まれた位置、入側ロール(ロール23の上流側ロール)であるロール22は、パスラインを超えて前記ロール23側に押し込まれた位置に配置することが好ましい。
【0104】
前記において、ロール22のパスラインからの押し込み量(d1)、ロール23のパスラインからの押し込み量(d2)を略同一にすると、前記形状矯正装置9を使用しなくても、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反りを従来技術と同等レベルに平坦化できるので、より好ましい。この場合、中間ロールであるロール23は、図6(b)のように、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置される方が、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反りを平坦にする作用がより優れるので、さらに好ましい。最終ロールで付与される歪量としては、例えば、金属帯に付与される塑性歪(各ロールで付与される塑性歪の和)が0.5%程度であるある場合、最終ロールで付与される塑性歪を0.1%程度とする例を例示できる。前記ロール配置の一例を挙げると、ロール22〜24の径をφ250mm、ロール同士の間隔を300mmとし、ロール24をパスライン位置に配置し、ロール22と23をパスラインから50mm押し込む例を例示できる。但し、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0105】
前記によってガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反り量を低減できる理由は明らかでないが、前記のようにして予歪を付与することで、予歪付与装置出側での金属帯1のC反りが少なくなることに加えて、金属帯1表面に塑性歪みが付与されたことで、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反り変形を抑制する作用があるためではないかと考えられる。また、中間ロールが金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置された場合、予歪付与装置出側で金属帯1に付与されたC反りがシンクロールに起因してガスワイピングノズル8部で発生する金属帯1のC反りを打ち消すように作用するためと考えられる。
【0106】
最終ロールで付与される歪量を小さくするには、前記ロール押し込みと組み合わせて、あるいは前記ロール押し込み方に代えて、最終ロールのロール径を該ロールの上流側に配置される曲げロールのロール径より大きくするようにしてもよい。例えば図5において、最終ロールのロール径を入側ロール、中間ロールの各ロール径より大きくすることが有効である。
【0107】
図5において、最終ロールのロール径を大きくした場合、各ロールのロール配置(押し込み方法)は、図6(a)及び(d)のように、入側ロールと最終ロールをパスライン位置に配置し、中間ロールをパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込む配置であってもよい。この場合も、中間ロール23が図6(a)のように、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置されることが、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを低減する上でより好ましい。このロール配置の一例を挙げると、ロール22とロール23のロール径を150mm、ロール24のロール径を400mmとし、ロール22と24をパスライン位置に配置し、ロール23のパスラインからの押し込み量を100mmとする例を例示できる。但し、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0108】
また、前記と組み合わせ、あるいは前記に代えて、入側ロールと中間ロールの間隔(鋼帯通板方向間隔)よりも、中間ロールと最終ロールの間隔を大きくするようにロールを配置してもよい。
【0109】
曲げロールを2本使用するときは、前記最終ロール24に代えて、ハースロール26を使用できるようなロール配置にすることが好ましい。また、曲げロールを4〜5本使用するときは、最終ロールで付与される塑性歪を小さくする観点から、最終ロールはパスライン位置に配置されることが好ましい。
【0110】
但し、最終ロールで付与される歪は、最終ロールとその上流側のロールの相対的な位置関係で決まるものであるから、最終ロールの上流側ロールの押し込み量が大きい場合は、最終ロールのパスラインに対する位置をパスラインからずらす場合もある。したがって、最終ロールの位置はパスライン位置に限定される訳ではない。
【0111】
例えば、図7において、ロール22〜24のパスラインに対する押し込み位置が各々x1〜x3(パスライン位置が「0」、右側への移動量は「+」、左側への移動量は「−」である。)であり、ロール22の押し込み量(|x1|)を小さく、ロール23の押し込み量(|x2|)を大きくした場合、最終ロールで付与される歪は、最終ロール24と中間ロール23の相対的な位置関係(|x2−x3|)で決まるので、ロール24は、パスラインより左側に移動させるように配置する方が好ましい。
【0112】
ガスワイピングノズル部でのC反りを防止するには、金属帯表面に前記で説明したような表面塑性歪みが付与されることが必要である。ロールの押し込み量を、次のようにして決定する。鋼種等の金属帯材質、板厚、温度等の操業変数、各々のロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径、ロールの押し込み量等と、表面塑性歪量の関係に加えて、さらに前記操業変数とガスワイピングノズル部における反り量の関係を予め求めて、前記操業変数と、所定表面塑性歪量の付与とC反り防止効果を両立できるロールの押し込み量の対応表を作成しておき、この対応表に基き、操業変数値に応じて、ロールの押し込み量を設定することで、腰折れを防止できるだけでなく、ガスワイピングノズル部におけるC反り発生を防止できる。シンクロール径を大径化する場合(後記)、このロールについて前記の対応表を作成する。
【0113】
前記したように、特許文献3には、押し込みロールを設けて帯板の反りを矯正することが記載されている。しかし、特許文献3では、サポートロールを備えるので、本発明の課題であるサポートロールに起因する諸問題点を解決することは考慮されていない。また、特許文献3では、サポートロールと押し込みロールを併用することで帯板の反りを矯正するものであって、サポートロールを使用しないで、押し込みロールだけで帯板の反りを矯正することは示されていない。また、特許文献3では、帯板表面に所要の塑性歪を付与することは示されていないだけでなく、浴中にシンクロールがないため、帯板に安定して十分な張力を付与することが困難であり、したがって帯板表面に所要の表面塑性歪を安定して付与することはできないと考えられる。
【0114】
本装置では、浴中サポートロール7を設置しないので、シンクロール6径は、サポートロール7が設置された従来装置(図13)の場合よりも大きくすることができる。図8は、一般的に使用されているロール径であるφ750mmのシンクロール6とシンクロール径をφ950mmに大径化した場合について、ガスワイピングノズル8部で、幅1200mmの鋼帯1に発生するC反り量を調査した結果である。鋼帯1のC反り量の数値は、シンクロール6側に凸形状の場合は+(プラス)、シンクロール6と反対側に凸形状の場合は−(マイナス)とした。
【0115】
シンクロール6径を大きくすることによりシンクロール6に巻き付けられた鋼帯1に発生する曲げ応力を小さくすることができ、その結果、図8に示されるように溶融金属浴5から引き上げられるときの鋼帯1のC反りを小さくできる。これによって、形状矯正用の電磁石の負荷軽減が可能になり、従来反り矯正が困難であった厚物鋼帯についても溶融金属浴5引き上げ部の形状を平坦にできる。係る点からは、シンクロール6の直径は850mm以上とすることが有利である。
【0116】
シンクロール6最上部と溶融亜鉛浴面との間隔は50mm以上400mm以下とすることが好ましい。50mm未満であるとシンクロール6の回転により浴面が攪拌されトップドロスを多量に発生させ、また400mm超になると、深い溶融金属浴槽4が必要となり、設備費等の増加を招くためである。
【0117】
次に、前記装置を用いて、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する方法について説明する。鋼帯1はスナウト3を通って溶融金属浴5内の上部領域5Aに引き込まれ、方向転換用ロールであるシンクロール6によって通板方向が変換され溶融金属浴5から引き上げられる。次にガスワイピングノズル8でめっき付着量が調整される。ガスワイピングノズル8部の鋼帯1形状は形状矯正装置9で矯正されて平坦にされる。さらに必要に応じて、合金化炉14でめっき層の合金化処理され、又は合金化炉14に代えてスパングル調整装置を配置してスパングル調整され、あるいは前記処理が施されることなく、そのまま冷却されて所要の溶融亜鉛めっき鋼帯が製造される。
【0118】
本装置では、予歪付与装置21を備えることで腰折れ欠陥のない溶融亜鉛めっき鋼帯を製造できる。
【0119】
またサポートロールが設置されていないので、サポートロールに起因する品質欠陥の発生がなく、またサポートロール交換のための設備停止も不要である。
【0120】
また、ガスワイピングノズル8部で鋼帯1の幅方向反りが矯正されているので、鋼帯1幅方向の付着量分布を均一にでき、さらにガスワイピングノズル8と鋼帯1の間隔を狭め、ガス圧力を低圧にして付着量調整することで、スプラッシュの発生を防止できる。
【0121】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。本装置においては、図3に示した装置において、溶融金属浴槽4内に囲み部材27を設けた点が特徴である。溶融金属浴槽4内に設けた囲み部材27の構成と作用について以下に説明する。
【0122】
図9の装置には、溶融金属浴5内に引き込まれた金属帯1を囲むように形成された囲み部材27が設けられている。囲み部材27によって、前記溶融金属浴5内が溶融金属の流動可能な状態で上部領域5Aと下部領域5Bに分割されている。
【0123】
囲み部材27の上端は溶融金属浴5の浴面より下にあり、囲み部材27の金属帯引き上げ側の囲み27bの上端は、シンクロール6の軸芯よりも上にある。囲み部材27の金属帯1下面に対向する側の囲みは、囲み部材27とシンクロール6の距離がほぼシンクロール6下方で最も近接するように構成されている。また、囲み部材27の金属帯1端部側(シンクロール6軸方向側)の囲み27cはほぼ鉛直な側壁で構成されている。
【0124】
囲み部材27は高温の溶融金属浴環境での使用に耐え得るSUS材などで製作される。囲み部材27の下部に囲み部材27を支持する脚状の支持部材(図示なし)が取り付けられており、前記支持部材が溶融金属浴槽4底部に載置されることで、囲み部材27は溶融金属浴槽4内に設置される。囲み部材27は溶融金属浴槽4内への取り付け、溶融金属浴槽4外への取り外しが自在である。
【0125】
囲み部材27の作用について説明する。図9中、溶融金属槽4内の矢印は溶融金属浴5の流れ方向を示す。実線矢印はドロスを含み、清浄化前の溶融金属浴5であることを示し、白抜き矢印はドロスが沈降除去され、清浄化された溶融金属浴5であることを示す。
【0126】
上部領域5Aでは、溶融金属浴5は、走行する金属帯1に随伴して流れ、囲み部材27の金属帯1引き上げ側の囲み27bの上方から下部領域5Bに流出する。上部領域5Aのシンクロール6下方領域では、シンクロール6の回転による随伴流があるので、金属帯1が通板されていない領域でも溶融金属浴5の十分な流動が確保される。
【0127】
上部領域5Aでは、金属帯である鋼帯1から鉄(Fe)が溶出し、微細なFe−Zn系ドロスが生成する。微細なドロスの一部は金属帯1に付着して溶融金属浴5から持ち出される。この微細なドロスは金属帯1に付着しても品質上の問題はない。溶融金属浴5から持ち出されなかった溶融金属浴5中の微細なドロスは、通板される金属帯1に随伴する流れによって、囲み部材27の金属帯1引き上げ側の囲み27bの上方から下部領域5Bに速やかに排出され、上部領域5A内で沈降、堆積することがない。
【0128】
下部領域5Bには、上部領域5Aから微細なドロスを含む溶融金属浴5が流入する。下部領域5Bに流入した微細なドロスを含む溶融金属浴5は、溶融金属浴槽4の金属帯1引き上げ側の側壁4aに沿って主に下方に向かう流れになり、さらに囲み部材27の下方と側方を経て溶融金属浴槽4の金属帯1引き込み部側(スナウト3側)に流れる。
【0129】
下部領域5Bは、上部領域5Aに比較して容量が大きく、また上部領域5Aの金属帯1随伴流の影響が直接及ばないので、溶融金属浴5の流れは緩やかである。そのため、下部領域5Bに流入した溶融金属浴5が金属帯1引き込み部側(スナウト3側)まで流れる間に、溶融金属浴5に含まれるドロスは、溶融金属浴槽4底部に沈降する。溶融金属浴槽4底部に沈降、堆積したドロスは、集合合体して金属帯品質に影響を与える大きなドロス16に成長する。下部領域5Bでは流れが緩やかなので、溶融金属浴槽4底部に堆積した大きなドロス16は、金属帯1通板速度が変化しても巻き上げられにくく、あるいは仮に巻き上げられることがあっても巻き上げられたドロス16は速やかに溶融金属浴槽4底部に沈降する。そのため、下部領域5Bの金属帯1引き込み側の領域では溶融金属浴5は清浄である。特に浴面上部側の上澄み浴は一層清浄であり、金属帯品質に影響を与える大きなドロス16が浮遊していない。
【0130】
この清浄化された溶融金属浴5の上澄み浴は、通板される金属帯1の随伴流によって、囲み部材27の金属帯1引き込み側の囲み27aの上方から上部領域5Aに流入する。金属帯1は、スナウト3から溶融金属浴5に引き込まれ、前記清浄化された溶融金属浴5を随伴しながら上部領域5A内をシンクロール6によって方向転換され溶融金属浴5から引き上げられる。金属帯1が溶融金属浴5に引き込まれ、溶融金属浴5から引き上げられるまでの間に、金属帯1通板領域に品質影響のあるドロス16がないので、溶融金属浴5から引き上げられた金属帯1表面に品質影響のあるドロス16の付着が防止される。
【0131】
囲み部材27は、シンクロール6、金属帯1との最近接間隔が50mm以上400mm以下とするように設置されることが好ましい。50mm未満であると、熱変形による金属帯1との接触や囲み部材27を設置する際に位置決めが大変になり、また400mm超になると、囲み部材27内で金属帯1の随伴流の影響が及ばなくなる領域が発生し、囲み部材27内で発生したドロスを囲み部材27外部の下部領域5Bに持ち出しにくくなってドロスが囲み部材27内部(上部領域5A内)に堆積するようになるためである。
【0132】
囲み部材27は、囲みの上端が浴面上になるように設けることができる。この場合、囲み部材27の金属帯1引き込み側の囲み27aの浴面部分または浴面に近い浴中部分に、下部領域5Bの溶融金属浴5を上部領域5Aに導入する開口部を設け、また囲み部材27の金属帯1引き上げ側の囲み27bの浴面部分または浴面に近い浴中部分に、上部領域5Aの溶融金属浴5を下部領域5Bに流出する開口部を設ける。しかし、囲み部材27が浴面上にあると、囲み部材27内の浴面に発生するトップドロスを溶融金属浴槽4外に取り出す作業が煩雑になり、またトップドロスが囲み部材27に付着し、鋼帯1の随伴流によって上部領域5Aの溶融金属浴5を下部領域5Bに流出し、下部領域5Bから清浄な溶融金属浴5を上部領域5Aに導入するという本発明の作用が低下するおそれがあるので、囲み部材27の上端は浴面より下に設けることが好ましい。囲み部材27の上端が浴面より100mm未満になると鋼帯1の随伴流によって浴面が攪拌されトップドロスの発生量を増加させるため、浴面より100mm以下にすることがさらに好ましい。
【0133】
また、上部領域5A内を通板される金属帯1の随伴流が下部領域5B内に影響を及ぼすこと、また下部領域5Bの溶融金属浴槽4の底部に堆積しているドロスを巻き上げることを防止する観点から、囲み部材27の各囲みの上端(金属帯引き込み側の囲み27aの上端、金属帯引き上げ側の囲み27bの上端および金属帯幅方向の囲み(図示なし)の上端)はシンクロール6の軸心よりも上にあることが好ましく、シンクロール6の最上部よりも上にあることがさらに好ましい。
【0134】
前記図3に示した装置に対して、前記図9に示した装置は、さらに表面に品質影響のあるドロスの金属帯1表面への付着を抑制する作用が優れるので、金属帯1通板速度を低下しなくてもすなわち生産効率を低下しなくても、ドロス付着のない高品質の溶融亜鉛めっき鋼帯を製造できる。
【0135】
前記装置において、溶融金属浴槽4内の溶融金属浴5の主要な流れは、上部領域5Aでは、金属帯1随伴流によって、金属帯1引き込み側から金属帯1引き上げ側への一方向の流になって、金属帯1引き上げ側の囲み27bから下部領域5Bに流出される。下部領域5Bでは、溶融金属浴5は、溶融金属浴槽4の鋼帯引き上げ側の側壁4aに沿って下方に流れ、さらに囲み部材27の下方及び側方を経て金属帯1引き込み側に流れ、上部領域5Aとは逆方向に向かう流れとなる。このように、上部領域5Aと下部領域5B間を溶融金属浴5は循環するが、この溶融金属浴5循環の起動力は、実質的に通板される金属帯1の随伴流によるものであり、循環のためのポンプ等の設備を必要としないので、簡易且つ安価な設備にできるという利点がある。
【0136】
なお、下部領域5Bの底部すなわち溶融金属浴槽4底部にドロスが堆積する。囲み部材27を溶融金属浴槽4外に取り外し、堆積したドロスを従来から知られている手段によって溶融金属浴槽4の外部に取り出すことができる。
【0137】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。本装置には、図13に示した従来装置に設置されているサポートロール及び図3に示した装置において設置された形状矯正装置9はいずれも設置されておらず、焼鈍炉2に、図5に示されるロール押し付けが可能な3本のロールを備える予歪付与装置21が設置されていることが特徴である。
【0138】
本装置では、サポートロール、形状矯正装置が配置されていないが、予歪付与装置21のロール24をほぼパスラインと接する位置に配置し、ロール22及び23を図6(b)で説明したようにして押し込むことで、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを低減できる。また金属帯に腰折れが発生することもない。
【0139】
図11は、本発明の第4の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。本装置においては、図10に示した装置に対して、さらに溶融金属浴槽4内に、図9に設置されたのと同様の構成の囲み部材27が設置されている点が特徴である。
【0140】
本装置では、前記図10の装置で奏される作用効果に加えて、さらにドロス付着を防止できるという作用効果が奏される。
【0141】
溶融亜鉛めっき鋼帯の素材鋼帯には、熱間圧延後脱スケール処理された熱延鋼帯、前記熱延鋼帯を冷間圧延した冷延鋼帯がある。素材鋼帯が前記の何れであっても本発明の効果が奏される。冷延鋼板を素材とする溶融亜鉛めっき鋼帯では、自動車外板用途等、良好な表面外観が要求される用途に適用されることがある。本発明は、良好な表面外観が要求される溶融亜鉛めっき鋼帯、特にプレス成形後も良好な表面外観が要求される冷間圧延鋼帯を素材とした溶融亜鉛めっき鋼帯の製造に適する。
【0142】
【実施例】
めっき原板として、常法で製造するとめっき後に常温で降伏点伸びを有する、厚さ0.75mm、幅1200mmの素材鋼帯を準備した。めっき原板の化学成分を表1に記載する。
【0143】
【表1】
【0144】
製造例1:
図9に示した溶融金属めっき鋼帯製造装置(以下、CGLともいう)を用いて、めっき原板(鋼a〜c)を、ライン速度120mpm、張力2kg/mm2、焼鈍温度850℃で焼鈍した後、予歪付与装置21で種々の条件で予歪を付与し、次いで溶融亜鉛浴(浴温;460℃)に浸漬させ、めっき浴から引き上げて、ガスワイピングノズル8により鋼帯の片面当りの付着量を45g/m2になるようにガス圧力を調整した後、冷却し、さらに調質圧延機(図示なし)で調質圧延(調圧率:1.2%)を行って、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。比較のために、一部予歪を付与しない溶融亜鉛めっき鋼帯も製造した。該溶融亜鉛めっき鋼帯(予歪付与なし且つ調質圧延なし)は、常温での引張り材料特性は、上降伏点25kg/mm2、下降伏点22kg/mm2、降伏点伸び4.3%で、引張試験によると降伏点伸びのなくなる温度(しきい温度T1)は440℃であった。
【0145】
予歪付与装置21としては、図5に示したロール本数が3本の装置に代えて、図12に示されるように、ロール本数が6本で鋼帯通板方向に千鳥配置された装置(鋼帯通板方向に対して上流側から#1〜#6ロールとする)を使用した。ロール径はいずれもφ250mm、隣り合うロール同士の鋼帯通板方向間隔(軸心距離;L1)はいずれも300mm、#6ロールとハースロール26との間隔(軸心距離;L2)は1000mmである(以下、A装置という)。また予歪付与装置下流側のハースロール径はφ1000mmである。
【0146】
3本のロールを使用する場合は、#1〜#3ロールはパスラインから退避させて開放し、#6ロールをパスライン位置に配置し、#4ロールと#5ロールを図6(b)に示すようにパスラインからずらした位置に押し込み、その押し込み量を調整した。
【0147】
5本のロールを使用する場合は、#1ロールは不使用とし、#2、#4、#6ロールの3本をパスライン位置に配置し、前記各々のロールの中間に千鳥対置された#3、#5の2本のロールをパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込んだ。
【0148】
6本のロールを使用の場合は、#2、#4、6ロールの6本をパスライン位置に配置し、前記各ロールに対して千鳥対置された#1、#3、#5の3本のロールをパスラインと略直角方向に押し込み、その押し込み量を調整した。
【0149】
また、前記A装置において、#1〜3ロールを撤去し、#4〜#6ロールにφ100mmのロールを設置し(以下、B装置という)、#6ロールをパスライン位置に配置し、#4ロールと#5ロールを図6(b)に示すようにパスラインからずらした位置に押し込み、その押し込み量を調整した。前記#4〜#6ロールは、ロール剛性の点から、各々φ400mmのバックアップロールで補強した。
【0150】
1本のロールを使用する場合は、前記A装置において、#1〜#6のロールを撤去し、#3ロールとしてφ1000mmのロール、#6ロールとしてφ100mmのロールをそれぞれ配置し(以下、C装置という)、#6ロールをパスラインを超えて押し込み、押し込み量を調整した。前記#6ロールは、ロール剛性の点からφ400mmのバックアップロールで補強した。
【0151】
シンクロール6は直径950mmで、余剰の亜鉛を払拭するために設けたガスワイピングノズル8の上方の鋼帯幅方向3箇所に静磁場によりC反り矯正を行う電磁石13を鋼帯パスラインから20mm離れた位置に設置した。この電磁石(C反り矯正装置)を用いて、ガスワイピングノズル8部でのC反り量が無くなるようにレーザー変位計で計測した鋼帯変形量に応じて電流調整を行った。亜鉛浴内に設置した囲み部材27は、シンクロール6に沿うような形状とし、鋼帯1との間隔を最小で100mmとした。一部、電磁石で形状矯正を行わない溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。
【0152】
前記で得た溶融亜鉛めっき鋼帯のうち、予歪付与を行い、電磁石を使用して反り矯正したものは、鋼帯の幅方向の付着量の偏差は約±5g/m2であった。これに対して、電磁石で形状矯正しなかったもの(条件3)は、鋼帯幅方向の付着量の偏差は約約±10g/m2であった。
【0153】
また、前記で得た溶融亜鉛めっき鋼帯の腰折れ程度を、自動車ドアパネルのプレスを模したプレス試験を行った後目視観察し、腰折れ欠陥の程度に応じて0〜5の6段階で評価した。腰折れ程度は0(発生なし)が最良で、数字が大きいほど劣位で5が最劣位である。自動車外板などの用途では評点「1」以下、自動車内板などの用途では「2」以下が望ましい。
【0154】
予歪付与条件及び腰折れ程度の評価結果を表2に記載する。また300mm角のサンプルで鋼板表面のドロス有無を確認したところ、いずれの条件でもドロスは確認されなかった。
【0155】
【表2】
【0156】
予歪付与条件が本発明範囲内にある発明例は、腰折れ程度の評点が2以下であり、腰折れ欠陥が防止され、または本発明範囲を外れる比較例に比べて、その程度が軽微である。さらに自動車ドアのプレス試験を実施したところ、評点0及び1については、CGLでの腰折れに起因する欠陥は全くみられず、評点2のものもCGLでの腰折れに起因する欠陥に起因する非常に軽微であった。
【0157】
製造例2:
前記図9の設備でから囲み部材27をとり除いた溶融金属めっき鋼帯製造装置(図3の溶融金属めっき鋼帯製造装置)で、めっき原板(鋼d)を使用し、製造例1と同様の条件で、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。予歪付与装置は、製造例1と同様の6本のロールを使用し、図6(b)に示した方法でロール22と23を押し込み、鋼帯温度が500℃で0.8%の表面塑性歪を付与した。
【0158】
このようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼帯の幅方向の付着量の偏差は約±5g/m2であり、腰折れ欠陥は認められなかった。また300mm角のサンプルで鋼板表面を観察したところ、ドロス個数は約5個であった。さらに自動車ドアのプレス試験を実施したところ、CGLでの欠陥に起因する欠陥はみられなかった。予歪付与条件及び腰折れ程度の評価結果は表2に記載した。
【0159】
製造例3(従来例):
比較のために、焼鈍炉〜スナウト部分に予歪付与装置がなく、サポートロールを有する図13に示した溶融金属めっき鋼帯製造装置で、めっき原板(鋼e)を使用し、張力2kg/mm2、焼鈍温度850℃で焼鈍した後、溶融亜鉛浴(浴温;460℃)に浸漬させ、めっき浴から引き上げて、ガスワイピングノズル8により鋼帯の片面当りの付着量を45g/m2になるようにガス圧力を調整した後、冷却し、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。製造例1と同様の条件で、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。
【0160】
このようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼帯の幅方向の付着量の偏差は約±10g/m2であり、サポートロールを使用しない場合よりは軽微であるが、許容できない腰折れが、CGLでの検査時点で鋼帯全面に認められた。また300mm角のサンプルで鋼板表面を観察したところ、ドロス個数は約5個であった。さらに自動車ドアのプレス試験を実施したところ、プレス試験後にはCGLよりはさらに悪化した状態で腰折れ欠陥が確認された。予歪付与条件及び腰折れ程度の評価結果を表2に記載した。
【0161】
上記からわかるように、製造例1の発明例、製造例2(発明例)では腰折れ欠陥は認められず、または発生しても従来例に比べて軽微であり、従来例に比べて鋼帯幅方向の付着量偏差が小さい。金属浴槽内に囲み部材を設置した製造例1の発明例では、ドロス付着がなく、特に良好な外観が得られている。製造例1の条件3に示されるように、予歪付与のみ(電磁石不使用)でも鋼帯の反り矯正効果があるため、鋼帯幅方向の付着量の偏差はサポートロールを使用した製造例3と同等である。
【0162】
【発明の効果】
本発明によれば、降伏点伸びのある金属材料でも腰折れ欠陥が発生せず、また金属板幅方向に均一な付着量を得ることが可能である。さらにロール交換時間の短縮化、サポートロール省略による、ロール交換時間の短縮、メンテナンス費用の低減の効果がある。
【0163】
また、本発明によれば、厚物金属帯であってもガスワイピングノズル部における金属帯の反りを平坦にして、金属帯幅方向に均一な付着量の溶融めっき金属帯を製造することができる。
【0164】
また、本発明によれば、ドロス付着による品質欠陥の発生を抑制する作用が優れるので、金属帯通板速度を低下しないですなわち生産効率を低下しないでドロス欠陥のない高品質の溶融めっき金属帯を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属帯幅方向反り発生機構を説明する図。
【図2】サポートロールの反り矯正機能を説明する図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図4】電磁石を用いた形状矯正装置の構成を示す図。
【図5】予歪付与装置の構成を示す図。
【図6】予歪付与装置に使用するロール配置例を説明する図。
【図7】予歪付与装置に使用するロールの別の配置例を説明する図。
【図8】シンクロール径と鋼帯C反り量の関係を示す図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図12】実施例で使用した予歪付与装置のロール配置を説明する図。
【図13】従来技術の溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
1 金属帯(鋼帯)
2 焼鈍炉
2a 予熱炉
2b 均熱炉
2c ジェット冷却炉
2d 調整冷却炉
3 スナウト
4 溶融金属浴槽
5 溶融金属浴
5A 囲み内部
5B 囲み外部
6 方向転換ロール(シンクロール)
7 サポートロール
8 ワイパ(ガスワイピングノズル)
9 形状矯正装置
10 位置センサ
11 制御器
12 増幅器
13 電磁石
14 合金化炉
16 ドロス
21 予歪付与装置
22〜24 ロール(曲げロール)
25、26 ハースロール
27 囲み部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融めっき金属帯を製造する製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯などの金属帯を連続してめっきする方法として、金属帯を亜鉛、アルミニューム等の溶融金属中に浸漬してその金属帯の表面にめっきを施す溶融めっき法が知られている。
【0003】
連続的に溶融めっき金属帯を製造する従来の装置の構成を図13に示す。図13において、1は金属帯、2は焼鈍炉、3はスナウト、4は溶融金属浴槽、5は溶融金属浴、6は方向転換ロールであるシンクロール、7はサポートロール、8はワイパであるガスワイピングノズルである。
【0004】
この装置を用いて、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する場合を例に挙げて説明する。この場合、溶融金属は亜鉛である。冷間圧延鋼帯などの鋼帯1は、無酸化性あるいは還元性の雰囲気に保たれた焼鈍炉2で表面の清浄化、酸化膜除去が行われ、また焼鈍処理をされた後、スナウト3を経て、溶融金属浴槽4内の溶融金属浴5に連続的に引き込まれ、シンクロール6に巻掛けられて通板方向を転換し、サポートロール7を通過後、溶融金属浴5から引き上げられ、溶融金属浴5上に設置したガスワイピングノズル8から高圧ガスが吹き付けられることにより、鋼帯1表面に余剰に付着した溶融亜鉛が払拭されて所定のめっき付着量に調整されて溶融亜鉛めっき鋼帯が製造される。
【0005】
サポートロール7は、ガスワイピングノズル8部における鋼帯1の幅方向反り(C反り)を矯正し、鋼帯1幅方向の付着量ばらつきを少なくするために設置されている。サポートロール7は、鋼帯1を挟む両側に1本ずつ設置し、各サポートロール7a、7bの高さ方向位置をずらして配置する。そして上方に配置したサポートロール7aをパスラインに接するように配置し、下方に設置したサポートロール7bを鋼帯1側に押し込み、鋼帯1に適量の変形を付与することによって、鋼帯1のC反りを矯正する。
【0006】
しかし、サポートロール7a、7bによって鋼帯1のC反りを矯正すると以下の問題点がある。すなわち、サポートロール7a、7bは、溶融金属浴槽4側方の溶融金属浴面より高い位置に設置したモータ(図示なし)によってスピンドル(図示なし)を介して駆動されるため、モータ回転は等速であっても、サポートロール7a、7bは等速回転しない。その結果、サポートロール7a、7bの回転速度は、鋼帯速度と一致しないだけでなく、等速回転できないことによって、鋼帯1にチャターマーク状の付着量むらや後記するドロスがロール表面に付着すること等によって擦り疵が発生し、品質上の問題になることがある。
【0007】
サポートロール7a、7bを回転駆動することによって発生する前記問題点を解決するためにサポートロール7a、7bをアイドル化(非駆動化)することも考えられる。この場合、サポートロール7a、7bの回転を確保するために、サポートロール7bの押し込み量を増加する必要がある。しかし、サポートロール7bの押込み量を増加することによって、浴面を出たところ(ガスワイピングノズル8部)における鋼帯1のC反りを適正に矯正することができなくなるため、鋼帯1幅方向の付着量のばらつきが大きくなるという問題がある。
【0008】
また、図13に示した装置を用いて溶融亜鉛めっき鋼帯を製造すると、鋼帯1から溶出した鉄(Fe)とめっき成分との金属間化合物であるドロス(いわゆるボトムドロス)16が発生し、このドロス16は溶融金属浴槽4底部に堆積し、堆積したドロス16が巻き上げられて溶融金属浴5中を浮遊する。このドロス16が鋼帯1に付着すると鋼帯1の表面品質を低下させ、プレス時等に欠陥を発生させるという問題がある。鋼帯通板速度を低下することで鋼帯1へのドロス付着が低減されるが、生産効率が低下するという問題がある。
【0009】
以下に、先行技術文献情報について記載する。なお、特許文献1〜3については、説明の都合上、[発明の実施の形態]の項目において説明する。
【0010】
また、出願時に未公開である先行出願にについて、[課題を解決するための手段]の項目において説明するが、その出願番号をここに記載する。すなわち、特願2001−395253(未公開出願1)及び特願2001−396575(未公開出願2)である。
【0011】
【特許文献1】
特公平7−94704号公報(第1−3頁、第1図)
【0012】
【特許文献2】
特開平10−130801号公報(第1−4頁、図1)
【0013】
【特許文献3】
特開2000−204460号公報(第2頁、図1)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、浴中のサポートロールに起因するチャターマーク状の付着量むらや擦り疵の発生を防止でき、またガスワイピング部における金属帯の幅方向反りを防止して金属帯幅方向の付着量ばらつきを低減できる溶融めっき金属帯の製造方法および製造装置を提供することにある。
【0015】
本発明の第2の目的は、生産効率を低下させずに金属帯へのドロス欠陥の発生を防止できる溶融めっき金属帯の製造方法および製造装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解消する新しい溶融めっき金属帯製造方法を開発するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、その結果、浴中サポートロールを取り外し、浴中サポートロールの金属帯の幅方向の反り(C反り)を矯正する機能を代替する手段として、ワイパーの直前または直後で前記金属帯の磁力により非接触で矯正する形状矯正工程(手段)を設けることで、前記問題点が解消されること、また溶融金属浴内に、引き込まれた金属帯を囲むように形成された囲み部材を設けて、前記溶融金属浴内を溶融金属の流動可能な状態で上部領域と下部領域に分割し、前記金属帯を前記上部領域で方向転換ロールにより方向転換して溶融金属浴外に引き上げることで、ドロス欠陥の発生を防止する効果がより優れることを見出し、先に、未公開出願1及び未公開出願2で溶融めっき金属帯の製造方法及び製造装置の発明を提案した。
【0017】
しかし、前記未公開出願1及び未公開出願2で提案された発明では、サポートロールを取り外したことに起因して、降伏点伸びを有する金属材料では、腰折れと呼ばれる表面欠陥が発生しやすくなることが明らかになった。本発明者らは、腰折れの発生を防止すべく、さらに検討を進めた結果、金属帯を焼鈍した後溶融金属浴中に引き込む前に、該金属帯に塑性歪を付与することによって腰折れの発生を防止できること、さらに前記塑性歪を付与することで、ガスワイピングノズル部における金属帯の幅方向反りが防止され、前記磁力により非接触で矯正する形状矯正を行わなくてもガスワイピングノズル部における反りを従来技術と同等にできることを見出し、本発明に至った。
【0018】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、
前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程と
を有することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【0019】
(2)金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と
を有することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【0020】
(3)前記予歪付与工程は、焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で、金属帯温度が450℃以上650℃以下の温度域で金属帯に曲げ塑性歪を付与することを特徴とする(1)または(2)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0021】
(4)前記曲げ塑性歪はロールを用いて付与するとともに、その時の金属帯の表面塑性歪量は0.1%超1.5%以下とすることを特徴とする(3)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0022】
(5)前記曲げ塑性歪の付与に用いるロールは、径がφ800mm以下で本数は5本以下であることを特徴とする(4)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0023】
(6) 前記曲げ塑性歪の付与に用いるロール本数が2本以上あるときに、前記曲げ塑性歪みは、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールで付与される表面塑性歪量が前記最終ロールの上流側ロールで付与される表面塑性歪量より小さくなるように付与されることを特徴とする(5)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0024】
(7)前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれ、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする(5)または(6)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0025】
(8)前記入側ロールのパスラインからの押し込み量と前記中間ロールのパスラインからの押し込み量は略同一であることを特徴とする(7)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0026】
(9)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(5)〜(8)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0027】
(10)前記最終ロールのロール径は、前記入側ロール及び前記中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(7)〜(9)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0028】
(11)前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(5)または(6)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0029】
(12)前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする(11)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0030】
(13)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(11)または(12)に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0031】
(14)前記溶融金属浴は、前記溶融金属浴内に引き込まれた前記金属帯を囲むように形成された囲み部材により、前記溶融金属浴内が溶融金属の流動可能な状態で上部領域と下部領域に分割されていることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【0032】
(15)金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
前記金属帯を焼鈍した後溶融金属浴中に引き込む前に、前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置を有し、かつ方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパと、
前記ワイパの直前または直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。
【0033】
(16)金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
前記金属帯を焼鈍した後溶融金属浴中に引き込む前に、前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置を有し、かつ方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパとを備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。
【0034】
(17)前記方向転換装置は方向転換ロールであり、前記方向転換ロールは外径がφ850mm以上であることを特徴とする(15)または(16)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0035】
(18)前記方向転換ロールは、前記方向転換ロール最上部と溶融金属浴面との間隔が50mm以上400mm以下となるように配置されることを特徴とする(15)〜(17)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0036】
(19)前記予歪付与手段は、最大金属帯温度到達地点より下流側で金属帯温度が450℃以上650℃以下となる焼鈍炉部分、または、金属帯温度が450℃以上650℃以下となるスナウト部分に設けられることを特徴とする(15)〜(18)のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0037】
(20)前記予歪付与手段は、金属帯を曲げ変形させるロールであることを特徴とする(15)〜(19)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0038】
(21)前記予歪付与手段は、φ800mm以下のロールが5本以下配置されることを特徴とする(15)〜(20)のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0039】
(22)前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールとは反対側のパスラインからずらした位置に配置され、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側のパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする(15)〜(21)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0040】
(23)前記中間ロールは、前記金属帯の方前記向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする(22)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0041】
(24)前記最終ロールのロール径は、前記最終ロールの金属帯通板方向上流側に配置される前記φ800mm以下のロールのロール径より大きいことを特徴とする(22)または(23)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0042】
(25)前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする(15)〜(21)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0043】
(26)前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側のパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする(25)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0044】
(27)前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールに接触する面側に配置されていることを特徴とする(25)または(26)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0045】
(28)前記溶融金属浴槽には、前記溶融金属浴内に引き込まれた前記金属帯を囲むように形成された囲み部材が配置され、該囲み部材により、前記溶融金属浴内が溶融金属の流動可能な状態で上部領域と下部領域に分割されていることを特徴とする(15)〜(27)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0046】
(29)前記囲み部材は、前記上部領域で発生したドロスを含む溶融金属浴が、前記囲み部材の金属帯の溶融金属浴外への引き上げ側から前記下部領域に流出され、前記下部領域で、溶融金属浴に含まれるドロスが沈降除去されて溶融金属浴が清浄化され、清浄化された溶融金属浴が、前記囲み部材の金属帯の溶融金属浴への引き込み側から前記上部領域に導入されるように構成されることを特徴とする(28)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0047】
(30)前記囲み部材は、溶融金属浴面下に設けられることを特徴とする(28)または(29)に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0048】
(31)前記囲み部材は、前記囲み部材と前記金属帯との最近接距離が50mm以上400mm以下となるように配置されることを特徴とする(28)〜(30)のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に至った経緯とともに、本発明について詳しく説明する。
【0050】
本発明者らは本発明の課題を解消する新しい溶融めっき金属帯の製造方法を開発するため、先ず浴中のサポートロール7に着目した。サポートロール7の主な機能は金属帯幅方向反り矯正機能である。
【0051】
図1は、金属帯1幅方向反り発生機構を説明する図である。金属帯幅方向反りは主にシンクロール6において金属帯1が曲げと曲げ戻しを受けることによって発生すると考えられる。シンクロール6に巻きついて接触している位置Aでは、平面ひずみ変形となり、金属帯1に発生する応力は、金属帯通板方向および金属帯幅方向ともに、シンクロール6と接触している側に圧縮応力、その反対側に引張応力となり、金属帯幅方向反りの基本となる応力分布になる。シンクロール6に近く、比較的曲率半径の大きな位置Bにおいても、ほぼ平面歪状態が保たれ、位置Aにおいて塑性変形をしているために、位置Aとは逆の応力分布、すなわちシンクロール6と接触している側に引張応力、その反対側に圧縮応力となる。曲率半径がほぼ0の位置Cにおいては、面内変形に対する拘束はなく、基本的には位置Aで受けた変形が存在しやすい形状、すなわち金属帯幅方向に上に凸の状態となると考えられる。
【0052】
このようにして金属帯1に反りが発生した場合、ガスワイピングノズル8部において、金属帯1とガスワイピングノズル8と間隔が幅方向で一定でなくなる結果、金属帯1幅方向に付着量のばらつきが生ずることになる。
【0053】
また、金属帯1に反りが発生している場合は、金属帯1とガスワイピングノズル8との接触を避けるために、金属帯1とガスワイピングノズル8の間隔を狭めることが制限される。この結果、所望の溶融金属払拭能力を確保するためにはガスワイピングノズル8のガス圧力を高めなければならず、これが時としてガスワイピング時に激しく飛び散った溶融金属が金属帯1に付着することにより発生するスプラッシュと呼ばれる欠陥の原因となることが知られている。
【0054】
そこで、浴中のサポートロール7を用いてシンクロール6で発生した反りを矯正する。
【0055】
図2は、図13に示した装置におけるサポートロール7の反り矯正機能を説明する図である。シンクロール6によって金属帯1は鉛直方向に方向転換されて通板される。サポートロール7aはパスライン上で金属帯1と接する位置に設けられ、サポートロール7aに対して所定距離だけ下方に配置されたサポートロール7bはこのパスラインに対して所定量Lだけ金属帯1を押し込む位置に配置される。
【0056】
前述のように金属帯1はシンクロール6による曲げと曲げ戻しに起因する反りが発生しているが、サポートロール7bを用いて押し込み量Lを適切に調整することで、金属帯1に逆方向の曲げを加えて反りを矯正するものである。
【0057】
このように浴中のサポートロール7は主に金属帯1幅方向の反り矯正のために、数十年の長きに渡って使用された設備であって、前記したように金属帯1にチャターマーク状の付着量むらや擦り疵を発生するという問題に加えて、さらにサポートロール7の定期的な手入れや交換のために設備停止が必要となり、操業効率を低下させてしまうという問題がある。
【0058】
これらの問題は浴中にサポートロール7がなければ発生しないものであるため、本発明者らは溶融めっき金属帯製造プロセスからサポートロール7を取り外すことを検討した。
【0059】
先ず、浴中のサポートロール7を取り外すことによる金属帯品質への悪影響がないかどうかを検証した。これは、製造現場においては、サポートロール7には前述の機能の他に、溶融金属浴5中のドロスなどの異物を金属帯1に付着しにくくする異物除去機能があるため、サポートロール7を除去することにより金属帯1の欠陥発生を増加させることになるとの通説があるためである。
【0060】
この検証は溶融金属浴5を模擬する実験装置を製作し、その中の流れの挙動を観察することで行った。実験装置は、溶融金属の代わりに水を用い、その中にシンクロール6とサポートロール7を模したロールを配置し、さらに金属帯1を模したエンドレスベルトを配して構成し、実際の溶融金属浴中のロール周りとレイノズル数やフルード数が同等になるようにロール径やロール回転数を設定して、流体力学的に溶融金属浴中の挙動を模擬できるようにした。流れを観察するためのトレーサとしてアルミ粉を添加して実験を行った。
【0061】
その結果、サポートロール7を模したロールにはベルトに付着した異物(アルミ粉)を剥がすような作用は観察されず、サポートロール7を模したロールは異物を押し付けるだけであった。この結果より、浴中のサポートロール7には通説で言われているような異物除去機能はなく、サポートロール7を除去してもそのことによって欠陥の発生が増加することはないものと判断した。また、実ラインで図13に示した溶融めっき金属帯製造設備を用いてサポートロール7を使用しないで亜鉛めっき鋼帯を製造したところ、これによって亜鉛めっき鋼帯のドロス欠陥が増加しないことが確認された。
【0062】
従って、サポートロール7を外すには金属帯1の幅方向の反り矯正機能が代替できれば良いことになる。
【0063】
溶融めっき金属帯を対象とする場合は、反り矯正を行う手段は非接触式であることが望ましく、制御性の点から電磁石などの磁力を用いて金属帯の形状矯正を行うのが好適である。サポートロール7を取り外し、代わりに電磁石などの磁力を用いて金属帯1の形状矯正(C反り矯正)することによって、サポートロール7使用によって発生する前記問題点を全て解消できることが確認された。
【0064】
しかし、サポートロール7を取り外したことによって、降伏点伸びを有する金属材料では腰折れと呼ばれる表面欠陥が顕著に現れるという問題が新たに生じた。この欠陥は調質圧延により目立たなくすることが可能であるが、需要家でのプレス成形等で再び顕在化することがあるため、用途によっては製品の歩留りが大きく低下する。
【0065】
そこで、降伏点伸びを有する溶融亜鉛めっき鋼帯において発生する腰折れの原因及びその防止策について調査検討した。鋼帯は、連続溶融めっき金属帯製造装置内を通板される際、種々の温度域でロールにより曲げ加工を受け、強い応力が加わる。その応力の大きさが降伏応力を超えた時に、曲げ部が局所的に降伏し、腰折れとなる。
【0066】
本発明者らは、曲げ加工による材料試験、および実機における試験を行った。その結果、ある温度T1を境にして、それ以上の温度域では腰折れは発生しないことが判明した(以下、前記ある温度T1をしきい温度T1という。)。つまり、腰折れは、鋼帯温度がしきい温度T1より低い温度域で発生し、鋼帯温度がしきい温度T1以上になると腰折れが発生しないことを突き止めた。常温で降伏点伸びがある鋼帯であっても、鋼帯温度がある一定温度以上になると降伏点伸びがなくなる。前記しきい温度T1は鋼帯の降伏点帯がなくなる温度であることがわかった。しきい温度T1以上で、鋼帯に腰折れが発生しないのは、この温度域では、鋼帯に降伏点伸びがないため、降伏点を超えた応力でも局所的な歪集中が発生しないためと考えられる。
【0067】
一般に、常温では、鋼帯に予め歪を加えておけば、次加工で腰折れが発生しにくくなることが知られているが、本発明者らは、鋼帯にしきい温度T1以上で予歪を付与した場合でも、この予歪付与効果が発現されること、すなわち、鋼帯温度がしきい温度T1以上にあるときに鋼帯に予歪を付与すると、その後、鋼帯がしきい温度T1より低い温度でロールで曲げ加工されても腰折れが発生しないことを新規に見出した。また、その温度が高すぎると予歪付与効果は減少し、650℃超になると前記効果がほとんど認められなくなることが明らかになった。しきい温度T1は鋼種等によって異なり、該しきい温度T1は鋼帯温度を変えて引張試験を行い、降伏点伸びがなくなる鋼帯温度から決定される。
【0068】
腰折れはめっき浴から引き上げられた以後の曲げロールによってのみ発生することが判明した。めっき浴温は通常450〜480℃である。したがって、連続溶融めっき金属帯製造装置では、鋼帯温度がしきい温度T1になる位置は焼鈍炉〜めっき浴の間に存在すると考えられ、また450℃以上で鋼帯に予歪を付与することで腰折れの発生を防止できる。
【0069】
また、導入する歪量は、表面塑性歪で0.1%超必要であるが、1.5%超になるとその効果は頭打ちとなることが明らかになった。また前記塑性歪量は1回で付与する必要は無く、表面塑性歪が0.1%超〜1.5%の範囲になるように、前記温度域で、複数回に分けて付与しても良いことが判明した。ここで、歪量=弾性歪+塑性歪であり、弾性歪は、σ/E(σ;材料の降伏応力、E;ヤング率)で表される。
【0070】
腰折れ欠陥を発生させる応力は、ロールによる曲げ応力であるため、表面近傍が最も大きい。このことから、腰折れ欠陥を防止するには、最も強い応力が加わると考えられる表面近傍への対策が有効である。係る観点からは、曲げロールにより予歪を付与する方法が考えられる。試験の結果、曲げロールにより予歪を付与する場合、ロール本数は1本でも効果が認められ、ロール本数が6本以上では塑性歪量を上昇させてもほとんど効果の上昇が認められないことが判明した。
【0071】
なお、特許文献1〜3には、焼鈍炉で鋼帯にロール曲げ加工することが記載されている。
【0072】
特許文献1は、外径50mm以上500mm以下のロールで曲げ加工してから鋼帯を焼鈍することで結晶粒径を整え、亜鉛めっき浴中での固液反応及びそれに続くFe−Zn合金化反応を均一に進ませ、合金化処理で発生する表面凹凸欠陥を防止する。本件発明と課題、構成が異なる。
【0073】
特許文献2は、曲げ半径300mm以下で曲げ、曲げ戻し加工を施し、鋼帯表面に残留歪を付与することで鋼板とめっき界面での拡散反応を均一化する。これによって、Si、P、Mn等が添加されている鋼帯において添加元素の不均一分布に起因する初期合金化むらを防止し、また熱延鋼帯において表面粗度が大きいことに起因する初期合金化むらを防止し、もってめっきの光沢むら、光沢度低下及び合金化反応むらを防止する。本件発明と課題が異なる。
【0074】
特許文献3は、帯板を非酸化雰囲気の通板室から溶融金属のめっき浴中に通板してめっきする装置の前記通板室内に、パスライン内の2点を支点として帯板を通板位置の向こう側に押し込み可能な押し込みロールを設けて、帯板の反りを矯正する。
【0075】
前記特許文献1〜3では、腰折れを防止することは考慮されていない。
【0076】
なお、サポートロール7を用いて鋼帯1の形状矯正を行う従来技術において、鋼帯1に腰折れが発生しなかったのは、サポートロール7で鋼帯1を押し込むことで、鋼帯表面に塑性歪が付与されていたためと考えられる。
【0077】
本発明は、前記知見に基づくものである。
【0078】
以下、本発明の実施の形態についてさらに説明する。尚、以下に説明する各実施の形態では金属帯の1具体例として鋼帯を念頭においている。また溶融めっき鋼帯は亜鉛めっき鋼帯であり、溶融金属は亜鉛である。
【0079】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。図3において、焼鈍炉2は、直火加熱炉2a、均熱炉2b、冷却炉であるジェット冷却炉2c及び調整冷却炉2dを備える。本装置においては、図13に示した従来の装置で浴中に使用されていたサポートロール7は存在せず、その代わりにガスワイピングノズル8の直後に電磁石を用いた非接触で金属帯の形状を矯正する形状矯正装置9が設けられている点、及び焼鈍炉2に予歪付与装置21が設置されている点が特徴である。
【0080】
形状矯正装置9について説明する。形状矯正装置9はガスワイピングノズル8の直後に設置されている。ここでガスワイピングノズル8の直後とは、ガスワイピングノズル8に近ければより良い制御が行えることを意味している。実ラインでガスワイピングノズル8の上方に、めっき皮膜の合金化処理を行う合金化炉、スパングルを調整するスパングル調整装置などが設けられ、また前記装置の前に金属帯1の振動を抑制するタッチロールが設けられる場合もある。この場合、形状矯正装置9は、前記装置までの間に設置すれば良い。
【0081】
図4は、図3の装置に設置される電磁石を用いた非接触で金属帯の形状を矯正する形状矯正装置9の構成を示す図である。
【0082】
本形状矯正装置9は、図中上方に移動する金属帯1の表面までの距離を測定する位置センサ10、この位置センサ10からの信号を受けて制御信号を出力する制御器11、制御信号を増幅する増幅器12及び増幅された制御信号によって金属帯に吸引力を及ぼして金属帯の形状を変化させる電磁石13で構成されている。
【0083】
そして、電磁石13は金属帯1の幅方向に複数台数設けられ、さらに金属帯1の表裏に対になって配置されている。電磁石13は金属帯1に対しては一方向の吸引力を及ぼすものであるため、金属帯1の表裏に配置することで金属帯1の吸引方向を選択して金属帯1の反りを矯正できるように構成されている。
【0084】
通常、金属帯1の幅方向の反り形状は図1で示すように、断面がC形になることが多いため、電磁石13は金属帯幅方向3ヶ所(両エッジ、中央)に配置すれば良い。また、各3ヶ所の位置センサ10相互間、電磁石13相互間での干渉はそれほど大きくないことが多いため、相互の干渉を補償せずに、3ヶ所それぞれ独立の制御系で構成しても良い。
【0085】
本装置を用いて、金属帯1の表面までの距離を測定する位置センサ10からの信号に基いて、制御器11で金属帯1の表裏に配置されている電磁石13の吸引力を制御し、金属帯1の反りを矯正する。これによって溶融金属浴5引き上げ部の金属帯1の反りを平坦にできる。
【0086】
本装置では、形状矯正装置9をガスワイピングノズル8の直後に配置する構成に代えて、形状矯正装置9をガスワイピングノズル8の直前に配置する構成にしてもよい。ここで直前とは、ガスワイピングノズル8に近ければより良い制御が行えることを意味しているが、実ラインでは溶融金属浴5からガスワイピングノズル8までの間に設置すれば良い。このような構成にしても前記と同様の効果を奏することができる。
【0087】
次に、予歪付与装置21について説明する。
【0088】
予歪付与装置は、金属帯温度が450℃以上650℃以下となる部分に設ける。温度が450℃より低い金属帯に予歪を付与すると、予歪付与時に金属帯に腰折れが発生し、腰折れを防止する効果が奏されないおそれがある。また温度が650℃超の金属帯に予歪を付与すると、予歪付与効果が認められなくなり、金属帯が金属浴から引き上げられた後で腰折れが発生する。
【0089】
腰折れの発生を防止するには、予歪を付与する金属帯温度は500以上550℃以下がより好ましい。これは次の理由による。すなわち、しきい温度T1は材料(例えば鋼種等)によって異なる。通常、予歪付与温度が550℃を超えると付与した塑性歪が抜け出しやすくなり、予歪付与効果が小さくなる。またしきい温度T1は通常550℃以下である。また、めっき浴温は通常450〜480℃であるので、予歪付与温度を500℃より低い温度で行うと溶融金属浴に浸漬される鋼帯温度が低くなって熱的に不利である。また実用面で腰折れの発生が特に問題になっている焼き付け硬化型では、しきい温度T1が450℃程度であるため、操業条件の変動等を考慮して500℃以上で予歪を付与することがより有利である。
【0090】
腰折れを防止するだけでよければ、溶融金属浴から引き上げられたに予歪付与装置を設けることや、溶融金属浴槽内に予歪付与装置を設けることも可能であるが、溶融金属浴から引き上げられたあとで予歪を付与するとめっき層の剥離や押し疵発生等の問題があり、また溶融金属浴槽4内で予歪を付与すると、溶融金属浴槽内に前記装置を設けると、サポートロールを用いた場合と同様の問題がある。したがって、予歪付与装置は、溶融金属浴より上流側に設けられる。
【0091】
予歪付与装置は、最大金属帯温度到達地点より下流側に設ける。本発明は、これに限定されるものではないが、一例を挙げると、めっき原板である鋼帯は、焼鈍炉の均熱炉2bで最大到達温度650〜900℃程度に加熱されて焼鈍され、冷却炉(ジェット冷却炉2c及び調整冷却炉2d)で冷却された後、450〜480℃程度に保持された溶融金属浴に引き込まれる。予歪付与装置を最大金属帯温度到達地点より上流側に設けると、その後前記温度に加熱されることで、予歪付与効果が消失し、腰折れの発生を防止することができなくなる。
【0092】
予歪付与装置では、塑性歪を表面塑性歪で0.1%超〜1.5%付与する。表面塑性歪が0.1%以下では、予歪付与効果が不十分になり、腰折れが発生する。1.5%超では、前記効果が飽和し、逆に設備費が高くなる、金属帯の材質を劣化させる場合がある等の問題がある。表面塑性歪は0.3%以上付与されることがより好ましい。前記塑性歪量(0.1%超〜1.5%)は1回で付与してもよく、複数回に分けて付与しても良い。
【0093】
付与される表面塑性歪が0.1%超1.5%以下であれば、予歪付与手段は限定されない。表面塑性歪が複数回に分けて付与される場合、本発明で規定する表面塑性歪は各々の歪付与で金属帯表面に付与される塑性歪量の和である。すなわち、i回目で付与される表面塑性歪量をεiとしたときに、本発明で規定する表面塑性歪εは、ε=Σεiで定義される。圧縮歪、引張歪のいずれであってもその和として算出される。引張り、圧縮に関わらずその和であるのは、この腰折れ防止メカニズムが圧縮、引張りには無関係の転移に起因しているためと推定される。
【0094】
表面に塑性歪を効率よく付与する観点からはロールで曲げ加工するのが有利である。ロールで曲げ加工する場合、少なくとも一本のロールで付与される金属帯の曲率半径が400mm以下となるようにロール径を選択し、該ロールの押し込み量を調整して金属帯を曲げ加工することが好ましい。金属帯を曲率半径400mm以下で曲げるには、ロール径がφ800mm以下のロールを用いる必要があり、ロール本数は1本以上であればよい。例えばφ800mmのロール(大径ロール)で金属帯が該ロールに十分巻きつくように押込み量を調整する方法やロール径がφ400mmのロールで押込み量を調整する方法を例示できる。但し、ロールの押し込み量は金属帯材質、厚さ等で異なる。付与する表面塑性歪量を大きくするには、ロールの押し込み量を大きくすることや小径ロールを使用することがよい。曲げロールのロール径は、φ400mm以下の小径ロールが好ましい。なお、縦型焼鈍炉ではハースロール径は通常φ800mm以上、特殊の専用炉にあってもφ500mm超、一般にはφ600mm超であり、またシンクロール径は通常φ750mm程度である。
【0095】
同じ表面塑性歪量を付与するのであれば、ロール本数は、1本の方が、歪付与効果が高い。ロール本数を6本以上にして分割して歪を付与しても予歪付与効果は向上せず、逆に設備費、設備保守等の点で不利になる。したがって、ロール本数は1〜5本が好ましい。ロール本数が1本の場合、導入できる表面塑性歪量をあまり大きくできないので、実設備ではロール本数は2〜3本とすることがより好ましい。2本以上のロールを使用する場合、ロール径は異なっていてもよい。
【0096】
前記した理由から、予歪付与装置は、450℃以上650℃以下の焼鈍炉2部分または450℃以上650℃以下のスナウト3部分に設ける必要がある。焼鈍炉2の調整冷却炉2dでは金属帯温度を450℃以上〜650℃、特に500〜550℃程度に調整しやすいので、予歪付与装置は焼鈍炉2の調整冷却炉2d部分に設けることが好ましい。
【0097】
図3の装置では、予歪付与装置21は、焼鈍炉2の調整冷却炉2dの最終パスに設置されている。図5は、図3の装置に設置されている予歪付与装置21の構成例を示す概略図で、3本のロール(曲げロール)が配置されている例である。すなわち、予歪付与装置21は、金属帯1通板方向(上下方向)位置をずらし、金属帯1の両側に千鳥配置された3本のロール22〜24で構成されている。前記ロール22〜24はそれぞれ独立にパスラインと略直角方向に移動自在に構成されている。25、26はハースロールである。
【0098】
図5の装置を用い、ロール22〜24のうちの少なくとも1本以上をパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込むことで金属帯の表面に塑性歪を付与する。一例を挙げると、図6(a)に示すように、ロール22及び24をパスラインにほぼ接するように配置し、ロール23をパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込むことで、金属帯1を曲げ加工してその表面に塑性歪を導入する。あるいは、図6(b)に示すように、ロール24をパスラインにほぼ接するように配置し、ロール22と23をそれぞれパスラインと直角方向に互いに異なる方向、すなわちロール23はロール22側に押し込み、ロール22はロール23とは反対方向に、各々パスラインを超えて押し込むことで、金属帯1を曲げ加工してその表面に塑性歪を導入する。図6(a)及び(b)では、ロール23は、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置されている。なお、本明細書において、「ロールがパスライン位置にある」とは、ロールがパスラインに接する位置にあることを意味している。また、「ロールをパスラインからずらした位置に配置」とは、ロールがパスラインに接する位置からずれていることを意味している。
【0099】
図6(c)、(d)に示すように、金属帯1に対する各々のロール配置は、前記(a)、(b)と逆の配置であってもよい。
【0100】
導入される表面塑性歪量は、金属帯の曲げ曲率で決定され、曲げ曲率は、隣り合うロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径とその押込み量(パスラインを超える押し込み量)を制御することで制御できる。なお、鋼種等の金属帯材質、板厚、温度等の操業変数、隣り合うロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径、ロールの押し込み量等と、表面塑性歪量の関係を予め求めて、対応表を作成しておき、この対応表に基き、操業変数値に応じて、前記各場合におけるロールの押し込み量を設定する。
【0101】
図5に示した装置は、3本の曲げロールが配置されている例であるが、ロール本数は3本に限定されず、1〜5本の範囲内とすることが好ましい。ロールが1本の場合、曲げ歪付与効果を高める観点から、該ロールはハースロール26に近接配置することが好ましい。
【0102】
本発明者等は、図5に示した予歪付与装置21を用いて、金属帯1に予歪を付与したときに、前記各ロール22〜24の配置条件およびその押し込み条件を変化させると、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反り量が変化することを見出した。例えば、図6(a)や(c)のようにしてロール23を押し込むと、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りが大きくなり、そのため、金属帯1の形状を制御する形状矯正装置9の出力(電磁石13の出力)を増加させることが必要になった。また、図6(b)や(d)のようにしてロール22及び23を押し込むと、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りが小さくなり、前記形状矯正装置9の出力を低減することが可能になった。
【0103】
ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを小さくするには、金属帯通板方向最終ロールで付与される歪み量を小さくすることが有効である。係る観点から、3本のロールを使用する場合、図6(b)及び(d)に示されるように、金属帯通板方向最終ロールであるロール24は略パスライン位置(パスラインに接する位置またはその近傍位置)、中間ロール(ロール24の上流側ロール)であるロール23は、パスラインを超えて前記ロール24側に押し込まれた位置、入側ロール(ロール23の上流側ロール)であるロール22は、パスラインを超えて前記ロール23側に押し込まれた位置に配置することが好ましい。
【0104】
前記において、ロール22のパスラインからの押し込み量(d1)、ロール23のパスラインからの押し込み量(d2)を略同一にすると、前記形状矯正装置9を使用しなくても、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反りを従来技術と同等レベルに平坦化できるので、より好ましい。この場合、中間ロールであるロール23は、図6(b)のように、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置される方が、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反りを平坦にする作用がより優れるので、さらに好ましい。最終ロールで付与される歪量としては、例えば、金属帯に付与される塑性歪(各ロールで付与される塑性歪の和)が0.5%程度であるある場合、最終ロールで付与される塑性歪を0.1%程度とする例を例示できる。前記ロール配置の一例を挙げると、ロール22〜24の径をφ250mm、ロール同士の間隔を300mmとし、ロール24をパスライン位置に配置し、ロール22と23をパスラインから50mm押し込む例を例示できる。但し、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0105】
前記によってガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反り量を低減できる理由は明らかでないが、前記のようにして予歪を付与することで、予歪付与装置出側での金属帯1のC反りが少なくなることに加えて、金属帯1表面に塑性歪みが付与されたことで、ガスワイピングノズル8部における金属帯1の反り変形を抑制する作用があるためではないかと考えられる。また、中間ロールが金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置された場合、予歪付与装置出側で金属帯1に付与されたC反りがシンクロールに起因してガスワイピングノズル8部で発生する金属帯1のC反りを打ち消すように作用するためと考えられる。
【0106】
最終ロールで付与される歪量を小さくするには、前記ロール押し込みと組み合わせて、あるいは前記ロール押し込み方に代えて、最終ロールのロール径を該ロールの上流側に配置される曲げロールのロール径より大きくするようにしてもよい。例えば図5において、最終ロールのロール径を入側ロール、中間ロールの各ロール径より大きくすることが有効である。
【0107】
図5において、最終ロールのロール径を大きくした場合、各ロールのロール配置(押し込み方法)は、図6(a)及び(d)のように、入側ロールと最終ロールをパスライン位置に配置し、中間ロールをパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込む配置であってもよい。この場合も、中間ロール23が図6(a)のように、金属帯1のシンクロール6と接触する面側に配置されることが、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを低減する上でより好ましい。このロール配置の一例を挙げると、ロール22とロール23のロール径を150mm、ロール24のロール径を400mmとし、ロール22と24をパスライン位置に配置し、ロール23のパスラインからの押し込み量を100mmとする例を例示できる。但し、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0108】
また、前記と組み合わせ、あるいは前記に代えて、入側ロールと中間ロールの間隔(鋼帯通板方向間隔)よりも、中間ロールと最終ロールの間隔を大きくするようにロールを配置してもよい。
【0109】
曲げロールを2本使用するときは、前記最終ロール24に代えて、ハースロール26を使用できるようなロール配置にすることが好ましい。また、曲げロールを4〜5本使用するときは、最終ロールで付与される塑性歪を小さくする観点から、最終ロールはパスライン位置に配置されることが好ましい。
【0110】
但し、最終ロールで付与される歪は、最終ロールとその上流側のロールの相対的な位置関係で決まるものであるから、最終ロールの上流側ロールの押し込み量が大きい場合は、最終ロールのパスラインに対する位置をパスラインからずらす場合もある。したがって、最終ロールの位置はパスライン位置に限定される訳ではない。
【0111】
例えば、図7において、ロール22〜24のパスラインに対する押し込み位置が各々x1〜x3(パスライン位置が「0」、右側への移動量は「+」、左側への移動量は「−」である。)であり、ロール22の押し込み量(|x1|)を小さく、ロール23の押し込み量(|x2|)を大きくした場合、最終ロールで付与される歪は、最終ロール24と中間ロール23の相対的な位置関係(|x2−x3|)で決まるので、ロール24は、パスラインより左側に移動させるように配置する方が好ましい。
【0112】
ガスワイピングノズル部でのC反りを防止するには、金属帯表面に前記で説明したような表面塑性歪みが付与されることが必要である。ロールの押し込み量を、次のようにして決定する。鋼種等の金属帯材質、板厚、温度等の操業変数、各々のロール同士の金属帯通板方向間隔、ロール径、ロールの押し込み量等と、表面塑性歪量の関係に加えて、さらに前記操業変数とガスワイピングノズル部における反り量の関係を予め求めて、前記操業変数と、所定表面塑性歪量の付与とC反り防止効果を両立できるロールの押し込み量の対応表を作成しておき、この対応表に基き、操業変数値に応じて、ロールの押し込み量を設定することで、腰折れを防止できるだけでなく、ガスワイピングノズル部におけるC反り発生を防止できる。シンクロール径を大径化する場合(後記)、このロールについて前記の対応表を作成する。
【0113】
前記したように、特許文献3には、押し込みロールを設けて帯板の反りを矯正することが記載されている。しかし、特許文献3では、サポートロールを備えるので、本発明の課題であるサポートロールに起因する諸問題点を解決することは考慮されていない。また、特許文献3では、サポートロールと押し込みロールを併用することで帯板の反りを矯正するものであって、サポートロールを使用しないで、押し込みロールだけで帯板の反りを矯正することは示されていない。また、特許文献3では、帯板表面に所要の塑性歪を付与することは示されていないだけでなく、浴中にシンクロールがないため、帯板に安定して十分な張力を付与することが困難であり、したがって帯板表面に所要の表面塑性歪を安定して付与することはできないと考えられる。
【0114】
本装置では、浴中サポートロール7を設置しないので、シンクロール6径は、サポートロール7が設置された従来装置(図13)の場合よりも大きくすることができる。図8は、一般的に使用されているロール径であるφ750mmのシンクロール6とシンクロール径をφ950mmに大径化した場合について、ガスワイピングノズル8部で、幅1200mmの鋼帯1に発生するC反り量を調査した結果である。鋼帯1のC反り量の数値は、シンクロール6側に凸形状の場合は+(プラス)、シンクロール6と反対側に凸形状の場合は−(マイナス)とした。
【0115】
シンクロール6径を大きくすることによりシンクロール6に巻き付けられた鋼帯1に発生する曲げ応力を小さくすることができ、その結果、図8に示されるように溶融金属浴5から引き上げられるときの鋼帯1のC反りを小さくできる。これによって、形状矯正用の電磁石の負荷軽減が可能になり、従来反り矯正が困難であった厚物鋼帯についても溶融金属浴5引き上げ部の形状を平坦にできる。係る点からは、シンクロール6の直径は850mm以上とすることが有利である。
【0116】
シンクロール6最上部と溶融亜鉛浴面との間隔は50mm以上400mm以下とすることが好ましい。50mm未満であるとシンクロール6の回転により浴面が攪拌されトップドロスを多量に発生させ、また400mm超になると、深い溶融金属浴槽4が必要となり、設備費等の増加を招くためである。
【0117】
次に、前記装置を用いて、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する方法について説明する。鋼帯1はスナウト3を通って溶融金属浴5内の上部領域5Aに引き込まれ、方向転換用ロールであるシンクロール6によって通板方向が変換され溶融金属浴5から引き上げられる。次にガスワイピングノズル8でめっき付着量が調整される。ガスワイピングノズル8部の鋼帯1形状は形状矯正装置9で矯正されて平坦にされる。さらに必要に応じて、合金化炉14でめっき層の合金化処理され、又は合金化炉14に代えてスパングル調整装置を配置してスパングル調整され、あるいは前記処理が施されることなく、そのまま冷却されて所要の溶融亜鉛めっき鋼帯が製造される。
【0118】
本装置では、予歪付与装置21を備えることで腰折れ欠陥のない溶融亜鉛めっき鋼帯を製造できる。
【0119】
またサポートロールが設置されていないので、サポートロールに起因する品質欠陥の発生がなく、またサポートロール交換のための設備停止も不要である。
【0120】
また、ガスワイピングノズル8部で鋼帯1の幅方向反りが矯正されているので、鋼帯1幅方向の付着量分布を均一にでき、さらにガスワイピングノズル8と鋼帯1の間隔を狭め、ガス圧力を低圧にして付着量調整することで、スプラッシュの発生を防止できる。
【0121】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。本装置においては、図3に示した装置において、溶融金属浴槽4内に囲み部材27を設けた点が特徴である。溶融金属浴槽4内に設けた囲み部材27の構成と作用について以下に説明する。
【0122】
図9の装置には、溶融金属浴5内に引き込まれた金属帯1を囲むように形成された囲み部材27が設けられている。囲み部材27によって、前記溶融金属浴5内が溶融金属の流動可能な状態で上部領域5Aと下部領域5Bに分割されている。
【0123】
囲み部材27の上端は溶融金属浴5の浴面より下にあり、囲み部材27の金属帯引き上げ側の囲み27bの上端は、シンクロール6の軸芯よりも上にある。囲み部材27の金属帯1下面に対向する側の囲みは、囲み部材27とシンクロール6の距離がほぼシンクロール6下方で最も近接するように構成されている。また、囲み部材27の金属帯1端部側(シンクロール6軸方向側)の囲み27cはほぼ鉛直な側壁で構成されている。
【0124】
囲み部材27は高温の溶融金属浴環境での使用に耐え得るSUS材などで製作される。囲み部材27の下部に囲み部材27を支持する脚状の支持部材(図示なし)が取り付けられており、前記支持部材が溶融金属浴槽4底部に載置されることで、囲み部材27は溶融金属浴槽4内に設置される。囲み部材27は溶融金属浴槽4内への取り付け、溶融金属浴槽4外への取り外しが自在である。
【0125】
囲み部材27の作用について説明する。図9中、溶融金属槽4内の矢印は溶融金属浴5の流れ方向を示す。実線矢印はドロスを含み、清浄化前の溶融金属浴5であることを示し、白抜き矢印はドロスが沈降除去され、清浄化された溶融金属浴5であることを示す。
【0126】
上部領域5Aでは、溶融金属浴5は、走行する金属帯1に随伴して流れ、囲み部材27の金属帯1引き上げ側の囲み27bの上方から下部領域5Bに流出する。上部領域5Aのシンクロール6下方領域では、シンクロール6の回転による随伴流があるので、金属帯1が通板されていない領域でも溶融金属浴5の十分な流動が確保される。
【0127】
上部領域5Aでは、金属帯である鋼帯1から鉄(Fe)が溶出し、微細なFe−Zn系ドロスが生成する。微細なドロスの一部は金属帯1に付着して溶融金属浴5から持ち出される。この微細なドロスは金属帯1に付着しても品質上の問題はない。溶融金属浴5から持ち出されなかった溶融金属浴5中の微細なドロスは、通板される金属帯1に随伴する流れによって、囲み部材27の金属帯1引き上げ側の囲み27bの上方から下部領域5Bに速やかに排出され、上部領域5A内で沈降、堆積することがない。
【0128】
下部領域5Bには、上部領域5Aから微細なドロスを含む溶融金属浴5が流入する。下部領域5Bに流入した微細なドロスを含む溶融金属浴5は、溶融金属浴槽4の金属帯1引き上げ側の側壁4aに沿って主に下方に向かう流れになり、さらに囲み部材27の下方と側方を経て溶融金属浴槽4の金属帯1引き込み部側(スナウト3側)に流れる。
【0129】
下部領域5Bは、上部領域5Aに比較して容量が大きく、また上部領域5Aの金属帯1随伴流の影響が直接及ばないので、溶融金属浴5の流れは緩やかである。そのため、下部領域5Bに流入した溶融金属浴5が金属帯1引き込み部側(スナウト3側)まで流れる間に、溶融金属浴5に含まれるドロスは、溶融金属浴槽4底部に沈降する。溶融金属浴槽4底部に沈降、堆積したドロスは、集合合体して金属帯品質に影響を与える大きなドロス16に成長する。下部領域5Bでは流れが緩やかなので、溶融金属浴槽4底部に堆積した大きなドロス16は、金属帯1通板速度が変化しても巻き上げられにくく、あるいは仮に巻き上げられることがあっても巻き上げられたドロス16は速やかに溶融金属浴槽4底部に沈降する。そのため、下部領域5Bの金属帯1引き込み側の領域では溶融金属浴5は清浄である。特に浴面上部側の上澄み浴は一層清浄であり、金属帯品質に影響を与える大きなドロス16が浮遊していない。
【0130】
この清浄化された溶融金属浴5の上澄み浴は、通板される金属帯1の随伴流によって、囲み部材27の金属帯1引き込み側の囲み27aの上方から上部領域5Aに流入する。金属帯1は、スナウト3から溶融金属浴5に引き込まれ、前記清浄化された溶融金属浴5を随伴しながら上部領域5A内をシンクロール6によって方向転換され溶融金属浴5から引き上げられる。金属帯1が溶融金属浴5に引き込まれ、溶融金属浴5から引き上げられるまでの間に、金属帯1通板領域に品質影響のあるドロス16がないので、溶融金属浴5から引き上げられた金属帯1表面に品質影響のあるドロス16の付着が防止される。
【0131】
囲み部材27は、シンクロール6、金属帯1との最近接間隔が50mm以上400mm以下とするように設置されることが好ましい。50mm未満であると、熱変形による金属帯1との接触や囲み部材27を設置する際に位置決めが大変になり、また400mm超になると、囲み部材27内で金属帯1の随伴流の影響が及ばなくなる領域が発生し、囲み部材27内で発生したドロスを囲み部材27外部の下部領域5Bに持ち出しにくくなってドロスが囲み部材27内部(上部領域5A内)に堆積するようになるためである。
【0132】
囲み部材27は、囲みの上端が浴面上になるように設けることができる。この場合、囲み部材27の金属帯1引き込み側の囲み27aの浴面部分または浴面に近い浴中部分に、下部領域5Bの溶融金属浴5を上部領域5Aに導入する開口部を設け、また囲み部材27の金属帯1引き上げ側の囲み27bの浴面部分または浴面に近い浴中部分に、上部領域5Aの溶融金属浴5を下部領域5Bに流出する開口部を設ける。しかし、囲み部材27が浴面上にあると、囲み部材27内の浴面に発生するトップドロスを溶融金属浴槽4外に取り出す作業が煩雑になり、またトップドロスが囲み部材27に付着し、鋼帯1の随伴流によって上部領域5Aの溶融金属浴5を下部領域5Bに流出し、下部領域5Bから清浄な溶融金属浴5を上部領域5Aに導入するという本発明の作用が低下するおそれがあるので、囲み部材27の上端は浴面より下に設けることが好ましい。囲み部材27の上端が浴面より100mm未満になると鋼帯1の随伴流によって浴面が攪拌されトップドロスの発生量を増加させるため、浴面より100mm以下にすることがさらに好ましい。
【0133】
また、上部領域5A内を通板される金属帯1の随伴流が下部領域5B内に影響を及ぼすこと、また下部領域5Bの溶融金属浴槽4の底部に堆積しているドロスを巻き上げることを防止する観点から、囲み部材27の各囲みの上端(金属帯引き込み側の囲み27aの上端、金属帯引き上げ側の囲み27bの上端および金属帯幅方向の囲み(図示なし)の上端)はシンクロール6の軸心よりも上にあることが好ましく、シンクロール6の最上部よりも上にあることがさらに好ましい。
【0134】
前記図3に示した装置に対して、前記図9に示した装置は、さらに表面に品質影響のあるドロスの金属帯1表面への付着を抑制する作用が優れるので、金属帯1通板速度を低下しなくてもすなわち生産効率を低下しなくても、ドロス付着のない高品質の溶融亜鉛めっき鋼帯を製造できる。
【0135】
前記装置において、溶融金属浴槽4内の溶融金属浴5の主要な流れは、上部領域5Aでは、金属帯1随伴流によって、金属帯1引き込み側から金属帯1引き上げ側への一方向の流になって、金属帯1引き上げ側の囲み27bから下部領域5Bに流出される。下部領域5Bでは、溶融金属浴5は、溶融金属浴槽4の鋼帯引き上げ側の側壁4aに沿って下方に流れ、さらに囲み部材27の下方及び側方を経て金属帯1引き込み側に流れ、上部領域5Aとは逆方向に向かう流れとなる。このように、上部領域5Aと下部領域5B間を溶融金属浴5は循環するが、この溶融金属浴5循環の起動力は、実質的に通板される金属帯1の随伴流によるものであり、循環のためのポンプ等の設備を必要としないので、簡易且つ安価な設備にできるという利点がある。
【0136】
なお、下部領域5Bの底部すなわち溶融金属浴槽4底部にドロスが堆積する。囲み部材27を溶融金属浴槽4外に取り外し、堆積したドロスを従来から知られている手段によって溶融金属浴槽4の外部に取り出すことができる。
【0137】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。本装置には、図13に示した従来装置に設置されているサポートロール及び図3に示した装置において設置された形状矯正装置9はいずれも設置されておらず、焼鈍炉2に、図5に示されるロール押し付けが可能な3本のロールを備える予歪付与装置21が設置されていることが特徴である。
【0138】
本装置では、サポートロール、形状矯正装置が配置されていないが、予歪付与装置21のロール24をほぼパスラインと接する位置に配置し、ロール22及び23を図6(b)で説明したようにして押し込むことで、ガスワイピングノズル8部における金属帯1のC反りを低減できる。また金属帯に腰折れが発生することもない。
【0139】
図11は、本発明の第4の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図である。本装置においては、図10に示した装置に対して、さらに溶融金属浴槽4内に、図9に設置されたのと同様の構成の囲み部材27が設置されている点が特徴である。
【0140】
本装置では、前記図10の装置で奏される作用効果に加えて、さらにドロス付着を防止できるという作用効果が奏される。
【0141】
溶融亜鉛めっき鋼帯の素材鋼帯には、熱間圧延後脱スケール処理された熱延鋼帯、前記熱延鋼帯を冷間圧延した冷延鋼帯がある。素材鋼帯が前記の何れであっても本発明の効果が奏される。冷延鋼板を素材とする溶融亜鉛めっき鋼帯では、自動車外板用途等、良好な表面外観が要求される用途に適用されることがある。本発明は、良好な表面外観が要求される溶融亜鉛めっき鋼帯、特にプレス成形後も良好な表面外観が要求される冷間圧延鋼帯を素材とした溶融亜鉛めっき鋼帯の製造に適する。
【0142】
【実施例】
めっき原板として、常法で製造するとめっき後に常温で降伏点伸びを有する、厚さ0.75mm、幅1200mmの素材鋼帯を準備した。めっき原板の化学成分を表1に記載する。
【0143】
【表1】
【0144】
製造例1:
図9に示した溶融金属めっき鋼帯製造装置(以下、CGLともいう)を用いて、めっき原板(鋼a〜c)を、ライン速度120mpm、張力2kg/mm2、焼鈍温度850℃で焼鈍した後、予歪付与装置21で種々の条件で予歪を付与し、次いで溶融亜鉛浴(浴温;460℃)に浸漬させ、めっき浴から引き上げて、ガスワイピングノズル8により鋼帯の片面当りの付着量を45g/m2になるようにガス圧力を調整した後、冷却し、さらに調質圧延機(図示なし)で調質圧延(調圧率:1.2%)を行って、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。比較のために、一部予歪を付与しない溶融亜鉛めっき鋼帯も製造した。該溶融亜鉛めっき鋼帯(予歪付与なし且つ調質圧延なし)は、常温での引張り材料特性は、上降伏点25kg/mm2、下降伏点22kg/mm2、降伏点伸び4.3%で、引張試験によると降伏点伸びのなくなる温度(しきい温度T1)は440℃であった。
【0145】
予歪付与装置21としては、図5に示したロール本数が3本の装置に代えて、図12に示されるように、ロール本数が6本で鋼帯通板方向に千鳥配置された装置(鋼帯通板方向に対して上流側から#1〜#6ロールとする)を使用した。ロール径はいずれもφ250mm、隣り合うロール同士の鋼帯通板方向間隔(軸心距離;L1)はいずれも300mm、#6ロールとハースロール26との間隔(軸心距離;L2)は1000mmである(以下、A装置という)。また予歪付与装置下流側のハースロール径はφ1000mmである。
【0146】
3本のロールを使用する場合は、#1〜#3ロールはパスラインから退避させて開放し、#6ロールをパスライン位置に配置し、#4ロールと#5ロールを図6(b)に示すようにパスラインからずらした位置に押し込み、その押し込み量を調整した。
【0147】
5本のロールを使用する場合は、#1ロールは不使用とし、#2、#4、#6ロールの3本をパスライン位置に配置し、前記各々のロールの中間に千鳥対置された#3、#5の2本のロールをパスラインと略直角方向にパスラインを超えて押し込んだ。
【0148】
6本のロールを使用の場合は、#2、#4、6ロールの6本をパスライン位置に配置し、前記各ロールに対して千鳥対置された#1、#3、#5の3本のロールをパスラインと略直角方向に押し込み、その押し込み量を調整した。
【0149】
また、前記A装置において、#1〜3ロールを撤去し、#4〜#6ロールにφ100mmのロールを設置し(以下、B装置という)、#6ロールをパスライン位置に配置し、#4ロールと#5ロールを図6(b)に示すようにパスラインからずらした位置に押し込み、その押し込み量を調整した。前記#4〜#6ロールは、ロール剛性の点から、各々φ400mmのバックアップロールで補強した。
【0150】
1本のロールを使用する場合は、前記A装置において、#1〜#6のロールを撤去し、#3ロールとしてφ1000mmのロール、#6ロールとしてφ100mmのロールをそれぞれ配置し(以下、C装置という)、#6ロールをパスラインを超えて押し込み、押し込み量を調整した。前記#6ロールは、ロール剛性の点からφ400mmのバックアップロールで補強した。
【0151】
シンクロール6は直径950mmで、余剰の亜鉛を払拭するために設けたガスワイピングノズル8の上方の鋼帯幅方向3箇所に静磁場によりC反り矯正を行う電磁石13を鋼帯パスラインから20mm離れた位置に設置した。この電磁石(C反り矯正装置)を用いて、ガスワイピングノズル8部でのC反り量が無くなるようにレーザー変位計で計測した鋼帯変形量に応じて電流調整を行った。亜鉛浴内に設置した囲み部材27は、シンクロール6に沿うような形状とし、鋼帯1との間隔を最小で100mmとした。一部、電磁石で形状矯正を行わない溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。
【0152】
前記で得た溶融亜鉛めっき鋼帯のうち、予歪付与を行い、電磁石を使用して反り矯正したものは、鋼帯の幅方向の付着量の偏差は約±5g/m2であった。これに対して、電磁石で形状矯正しなかったもの(条件3)は、鋼帯幅方向の付着量の偏差は約約±10g/m2であった。
【0153】
また、前記で得た溶融亜鉛めっき鋼帯の腰折れ程度を、自動車ドアパネルのプレスを模したプレス試験を行った後目視観察し、腰折れ欠陥の程度に応じて0〜5の6段階で評価した。腰折れ程度は0(発生なし)が最良で、数字が大きいほど劣位で5が最劣位である。自動車外板などの用途では評点「1」以下、自動車内板などの用途では「2」以下が望ましい。
【0154】
予歪付与条件及び腰折れ程度の評価結果を表2に記載する。また300mm角のサンプルで鋼板表面のドロス有無を確認したところ、いずれの条件でもドロスは確認されなかった。
【0155】
【表2】
【0156】
予歪付与条件が本発明範囲内にある発明例は、腰折れ程度の評点が2以下であり、腰折れ欠陥が防止され、または本発明範囲を外れる比較例に比べて、その程度が軽微である。さらに自動車ドアのプレス試験を実施したところ、評点0及び1については、CGLでの腰折れに起因する欠陥は全くみられず、評点2のものもCGLでの腰折れに起因する欠陥に起因する非常に軽微であった。
【0157】
製造例2:
前記図9の設備でから囲み部材27をとり除いた溶融金属めっき鋼帯製造装置(図3の溶融金属めっき鋼帯製造装置)で、めっき原板(鋼d)を使用し、製造例1と同様の条件で、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。予歪付与装置は、製造例1と同様の6本のロールを使用し、図6(b)に示した方法でロール22と23を押し込み、鋼帯温度が500℃で0.8%の表面塑性歪を付与した。
【0158】
このようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼帯の幅方向の付着量の偏差は約±5g/m2であり、腰折れ欠陥は認められなかった。また300mm角のサンプルで鋼板表面を観察したところ、ドロス個数は約5個であった。さらに自動車ドアのプレス試験を実施したところ、CGLでの欠陥に起因する欠陥はみられなかった。予歪付与条件及び腰折れ程度の評価結果は表2に記載した。
【0159】
製造例3(従来例):
比較のために、焼鈍炉〜スナウト部分に予歪付与装置がなく、サポートロールを有する図13に示した溶融金属めっき鋼帯製造装置で、めっき原板(鋼e)を使用し、張力2kg/mm2、焼鈍温度850℃で焼鈍した後、溶融亜鉛浴(浴温;460℃)に浸漬させ、めっき浴から引き上げて、ガスワイピングノズル8により鋼帯の片面当りの付着量を45g/m2になるようにガス圧力を調整した後、冷却し、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。製造例1と同様の条件で、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。
【0160】
このようにして得られた溶融亜鉛めっき鋼帯の幅方向の付着量の偏差は約±10g/m2であり、サポートロールを使用しない場合よりは軽微であるが、許容できない腰折れが、CGLでの検査時点で鋼帯全面に認められた。また300mm角のサンプルで鋼板表面を観察したところ、ドロス個数は約5個であった。さらに自動車ドアのプレス試験を実施したところ、プレス試験後にはCGLよりはさらに悪化した状態で腰折れ欠陥が確認された。予歪付与条件及び腰折れ程度の評価結果を表2に記載した。
【0161】
上記からわかるように、製造例1の発明例、製造例2(発明例)では腰折れ欠陥は認められず、または発生しても従来例に比べて軽微であり、従来例に比べて鋼帯幅方向の付着量偏差が小さい。金属浴槽内に囲み部材を設置した製造例1の発明例では、ドロス付着がなく、特に良好な外観が得られている。製造例1の条件3に示されるように、予歪付与のみ(電磁石不使用)でも鋼帯の反り矯正効果があるため、鋼帯幅方向の付着量の偏差はサポートロールを使用した製造例3と同等である。
【0162】
【発明の効果】
本発明によれば、降伏点伸びのある金属材料でも腰折れ欠陥が発生せず、また金属板幅方向に均一な付着量を得ることが可能である。さらにロール交換時間の短縮化、サポートロール省略による、ロール交換時間の短縮、メンテナンス費用の低減の効果がある。
【0163】
また、本発明によれば、厚物金属帯であってもガスワイピングノズル部における金属帯の反りを平坦にして、金属帯幅方向に均一な付着量の溶融めっき金属帯を製造することができる。
【0164】
また、本発明によれば、ドロス付着による品質欠陥の発生を抑制する作用が優れるので、金属帯通板速度を低下しないですなわち生産効率を低下しないでドロス欠陥のない高品質の溶融めっき金属帯を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属帯幅方向反り発生機構を説明する図。
【図2】サポートロールの反り矯正機能を説明する図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図4】電磁石を用いた形状矯正装置の構成を示す図。
【図5】予歪付与装置の構成を示す図。
【図6】予歪付与装置に使用するロール配置例を説明する図。
【図7】予歪付与装置に使用するロールの別の配置例を説明する図。
【図8】シンクロール径と鋼帯C反り量の関係を示す図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【図12】実施例で使用した予歪付与装置のロール配置を説明する図。
【図13】従来技術の溶融めっき金属帯製造装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
1 金属帯(鋼帯)
2 焼鈍炉
2a 予熱炉
2b 均熱炉
2c ジェット冷却炉
2d 調整冷却炉
3 スナウト
4 溶融金属浴槽
5 溶融金属浴
5A 囲み内部
5B 囲み外部
6 方向転換ロール(シンクロール)
7 サポートロール
8 ワイパ(ガスワイピングノズル)
9 形状矯正装置
10 位置センサ
11 制御器
12 増幅器
13 電磁石
14 合金化炉
16 ドロス
21 予歪付与装置
22〜24 ロール(曲げロール)
25、26 ハースロール
27 囲み部材
Claims (31)
- 金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と、
前記ワイパの直前又は直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で矯正する形状矯正工程と
を有することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。 - 金属帯を焼鈍する焼鈍工程と、
前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与工程と、
前記金属帯をめっき金属である溶融金属浴内に引き込む引き込み工程と、
前記金属帯に溶融金属を付着させるとともに、前記溶融金属浴中では、方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引き上げる付着工程と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭するワイパによって、溶融金属の付着量を調整する調整工程と
を有することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。 - 前記予歪付与工程は、焼鈍工程の最大金属帯温度到達地点より下流側で、金属帯温度が450℃以上650℃以下の温度域で金属帯に曲げ塑性歪を付与することを特徴とする請求項1または2に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪はロールを用いて付与するとともに、その時の金属帯の表面塑性歪量は0.1%超1.5%以下とすることを特徴とする請求項3に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪の付与に用いるロールは、径がφ800mm以下で本数は5本以下であることを特徴とする請求項4に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪の付与に用いるロール本数が2本以上あるときに、前記曲げ塑性歪みは、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールで付与される表面塑性歪量が前記最終ロールの上流側ロールで付与される表面塑性歪量より小さくなるように付与されることを特徴とする請求項5に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれ、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする請求項5または6に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記入側ロールのパスラインからの押し込み量と前記中間ロールのパスラインからの押し込み量は略同一であることを特徴とする請求項7に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする請求項5〜8のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記最終ロールのロール径は、前記入側ロール及び前記中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする請求項7〜9のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記曲げ塑性歪は、金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置された3本のロールを用いて付与されるとともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする請求項5または6に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記金属帯をパスラインと略直角方向に前記パスラインを超えて押し込まれることを特徴とする請求項11に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする請求項11または12に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 前記溶融金属浴は、前記溶融金属浴内に引き込まれた前記金属帯を囲むように形成された囲み部材により、前記溶融金属浴内が溶融金属の流動可能な状態で上部領域と下部領域に分割されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
- 金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
前記金属帯を焼鈍した後溶融金属浴中に引き込む前に、前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置を有し、かつ方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパと、
前記ワイパの直前または直後で前記金属帯の形状を磁力により非接触で制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。 - 金属帯を焼鈍した後、めっき金属である溶融金属の浴中に引き込むことにより溶融めっき金属帯を製造する装置において、
前記金属帯を焼鈍した後溶融金属浴中に引き込む前に、前記金属帯に塑性歪を付与する予歪付与手段が設置され、さらに、
前記溶融金属を前記金属帯に付着させるために前記溶融金属を保持可能に構成されるとともに、少なくとも溶融金属浴内での金属帯の方向転換装置を有し、かつ方向転換以降、ロール接触させることなく前記金属帯を溶融金属浴外へ引上げられるように溶融金属内機器が配置された溶融金属浴槽と、
前記金属帯に付着した過剰の溶融金属を払拭してその付着量を調整するワイパとを備えたことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造装置。 - 前記方向転換装置は方向転換ロールであり、前記方向転換ロールは外径がφ850mm以上であることを特徴とする請求項15または16に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記方向転換ロールは、前記方向転換ロール最上部と溶融金属浴面との間隔が50mm以上400mm以下となるように配置されることを特徴とする請求項15〜17のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、最大金属帯温度到達地点より下流側で金属帯温度が450℃以上650℃以下となる焼鈍炉部分、または、金属帯温度が450℃以上650℃以下となるスナウト部分に設けられることを特徴とする請求項15〜18のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、金属帯を曲げ変形させるロールであることを特徴とする請求項15〜19のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、φ800mm以下のロールが5本以下配置されることを特徴とする請求項15〜20のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールは略パスライン位置に配置され、金属帯通板方向入側に配置された入側ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールとは反対側のパスラインからずらした位置に配置され、前記両ロールの間に配置された中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側のパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする請求項15〜21のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記中間ロールは、前記金属帯の方前記向転換ロールと接触する面側に配置されることを特徴とする請求項22に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記最終ロールのロール径は、前記最終ロールの金属帯通板方向上流側に配置される前記φ800mm以下のロールのロール径より大きいことを特徴とする請求項22または23に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記予歪付与手段は、3本のロールが金属帯通板方向の金属帯両側に千鳥配置されるともに、前記3本のロールのうち、金属帯通板方向出側に配置された最終ロールのロール径は、金属帯通板方向入側に配置された入側ロール及び前記両ロールの間に配置された中間ロールのロール径より大きいことを特徴とする請求項15〜21のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記入側ロールと前記最終ロールは、略パスライン位置に配置され、前記中間ロールは、前記パスラインに対して前記最終ロールと同じ側のパスラインからずらした位置に配置されることを特徴とする請求項25に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記中間ロールは、前記金属帯の前記方向転換ロールに接触する面側に配置されていることを特徴とする請求項25または26に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記溶融金属浴槽には、前記溶融金属浴内に引き込まれた前記金属帯を囲むように形成された囲み部材が配置され、該囲み部材により、前記溶融金属浴内が溶融金属の流動可能な状態で上部領域と下部領域に分割されていることを特徴とする請求項15〜27のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記囲み部材は、前記上部領域で発生したドロスを含む溶融金属浴が、前記囲み部材の金属帯の溶融金属浴外への引き上げ側から前記下部領域に流出され、前記下部領域で、溶融金属浴に含まれるドロスが沈降除去されて溶融金属浴が清浄化され、清浄化された溶融金属浴が、前記囲み部材の金属帯の溶融金属浴への引き込み側から前記上部領域に導入されるように構成されることを特徴とする請求項28に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記囲み部材は、溶融金属浴面下に設けられることを特徴とする請求項28または29に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
- 前記囲み部材は、前記囲み部材と前記金属帯との最近接距離が50mm以上400mm以下となるように配置されることを特徴とする請求項28〜30のいずれかの項に記載の溶融めっき金属帯の製造装置。
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