JP3975488B2 - 材質均一性に優れる薄鋼板の製造方法 - Google Patents

材質均一性に優れる薄鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、比較的軽度の加工を施して用いられる薄鋼板、例えば極薄ブリキあるいはティンフリースチールなどの表面処理鋼板用の原板として好適な薄鋼板の製造方法にに係り、とくにコイル内における材質の均一性に優れる薄鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
昨今、大量に消費されている飲料缶、18リットル缶、ペール缶などはその製造工程から2ピース缶と3ピース缶に大別できる。このうち、2ピース缶は錫めっき、クロームめっき、化成処理、塗油などの処理を施した表面処理鋼板に、浅い絞り加工、DWI(Drawn and Wall Ironed )加工、DRD(Drawn and Redrawn )加工等の加工を施し、これに蓋を取りつけた2部品からなる缶である。また、3ピース缶は表面処理鋼板を円筒状または角筒状に曲げ、端部を接合して缶胴を形成したのち、これに天蓋と底蓋を取りつけた3部品からなる缶である。
【0003】
これらの缶の製造コストのうち素材コストの占める割合は高く、このため鋼板コストを低減することが求められている。このような観点から、コスト面、生産性の面で有利な連続焼鈍法により缶用鋼板を製造するための開発も従来から行われてきた。例えば、特開平1−52452 号公報には、極低炭素鋼を用いて、焼鈍後の加工硬化を利用することにより、種々の硬さの缶用鋼板を作りわける技術が開示されている。
【0004】
しかし、極低炭素鋼は変態点が相対的に高いため、従来の変態点以上で仕上げ圧延を完了する方法では熱延の仕上げ圧延温度も高くなるので、熱間圧延自体の安定性の低下、さらにまた熱延ロールの損耗が顕著となるという問題があった。この問題を解決すべく、圧延をフェライト域で行うという技術思想があるが、種々の問題点のために未だ実用にいたっていない。
その理由の一つは、コイルの長手方向、幅方向における材質変動が許容範囲を逸脱することであり、これは製品としての価値を低下させるのみならず、製造工程においても冷間圧延時の圧延性の劣化などにつながっていた。
これに対し、低炭素鋼を素材とした場合には、連続焼鈍法を適用した場合に、製品における固溶C量の低減、すなわち耐時効特性の向上に限界があった。低炭素鋼に、極めて煩雑な連続焼鈍サイクルを採用することも提案されているが、生産効率を低下させるので実用には至っていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の薄鋼板の製造技術では、コイル内における材質が不均一であったり、耐時効特性が不十分であるといった問題を抱えており、品質の安定した薄鋼板を製造することができなかった。
そこで、本発明の目的は、コイル内における材質の均一性に優れ、しかも耐時効特性などの材質にも優れる薄鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、時効指数が2.0 kgf/mm2 以下で、降伏強さのバラツキ(標準偏差)が1.5 kgf/mm2 以下、引張強度のバラツキ(標準偏差)が1.5 kgf/mm2 以下、また伸びのバラツキ(標準偏差)が1.0 %以下である薄鋼板の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、まず上記の目的を達成するために、成分および熱延条件などの製造条件を検討しつつ、さらに鋼板の機械的性質を支配する冶金的な検討をおこない、以下の知見を得た。
缶用鋼板では特殊な場合を除いて、一般の深絞り用鋼板と異なり、大半の用途において、高いr値はそれほど必要なく、実成形プロセスにおいては、良好な潤滑条件の確保と、適正なプレス条件の選択によってこれをカバーしている場合が多い。従って、機械的特性として要求されるのは、成形体に見合った強度特性(降伏応力YSと引張強度TS)と、破断を防止しプレスを完遂するに必要な延性(伸びEl)と考えられる。
しかし、これらの特性がコイル内の位置によって変動することは、連続したプレス成形においては問題である。例えば、強度特性の変動はプレス後の形状精度の劣化、延性の変動は慢性的なプレス割れの発生をもたらす。そこで、鋼板の機械的特性を安定させることが必要となるが、そのためには原材料である熱延母板の材質の均一化が不可欠である。
これらの特性を満足すべく、鋼の成分組成と製造条件について詳細に検討した。その結果、これらの条件を特定の範囲に制御することにより、コイル内材質の均一性と耐時効特性を同時に満足させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は下記のとおりである。
(1) C:0.050 wt%以下、
Si:0.010 wt%以下、
Mn:0.050 〜1.50wt%、
P:0.020 wt%以下、
S:0.015 wt%以下、
N:0.0050wt%以下、
Al:0.150 wt%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼スラブを粗圧延し、得られたシートバーのエッジ部を加熱し、その後、入り側の温度を(Ar3変態点+100 ℃) 以下、Ar3 変態点以下における圧下率を80%以上、かつ圧延終了温度を Ar3変態点〜(Ar3変態点−150 ℃) とする仕上げ圧延を行い、次いで、圧延終了後2sec 以上空冷したのち水冷するホットラン冷却を行い、600 〜750 ℃で巻取り、酸洗を経て、圧下率80〜98%で冷間圧延し、その後再結晶温度以上で焼鈍し、さらに20%以下の2次冷間圧延を行うことを特徴とする材質均一性に優れる薄鋼板の製造方法。
【0008】
(2) ホットラン冷却において、上、下の冷却水のうちの少なくとも一方は鋼板のエッヂ部を直撃しないようにマスキングしながら水冷する、上記(1) に記載の薄鋼板の製造方法。
【0009】
(3) 粗圧延後のシートバーを巻き取って保熱処理し、これを巻き戻したのち、シートバーのエッジ部を加熱する、上記(1) または(2) に記載の薄鋼板の製造方法。
【0010】
(4) 仕上げ圧延を連続的に行う、上記(1) 〜(3) のいずれか1つに記載の薄鋼板の製造方法。
【0011】
(5) 仕上げ圧延を潤滑しつつ行う、上記(1) 〜(4) のいずれか1つに記載の薄鋼板の製造方法。
【0012】
(6) 鋼スラブを1050℃以下に再加熱して粗圧延を行う、上記(1) 〜(5) のいずれか1つに記載の薄鋼板の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
(1) 鋼成分について;
C:0.050 wt%以下
Cは、その量が0.050 wt%を超えると、延性が劣化し、TSおよびTSの変動が大きくなる。また、C量をこの範囲に制御すれば、後述の製造条件を適用することで鋼板の時効性を実用上問題の無いレベルに容易に制御できる。C量の下限は、材質の上からは特に設ける必要はないが、変態点の上昇に関連する問題の発生を回避するためには0.01wt%以上とするのが望ましい。なお、加工性を重要視する場合には、0.030 wt%以下とするのが望ましい。
【0014】
Si:0.010 wt%以下
Siは、その量が0.010 wt%を超えると、鋼板の表面性状が劣化し、表面処理鋼板として望ましくないばかりでなく、鋼を硬化させて熱延工程ならびにその後の冷延工程が困難になるので上限を0.010 wt%とする。
【0015】
Mn:0.050 〜1.50wt%
Mnは、Sによる熱間脆性を抑制し、組織の均一、微細化に有用な元素である。Mn量が0.050 wt%未満では熱間脆性を回避できず、表面割れ等の問題を生ずることがある。一方、1.50wt%を超えて添加すると、詳細な機構は必ずしも明らかではないが、材質の均一性を劣化させる。したがって、Mn含有量は0.050 〜1.50wt%とする。なお、加工性を特に重視する場合には0.60wt%以下とするのが望ましい。
【0016】
P:0.020 wt%以下
Pは、加工性および耐食性を低下させる元素である。その量が0.020 wt%を超えるとその影響が顕著に現れるので、0.020 wt%以下、好ましくは0.010 wt%以下とする。ただし、P量の過度の低減は、製造コストの上昇につながるので望ましくはない。
【0017】
S:0.015 wt%以下
Sは、加工性に悪影響を及ぼす元素である。S量を0.015 wt%以下とすれば、プレス加工性(特に伸びフランジ特性)を顕著に改善する。なお、特に高い局部延性が要求される場合は0.007 wt%以下に低減することが望ましい。
【0018】
N:0.0050wt%以下
Nは、r値および耐時効性に悪影響を及ぼす元素であるので、0.0050wt%以下にする必要がある。なお、より一層良好なr値レベルと安定した耐時効性が必要な場合には、0.0030wt%以下に低減することが望ましい。
【0019】
Al:0.150 wt%以下
Alは、脱酸剤として作用し、清浄度を向上させるために必須の元素である。しかし、0.150 wt%を超えて添加すると、清浄度改善効果が飽和するほか、製造コストの上昇、表面欠陥発生傾向の増大などの問題を生じ、また固溶Nを強化元素として活用するのが困難になる。なお、清浄度の向上の観点から、概ね0.005 wt%以上の添加が望ましい。さらに望ましい範囲は0.020 〜0.080 wt%である。
【0020】
(2) 製造条件について;
圧延素材となるスラブは成分の偏りを最小限にするために連続鋳造法で製造されることが望ましい。
次いで粗圧延と仕上げ圧延とからなる熱間圧延を行う。熱間圧延にあたり、鋳造後のスラブは、通常のように、一旦冷却後に再加熱されても、また、温片のままで加熱炉へ挿入されても良い。このスラブは常法に従う粗圧延により、概ね20〜70mm厚みのシートバーとする。ここで、スラブ加熱温度を1050℃以下とすれば、おそらく初期の組織が均一微細化することによると考えられるが、最終的な材質の変動を一層小さくすることができる。なお、シートバーとしてはシートバーキャスターなどで製造されたものも適用可能である。
【0021】
上記シートバーは材質レベルの向上、材質の均一性の向上のために仕上げ圧延に入る前に一旦、コイルに巻き取り保熱することが望ましい。コイルに巻き取ることによって得られる材質の均一化は、コイルに巻き取りによる温度の均一化と、詳細な機構は必ずしも明らかではないが、巻き取り時に付与される若干の曲げ歪みによって達成されるものと考えられる。
【0022】
次に、粗圧延で得られたシートバー(コイルに巻き取り保熱した場合には、このコイルを巻き戻したもの)のエッジ部を仕上げ圧延機入側で加熱する。通常の圧延法では、粗圧延工程まででも鋼板の幅方向に顕著な温度分布の不均一を生じており、シートバーエッジ部の温度は同幅方向中央部よりも50℃以上も低い温度となっている。本発明では、これを補償すべく、エッジヒーターで加熱を行うことにより、全幅方向にわたり材質均一化が達成される。ここで、シートバーのエッジ部とはシートバーの端から略 150mmまでの位置をいう。加熱の程度は仕上げ圧延終了後にほぼコイルの幅方向に均一の温度になるよう50〜100 ℃中央部より高めにするのが望ましい。なお、加熱手段は特に定めないが、その方法として例えば、高周波誘導加熱やガス加熱などが挙げられる。
【0023】
また、仕上げ圧延機の入り側にて、シートバーを接合し、連続的に仕上げ圧延を行うようにすることは次の理由により望ましい。すなわち、仕上げ圧延を連続的に行うことにより、従来は長手方向に張力を付与できなかったコイル先後端部にも、適正な張力を付与できるようになったためと推定されるが、熱延組織の均一性が特にこの部分で向上する。シートバーの接合方法は特に規定するものではなく、複数個のシートバーが連続して仕上げ圧延に供給されることが重要である。
【0024】
さらに、材質を改善する手段として、潤滑圧延を適用して仕上げ圧延することも有効である。潤滑圧延による材質の改善は、鋼板の厚み方向における組織の均一化が一層向上したことによるものと考えられる。この際、潤滑に用いる油の種類、塗油の方法などについて特に定めないが、実機圧延の際に各圧延機の荷重データなどから推定される摩擦係数は概ね0.15程度以下の条件を実現すると顕著な材質の均一化効果が得られるので、この摩擦係数を満たす潤滑油を用いることが推奨される。
なお、上記した仕上げ圧延における連続圧延と潤滑圧延は、それぞれ単独で採用しても、組み合わせて採用してもよく、後者の場合により大きな効果が得られる。
【0025】
仕上げ圧延条件
仕上げ圧延機の入側温度は鋼板の長手、幅方向の材質均一化には重要な要件である。その効果はとくにAr3 +100 ℃以下とすれば達成できる。なお、望ましくは Ar3+70℃以下とすることにより、一層の材質均一化が達成される。
また、Ar3変態点以下での圧下率(Ar3変態点以下での圧延を開始した時の板厚と仕上げ圧延機出側での板厚より算出した公称ひずみ)を従来より顕著に大きい80%以上にすることにより材質の均一性は高められる。このような圧下率範囲に設定することによって、フェライト相にも充分に大きな歪みが付与され、ひずみの蓄積と開放がバランスし、ある意味での定常状態に達する結果、熱延条件の多少の変動があってもその悪影響が吸収され、均一性が向上するものと考えている。なお、Ar3変態点以下での圧下率を85%以上とすれば一層その効果が大きいので望ましい。
さらに、仕上げ圧延の終了温度は熱延工程における種々の圧延トラブルの発生防止と鋼板の組織の均一、微細化のために必要である。即ち、この温度がAr3 点を超えてしまうと組織は極めて不均一となり好ましくない。一方(Ar3 変態点−150 ℃) を下回ってしまうと、生成したフェライト中の歪みが残留する傾向が強くなり、圧延荷重が顕著に増加し、また最終製品における延性の劣化が大きくなる。なお、望ましい圧延終了温度はAr3 変態点〜(Ar3変態点−100 ℃)の範囲である。
【0026】
仕上げ圧延を終了した後、少なくとも2sec 以上の空冷時間(水冷開始の遅れ時間)をもうけることが、熱延コイルの幅方向の材質均一性を確保するには必須である。上記温度範囲で仕上げ圧延を終了した後、水冷開始までに2sec 以上の空冷時間を確保すると、顕著な熱延母板組織の均一化(ある意味での自己焼鈍)がおこり、その後冷延、焼鈍した後も継承され、最終的な鋼板の組織が均一化し、結果的に機械的性質が均一化される。空冷時間の上限は特に定めないが後述する巻き取り温度が確保できる熱延設備上の拘束によりおのずから決定されるものである。
【0027】
ホットラン上における水冷
仕上げ圧延をおえた鋼板をホットラン上で水にて冷却する。このとき、冷却水はノズルより噴出し、鋼板に衝突するが、直接に当たった位置は最も大きな冷却効率を有することと、エッジ部は中央部に比して冷却効率が高いという現象が確認された。鋼板は幅方向に均一に冷却することが望ましく、このような冷却の不均一性を解決する手段として、鋼板のエッジ部に直接には冷却水がかからないようエッジ部を50〜150mm 程度の範囲で冷却水のマスキングを行うことが効果的である。このマスキングは上部、下部の両方において行うことがもっとも望ましいが、少なくとも一方でも実施すれば効果が現れる。
【0028】
巻き取り温度
仕上げ圧延後の巻き取り温度も材質均一化にとって重要な要件である。巻き取り温度を600 ℃以上にすることにより、熱延母板の幅方向の材質均一性が向上し、最終的な材質均一性が改善される。また、600 ℃以上で巻き取ることにより必要最低限の窒化アルミの析出が進行し、冷延焼鈍後の材質、特にr値およびΔr値が改善される。また、固溶Nが低下する結果、最終製品でより軟質な材質とすることができる。しかし、750 ℃を超えて巻き取ると部分的に粗大な異常粒が発生する危険が増す。従って、巻き取り温度は600 〜750 ℃、好ましくは600 〜680 ℃とする。
【0029】
酸洗および冷間圧延
熱間圧延を終えた熱延板は冷間圧延前に酸洗によりスケールの除去を行う。酸洗に用いる酸洗液は HCl, H2SO4 など通常使用するものでよい。
冷間圧延における圧下率が80%を下回ると、均一微細な鋼板組織が得られない。この冷延圧下率が高くなるほど、諸特性の均一化は向上するが、98%を超えると素材の加工硬化のため圧延が困難になることに加えて、機械的性質の面内異方性が増加し望ましくない。したがって、冷間圧延の圧下率は80〜98%の範囲、好ましくは面内異方性の観点から83〜92%の範囲とする。
【0030】
焼鈍
機械的特性の安定性の点から焼鈍が必要である。この再結晶焼鈍は組織を均一かつ微細に保つことと、生産効率の向上という観点から、急速加熱(5℃/sec 以上)、高温( 680〜780 ℃)、短時間(90sec 以下)の焼鈍が望ましい。なお、特殊な用途においては、再結晶温度以下のいわゆる部分再結晶組織の適用もあり得るが、材質安定の上から好ましくない。
【0031】
2次冷間圧延
鋼板の強度を焼鈍ままの状態からさらに増加させるために、20%以下の2次冷延を付与して最終製品とする。2次冷延の付与による加工硬化の利用は、大幅なコストの増加をともなわない点と均一伸びは劣化するが局部伸びは劣化しないため、かなり広い用途に適用できる有利な強化方法である。しかし、20%を超えて2次冷延で強化を行うと、降伏強度の面内異方性が顕著となり、また、これに付随してプレス成形時のイヤリングの発生も顕在化してくる。従って、焼鈍後の2次冷延圧下率は20wt%以下とする。なお、良好な加工性を維持するためには10%以下の範囲で2次冷延を行うのが望ましい。
【0032】
【実施例】
実施例1
表1に示す種々の鋼を溶製して連続鋳造スラブとし、1000〜1250℃の範囲でスラブを加熱した。その後、A〜Gについては本発明に従う熱延条件、すなわちエッジヒーターにより、粗圧延したシートバーを巻き取って保熱処理した後、このシートバーを巻き戻しそのエッジ部(幅端から120mm の位置までの部分)を中心部より50〜120 ℃高い温度に加熱し、これをフィードフォワード制御することで、パススケジュールおよびストリップクラントの使用状況を制御し、最終的な仕上げ圧延温度の最適化を実施した。このとき仕上げ圧延入り側の温度は 900℃であり、Ar3変態点以下での圧下率は85%以上(Ar3変態点の位置検出は圧延荷重の変化から推定)、仕上げ圧延終了温度は全てAr3 −(50〜90℃) の範囲であった。そののち、2〜4sec の空冷してから水冷却を開始し、680 ℃で巻き取りした。
その後、HCl による通常の酸洗ののち、85%の冷間圧延、 720℃−30sec 均熱の連続焼鈍をおこない、1〜3%の調質圧延を行い、最終厚みを0.23〜0.22mmとした。また、従来の低炭素アルミキルド連続焼鈍材(表1鋼H)による工程材も用いた。
【0033】
得られた冷延コイルの長手方向の13点(15m間隔)の幅方向中央と幅方向1/8位置でサンプルを採取し、機械的特性の平均値とバラツキ(標準偏差)を求めた。これらの調査結果を表2に併せて示す。なお、これらの特性は汎用の電気めっきラインを通った後の材質と同等と考えられる。
ここで、時効指数(AI)は7.5 %の予歪みを付与し、100 ℃にて30分の時効をおこない、時効処理前後における変形応力の変化量で評価した。また、耐時効性の目安として、鋼板を約40℃の環境で6か月保存し、その間の降伏点伸びで比較した。外観特性は鋼板を浅い円筒に絞りその表面性状を観察して評価した。
【0034】
【表1】
Figure 0003975488
【0035】
【表2】
Figure 0003975488
【0036】
得られた結果から明らかなように、本発明法によれば、従来例の低炭素アルミキルド連続焼鈍材や比較例に比して耐時効特性に優れた軟質鋼板が小さなコイル内ばらつきで製造できることが判る。また、同一の強度レベルで比較すると、発明例の方が、1〜3%程度高い伸び値を示した。なお、これらの発明法による鋼板の酸洗時の脱スケール性は極めて良好であり、およそ30%の酸洗効率の向上が図れた。さらに、熱延ロールの熱疲労寿命についても概ね15%の延命効果が確認できた。
【0037】
実施例2
表1のC鋼を用いて熱延、酸洗(通常のHCl 浴)、冷延(圧下率88%)、焼鈍(700 ℃−20sec )および2次冷延(1.5 %)により、板厚0.19mmの冷延鋼板を製造した。ここに熱延まわりの諸条件を表3に示す。なお、コイルを水冷する際の冷却水のマスキング操作は鋼板のエッジ100mm の範囲に直接冷却水が当たらないようにした。実施例1と同様にサンプルを採取し試験した。得られた引張特性を表4に示す。
【0038】
【表3】
Figure 0003975488
【0039】
【表4】
Figure 0003975488
【0040】
これらの結果、本発明法で製造した鋼板は、材質の均一性および耐時効特性に優れており、また軟質であることが明らかである。なお、このほか冷却の際にマスキングをおこなうことにより、冷延工程における形状の制御がより容易になることが確認された。
【0041】
表3の条件で製造した鋼板において、2次冷延率のみをかえて鋼板を製造し、その特性を調査した。その結果が表5である。2次冷延圧下率が20%を超えるとイヤリング率が大きくなり、面内異方性が劣化することがわかる。ここで、イヤリング率は、絞り比1.6 で円筒成形し、平均カップ高さに対する平均耳高さの比(%)で表示したものであり、用途にも依存するが概ね3%以下であることが要求されている。
【0042】
【表5】
Figure 0003975488
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明法によれば、強度、延性などの機械的性質がコイル内の全長、全幅にわたってばらつきが少なく均一な材質特性であって、しかも耐時効性に優れる薄鋼板を得ることが可能になる。したがって、本発明法によって製造した薄鋼板を、設定したプレス条件で加工する際に、成形可能範囲が広くなり、加工の不具合が発生する危険性が小さく、安定操業に大きく寄与する。

Claims (6)

  1. C:0.050 wt%以下、
    Si:0.010 wt%以下、
    Mn:0.050 〜1.50wt%、
    P:0.020 wt%以下、
    S:0.015 wt%以下、
    N:0.0050wt%以下、
    Al:0.150 wt%以下、
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼スラブを粗圧延し、得られたシートバーのエッジ部を加熱し、その後、入り側の温度を(Ar3変態点+100 ℃) 以下、Ar3 変態点以下における圧下率を80%以上、かつ圧延終了温度を Ar3変態点〜(Ar3変態点−150 ℃) とする仕上げ圧延を行い、次いで、圧延終了後2sec 以上空冷したのち水冷するホットラン冷却を行い、600 〜750 ℃で巻取り、酸洗を経て、圧下率80〜98%で冷間圧延し、その後再結晶温度以上で焼鈍し、さらに20%以下の2次冷間圧延を行うことを特徴とする材質均一性に優れる薄鋼板の製造方法。
  2. ホットラン冷却において、上、下の冷却水のうちの少なくとも一方は鋼板のエッヂ部を直撃しないようにマスキングしながら水冷する請求項1に記載の薄鋼板の製造方法。
  3. 粗圧延後のシートバーを巻き取って保熱処理し、これを巻き戻したのち、シートバーのエッジ部を加熱する請求項1または請求項2に記載の薄鋼板の製造方法。
  4. 仕上げ圧延を連続的に行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄鋼板の製造方法。
  5. 仕上げ圧延を潤滑しつつ行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄鋼板の製造方法。
  6. 鋼スラブを1050℃以下に再加熱して粗圧延を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄鋼板の製造方法。
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